JP6619576B2 - セルロースナノファイバーの製造方法 - Google Patents

セルロースナノファイバーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロースナノファイバーの製造方法に関する。
近年、物質をナノメートルレベルまで微細化し、物質が持つ従来の性状とは異なる新たな物性を得ることを目的としたナノテクノロジーが注目されている。化学処理、粉砕処理等のナノテクノロジーによりセルロース系原料から製造されるセルロースナノファイバーは、強度、弾性、熱安定性等に優れているため、ろ過材、ろ過助剤、イオン交換体の基材、クロマトグラフィー分析機器の充填材、樹脂及びゴムの配合用充填剤等としての工業上の用途や、口紅、粉末化粧料、乳化化粧料等の化粧品の配合剤の用途に用いられている。また、セルロースナノファイバーは、水系分散性に優れているため、食品、化粧品、塗料等の粘度の保持剤、食品原料生地の強化剤、水分保持剤、食品安定化剤、低カロリー添加物、乳化安定化助剤などの多くの用途における利用が期待されている。
このようなセルロースナノファイバーの製造方法として、セルロース繊維を気相中でオゾン処理した後、水に分散し、得られたセルロース繊維の水懸濁液を粉砕処理する方法が検討されている(特開2010−254726号公報参照)。このようなオゾン処理を施すことで、酸化反応と共に繊維を膨潤させることができ、その後の粉砕処理で効率的に微細化を行うことができるとされている。
しかし、気相中で酸化処理された繊維を用いた場合、酸化処理の際に繊維が露出している部分と露出していない部分とが生じ、両者の間で酸化反応の進行度合いが異なるためか、微細化して得られるセルロースナノファイバーのサイズ等のばらつきが大きくなる。セルロースナノファイバーのサイズのばらつきは、物性のばらつきや、品質低下等の要因となり好ましいことではない。特に、このサイズのばらつきは、繊維が最小単位にまで微細化されていない、ある程度の大きさを有するセルロースナノファイバーを製造しようとする場合に顕著に生じることとなる。
特開2010−254726号公報
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、気相反応で酸化処理されたパルプ繊維を用い、ある程度の大きさを有し、かつサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを高回収率で得ることができるセルロースナノファイバーの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、気相反応で酸化処理されたパルプ繊維を用いセルロースナノファイバーを製造する方法において、鉱酸との混合により上記パルプ繊維を前処理する工程、及び上記前処理が施されたパルプ繊維を水中に分散した状態で微細化する工程を備え、上記前処理工程におけるpHが1.0以上2.0以下であり、上記前処理工程における処理温度が60℃以上100℃以下であり、上記前処理工程における処理時間が1時間以上6時間以下であるセルロースナノファイバーの製造方法である。
当該セルロースナノファイバーの製造方法によれば、原料である気相反応で酸化処理されたパルプ繊維に対して上記条件の前処理を施すことで、ある程度の大きさを有し、かつサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを高回収率で得ることができる。この理由は定かではないが、前処理工程において、pHを1以上2以下とし、処理温度を60℃以上100℃以下の比較的低温とし、かつ処理時間を1時間以上6時間以下の比較的長時間の設定としていることで、パルプ繊維の過度な加水分解が抑えられ、適度かつ均一的に加水分解された状態でパルプ繊維が十分かつ均一的に膨潤すること等が考えられる。
上記鉱酸が硫酸であるとよい。このように上記鉱酸として硫酸を用いることで、上記サイズを有し、サイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーをより効率的かつ高回収率で製造することができる。
上記パルプ繊維からのセルロースナノファイバーの回収率が90%以上であり、セルロースナノファイバーの水分散状態でレーザー回折法により測定される擬似粒度分布曲線が1つのピークを有することが好ましい。当該セルロースナノファイバーの製造方法によれば、このように回収率が高く、特定のサイズを有し、かつサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを効率的に製造することができる。
上記前処理工程を液相で行うとよく、上記液相における上記パルプ繊維の固形分濃度が1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。このように、上記前処理工程を液相で行い、上記液相における上記パルプ繊維の固形分濃度を上記範囲とすることで、セルロースナノファイバーをより効率よく製造することができる。
上記前処理工程と上記微細化工程との間に、上記前処理が施されたパルプ繊維を中和する工程及び/又は上記前処理が施されたパルプ繊維を洗浄する工程をさらに備えるとよい。このように、上記前処理が施されたパルプ繊維を中和する工程及び/又は上記前処理が施されたパルプ繊維を洗浄する工程をさらに備えることで、より良好な特性を有するセルロースナノファイバーを高回収率で製造することができる。
ここで、「セルロースナノファイバー」とは、平均繊維幅が1,000nm以下のセルロース繊維をいう。「平均繊維幅」とは、電子顕微鏡又は電界放射型走査電子顕微鏡を用いて測定される繊維幅の平均の値である。「回収率」とは、原料であるパルプ繊維の供給量に対する得られるセルロースナノファイバーの生産量の割合であり、気相反応で酸化処理されたパルプ繊維の絶乾質量に対する微細化処理後に得られるセルロースナノファイバーの絶乾質量の百分率をいう。「擬似粒度分布曲線」とは、ISO−13320(2009)に準拠して、粒度分布測定装置(例えばセイシン企業社の「レーザー回折・散乱式粒度分布測定器」)を用いて測定される体積基準粒度分布を示す曲線を意味する。
以上説明したように、本発明のセルロースナノファイバーの製造方法によれば、気相反応で酸化処理されたパルプ繊維を用い、ある程度の大きさを有し、かつサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを高回収率で得ることができる。従って、当該セルロースナノファイバーの製造方法によって得られるセルロースナノファイバーは、ろ過材、ろ過助剤、イオン交換体の基材、クロマトグラフィー分析機器の充填材、樹脂及びゴムの配合用充填剤、化粧品の配合剤、食品及び塗料の粘度保持剤、食品原料生地の強化剤、水分保持剤、食品安定化剤、低カロリー添加物、乳化安定化助等の多くの用途に好適に用いることができる。
<セルロースナノファイバーの製造方法>
当該セルロースナノファイバーの製造方法は、鉱酸との混合によりパルプ繊維を前処理する工程(以下、「前処理工程」ともいう)、及び上記前処理が施されたパルプ繊維を水中に分散した状態で微細化する工程(以下、「微細化工程」ともいう)を備える。当該セルロースナノファイバーの製造方法は、必要に応じて、上記前処理工程と上記微細化工程との間に、上記前処理が施されたパルプ繊維を予備叩解する工程(以下、「予備叩解工程」ともいう)、上記前処理が施されたパルプ繊維を中和する工程(以下、「中和工程」ともいう)、上記前処理が施されたパルプ繊維を洗浄する工程(以下、「洗浄工程」ともいう)及び/又は上記前処理が施されたパルプ繊維から鉱酸を含む水を除去する工程(以下、「脱水工程」ともいう)をさらに備えてもよい。当該セルロースナノファイバーの製造方法が脱水工程を備える場合、脱水工程により除去された鉱酸を含む水を前処理工程において再利用してもよい。当該セルロースナノファイバーの製造方法が脱水工程を備える場合、脱水工程により除去された鉱酸を含む水を前処理工程において再利用してもよい。以下、原料となる気相反応で酸化処理されたパルプ繊維、及び各工程について説明する。
(気相反応で酸化処理されたパルプ繊維)
上記気相反応で酸化処理されたパルプ繊維としては、例えば広葉樹晒亜硫酸パルプ(LBSP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒亜硫酸パルプ(NBSP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の晒パルプ(漂白パルプ)の中で、漂白処理として、気相反応で酸化処理が行われたもの等を挙げることができる。また、上記気相反応で酸化処理されたパルプ繊維としては、例えばその他の化学パルプ、機械パルプ等の木材パルプ、麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、竹、籾殻、わら等の木材以外の繊維原料を主成分したパルプ、古紙パルプ、脱墨パルプなどを気相反応で酸化処理して得られたパルプ繊維であってもよい。上記パルプ繊維としては、これらの中で、ある程度の大きさを有し、かつサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを高回収率で得る観点から、気相反応で酸化処理されたLBKPがより好ましい。
気相反応で酸化処理する方法としては、例えば塩素系化合物等の常温で液体又は固体の酸化剤の蒸気相、オゾン等の常温で気体の酸化剤などをパルプ繊維に混合することにより接触させて処理する方法などが挙げられる。
上記酸化剤を蒸気相とする方法としては、例えばオートクレーブ装置等を用いて、上記酸化剤等を蒸気化する方法等が挙げられる。
上記塩素系化合物としては、例えば
二酸化塩素;
塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸塩;
亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸塩などが挙げられる。
上記塩素系化合物以外の常温で液体又は固体の酸化剤としては、例えば硫酸、過硫酸、過酢酸、過酸化水素等が挙げられる。
上記常温で液体又は固体の酸化剤の混合率の下限としては、パルプ繊維の絶乾質量に対して、0.5L/kgが好ましく、1.2L/kgがより好ましい。上記混合率の上限としては、5.0L/kgが好ましく、3.5L/kgがより好ましい。上記混合率を上記範囲とすることで、反応効率よくパルプ繊維を酸化処理することができる。
上記オゾンの混合濃度の下限としては、50g/mが好ましい。上記混合濃度の上限としては、250g/mが好ましく、215g/mがより好ましい。上記混合濃度を上記範囲とすることで、オゾンが爆発することなく反応効率よくパルプ繊維を酸化処理することができる。
上記常温で液体又は固体の酸化剤の蒸気相を用いる場合、上記酸化処理温度の下限としては、140℃が好ましく、150℃がより好ましい。上記酸化処理温度の上限としては、200℃が好ましく、170℃がより好ましい。上記酸化処理時間の下限としては、15分が好ましく、20分がより好ましい。上記酸化処理時間の上限としては、120分が好ましく、90分がより好ましい。上記蒸気相のpHの下限としては、2が好ましく、3がより好ましい。上記蒸気相のpHの上限としては、5が好ましく、4がより好ましい。酸化処理の条件を上記範囲とすることで、よりサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを得ることができる。
酸化処理方法としては、ある程度の大きさを有し、かつサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを高回収率で得る観点から、常温で気体の酸化剤などをパルプ繊維に混合することにより接触させて処理する方法が好ましく、オゾンをパルプ繊維に混合することにより接触させて処理する方法がより好ましい。
これらの酸化処理方法は1種単独で又は2種以上を用いることができる。
(前処理工程)
当該セルロースナノファイバーの製造方法は、前処理工程を備える。本工程では、気相反応で酸化処理されたパルプ繊維を用い、鉱酸との混合により上記パルプ繊維を前処理する。本工程では、上記パルプ繊維が鉱酸と混合されることにより、加水分解された状態で膨潤する。
上記前処理工程に用いる鉱酸としては、例えば酢酸、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、酢酸、安息香酸、メタクロロ安息香酸、ギ酸、プロピオン酸等が挙げられる。これらの中で、パルプ繊維の過度な加水分解をより抑え、より適度かつ均一にパルプ繊維を加水分解する観点から、硫酸が好ましい。これらの鉱酸は1種単独で又は2種以上を用いることができる。
前処理工程は、液相で行っても気相で行ってもよい。
前処理工程を液相で行う方法としては、鉱酸の水溶液を上記パルプ繊維に混合することにより鉱酸の水溶液と上記パルプ繊維とを接触させて処理する方法等が挙げられる。
前処理工程を気相で行う方法としては、鉱酸の蒸気相を上記パルプ繊維に混合することにより接触させて処理する方法等が挙げられる。上記鉱酸を蒸気相とする方法としては、例えばオートクレーブ装置等を用いて、鉱酸を蒸気化する方法等が挙げられる。
前処理工程としては、鉱酸による処理をより効率よく行い、よりサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを得る観点から、液相で行うことが好ましい。
上記鉱酸の混合率の下限としては、パルプ繊維の絶乾質量に対して0.9質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。上記鉱酸の混合率の上限としては、32質量%が好ましく、20質量%がより好ましい。上記鉱酸の混合率を上記範囲とすることで、よりサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーをより高回収率で得ることができる。
前処理工程を液相で行う場合、前処理工程における上記鉱酸水溶液の濃度の下限としては、鉱酸が硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の強酸の場合は、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。上記濃度の上限としては、40質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、5質量%が特に好ましい。鉱酸が酢酸、安息香酸、メタクロロ安息香酸硫酸、ギ酸、プロピオン酸等の弱酸の場合は、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましい。上記濃度の上限としては、100質量%が好ましく、95質量%がより好ましい。上記濃度が上記下限に満たないと、セルロースナノファイバーが十分に加水分解されないおそれがある。一方上記濃度が上記上限を超えると、セルロースナノファイバーが過度に加水分解されるおそれがある。
前処理工程における処理温度は、60℃以上100℃以下である。上記処理温度が上記下限に満たないと、加水分解反応が著しく低下するおそれがある。一方、上記処理温度が上記上限を超えると、セルロースナノファイバーの回収率が低くなるおそれがある。
前処理工程における処理温度の下限としては、70℃が好ましい。上記処理温度の上限としては、97℃が好ましく、90℃がより好ましい。上記処理温度を上記範囲とすることで、よりサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーをより高回収率で得ることができる。
前処理工程における処理時間は、1時間以上6時間以下である。上記処理時間が上記下限に満たないと、パルプ繊維が充分に加水分解されないおそれがある。一方、上記処理時間が上記上限を超えると、加水分解反応が頭打ち状態となるおそれがある。
前処理工程における処理時間の下限としては、2時間が好ましく、4時間がより好ましい。上記処理時間を上記範囲とすることで、よりサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを得ることができる。
前処理工程における混合物のpHは、1.0以上2.0以下である。上記pHが上記下限に満たないと、セルロースナノファイバーが過度に加水分解され、回収率が低下するおそれがある。一方上記pHが上記上限を超えると、セルロースナノファイバーのサイズのばらつきが大きくなるおそれがある。
前処理工程における混合物のpHの下限としては、1.5が好ましい。上記pHを上記範囲とすることで、パルプ繊維の加水分解をより適度にすることができる。
前処理工程を液相で行う場合、上記液相における上記パルプ繊維の固形分濃度の下限としては、1質量%が好ましい。上記固形分濃度の上限としては、20質量%が好ましい。上記固形分濃度を上記範囲とすることで、セルロースナノファイバーをより効率よく製造することができる。
(中和工程)
当該セルロースナノファイバーの製造方法は、必要に応じて、前処理工程と微細化工程との間に、中和工程をさらに備えてもよい。本工程では、上記前処理が施されたパルプ繊維を中和する。当該セルロースナノファイバーの製造方法は、本工程を備えることにより、効果的かつ適切にパルプ繊維を微細化することができる。
中和の方法としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等のアルカリを上記前処理が施されたパルプ繊維に添加する方法等が挙げられる。これらのアルカリは1種単独で又は2種以上を用いることができる。
(洗浄工程)
当該セルロースナノファイバーの製造方法は、必要に応じて、前処理工程と微細化工程との間に、洗浄工程をさらに備えてもよい。本工程では、上記前処理が施されたパルプ繊維を洗浄する。当該セルロースナノファイバーの製造方法は、本工程を備えることにより、効果的かつ適切にパルプ繊維を微細化することができる。
洗浄の方法としては、例えば上記前処理が施されたパルプ繊維を水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等のアルカリの水溶液、酢酸、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、酢酸、安息香酸、メタクロロ安息香酸、ギ酸、プロピオン酸等の酸の水溶液、蒸留水、工業用水などにより洗浄する方法などが挙げられる。これらの方法は1種単独で又は2種以上を用いることができる。
(脱水工程)
当該セルロースナノファイバーの製造方法は、必要に応じて、前処理工程と微細化工程との間に、脱水工程をさらに備えてもよい。本工程では、上記前処理が施されたパルプ繊維から過硫酸類を含む水を除去する。当該セルロースナノファイバーの製造方法は、本工程を備えることにより、効果的かつ適切にパルプ繊維を微細化することができる。水を除去する方法は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
(予備叩解工程)
当該セルロースナノファイバーの製造方法は、必要に応じて、前処理工程と微細化工程との間に、予備叩解工程をさらに備えてもよい。当該セルロースナノファイバーの製造方法が中和工程、洗浄工程及び/又は脱水工程をさらに備える場合は、中和工程、洗浄工程と微細化工程及び/又は脱水工程との間に予備叩解工程を備える。本工程では、上記前処理が施されたパルプ繊維を予備叩解する。当該セルロースナノファイバーの製造方法は、予備叩解工程を備えることで、微細化工程においてより効率的にパルプ繊維を微細化することができる。
予備叩解方法としては、物理的方法、上記酸化処理及び上記前処理以外の化学的方法等が挙げられる。
物理的方法としては、例えばパルパー、ビーター、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー等の粘状叩解設備を用いる方法などが挙げられる。
上記前処理以外の化学的方法としては、特に限定されず、公知の化学的方法を用いることができる。
予備叩解方法としては、物理的方法が好ましく、粘状叩解設備を用いる方法がより好ましく、ビーターを用いる方法がさらに好ましい。
ビーターを用いる方法で予備叩解工程を行う場合、上記パルプ繊維の固形分濃度の下限としては、0.5質量%が好ましく、1.5質量%がより好ましい。上記固形分濃度の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。上記固形分濃度を上記範囲とすることで、セルロースナノファイバーをより効率よく製造することができる。
ビーターの処理時間の下限としては、30分が好ましく、55分がより好ましい。一方、ビーターの処理時間の上限としては、5時間が好ましく、3時間がより好ましい。ビーターの処理時間が上記下限に満たないと、微細化が不十分となるおそれがある。ビーターの処理時間が上記上限を超えると、微細化度合が頭打ち状態になるおそれがある。
予備叩解工程を物理的方法により行う場合、処理温度の下限としては、通常5℃であり、25℃が好ましい。上記処理温度の上限としては、通常80℃であり、45℃が好ましい。上記処理温度を上記範囲とすることで、よりサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを高回収率で得ることができる。
(微細化工程)
当該セルロースナノファイバーの製造方法は、微細化工程を備える。本工程では、上記前処理が施されたパルプ繊維を水中に分散した状態で微細化する。上記前処理が施されたパルプ繊維は、微細化工程により解繊処理される。微細化方法は、1種単独で又は2種以上を用いることができる。また、本工程を繰り返し行うことにより、セルロースナノファイバーを所望の平均繊維幅とすることができる。
微細化方法としては、例えば石臼型粉砕機等を用いるグラインダー法、パルプ繊維を水に分散させて高圧下で対向衝突させる水中対向衝突法、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーター等を用いて機械的に微細化する方法などが挙げられる。
微細化方法としては、これらの中でセルロースナノファイバーをより容易かつ確実に得ることができる観点から、石臼式磨砕機、高圧ホモジナイザー及びボールミルを用いる方法が好ましく、石臼式磨砕機を用いる方法がより好ましい。
石臼式磨砕機を用いるグラインダー法では、具体的には、石臼式磨砕機の擦り合わせ部にパルプ繊維を通過させることで、パルプ繊維が通過の際の衝撃、遠心力、剪断力等により次第に磨り潰され、化学的に変質することなく、均一なセルロースナノファイバーが得られる。
石臼式磨砕機を用いる方法で微細化処理を行う場合、上記パルプ繊維の固形分濃度の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。上記固形分濃度の上限としては、5質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。上記固形分濃度を上記範囲とすることで、セルロースナノファイバーをより効率よく製造することができる。
石臼式磨砕機の回転速度の下限としては、500rpmが好ましく、800rpmがより好ましい。一方、石臼式磨砕機の回転速度の上限としては、2,000rpmが好ましく、1,400rpmがより好ましい。石臼式磨砕機の回転速度が上記下限に満たないと、遠心力が足りず、微細化処理されたセルロースナノファイバーが排出されないおそれがある。石臼式磨砕機の回転速度が上記上限を超えると、遠心力によってパルプ繊維が微細化されないまま排出されてしまうおそれがある。
微細化工程の温度の下限としては、25℃が好ましく、30℃がより好ましい。一方、微細化の温度の上限としては、80℃が好ましく、65℃がより好ましい。微細化工程の温度が上記下限に満たないと、微細化が進んでいないおそれがある。微細化工程の温度が上記上限を超えると、突沸等によりパルプ繊維を供給できなくなるおそれがある。
当該セルロースナノファイバーの製造方法により得られるセルロースナノファイバーは、水分散状態でレーザー回折法により測定される擬似粒度分布曲線が単一のピークを有する。上記セルロースナノファイバーが上記単一のピークを有することで、セルロースナノファイバーのばらつきが小さくなる。
パルプ繊維からの上記セルロースナノファイバーの回収率の下限としては、90%が好ましく、95%がより好ましく、98%がさらに好ましい。
上記セルロースナノファイバーの平均繊維幅の下限としては、4nmが好ましく、20nmがより好ましい。上記セルロースナノファイバーの平均繊維幅を上記範囲とすることで、セルロースナノファイバーの大きさをある程度の大きさとすることができる。
電子顕微鏡又は電界放射型走査電子顕微鏡を用いて測定される上記セルロースナノファイバーの平均繊維長の平均繊維幅に対する比(以下、「アスペクト比」ともいう)の下限としては、100が好ましい。セルロースナノファイバーのアスペクト比を上記範囲とすることで、繊維形状を維持しつつ微細化されたセルロースナノファイバーを得ることができる。
上記セルロースナノファイバーの保水度の下限としては、300%が好ましく、350%がより好ましい。上記セルロースナノファイバーの保水度を上記範囲とすることで、水等への分散性に優れるセルロースナノファイバーを製造することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<評価方法>
実施例及び比較例の各種物性は、以下の評価方法に準じて測定した。
(回収率(%))
気相反応で酸化処理されたパルプ繊維の絶乾質量に対する微細化処理後のセルロースナノファイバーの絶乾質量の百分率を求め、これを回収率(%)とした。
(擬似粒度分布曲線)
ISO−13320(2009)に準拠して、粒度分布測定装置(セイシン企業社の「レーザー回折・散乱式粒度分布測定器」)を用い、セルロースナノファイバーの水分散状態で体積基準粒度分布を示す曲線を測定し、ピークの数を数えた。
(形状)
電界放射型走査型電子顕微鏡を用い、セルロースナノファイバーの形状を観察した。
(平均繊維幅)
電界放射型走査型電子顕微鏡を用い、セルロースナノファイバーの繊維幅を測定し、その平均繊維幅を求めた。
<実施例1>
(前処理工程)
パルプ繊維(LBKP)をオゾンにて気相反応で酸化処理した。25℃において、容器にこの酸化処理したパルプ繊維(水分80%)2,500gと、希硫酸(硫酸濃度30%)と、清水2Lとを、鉱酸の混合率がパルプ繊維の絶乾質量に対して30質量%となるように混合し、混合物のpHを1とした。次いで、水温80℃にしたウォーターバス中でこの混合物を6時間処理し、前処理を施したパルプ繊維を得た。
(中和工程及び洗浄工程)
前処理をしたパルプ繊維を、水酸化ナトリウムにより中和し、その後、工業用水により洗浄した。
(予備叩解工程)
ナイヤガラビーター(熊谷理機工業社の「試験用ナイヤガラビーター」)を用い、上記洗浄工程後のパルプ繊維を、パルプ繊維の固形分濃度2質量%、23Lにて1時間処理した。
(微細化工程)
石臼式磨砕機(増幸産業社の「スーパーマスコロイダー」)を用い、上記予備叩解したパルプ繊維を回転速度1,000rpmで、パルプ繊維の固形分濃度2質量%にて1回処理し、セルロースナノファイバーを得た。
得られたセルロースナノファイバーは、回収率が90%以上であり、擬似粒度分布曲線においてピークの数が1つであり、電界放射型走査型電子顕微鏡で観察される形状が繊維状であり、平均繊維幅が1,000nm以下であった。
<実施例2〜5及び比較例1〜4>
実施例2〜5及び比較例1〜3は、実施例1の前処理工程の条件等を表1のようにしたこと以外は、実施例1と同様に行った。比較例4として、CNC(メイン大学の「Cellulose nanocrystals」)を用いた。
実施例及び比較例における前処理工程及び微細化工程の条件並びに評価結果を表1に示す。
Figure 0006619576
上述のように、本発明のセルロースナノファイバーの製造方法によれば、気相反応で酸化処理されたパルプ繊維を用い、ある程度の大きさを有し、かつサイズのばらつきの小さいセルロースナノファイバーを高回収率で得ることができる。従って、当該セルロースナノファイバーの製造方法によって得られるセルロースナノファイバーは、ろ過材、ろ過助剤、イオン交換体の基材、クロマトグラフィー分析機器の充填材、樹脂及びゴムの配合用充填剤、化粧品の配合剤、食品及び塗料の粘度保持剤、食品原料生地の強化剤、水分保持剤、食品安定化剤、低カロリー添加物、乳化安定化助等の多くの用途に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 気相反応で酸化処理されたパルプ繊維を用いセルロースナノファイバーを製造する方法において、
    鉱酸との混合により上記パルプ繊維を前処理する工程、及び
    上記前処理が施されたパルプ繊維を水中に分散した状態で微細化する工程
    を備え、
    上記前処理工程におけるpHが1.0以上2.0以下であり、
    上記前処理工程における処理温度が60℃以上100℃以下であり、
    上記前処理工程における処理時間が1時間以上6時間以下であり、
    上記鉱酸の混合率が、上記パルプ繊維の絶乾質量に対して0.9質量%以上32質量%以下であるセルロースナノファイバーの製造方法。
  2. 上記鉱酸が硫酸である請求項1に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
  3. 上記パルプ繊維からのセルロースナノファイバーの回収率が90%以上であり、
    セルロースナノファイバーの水分散状態でレーザー回折法により測定される擬似粒度分布曲線が1つのピークを有する請求項1又は請求項2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
  4. 上記前処理工程を液相で行い、
    上記液相における上記パルプ繊維の固形分濃度が1質量%以上20質量%以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
  5. 上記前処理工程と上記微細化工程との間に、上記前処理が施されたパルプ繊維を中和する工程及び/又は上記前処理が施されたパルプ繊維を洗浄する工程をさらに備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
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