JP6865294B2 - 取付部品が取り付けられた竿体を有する釣竿 - Google Patents

取付部品が取り付けられた竿体を有する釣竿 Download PDF

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Description

本発明は、取付部品が取り付けられた竿体を有する釣竿に関する。
竿体に釣糸ガイドやリールシート等の取付部品が取り付けられた釣竿が知られている。従来、取付部品は、糸や樹脂シートにより竿体に取りつけられている。
糸により竿体に取りつけられた取付部品を有する釣竿は、例えば、特開2008−263841号公報(特許文献1)及び特開2004−194563号公報(特許文献2)に開示されている。
樹脂シートにより竿体に取りつけられた取付部品を有する釣竿は、例えば、実開昭60−156963号公報(特許文献3)及び実開平2−26474号公報(特許文献4)に開示されている。これらの特許文献では、樹脂シートとして繊維強化樹脂製のシートが用いられている。
取付部品を取り付けるための糸や樹脂シートは、装飾性や耐候性を向上させるために、合成樹脂製のコーティング剤によりコーティングされることがある。特開2003−116417号公報号に記載されているように、合成樹脂製のコーティングにはクラックが発生しやすいという課題がある。
特開2008−263841号公報 特開2004−194563号公報 実開昭60−156963号公報 実開平2−026474号公報 特開2003−116417号公報
本発明の目的の一つは、竿体への取付部品の取り付けのために用いられる糸やシートを被覆するコーティング層へのクラックの発生を抑止することである。また、本発明の他の目的の一つは、コーティング層が竿体から意図せず剥離することを抑止し、かかる剥離に起因するコーティング層へのクラックの発生を抑止することである。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
本発明の一実施形態に係る釣竿は、竿体と、取付部を有し、前記竿体の外周面に前記取付部を介して取り付けられる取付部品と、前記取付部と前記竿体を共に囲むように第1シートを巻回して形成された第1の固定層と、前記第1シートの外側に繊維強化樹脂製の第2シートを巻回して形成された第2の固定層と、前記第2の固定層の外側に形成された樹脂製のコーティング層と、を備える。当該実施形態において、前記コーティング層は、JIS K 7161:2014に準拠して測定された引張伸び率が40%以上であり、降伏点のひずみが7%以上である樹脂により、1.3mm以下の厚さを有するように形成されている。
釣竿の使用時には、竿体が大きく撓むことがある。取付部品は、一般に、竿体の撓みには完全には追従できないので、竿体が撓んだときにはコーティング層に応力がかかる。また、コーティング層は、それ自体が高い硬度を有しているので、それ自体も竿体の撓みに完全には追従することができず、竿体が撓んだときには、それ自体によってコーティング層に応力がかかる。それらの応力は、コーティング層にクラックを生じさせる一因となる。さらに、本発明者らは、それらの応力によってコーティング層と竿体とが剥離し、その剥離した箇所で吸湿等が生じることによりコーティング層の物性が変化し、その物性の変化もクラックの一因となることを見いだした。
上記実施形態によれば、コーティング層は、引張伸び率及び降伏点のひずみが所定範囲内である樹脂により、である所定値以下の厚さを有するように形成されているため、取付部品及びコーティング層自体によって生じる応力にコーティング層が耐えられるようになるばかりでなく、さらに、コーティング層の剥離に起因したコーティング層の物性の変性を抑制し、ひいては、当該コーティング層へのクラックの発生を抑制することができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る釣竿は、これらの二重のメカニズム及びそれらの相乗効果により、コーティング層におけるクラックの発生を抑止することができる。
本発明の一実施形態においては、前記コーティング層のJIS K 7161:2014に準拠して測定された引張弾性率が13MPa以上420MPa以下である。
上記実施形態によれば、コーティング層の引張弾性率が13MPa以上420MPa以下であるため、竿体の撓みによりコーティング層へ応力が作用しても、当該コーティング層へのクラックの発生を抑制することができる。
本発明の一実施形態においては、前記コーティング層と前記第2の固定層とのJIS K 6849:1994に準拠して測定された接着強度が88N/cm2以上である。
上記実施形態によれば、前記コーティング層と前記第2の固定層との接着強度が88N/cm以上であるため、竿体の撓みによりコーティング層へ応力が作用しても、当該コーティング層の前記第2の固定層からの剥離を抑制することができる。この剥離は、コーティング層の第2の固定層からの剥離は、付近当該コーティング層におけるクラック発生の原因となり得る。よって、コーティング層の第2の固定層からの剥離を防止することにより、当該コーティング層へのクラックの発生を抑制することができる。
本発明の一実施形態において、前記コーティング層は、前記第2の固定層の外側に形成された樹脂製の第1の固定層と、前記第1の固定層の外側に形成された樹脂製の第2の固定層と、を備える。
当該実施形態によれば、コーティング層を所定の厚さとする場合に、当該コーティング層を単一の層で構成した場合と比べて、当該コーティング層を構成する層のそれぞれの厚さを薄くすることができる。具体的には、所定の厚さを有するコーティング層を単一の層(「単一層」)で構成した場合の当該単一層の厚さよりも、第1の固定層の厚さ及び第2の固定層の厚さを薄くすることができる。これにより、当該第1の固定層及び当該第2の固定層における残留応力を小さくすることができるので、コーティング層の剥離を抑制することができる。これにより、当該コーティング層へのクラックの発生を抑制することができる。
本発明の一実施形態において、前記コーティング層は、その前端と前記第2の固定層の前端との間の間隔が3.0mm以下となるように形成される。本発明の他の実施形態において、前記コーティング層は、その後端と前記第2の固定層の後端との間の間隔が1.0mm以下となるように形成される。
本発明者らの研究によれば、コーティング層のうち第2の固定層の前端から前方へはみ出している前方突出部及び当該第2の固定層の後端から後方へはみ出している後方突出部においてクラックが発生しやすい。上記実施形態によれば、コーティング層のうち第2の固定層の前端から前方へはみ出す部分を3.0mm以下とし、コーティング層のうち第2の固定層の後端から後方へはみ出す部分を1.0mm以下とすることにより、上記前方突出部及び前記後方突出部におけるクラックの発生を抑制することができる。
本発明の一実施形態による釣竿は、前記第1シートと前記取付部との間に配されたプライマー層をさらに備える。これにより、取付部品の竿体からの剥離を抑制することができる。
本発明の上記各実施形態によれば、コーティング層へのクラックの発生を抑止することができる。
本発明の一実施形態に係る釣竿を示す図である。 図1の釣竿をその中心軸を通る面で切断した断面を模式的に示す断面図である。 図2の釣竿の一部を拡大して示す拡大断面図である。 竿体へ釣糸ガイドを取り付ける方法を模式的に示す図である。 竿体へ釣糸ガイドを取り付ける方法を模式的に示す図である。 本発明の他の実施形態に係る釣竿をその中心軸を通る面で切断した断面を模式的に示す断面図である。
以下、本発明に係る釣竿の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図である。図示のように、本発明の一実施形態による釣竿1は、竿体2と、竿体2にリールシート9を介して取り付けられたリールRと、竿体2に取り付けられた釣糸ガイド10と、を備える。図示の実施形態においては、リールシート9及び釣糸ガイド10の各々が、竿体の外周面に取り付けられる取付部品に該当する。
竿体2は、例えば、元竿3、中竿5、及び穂先竿7等を連結することによって構成されている。これらの各竿体は、例えば、並継ぎ式に継合される。元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、振出方式、逆並継方式、インロー方式、又はこれら以外の公知の任意の継合方式により継合され得る。竿体2は、単一の竿体から構成されていても良い。
元竿3、中竿5、及び穂先竿7は、例えば、繊維強化樹脂製の管状体で構成されている。この繊維強化樹脂製の管状体は、強化繊維にマトリクス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し、このプリプレグシートを加熱して硬化させることにより作成される。このプリプレグシートに含まれる強化繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びこれら以外の任意の公知の強化繊維を用いることができる。当該プリプレグシートに含まれるマトリクス樹脂として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。プリプレグシートが硬化された後には、芯金が脱芯される。また、管状体の外表面は、適宜研磨される。各竿体は、中実状に構成されてもよい。
図示の実施形態において、元竿3、中竿5及び穂先竿7には、リールシート9に装着されるリールRから繰り出される釣糸を案内する複数の釣糸ガイド10(釣糸ガイド10A〜10D)が設けられている。より具体的には、元竿3には釣糸ガイド10Aが設けられ、中竿5には釣糸ガイド10Bが設けられ、穂先竿7には釣糸ガイド10Cが設けられている。穂先竿7の先端には、トップガイド10Dが設けられている。
図示の実施形態において、リールシート9は、元竿3の外周面に取り付けられている。
図2及び図3を参照して、釣糸ガイドを竿体へ取り付けるための構成についてさらに説明する。これらの図では、中竿5に取り付けられた釣糸ガイド10Bが例示されている。釣糸ガイド10B以外の釣糸ガイド(例えば、釣糸ガイド10A、10C、及び10D)についても、釣糸ガイド10Bと同様に対応する竿体に取り付けられ得る。
図2は、図1の釣竿をその中心軸を通る面で切断した断面を模式的に示す断面図であり、図3は、図2の釣竿の一部を拡大して示す拡大断面図である。これらの図に示されているように、釣糸ガイド10Bは、中竿5の軸方向に延びる足10aを有しており、この足10aを介して中竿5の外周面に取り付けられている。釣糸ガイド10Bの足10aの外側には、第1の固定層20と、第2の固定層30と、コーティング層40と、が設けられている。本明細書における「外側」及び「内側」という用語は、文脈上別の意味に解されるべき場合を除き、中竿5の径方向における「外側」及び「内側」をそれぞれ意味する。このように、釣糸ガイド10Bは、第1の固定層20、第2の固定層30、及びコーティング層40により、足10aを介して、中竿5の外周面に取り付けられている。
図2に示されている積層構造は例示であり、本発明の釣竿は、図2に示されている以外にも様々な層を備えることができる。例えば、足10aの表面にプライマーを塗布してもよい。このプライマーとして、エポキシ、ウレタン、又はこれら以外の公知のプライマーを用いることができる。プライマーは、例えば、足10aの上面10a1と第1の固定層20との間に配される。これにより、第1の固定層20をプライマーを介してより強固に足10aに取り付けることができる。第1の固定層20と第2の固定層30との間に、密着性を向上させるためのアンカー層を設けてもよい。
第1の固定層20は、足10a及び中竿5の外周面の一部を覆うように設けられている。一実施形態において、第1の固定層20は、中竿5の軸方向において足10aの全体を覆うように配される。この場合、第1の固定層20は、足10aの前端から後端までを覆う。本明細書においては、文脈上別の意味に解されるべき場合を除き、釣竿1の穂先側を「前」、「前方」、又は「前側」といい、竿尻側を「後」、「後方」、又は「後側」という。「前端」は、竿体と取付部品とが第1の固定層及び第2の固定層によって互いに固定されている部位において、当該取付部品の中央部からより遠い側における端部を指し、「後端」は、当該取付部品の中央部からより近い側の端部を指す。例えば、「前端」は、取付部品がいわゆるシングルフットタイプの釣糸ガイドである場合、当該釣糸ガイドの足の先端をいい、取付部品がいわゆるダブルフットタイプの釣糸ガイドである場合、当該釣糸ガイドの両足の両先端をいう。「後端」は、それらの「前端」とは反対側における足の端部をいう。他の実施形態において、第1の固定層20は、中竿5の軸方向において足10aの一部を覆うように配される。後述のように、第1の固定層20は、第1シート20Sから形成される。
第2の固定層30は、第1の固定層20の外側に、当該第1の固定層30を覆うように設けられる。一実施形態において、第2の固定層30は、中竿5の軸方向において第1の固定層20の全体を覆うように配される。この場合、第2の固定層30は、第1の固定層20の前端から後端までを覆う。後述のように、第2の固定層30は、第2シート30Sから形成される。
コーティング層40は、第2の固定層30の外側に、当該第2の固定層30を覆うように設けられた樹脂製のコーティング膜である。コーティング層40は、図示のように、第2の固定層30の全体を覆うように設けられてもよい。
コーティング層40は、例えば、エポキシ、ウレタン、アクリル、又はUV硬化性樹脂(例えば、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、エポキシアクリレート)等の様々な樹脂材料から形成される。コーティング層40の材料は、本明細書で例示したものに限られず、様々な樹脂をその材料として用いることができる。コーティング層40は、透明であってもよく着色されていてもよい。
コーティング層40は、単一の層から構成されていてもよく、中竿5の径方向に積層された複数の層から構成されていてもよい。
本発明の一実施形態において、コーティング層40は、第2の固定層30の外側に概ね一定の厚さで形成される。コーティング層40は、その厚さT1が1.3mm以下となるように形成される。コーティング層40の厚さが不均一な場合には、コーティング層40のうち最も厚い箇所の厚さが1.3mm以下とされる。また、本発明の一実施形態において、コーティング層40の厚さは、0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましく、0.8mm以上であることが最も好ましい。コーティング層40は、その厚さが所定以上であることにより、剥離の発生をより抑制することができる。
本発明の一実施形態において、コーティング層40は、JIS K 7161:2014に準拠して測定される引張伸び率が40%以上であり、降伏点のひずみが7%以上である。コーティング層40の引張伸び率を40%以上とすることにより、中竿5が撓んでもコーティング層40へのクラックの発生を抑制することができる。また、降伏点のひずみを7%以上とすることにより、中竿5が繰り返し撓んでもコーティング層40への変形の発生を抑制することができる。なお、本明細書において、引張伸び率は、引張られていないときの試験片の長さをLとし、引張られて破断した時の試験片の長さをLとしたとき、引張伸び率=(L−L)/L×100%を表す。また、降伏点のひずみは、引張られていないときの試験片の長さをLとし、引張られて降伏点に達したときの試験片の長さをLとしたとき、降伏点のひずみ=(L−L)/L×100%を表す。
本発明の一実施形態において、コーティング層40は、JIS K 7161:2014に準拠して測定される引張弾性率が13MPa以上420MPa以下である。コーティング層の引張弾性率を13MPa以上とすることにより、中竿が撓んでもコーティング層40へのクラックの発生を抑制することができる。
本発明の一実施形態においては、コーティング層40と第2の固定層30とのJIS K 6849:1994に準拠して測定される接着強度が88N/cm2以上である。コーティング層40と第2の固定層30との接着強度を88N/cm以上とすることにより、中竿5の撓みによってコーティング層40が第2の固定層30から剥離することを抑制できる。これにより、コーティング層40へのクラックの発生を抑制することができる。
次に、図4及び図5をさらに参照して、竿体5へ釣糸ガイド10Bを取り付ける方法について説明する。図4及び図5は、竿体5へ釣糸ガイド10Bを取り付ける方法の一部を模式的に示す図である。図4は、中竿5をその中心軸に垂直な面に沿って切断した断面を模式的に示している。図5は、竿体5の斜視図である。
釣糸ガイドB10を中竿5へ取り付ける際には、まず、竿体5、釣糸ガイド10B、第1シート20S、及び第2シート30Sを準備する。
竿体5は、上述したように、芯金に巻回されたプリプレグシートを加熱して硬化させることにより作成される。
釣糸ガイド10Bとしては、任意の固定ガイドを用いることができる。釣糸ガイド10Bは、図示されているシングルフットタイプのものでもよいし、ダブルフットタイプのものでもよい。
第1シート20Sは、例えば、合成樹脂からなる繊維に熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を含浸させたプリプレグシートである。この合成樹脂からなる繊維は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、及び、ポリエステルからなる群より選択される1つ以上からなる繊維である。熱硬化性樹脂は、加熱すると化学反応により不可逆的に硬化する樹脂をいう。当該樹脂組成物に用いることが可能な熱硬化性樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂及びウレタン樹脂がある。第1シート20Sの厚さは、例えば、例えば、20μm〜300μmである。第1シート20Sとして、適切な市販品を用いることができる。
第1シート20Sに含まれる熱硬化性樹脂の量は、第1シート20S中の強化繊維の質量と熱硬化性樹脂の質量の合計を100wt%としたときに、例えば、50wt%以上又は60wt%以上とされる。
第1シート20Sに含まれる強化繊維は、竿体2の中心軸方向Xに対して所定の角度をなす方向に引き揃えられていてもよい。例えば、第1シート20Sに含まれる強化繊維は、竿体2の中心軸方向Xに対して45°傾けて引き揃えられてもよい。第1シート20Sに含まれる強化繊維は、平織状に編成されていてもよい。
本発明の一実施形態において、第1シート20Sは、JIS K 7161−1に準拠して測定される引張伸び率が15%以上、18%以上、19%以上、又は20%以上である。
本発明の一実施形態において、第1シート20Sは、JIS K 7161−1に準拠して測定される引張弾性率が980MPa〜3500MPa、1100〜3300MPa、1500〜3100MPa、又は2000〜2800MPaである。
本発明の一実施形態において、第1シート20Sは、JIS K 7161:2014に準拠して測定される引張破断強度が20MPa〜280MPa、30MPa〜260MPa、40MPa〜250MPa、又は58MPa〜200MPaである。
第2シート30Sは、例えば、強化繊維に熱硬化性樹脂を含む組成物を含浸させたプリプレグシートである。当該強化繊維には、例えば、炭素繊維及びガラス繊維が含まれる。第2シート30Sに含浸される組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂及びウレタン樹脂を用いることができる。
本発明の一実施形態において、第2シート30Sの樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂は、第1シート20Sの樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂よりも硬化温度が低い。例えば、第1シート20Sの樹脂組成物が熱硬化性樹脂として120℃硬化タイプのエポキシ樹脂を含む場合には、第2シート30Sの熱硬化性樹脂として、80℃硬化タイプのエポキシ樹脂を用いることができる。第2シート30Sの厚さは、例えば、20μm〜300μmであってもよい。第2シート30Sとして、適切な市販品を用いることができる。
第2シート30Sに含まれる熱硬化性樹脂の量は、第2シート30S中の強化繊維の質量と熱硬化性樹脂の質量の合計を100wt%としたとき、例えば、20wt%〜50wt%、又は、30質量%〜40質量%とされる。
第2シート30Sに含まれる繊維は、平織状に編成されていてもよい。第2シート30Sに含まれる繊維は、例えば、中心軸方向Xに対して0°及び90°に配向されていてもよい。
第1シート20S又は第2シート30Sに含まれる樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を主成分として含む組成物である。この樹脂組成物には、公知の添加剤を含んでよい。当該樹脂組成物が熱硬化性樹脂と添加剤とを含む場合、当該樹脂組成物の全質量を100%としたときに、この全質量に占める熱硬化性樹脂の質量の割合は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上とされる。
第1シート20S及び第2シート30Sの少なくとも一方は、強化繊維を含まない樹脂シートであってもよい。この樹脂シートは、例えば、熱硬化性樹脂を基材とする樹脂シートである。
竿体5へ釣糸ガイド10Bへ取り付けるためには、まず、図4に示されているように、当該中竿5の外周面に第1シート20Sの一端を載置し、この中竿の表面に戴置された第1シート20Sの上に釣糸ガイド10Bの足10aを載置する。次いで、竿体5の外周面を囲むように第1シート20Sを約1.3プライ分巻回する。これにより、図示のように、足10aは、竿体5とともに、第1シート20Sによって覆われる。他の態様においては、足10aを竿体5の表面に直接載置し、次いで、足10aと竿体5の外周面を囲むように第1シート20Sを竿体5の周囲に巻回してもよい。
次に、竿体5に巻回された第1シート20Sの外側に、第2シート30Sを巻回して巻回体を得る。第2シート30Sは、第1シート20Sを覆うように、竿体5の周囲に約1.3プライ分巻回される。
第1シート20S及び第2シート30Sの巻回数は、本明細書で明記されたものに限られない。第1シート20S及び第2シート30Sは、任意のプライ数だけ巻回される。例えば、第1シート20S及び第2シート30Sは、2プライ以上巻回されてもよい。
次に、竿体5の周囲に第1シート20S及び第2シート30Sが巻回されている巻回体を加熱することで、第1シート20Sに含まれる熱硬化性樹脂が硬化して第1の固定層20が形成され、第2シート30Sに含まれる熱硬化性樹脂が硬化して第2の固定層30が形成される。この第1の固定層20及び第2の固定層30によって釣糸ガイド10Bが竿体5に固定される。
上記巻回体の加熱は、公知の加熱炉を用いて行うことができる。例えば、所定の温度に保たれた加熱炉に所定時間当該巻回体を入れることにより、当該巻回体へ対して、第1の固定層20及び第2の固定層30を得るために必要な加熱が行われる。加熱炉の温度は、例えば、70〜170℃、80〜160℃、85〜150℃、又は90〜120℃とされるが、熱硬化樹脂の硬化温度に応じてこれら以外の温度で加熱を行ってもよい。巻回体の加熱炉における加熱時間は、例えば、5分〜3時間、15分〜2.5時間、又は30分〜2時間とされるが、これら以外の加熱時間だけ巻回体を加熱してもよい。巻回体の加熱時には、中竿5に巻回されている第1シート20S及び第2シート30Sが加熱時に移動しないように、当該巻回体の周囲に緊締テープが巻回されてもよい。
第2シート30Sに含まれる熱硬化性樹脂の硬化温度が第1シート20Sに含まれる熱硬化性樹脂の硬化温度より高い場合には、外側の第2シート30Sの熱硬化性樹脂が先に硬化し、その後、硬化温度がより高い内側の第1シート20Sの熱硬化性樹脂が硬化する。
巻回体は、所定時間の加熱後に加熱炉から取り出され、室温で所定時間冷却される。当該巻回体が十分に冷却された後、当該巻回体に形成された第2の固定層30を覆うように、コーティング層40が形成される。具体的には、エポキシ、ウレタン、アクリルなどの樹脂組成物を、第2の固定層30を覆うように塗布し、この塗布された樹脂組成物を加熱することにより硬化させることにより、コーティング層40を形成することができる。
本発明の一実施形態において、第1の固定層20を形成するための第1シート20Sは、その引張伸び率が、第2の固定層20を形成するための第2シート30Sの引張伸び率よりも大きい。このとき、第1シート20Sが硬化して得られる第1の固定層20の引張伸び率は、第2シート30Sが硬化して得られる第2の固定層30の引張伸び率よりも大きくなる。
中竿5に第1の固定層20及び第2の固定層30により固定されている釣糸ガイド10Bを新しい釣糸ガイドと交換する際には、まず、当該釣糸ガイド10Bを中竿5から剥離させる。このとき、足10aが中竿5の外周面から離れる方向に引っ張られるので、第1の固定層20及び第2の固定層30に引張応力が作用する。第1の固定層20の引張伸び率が第2の固定層30の引張伸び率よりも大きいと、第1の固定層20及び第2の固定層30にに対して第2の固定層20が破断する程度の引張応力が作用しても、第1の固定層20は破断しない。よって、第2の固定層20が破断する程度の力で釣糸ガイド10Bを剥離させることができる。第2の固定層30は第1の固定層20の外側に設けられているので、第1の固定層20が破断しなければ、第2の固定層30は第1の固定層20とともに除去することが可能である。第2の固定層30が中竿5に残存していると、当該第2の固定層30の残存部分を除去することが必要になるので、釣糸ガイド10Bを交換するための作業効率が低下する。第1の固定層20の引張伸び率を第2の固定層30の引張伸び率よりも大きくすることにより、中竿5への第2の固定層30の残留を防止することができ、その結果、釣糸ガイド10Bを交換するための作業効率の低下を防止することができる。
第1シート20Sの引張伸び率が15%であれば、釣糸ガイド10Bを交換する際に受ける引張応力による第1の固定層20の破断を防止することができる。
第1シート20Sの引張弾性率が980MPa〜3500MPaの範囲にあれば、釣糸ガイド10Bを交換する際に受ける引張応力による第1の固定層20の破断をより確実に防止することができる。
第1シート20Sの引張破断強度が20MPa〜280MPaの範囲にあれば、釣糸ガイド10Bを交換する際に受ける引張応力による第1の固定層20の破断をより確実に防止することができる。
釣糸ガイド10B以外の釣糸ガイド10も、釣糸ガイド10Bについて説明したのと同様の手法で対応する竿体へ取り付けることができる。例えば、釣糸ガイド10Aは、第1の固定層20、第2の固定層30、及びコーティング層40により元竿3に取り付けられる。
釣糸ガイド10以外にリールシート9も、釣糸ガイド10Bについて説明したのと同様の手法で対応する竿体へ取り付けることができる。例えば、リールシート9は、第1の固定層20、第2の固定層30、及びコーティング層40により元竿3に取り付けられる。
次に、図6を参照して、本発明の他の実施形態による釣竿について説明する。図6に示されている釣糸ガイド10Bの足10aは、コーティング層40ではなくコーティング層140で覆われている点で、図2に示した実施形態と異なっている。
コーティング層140は、コーティング層40と同種の樹脂材料から形成される。コーティング層140は、第2の固定層30の前端よりも前方に突出している前方突出部140aと、第2の固定層30の後端よりも後方に突出している後方突出部140bと、を有する。
コーティング層140は、その前端と第2の固定層30の前端との間隔T2が1.0mm以下となるように設けられている。つまり、前方突出部140aの前後方向の幅T2は、1.0mm以下とされる。また、コーティング層140は、その後端と第2の固定層30の後端との間隔T3が3.0mm以下となるように設けられている。つまり、後方突出部140bの前後方向の幅T3は、3.0mm以下とされる。
コーティング層140においては、第2の固定層30の前端から前方へはみ出している部分(すなわち、前方突出部140a)及び当該第2の固定層30の後端から後方へはみ出している部分(すなわち、後方突出部140b)においてクラックが発生しやすい。上記実施形態によれば、前方突出部140aの幅を1.0mm以下とし、後方突出部140bの前後方向の幅を3.0mm以下としているので、前方突出部140a及び後方突出部140bにおけるクラックの発生を抑制することができる。
実施例
竿体に取付部品を取り付けた釣竿の耐久性を調べる試験を行った。まず、その予備試験として、JIS K 7161:2014に準拠して、コーティング層を形成するために使用した樹脂と同じ樹脂からなる試験片を作成し、その試験片の引張伸び率及び降伏点ひずみ等の物性を測定した(作成例1〜2及び比較作成例1)。その結果を下記表1に示す。
Figure 0006865294
次に、作成例1〜2及び比較作成例1で用いた樹脂と同じ樹脂をコーティング層の材料として用いて、竿体に釣糸ガイド(取付部品)を取り付けた。得られた釣竿について耐久試験を行った結果を下記表2に示す(実施例1〜2及び比較例1〜2)。耐久試験では、釣糸ガイドを水平方向に向け、当該釣糸ガイドに7kgの釣糸ガイドを課し、45°に持ち上げる動作を繰り返した。釣糸ガイドと竿体との間で剥離が発生した動作の回数が表2に示されている。その動作を600回繰り返しても釣糸ガイドと竿体との剥離が発生しなかった実施例1及び2を「○」と評価した。
Figure 0006865294
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
1 釣竿
2 竿体
3 元竿
5 中竿
7 穂先竿
9 リールシート
10 釣糸ガイド
20 第1の固定層
30 第2の固定層
20S 第1シート
30S 第2シート
40、140 コーティング層

Claims (7)

  1. 竿体と、
    取付部を有し、前記竿体の外周面に前記取付部を介して取り付けられる取付部品と、
    前記取付部と前記竿体を共に囲むように第1シートを巻回して形成された第1の固定層と、
    前記第1シートの外側に繊維強化樹脂製の第2シートを巻回して形成された第2の固定層と、
    前記第2の固定層の外側に形成された樹脂製のコーティング層と、
    を備え、
    前記コーティング層は、JIS K 7161:2014に準拠して測定した引張伸び率が40%以上であり、降伏点のひずみが7%以上である樹脂により、1.3mm以下の厚さを有するように形成された、釣竿。
  2. 前記コーティング層のJIS K 7161:2014に準拠して測定した引張弾性率が13MPa以上420MPa以下である、請求項1に記載の釣竿。
  3. 前記コーティング層と前記第2の固定層とのJIS K 6849:1994に準拠して測定した接着強度が88N/cm以上である、請求項1に記載の釣竿。
  4. 前記コーティング層は、前記第2の固定層の外側に形成された樹脂製の第1のコーティング層と、前記第1の固定層の外側に形成された樹脂製の第2のコーティング層と、を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の釣竿。
  5. 前記コーティング層は、その前端と前記第2の固定層の前端との間の間隔が3.0mm以下となるように形成される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の釣竿。
  6. 前記コーティング層は、その後端と前記第2の固定層の後端との間の間隔が1.0mm以下となるように形成される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の釣竿。
  7. 前記第1シートと前記取付部との間に配されたプライマー層をさらに備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の釣竿。
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