JP2021036865A - ベーカリー用油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】生食の際にソフトな食感と、歯切れ・口溶けが両立されており、かつ再加熱された場合にも、望ましい食感であるベーカリー製品を提供する。【解決手段】ベーカリー油脂組成物100gあたり1000〜4000単位 の酸性プロテアーゼ、及びベーカリー油脂組成物100gあたり510単位以上 のマルトオリゴ糖生成アミラーゼを含有する、ベーカリー用油脂組成物を提供する。好ましくは、マルトオリゴ糖生成アミラーゼは、マルトース生成アミラーゼ及び4糖生成アミラーゼを含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、酵素を含有することを特徴とするベーカリー用油脂組成物に関する。
澱粉類を主たる原料とするパン類等のベーカリー製品においては、澱粉類に含まれる澱粉の経時的な老化に伴って、歯切れや口溶け等の食感が劣化していくことが知られている。この老化の抑制や食感の改良のために、ベーカリー製品の製造工程における、ベーカリー生地調製時において各種酵素を配合することが行われている。
酵素を配合する際、生地に直接酵素を配合すると、酵素の作用がすぐに生じたり、要求以上に強く得られることがあるため、調製中のベーカリー生地にべとつきや緩みが生じ、扱いづらくなることが知られていた。この為、ベーカリー生地中に酵素を配合する際に、酵素を油脂組成物中に含有させ、この油脂組成物をベーカリー生地に含有させる手法がとられてきた。
例えば、特許文献1は、パン等の食品に、顕著な老化防止効果を付与することを目的に、グリセリンモノ脂肪酸エステルと油脂を融解、混合し、該融解混合物にさらにアミラーゼもしくはプロテアーゼを混入せしめることを特徴とする食品の老化防止剤の製造法を提案する。また特許文献2は、アミラーゼ等の酵素を生地に配合した場合に生地がべたつきやすくなることに鑑み、生地の作業性を良好に保ったまま、乳化剤を併用しなくても腰持ちや口溶けを低下させず、ソフトさやしっとりさを長期間維持することを目的に、食用油脂、至適温度が45℃以上60℃以下であるヘミセルラーゼ(H)、及び至適温度が65℃以上85℃以下であるマルトース生成α−アミラーゼ(mA)を含有し、100g中に、ヘミセルラーゼ(H)を1〜100u、かつマルトース生成α−アミラーゼ(mA)を50〜5000u含有する製パン用油脂組成物を提案する。さらに特許文献3は、合成乳化剤や最終商品に表示する必要のある食品添加物の添加量を低減しつつ、パンの食感を改良し高いソフト化効果、歯切れ感向上効果を付与することを目的に、食用油脂、至適pHが2〜4である蛋白質分解酵素<A>、及び糖質分解酵素<B>を含有し、食用油脂100質量部に対して、蛋白質分解酵素<A>が活性量50000u/g基準で0.05〜0.2質量部であり、糖質分解酵素<B>が活性量10000u/g基準で0.05〜0.3質量部である、製パン用油脂組成物を提案する。さらに特許文献4は、ソフトなパンが、一般にソフトであればある程トースト時の焼き縮みが大きくなることにも着目し、トーストした場合における焼き縮みが少なく、また老化が抑制されたパンが得られ、かつ生地のベタツキが少なく作業性に優れた製パン用生地を提供することを目的に、酵素A(マルトース生成α−アミラーゼ及びマルトテトラオース生成α−アミラーゼから選ばれる少なくとも1)及び酵素B(へミセルラーゼ)を含む、製パン用生地改良剤を提案する。
また本出願人は、ソフトで、しとりと口溶けが良好であるパンを、生地物性を悪化させることなく安定して得るための、マルトース生成型アミラーゼ及びヘミセルラーゼを含有する製パン練り込み用油脂組成物(特許文献5)、食物繊維を多く含有しながらも、ソフトでしとりと口溶けが良好なパンを得るための、食物繊維、及び酵素含有油脂組成物を含有するパン生地(特許文献6)を提供している。さらに、経時的な老化現象が抑制され、かつソフトな食感と、歯切れ・口溶けが両立されたベーカリー製品を得るための、4糖生成アミラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物を提供している(特許文献7)。
特開昭52−25046号公報 特開2017−176122号公報 特開2018−50598号公報 特開2018−186811号公報 特開2017−189131号公報 特開2018−64500号公報 特開2019−71872号公報
一方、ベーカリー製品は、そのまま喫食される(生食)ほか、トースター等で再加熱されたのち、喫食される場合も多い。またベーカリー製品は、含まれる澱粉が経時的に老化し、硬くなって食味の劣ったものとなるが、再加熱により、澱粉が再度α化することで、食味の改善を図ることができる。再加熱した場合においても、くちゃ付きがなく(口溶けがよく)、歯切れのよい食感が要求される。しかし、特許文献1〜7に代表されるように、酵素の添加により、生食の場合にソフトさや口溶けを兼ね備えたパンについては検討が重ねられてきたが、再加熱により、くちゃ付きがなく(口溶けがよく)、歯切れのよい食感が得られず、むしろ低下する傾向がみられていた。
このため、いずれの従来技術においても再加熱時の食感の検討は十分ではなく、生食の場合に加えて、再加熱して喫食する場合においても、良好な食感を有しているベーカリー製品が求められていた。
本発明の目的・課題は、生食の際にソフトな食感と、歯切れ・口溶けが両立されており、かつ再加熱された場合にも、望ましい食感であるベーカリー製品を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、酸性プロテアーゼと特定のアミラーゼを組み合わせて油脂組成物として生地に添加することにより、生食の際にソフトな食感と、歯切れ・口溶けが両立されており、かつ再加熱された場合にも、口溶けと歯切れが良好なベーカリー製品が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下を提供する。
[1] 下記を含有する、ベーカリー用油脂組成物。
・ベーカリー用油脂組成物100gあたり1000〜4000単位 の酸性プロテアーゼ
・ベーカリー用油脂組成物100gあたり510単位以上 のマルトオリゴ糖生成アミラーゼ
[2] さらにヘミセルラーゼを含有する、1に記載のベーカリー用油脂組成物。
[3]マルトオリゴ糖生成アミラーゼがマルトース生成アミラーゼを含有し、マルトース生成アミラーゼの含有量が、ベーカリー用油脂組成物100gあたり700〜2500単位である、1又は2に記載のベーカリー用油脂組成物。
[4] マルトオリゴ糖生成アミラーゼが、マルトース生成アミラーゼ及び4糖生成アミラーゼを含有する、1又は2に記載のベーカリー用油脂組成物。
[5] マルトース生成アミラーゼの含有量が、ベーカリー用油脂組成物100gあたり50〜700単位であり、4糖生成アミラーゼの含有量が、ベーカリー油脂組成物100gあたり400〜1500単位である、4に記載のベーカリー用油脂組成物。
[6] さらにプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、1〜5のいずれか1項に記載のベーカリー用油脂組成物。
[7] ショートニングである、1〜6のいずれか1項に記載のベーカリー用油脂組成物。
[8] 油中水型乳化油脂組成物である、1〜6のいずれか1項に記載のベーカリー用油脂組成物。
[9] 油脂組成物に含有される油脂の10℃におけるSFC が25〜45%であり、20℃におけるSFCが5〜25%である、1〜8のいずれか1項に記載のベーカリー用油脂組成物。
[10] 1〜9のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物を含有する、ベーカリー生地。
[11] 10に記載のベーカリー生地の加熱処理品である、ベーカリー製品。
[12] 酸性プロテアーゼとマルトオリゴ糖生成アミラーゼを含有する、ベーカリー製品の再加熱時の食感改良剤。
本発明のベーカリー用油脂組成物を用いることにより、再加熱された場合にも、くちゃ付きがなく(口溶けがよく)、歯切れのよいベーカリー製品が得られる。
本発明のベーカリー用油脂組成物を用いることにより、生食の際にソフトな食感と、歯切れ・口溶けが両立されたベーカリー製品が得られる。
また、本発明のベーカリー用油脂組成物を用いることにより、ベーカリー製品用の生地の作業性を良好にすることができる。
<ベーカリー用油脂組成物>
本発明のベーカリー用油脂組成物は、酸性プロテアーゼ及びマルトオリゴ糖生成アミラーゼを含有する。
(酸性プロテアーゼ)
酸性プロテアーゼは、至適pHが2〜4にある蛋白質分解酵素をいう。酸性プロテアーゼには、エンド型、エキソ型、エンド・エキソ混合型があり、本発明のベーカリー用油脂組成物においてはいずれを用いてもよいが、好ましくはエンド型を用いる。エンド型であれば、再加熱しても尚、くちゃ付きが無く、歯切れのよいベーカリー製品が得られるからである。
本発明のベーカリー用油脂組成物に用いることができる酸性プロテアーゼを含む酵素剤が各種市販されており、例として、デナプシン 2P(ナガセケムテックス株式会社)、オリエンターゼAY及びオリエンターゼ20A(エイチビィアイ株式会社)、プロテアーゼYPSS(ヤクルト薬品工業株式会社)、Alcalase 2.4L FG(ノボザイムズ社)、スミチームLPL−G及びスミチームAP(新日本化学工業株式会社)等が挙げられる。
酸性プロテアーゼの酵素活性は、対象となる酵素を、至適条件(至適温度、至適pH)下で基質に作用させ、単位時間あたりに所定のモル数の分解物を生成する酵素量として定義することができる。具体的には、0.6%ミルクカゼイン(pH3.0,M/10リン酸緩衝液)5mlに1mlの酵素液を加え、30℃、10分間反応させた時、1分間に1μgのチロジンに相当するフォリン発色をTCA可溶性成分として遊離する酵素量を、1単位と定義することができる。本発明において酸性プロテアーゼの酵素活性をいうときは、特に記載した場合を除き、上述の定義による。この定義によると、市販の酵素剤デナプシン 2P(ナガセケムテックス株式会社)1gは20000単位である。なお、酵素単位を、unit又はuで表すことがある。
本発明のベーカリー用油脂組成物においては、ベーカリー油脂組成物100gあたり1000〜4000単位の酸性プロテアーゼを含むことができる。ベーカリー油脂組成物100gあたりの酸性プロテアーゼの含有量は、好ましくは1000〜3000単位であり、より好ましくは1200〜2300単位であり、さらに好ましくは1500〜2300単位である。この範囲であれば、ベーカリー生地に用いた場合に作業性が良好であり、また生食の際にソフトな食感と、歯切れ・口溶けが両立され、さらに再加熱された場合にも、くちゃ付きがなく(口溶けがよく)、歯切れのよいベーカリー製品が得られる。なお酸性プロテアーゼの使用量は、ベーカリー生地に使用する澱粉類100質量部あたり(以下「対粉」と記載することがある)では30〜150ppm程度である。なお、本発明に関し、ベーカリー生地について作業性というときは、特に記載した場合を除き、ベーカリー生地の、分割、丸目、モルダー成形時のいずれかの段階での作業性をいう。このような段階での作業性は、具体的には、ベーカリー生地のべとつき、又はべとつきに伴う伸展性の悪さ等の観点から判断することができる。
(マルトオリゴ糖生成アミラーゼ)
マルトオリゴ糖生成アミラーゼは、デンプン等のα−グルカンを基質として、ある特定の重合度でグルコースがα−1,4結合したマルトオリゴ糖を生成するエキソ型のアミラーゼをいう。マルトオリゴ糖とは、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース等をいう。
マルトオリゴ糖生成アミラーゼの例は、マルトースを生成するマルトース生成アミラーゼ、マルトテトラオースを生成する、4糖生成アミラーゼが含まれる。
本発明のベーカリー用油脂組成物においては、ベーカリー油脂組成物100gあたり510単位以上のマルトオリゴ糖生成アミラーゼを含む。これにより、ベーカリー用油脂組成物を用いて製造されたベーカリー製品において、再加熱された場合に口溶けと歯切れをよくすることができる。
〔マルトース生成アミラーゼ〕
本発明のベーカリー用油脂組成物に用いられるマルトオリゴ糖生成アミラーゼの好ましい例の一つは、マルトース生成アミラーゼである。
本発明のベーカリー用油脂組成物に用いることができるマルトース生成アミラーゼを含む酵素剤が各種市販されており、例として、ノバミル10000BG、ノバミル3D BG、オプティケーキフレッシュ50 BG(Novozymes A/S、デンマーク)、コクラーゼ(登録商標)(三菱化学フーズ社製)、グリンドアミル(登録商標)MAX−LIFE100(ダニスコジャパン社製)等が挙げられる。
本発明においては、マルトース生成アミラーゼの中でも、酵素の至適温度が60℃以上である高温耐熱性マルトース生成アミラーゼが、ベーカリー生地を調製する際の作業性を良好なものとすることができる上、再加熱しても尚、くちゃ付きが無く、歯切れのよいベーカリー製品が得られる観点から好ましい。高温耐熱性マルトース生成アミラーゼの至適温度は、好ましくは40〜95℃、より好ましくは50〜95℃、さらに好ましくは60〜90℃である。
マルトース生成アミラーゼの酵素活性は、対象となる酵素を、至適条件(至適温度、至適pH)下でマルトトリオース等の基質に作用させ、単位時間あたりに所定のモル数のマルトースを生成する酵素量として定義することができる。具体的には、例えば、マルトース生成アミラーゼ活性の1単位は、37℃でpH5.0の0.1Mシトラートバッファー1mlあたりマルトトリオース基質10mgの濃度で1秒あたりに1ナノモルのマルトースを放出させるのに必要な酵素の量と定義することができる。又は、1.2%澱粉基質液5mLに1mLの酵素液を加えて、40℃、10分間反応させ、1分間に1mgのグルコースに相当するマルトースを生成する酵素活性を1u/gと定義することができる。マルトースの測定は、「還元糖の定量法第2版」(福井作蔵著、学会出版センター)を参照して行うことができる。
本発明においてマルトース生成アミラーゼの酵素活性をいうときは、特に記載した場合を除き、市販の酵素剤ノバミル10000BG(Novozymes A/S、デンマーク)1g、若しくは市販の酵素剤ノバミル3D BG(Novozymes A/S、デンマーク)1gを10000単位と定義する。
マルトース生成アミラーゼを用いる場合、ベーカリー油脂組成物100gあたりのその含有量は、好ましくは700〜2500単位であり、より好ましくは1000〜2000単位であり、さらに好ましくは1300〜2000単位である。この範囲であれば、ベーカリー生地に用いた場合に作業性が良好であり、また生食の際にソフトな食感と、歯切れ・口溶けが両立され、さらに再加熱された場合にも、口溶けがよく、歯切れのよいベーカリー製品が得られるからである。なおマルトース生成アミラーゼの使用量は、対粉では30〜150ppm程度である。
〔4糖生成アミラーゼ〕
本発明のベーカリー用油脂組成物には、マルトオリゴ糖生成アミラーゼとして、マルトース生成アミラーゼとともに、4糖生成アミラーゼを用いてもよい。4糖生成アミラーゼにより、ベーカリー生地中で生成されたマルトテトラオースは、ベーカリー生地及びベーカリー製品の水分の経時的な逸失を減少させ、経時的な老化を抑制しうる。また4糖生成アミラーゼを、マルトース生成アミラーゼとともに用いることにより、マルトオリゴ糖生成アミラーゼとしての総量を減じることができる。
本発明で用いられる4糖生成アミラーゼは、特に限定されない。本発明のベーカリー用油脂組成物に用いることができる4糖生成アミラーゼを含む酵素剤が各種市販されており、例として、POWERFresh 3050、POWERFresh 3150、POWERFresh 4150 (Danisco社)、デナベイクExtra(ナガセケムテックス社)などが挙げられる。なお、用いられる4糖生成アミラーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものであってよい。
また、本発明で用いられる4糖生成アミラーゼの至適温度は、加熱処理に伴って生地中の澱粉がα化していく過程で作用することが好ましいため、30〜90℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましく、さらに好ましくは45〜75℃である。
4糖生成アミラーゼの酵素活性は、対象となる酵素を、至適条件(至適温度、至適pH)下で基質に作用させ、単位時間あたりに所定のモル数の分解物を生成する酵素量、あるいは1分間に1μmolのブドウ糖に相当する還元力を生成する酵素量を、1単位と定義することができる。
具体的には、次のように定義してもよい。
40±0.5℃に加温した基質溶液(*1)5mLに試料溶液0.2mLを正確に加えて混和し、40±0.5℃で正確に20分間作用させる。
次に反応液1mLを量り、あらかじめ用意したソモギー銅試液2mLに直ちに加えて反応を停止させた後、試験管にガラス玉をのせ、沸騰水浴中で10分間加熱する。
この液を冷却した後、ネルソン試液2mLを加えて、よく混和し、30分間放置した後、水5mLを正確に加え、波長520nmにおける吸光度ATを測定する。
別途、40±0.5℃に加温した基質溶液5mLに試料溶液0.2mLを正確に加えて混和し、直ちに1mLを量り、あらかじめ用意したソモギー銅試液2mLに加えて反応を停止して、吸光度AT測定時と同様に操作し、吸光度A0を測定する。
また、ブドウ糖標準溶液及び水それぞれについて、1mLを正確に量り、あらかじめ用意したソモギー銅試液2mLに加え、以下同様に操作し吸光度AS及びABを測定し、次式により酵素活性を求める。
(酵素活性)={(AT−A0)×300×5.2×n}/{(AS−AB)×180.16 ×0.2×20}
ただし、各代数及び数値は、以下を意味する。
AT:反応液の吸光度
A0:反応停止液の吸光度
AS:ブドウ糖標準溶液の吸光度
AB:水の吸光度
300:ブドウ糖標準溶液の濃度(μg/mL)
180.16:ブドウ糖の分子量
5.2:反応液の総液量(mL)
0.2:試料溶液の量(mL)
20:反応時間(分)
n:試料溶液の希釈倍数
*1:あらかじめ乾燥させた可溶性デンプン(酵素試験用)を5.000g正確に量り、300mLの水に懸濁し、デンプンが沈殿しないように時々振り混ぜながら加熱する。5分間沸騰させた後十分冷却する。これにpH7.0の200 mmol/Lリン酸緩衝液50 mL及び水を加えて正確に500mLとしたものを、4糖生成アミラーゼの酵素活性を測定する際の基質溶液とする。
本発明で4糖生成アミラーゼに関し、酵素活性をいうときは、特に記載した場合を除き、上述の定義による。この定義によると、市販の酵素剤デナベイク(登録商標)Extra1gは、6500単位である。
本発明のベーカリー用油脂組成物においてマルトース生成アミラーゼとともに4糖生成アミラーゼを用いる場合、ベーカリー用油脂組成物100g中、マルトース生成アミラーゼを50〜700単位、4糖生成アミラーゼを400〜1500単位とすることが好ましく、マルトース生成アミラーゼを80〜600単位、4糖生成アミラーゼを500〜1200単位とすることがより好ましく、マルトース生成アミラーゼを100〜400単位、4糖生成アミラーゼを600〜900単位とすることがさらに好ましい。4糖生成アミラーゼの含量を400単位以上とすることで、老化現象の抑制効果を十分に得ることが容易となり、また1500単位以下とすることで、最終的に得られるベーカリー製品、とりわけパン類において、過度にもっちりとし、べとついた食感となることを防止できる。
マルトース生成アミラーゼと4糖生成アミラーゼを併用する場合は、ベーカリー用油脂組成物中、マルトース生成アミラーゼ1単位に対して、4糖生成アミラーゼが1.5〜10単位の割合で含有されることが好ましく、3〜8単位の割合で含有されることがより好ましく、4〜7単位の割合で含有されることがさらに好ましい。このような割合で含有させることにより、マルトオリゴ糖生成アミラーゼとしての総量を減じつつ、ベーカリー生地に用いた場合に作業性が良好であり、また生食の際にソフトな食感と、歯切れ・口溶けが両立され、さらに再加熱された場合にも、口溶けがよく、歯切れのよいベーカリー製品が得られるからである。
(その他の酵素)
本発明のベーカリー用油脂組成物は、上述の酸性プロテアーゼ、マルトオリゴ糖生成アミラーゼの他、製菓・製パン改良効果を有する他の酵素を含有させることができる。このような酵素の例は、酸性プロテアーゼ以外のプロテアーゼ、マルトオリゴ糖生成アミラーゼ以外のアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、リパーゼである。
(ヘミセルラーゼ)
本発明のベーカリー用油脂組成物には、ヘミセルラーゼを用いることが好ましい。ベーカリー生地の作業性の良さを損なわずに、目的とする、生食の際のソフトな食感と、歯切れ・口溶けとの両立、及び再加熱された場合の口溶け、歯切れの良さを、さらに向上できるからである。
ヘミセルラーゼとはヘミセルロースを基質として加水分解する酵素の総称である。へミセルロースとは、陸上植物細胞の細胞壁を構成する多糖類のうち、セルロースとペクチン以外のものであり、水溶性のものと不溶性のものがあり、具体的な例は、キシラン、アラビノキシラン、アラビナン、マンナン、ガラクタン、キシログルカン、グルコマンナン等である。そのため、ヘミセルラーゼは具体的には、キシランを分解するキシラナーゼ、アラビノキシランを分解するアラビノキシラナーゼ等に分類することができるが、実態としてはこれらの活性を混合して有するものであることが多く、実際に市販されている酵素製品もこれらの活性を混合して有するものである場合が多い。
本発明のベーカリー用油脂組成物に用いることができるヘミセルラーゼを含む酵素剤が各種市販されており、例として、ヘミセルラーゼ「アマノ」(天野製薬株式会社)、ベイクザイムBXP5001BG、ベイクザイムHS2000、ベイクザイムIConc(DMS株式会社)、エンチロンLQ(洛東化成工業社製)、ヘミセルラーゼM(以上、エイチビィアイ社製)、スミチーム(登録商標)X(新日本化学工業社製)等が挙げられる。
本発明では、ヘミセルラーゼの中でも、べたつきがより少なく作業性が維持されたベーカリー生地が得られる点で、アラビノキシランを主基質とし、かつ不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)が10以上であるヘミセルラーゼを使用することが好ましい。このようなヘミセルラーゼを含む酵素剤の例は、ベイクザイムBXP5001BG(DSM株式会社)である。
アラビノキシランを主基質とするとは、アラビノキシランを分解する活性が、好ましくは1000単位/g以上、より好ましくは2000単位/g以上、さらに好ましくは3000単位/g以上であることを指す。なおここでいうアラビノキシランは不溶性又は水溶性に限定されず、いずれのアラビノキシランを基質としたときの下限以上の活性に該当した場合も、アラビノキシランを主基質とすることに該当する。
ヘミセルラーゼの酵素活性は、対象となる酵素を、至適条件(至適温度、至適pH)下で基質に作用させ、単位時間あたりに所定のモル数の分解物を生成する酵素量として定義することができる。本発明においてヘミセルラーゼの酵素活性をいうときは、特に記載した場合を除き、市販の酵素剤ベイクザイムBXP5001BG(DSM株式会社)を5000単位/gと定義する。
不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比(分解活性比:不溶性アラビノキシラン/水溶性アラビノキシラン)は10以上であることが好ましいが、より好ましくは15以上であり、さらに好ましくは20以上である。いずれの場合も、上限値は、好ましくは40以下であり、より好ましくは35以下であり、さらに好ましくは30以下である。分解活性比が10以上であることで、例えば、食パン生地や菓子パン生地等の水分含量の多いベーカリー生地の場合に、生地のべたつきが強くなって作業性が劣ってしまうことを防止できる。
不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性との比を算出する方法は、例えば下記(1)〜(3)による方法が挙げられる。
(1)不溶性アラビノキシランに対する酵素活性の測定
不溶性アラビノキシラン製剤(XylazymeAX:メガザイム社製)の懸濁液(40mgの試料を8mlの脱イオン水に懸濁)300μlをマイクロプレートに分注し凍結乾燥したものを測定に用いる。このマイクロプレートの各ウェルに酵素液(ウシ血清アルブミン(0.5mg/ml)を含むpH4.6、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液に、酵素を0〜40単位懸濁したもの)25μlと該緩衝液25μlを分注して酵素反応を開始し、37℃で1時間酵素反応させた後、1%(w/v)トリス緩衝液200μlを添加して酵素反応を停止する。10分間室温でおいた後、遠心分離(3000g、15分)して得た上清について、分光光度計を用いて吸光度を600nmで読み取る。なお、酵素液の代わりに緩衝液を添加したものをブランクとして使用する。
(2)水溶性アラビノキシランに対する酵素活性の測定
水溶性アラビノキシラン溶液(AZOWAX:メガザイム社製)33μlと酵素液(ウシ血清アルブミン(0.5mg/ml)を含むpH4.6、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液に、酵素を0〜40単位懸濁したもの)33μlをマイクロプレートの各ウェルに分注して酵素反応を開始する。37℃で1時間酵素反応させた後、エタノール140μlを添加して酵素反応を停止する。10分間室温でおいた後、遠心分離(3000g、15分)して得た上清について、分光光度計を用いて吸光度を600nmで読み取る。なお、酵素液の代わりに緩衝液を添加したものをブランクとして使用する。
(3)不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比の算出
1つの酵素につき(1)と(2)の両方の酵素活性の測定を行い、それらの結果から以下のようにして、不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比を算出する。
それぞれの吸光度と酵素含量について非線形回帰曲線Y=Ymax×(1−e−K*X)(Yは吸光度、Xは酵素量)をプロットし、その直線性のある部分、好ましくはYの最大値の1/10以下の範囲で、その傾き(S)を下記の式により算出する。
傾き(S)=(Ymax×K)/1.0536
ここで、この傾きの比、すなわちS(不溶性アラビノキシラン)/S(水溶性アラビノキシラン)の値を不溶性アラビノキシランへの基質親和性と水溶性アラビノキシランへの基質親和性の比とする。
なお、本発明で用いられるヘミセルラーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることができる。また、本発明で用いられるヘミセルラーゼの至適温度は、ミキシング中に、主として不溶性アラビノキシランに作用させ、好ましいグルテン形成を図る目的から、20〜90℃であることが好ましく、25〜50℃であることがより好ましく、さらに好ましくは25〜40℃である。
本発明のベーカリー用油脂組成物中のヘミセルラーゼの含有量は、アラビノキシランを基質とした場合の活性が、好ましくは油脂組成物100g中、75〜700単位、より好ましくは100〜650単位、さらに好ましくは125〜625単位となる量である。ヘミセルラーゼの含有量が油脂組成物100gあたり75単位以上であると、ヘミセルラーゼの添加効果が得やすい。一方、700単位以下であると、使用されるベーカリー生地がパン生地である場合に、パン生地がべたつきにくく、さらにはくちゃついた食感のパンとなってしまうことを防止しやすい。
(リパーゼ)
本発明のベーカリー用油脂組成物には、リパーゼを用いてもよい。リパーゼは、油脂中のトリグリセリドに作用して、トリグリセリドを、モノグリセリドやジグリセリド、グリセリンや脂肪酸に加水分解する酵素であり、反応途中においてはモノ・ジグリセライドが生成される。そのため、ソフト性やしっとりとした食感をベーカリー製品に付与するのみならず、ボリュームの向上、老化耐性の向上のほか、ベーカリー生地の機械耐性の向上が期待できるからである。
本発明のベーカリー用油脂組成物に用いることのできるリパーゼは特に限定されない。本発明のベーカリー用油脂組成物に用いることができるリパーゼを含む酵素剤が各種市販されており、例として、リパーゼA「アマノ」6、リパーゼAH「アマノ」SD、リパーゼAY「アマノ」30、リパーゼPS「アマノ」SD、リパーゼDF「アマノ」15、リパーゼM「アマノ」、リパーゼG「アマノ」50、リパーゼR「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、リリパーゼA−10D(以上、ナガセケムテックス社製)、グリンドアミルEXEL639(ダニスコ(Danisco)・ジャパン社製)、ダイエットレンツリパーゼCR、バリダーゼリパーゼMJ、ベイクザイムL80.000B、ピカンターゼA、ピカンターゼAN、ピカンターゼR800、ピカンターゼC3X、ピカンターゼK、ピカンターゼKL、パナモアゴールデン、パナモアスプリング(以上、ディー・エス・エム(DSM)ジャパン社製)、リポパン50BG、リポパンFBG(以上、ノボザイムズ(Novozymes)ジャパン社製)エンチロンAKG(洛東化成工業社製)等が挙げられる。
なお、本発明で用いられるリパーゼの由来は特に限定されず、動植物、カビ、細菌等から得られたものを用いることができる。また、本発明で用いられるリパーゼの至適温度はミキシング中に作用させることにより好ましい作業性のベーカリー生地と、好ましい食感のベーカリー製品が得られる点から、20〜90℃であることが好ましく、25〜50℃であることがより好ましく、さらに好ましくは25〜40℃である。
本発明品中のリパーゼの含有量は、油脂組成物中、質量基準で0.03〜50ppmであることが好ましく、より好ましくは0.09〜40ppm、さらに好ましくは0.15〜30ppmである。0.03ppm以上であれば、リパーゼの効果によるベーカリー生地の物性変化を確認できるようになり、リパーゼの含有量が50ppm以下の添加により、プロテアーゼ活性等の各種副活性の影響を防止しやすく、また得られるベーカリー生地が過度に軟らかくなり、浮きが悪化することを防止できる。
(油脂)
本発明のベーカリー用油脂組成物には、食用に適する油脂であれば特に限定されず、種々のものを用いることができる。例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、シア脂、サル脂及びカカオ脂等の植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油及び鯨油等の動物油脂、並びにこれらの油脂に、水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。加工油脂の例としては、パーム油を例に挙げると、パームオレイン(パーム油を分別することにより得られる低融点画分)、パームスーパーオレイン(パーム油の低融点画分をさらに分別することにより得られる低融点画分)、及びこれらのエステル交換油が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて油脂配合物として用いることもできる。
ベーカリー用油脂組成物中の油脂の含有量(油脂配合物である場合は、油脂配合物としての含有量)は、好ましくは10〜99質量%であり、より好ましくは50〜95質量%であり、さらに好ましくは60〜90質量%である。
なお油脂組成物とは、油脂を含有する組成物の意である。本発明においては、酸性プロテアーゼやマルトオリゴ糖生成アミラーゼ等の酵素類は、油脂組成物中に含有された状態でベーカリー生地に使用される。酵素類が油脂組成物として使用されることで、酵素類が生地に作用するタイミングを遅らせることができる。そのため、特に使用されるベーカリー生地の種類がパン生地である場合においては生地がべとついて作業性が低下することを抑制できる。また、酵素類が油脂組成物として使用されることで、ベーカリー生地に対する、酵素類の働きや作用するタイミングを遅らせると共に、ベーカリー生地中に均一に分散させることができるため、得られるベーカリー製品の食感が向上しうる。
(SFC)
本発明のベーカリー用油脂組成物に用いられる油脂(2種以上を組み合わせて油脂配合物 として用いる場合は、油脂配合物として)は、10℃におけるSFC(Solid Fat Content、固形脂肪含量)が20〜50%であることが好ましく、30〜45%であることがより好ましい。また、20℃におけるSFCが5〜30%であることが好ましく、10〜25%であることがより好ましい。SFCが上記範囲の油脂を用いることで、所定の温度における油脂組成物の硬さが調整され、それにより酵素の生地への作用が調整されると共に、生地調製時の練り込まれやすさが向上するため、生地の作業性が良く、かつ食感の向上が期待できるからである。
SFCの値は、所定温度における油脂中の固体脂の含有量を示すもので、常法により測定することが可能であるが、本発明においては、AOCS official methodのcd16b-93に記載のパルスNMR(ダイレクト法)にて、測定対象となる試料のSFCを測定した後、測定値を油相量に換算した値を使用する。すなわち、水相を含まない試料を測定した場合は、測定値がそのままSFCとなり、水相を含む試料を測定した場合は、測定値を油相量に換算した値がSFCとなる。(以下、SFCの測定について同様である。)
(プロピレングリコール脂肪酸エステル)
本発明のベーカリー用油脂組成物には、プロピレングリコール脂肪酸エステルを用いてもよい。プロピレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸は、飽和脂肪酸である場合と、不飽和脂肪酸である場合とがある。また、プロピレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数は、12〜22であることが好ましい。脂肪酸は、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの飽和脂肪酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ヒラゴン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。プロピレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸は、これらの脂肪酸の1種単独である場合があり、2種以上の組み合わせである場合がある。プロピレングリコール脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、プロピレングリコールパルミチン酸エステル、プロピレングリコールステアリン酸エステル、及びプロピレングリコールベヘン酸エステル等が挙げられる。好ましい例の一つは、プロピレングリコールベヘン酸エステルである。
本発明のベーカリー用油脂組成物において、プロピレングリコール脂肪酸エステルを用いる場合、ベーカリー油脂組成物100gあたりのその含有量は、好ましくは0.3〜1.5gであり、より好ましくは0.5〜1.2gであり、さらに好ましくは0.8〜1.2gである。この範囲であれば、ベーカリー生地に用いた場合に作業性が良好であり、また生食の際にソフトな食感と、歯切れ・口溶けが両立され、さらに再加熱された場合にも、口溶けがよく、歯切れのよいベーカリー製品が得られるからである。なおプロピレングリコール脂肪酸エステルの使用量は、対粉では0.1質量%以下である。
(その他の原料)
本発明のベーカリー用油脂組成物には、本発明の目的を損なわない限り、上述以外の原材料を含有させることができる。その他の原材料の例としては、水、糖類、乳化剤、澱粉類、デキストリン、食物繊維、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・脱脂濃縮乳、蛋白質濃縮ホエイ等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、全卵・卵黄・酵素処理卵黄・卵白・卵蛋白質等の卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
その他原料は、本発明の目的を損なわない限り、本発明のベーカリー用油脂組成物に任意の量で含有させることができる。その他の原材料の含有量は、例えば、50質量%以下とすることができ、好ましくは30質量%以下である。
(形態)
ベーカリー用油脂組成物の形態としては、油脂を含有する食品、例えばマーガリン・ファットスプレッド・ショートニング・バター等の可塑性油脂組成物や、流動ショートニング、流動状マーガリン、液状油組成物、粉末油脂、純生クリーム、ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)、植物性ホイップ用クリーム、クリームチーズ、チョコペースト等を挙げることができる。本発明では本発明品の効果が得られ易いことから、可塑性油脂組成物であることが好ましい。
ベーカリー用油脂組成物が可塑性油脂組成物である場合、ベーカリー製品製造時の使用形態として、好ましくは練り込み油脂や折り込み油脂の形態が挙げられるが、練り込み油脂として、ベーカリー製品製造時に用いることが、ベーカリー生地中に酵素を均一に分散する観点から、特に好ましい。
ベーカリー用油脂組成物が乳化物である場合、その乳化形態は特に問われず、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれでも構わないが、油中水型乳化物の形態であることが好ましい。
本発明のベーカリー用油脂組成物の好ましい形態の例として、ショートニング、及び油中水型乳化油脂組成物が挙げられるが、本発明のベーカリー用油脂組成物は、ショートニングの形態をとっても、油中水型乳化油脂組成物の形態をとっても、同様の効果が得られる。
(作用・効果)
本発明のベーカリー用油脂組成物は、少なくとも酸性プロテアーゼ及びマルトオリゴ糖生成アミラーゼを含有し、これらがベーカリー生地に適度に作用する。それにより生食の際にソフトな食感と、歯切れ・口溶けが両立され、また、再加熱された場合にも、くちゃ付きがなく(口溶けがよく)、歯切れのよいベーカリー製品が得られる。なお、本発明のベーカリー用油脂組成物は、ベーカリー製品の再加熱時の食感改良剤ということもできる。
<ベーカリー用油脂組成物の製造方法>
本発明のベーカリー用油脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、最終的に必要な酵素が油脂組成物中に含有されるものであれば公知の方法で製造することができる。
ベーカリー用油脂組成物の製造方法においては、各酵素を順次、別個に油脂に添加することができ、粉末状の酵素を事前に混合してから油脂に添加することもできる。また、各酵素が含有された水溶液を油脂に添加・混合することもできる。
本発明のベーカリー用油脂組成物が可塑性油脂組成物(例えば、ショートニング)の形態である場合、可塑性油脂組成物の製造の過程で、油脂中に上述の酵素を別個に、或いは前もって複数の酵素を混合したものを直接分散してから、急冷可塑化により可塑性油脂組成物を製造することができ、水相を含有する場合は水相に上述の酵素を別個に、或いは前もって複数の酵素を混合したものを分散させてから、油相と共に急冷可塑化することにより、可塑性油脂組成物を製造することができる。また、可塑性油脂組成物の製造の過程で、急冷可塑化後に上述の酵素、若しくは酵素が含有された水溶液を添加・混合する方法によることもできる。
本発明では、高い酵素活性を有し、かつ保存時の酵素活性の低下が防止される点で、急冷可塑化後に、酵素、若しくは酵素が含有された水溶液を添加・混合する方法であることが好ましい。また、本発明のベーカリー用油脂組成物が可塑性油脂組成物である場合、その製造工程において、窒素、空気等のガスを含気させても、含気させなくても構わない。
<ベーカリー用油脂組成物を用いた、生地、製品>
(ベーカリー生地)
本発明のベーカリー用油脂組成物を用いて、本発明のベーカリー生地を調製できる。ベーカリー生地の種類は、特に限定されず、例として、パン類の生地、菓子類の生地が挙げられ、より具体的には、パン類の生地としては、食パン生地、菓子パン生地、バラエティーブレッド生地、バターロール生地、ソフトロール生地、ハードロール生地、スイートロール生地、デニッシュ生地、ペストリー生地、フランスパン生地、菓子類の生地としては、パイ生地、シュー生地、ドーナツ生地、バターケーキ生地、スポンジケーキ生地、ハードビスケット生地、ワッフル生地、スコーン生地等が挙げられる。
ベーカリー生地におけるベーカリー用油脂組成物の含有量は、ベーカリー生地の種類やベーカリー用油脂組成物中の酵素の含有単位数によっても異なるが、例えばパン類の場合、ベーカリー生地に用いられる澱粉類100質量部に対し、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以下である。また、ベーカリー生地におけるベーカリー用油脂組成物の含有量は、上限値がいずれの場合であっても、ベーカリー生地に用いられる澱粉類100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは1.5質量部以上である。
ベーカリー生地に用いる澱粉類は特に限定されず、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉及び胚芽などの小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉などのその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシュ―ナッツ粉、オーナッツ粉及び松実粉などの堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉及び米澱粉などの澱粉並びにこれらの澱粉に酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理及びグラフト化処理から選択される1以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明では、これらの中でも、小麦粉を、澱粉類中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは100質量%使用する。
ベーカリー生地のうち、パン類の生地を調製する場合に、小麦粉以外の澱粉類を使用する際、グルテンを別途添加することが好ましい。その添加量は、穀粉類とグルテンを合わせた合計量に対し、蛋白質含量が好ましくは5〜20質量%、より好ましくは10〜18質量%となる量である。
ベーカリー生地においては、必要に応じ、一般のパン類や菓子類の材料として使用することのできる、その他の原料を配合することができる。該その他の原料としては、例えば、水、油脂、イースト、糖類や甘味料、増粘安定剤、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、チーズ類、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、乳化剤、膨張剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー、イーストフード、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、蛋白質、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、各種食品素材や食品添加物等を挙げることができる。
その他の原料は、目的とする効果を損なわない限り、任意の量で使用することができるが、水については、例えばベーカリー生地のうち、パン類の場合、澱粉類100質量部に対して、好ましくは30〜100質量部、より好ましくは30〜70質量部となる範囲で使用する。また、水以外のその他の原料については、澱粉類100質量部に対して、合計で好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で使用する。なお、その他の原料として、水分を含有する原料を使用した場合は、ここでいう水の量は、その他の原料に含まれる水分も含めた量である。
ベーカリー生地の製造方法は特に限定されず、通常使用されている、あらゆるパン類・菓子類のための製造方法を適用することができる。パン類の製造方法の例としては中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法が挙げられ、菓子類の製造方法の例としてはシュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法、共立て法、別立て法が挙げられる。
本発明のベーカリー製品のうち、とりわけパン類を中種法で製造する場合は、本発明のベーカリー用油脂組成物を中種生地及び/又は本捏生地に練り込み、含有させることにより製造することができるが、本捏生地に練り込み、含有させることが好ましい。なお、得られたベーカリー生地は、冷蔵、冷凍保存できる。
(ベーカリー製品)
本発明のベーカリー製品は、本発明のベーカリー用油脂組成物を含有するベーカリー生地を加熱処理することにより得られる。ベーカリー生地の加熱処理の方法は特に限定されず、例として、焼成したり、フライしたり、蒸したり、電子レンジ処理したりすることが挙げられる。
加熱処理により得られるベーカリー製品の種類は特に限定されず、各種のパン類や菓子類でありうる。本発明のベーカリー用油脂組成物は、用いたパンが再加熱された際の口溶けと歯切れを良好にすることができるものであるから、本発明は、再加熱して喫食することがあるパンに適用するのに適している。このようなパンの例は、食パン、ソフトロール、セミハードロール、ハードロール、フランスパン、バターロール、ハンバーガーバンズ、イングリッシュマフィン、スイートロール、デニッシュ、ペストリーである。
再加熱の方法は、特に限定されず、トースターで焼いたり、電子レンジで温めたり、フライパン、鉄板、又は焼き網で焼いたり、蒸したりすることが挙げられる。また、得られた本発明のベーカリー製品は、冷蔵又は冷凍保存することができ、また保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
以下、本発明を、実施例を基に詳述する。
<油脂配合物の調製>
パーム油25質量部、パームオレインのランダムエステル交換油22質量部、パームステアリン5質量部、及びパームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂48質量部を、それぞれ60℃に加熱し、溶解・混合し、油脂配合物を調製した。以下で、油脂配合物Aというときは、これを指す。
なお、この油脂配合物AのSFCは10℃において40%、20℃において19%であった。
<使用した酵素剤、プロピレングリコール脂肪酸エステル等>
以下の実施例、比較例では、下記の酵素を用いた。なお、u/gは酵素剤1gあたりの活性値である。各々の1 uは製造者の示す定義による。
酸性プロテアーゼ:デナプシン2P(20000 u/g、ナガセケムテックス株式会社)(Aspergillus niger の産生する酸性プロテアーゼを精製粉末化した酵素剤)
マルトース生成アミラーゼ:ノバミル10000BG(10000 u/g、Novozymes A/S)
マルトース生成アミラーゼ:ノバミル3D BG(10000 u/g、Novozymes A/S)
ヘミセルラーゼ:ベイクザイムBXP5001BG(5000 u/g、DSM株式会社)(Bacillus subtili由来のヘミセルラーゼ)
4糖生成アミラーゼ:デナベイク(登録商標)Extra(6500 u/g、ナガセケムテックス株式会社)
エンド型αアミラーゼ:ファンガミル2500SG(5300 u/g、Novozymes A/S)
プロピレングリコール脂肪酸エステルA:リケマールPB-100(理研ビタミン株式会社
)(結合する脂肪酸がベヘン酸であるプロピレングリコール脂肪酸エステル)
プロピレングリコール脂肪酸エステルB:リケマールPS-100(理研ビタミン株式会社)
(結合する脂肪酸がステアリン酸であるプロピレングリコール脂肪酸エステル)
<ベーカリー用油脂組成物の調製>
(比較例1〜7、実施例1〜4)
比較例1〜7及び実施例1〜4(試験区1)の、各種酵素を含有する、ショートニングタイプのベーカリー用油脂組成物を調製した。
詳細には、油脂配合物Aを常法に従って加熱殺菌、及び冷却可塑化した。続いて、各種酵素を、ベーカリー用油脂組成物100g中、後掲の表に示した単位となる量だけ添加・混合し、ベーカリー用油脂組成物を調製した。
(実施例5〜8)
実施例5〜8(試験区2)のヘミセルラーゼを含有する、ショートニングタイプのベーカリー用油脂組成物を調製した。
詳細には、油脂配合物Aを常法に従って加熱殺菌、及び冷却可塑化した。続いて、各種酵素を、ベーカリー用油脂組成物100g中、後掲の表に示した単位となる量だけ添加・混合し、ベーカリー用油脂組成物を調製した。
(実施例9〜13)
実施例9〜13(試験区3)の、酸性プロテアーゼ、マルトース生成アミラーゼ、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、ショートニングタイプのベーカリー用油脂組成物を調製した。
詳細には、油脂配合物Aに、後掲の表に示した量だけプロピレングリコール脂肪酸エステルを添加・溶解し、常法に従って加熱殺菌、及び冷却可塑化した。続いて、各種酵素を、ベーカリー用油脂組成物100g中、後掲の表に示した単位となる量だけ添加・混合し、ベーカリー用油脂組成物を調製した。
(実施例14〜16)
実施例14〜16(試験区4)の、酸性プロテアーゼ、マルトース生成アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、ショートニングタイプのベーカリー用油脂組成物を調製した。
詳細には、油脂配合物Aに、後掲の表に示した量だけプロピレングリコール脂肪酸エステルを添加・溶解し、常法に従って加熱殺菌、及び冷却可塑化した。続いて、各種酵素を、ベーカリー用油脂組成物100g中、後掲の表に示した単位となる量だけ添加・混合し、ベーカリー用油脂組成物を調製した。
実施例17〜19(試験区5)の、酸性プロテアーゼ、マルトース生成アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、油中水型乳化物のベーカリー用油脂組成物を調製した。
詳細には、油脂配合物A85質量部に、後掲の表に示した量だけ、プロピレングリコール脂肪酸エステルを添加・溶解させ、これを油相とし、この中に水を水相として15質量部混合し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行った。続いて、各種酵素を、ベーカリー用油脂組成物100g中、後掲の表に示した単位となる量だけ添加・混合し、ベーカリー用油脂組成物を調製した。
(実施例20〜26)
実施例20〜26(試験区6)の、酸性プロテアーゼ、マルトース生成アミラーゼ、4糖生成アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、エンド型αアミラーゼ、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、ショートニングタイプのベーカリー用油脂組成物を調製した。
詳細には、油脂配合物Aに、後掲の表に示した量だけプロピレングリコール脂肪酸エステルを添加・溶解し、常法に従って加熱殺菌、及び冷却可塑化した。続いて、各種酵素を、ベーカリー用油脂組成物100g中、後掲の表に示した単位となる量だけ添加・混合し、ベーカリー用油脂組成物を調製した。
(実施例27〜30)
試験区4で使用したノバミル10000BGに代えて、ノバミル3D BGを使用した他は試験区4と同様に、実施例27〜30(試験区7)の、酸性プロテアーゼ、マルトース生成アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、ショートニングタイプのベーカリー用油脂組成物を調製した。
詳細には、油脂配合物Aに、後掲の表に示した量だけプロピレングリコール脂肪酸エステルを添加・溶解し、常法に従って加熱殺菌、及び冷却可塑化した。続いて、各種酵素を、ベーカリー用油脂組成物100g中、後掲の表に示した単位となる量だけ添加・混合し、ベーカリー用油脂組成物を調製した。
試験区5で使用したノバミル10000BGに代えて、ノバミル3D BGを使用した他は試験区5と同様に、実施例31〜34(試験区8)の、酸性プロテアーゼ、マルトース生成アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、油中水中型 乳化物のベーカリー用油脂組成物を調製した。
詳細には、油脂配合物A85質量部に、後掲の表に示した量だけ、プロピレングリコール脂肪酸エステルを添加・溶解させ、これを油相とし、この中に水を水相として15質量部混合し、常法に従って加熱殺菌及び冷却・可塑化を行った。続いて、各種酵素を、ベーカリー用油脂組成物100g中、後掲の表に示した単位となる量だけ添加・混合し、ベーカリー用油脂組成物を調製した。
<プルマン型食パンの製造>
調製したベーカリー用油脂組成物それぞれを用いて、下記の製法で、プルマン型食パンを製造した。以下では、比較例1〜7、実施例1〜34のベーカリー用油脂組成物各々を用いた食パン生地を、比較例1a〜7a、実施例1a〜34aの食パン生地、それらの生地から得られた食パンを、比較例1b〜7b、実施例1b〜34bの食パンということがある。
強力粉(商品名「カメリア」:日清製粉製、蛋白質含量11.8質量%及び灰分0.37質量%)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。
この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。
この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉30質量部、上白糖5質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.5質量部及び水25質量部を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。
ここで、ベーカリー用油脂組成物5質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン用の本捏生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。
ここで、フロアタイムを20分とった後、230gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
<評価>
食パン生地の作業性について、下記評価基準で専門パネラーにより評価を行った。また、得られた食パンの食感について、下記の評価基準で10名の専門パネラーにより官能評価を行った。それらの結果を、次のようにして表に示した。
+++:43〜50点、
++ :37〜42点、
+ :31〜36点、
− :24〜30点、
−− :18〜23点、
−−−:17点以下
評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。なお、すべての項目について、+以上の評価を得たものを合格品とした。
なお、再加熱は、得られた食パンを2cmの厚さにスライスし、オーブントースター(コイズミ製、ヒーター:上下段とも石英管ヒーター、消費電力1000w)を用いて、2分30秒の加熱条件で行った。
●生地作業性(生地調製時の作業性)
5点:べとつきもなく伸展性もよく、極めて良好な作業性であった。
4点:良好な作業性であった。
3点:わずかにべとつきが感じられるか又はわずかに伸展性が悪く感じられるが、良好な作業性であった。
2点:ややべとつきが感じられるか又はやや伸展性が悪く、作業性が若干劣るものであった。
1点:べとつきがあるか又は伸展性が悪く、作業性が劣るものであった。
●食感(ソフト性)
5点:コントロールと比較して、非常にソフトである。
4点:コントロールと比較して、ややソフトである。
3点:コントロールと比較して、同等のソフトさである。
2点:コントロールと比較して、やや詰まっている。
1点:コントロールと比較して、詰まっている。
●食感(口溶け)
5点:コントロールと比較して、非常に良好な口溶けを有している。
4点:コントロールと比較して、良好な口溶けを有している。
3点:コントロールと比較して、同等の口溶けを有している。
2点:コントロールと比較して、ややくちゃつく食感を有している。
1点:コントロールと比較して、強くくちゃつく食感を有している。
●食感(歯切れ)
5点:コントロールと比較して、非常に良好な歯切れを有している。
4点:コントロールと比較して、良好な歯切れを有している。
3点:コントロールと比較して、同等の歯切れを有している。
2点:コントロールと比較して、やや歯切れが悪い。
1点:コントロールと比較して、歯切れが悪い。
●食感(再加熱時の口溶け)
5点:コントロールと比較して、非常に良好な口溶けを有している。
4点:コントロールと比較して、良好な口溶けを有している。
3点:コントロールと比較して、同等の口溶けを有している。
2点:コントロールと比較して、ややくちゃつく食感を有している。
1点:コントロールと比較して、強くくちゃつく食感を有している。
●食感(再加熱時の歯切れ)
5点:コントロールと比較して、非常に良好な歯切れを有している。
4点:コントロールと比較して、良好な歯切れを有している。
3点:コントロールと比較して、同等の歯切れを有している。
2点:コントロールと比較して、やや歯切れが悪い。
1点:コントロールと比較して、歯切れが悪い。
<評価結果>
(試験区1:酵素の組み合わせの検討、酸性プロテアーゼ及びマルトース生成アミラーゼの量の検討)
比較例1〜7及び実施例1〜4の、各種酵素を含有するベーカリー用油脂組成物を用いた食パン生地、及び食パンについて評価した結果を、ベーカリー用油脂組成物100g中に配合された各酵素単位とともに、下表に示した。なお評価の際のコントロールは、ベーカリー用油脂組成物の代わりに、酵素無添加のショートニングを用いたものとした。
Figure 2021036865
生地作業性は、酸性プロテアーゼとマルトース生成アミラーゼを比較的多く用いたベーカリー用油脂組成物を用いた食パン生地(比較例7a)を除き、すべて良好であった。
酵素として酸性プロテアーゼのみを用いたベーカリー用油脂組成物を用いた食パン(比較例1b)、酵素としてマルトース生成アミラーゼのみを用いたベーカリー用油脂組成物を用いた食パン(比較例2b)は食感が十分ではなく、特に、歯切れ、再加熱時の口溶け、再加熱時の歯切れがコントロールより劣った。ヘミセルラーゼを添加しても(比較例3b、比較例4b)、十分には改善されなかった。
酵素として酸性プロテアーゼとマルトース生成アミラーゼを用いたベーカリー用油脂組成物を用いた食パン生地(実施例2b、3b)は、食感が、ソフト性、口溶け、歯切れのすべての点で、比較例1b、2bより改善された。また、いずれか一方の酵素の使用では得られなかった再加熱時の口溶け、歯切れが、酵素を2種類組み合わせることによりもたらされた。
また、実施例1b〜4b、比較例5b〜7bの各食パンの評価結果の比較から、酸性プロテアーゼ及びマルトース生成アミラーゼの量には、目的の効果をより大きく得るための好ましい範囲があることが示唆された。
(試験区2:ヘミセルラーゼの添加、及び量の検討)
実施例5〜8のヘミセルラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物を用いた食パン生地、及び食パンについて評価した結果を、ベーカリー用油脂組成物100g中に配合された各酵素単位とともに、下表に示した。なお評価の際のコントロールは、実施例3のヘミセルラーゼを含有しないベーカリー用油脂組成物を用いたものとした。
Figure 2021036865
ヘミセルラーゼを添加したベーカリー用油脂組成物を用いた食パン生地(実施例5a〜8a)は、いずれも優れた生地作業性が維持された。
また、ヘミセルラーゼ用いた食パン(実施例5b〜8b)は、食感に関してすべての点でコントロールより優れていた。特にソフト性が増した。
また、実施例5b〜8bの評価結果の比較から、ヘミセルラーゼの量には、目的の効果をより大きく得るための好ましい範囲があることが示唆された。
(試験区3〜5:プロピレングリコール脂肪酸エステルの使用)
実施例9〜13(試験区3)、実施例14〜16(試験区4)、実施例17〜19(試験区5)の、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有するベーカリー用油脂組成物を用いた食パン生地、及び食パンについて評価した結果を、ベーカリー用油脂組成物100g中に配合された各酵素単位及びプロピレングリコール脂肪酸エステルの量とともに、下表に示した。なお評価の際のコントロールは、試験区3及び4では、実施例3のヘミセルラーゼを含有しないベーカリー用油脂組成物を用いたものとし、試験区5では、実施例3と同量の酵素をマーガリンに含有させたベーカリー用油脂組成物を用いたものとした。
Figure 2021036865
試験区3: プロピレングリコール脂肪酸エステルを使用したベーカリー用油脂組成物を用いた食パン生地(実施例9a〜13a)は、いずれも優れた生地作業性が維持された。また、それらの食パン生地から得られた食パン(実施例9b〜13b)は、食感に関してすべての点でコントロールより優れていた。特にソフト性が増した。脂肪酸がベヘン系であるプロピレングリコール脂肪酸エステルの使用は、脂肪酸がステアリン酸系である場合に比較して、再加熱しない場合、した場合とも、口溶けと歯切れの点で優れていた。さらに実施例9b〜13bの評価結果の比較から、プロピレングリコール脂肪酸エステルの量には、再加熱時の口溶け及び歯切れをより優れたものとするための好ましい範囲があることが示唆された。
試験区4: さらにヘミセルラーゼ及びプロピレングリコール脂肪酸エステルを使用したベーカリー用油脂組成物を用いた食パン生地(実施例14a〜16a)は、いずれも優れた生地作業性が維持された。また、それらの食パン生地から得られた食パン(実施例14b〜16b)の評価結果と、試験区2及び試験区3に関する評価結果の比較から、酸性プロテアーゼ及びマルトース生成アミラーゼとともに、ヘミセルラーゼ及びプロピレングリコール脂肪酸エステルを用いることにより、再加熱時の口溶け及び歯切れがより優れたものとなった。
試験区5: 所定の酵素をマーガリンに含有させて用いた食パン生地(実施例17a〜19a)は、いずれも優れた生地作業性が維持された。また、それらの食パン生地から得られた食パン(実施例17b〜19b)は、食感に関してすべての点でコントロールより優れていた。また、本発明のベーカリー用油脂組成物がショートニングの形態と、油中水型乳化物の形態のいずれの形態をとる場合であっても、同等の効果が得られることが示唆された。
(試験区6:マルトース生成アミラーゼと4糖生成アミラーゼとの併用の検討)
実施例20〜26の、マルトース生成アミラーゼと4糖生成アミラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物を用いた食パン生地、及び食パンについて評価した結果を、ベーカリー用油脂組成物100g中に配合された各酵素単位及びプロピレングリコール脂肪酸エステルの量とともに、下表に示した。なお評価の際のコントロールは、実施例3のヘミセルラーゼを含有しないベーカリー用油脂組成物を用いたものとした。
Figure 2021036865
マルトース生成アミラーゼと4糖生成アミラーゼとを併用することにより、マルトオリゴ糖生成アミラーゼの使用総量を減らすことができた。
また、4糖生成アミラーゼの使用量がほぼ同じである実施例21b〜23bの食パンの官能評価結果の比較、及び4糖生成アミラーゼの使用量が同じである実施例24b、25bの食パンの官能評価結果の比較から、マルトース生成アミラーゼと4糖生成アミラーゼの単位数の比には、目的の効果をより優れたものとするための好ましい範囲があることが示唆された。
(試験区7、8:異なる種類マルトース生成アミラーゼの使用)
実施例27〜32の、マルトース生成アミラーゼと4糖生成アミラーゼを含有するベーカリー用油脂組成物を用いた食パン生地、及び食パンについて評価した結果を、ベーカリー用油脂組成物100g中に配合された各酵素単位及びプロピレングリコール脂肪酸エステルの量とともに、下表に示した。
なお評価の際は、試験区7の実施例27においては、酵素無添加のショートニングを用いたものとし、実施例28〜30においては実施例27のベーカリー用油脂組成物を用いたものをコントロールとした。同様に試験区8の実施例31においては、酵素無添加のマーガリンを用いたものとし、実施例32〜34においては実施例31のベーカリー用油脂組成物を用いたものとした。
Figure 2021036865
ノバミル10000BGとノバミル3D BGとはパン生地中に含まれる糖の量に対する耐性が異なり、ノバミル3D BGのほうが高い耐性を有するが、異なる性質を有するマルトース生成アミラーゼを使用した場合であっても、遜色ない食パンを得ることができた。
また、異なる性質を有するマルトース生成アミラーゼを使用した場合であっても、酸性プロテアーゼと共に、ヘミセルラーゼ及びプロピレングリコール脂肪酸エステルを用いることにより、再加熱時の口溶け及び歯切れがより優れたものが得られることが示唆された。
さらに、異なる性質を有するマルトース生成アミラーゼを使用した場合であっても、本発明のベーカリー用油脂組成物がショートニングの形態と、油中水型乳化物の形態のいずれの形態をとっても、およそ同等の効果が得られることが示唆された。
これらの結果から、酸性プロテアーゼと組み合わせることで、マルトオリゴ糖生成アミラーゼの性質によらず、得られるベーカリー製品の食感を改良することができ、また、再加熱した際の口溶け及び歯切れを優れたものとすることができることが示唆された。

Claims (12)

  1. 下記を含有する、ベーカリー用油脂組成物。
    ・ベーカリー用油脂組成物100gあたり1000〜4000単位の酸性プロテアーゼ
    ・ベーカリー用油脂組成物100gあたり510単位以上のマルトオリゴ糖生成アミラーゼ
  2. さらにヘミセルラーゼを含有する、請求項1に記載のベーカリー用油脂組成物。
  3. マルトオリゴ糖生成アミラーゼがマルトース生成アミラーゼを含有し、マルトース生成アミラーゼの含有量が、ベーカリー用油脂組成物100gあたり700〜2500単位である、請求項1又は2に記載のベーカリー用油脂組成物。
  4. マルトオリゴ糖生成アミラーゼが、マルトース生成アミラーゼ及び4糖生成アミラーゼを含有する、請求項1又は2に記載のベーカリー用油脂組成物。
  5. マルトース生成アミラーゼの含有量が、ベーカリー油脂組成物100gあたり50〜700単位であり、4糖生成アミラーゼの含有量が、ベーカリー用油脂組成物100gあたり400〜1500単位である、請求項4に記載のベーカリー用油脂組成物。
  6. さらにプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のベーカリー用油脂組成物。
  7. ショートニングである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のベーカリー用油脂組成物。
  8. 油中水型乳化油脂組成物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のベーカリー用油脂組成物。
  9. 油脂組成物に含有される油脂の10℃におけるSFCが25〜45%であり、20℃におけるSFCが5〜25%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のベーカリー用油脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物を含有する、ベーカリー生地。
  11. 請求項10に記載のベーカリー生地の加熱処理品である、ベーカリー製品。
  12. 酸性プロテアーゼとマルトオリゴ糖生成アミラーゼを含有する、ベーカリー製品の再加熱時の食感改良剤。
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