JP6845735B2 - ベーカリー製品用改質剤とそれを用いたベーカリー生地およびベーカリー製品の製造方法 - Google Patents

ベーカリー製品用改質剤とそれを用いたベーカリー生地およびベーカリー製品の製造方法 Download PDF

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本発明は、ベーカリー製品用改質剤とそれを用いたベーカリー生地およびベーカリー製品の製造方法に関する。
従来、小麦粉などを穀粉とする製パン生地に大豆粉を添加することが検討されている(特許文献1〜4)。大豆は、アミノ酸バランスに優れた蛋白質を豊富に含み、蛋白源等としての健康増進の面からも製パン生地に大豆粉を使用することが検討されているが、小麦粉などを穀粉とする製パン生地に大豆粉またはそれを含む複数成分として添加することにより、改質を図ること、例えば、パンの老化遅延、ボリューム向上、食感、製パン作業性の改善などを図ることも提案されている。
特許文献1には、小麦粉に多量の全脂脱臭大豆粉を混入して製パンし、アルカリ食品としてのパンを提供するに際して、塩基性3リン酸5カルシウムなどのイースト活性化剤を添加することでボリュームの改善を図ることが提案されている。特許文献2には、大豆の無脱脂微粉末を小麦粉に対して5〜10質量%含有するパン組成物とすることで、作業性、食感、老化抑制を図ることが提案されている。特許文献3には、大豆粉と特定のトリグリセリドを含む油脂組成物とを製パン生地に用いることで、風味、歯切れ、口どけ、経時的な食感の劣化の改善を図ることが提案されている。特許文献4には、大豆粉、食用酸化剤、酵素などを水に含ませた液状改質剤により、ボリュームなどの向上を図ることが提案されている。
しかしながら、大豆粉には独特の臭いがあり、青臭さとも称されることのある大豆臭は、大豆に含まれる酵素に起因すると言われている。この大豆臭のため、焼成してパンなどのベーカリー製品とした場合にも、大豆粉に起因する独特の臭いがあり、消費者は不快な臭気として認識することが多く、風味の良いベーカリー製品を得ることができない。
上記のような大豆臭を抑制することを課題として、特許文献5、6に記載の技術が提案されている。特許文献5には、脱皮処理した大豆を煮熟して軟化させた後、熱水洗浄等を行い、発酵性糖および無機塩類を添加することで、大豆臭を抑制することが提案されている。特許文献6には、大豆粉としてNSI(水溶性窒素指数)が特定範囲の2種類の大豆粉を併用することで、大豆臭を抑制することが提案されている。
しかしながら、これらは大豆粉自体の改良によって大豆臭を抑制するものであるが、大豆臭のある各種の大豆粉について汎用的にパンなどのベーカリー製品の風味全体の改善を図る技術、特に大豆臭の抑制とコク味の増強が可能な技術が望まれていた。
また、ベーカリー製品において、表面の焼き色は、外観としての綺麗さ、美味しそうという観念など購買意欲を高める点で重要な要因である。したがって、小麦粉などを穀粉とするベーカリー生地に添加し改質を図る改質剤には、焼き色が濃く均一となるようにベーカリー製品表面の着色を改善する機能も併せ持つことも望まれていた。
一方、近年では、焼き立てのパンを求める需要が高まっている。このような需要に応えるものとして、工場で生産した製パン生地を冷凍して配送し、販売先で解凍、焼成することにより焼き立てのパンを販売することが行われている。
しかしながら、一旦冷凍した生地を焼成した場合、パンなどのベーカリー製品の表面、すなわち表皮であるクラストに、火ぶくれが生じる。これは、生地を冷解凍した際に、氷結晶によりグルテン層が損傷し、生地中の小さい気泡膜が合一、巨大化することが原因とも言われている。この現象は、大豆粉を使用したときにも生じるものであり、大豆粉を使用した改質剤には、冷凍生地に使用した場合においては、火ぶくれを抑制することも望まれていた。
特開昭60−184347号公報 特開昭53−15449号公報 特開2016−174548号公報 特表平10−509310号公報 特開昭49−075751号公報 特開2016−47021号公報
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、大豆粉を使用しても大豆臭が抑制され、かつコク味のある、風味が良好なベーカリー製品を得ることができるベーカリー製品用改質剤とそれを用いたベーカリー生地およびベーカリー製品の製造方法を提供することを主な課題としている。
また本発明は、上記の課題に加え、ベーカリー製品表面の着色も向上させることができるベーカリー製品用改質剤とそれを用いたベーカリー生地およびベーカリー製品の製造方法を提供することを別の課題としている。
さらに本発明は、上記の課題に加え、冷凍ベーカリー生地に使用する際に、ベーカリー製品表面の火ぶくれを抑制することができるベーカリー製品用改質剤とそれを用いたベーカリー生地およびベーカリー製品の製造方法を提供することを別の課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明のベーカリー製品用改質剤は、大豆粉と粉末油脂とを含有し、大豆粉に対する粉末油脂の質量比が0.5以上であることを特徴としている。また粉末油脂が乳蛋白質またはその分解物を含有することが好ましい。
本発明のベーカリー製品用改質剤は、さらに糖分解酵素を含有することを特徴としている。
本発明のベーカリー製品用改質剤は、冷凍ベーカリー生地に使用されることを特徴としている。
本発明のベーカリー生地は、前記ベーカリー製品用改質剤を含有することを特徴としている。また本発明のベーカリー製品の製造方法は、前記ベーカリー生地を焼成することを特徴としている。
本発明のベーカリー製品用改質剤とそれを用いたベーカリー生地およびベーカリー製品の製造方法によれば、大豆粉と粉末油脂とを含有し、大豆粉に対する粉末油脂の質量比が0.5以上であることで、大豆粉を使用しても大豆臭が抑制され、かつコク味のある、風味が良好なベーカリー製品を得ることができる。また粉末油脂が乳蛋白質またはその分解物を含有することで、大豆臭を一層抑制できる。
本発明のベーカリー製品用改質剤とそれを用いたベーカリー生地およびベーカリー製品の製造方法によれば、ベーカリー製品用改質剤がさらに糖分解酵素を含有することで、ベーカリー製品表面の着色も向上させることができる。
本発明のベーカリー製品用改質剤とそれを用いたベーカリー生地およびベーカリー製品の製造方法によれば、冷凍ベーカリー生地に使用される場合において、大豆粉に対する粉末油脂の質量比が0.5以上であること、その中でも、大豆粉に対する粉末油脂の質量比が0.5〜35であることで、ベーカリー製品表面の火ぶくれを抑制することができる。また、ベーカリー製品用改質剤がさらに糖分解酵素を含有することで、ベーカリー製品表面の火ぶくれを一層抑制することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ベーカリー製品用改質剤は、ベーカリー製品やベーカリー生地の特性改良を目的として使用されるものであり、このような特性には、例えば、ベーカリー製品の老化遅延、ボリューム向上、ソフトさの向上、風味や食感の向上、蛋白源等としての健康増進などが含まれる。
本発明のベーカリー製品用改質剤に使用される大豆粉は、特に限定されない。通常、大豆粉は、大豆の脱皮工程、乾燥工程、粉砕工程などを経て得られる。本発明に使用される大豆粉は、さらに加熱脱臭工程を経たものであってもよい。加熱脱臭工程は、例えば、脱皮した大豆に水蒸気などを作用させることによって行うことができる。本発明に使用される大豆粉は、全脂大豆であってもよく、溶剤抽出工程と脱溶剤工程を経て脂質を除去した脱脂大豆であってもよい。
本発明に使用される粉末油脂としては、特に限定されないが、水中油型乳化物を乾燥した粉末油脂を好ましく用いることができる。
粉末油脂に使用される油脂としては、食用であれば特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、魚油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、それらの分別油またはそれらの加工油(硬化およびエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
以下に、本発明に使用される粉末油脂の一例について説明する。
粉末油脂は、賦形剤を含む水相に、上記のような油脂を含む油相を添加し、ホモミキサーなどで攪拌後、ホモジナイザーなどで均質化することにより、水中油型乳化物とし、その後、乾燥粉末化して得ることができる。
水中油型乳化物を乾燥粉末化する方法としては、一般的に知られている噴霧乾燥法、真空凍結乾燥法、真空乾燥法などを用いることができる。
賦形剤としては、例えば、蛋白質またはその分解物、糖質などが挙げられる。
蛋白質としては、例えば、乳蛋白質、大豆蛋白質、小麦蛋白質、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、コラーゲン、ゼラチンなどが挙げられる。蛋白質の分解物としては、例えば、蛋白質を酵素消化などにより加水分解したペプチドなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
乳蛋白質としては、例えば、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウムなどのカゼイン類、ホエイ蛋白質、ミルクプロテインコンセントレート、トータルミルクプロテインなどが挙げられる。乳蛋白質の分解物としては、例えば、乳蛋白質を酵素消化などにより加水分解した乳ペプチドなどが挙げられる。これらの中でも、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、ホエイ蛋白質、乳ペプチド、酸カゼインなどの非ミセル状態であるものは、乳化安定性が向上する点で好ましい。
粉末油脂は、乳蛋白質またはその分解物を含有することが好ましい。粉末油脂が乳蛋白質またはその分解物を含有すると、ベーカリー製品の大豆臭を一層抑制できる。この点を考慮すると、粉末油脂における油脂に対する乳蛋白質またはその分解物の質量比は、0.01〜0.28が好ましく、0.03〜0.1がさらに好ましい。乳蛋白質またはその分解物の含有量は、特に限定されないが、乳蛋白質による粉末化前の乳化物の粘度を考慮すると、粉末油脂全量に対して0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜6質量%がより好ましい。
粉末油脂が乳蛋白質またはその分解物、その中でもカゼイン類を含有すると、ベーカリー製品のボリューム、ソフトさが一層向上する。
糖質としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロースなどの二糖類、オリゴ糖、デキストリン、デンプンなどの多糖類、増粘多糖類、糖アルコールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
デキストリンは、デンプンを化学的または酵素的方法により低分子化したデンプン部分加水分解物であり、市販品などを使用できる。デンプンの原料としては、コーン、キャッサバ、米、馬鈴薯、甘藷、小麦などが挙げられる。デキストリンとして具体的には、水あめ、粉あめ、マルトデキストリン、サイクロデキストリン、焙焼デキストリン、分岐サイクロデキストリン、難消化性デキストリンなどが挙げられる。
デンプンとしては、例えば、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、甘藷デンプン、タピオカデンプン、緑豆デンプン、サゴデンプン、コーン、ワキシーコーン、馬鈴薯、タピオカなどを原料とし、これをエーテル化処理したカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンや、エステル化処理したリン酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、酢酸デンプン、湿熱処理デンプン、酸処理デンプン、架橋処理デンプン、α化処理デンプンなどが挙げられる。
増粘多糖類としては、例えば、プルラン、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、ジェランガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、寒天、LMペクチン、HMペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。
粉末油脂が糖質を含有すると、ベーカリー製品表面の焼き色が濃く均一となり、着色が一層向上する。この点を考慮すると、糖質の含有量は、粉末油脂全体の質量に対して13〜50質量%が好ましい。
賦形剤の含有量は、粉末油脂全体の質量に対して10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましく、20〜40質量%がさらに好ましい。また油脂の含有量は、粉末油脂全体の質量に対して40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましく、60〜80質量%がさらに好ましい。
粉末油脂には、必要に応じて、乳化剤を配合することができる。乳化剤は、食品用であれば特に限定されるものではなく、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウムなどが挙げられる。粉末油脂に乳化剤を配合する場合、通常は、油溶性乳化剤は油相に、水溶性乳化剤は水相に配合する。油相および水相には、酸化防止剤、着色料、フレーバーなどを適宜に配合してもよい。
以下に、粉末油脂の製造方法の一例について説明する。
乳化工程では、前記の各原材料を乳化機の撹拌槽に投入して撹拌混合した後、圧力式ホモジナイザーで均質化する。
原材料の配合比は、特に限定されるものではないが、例えば、油脂と賦形剤の合計量100質量部に対して水50〜200質量部の範囲内にすることができる。
配合手順は、特に限定されるものではないが、例えば、賦形剤を水に室温で分散後、加熱下に攪拌し、あるいは賦形剤を加熱した水に分散、攪拌して完全に溶解させた後、ホモミキサーで攪拌しながら、油脂を加熱溶解させたものを滴下して乳化することができる。
得られた乳化液は、圧力式ホモジナイザーに供給することによって油滴サイズが微細化される。例えば、市販の圧力式ホモジナイザーを用いて、10〜250kgf/cmの程度の圧力をかけて均質化し、油滴サイズを微細化することができる。
次に、均質化した乳化液を高圧ポンプで噴霧乾燥機の入口に供給し、高温熱風を吹き込み、噴霧乾燥機の槽内に上方から噴霧する。噴霧乾燥された粉末は槽内底部に堆積される。噴霧乾燥機としては、例えば、アトマイザー方式やノズル方式で噴霧するスプレードライヤーを用いることができる。
次に、噴霧乾燥された粉末を噴霧乾燥機の槽内から取り出した後、振動流動槽などにより搬送しながら冷風で冷却することによって、粉末油脂を製造することができる。なお、適宜のときに加熱殺菌工程などを設けることもできる。
粉末油脂は、水に添加すると水中油型乳化物となり、微細な油滴が再分散した状態となる。粉末油脂は、水に溶解した時の油滴のメディアン径が好ましくは0.1〜2μm、より好ましくは0.3μm以上1.6μm未満、さらに好ましくは0.5μm以上1.1μm未満である。
本発明のベーカリー製品用改質剤において、大豆粉に対する粉末油脂の質量比は0.5以上である。この範囲内であると、ベーカリー製品の大豆臭を粉末油脂がマスキングし、大豆粉を使用しても大豆臭が抑制され、かつコク味のある、風味が良好なベーカリー製品を得ることができる。大豆粉に対する粉末油脂の質量比の上限は、特に限定されないが、ベーカリー製品の大豆臭を抑制し、コク味も良好である点を考慮すると、50以下が好ましく、コク味がさらに良好である点を考慮すると、20以下がより好ましい。さらにベーカリー製品表面の着色、ボリューム、ソフトさが良好で、冷凍ベーカリー生地に使用した場合における焼成後の火ぶくれを抑制できる点を考慮すると、大豆粉に対する粉末油脂の質量比の上限は、35以下が好ましい。
本発明のベーカリー製品用改質剤には、大豆粉と粉末油脂に加えて、糖分解酵素を配合することができる。糖分解酵素を配合することにより、ベーカリー製品表面の着色が良好で、冷凍ベーカリー生地に使用した場合には焼成後の火ぶくれを抑制できる。糖分解酵素を配合することでボリューム、ソフトさも向上する。特に、糖分解酵素としてアミラーゼとヘミセルラーゼとを併用すると、ボリュームとソフトさがより向上する。
糖分解酵素としては、例えば、α−アミラーゼ、マルトース生成α−アミラーゼ、マルトオリゴ糖生成α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、へミセルラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼなどが挙げられる。
糖分解酵素の由来は特に限定されず、動物、植物や、カビ、細菌のような微生物などを由来する糖分解酵素が使用できる。酵素の生産方法については、特に限定されないが、例えば、天然の組織からの抽出物であっても、組換えDNA技術を用いて大量生産された酵素であっても、合成DNA由来の改変された酵素であってもよい。培養液や培養菌体からの酵素の単離と精製工程などを経て製造される酵素製品の形態は、一般に溶液、粉末、生産株そのものなどがあり、特に限定されないが、その中でも溶液、粉末(または顆粒)の酵素製剤を好ましく用いることができる。また、ベーカリー生地の焼成後に酵素を完全に失活できるような至適温度を有する糖分解酵素であると、ベーカリー製品中に残存した糖分解酵素による品質の劣化を抑制できる。
糖分解酵素は、アミラーゼおよびヘミセルラーゼから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
アミラーゼとしては、例えば、α−アミラーゼ、マルトース生成α−アミラーゼ、マルトオリゴ糖生成α−アミラーゼ、β−アミラーゼなどが挙げられる。これらの中でも、α−アミラーゼが好ましい。
α−アミラーゼ(酵素番号:EC 3.2.1.1)は、デンプン、グリコーゲンなどのα−1,4結合をランダムに切断するエンド型の酵素の総称である。α−アミラーゼとしては、例えば、スピターゼCP3、スピターゼL(以上、ナガセケムテックスジャパン(株)製)、コクラーゼ(三菱化学フーズ(株)製)、Fungamyl 800L(ノボザイムズジャパン(株)製)、クライスターゼL1、ビオザイムA、アミラーゼAD「アマノ」1(以上、天野エンザイム(株)製)などが商業的に入手できる。
マルトース生成α−アミラーゼ(酵素番号:EC 3.2.1.133)は、デンプンに作用し、主としてマルトースを生成する酵素の総称である。マルトース生成α−アミラーゼとしては、例えば、Novamyl 3D Conc.BG、Novamyl 3DBG、Novamyl L、Novamyl 10000BG(以上、ノボザイムズジャパン(株)製)などが商業的に入手できる。
マルトオリゴ糖生成α−アミラーゼは、デンプンに作用し、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオースのようなグルコースがα−1,4結合したオリゴ糖を生成する。マルトトリオース生成α−アミラーゼ(酵素番号:EC 3.2.1.116)は例えばAMT1.2L(天野エンザイム(株)製)などが商業的に入手できる。マルトテトラオース生成α−アミラーゼ(酵素番号:EC 3.2.1.60)は例えばデナベイクEXTRA(ナガセケムテックスジャパン(株)製)などが商業的に入手できる。
本発明のベーカリー製品用改質剤にアミラーゼを配合する場合、大豆粉と粉末油脂の合計量100gに対して酵素活性として5〜150U(ユニット)が好ましく、20〜60Uがより好ましい。ここで、アミラーゼの酵素活性は後述の実施例欄に記載の方法で測定される。
ヘミセルラーゼは、ヘミセルロースを加水分解する酵素の総称である。ヘミセルロースとは、植物組織からアルカリ抽出される多糖類の総称であり、主な多糖類としては、キシラン、アラビノキシラン、キシログルカン、グルコマンナンなどが挙げられる。これらの多糖類を加水分解する酵素が一般的にはヘミセルラーゼと称されており、代表的な酵素名としてはキシラナーゼ(酵素番号:EC 3.2.1.8)、ガラクタナーゼ(酵素番号:EC 3.2.1.89)が挙げられる。ヘミセルラーゼとしては、例えば、ヘミセルラーゼ「アマノ」90(天野エンザイム(株)製)、スクラーゼX(三菱化学フーズ(株)製)、スミチームACH(新日本化学工業(株)製)、VERON393(AB Enzymes製)などが商業的に入手できる。
本発明のベーカリー製品用改質剤にヘミセルラーゼを配合する場合、その含有量は、大豆粉と粉末油脂の合計量100gに対して酵素活性として150〜5000Uが好ましく、1400〜3000Uがより好ましい。ここで、ヘミセルラーゼの酵素活性は後述の実施例欄に記載の方法で測定される。
アミラーゼの酵素活性1Uに対するヘミセルラーゼの酵素活性は、1〜1000が好ましく、10〜400がより好ましい。
本発明のベーカリー製品用改質剤には、大豆粉と粉末油脂に加えて、乳化剤を配合することができる。乳化剤は、食品用であれば特に限定されるものではなく、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウムなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のベーカリー製品用改質剤には、乳化剤として、グリセリン脂肪酸エステルや有機酸グリセリン脂肪酸エステルを配合することが好ましい。特に有機酸グリセリン脂肪酸エステルを配合すると、ベーカリー製品のボリューム、ソフトさが一層良好となる。
ここで、有機酸グリセリン脂肪酸エステルは、本発明のベーカリー製品用改質剤に単独で配合したものであってもよく、あるいは粉末油脂の原材料として、粉末油脂に含まれるものであってもよい。
有機酸グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジアセチル酒石酸グリセリン脂肪酸エステル、コハク酸グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリン脂肪酸エステル、乳酸モノグリセリン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、ジアセチル酒石酸グリセリン脂肪酸エステル、コハク酸グリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
ジアセチル酒石酸グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジアセチル酒石酸モノグリセリンステアリン酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリンラウリン酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリンミリスチン酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリンパルミチン酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリンミリストレイン酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリンパルミトレイン酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリンオレイン酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリンリノール酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリンリノレン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、ジアセチル酒石酸モノグリセリンステアリン酸エステルが好ましい。
コハク酸モノグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、コハク酸モノグリセリンステアリン酸エステル、コハク酸モノグリセリンラウリン酸エステル、コハク酸モノグリセリンミリスチン酸エステル、コハク酸モノグリセリンパルミチン酸エステル、コハク酸モノグリセリンミリストレイン酸エステル、コハク酸モノグリセリンパルミトレイン酸エステル、コハク酸モノグリセリンオレイン酸エステル、コハク酸モノグリセリンリノール酸エステル、コハク酸モノグリセリンリノレン酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、コハク酸モノグリセリンステアリン酸エステルが好ましい。
上記有機酸モノグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、本発明のベーカリー製品用改質剤における大豆粉と粉末油脂の合計量に対して0.5〜5質量%が好ましく、1〜4質量%がより好ましく、1.5〜3質量%がさらに好ましい。有機酸モノグリセリン脂肪酸エステルの含有量がこの範囲内であると、ベーカリー製品のボリューム、ソフトさが一層良好となり、かつ、乳化剤による雑味を感じることなく風味の良好なベーカリー製品を得ることができる。
本発明のベーカリー製品用改質剤には、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記の各原材料に加えて、他の原材料を配合することができる。このような他の原材料としては、例えば、ビタミン、糖類、香料、穀粉などが挙げられる。
本発明のベーカリー製品用改質剤は、上記の各原材料をベーカリー生地に配合する前に予め混合し、粉体状として調製することができる。このように上記の各原材料を混合した粉体状であることが好ましいが、その他、一部の原材料をその他の原材料とは予め混合せずに、個別に添加してベーカリー生地を作製してもよい。
本発明のベーカリー製品用改質剤を用いたベーカリー生地は、穀粉を主成分とし、穀粉としては、通常、焼成品のベーカリー生地に配合されるものであれば、特に限定されないが、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉など)、大麦粉、全粒粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、雑穀(アワ、ヒエ、アマランサス等)、ジャガイモ粉などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ベーカリー生地を製造する際には、本発明の効果を得る点から、本発明のベーカリー製品用改質剤の配合量は、穀粉100質量部に対して1〜15質量部が好ましい。
ベーカリー生地には、穀粉と本発明のベーカリー製品用改質剤以外に、通常、ベーカリー生地に使用される原材料であれば、特に制限なく配合することができる。また、これらの配合量も、通常、ベーカリー生地に配合される範囲を考慮して特に制限なく適宜の量とすることができる。具体的には、例えば、水、イースト(酵母)、イーストフード、乳、乳製品、蛋白質、糖質、卵、卵加工品、澱粉、塩類、乳化剤、乳化起泡剤(乳化油脂)、可塑性油脂、粉末油脂、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果物類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、きな粉、豆腐、豆乳、大豆タンパク、膨張剤、甘味料、調味料、香辛料、着色料、フレーバーなどが挙げられる。乳としては、牛乳などが挙げられる。乳製品としては、脱脂乳、生クリーム、チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズなど)、醗酵乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、加糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖脱脂れん乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、ホエイチーズ(WC)、ホエイプロテインコンセントレート(WPC)、ホエイプロテインアイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウムなどが挙げられる。蛋白質としては、大豆蛋白質、エンドウ豆蛋白質、小麦蛋白質などの植物蛋白質などが挙げられる。糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなど)、二糖類(ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロースなど)、オリゴ糖、糖アルコール、ステビア、アスパルテームなどの甘味料、デンプン、デンプン分解物、多糖類などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ベーカリー生地は、一般的な方法により製造することができる。以下、酵母を用いたパンの製法を主な例として説明する。ベーカリー生地の製造方法として、直捏法、中種法、液種法などの製法を挙げることができる。
直捏法は、全ての原材料を一操作でミキシングして生地を作る方法で、前発酵工程はない。
中種法は二段階で生地を作る方法で、例えば、第一段階の中種は使用する穀粉の50〜100質量%と酵母、水等で捏上げ醗酵させる。醗酵が終わった後に第二段階として残りの穀粉などの原材料を加え本捏を行う。この中種法の場合、中種生地および/または本捏生地に本発明のベーカリー製品用改質剤を添加することができる。
液種法は、例えば、酵母、塩、水、少量の糖で液種(水種)を作る方法で、この後の工程は中種法と同様に液種と残りの原材料を加え本捏を行う。この液種法の場合、本捏生地に本発明のベーカリー製品用改質剤を添加することができる。
捏上温度は、特に限定されないが、生地が捏ね上がったときの生地温度が酵母の活動しやすい温度となるように、醗酵時間との兼ね合いなどで設定され、例えば26〜28℃程度で行うことができる。捏上温度は、仕込み水温で調整することができる。
ベーカリー生地は、混捏後、第一醗酵、分割・丸め、ベンチタイム、成型・型詰め、第二醗酵(ホイロ)の各工程を含んでもよい。第一醗酵を終えた生地を目的のベーカリー製品に仕上げるために、生地を分割する。分割された生地は、成形の形を考慮に入れながら、分割によって痛んだ部分を包み込むようにして丸め、粘着性を持つ生地切断面を内部に入れ生地表面に薄い皮膜を形成させる。ベンチタイムでは、分割し、丸めた生地を、乾燥しないように留意しながら、台の上に並べるなどして休ませる。成型は、第一醗酵後の生地や、ベンチタイムで回復した生地を、手もしくはモルダーなどの機械で形を整える工程である。例えば、手粉を用いて、軽く手で押さえて平たくし、麺棒でガスを抜きながら延ばしたり、畳んだり、丸めたり、巻いたりするなどして成型し、食パンなどを製造する場合にはこれを型詰めする。ホイロは、成型・型詰めされた生地を再び最終醗酵させる。型詰めされた生地や、成型され天板に並べられた生地を、成型工程でガス抜きされた生地を熟成させスポンジ状に再生するために、第一醗酵よりも高い温度で醗酵させる。例えば、生地をホイロなどに収納して、調湿下、イーストが活性化する温度上限付近、例えば37〜38℃で、30〜50分程度醗酵させる。
本発明のベーカリー製品用改質剤は、通常のベーカリー生地の他、冷凍ベーカリー生地にも使用することができる。冷凍ベーカリー生地は、捏ね上げた生地を、焼成前に凍結貯蔵したものである。通常、ベーカリー製品は、捏ね上げた生地を、第一醗酵させた後、適当な大きさに分割し、成型する。その後、ホイロ(第二醗酵)した後、焼成することにより、製造される。冷凍ベーカリー生地としては、通常の製パン工程をホイロ工程の直前まで進めた後、凍結貯蔵することにより製造されたものを挙げることができ、解凍後はホイロに投入して醗酵させた後、焼成することにより、ベーカリー製品が製造される。冷凍ベーカリー生地としては、ホイロ醗酵前に凍結貯蔵されたものであってもよく、ホイロ発酵後に凍結貯蔵されたものであってもよい。また、成型前に凍結貯蔵され、昇温後に成型作業を要する生地玉であってもよく、成型後ホイロ発酵前に凍結貯蔵されたものであってもよい。例えば、工場で生産した冷凍ベーカリー生地を冷凍して配送し、販売先で解凍、焼成することにより焼き立てのベーカリー製品を販売することができる。
一旦冷凍した生地を焼成した場合、ベーカリー製品の表面、すなわち表皮であるクラストに、火ぶくれが生じたりする現象が起きることがある。この火ぶくれ現象は、生地冷凍時の氷結晶によるグルテン層の損傷が原因とも言われている。本発明のベーカリー製品用改質剤によれば、冷凍ベーカリー生地に使用される場合において、大豆粉に対する粉末油脂の質量比が0.5以上であること、その中でも、大豆粉に対する粉末油脂の質量比が0.5〜35であることで、ベーカリー製品表面の火ぶくれを抑制することができる。また、ベーカリー製品用改質剤がさらに糖分解酵素を含有することで、ベーカリー製品表面の火ぶくれを一層抑制することができる。これは、大豆粉に対する粉末油脂の質量比や、糖分解酵素の添加によって、適性な生地膜強度となり、生地冷凍時の氷結晶によるグルテン層の損傷が抑制される可能性が推察される。
以上のようにしてベーカリー生地を得た後、このベーカリー生地を焼成する。醗酵させたベーカリー生地をオーブンや釜などで、例えば190〜220℃の温度で焼成する。オーブンや釜などに入れられたベーカリー生地はさらに膨らみ、焼成が進むと徐々に焼き色が付き始め、焼き上がったら取り出し、目的とするベーカリー製品が得られる。
ベーカリー製品としては、例えば、角食パン、山型パン、ワンローフなどの食パン、バターロールなどのテーブルロール(ロールパン)、コッペパン、ホットドックバンズ、ハンバーガーバンズなどの食卓パン、メロンパンなどの菓子パン、スイートロール、コーヒーケーキなどのスイートドウ、バラエティブレッド、ハースブレッド、デニッシュ、ペストリー、クロワッサン、イーストドーナツなどが挙げられる。
ベーカリー製品は、ベーカリー製品を製造する際に、生地に他の食材を練りこんだもの、ベーカリー製品にフィリングを入れたもの、ベーカリー製品に他の食材をはさんだりのせたりしたものであってもよい。他の食材を練りこんだものとしては、ベジタブルブレッド、フルーツブレッド、ナッツブレッド、胡椒パンなどが挙げられる。フィリングを入れたものとしては、例えば、あんぱん、クリームパン、ジャムパン、チョコパン、チョココロネ、カレーパン、あんドーナッツ、ベーコンエピーなどが挙げられる。他の食材をはさんだりのせたりしたものとしては、例えば、サンドウィッチ、ハンバーガー、ホットドッグ、調理パンなどが挙げられる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、表1に示す配合量は質量%、表2および表3に示す配合量は質量部を表す。
<ベーカリー製品用改質剤の作製>
表2および表3に示す配合で各原材料を混合し、粉体状のベーカリー製品用改質剤を得た。ベーカリー製品用改質剤の原材料には次のものを使用した。
なお、表2および表3における糖分解酵素の量は、大豆粉と粉末油脂の合計量100gに対する酵素活性を示している。
・大豆粉
昭和産業株式会社製 フラッシュフラワーS−55
・粉末油脂
表1に記載の油脂を70℃に調温後乳化剤を添加し撹拌溶解後、油相とした。表1の油相と賦形剤の合計量100質量部に対して100質量部の水を60℃に調温し、賦形剤を添加し水相とした。油相を70℃で、水相を60℃で保持し、ホモミキサーで攪拌しながら水相に油相の全量を添加し、水中油型に乳化させた後、ホモジナイザーで150kgf/cmの圧力をかけて均質化し、水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、水分1.5質量%の粉末油脂1〜4を得た(噴霧乾燥条件:入口温度210℃)。
Figure 0006845735
・乳化剤
(乳化剤1)
ジアセチル酒石酸グリセリン脂肪酸エステル
(乳化剤2)
コハク酸グリセリン脂肪酸エステル
(乳化剤3)
モノグリセリン脂肪酸エステル
・ビタミンC
L−アスコルビン酸
・糖分解酵素
(糖分解酵素1)
アミラーゼ(天野エンザイム株式会社製 ビオエンザイムA)
下記測定法による酵素活性7,000U/g
α−アミラーゼの酵素活性は次の方法で測定した。
{α−アミラーゼの酵素活性測定法}
ヨウ素デンプン反応
酵素を基質デンプン(pH5.0)に作用させ、デンプンの低分子化に伴う、デンプンのヨウ素による青色呈色の減少を測定する。37℃で反応させた場合に、1分間にデンプンのヨウ素による青色を10%減少させる酵素量を1Uとする。
(糖分解酵素2)
ヘミセルラーゼ(天野エンザイム株式会社製 ヘミセルラーゼ「アマノ」90)
下記測定法による酵素活性100,000U/g
ヘミセルラーゼの酵素活性は次の方法で測定した。
{ヘミセルラーゼの酵素活性測定法}
キシラナーゼ活性:キシラン糖化力測定法(ニトロ試薬法)
基質キシラン溶液(pH4.5)に酵素を作用させ、グルコシド結合の切断に伴って増加する還元力を測定して求める。40℃で反応させた場合に1分間に0.01mgのキシロースに相当する還元糖を生成する酵素量を1Uとする。
・比較例2の小麦粉
日清製粉株式会社製 ミリオン
<ロールパンの作製>
実施例および比較例のベーカリー製品用改質剤を用いて、ロールパンを作製した。
〈実施例1〜19と比較例1のロールパン配合〉
強力粉 100質量部
上白糖 12質量部
食塩 1.6質量部
脱脂粉乳 2質量部
全卵(正味) 6質量部
イースト 3質量部
ベーカリー製品用改質剤 10質量部
水 64質量部
〈実施例1〜19と比較例1のロールパンの製パン工程(通常工程)〉
・イーストを分散させた水、全卵、および予め強力粉、上白糖、食塩、脱脂粉乳、ベーカリー製品用改質剤を混合した粉体をミキサーボールに投入し、フックを使用し、低速3分、中高速9分でミキシングを行った。
・捏上げ温度は27℃であった。
・27℃、湿度75%で60分発酵を行った。
・70gに分割し、ベンチタイムを20分間とった後、ロール型に成型後、38℃、湿度80%のホイロで60分発酵させた後、得られた生地を200℃、9分間焼成して、ロールパンを得た。
〈比較例2のロールパン配合 ※〉
強力粉 100質量部
上白糖 12質量部
食塩 1.6質量部
脱脂粉乳 2質量部
全卵(正味) 6質量部
イースト 3質量部
ベーカリー製品用改質剤 10質量部
練り込み用油脂 10質量部
水 62質量部
※ 粉末油脂を配合した実施例1〜19のベーカリー製品用改質剤10質量部に代えて、練り込み用油脂(油分80質量%)10質量部と、比較例2のベーカリー製品用改質剤10質量部を用いた。
〈比較例2のロールパンの製パン工程(通常工程)〉
・イーストを分散させた水、全卵、および予め強力粉、上白糖、食塩、脱脂粉乳、比較例2のベーカリー製品用改質剤を混合した粉体をミキサーボールに投入し、フックを使用し、低速3分、中低速4分でミキシングを行った。
・その後練り込み用油脂を添加し、低速2分、中低速4分でミキシングを行った。
・捏上げ温度は27℃であった。
・27℃、湿度75%で60分発酵を行った。
・70gに分割し、ベンチタイムを20分間とった後、ロール型に成型後、38℃、湿度80%のホイロで60分発酵させた後、200℃、9分間焼成して、ロールパンを得た。
<食パンの作製>
実施例および比較例のベーカリー製品用改質剤を用いて、食パンを作製した。
〈実施例1〜19と比較例1の食パン配合〉
強力粉 100質量部
上白糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
ベーカリー製品用改質剤 6質量部
イースト 3質量部
水 70質量部
〈実施例1〜19と比較例1の食パンの製パン工程(通常工程)〉
・イーストを分散させた水、および予め強力粉、上白糖、食塩、脱脂粉乳、ベーカリー製品用改質剤を混合した粉体をミキサーボールに投入し、フックを使用し、低速3分、中高速9分でミキシングを行った。
・捏上げ温度は27℃であった。
・27℃、湿度75%で60分発酵を行った。
・320gに分割し、ベンチタイムを20分間とった後、ワンローフ型に成型後、38℃、湿度80%のホイロで45分発酵させた後、得られた生地を200℃、25分間焼成して、食パンを得た。
〈比較例2の食パン配合 ※〉
強力粉 100質量部
上白糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
ベーカリー製品用改質剤 6質量部
練り込み用油脂 6質量部
イースト 3質量部
水 70質量部
※ 粉末油脂を配合した実施例1〜19のベーカリー製品用改質剤6質量部に代えて、練り込み用油脂(油分80質量%)6質量部と、比較例2のベーカリー製品用改質剤6質量部を用いた。
〈比較例2の食パンの製パン工程(通常工程)〉
・イーストを分散させた水、および予め強力粉、上白糖、食塩、脱脂粉乳、比較例2のベーカリー製品用改質剤を混合した粉体をミキサーボールに投入し、フックを使用し、低速3分、中低速4分でミキシングを行った。
・その後練り込み用油脂を添加し、低速2分、中低速5分でミキシングを行った。
・捏上げ温度は27℃であった。
・27℃、湿度75%で60分発酵を行った。
・320gに分割し、ベンチタイムを20分間取った後、ワンローフ型に成型後、38℃、湿度80%のホイロで45分発酵させた後、得られた生地を200℃、25分間焼成して、食パンを得た。
<冷凍製パン工程によるロールパンの作製>
・上記通常の製パン工程における分割後の生地を−20℃で30日間保存し冷凍生地とした。
・この冷凍生地を室温にて解凍し、上記通常の製パン工程と同様のホイロ、焼成条件により、ロールパンを得た。
<評価>
上記焼成したロールパン、食パンは、焼成後、ビニール袋に入れ20℃で1日間保管したものを使用し、以下の評価を行った。
大豆臭、コク味、ソフトさの各評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された20〜40代の男性4名、女性6名を選抜した。
(1)通常の製パン工程による評価
[大豆臭]
焼成したロールパンについて、パネル10名で大豆臭を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル10名中8名以上が、大豆臭があると評価した。
○:パネル10名中7〜5名が、大豆臭があると評価した。
△:パネル10名中4〜3名が、大豆臭があると評価した。
×:パネル10名中2名以下が、大豆臭があると評価した。
[コク味]
焼成したロールパンをパネル10名で試食し、コク味を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル10名中8名以上が、コク味があると評価した。
○:パネル10名中7〜5名が、コク味があると評価した。
△:パネル10名中4〜3名が、コク味があると評価した。
×:パネル10名中2名以下が、コク味があると評価した。
[パンの着色]
焼成したロールパンの表面の着色を目視にて以下の基準で評価した。
評価基準
◎:焼き色が濃く、均一である。
○:焼き色が濃く、若干まばらな部分あるが、問題とはならない。
△:焼き色が薄い。
×:焼き色が薄く、まばらである。
[ソフトさ]
焼成したロールパンをパネル10名で試食し、ソフトさを以下の基準で評価した。
評価基準
◎◎:パネル10名中9名以上が、ソフトさがあると評価した。
◎ :パネル10名中8〜7名が、ソフトさがあると評価した。
○ :パネル10名中6〜5名が、ソフトさがあると評価した。
△ :パネル10名中4〜3名が、ソフトさがあると評価した。
× :パネル10名中2名以下が、ソフトさがあると評価した。

[ボリューム]
焼成した食パンについて、レーザー体積計Volscan(Stable Micro Systems社製)を用いて比容積を測定し、食パンのボリュームを以下の基準で評価した。
◎◎:比容積が5.1ml/g以上
◎: 比容積が5.0ml/g以上5.1ml/g未満
○: 比容積が4.9ml/g以上5.0ml/g未満
△: 比容積が4.8ml/g以上4.9ml/g未満
×: 比容積が4.8ml/g未満
(2)冷凍製パン工程による評価
[火ぶくれ]
焼成したロールパンの表面の状態を目視にて以下の基準で評価した。
評価基準
◎:火ぶくれが見られない。
○:火ぶくれがあまり見られない。
△:火ぶくれがやや見られる。
×:火ぶくれが見られる。
[ボリューム]
焼成したロールパンについて、レーザー体積計Volscan(Stable Micro Systems社製)を用いて比容積を測定し、ロールパンのボリュームを以下の基準で評価した。
◎◎:比容積が4.6ml/g以上
◎: 比容積が4.55ml/g以上4.6ml/g未満
○: 比容積が4.45ml/g以上4.55ml/g未満
△: 比容積が4.35ml/g以上4.45ml/g未満
×: 比容積が4.35ml/g未満
[ソフトさ]
焼成したロールパンを、超音波カッターを用いてそのクラムの中央部を2.5cm×2.5cm×2.0cmに切り出した。
通常サンプルと冷凍サンプルの硬さ(N/m)をテクスチャーアナライザーEZ−SX200N(株式会社島津製作所社製)にで、80%圧縮、1mm/secの条件で測定し、下記式より硬さの増加率を求め、ロールパンのソフトさ以下の基準で評価した。
(数1)
増加率=冷凍サンプルの硬さ/通常サンプルの硬さ
評価基準
◎◎:増加率が1.05未満
◎: 増加率が1.05以上1.10未満
○: 増加率が1.10以上1.25未満
△: 増加率が1.25以上1.40未満
×: 増加率が1.40以上
上記の評価結果を表2および表3に示す。
Figure 0006845735
Figure 0006845735

Claims (8)

  1. 大豆粉と粉末油脂とを含有し、
    前記大豆粉に対する前記粉末油脂の質量比が0.5以上であり、
    前記粉末油脂は、油脂と賦形剤とを含有し、
    前記賦形剤は、蛋白質またはその分解物、および、糖質の少なくとも一方を含み、
    前記油脂の含有量は、前記粉末油脂全体の質量に対して40〜90質量%であり、
    前記賦形剤の含有量は、前記粉末油脂全体の質量に対して10〜60質量%である
    ベーカリー製品用改質剤。
  2. 前記大豆粉に対する前記粉末油脂の質量比が0.5〜35である請求項1に記載のベーカリー製品用改質剤。
  3. 前記蛋白質が乳蛋白質である請求項1または2に記載のベーカリー製品用改質剤。
  4. さらに糖分解酵素を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のベーカリー製品用改質剤。
  5. 前記糖分解酵素として、アミラーゼおよびヘミセルラーゼから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項4に記載のベーカリー製品用改質剤。
  6. 冷凍ベーカリー生地に使用される請求項1〜5のいずれか一項に記載のベーカリー製品用改質剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のベーカリー製品用改質剤を含有するベーカリー生地。
  8. 請求項7に記載のベーカリー生地を焼成するベーカリー製品の製造方法。
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