JP6857289B1 - 化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法であって、原料パルプを化学変性して化学変性パルプを得る化学変性工程と、前記化学変性工程で得た化学変性パルプを固形分濃度15重量%以下の条件でディスクリファイナーを用いて叩解処理する叩解処理工程と、を含み、BET比表面積が50m2/g以上、平均繊維幅が500nm以上である化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を製造する製造方法。
(2)化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法であって、原料パルプを化学変性して化学変性パルプを得る化学変性工程と、前記化学変性工程で得た化学変性パルプを固形分濃度15重量%以下の条件でコニカル型リファイナーを用いて叩解処理する叩解処理工程と、を含み、BET比表面積が50m2/g以上、平均繊維幅が500nm以上である化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を製造する製造方法。
(3)化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法であって、原料パルプを化学変性して化学変性パルプを得る化学変性工程と、前記化学変性工程で得た化学変性パルプを固形分濃度15重量%以下の条件で高速離解機を用いて解繊処理する工程と、を含み、BET比表面積が50m2/g以上、平均繊維幅が500nm以上である化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を製造する製造方法。
(4)前記化学変性が、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物と、酸化剤を用いて実施する酸化である、(1)〜(3)の何れかに記載の化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法。
(5)前記化学変性が、カルボキシメチル変性である、(1)〜(3)の何れかに記載の化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法。
ミクロフィブリルセルロース繊維(以下「MFC」ともいう)とは、パルプ等のセルロース系原料を解繊して得られる500nm以上の平均繊維幅を有する繊維であり、化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維(以下「化学変性MFC」ともいう)とは、化学変性セルロース系原料を解繊して得られるMFCである。本発明において平均繊維幅とは長さ加重平均繊維幅であり、当該繊維幅はABB株式会社製ファイバーテスターやバルメット社製フラクショネータで測定できる。当該繊維径の下限は好ましくは500nm以上であり、上限は特に限定されないが60μm以下程度である。MFCは、セルロース系原料をビーターやディスパーザーなどで比較的弱く解繊または叩解処理して得られる。したがってMFCは、高圧ホモジナイザーなどでセルロース系原料を強く解繊処理して得られるセルロースナノファイバーと比較して繊維幅が大きく、また繊維自体の過度な微細化を抑制しながら効率的に繊維表面を毛羽立たせた(外部フィブリル化した)形状を有する。
本発明の製造方法(製造方法A)により得られる化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維は、BET比表面積が50m2/g以上であり、好ましくは70m2/g以上である。
また本発明の製造方法(製造方法B)により得られる化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維は、BET比表面積が50m2/g以上であり、好ましくは60m2/g以上、より好ましくは70m2/g以上である。
また本発明の製造方法(製造方法C)により得られる化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維は、BET比表面積が50m2/g以上であり、好ましくは70m2/g以上である。
BET比表面積が高いと、例えば製紙用添加剤として用いた場合にパルプに結合しやすくなり、歩留まりが向上する、紙への強度付与の効果が高まるなどの利点がある。BET比表面積は、窒素ガス吸着法(JISZ8830)を参考に以下の方法により測定できる:
(1)化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の約2%スラリー(分散媒:水)を、固形分が約0.1gとなるように取り分け遠心分離の容器に入れ、100mLのエタノールを加える。
(2)攪拌子を入れ、500rpmで30分以上攪拌する。
(3)撹拌子を取り出し、遠心分離機で、7000G、30分、30℃の条件で化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を沈降させる。
(4)化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維をできるだけ除去しないようにしながら、上澄みを除去する。
(5)100mLエタノールを加え、撹拌子を加え、(2)の条件で攪拌、(3)の条件で遠心分離、(4)の条件で上澄み除去をし、これを3回繰り返す。
(6)(5)の溶媒をエタノールからt−ブタノールに変え、t−ブタノールの融点以上の室温下で、(5)と同様にして撹拌、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返す。
(7)最後の溶媒除去後、t−ブタノールを30mL加え、軽く混ぜた後ナスフラスコに移し、氷浴を用いて凍結させる。
(8)冷凍庫で30分以上冷却する。
(9)凍結乾燥機に取り付け、3日間凍結乾燥する。
(10)BET測定装置(Micromeritics(マイクロメリティックス)社製)を用いてBET測定を行う(前処理条件:窒素気流下105℃2時間、相対圧0.01〜0.30、サンプル量30mg程度)。
保水能とは、繊維が水を保持する能力を示す指標であり、以下のように求めることができる。
処理後の分散液にイオン交換水を加えて固形分0.3重量%のスラリー(媒質:水)を40mL調製する。このときのスラリーの重量をAとする。次いで高速冷却遠心機を用いてスラリーの全量を、30℃、25000Gの条件で30分間遠心分離し、水相と沈降物とを分離する。このときの沈降物の重量をBとする。また、水相をアルミカップに入れ、105℃で一昼夜乾燥させて水を除去し、水相中の固形分の重量を測定する。この水相中の固形分の重量をCとする。以下の式を用いて、保水能を計算する:
保水能=(B+C−0.003×A)/(0.003×A−C)。
保水能は、上述の式の通り、沈降物中の繊維の固形分の重量に対する沈降物中の水の重量に相当する。値が大きいほど、繊維が水を保持する力が高いことを意味する。
なお、本発明の製造方法により得られる化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維は、食品等に混ぜた際にしっとり感を発揮できる観点、及び紙に外添する際に液だれしにくくとどまりやすい観点から、保水能が22g/g以上であることが好ましく、25g/g以上であることがより好ましく、28g/g以上であることがさらに好ましい。上限は特に制限しないが、200g/g程度である。
本発明の製造方法により得られる化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維は、紙などの基質に混ぜた際の補強効果の観点から、フィブリル化率が0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがさらに好ましく、1.5%以上であることがより好ましい。ここで、フィブリル化率とは、繊維表面の毛羽立ち度合の指標であり、例えば、バルメット社製フラクショネータで測定することができる。
本発明の製造方法により得られる化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維は、1重量%、60rpm、25℃の条件におけるB型粘度が、解繊の進み度合の観点から、好ましくは10〜4000mPa・s、より好ましくは20〜3500mPa・s、さらに好ましくは50〜3300mPa・s、70〜3000mPa・sである。
化学変性工程では、原料パルプを化学変性して化学変性パルプを得る。
原料パルプとしては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹未漂白サルファイトパルプ(LUSP)、広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、加圧砕木パルプ(PGW)、リファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、アルカリ過酸化水素メカニカルパルプ(APMP)、アルカリ過酸化水素サーモメカニカルパルプ(APTMP)、リンター、ジュート、麻、コウゾ、ミツマタ、ケナフ等の草本由来のパルプ、竹由来のパルプ、再生パルプ、古紙パルプ等が挙げられるが、これらに限定されない。
化学変性とはパルプに官能基を導入することであり、化学変性はアニオン変性であることが好ましい、すなわち化学変性パルプはアニオン性基を有することが好ましい。アニオン性基としてはカルボキシル基、カルボキシル基含有基、リン酸基、リン酸基含有基、硫酸エステル基等の酸基が挙げられる。カルボキシル基含有基としては、−COOH基、−R−COOH(Rは炭素数が1〜3のアルキレン基)、−O−R−COOH(Rは炭素数が1〜3のアルキレン基)が挙げられる。リン酸基含有基としては、ポリリン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、ポリホスホン酸基等が挙げられる。これらの酸基は反応条件によっては、塩の形態(例えばカルボキシレート基(−COOM、Mは金属原子))で導入されることもある。本発明において化学変性は酸化またはエーテル化が好ましい。
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース重量〔g〕
A=[(100×F’−(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾重量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH2SO4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
本発明の製造方法(製造方法A)の叩解処理工程では、固形分濃度を15重量%以下に調整した化学変性パルプに対して、ディスクリファイナーを用いて叩解処理を行う。化学変性パルプに対して叩解処理を行うと、繊維長、繊維幅が小さくなる微細化、および繊維の毛羽立ちが多くなるフィブリル化が進行する。
ディスクリファイナーとは、叩解刃のついた円盤(ディスクプレート)が至近距離で向い合い、一方のみまたは相互に逆方向に所定の回転数で回転して、その間を通過するスラリーに対して加圧叩解の効果と遠心力による連続送り出し効果とを与える装置をいう。ディスクリファイナーのうち、ディスクプレートによって形成される叩解間隙の数が一つのものを、シングルディスクリファイナー(「SDR」と略記することがある。)といい、叩解間隙の数が二つのものを、ダブルディスクリファイナーという。シングルディスクリファイナーとしては、例えば、相川鉄工株式会社製のシングルディスクリファイナー、株式会社長谷川鉄工所製のスーパーファイブレーター等が挙げられる。ダブルディスクリファイナーは、2個の固定ディスクとその間で自由に回転するフローティングディスクからなり、例えば、相川鉄工株式会社製のダブルディスクリファイナー、三菱重工業/ベロイト(ジョーンズ)製のダブルディスクリファイナー、石川島産業機械/ブラック・クローソン製のツインハイドラディスク、日立造船(日立造船富岡機械)/エッシャーウイス製のツインディスクリファイナー等が挙げられる。
コニカル型リファイナーは、内周面に形成された円錐台形状の固定刃と外周面に形成された円錐台形状の回転刃を有する叩解機の一種であり、固定刃と回転刃の間を通過するスラリーに対して、叩解効果を与える。コニカル型リファイナーとしては、石川島播磨重工業株式会社製のハイドラリファイナー、三菱重工業株式会社製のコニカルリファイナー、株式会社小松製作所製の小松リファイナー、Bolton−Emerson社製のクラフリンリファイナー、相川鉄工株式会社製のスーパーリファイナー、ADCダブルコニファイナー(ADCコニカルリファイナー)等が挙げられる。
本発明の製造方法(製造方法C)の解繊処理する工程では、固形分濃度を15重量%以下に調整した化学変性パルプに対して、高速離解機を用いて解繊処理を行う。化学変性パルプに対して高速離解機を用いた解繊処理を行うと、繊維長、繊維幅が小さくなる微細化、および繊維の毛羽立ちが多くなるフィブリル化が進行する。
本発明の製造方法Cに用いる高速離解機は、回転刃と固定刃を有する離解機であり、高速回転する刃物により発生する流体力学的衝撃波で、パルプスラリーを離解するものである。回転刃と固定刃には、各々対をなして複数組の歯形のリングが備えられている。原料入口部分(回転の中心部分)の歯数は少なく、歯幅は大きく、歯間隔も大きいが、外側に行くにしたがって、歯数が多くなり歯幅は小さく、また、歯間隔も小さくなっていく。原料入口部分からパルプスラリーを投入すると、投入したパルプスラリーが外側に移動していき、次第に小さな塊に分割され、さらに面積が拡大して衝撃と流体せん断作用をうけることにより、離解される。本発明の製造方法Cに用いることができる高速離解機としては、特に限定されないが、株式会社協和鉄工所のスーパーデフレカー、株式会社大原機械製作所のアシストファイナー、相川鉄工株式会社製のトップファイナー、セブンファイナー等が挙げられる。
<化学変性パルプの調製1>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%:日本製紙株式会社製)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応混合物に塩酸を添加してpH2に調整した後ガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗・脱水して最終的にパルプ固形分濃度が20重量%の化学変性パルプ(TEMPO酸化パルプ)を得た。パルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.42mmol/gであった。
得られたTEMPO酸化パルプの水分散液58kgをシングルディスクリファイナー(相川鉄工株式会社製、プレート:刃幅:0.8mm、溝幅:1.5mm)を用い、クリアランス:0.23〜0.25mmの条件で10分間循環運転を行い、叩解処理して、TEMPO酸化パルプをMFCとした。次いで、後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表1に示す。
実施例1で得られた固形分濃度20重量%のTEMPO酸化パルプをイオン交換水に分散させ、水酸化ナトリウムを加えて攪拌することにより、固形分濃度2重量%のTEMPO酸化パルプの水分散液を得た。
このTEMPO酸化パルプの水分散液2kgを、パルプ離解機(無段変速機付)(熊谷理機工業株式会社製)を用い、回転数3000rpmで10分間運転を行って処理した。この水分散液のpHは7.5であった。次いで、後述する方法によって、処理後のTEMPO酸化パルプの水分散液を評価した。結果を表1に示す。
なお、固形分濃度4重量%のTEMPO酸化パルプについても、上記パルプ離解機を用いて同様の条件で処理を試みたが、流動性が悪く、うまく撹拌することができなかった。長時間運転しても、フィブリル化は進まず、粘度も上昇することがなかった。
<化学変性パルプの調製2>
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙株式会社製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で111g加え、パルプ固形分が20重量%になるように水を加えた。その後、この混合物を30℃で30分撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。この混合物を30分撹拌した後に、70℃まで昇温しさらに1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和後、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.26の化学変性パルプ(CM化パルプ)を得た。
得られたCM化パルプの水分散液58kgをシングルディスクリファイナー(相川鉄工株式会社製、プレート:刃幅:0.8mm、溝幅:1.5mm)を用い、クリアランス:0.16〜0.18mmの条件で10分間循環運転を行い、叩解処理して、CM化パルプをMFCとした。次いで、後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表1に示す。
実施例2で得られた固形分濃度98重量%のCM化パルプをイオン交換水に分散させ、水酸化ナトリウムを添加して攪拌することにより、固形分濃度2重量%のCM化パルプの水分散液を得た。
このCM化パルプの水分散液2kgを、パルプ離解機(無段変速機付)(熊谷理機工業株式会社製)を用い、回転数3000rpmで10分間運転を行って処理した。この水分散液のpHは7.3であった。次いで、後述する方法によって、処理後のCM化パルプの水分散液を評価した。結果を表1に示す。
なお、固形分濃度4重量%のCM化パルプについても、上記パルプ離解機を用いて同様の条件で処理を試みたが、流動性が悪く、うまく撹拌することができなかった。長時間運転しても、フィブリル化は進まず、粘度も上昇することがなかった。
<化学変性パルプの調製3>
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙株式会社製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で111g加え、パルプ固形分が20重量%になるように水を加えた。その後、この混合物を30℃で30分撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。この混合物を30分撹拌した後に、70℃まで昇温しさらに1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和後、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.26の化学変性パルプ(CM化パルプ)を得た。
得られたCM化パルプの水分散液58kgをADCダブルコニファイナー(相川鉄工株式会社製、プレート:刃幅:1.0mm、溝幅:2.0mm)を用い、クリアランス:0.4mmの条件で10分間循環運転を行い、叩解処理して、CM化パルプをMFCとした。次いで、後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表2に示す。
実施例3で得られた固形分濃度98重量%のCM化パルプをイオン交換水に分散させ、水酸化ナトリウムを添加して攪拌することにより、固形分濃度2重量%のCM化パルプの水分散液を得た。
このCM化パルプの水分散液2kgを、パルプ離解機(無段変速機付)(熊谷理機工業株式会社製)を用い、回転数3000rpmで10分間運転を行って処理した。この水分散液のpHは7.3であった。次いで、後述する方法によって、処理後のCM化パルプの水分散液を評価した。結果を表2に示す。
なお、固形分濃度4重量%のCM化パルプについても、上記パルプ離解機を用いて同様の条件で処理を試みたが、流動性が悪く、うまく撹拌することができなかった。長時間運転しても、フィブリル化は進まず、粘度も上昇することがなかった。
(実施例4)
<化学変性パルプの調製4>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%:日本製紙株式会社製)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応混合物に塩酸を添加してpH2に調整した後、ガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗・脱水して最終的にパルプ固形分濃度が20重量%の化学変性パルプ(TEMPO酸化パルプ)を得た。パルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.42mmol/gであった。
得られたTEMPO酸化パルプの水分散液88kgをトップファイナー(相川鉄工株式会社製、固定側最外周刃物のスリット幅:0.5mm)を用い、10分間循環運転を行い、解繊処理して、TEMPO酸化パルプをMFCとした。次いで、後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表3に示す。
実施例4で得られたTEMPO酸化パルプをイオン交換水に分散させ、水酸化ナトリウムを添加して攪拌することにより、固形分濃度2重量%のTEMPO酸化パルプの水分散液を得た。
このTEMPO酸化パルプの水分散液2kgを、パルプ離解機(無段変速機付)(熊谷理機工業株式会社製)を用い、回転数3000rpmで10分間運転を行って処理した。この水分散液のpHは7.5であった。次いで、後述する方法によって、処理後のTEMPO酸化パルプの水分散液を評価した。結果を表3に示す。
<化学変性パルプの調製5>
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙株式会社製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で111g加え、パルプ固形分が20重量%になるように水を加えた。その後、この混合物を30℃で30分撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。この混合物を30分撹拌した後に、70℃まで昇温しさらに1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和後、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.26の化学変性パルプ(CM化パルプ)を得た。
得られたCM化パルプの水分散液88kgをトップファイナー(相川鉄工株式会社製、固定側最外周刃物のスリット幅:0.5mm)を用い、10分間循環運転を行い、解繊処理して、CM化パルプをMFCとした。次いで、後述する方法によって、当該MFCを評価した。結果を表3に示す。
実施例5で得られた固形分濃度98重量%のCM化パルプをイオン交換水に分散させ、水酸化ナトリウムを添加して攪拌することにより、固形分濃度2重量%のCM化パルプの水分散液を得た。
このCM化パルプの水分散液2kgを、パルプ離解機(無段変速機付)(熊谷理機工業株式会社製)を用い、回転数3000rpmで10分間運転を行って処理した。この水分散液のpHは7.3であった。次いで、後述する方法によって、処理後のCM化パルプの水分散液を評価した。結果を表3に示す。
<平均繊維長、平均繊維幅>
処理後の分散液にイオン交換水を加えて0.25重量%スラリーを調製し、バルメット社製フラクショネータを用いて測定し、length−weighted fiber width及びlength−weighted average fiber lengthとして求めた(n=2)。
処理後の分散液にイオン交換水を加えて0.25重量%スラリーを調製し、バルメット社製フラクショネータを用いて測定した。
処理後の分散液にイオン交換水を加えて1重量%スラリーを調製し、25℃で3時間放置した後、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.1〜4のうち適切なローターを使用して回転数60rpmで1分後の粘度を測定した。
処理後の分散液にイオン交換水を加えて固形分0.3重量%のスラリー(媒質:水)を40mL調製した。このときのスラリーの重量をAとする。次いで、高速冷却遠心機を用いてスラリーの全量を、30℃、25000Gの条件で30分間遠心分離し、水相と沈降物とを分離した。このときの沈降物の重量をBとする。また、水相をアルミカップに入れ、105℃で一昼夜乾燥させて水を除去し、水相中の固形分の重量を測定した。この水相中の固形分の重量をCとする。以下の式を用いて、保水能を計算した:
保水能=(B+C−0.003×A)/(0.003×A−C)。
保水能は、上述の式の通り、沈降物中の繊維の固形分の重量に対する沈降物中の水の重量に相当する。値が大きいほど、繊維が水を保持する力が高いことを意味する。
BET比表面積は、窒素ガス吸着法(JIS Z 8830)を参考に以下の方法により測定した:
(1)処理後の分散液に、必要に応じてイオン交換水を加えて約2%スラリー(分散媒:水)を調製し、これを固形分が約0.1gとなるように取り分け遠心分離の容器に入れ、100mLのエタノールを加えた。
(2)攪拌子を入れ、500rpmで30分以上攪拌した。
(3)撹拌子を取り出し、遠心分離機で、7000G、30分、30℃の条件でフィブリル化された化学変性セルロース繊維を沈降させた。
(4)フィブリル化された化学変性セルロース繊維をできるだけ除去しないようにしながら、上澄みを除去した。
(5)100mLエタノールを加え、撹拌子を加え、(2)の条件で攪拌、(3)の条件で遠心分離、(4)の条件で上澄み除去をし、これを3回繰り返した。
(6)(5)の溶媒をエタノールからt−ブタノールに変え、t−ブタノールの融点以上の室温下で、(5)と同様にして撹拌、遠心分離、上澄み除去を3回繰り返した。
(7)最後の溶媒除去後、t−ブタノールを30mL加え、軽く混ぜた後ナスフラスコに移し、氷浴を用いて凍結させた。
(8)冷凍庫で30分以上冷却した。
(9)凍結乾燥機に取り付け、3日間凍結乾燥した。
(10)BET測定装置(Micromeritics(マイクロメリティックス)社製)を用いてBET測定を行った(前処理条件:窒素気流下105℃2時間、相対圧0.01〜0.30、サンプル量30mg程度)。
Claims (5)
- 化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法であって、
原料パルプを化学変性して化学変性パルプを得る化学変性工程と、
前記化学変性工程で得た化学変性パルプを固形分濃度15重量%以下の条件でディスクリファイナーを用いて叩解処理する叩解処理工程と、を含み、
BET比表面積が50m2/g以上、平均繊維幅が500nm以上である化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を製造する製造方法。 - 化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法であって、
原料パルプを化学変性して化学変性パルプを得る化学変性工程と、
前記化学変性工程で得た化学変性パルプを固形分濃度15重量%以下の条件でコニカル型リファイナーを用いて叩解処理する叩解処理工程と、を含み、
BET比表面積が50m2/g以上、平均繊維幅が500nm以上である化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を製造する製造方法。 - 化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法であって、
原料パルプを化学変性して化学変性パルプを得る化学変性工程と、
前記化学変性工程で得た化学変性パルプを固形分濃度15重量%以下の条件で高速離解機を用いて解繊処理する工程と、を含み、
BET比表面積が50m2/g以上、平均繊維幅が500nm以上である化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維を製造する製造方法。 - 前記化学変性が、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群から選択される化合物と、酸化剤を用いて実施する酸化である、請求項1〜3の何れかに記載の化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法。
- 前記化学変性が、カルボキシメチル変性である、請求項1〜3の何れかに記載の化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の製造方法。
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