以下、本発明の一実施形態に関して、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.ベルトユニット
1−1.全体構成
1−2.検知マークの構成
1−3.検知マークの機能
1−4.製造方法
1−5.作用および効果
2.画像形成装置(転写ユニット)
2−1.全体構成
2−2.現像ユニットの構成
2−3.動作
2−4.作用および効果
3.変形例
<1.ベルトユニット>
本発明の一実施形態のベルトユニットに関して説明する。
<1−1.全体構成>
まず、本発明の一実施形態のベルトユニットの全体構成に関して説明する。
ここで説明するベルトユニットの用途は、特に限定されない。具体的には、ベルトユニットは、例えば、後述するように、中間転写方式が採用された電子写真方式の画像形成装置などに用いられる。この場合には、ベルトユニットは、例えば、トナーを転写させるための転写ユニット40(図8参照)として用いられる。
この中間転写方式の画像形成装置に用いられるベルトユニットは、主に、紙などの媒体(最終媒体)にトナーを転写させる前に、そのトナーが一時的に転写される媒体(中間媒体または中間転写媒体)を備えている。
「最終媒体」とは、トナーが最終的に転写されることにより画像が形成される媒体であり、例えば、上記したように、紙などである。ただし、最終媒体の種類は、例えば、紙に限られず、フィルムなどでもよい。もちろん、最終媒体は、紙およびフィルムなどのうちの2種類以上を含んでいてもよい。
一方、「中間媒体」とは、トナーが最終的に紙など(最終媒体)に転写される前に、そのトナーが一時的に転写される媒体である。すなわち、転写ユニットを用いた画像の形成工程では、トナーは、ひとまず中間媒体に転写されたのち、その中間媒体から最終媒体である紙などに転写される。
図1は、ベルトユニットの平面構成を表していると共に、図2は、図1に示したベルトユニットのうちの主要部(ベルト100)の平面構成を拡大して表している。ただし、図1では、Y軸方向から見たベルトユニットの平面構成を示していると共に、図2では、Z軸方向から見たベルト100の平面構成を示している。
ベルトユニットは、例えば、図1および図2に示したように、ベルト100と、従動ローラ(アイドルローラ)101と、本発明の一実施形態の「駆動体」である駆動ローラ102とを備えている。
[ベルト]
ベルト100は、例えば、図2に示したように、検知マーク120が設けられたベルト部材110を備えている。このベルト100は、例えば、従動ローラ101および駆動ローラ102により張架された状態において、その駆動ローラ102の回転に応じて移動可能である。
ベルト部材110は、所定の方向(X軸方向)に延在する帯状の部材であり、例えば、高分子材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。高分子材料の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、複合型ゴムおよびエチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体(ETFE)などである。
ベルト部材110の使用態様は、特に限定されない。具体的には、ベルト部材110は、一端部と他端部とが互いに接続された無端状で使用されてもよい。または、ベルト部材110は、例えば、一端部および他端部のそれぞれが互いに接続されずに自由端となる有端状で使用されてもよい。ここでは、例えば、ベルト部材110は無端状であるため、ベルト100は無端状のベルトである。
ベルト部材110の厚さは、特に限定されないが、例えば、40μm〜1000μmである。
検知マーク120は、例えば、ベルト部材110の一面(表面)に設けられている。ただし、検知マーク120は、例えば、ベルト部材110の他の面(裏面)に設けられていてもよいし、表面および裏面の双方に設けられていてもよい。ここで説明するベルト部材110の「表面」とは、例えば、ベルト100が後述する画像形成装置(図8および図9参照)に搭載された際に、現像ユニット30(感光体ドラム32)に対向する側の面である。
この検知マーク120は、主に、ベルト100の変位量などを検出するために用いられる。これにより、ベルト100が連続的または断続的に移動している場合において、後述するフォトセンサなどを用いて検知マーク120を検出することにより、そのベルト100の移動量を測定することができる。この場合には、温度(熱など)および応力(張力など)に起因してベルト100が意図せずに伸縮した場合においても、フォトセンサなどを用いて検知マーク120を検出することにより、そのベルト100の移動量を補正することもできる。
検知マーク120の数は、特に限定されないため、1個でもよいし、2個以上でもよい。図2では、例えば、検知マーク120の数が2個以上である場合を示している。
ここでは、ベルト100は、例えば、ベルト部材110の長手方向(X軸方向)に移動する。これに伴い、検知マーク120の数が2個以上である場合、その2個以上の検知マーク120は、例えば、ベルト部材110の長手方向に配列されている。
互いに隣り合う2個の検知マーク120の間の距離Pは、特に限定されないが、例えば、ベルト部材110の長さ(長手方向の寸法)を等分した長さである。具体的には、距離Pは、例えば、ベルト部材110の長さを10等分した長さである。検知マーク120の数が3個以上である場合、距離Pの数は2個以上になるが、その2個以上の距離Pは、互いに同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。もちろん、2個以上の距離Pのうちの一部だけが互いに同じでもよい。
検知マーク120の平面形状は、特に限定されないが、例えば、矩形である。図2では、例えば、検知マーク120の平面形状がベルト部材110の長手方向に沿った長辺を有する長方形である場合を示している。
検知マーク120の位置は、特に限定されない。ただし、例えば、上記したように、トナーを転写させるためにベルト100が用いられる場合には、検知マーク120の位置は、トナーの転写領域と重ならない位置であることが好ましい。図2では、例えば、ベルト部材110の短手方向(Y軸方向)における一端側に検知マーク120が設けられている場合を示している。
検知マーク120の寸法は、特に限定されない。検知マーク120の寸法とは、例えば、検知マーク120の平面形状が長方形である場合、長辺の長さおよび短辺の長さである。
なお、検知マーク120の詳細な構成に関しては、後述する(図3および図4参照)。
[従動ローラ]
従動ローラ101は、Y軸方向に延在しており、そのY軸を中心として回転可能である。この従動ローラ101は、例えば、駆動ローラ102の回転に応じて回転可能である。
[駆動ローラ]
駆動ローラ102は、上記した従動ローラ101と同様に、Y軸方向に延在しており、そのY軸を中心として回転可能である。この駆動ローラ102は、例えば、モータなどの駆動力を利用して回転可能である。
<1−2.検知マークの構成>
次に、検知マーク120の構成に関して説明する。
図3は、図2に示した検知マーク120(複数の溝120A)の平面構成を拡大して表していると共に、図4は、図2に示したA−A線に沿ったベルト100の断面構成を拡大している。ここで説明する検知マーク120は、図4に示したように、窪み状のマークである。
この検知マーク120は、例えば、ベルト部材110の一部が除去されることにより、そのベルト部材110に形成されている。具体的には、例えば、ベルトユニットの製造工程において、ベルト部材110の表面にレーザが照射されたのち、所望の範囲内(検知マーク120の形成範囲内)においてレーザが走査される。これにより、ベルト部材110の一部が除去されるため、検知マーク120が形成される。
ここでは、例えば、図3に示したように、ベルト部材110の長手方向(X軸方向)に沿った方向においてレーザが繰り返して走査されることにより、そのベルト部材110の表面に複数の溝120Aが形成されている。各溝120Aは、X軸方向に延在しているため、複数の溝120Aは、そのX軸方向と交差する方向(Y軸方向)に配列されている。このため、検知マーク120は、例えば、複数の溝120Aにより形成されている。言い替えれば、検知マーク120は、例えば、複数の溝120Aの集合体である。
この検知マーク120は、本発明の一実施形態の「第1窪み部」である主窪み部121と、本発明の一実施形態の「第2窪み部」である補助窪み部122とを含んでいる。
[主窪み部]
主窪み部121は、ベルト部材110の一面に設けられている大口径の窪みである。この「大口径」とは、主窪み部121の口径(開口面積)が補助窪み部122の口径よりも相対的に大きいことを意味している。
上記したように、検知マーク120の数は、特に限定されないため、1個でもよいし、2個以上でもよい。これに伴い、主窪み部121の数は、特に限定されないため、1個でもよいし、2個以上でもよい。図2では、例えば、主窪み部121の数が2個以上である場合を示している。
検知マーク120の数が2個以上である場合、ベルト部材110は、例えば、2個以上の主窪み部121を有している。これに伴い、2個以上の主窪み部121は、例えば、検知マーク120と同様に、ベルト部材110の長手方向に配列されている。
主窪み部121は、内壁面121Mを有しており、その内壁面121Mの状態は、特に限定されない。すなわち、内壁面121Mは、平坦部だけを有していてもよいし、湾曲部だけを有していてもよいし、平坦部および湾曲部の双方を有していてもよい。中でも、内壁面121Mは、部分的または全体的に湾曲していることが好ましく、全体的に湾曲していることがより好ましい。後述するように、検知マーク120を検出するために用いられる光(検出用の光)が内壁面121Mにおいて散乱されやすくなるため、その検知マーク120が検出されやすくなるからである。図4では、例えば、内壁面121Mが全体的に湾曲している場合を示している。
主窪み部121の断面形状は、特に限定されないため、矩形でもよし、略半円でもよいし、略円でもよいし、それらのうちの2種類以上が互いに組み合わされた形状でもよいし、それ以外の形状でもよい。中でも、主窪み部121の断面形状は、略半円および略円のうちのいずれかであることが好ましい。検出用の光が内壁面121Mにおいて散乱されやすくなるため、その検知マーク120が検出されやすくなるからである。図4では、例えば、主窪み部121の断面形状が略半円である場合を示している。
主窪み部121の寸法は、特に限定されない。すなわち、主窪み部121の大きさおよび深さなどは、任意に設定可能である。「主窪み部121の大きさ」とは、例えば、上記した長辺の長さおよび短辺の長さなどである。
[補助窪み部]
補助窪み部122は、主窪み部121の内壁面121Mに設けられている小口径の窪みである。この「小口径」とは、補助窪み部122の口径(開口面積)が主助窪み部121の口径よりも相対的に小さいことを意味している。
検知マーク120が主窪み部121と共に補助窪み部122を有しているのは、その検知マーク120が主窪み部121だけを有している場合と比較して、検出用の光が検知マーク120においてより散乱されやすくなるため、その検知マーク120がより検出されやすくなるからである。この検知マーク120がより検知されやすくなる理由の詳細に関しては、後述する。
補助窪み部122の数は、特に限定されないため、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。中でも、補助窪み部122の数は、2個以上であることが好ましい。検出用の光が検知マーク120においてより散乱されやすくなるため、その検知マーク120がより検出されやすくなるからである。図4では、例えば、補助窪み部122の数が2個以上である場合を示している。
確認までに説明しておくと、図4から明らかなように、ここでは、主窪み部121の内壁面121Mに2個以上の補助窪み部122が設けられているため、当然ながら、各補助窪み部122の口径は、主窪み部121の口径よりも小さくなる。
補助窪み部122は、内壁面122Mを有しており、その補助窪み部122の内壁面122Mの状態は、特に限定されない。すなわち、内壁面122Mは、平坦部だけを有していてもよいし、湾曲部だけを有していてもよいし、平坦部および湾曲部の双方を有していてもよい。中でも、内壁面122Mは、部分的または全体的に湾曲していることが好ましく、全体的に湾曲していることがより好ましい。後述するように、検出用の光が内壁面122Mにおいて散乱されやすくなるため、その検知マーク120が検出されやすくなるからである。図4では、例えば、内壁面122Mが全体的に湾曲している場合を示している。
補助窪み部122の断面形状は、特に限定されないため、矩形でもよし、略半円でもよいし、略円でもよいし、それらのうちの2種類以上が互いに組み合わされた形状でもよいし、それ以外の形状でもよい。中でも、補助窪み部122の断面形状は、略半円および略円のうちのいずれかであることが好ましい。検出用の光が内壁面122Mにおいて散乱されやすくなるため、その検知マーク120が検出されやすくなるからである。図4では、例えば、補助窪み部122の断面形状が略半円および略円のうちのいずれかである場合を示している。
補助窪み部122の寸法は、特に限定されない。すなわち、補助窪み部122の大きさおよび深さなどは、任意に設定可能である。「補助窪み部122の大きさ」とは、例えば、補助窪み部122の口径(開口部の内径)などである。
検知マーク120の表面粗さ、すなわち補助窪み部122が設けられた主窪み部121の表面粗さは、特に限定されない。中でも、検知マーク120の表面粗さは、以下の条件を満たしていることが好ましい。
第1に、レーザ顕微鏡を用いて測定される検知マーク120の十点平均粗さRzjis(μm)を「十点平均粗さRz1」とする。この十点平均粗さRz1は、1.0μm〜5.0μmであることが好ましい。検出用の光が検知マーク120において十分に散乱されやすくなるため、その検知マーク120が十分に検出されやすくなるからである。
十点平均粗さRz1を測定するために用いられるレーザ顕微鏡は、例えば、株式会社キーエンスの超深度形状測定顕微鏡 VK8500などである。測定条件は、例えば、倍率=1000倍、測定範囲=10μm×10μmとする。
第2に、二次元表面粗さ測定機(接触式粗さ計)を用いて測定される検知マーク120の十点平均粗さRzjisを「十点平均粗さRz2」とする。この十点平均粗さRz2は、4.0μm〜8.2μmであることが好ましく、4.6μm〜8.2μmであることがより好ましい。検知マーク120の内部に十分な凹凸が形成されると共に、その検知マーク120(主窪み部121および補助窪み部122)の内部にトナーが侵入しにくくなるからでる。これにより、検出用の光が検知マーク120において著しく散乱されやすくなるため、その検知マーク120が著しく検出されやすくなる。
詳細には、十点平均粗さRz2が4.0μmよりも小さい場合には、その十点平均粗さRz2が小さすぎるため、検知マーク120の内部に十分な凹凸が形成されにくくなる。
この場合には、例えば、ベルトユニット(ベルト100)が画像形成装置(図8および図9参照)に搭載された際に、そのベルト100(ベルト部材110)の表面に付着した不要なトナーが後述するクリーニングブレード47(図8参照)により掻き取られやすくなる。これにより、検知マーク120の内部(主窪み部121および補助窪み部122)にトナーが侵入しにくくなるため、そのトナーの侵入に起因して検出用の光が検知マーク120において散乱されにくくなることは抑制される。
しかしながら、検出用の光を十分に散乱させることが可能な凹凸が検知マーク120の内部に形成されにくくなるため、その検出用の光が検知マーク120において十分に散乱されにくくなる。
一方、十点平均粗さRz2が8.2μmよりも大きい場合には、その十点平均粗さRz2が大きすぎるため、検知マーク120の内部に過剰な凹凸が形成される。
この場合には、検出用の光を十分に散乱させることが可能な凹凸が検知マーク120の内部に形成されやすくなるため、その検出用の光が検知マーク120において十分に散乱されやすくなる。
しかしながら、ベルト100の表面に付着した不要なトナーがクリーニングブレード47をすり抜けることに起因して、そのトナーがクリーニングブレード47により掻き取られにくくなるため、検知マーク120の内部にトナーが侵入しやすくなる。これにより、特に、トナーが補助窪み部122に詰まりやすくなるため、検出用の光が検知マーク120において十分に散乱されにくくなる。
これに対して、十点平均粗さRz2が4.0μm〜8.2μmである場合には、その十点平均粗さRz2が適正化されるため、検知マーク120の内部に適正な凹凸が形成されやすくなる。
この場合には、検出用の光を十分に散乱させることが可能な凹凸が検知マーク120の内部に形成されやすくなるため、その検出用の光が検知マーク120において十分に散乱されやすくなる。
しかも、ベルト100の表面に付着した不要なトナーが検知マーク120の内部に侵入しにくくなるため、そのトナーがクリーニングブレード47により掻き取られやすくなる。これにより、特に、トナーが補助窪み部122に詰まりにくくなるため、検出用の光が検知マーク120において散乱されやすくなる。
十点平均粗さRz2を測定するために用いられる二次元表面粗さ測定機は、例えば、株式会社小坂研究所製の表面粗さ・輪郭形状測定機 SEF3500などである。測定条件は、例えば、測定長さ=7mm、カットオフ種別=ガウス、測定速度=0.2mm/s、触針=R2μmとする。
ここで、後述するように、ベルト部材110の表面においてレーザを走査させながら検知マーク120(主窪み部121)を形成する場合には、十点平均粗さRz2の測定方向は、例えば、レーザの走査方向と交差する方向とする。具体的には、例えば、上記したように、X軸方向にレーザを走査させる場合には、十点平均粗さRz2の測定方向はY軸方向とする。
この場合には、例えば、レーザの照射条件のうちのいずれか1種類または2種類以上を変更することにより、所望の値となるように十点平均粗さRz2を設定可能である。このレーザの照射条件は、例えば、強度(出力)、走査速度および走査回数などである。
なお、上記した十点平均粗さRz1,Rz2のそれぞれの値は、小数点第二位の値を四捨五入した値とする。
ここでは、ベルト部材110は、例えば、その内部に複数の空孔123を有している。複数の空孔123を利用して、補助窪み部122が形成されやすくなるからである。この場合において、補助窪み部122は、例えば、主窪み部121の形成時において、その主窪み部121の内壁面121Mに複数の空孔123のうちの一部が露出したものである。なお、ベルト100の製造方法の詳細に関しては、後述する(図6参照)。
複数の空孔123の平均粒径(メジアン径D50)は、特に限定されないが、例えば、0.05μm〜5μmである。
図4に示した領域T1,T2は、ベルト100の表面領域のうち、検知マーク120の有無に応じて区別された2種類の領域を意味している。領域T1は、検知マーク120が設けられている領域(マーキングエリア)であると共に、領域T2は、検知マーク120が設けられていない領域(非マーキングエリア)である。
<1−3.検知マークの機能>
次に、検知マーク120の機能に関して説明する。
図5は、検知マーク120の検出時におけるフォトセンサの受光電圧Vの波形を表している。この受光電圧Vは、フォトセンサの受光量を電圧換算した値である。図5において、横軸は、長手方向(移動方向)におけるベルト100の表面上の位置を示していると共に、縦軸は、オシロスコープを用いて読み取られたフォトセンサの検知結果(受光電圧Vの測定結果)を示している。なお、図5に示した波形W1(実線)は、本発明の一実施形態のベルトユニット(ベルト100)に関する波形を示している。
フォトセンサを用いて検知マーク120を検出する場合には、長手方向においてベルト100を移動させながら、そのベルト100に設けられた検知マーク120を検出する。ベルト100の移動速度は、例えば、6ipsである。フォトセンサの検出頻度は、例えば、1回/1.6μsである。
ベルト100に設けられた検知マーク120は、例えば、フォトセンサなどにより検出される。フォトセンサの種類は、特に限定されないが、例えば、反射型のフォトセンサなどである。このフォトセンサは、例えば、ベルト100の表面に対して検出用の光を照射すると共に、そのベルト100の表面において反射された光を検出(受光)する。
フォトセンサを用いて、ベルト100の表面における光の反射状態を調べると、その光の反射状態は、そのベルト100の表面状態(検知マーク120の有無)に応じて変化する。
具体的には、図4に示したように、検知マーク120が設けられていない領域T2では、ベルト100の表面がほぼ平坦であるため、フォトセンサを用いて光の反射状態を調べると、光の受光量が光の照射量に対して十分に大きくなる。このため、図5に示したように、領域T2では、受光電圧Vが十分に大きくなる。
これに対して、図4に示したように、検知マーク120が設けられている領域T1では、主に、主窪み部121が存在していることに起因してベルト100の表面が窪んでいるため、フォトセンサを用いて光の反射状態を調べると、光の受光量が光の照射量に対して十分に小さくなる。このため、図5に示したように、領域T1では、受光電圧Vが十分に小さくなる。
この場合には、特に、ベルト100(検知マーク120)に光が照射されると、主窪み部121の内壁面121Mにおいて光が散乱されるだけでなく、補助窪み部122の内壁面122Mにおいても光が散乱されるため、光の受光量が著しく減少する。
また、補助窪み部122の数が多いほど、その補助窪み部122の内壁面122Mにおいて光が散乱されやすくなるため、光の受光量がより減少する。
これらのことから、図5に示したように、領域T1の受光電圧Vと領域T2の受光電圧Vと差異である受光電圧差ΔV(ΔV1)は、十分に大きくなる。この「受光電圧差ΔV1」とは、領域T1の受光量と領域T2の受光量との差を電圧換算した値である。よって、主窪み部121と共に補助窪み部122を有する検知マーク120を用いることにより、上記した十分に大きな受光電圧差ΔV1に基づいて、ベルト100の変位量などを高精度に検出することができる。
<1−4.製造方法>
次に、ベルトユニットの製造方法に関して説明する。ここでは、ベルトユニットの主要部であるベルト100の製造方法に関して言及する。
図6は、ベルト100の製造方法を説明するために、検知マーク120が未だ形成されていない状態におけるベルト部材110の断面構成を表しており、図4に対応している。ここでは、例えば、ベルト部材110が内部に複数の空孔123を有している場合を例に挙げる。
ベルト100を製造する場合には、最初に、図6に示したように、複数の空孔123を内部に有するベルト部材110を準備する。複数の空孔123は、例えば、ベルト部材110の製造時(成型時など)において製造条件などを調整することにより、発泡剤を用いずに形成されていてもよい。または、複数の空孔123は、例えば、ベルト部材110の形成材料中に発泡剤を添加することにより、その発泡剤の発泡機能を利用して形成されていてもよい。この他、複数の空孔123を形成するために、例えば、ベルト部材110の形成時において、特開2015−102601号公報に開示されている方法などを用いてもよい。
続いて、ベルト部材110の表面の一部にレーザを照射すると共に、所望の範囲内(検知マーク120の形成範囲内)においてレーザを繰り返して走査させることにより、そのベルト部材110の一部を除去する。レーザの種類は、所望の精度でベルト部材110を加工可能なレーザであれば、特に限定されない。図6に示した破線は、ベルト部材110が部分的に除去される範囲を表している。
ここで、レーザの走査方向は、特に限定されないが、中でも、上記したように、X軸方向であることが好ましい。上記したように、クリーニングブレード47を備えた画像形成装置(図8および図9参照)にベルトユニットが搭載された際に、そのクリーニングブレード47が破損しにくくなるからである。
詳細には、例えば、後述するように、クリーニングブレード47は、ベルト100の表面に付着した不要なトナーを掻き取るために、Y軸方向に延在していると共に、そのベルト100に接触(圧接)されている。
検知マーク120(複数の溝120A)を形成するために、Y軸方向においてレーザを走査させると、そのY軸方向に延在するように各溝120Aが形成される。この場合には、クリーニングブレード47の延在方向と各溝120Aの延在方向とが互いに共通しているため、ベルト100にクリーニングブレード47が圧接された際に、そのクリーニングブレード47の一部が溝120Aに引っかかりやすくなる。よって、クリーニングブレード47の一部が欠けやすくなるため、そのクリーニングブレード47が破損しやすくなる。
これに対して、検知マーク120(複数の溝120A)を形成するために、X軸方向においてレーザを走査させると、そのX軸方向に延在するように各溝120Aが形成される。この場合には、クリーニングブレード47の延在方向と各溝120Aの延在方向とが互いに異なるため、ベルト100にクリーニングブレード47が圧接された際に、そのクリーニングブレード47の一部が溝120Aに引っかかりにくくなる。よって、クリーニングブレード47の一部が欠けにくくなるため、そのクリーニングブレード47が破損しやにくくなる。
これにより、図4に示したように、ベルト部材110が部分的に除去された箇所に主窪み部121が形成される。しかも、主窪み部121が形成される際に、その主窪み部121の内壁面121Mに複数の空孔123が露出するため、補助窪み部122が形成される。この場合には、内壁面121Mに1個の空孔123が露出すると、1個の補助窪み部122が形成されると共に、内壁面121Mに2個以上の空孔123が露出すると、2個以上の補助窪み部122が形成される。このように複数の空孔123を有するベルト部材110を用いることにより、主窪み部121が形成される際に補助窪み部122も形成されるため、その補助窪み部122を容易に形成することができる。
よって、主窪み部121および補助窪み部122を有する検知マーク120が形成されるため、ベルト100が完成する。
<1−5.作用および効果>
このベルトユニットでは、ベルト100(ベルト部材110)に主窪み部121が設けられると共に、その主窪み部121の内壁面121Mに補助窪み部122が設けられることにより、検知マーク120が形成されている。この場合には、以下で説明する理由により、ベルトユニットの動作性能を向上させることができる。
図7は、比較例のベルトユニット(ベルト200)の断面構成を表しており、図4に対応している。なお、図5に示した波形W2(破線)は、比較例のベルトユニット(ベルト200)に関する波形を示している。
比較例のベルトユニットは、検知マーク120(X軸方向に延在する複数の溝120A)が設けられたベルト100に代えて、検知マーク130(X軸方向に延在する複数の溝130A)が設けられたベルト200を備えていることを除いて、本実施形態のベルトユニットと同様の構成を有している。この検知マーク130は、主窪み部121だけを有しており、補助窪み部122を有していないことを除いて、検知マーク120と同様の構成を有している。
比較例のベルトユニットでは、図7に示したように、検知マーク130に光が照射されると、その光が主窪み部121の内壁面121Mだけにおいて散乱される。この場合には、検知マーク130が設けられている領域T1では、光の受光量が光の照射量に対して十分に小さくならない。これにより、図5に示したように、受光電圧差ΔV(ΔV2)が十分に大きくならないため、フォトセンサを用いて検知マーク130を高精度に検出することが困難である。よって、ベルトユニットの動作性能を向上させることが困難である。
なお、ベルト200を製造するために、上記したレーザの照射処理を利用して主窪み部121を形成した場合には、そのレーザの照射処理時においてベルト部材110の一部が焼かれるため、その主窪み部121の内壁面121Mに炭素残留物(いわゆるすす)が付着する。この場合には、炭素残留物が光を散乱させる役割を果たすため、主窪み部121の形成後においてある程度の期間は、受光電圧差ΔV2が大きくなる可能性がある。
しかしながら、内壁面121Mに付着した炭素残留物の量は、ベルト200が繰り返して使用されると、そのベルト200と後述する感光体ドラム32(図9参照)などとの摩擦に起因して減少する。よって、最終的に炭素残留物が消失すると、受光電圧差ΔV2は著しく小さくなるため、結局のところ、上記したように、フォトセンサを用いて検知マーク130を高精度に検出することが困難になる。
これに対して、本実施形態のベルトユニット(ベルト100)では、図4に示したように、検知マーク120に光が照射されると、その光は、主窪み部121の内壁面121Mにおいて散乱されるだけでなく、補助窪み部122の内壁面122Mにおいても散乱される。この場合には、検知マーク120が設けられている領域T1では、光の受光量が光の照射量に対して十分に小さくなる。これにより、図5に示したように、受光電圧差ΔV1が十分に大きくなるため、フォトセンサを用いて検知マーク120を高精度に検出することができる。よって、検知マーク120の検出精度が向上するため、ベルトユニットの動作性能も向上する。
しかも、ベルト100では、主窪み部121および補助窪み部122により形成された複雑な凹凸構造を利用して光が十分に散乱される。この場合には、上記した炭素残留物の有無に依存せずに受光電圧差ΔV1が十分に大きくなるため、その炭素残留物の消失後においても十分な受光電圧差ΔV1が維持される。よって、炭素残留物の有無に依存せずに、フォトセンサを用いて検知マーク120を高精度に検出することができる。
このベルト100では、特に、主窪み部121の内壁面121Mが部分的または全体的に湾曲していれば、その内壁面121Mにおいて光が散乱されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。同様に、補助窪み部122の内壁面122Mが部分的または全体的に湾曲していれば、その内壁面122Mにおいて光が散乱されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。
また、ベルト部材110が内部に複数の空孔123を有していれば、そのベルト部材110の一部を除去することにより主窪み部121が形成された際に、その主窪み部121の内壁面121Mに空孔123が露出することにより補助窪み部122が形成される。すなわち、複数の空孔123を利用して、主窪み部121と一緒に補助窪み部122が形成される。よって、補助窪み部122が形成されやすくなるため、検知マーク120の検出精度を向上させながら、その検知マーク120を容易に形成することができる。
また、ベルト100が複数の検知マーク120(主窪み部121および補助窪み部122)を備えている場合において、その複数の検知マーク120(主窪み部121)がベルト部材110の長手方向に配列されていれば、複数の検知マーク120を利用してベルト100の変位量などが詳細に検出される。よって、ベルト100の変位量などをより高精度に検出することができる。
また、検知マーク120の十点平均粗さRz1が1μm〜5μmであれば、その検知マーク120において光が十分に散乱されやすくなるため、より高い効果を得ることができる。この場合には、検知マーク120の十点平均粗さRz2が4.0μm〜8.2μmであれば、その検知マーク120において光が著しく散乱されやすくなるため、さらに高い効果を得ることができる。
<2.画像形成装置(転写ユニット)>
次に、上記したベルトユニットを用いた本発明の一実施形態の画像形成装置に関して説明する。なお、本発明の一実施形態の転写ユニットは、ここで説明する画像形成装置の一部であるため、その転写ユニットに関しては、以下で併せて説明する。
ここで説明する画像形成装置は、例えば、トナーを用いて後述する媒体M(図8参照)の表面に画像を形成する装置であり、いわゆる電子写真方式のフルカラープリンタである。この画像形成装置は、特に、ベルトユニットを転写ユニット40として用いて画像が形成される中間転写方式を採用している。この媒体Mは、上記した最終媒体である。
なお、トナーの平均粒径は、特に限定されない。具体的には、トナーの体積平均粒径は、例えば、5μm〜8μm、好ましくは7μm〜8μmである。
<2−1.全体構成>
まず、画像形成装置の全体構成に関して説明する。以下では、随時、上記したベルトユニットの構成要素を引用する。
図8は、画像形成装置の平面構成を表している。この画像形成装置では、媒体Mが搬送経路R1〜R5に沿って搬送される。なお、図8では、搬送経路R1〜R5のそれぞれを破線で示している。
画像形成装置は、例えば、図8に示したように、筐体1の内部に、トレイ10と、送り出しローラ20と、現像ユニット30と、転写ユニット40と、定着ユニット50と、搬送ローラ61〜68と、搬送路切り替えガイド69,70とを備えている。
[筐体]
筐体1は、例えば、金属材料および高分子材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。筐体1には、画像が形成された媒体Mを排出するためのスタッカ部2が設けられており、その画像が形成された媒体Mは、筐体1に設けられた排出口1Hから排出される。
[トレイおよび送り出しローラ]
トレイ10は、例えば、筐体1に対して着脱可能に装着されており、媒体Mを収納している。送り出しローラ20は、例えば、Y軸方向に延在しており、そのY軸を中心として回転可能である。以降において説明する一連の構成要素のうち、名称中に「ローラ」という文言を含む構成要素は、送り出しローラ20と同様に、Y軸方向に延在していると共に、そのY軸を中心として回転可能である。
トレイ10には、例えば、複数の媒体Mが積層された状態で収納されている。このトレイ10に収納されている複数の媒体Mは、例えば、送り出しローラ20によりトレイ10から1つずつ取り出される。
トレイ10の数および送り出しローラ20の数のそれぞれは、特に限定されないため、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。図8では、例えば、トレイ10の数が1個であると共に送り出しローラ20の数が1個である場合を示している。
[現像ユニット]
現像ユニット30は、トナーを用いて現像処理を行う。具体的には、現像ユニット30は、主に、潜像(静電潜像)を形成すると共に、クーロン力を利用して静電潜像にトナーを付着させる。
現像ユニット30の数は、特に限定されないため、1個だけでもよいし、2個以上でもよい。ここでは、画像形成装置は、例えば、5個の現像ユニット30(30W,30K,30C,30M,30Y)を備えている。
現像ユニット30W,30K,30C,30M,30Yのそれぞれは、例えば、筐体1に対して着脱可能に装着されていると共に、後述する中間転写ベルト41の移動経路に沿って配列されている。ここでは、現像ユニット30W,30K,30C,30M,30Yは、例えば、中間転写ベルト41の移動方向(矢印F5)において、上流側から下流側に向かってこの順に配置されている。
現像ユニット30W,30K,30C,30M,30Yのそれぞれは、例えば、トナーカートリッジに収納されているトナーの種類(色)が異なることを除いて、互いに同様の構成を有している。現像ユニット30Wのトナーカートリッジには、例えば、ホワイトトナーが収納されている。現像ユニット30Kのトナーカートリッジには、例えば、ブラックトナーが収納されている。現像ユニット30Cのトナーカートリッジには、例えば、シアントナーが収納されている。現像ユニット30Mのトナーカートリッジには、例えば、マゼンタトナーが収納されている。現像ユニット30Yのトナーカートリッジには、例えば、イエロートナーが収納されている。
なお、現像ユニット30(30W,30K,30C,30M,30Y)の詳細な構成に関しては、後述する(図9参照)。
[転写ユニット]
転写ユニット40は、現像ユニット30により現像処理されたトナーを用いて転写処理を行う。具体的には、転写ユニット40は、主に、現像ユニット30により静電潜像に付着されたトナーを媒体Mに転写させる。
この転写ユニット40は、上記した本発明の一実施形態のベルトユニットと同様の構成を有するベルトユニット400と、本発明の一実施形態の「クリーニング部材」であるクリーニングブレード47とを備えている。
このベルトユニット400は、ベルト100に対応する中間転写ベルト41と、従動ローラ101に対応する従動ローラ42と、駆動ローラ102に対応する駆動ローラ43とを含んでいる。
ただし、転写ユニット40は、例えば、さらに、他の構成要素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。ここでは、転写ユニット40は、例えば、さらに、バックアップローラ44と、1次転写ローラ45と、2次転写ローラ46と、フォトセンサ48とを含んでいる。
中間転写ベルト41は、媒体Mにトナーが転写される前に、そのトナーが一時的に転写される媒体であり、上記した中間媒体である。この中間転写ベルト41は、例えば、従動ローラ42、駆動ローラ43およびバックアップローラ44のそれぞれにより張架された状態において、その駆動ローラ43の回転に応じて移動可能である。
駆動ローラ43は、例えば、モータなどの駆動力を利用して回転可能である。従動ローラ42およびバックアップローラ44のそれぞれは、例えば、駆動ローラ43の回転に応じて回転可能である。
1次転写ローラ45は、静電潜像に付着されたトナーを中間転写ベルト41に転写(1次転写)させる。この1次転写ローラ45は、中間転写ベルト41を介して現像ユニット30(後述する感光体ドラム32)に圧接されている。なお、1次転写ローラ45は、中間転写ベルト41の移動に応じて回転可能である。
1次転写ローラ45の数は、例えば、現像ユニット30の数に応じて任意に設定可能である。ここでは、転写ユニット40は、例えば、上記した5個の現像ユニット30(30W,30K,30C,30M,30Y)に対応して、5個の1次転写ローラ45(45W,45K,45C,45M,45Y)を含んでいる。また、転写ユニット40は、1個のバックアップローラ44に対応して、1個の2次転写ローラ46を含んでいる。
2次転写ローラ46は、中間転写ベルト41に転写されたトナーを媒体Mに転写(2次転写)させる。この2次転写ローラ46は、バックアップローラ44に圧接されており、例えば、金属製の芯材と、その芯材の外周面を被覆する発泡ゴム層などの弾性層とを含んでいる。なお、2次転写ローラ46は、中間転写ベルト41の移動に応じて回転可能である。
クリーニングブレード47は、Y軸方向に延在していると共に、中間転写ベルト41に接触(圧接)されている。このクリーニングブレード47は、中間転写ベルト41の表面に残留した不要なトナーなどを掻き取る。
フォトセンサ48は、上記したように、光の反射状態の変化に基づいて、中間転写ベルト41に設けられている検知マーク120を検出する。このフォトセンサ48は、例えば、上記したように、反射型のフォトセンサなどである。フォトセンサ48の設置位置は、中間転写ベルト41から離間されながら、その中間転写ベルト41に対向することが可能な位置であれば、特に限定されない。図8では、例えば、従動ローラ42とバックアップローラ44との間にフォトセンサ48が配置されている場合を示している。
[定着ユニット]
定着ユニット50は、転写ユニット40により媒体Mに転写されたトナーを用いて定着処理を行う。具体的には、定着ユニット50は、主に、転写ユニット40により媒体Mに転写されたトナーを加熱しながら加圧することにより、そのトナーを媒体Mに定着させる。
この定着ユニット50は、例えば、加熱ローラ51と、加圧ローラ52とを含んでいる。
加熱ローラ51は、トナーを加熱する。この加熱ローラ51は、例えば、中空円筒状の金属芯と、その金属芯の表面を被覆する樹脂コートとを含んでいる。金属芯は、例えば、アルミニウムなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。樹脂コートは、例えば、例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
加熱ローラ51(金属芯)の内部には、例えば、ヒータが設置されており、そのヒータは、例えば、ハロゲンランプなどである。加熱ローラ51の近傍には、例えば、その加熱ローラ51から離間されるように、サーミスタが配置されている。このサーミスタは、例えば、加熱ローラ51の表面温度を測定する。
加圧ローラ52は、加熱ローラ51に圧接されており、トナーを加圧する。この加圧ローラ52は、例えば、金属棒などである。金属棒は、例えば、アルミニウムなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
[搬送ローラ]
搬送ローラ61〜68のそれぞれは、媒体Mの搬送経路R1〜R5を介して互いに対向するように配置された一対のローラを含んでおり、送り出しローラ20により取り出された媒体Mを搬送させる。
媒体Mの片面だけに画像が形成される場合には、その媒体Mは、例えば、搬送ローラ61〜64により搬送経路R1,R2に沿って搬送される。また、媒体Mの両面に画像が形成される場合には、その媒体Mは、例えば、搬送ローラ61〜68により搬送経路R1〜R5に沿って搬送される。
[搬送路切り替えガイド]
搬送路切り替えガイド69,70は、媒体Mに形成される画像の様式(媒体Mの片面だけに画像が形成されるか、または媒体Mの両面に画像が形成されるか)などの条件に応じて、その媒体Mの搬送方向を切り替える。
[他の構成要素]
なお、画像形成装置は、上記した一連の構成要素と共に、他の構成要素のうちのいずれか1種類または2種類以上を備えていてもよい。
他の構成要素の種類は、特に限定されないが、例えば、画像形成装置全体を制御する制御部、後述する感光体ドラム32などを回転させるモータ、後述する帯電ローラ33などに電圧を印加する電源および各種情報を格納するメモリなどである。この制御部は、例えば、上記したように、検知マーク120を利用して中間転写ベルト41の移動量などを検出することにより、必要に応じて中間転写ベルト41の移動量などを補正してもよい。
<2−2.現像ユニットの構成>
次に、現像ユニット30の構成に関して説明する。図9は、現像ユニット30(30W,30K,30C,30M,30Y)の平面構成を模式的に表している。
現像ユニット30W,30K,30C,30M,30Yのそれぞれは、例えば、トナーカートリッジ39に収納されているトナーの種類(色)が異なることを除いて、互いに同様の構成を有している。
現像ユニット30W,30K,30C,30M,30Yのそれぞれは、例えば、図9に示したように、感光体ドラム32と、帯電ローラ33と、現像ローラ34と、供給ローラ35と、現像ブレード36と、クリーニングブレード37と、光源38と、トナーカートリッジ39とを備えている。ただし、現像ユニット30W,30K,30C,30M,30Yのそれぞれは、例えば、光源38およびトナーカートリッジ39を備えていなくてもよい。この場合には、例えば、現像ユニット30W,30K,30C,30M,30Yのそれぞれに光源38およびトナーカートリッジ39が外付けされる。
感光体ドラム32、帯電ローラ33、現像ローラ34、供給ローラ35、現像ブレード36およびクリーニングブレード37は、例えば、筐体31の内部に収納されている。光源38は、例えば、筐体31の外部に配置されている。トナーカートリッジ39は、例えば、筐体31に対して着脱可能に取り付けられている。
感光体ドラム32は、例えば、円筒状の導電性支持体と、その導電性支持体の外周面を被覆する光導電層とを含む有機系感光体であり、モータなどの駆動源を介して回転可能である。導電性支持体は、例えば、アルミニウムなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含む金属パイプである。光導電層は、例えば、電荷発生層および電荷輸送層などを含む積層体である。感光体ドラム32の一部は、筐体31に設けられた開口部31K1から露出している。
帯電ローラ33は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性エピクロロヒドリンゴム層とを含んでいる。この帯電ローラ33は、感光体ドラム32を帯電させるために、その感光体ドラム32に圧接されている。
現像ローラ34は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性ウレタンゴム層とを含んでいる。この現像ローラ34は、供給ローラ35から供給されるトナーを担持すると共に、感光体ドラム32の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させる。
供給ローラ35は、例えば、金属シャフトと、その金属シャフトの外周面を被覆する半導電性発泡シリコンスポンジ層とを含んでおり、いわゆるスポンジローラである。この供給ローラ35は、現像ローラ34に摺接されながら、感光体ドラム32の表面にトナーを供給する。
現像ブレード36は、現像ローラ34の表面に供給されたトナーの厚さを規制する。この現像ブレード36は、例えば、現像ローラ34から所定の距離を隔てた位置に配置されており、その現像ローラ34と現像ブレード36との間の距離(間隔)に基づいてトナーの厚さが制御される。また、現像ブレード36は、例えば、ステンレスなどの金属材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
クリーニングブレード37は、感光体ドラム32の表面に残留した不要なトナーなどを掻き取る板状の弾性部材である。このクリーニングブレード37は、例えば、感光体ドラム32の延在方向と略平行な方向に延在しており、その感光体ドラム32に圧接されている。また、クリーニングブレード37は、例えば、ウレタンゴムなどの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
光源38は、筐体31に設けられた開口部31K2を通じて感光体ドラム32の表面を露光することにより、その感光体ドラム32の表面に静電潜像を形成する露光装置である。この光源38は、例えば、発光ダイオード(LED)ヘッドであり、LED素子およびレンズアレイなどを含んでいる。LED素子およびレンズアレイは、そのLED素子から出力された光(照射光)が感光体ドラム32の表面において結像するように配置されている。
トナーカートリッジ39は、例えば、トナーを収納している。トナーカートリッジ39に収納されているトナーの種類(色)は、例えば、以下の通りである。現像ユニット30Wのトナーカートリッジ39は、例えば、ホワイトトナーを収納している。現像ユニット30Kのトナーカートリッジ39は、例えば、ブラックトナーを収納している。現像ユニット30Cのトナーカートリッジ39は、例えば、シアントナーを収納している。現像ユニット30Mのトナーカートリッジ39は、例えば、マゼンタトナーを収納している。現像ユニット30Yのトナーカートリッジ39は、例えば、イエロートナーを収納している。
<2−3.動作>
次に、画像形成装置の動作に関して説明する。
媒体Mの表面に画像を形成する場合には、画像形成装置は、例えば、以下で説明するように、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理をこの順に行うと共に、必要に応じてクリーニング処理を行う。
[現像処理]
最初に、トレイ10に収納された媒体Mは、送り出しローラ20により取り出される。送り出しローラ20により取り出された媒体Mは、搬送ローラ61,62により搬送経路R1に沿って矢印F1の方向に搬送される。
続いて、現像処理では、現像ユニット30Wにおいて、感光体ドラム32が回転すると、帯電ローラ33が回転しながら感光体ドラム32の表面に直流電圧を印加する。これにより、感光体ドラム32の表面が均一に帯電する。
続いて、外部から画像形成装置に供給される画像データに基づいて、光源38が感光体ドラム32の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム32の表面では、光の照射部分において表面電位が減衰(光減衰)するため、その感光体ドラム32の表面に静電潜像が形成される。
一方、現像ユニット30Wでは、トナーカートリッジ39に収納されているトナー(ホワイトトナー)が供給ローラ35に向けて放出される。
続いて、供給ローラ35に電圧が印加されたのち、その供給ローラ35が回転する。これにより、供給ローラ35の表面にトナーが供給される。
続いて、現像ローラ34に電圧が印加されたのち、その現像ローラ34が供給ローラ35に圧接されながら回転する。これにより、供給ローラ35の表面に供給されたトナーが現像ローラ34の表面に吸着すると共に、そのトナーが現像ローラ34の回転を利用して搬送される。この場合には、現像ローラ34の表面に吸着されているトナーの一部が現像ブレード36により除去されるため、その現像ローラ34の表面に吸着されたトナーの厚さが均一化される。
続いて、現像ローラ34に圧接されながら感光体ドラム32が回転したのち、その現像ローラ34の表面に吸着されていたトナーが感光体ドラム32の表面に移行する。これにより、感光体ドラム32の表面(静電潜像)にトナーが付着する。
[1次転写処理]
続いて、転写ユニット40において、駆動ローラ43が回転すると、その駆動ローラ43の回転に応じて従動ローラ42およびバックアップローラ44が回転する。これにより、中間転写ベルト41が矢印F5の方向に移動する。
1次転写処理では、1次転写ローラ45Wに電圧が印加されている。この1次転写ローラ45Wは、中間転写ベルト41を介して感光体ドラム32に圧接されているため、上記した現像処理において感光体ドラム32の表面(静電潜像)に付着されたトナーは、中間転写ベルト41の表面に転写される。
こののち、トナーが転写された中間転写ベルト41は、引き続き矢印F5の方向に移動する。これにより、現像ユニット30K,30C,30M,30Yおよび1次転写ローラ45K,45C,45M,45Yにおいて、上記した現像ユニット30Wおよび1次転写ローラ45Wと同様の手順により現像処理および1次転写処理が行われる。よって、中間転写ベルト41の表面にブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナーおよびイエロートナーが転写される。
具体的には、現像ユニット30Kおよび1次転写ローラ45Kにより、中間転写ベルト41の表面にブラックトナーが転写される。現像ユニット30Cおよび1次転写ローラ45Cにより、中間転写ベルト41の表面にシアントナーが転写される。続いて、現像ユニット30Mおよび1次転写ローラ45Mにより、中間転写ベルト41の表面にマゼンタトナーが転写される。続いて、現像ユニット30Yおよび1次転写ローラ45Yにより、中間転写ベルト41の表面にイエロートナーが転写される。
もちろん、実際に現像ユニット30W,30K,30C,30M,30Yおよび1次転写ローラ45W,45K,45C,45M,45Yにより現像処理および1次転写処理が行われるかどうかは、画像を形成するために必要な色(色の組み合わせ)に応じて決定される。
[2次転写処理]
続いて、搬送経路R1に沿って搬送される媒体Mは、バックアップローラ44と2次転写ローラ46との間を通過する。
2次転写処理では、2次転写ローラ46に電圧が印加されている。この2次転写ローラ46は、媒体Mを介してバックアップローラ44に圧接されるため、上記した1次転写処理において中間転写ベルト41に転写されたトナーは、媒体Mに転写される。
[定着処理]
続いて、2次転写処理において媒体Mにトナーが転写されたのち、その媒体Mは、引き続き搬送経路R1に沿って矢印F1の方向に搬送されるため、定着ユニット50に投入される。
定着処理では、加熱ローラ51の表面温度が所定の温度となるように制御されている。加熱ローラ51に圧接されながら加圧ローラ52が回転すると、その加熱ローラ51と加圧ローラ52との間を通過するように媒体Mが搬送される。
これにより、媒体Mの表面に転写されたトナーが加熱されるため、そのトナーが溶融する。しかも、溶融状態であるトナーが媒体Mに圧接されるため、そのトナーが媒体Mに対して強固に付着する。
よって、外部から画像形成装置に供給された画像データに基づいて、媒体Mの表面のうちの特定の領域にトナーが定着するため、画像が形成される。
画像が形成された媒体Mは、搬送経路R2に沿って搬送ローラ63,64により矢印F2の方向に搬送される。これにより、媒体Mは、排出口1Hからスタッカ部2に排出される。
なお、媒体Mの搬送手順は、その媒体Mの表面に形成される画像の様式に応じて変更される。
例えば、媒体Mの両面に画像が形成される場合には、定着ユニット50を通過した媒体Mは、搬送経路R3〜R5に沿って搬送ローラ65〜68により矢印F3,F4の方向に搬送されたのち、搬送経路R1に沿って搬送ローラ61,62により再び矢印F1の方向に搬送される。この場合において、媒体Mが搬送される方向は、搬送路切り替えガイド69,70により制御される。これにより、媒体Mの裏面(未だ画像が形成されていない面)において、現像処理、1次転写処理、2次転写処理および定着処理が行われる。
[クリーニング処理]
(感光体ドラムのクリーニング処理)
現像ユニット30W,30K,30C,30M,30Yのそれぞれでは、感光体ドラム32の表面に不要なトナーが残留する場合がある。この不要なトナーは、例えば、1次転写処理において用いられたトナーの一部であり、中間転写ベルト41に転写されずに感光体ドラム32の表面に残留したトナーなどである。
そこで、クリーニングブレード37に圧接されている状態において感光体ドラム32が回転するため、その感光体ドラム32の表面に残留しているトナーがクリーニングブレード37により掻き取られる。よって、感光体ドラム32の表面から不要なトナーが除去される。
(中間転写ベルトのクリーニング処理)
また、転写ユニット40では、1次転写処理において中間転写ベルト41の表面に移行したトナーの一部が2次転写処理において媒体Mの表面に移行されずに、その中間転写ベルト41の表面に残留する場合がある。
そこで、中間転写ベルト41が矢印F5の方向に移動する際に、その中間転写ベルト41の表面に残留したトナーがクリーニングブレード47により掻き取られる。よって、中間転写ベルト41の表面から不要なトナーが除去される。
<2−4.作用および効果>
この画像形成装置では、転写ユニット40が上記した本発明の一実施形態のベルトユニットを備えているため、そのベルトユニットに関して説明した場合と同様の理由により、転写ユニット40の動作性能が向上する。よって、画像形成装置の動作性能を向上させることができる。
特に、上記したように、検知マーク120(主窪み部121および補助窪み部122)の内部に不要なトナーが侵入しにくくなるため、中間転写ベルト41の表面にトナーが残留しにくくなる。よって、中間転写ベルト41の表面に残留したトナーが媒体Mの表面に転写されにくくなるため、その媒体Mが汚れることを抑制することができる。この場合には、もちろん、媒体Mの表面に形成された画像が汚れることも抑制することができる。
なお、画像形成装置に関する他の作用および効果は、上記したベルトユニットに関する作用および効果と同様である。
<3.変形例>
図1〜図6に示したベルトユニットの構成および製造方法は、適宜、変更可能である。
[変形例1]
具体的には、例えば、図4に対応する図10に示したように、ベルト部材110は、内部に複数の空孔123を有していなくてもよい。この場合においても、主窪み部121および補助窪み部122を有する検知マーク120を利用することにより、同様の効果を得ることができる。
[変形例2]
また、例えば、図4に対応する図11に示したように、ベルト部材110は、内部層111と、その内部層111の表面を被覆する表面層112とを含んでいてもよい。
内部層111は、図4に示したベルト部材110に相当する層であり、例えば、上記したように、ポリイミドなどの高分子材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
表面層112は、主に、ベルト100の表面の平滑性などを向上させる役割を果たす層であり、いわゆるスキン層である。この表面層112は、例えば、内部層111の形成材料と同様の材料を含んでいてもよいし、その内部層111の形成材料とは異なる材料を含んでいてもよい。上記したように、内部層111の役割と表面層112の役割とは互いに異なっているため、例えば、内部層111は内部に複数の空孔123を有しているが、表面層112は内部に複数の空孔123を有していなくてもよい。なお、複数の空孔123を有していない表面層112を形成するために、例えば、ベルト部材110の形成時において、特開2015−102601号公報に開示されている方法などを用いてもよい。
これに伴い、ベルト部材110が表面層112を含んでいる場合には、複数の空孔123を利用して補助窪み部122を容易に形成するために、図11に示したように、主窪み部121は、表面層112を貫通すると共に内部層111の一部を除去するように形成されていることが好ましい。
この場合においても、主窪み部121および補助窪み部122を有する検知マーク120が形成されるため、図4に示した場合と同様の効果を得ることができる。
[変形例3]
もちろん、例えば、図10および図11のそれぞれに対応する図12に示したように、ベルト部材110が内部層111および表面層112を含んでいる場合において、そのベルト部材110が内部に複数の空孔123を有していなくてもよい。この場合においても、表面層112を貫通すると共に内部層111の一部を除去するように主窪み部121を形成することにより、主窪み部121および補助窪み部122を有する検知マーク120を利用可能になるため、同様の効果を得ることができる。
[変形例4]
図4および図6に示したように、ベルト部材110の一部を除去することにより主窪み部121を形成するために、レーザの照射処理を用いたが、他の処理を用いてもよい。
具体的には、他の処理は、例えば、溶解処理およびエッチング処理などである。すなわち、ベルト部材110が溶媒に対する溶解性を有している場合には、その溶媒を用いてベルト部材110の一部を溶解させることにより、そのベルト部材110の一部を除去してもよい。溶媒の種類は、特に限定されないが、例えば、有機溶剤などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。なお、エッチング処理の種類は、特に限定されない。
この場合においても、主窪み部121および補助窪み部122を有する検知マーク120が形成されるため、同様の効果を得ることができる。もちろん、ベルト部材110の一部を除去するために、上記した他の処理のうちの2種類以上を併用してもよい。また、補助窪み部122を形成するために、レーザの照射処理および他の処理のうちのいずれか1種類または2種類以上を用いてもよい。
ここで説明した他の処理は、例えば、図4に示した検知マーク120を形成する場合に限られず、図10〜図12のそれぞれに示した検知マーク120を形成する場合に適用されてもよい。
[変形例5]
なお、ベルト部材110が表面層112を含んでいる場合(図11および図12)において、上記したレーザの照射処理および他の処理を用いたのでは表面層112を除去しにくい場合には、その表面層112を除去するために、さらに他の処理を用いてもよい。
具体的には、さらに他の処理は、例えば、研磨処理などである。この場合には、研磨処理などを用いて表面層112を除去したのち、レーザの照射処理などを用いて内部層111の一部を除去してもよい。この場合においても、表面層112を貫通すると共に内部層111の一部を除去するように主窪み部121が形成されるため、同様の効果を得ることができる。
本発明の実施例に関して、詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.ベルトの製造
2.ベルトの評価
3.考察
<1.ベルトの製造>
以下の手順により、ベルトを製造した。
(実験例1)
主窪み部および補助窪み部を有する検知マークを形成することにより、ベルトを製造した。
ベルトを製造する場合には、最初に、検知マークが未だ形成されていない状態のベルト部材を準備した。ベルト部材としては、住友理工株式会社製の発泡ポリアミドイミド(厚さ=83μm)を用いた。このベルト部材は、内部層(ポリアミドイミド)および表面層(ポリアミドイミド,厚さ=2μm〜4μm)を含んでいると共に、その内部層の内部に複数の空孔を有している。複数の空孔の平均粒径(メジアン径D50)は、0.1μm〜2μmである。
続いて、ベルト部材の表面の一部にレーザを照射したのち、そのレーザを繰り返して走査させることにより、そのベルト部材の一部を除去した。この場合には、レーザの走査方向を図6中のX軸方向とした。これ以外のレーザの出力などの照射条件に関しては、最終的に形成される主窪み部の深さ(最大深さ)が所望の値となるように適宜調整した。
これにより、ベルト部材が部分的に除去された箇所に主窪み部が形成されたと共に、その主窪み部の内壁面に複数の補助窪み部が形成されたため、その主窪み部および補助窪み部を有する検知マークが形成された。検知マークの平面形状は、長方形とした。検知マークの寸法は、長辺の長さ=7mm、短辺の長さ=6mm、深さ(最大深さ)=7mmとした。
よって、検知マークを有するベルトが完成した。この場合には、走査型顕微鏡(SEM)を用いて、検知マークが形成されている領域におけるベルトの表面および断面を観察したところ、図4に示したように、主窪み部の内壁面に設けられている複数の補助窪みが観察された。この「表面」とは、図4中においてZ軸方向から見たベルトの表面であると共に、「断面」とは図4に示したXZ面に沿ったベルトの断面である。
(実験例2)
比較のために、主窪み部だけを有する検知マークを形成することにより、ベルトを製造した。この場合には、実験例1と同様に、走査型顕微鏡を用いてベルトの表面および断面を観察したところ、図7に示したように、主窪み部だけが観察され、複数の補助窪みは観察されなかった。
ベルトを製造する場合には、検知マークが未だ形成されていない状態のベルト部材として、グンゼ株式会社製のポリアミドイミド(厚さ=60μm)を用いたことを除いて、実験例1と同様の手順を経た。このベルト部材は、内部層(ポリアミドイミド)および表面層(ポリアミドイミド,厚さ=2μm〜4μm)を含んでいるが、その内部層の内部に複数の空孔を有していない。
(実験例3〜21)
検知マーク(主窪み部)の形成工程においてレーザの強度を変更することにより、その検知マークの表面粗さを変更したことを除いて、実験例1と同様の手順により、ベルトを製造した。
<2.ベルトの評価>
実験例1,2に関して、検知マークの物性として表面粗さおよび検出性能を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
表面粗さを調べる場合には、上記した手順により、検知マークの十点平均粗さRz1,Rz2(μm)を測定した。なお、十点平均粗さRz2は、主窪み部と共に補助窪み部を有する検知マークに関して定義されるパラメータであるため、表1では、実験例1に関する十点平均粗さRz2だけを示している。
検出性能を調べる場合には、フォトセンサおよびオシロスコープを用いて受光電圧差ΔV(V)を算出した。この場合には、ベルトの表面からの受光電圧を2.8Vとなるように設定した。また、検知マークの表面にトナーをまぶしたのち、その検知マークの表面を強く擦ることにより、レーザの照射処理に起因して発生した炭素残留物を除去した。
また、実験例1,3〜21に関して、検知マークの物性(表面粗さおよび検出性能)と共に、転写ユニット(ベルトユニット)を搭載した画像形成装置の性能として動作性能を調べたところ、表2に示した結果が得られた。
動作性能を調べる場合には、マゼンタトナー(体積平均粒径=7μm)を搭載した画像形成装置を用いて、媒体の表面にマゼンタのベタ画像(印字率=100%)を形成する工程を100回繰り返した。こののち、検知マークの内部にトナーが侵入しているか否かを目視で確認すると共に、媒体の表面(本来の画像の形成範囲の範囲外)に不要なトナーが付着しているか否かを目視で確認した。この場合には、画像形成装置として、株式会社沖データ製のカラープリンタ MICROLINE VINCI C941dnを用いると共に、媒体として、株式会社沖データ製のA4プリンタ用紙(エクセレントホワイト,サイズ=297mm×210mm)を用いた。
表2に示した「トナー侵入」の欄では、検知マークの内部にトナーが侵入していた場合を「発生」と示していると共に、検知マークの内部にトナーが侵入していなかった場合を「未発生」と示している。また、表2に示した「画像汚れ」の欄では、媒体の表面に不要なトナーが付着したため、画像の汚れが発生していた場合を「発生」と示していると共に、媒体の表面に不要なトナーが付着しなかったため、画像の汚れが発生していなかった場合を「未発生」と示している。
<3.考察>
表1から明らかなように、検知マークが主窪み部と共に補助窪み部を有している場合(実験例1)には、検知マークが主窪み部だけを有している場合(実験例2)と比較して、検知マークの物性が向上した。
具体的には、検知マークが主窪み部と共に補助窪み部を有している場合には、検知マークが主窪み部だけを有している場合と比較して、十点平均粗さRz1が著しく増加した。この結果は、主窪み部と共に補助窪み部を有する検知マークに光が照射されると、その光が著しく散乱されやすくなることを表している。
これに伴い、検知マークが主窪み部と共に補助窪み部を有している場合には、検知マークが主窪み部だけを有している場合と比較して、受光電圧差ΔVが著しく増加した。この結果は、検知マークが主窪み部と共に補助窪み部を有していると、その検知マークが設けられている領域における光の反射量と検知マークが設けられていない領域における光の反射量との差異が著しく大きくなるため、その光の反射量の差異を利用して検知マークが検出されやすくなったことを表している。
また、表2から明らかなように、主窪み部と共に補助窪み部を有する検知マークを用いた場合(実験例1,3〜21)には、その検知マークの物性(受光電圧差ΔV)および画像形成装置(転写ユニット)の動作性能(トナー侵入および画像汚れ)は、その検知マークの表面粗さ(十点平均粗さRz2)に応じて大きく変動した。
具体的には、受光電圧差ΔVは、十点平均粗さRz2が増加するにしたがって次第に増加する傾向を示したと共に、トナーの侵入に起因する画像の汚れは、十点平均粗さRz2が増加するにしたがって次第に発生しやすくなる傾向を示した。この場合には、十点平均粗さRz2が4.0μm〜8.2μmであると(実験例1,6〜18)、1.00V以上の高い受光電圧差ΔVが得られたと共に、トナーの侵入に起因する画像の汚れが発生しなかった。特に、十点平均粗さRz2が4.6μm〜8.2μmであると(実験例1,9〜18)、トナーの侵入に起因する画像の汚れが発生することを抑制しながら、受光電圧差ΔVがより増加した。
これらのことから、検知マークが主窪み部と共に補助窪み部を有していると、その検知マークの物性が改善された。よって、検知マークの検出精度が向上したため、ベルトユニットの動作性能が向上した。
以上、一実施形態を挙げながら本発明を説明したが、本発明は上記した一実施形態において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。
具体的には、例えば、本発明の一実施形態のベルトユニットの用途は、特に限定されない。ベルトユニットの用途は、上記した転写ユニットに限られず、加熱用のベルトを用いた定着ユニットでもよいし、それ以外でもよい。
また、例えば、本発明の一実施形態の画像形成装置は、プリンタに限られず、複写機、ファクシミリおよび複合機などでもよい。