JP6845541B2 - マツタケ菌根苗の作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マツタケの栽培方法に関する。
マツタケ等の菌根性きのこは、木本植物である宿主植物の根に共生することで、宿主植物から光合成産物を栄養源として供給されて生育する。
菌根性きのこの人工栽培には、一般的に、菌根苗の作製が有効と考えられている。菌根苗の作製方法について、これまでいくつか提案がなされてきた。
例えば、菌根性きのこであるマツタケは、生育が極めて緩慢であることから、マツタケ菌根苗の作製には、雑菌の混入(コンタミネーション)を防ぐ必要がある。そこで、非特許文献1、特許文献2、特許文献4には、無菌環境下においてマツタケなどの菌根苗を作製するとともに、宿主植物の管理も無菌環境下で行う方法が開示されている。また、特許文献1、特許文献5には、菌根菌を固体培地で無菌的に増殖させる方法が開示されている。また、特許文献3には、取り木法で無菌根の大型苗を得る方法が開示されている。
菌根苗の宿主となる木本植物の細根には、目的とする菌根菌以外の菌根菌(雑菌根菌)が無いことが好ましい。そこで、非特許文献1、特許文献2、特許文献4には、寒天培地上で無菌的に発芽させた苗を用いる方法が開示されている。
特開平5−260847号公報 特開2001−169659号公報 特開平9−201129号公報 特開2001−120061号公報 特開2005−27546号公報
大型培養容器によるマツタケのシロ様構造を有するマツ菌根苗の生産、小林ら:日本きのこ学会誌Vol.15、No.3、2007年
しかしながら、非特許文献1、特許文献2、特許文献4に記載の菌根苗の作製と宿主植物の管理との両方を無菌環境下で行う方法では、無菌環境下での管理には、特殊な培養容器や繁雑な作業を伴うため作業効率が悪く、コンタミネーションの危険性を完全に排除することができないという問題があった。また、アカエゾマツやトドマツのように極端に初期成長が遅い北方系樹種を宿主植物とした場合には、十分な大きさの無菌苗及び菌根苗を得ることは困難であった。
また、特許文献1、特許文献5に記載の菌根菌を固体培地で無菌的に増殖させる方法では、外生菌根菌の中でも比較的生育が速いヌメリイグチ、シノコッカム ジオフィラムなどでは菌根形成が成功しているものの、生育が極めて緩慢なマツタケなどでは菌根形成がなされず、また、広葉樹に比べ、マツタケの宿主となる針葉樹に対する菌根形成は、ヌメリイグチにおいても成功率が低いことが難点であった。
また、特許文献3に記載の取り木法で無菌根の大型苗を得る方法では、繁雑な作業を伴うために作業効率が悪く、得苗率が低いという問題があった。
また、非特許文献1、特許文献2、特許文献4に記載の寒天培地上で無菌的に発芽させた苗を用いる方法では、得られる実生のサイズが小さく、また、十分な大きさの無菌苗を得るまでかなりの時間を要するため、その間コンタミネーションの危険性を完全に排除することが不可能という点で課題を残していた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡便かつ確実にマツタケの菌根苗を作製することのできるマツタケの栽培方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のマツタケの栽培方法は、
(a)宿主植物を水耕長日処理によって育成する工程と、
(b)炭含有培地においてマツタケの菌糸を培養することで接種源を調製する工程と、
(c)前記工程(a)で育成された前記宿主植物に、前記接種源を接種して、長日処理で育成することで菌根苗を得る工程と、
(d)前記菌根苗を土中に埋設する工程と、
を含み、
前記工程(a)及び(c)〜(d)は、非無菌環境下で行われる、
ことを特徴とするマツタケの栽培方法。
例えば、前記炭含有培地は、無機質担体に混合された炭を含む。
例えば、前記炭含有培地において、前記炭は、前記無機質担体及び前記炭の重量に対して、0.2重量%〜20重量%含まれる。
本発明によれば、簡便かつ確実にマツタケの菌根苗を作製することのできるマツタケの栽培方法を提供することができる。
(a)は、アカエゾマツの水耕長日処理の様子を示した写真図であり、(b)は、アカエゾマツの育成後に発生している細根を示した写真図であり、(c)は、水耕長日処理を行ったアカエゾマツの苗(右側)と未処理のアカエゾマツの苗(左側)とを示した写真図である。 (a)は、長日処理によって育成されたアカエゾマツの菌根苗の様子を示した写真図であり、(b)は、長日処理を行ったアカエゾマツの菌根苗(右側)と未処理のアカエゾマツの菌根苗(左側)とを示した写真図であり、(c)は、アカエゾマツの菌根苗の根の部分に繁殖している白色の菌糸を示した写真図であり、(d)は、アカエゾマツの菌根苗の根の部分に繁殖している白色の菌糸の拡大写真の図である。 炭含有培地における炭の添加量と接種源中の菌糸の含有量との関係を示した図である。 炭含有培地における炭の種類と接種源中の菌糸の含有量との関係を示した図である。 マツタケの菌株と接種源中の菌糸の含有量との関係を示した図である。 接種源のpHと接種源中の菌糸の含有量との関係を示した図である。
以下、本実施形態によるマツタケの栽培方法について詳細に説明する。
本実施形態によるマツタケの栽培方法は、
(a)宿主植物を水耕長日処理によって育成する工程と、
(b)炭含有培地においてマツタケの菌糸を培養することで接種源を調製する工程と、
(c)工程(a)で育成された宿主植物に、接種源を接種して、長日処理で育成することで菌根苗を得る工程と、
(d)菌根苗を土中に埋設する工程と、
を含み、
工程(a)及び(c)〜(d)は、非無菌環境下で行われる、
ことを特徴とする。
本実施形態におけるマツタケとしては、あらゆる菌株のマツタケ(例えば、H18、H5、Tm10、Tm11、Y1等)が使用可能である。
工程(a)は、非無菌環境下で、宿主植物を水耕長日処理によって育成する工程である。工程(a)において用いられる宿主植物は、例えば、木本植物であるが、接種源を接種して菌根苗を育成することのできる植物であれば限定されることなく用いられ得、例えば、マツ属(アカマツ等)、モミ属(トドマツ等)、トウヒ属(アカエゾマツ、ヨーロッパトウヒ等)などを例示することができる。工程(a)では、水耕処理(水耕栽培)を行うことで、雑菌根が除去され、細根を多数発生させた宿主植物を得ることができる。細根には接種源が付きやすいため、宿主植物に細根を多数発生させることで、接種源の効率的な接種が可能となる。水耕処理(水耕栽培)の方法としては、公知の手法を採用することができる。
工程(a)における水耕長日処理の条件は、使用される宿主植物の種類によって異なるが、以下が例示される。
・アカエゾマツ、ヨーロッパトウヒ及びアカマツの場合、例えば、播種後20〜60日間育成させ、LED光16〜24時間日長で水耕長日処理を40〜80日間行う。
・トドマツの場合、例えば、播種後20〜60日間育成させ、LED光16〜24時間日長で水耕長日処理を20〜40日間行い、その後、休眠打破処理を40〜60日間行い、その後再び、LED光16〜24時間日長で水耕長日処理を20〜40日間行う。
工程(b)は、無菌環境下で、炭含有培地においてマツタケの菌糸を培養することで接種源を調製する工程である。本明細書において「炭含有培地」とは、炭が添加された、マツタケの菌糸の培養に適した培地であり、例えば含水率が30〜60重量%のものをいう。炭含有培地は、活性の高い接種源を得る観点から、炭を含んでいる。炭含有培地は、好ましくは、無機質担体(例えば、日向土、エゾ砂等)に混合された炭を含む。炭含有培地において、炭は、例えば、無機質担体及び炭の重量(無機質担体と炭とを合わせた全重量)に対して、0.2重量%〜20重量%、好ましくは0.2重量%〜10重量%、より好ましくは0.5重量%〜8重量%含まれる。使用される炭としては、接種源を調製することのできる炭であれば限定されることなく用いることができるが、例えば、カラマツ粉炭、ナラ粉炭、くん炭等の各種粉炭、籾殻炭等を使用することができる。炭含有培地においてマツタケの菌糸を培養することで、菌糸を多く含み活性の高い接種源を得ることができる。また、本明細書において「接種源」とは、マツタケの菌糸を宿主植物に接種させるための、マツタケの菌糸と炭含有培地との混合物をいう。
工程(b)の具体的方法を以下に例示する。無機質担体(例えば、日向土、エゾ砂等)に、粉状の炭を、無機質担体と炭とを合わせた全重量に対して、0.2重量%〜20重量%混合する。次に、含水率が20〜30重量%となるように、菌根菌の培養に用いられる液体培地(例えば、太田培地(Akira OHTA,Trans.Mycol.Soc.Japan 31:323−334,1990)、MMN培地(山田明義,日菌報 42;177−187,2001)、MNC培地(山田明義,日菌報 42;177−187,2001)、浜田培地(山田明義,日菌報 42;177−187,2001)、改変MYPG培地(Toshitsugu SATO,Biosci.Biotechnol.Biochem.,62(12),2346−2350,1998)等)を添加し、オートクレーブにより滅菌する(例えば、121℃、40分間)。次に、無菌環境下(例えば、クリーンベンチ内、キノコ栽培の接種室等)で、含水率が30〜60重量%となるように、マツタケの栄養菌糸(例えば、約20〜50mg(乾燥重量))を含む液体培地(例えば、太田培地、MMN培地、MNC培地、浜田培地、改変MYPG培地等)を添加して、20〜90日間、例えば、温度条件18〜25℃、好ましくは20〜25℃での、無菌環境下(例えば、キノコ栽培用の耐熱性プラスチック袋内等)で培養する。
工程(c)は、非無菌環境下で、工程(a)で育成された宿主植物に、接種源を接種して、長日処理で育成することで菌根苗を得る工程である。本明細書において「菌根苗」とは、マツタケが共生した状態の宿主植物であって、当該マツタケが生育していない場所の土中に埋設することで、当該マツタケを新たに生育させることのできる苗をいう。
工程(a)で育成された宿主植物に接種源を接種する方法について説明する。接種源を接種することのできる方法であれば、適宜採用され得るが、例えば、工程(a)で育成された宿主植物の根の部分を入れたポット内に、非無菌環境下で、工程(b)において調製された接種源を入れて、宿主植物の根の部分に接種源を接触させることで、接種源が宿主植物に接種され得る。
工程(c)における長日処理は、使用される宿主植物の種類によって異なるが、アカエゾマツ、トドマツ、アカマツ及びヨーロッパトウヒの場合、例えば、接種後、LED光16〜24時間日長で長日処理を90日間以上行う。
工程(d)は、非無菌環境下で、菌根苗を土中に埋設する工程である。菌根苗を、マツタケを育成したい所望の場所、例えば、マツタケの未発生林の土中に工程(c)を経て得られた菌根苗を埋設する。菌根苗を土中に埋設することで、埋設場所においてマツタケが新たに育成される。
なお、上記で説明した通り、工程(b)におけるマツタケの菌糸の培養は無菌環境下で行われるが、工程(a)(宿主植物の育成)、工程(c)(菌根苗の取得)及び工程(d)(菌根苗の埋設)は、非無菌環境下で行われる。
一実施形態によるマツタケの栽培方法を以下に示す。
(1)工程(a):宿主植物の育成
宿主植物として、アカエゾマツを非無菌環境下で水耕長日処理によって育成する。より具体的には、播種後30日間育成させ、LED光16時間日長で水耕長日処理を45日間行う。
(2)工程(b):接種源の調製
日向土(無機質担体)にカラマツ粉炭を、無機質担体と炭とを合わせた全重量に対して、5重量%混合する。次に、含水率が20〜30重量%となるように、太田培地(液体培地)を添加し、オートクレーブにより滅菌する(121℃、40分間)。次に、クリーンベンチ内(無菌環境下)で、含水率が30〜60重量%となるように、マツタケの栄養菌糸を含む太田培地(液体培地)を添加して1カ月間、温度条件20〜25℃で、キノコ栽培用の耐熱性プラスチック袋内で培養し、接種源を得る。
(3)工程(c):菌根苗の取得
工程(a)で育成されたアカエゾマツに、非無菌環境下で、工程(b)で調製された接種源を接種する。より具体的には、育成されたアカエゾマツの根の部分を入れたポット内に、接種源を入れて、根の部分に接種源を接触させる。接種後、LED光16時間日長で長日処理を90日間行い、菌根苗を得る。
(4)工程(d):菌根苗の埋設
工程(c)で得られた菌根苗を、非無菌環境下で、土中に埋設する。
以上説明したように、本実施形態による栽培方法では、工程(a)での水耕長日処理によって、雑菌根が除去され、細根を多数発生させた宿主植物を育成することができ、また、工程(b)にて炭含有培地を用いることで、マツタケの菌糸を多く含み活性の高い接種源を得ることができるため、マツタケの菌糸が確実に接種された菌根苗を効率的に作製することができる。生育が極めて緩慢なマツタケについては、非無菌環境下では雑菌のコンタミネーションが避けられず、成長が旺盛な雑菌の繁殖が優先されてしまう危険性が従来はあったが、本実施形態による栽培方法では、非無菌環境下であっても雑菌の繁殖よりもマツタケの菌根形成が優先され、菌根苗を確実かつ高効率に作製することができる。
また、従来の菌根苗の作製においては、各工程を無菌環境下で行うため、特殊な培養容器や繁雑な作業が必要であった。しかしながら、本実施形態による栽培方法では、工程(b)におけるマツタケの菌糸の培養以外の工程は、無菌環境下で行う必要がない。このため、コンテナなど通常の栽培容器を用いて菌根苗を作製することができ、簡便かつ安価にマツタケを栽培することができる。
また、従来、菌根苗を作製するための雑菌根の無い宿主植物を得るためには、無菌的に発芽させた実生を“無菌環境下”で育成するか、高度な技術を要する取り木法で無菌根の大型苗を得る必要があった。しかしながら、本実施形態による栽培方法では、工程(a)において“非無菌環境下”で雑菌根が除去された、細根を多数発生した宿主植物を作製することができ、また、通常の苗床で発芽させた実生や通常の苗畑で管理した苗を用いることができるため、より簡便かつ安価にマツタケを栽培することができる。
また、従来は、極端に初期成長が遅い北方系樹種を宿主植物に用いた場合、十分な大きさの無菌苗を得ることは困難であり、小型の実生苗しか得られないという問題点があった。しかしながら、本実施形態による栽培方法では、北方系樹種毎の樹種特性に応じた長日処理および温度制御を行うことで、比較的短期間で十分な大きさの菌根苗を作製することができる。また、北方系樹種に限らず、本実施形態による栽培方法では、従来よりも短期間で菌根苗を作製することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(宿主植物の育成)
宿主植物として、アカエゾマツ、トドマツ、アカマツ及びヨーロッパトウヒを非無菌環境下で水耕長日処理によって育成した。以下に、各宿主植物の水耕長日処理の条件を示す。
・アカエゾマツ、ヨーロッパトウヒ及びアカマツ:播種後30日間育成させ、LED光16時間日長で水耕長日処理を45日間行った(アカエゾマツ:図1(a))。
・トドマツ:播種後30日間育成させ、LED光16時間日長で水耕長日処理を30日間行い、その後、休眠打破処理を40日間行い、その後再び、LED光16時間日長で水耕長日処理を30日間行った。
アカエゾマツ、トドマツ、アカマツ及びヨーロッパトウヒのいずれにおいても、育成後には細根が多数発生しているのが確認された(アカエゾマツ:図1(b))。また、長日処理していない未処理のアカエゾマツ(図1(c)において左側)に比して、長日処理したアカエゾマツ(図1(c)において右側)では、短期間で十分な大きさの苗が得られていることが示された。
(接種源の調製)
無菌環境下で、日向土(無機質担体)に、日向土と炭とを合わせた全重量に対して、カラマツ粉炭を5重量%混合した。次に、含水率が20〜30重量%となるように、太田培地(液体培地)を添加し、オートクレーブにより滅菌した(121℃、40分間)。次に、クリーンベンチ内で、含水率が30〜60重量%となるように、マツタケの栄養菌糸(20〜50mg(乾燥重量))を含む太田培地(液体培地)を添加して、温度条件20〜25℃で、キノコ栽培用の耐熱性プラスチック袋内で1カ月間培養し、接種源を得た。
(菌根苗の育成)
上記の通り育成されたアカエゾマツ、トドマツ、アカマツ及びヨーロッパトウヒに、各々、接種源を接種した。具体的には、育成されたアカエゾマツ、トドマツ、アカマツ及びヨーロッパトウヒの根の部分を入れたポット内に、前述の通り得られた接種源を入れて、根の部分に接種源を接触させた。接種後、各々、LED光16時間日長で長日処理を90日間行い、菌根苗を育成した。
(菌根苗の確認)
上記の通り育成されたアカエゾマツの菌根苗を図2(a)に示す。長日処理していない未処理のアカエゾマツ(図2(b)において左側)に比して、長日処理したアカエゾマツ(図2(b)において右側)では、短期間で十分な大きさの菌根苗が得られていることが示された。また、アカエゾマツの菌根苗の根の部分を目視したところ、白色の菌糸の繁殖が確認できた(図2(c)、(d))。当該菌糸について、当該部分の根系を顕微鏡観察してマツタケ菌根の特徴を有する根端を確認した。また、当該根端からダイレクトPCR法によりITS領域を増幅し、シーケンス解析の後、DNAデータベースに照合してマツタケ菌であることを確認した。
したがって、本実施例で得られた菌根苗を、マツタケ未発生林の土中に埋設することで、マツタケが育成されることが示唆された。
(実施例2)
炭含有培地における炭の添加量によって接種源中の菌糸の含有量に変化が生じるかについて検証した。
日向土(無機質担体)にカラマツ粉炭を、日向土と炭とを合わせた全重量に対して、0重量%(図3において「炭(−)」)、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、4重量%、5重量%、6重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%、50重量%の添加量で各々混合した。次に、含水率が20〜30重量%となるように、太田培地(液体培地)を添加し、オートクレーブにより滅菌した(121℃、40分間)。次に、クリーンベンチ内で、含水率が30〜60重量%となるように、マツタケの栄養菌糸を含む太田培地(液体培地)を添加して、温度条件20〜25℃で、キノコ栽培用の耐熱性プラスチック袋内で3週間培養し、接種源を得た。各々の炭添加量の接種源について、エルゴステロール量を測定することで、マツタケの菌糸の含有量を検討した。
結果を図3に示す。炭添加量0重量%、0.1重量%に比して、0.5重量%、1重量%、2重量%、4重量%、5重量%、6重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%では、マツタケの菌糸の含有量が大幅に増加していた。
以上より、炭含有培地を用いることで、活性の高い接種源が得られることが示された。また、本実施例の炭含有培地においては、0.5〜15重量%の炭添加量において、活性の高い接種源が得られることが示された。
次に、炭の種類によって接種源中の菌糸の含有量に変化が生じるかについて検証した。
日向土(無機質担体)に、ナラ粉炭、くん炭、カラマツ粉炭(図4において「粉炭」)及び篩にかけていないカラマツ粉炭(図4において「粉炭未篩い」)、比較例としてゼオライト(顆粒)及びゼオライト(粉末)を、日向土と炭(比較例ではゼオライト)とを合わせた全重量に対して、各々5重量%混合した。次に、含水率が20〜30重量%となるように、太田培地(液体培地)を添加し、オートクレーブにより滅菌した(121℃、40分間)。次に、クリーンベンチ内で、含水率が30〜60重量%となるように、マツタケの栄養菌糸を含む太田培地(液体培地)を添加して、温度条件20〜25℃で、キノコ栽培用の耐熱性プラスチック袋内で3週間培養し、接種源を得た。各々の接種源について、エルゴステロール量を測定することで、マツタケの菌糸の含有量を検討した。なお、太田培地の代わりに改変MYPG培地を添加し、カラマツ粉炭を日向土と炭とを合わせた全重量に対して5重量%混合して上記同様に調製した接種源についてもエルゴステロール量を測定した。
結果を図4に示す。比較例であるゼオライト(顆粒)及びゼオライト(粉末)添加に比して、ナラ粉炭、くん炭、カラマツ粉炭及び篩にかけていないカラマツ粉炭添加では、マツタケの菌糸の含有量が大幅に増加していた。また、改変MYPG培地を添加したサンプルでも、マツタケの菌糸の含有量が大幅に増加していた。
以上より、本実施例の炭含有培地においては、添加される炭の種類によらず活性の高い接種源が得られることが示された。
次に、マツタケの菌株によって接種源中の菌糸の含有量に変化が生じるかについて検証した。
日向土(無機質担体)にカラマツ粉炭を、日向土と炭とを合わせた全重量に対して、5重量%混合した。次に、含水率が20〜30重量%となるように、太田培地(液体培地)を添加し、オートクレーブにより滅菌した(121℃、40分間)。次に、クリーンベンチ内で、含水率が30〜60重量%となるように、マツタケの栄養菌糸(H18、H5、Tm10、Tm11、Y1)を各々含む太田培地(液体培地)を添加して、温度条件20〜25℃で、キノコ栽培用の耐熱性プラスチック袋内で3週間培養し、接種源を得た。各々のマツタケの菌株の接種源について、エルゴステロール量を測定することで、マツタケの菌糸の含有量を検討した。
結果を図5に示す。いずれのマツタケの菌株においても、マツタケの菌糸の含有量がエルゴステロール値で50μg/g乾燥接種源を超えていることが確認された。
以上より、本実施例の炭含有培地においては、マツタケの菌株によらず活性の高い接種源が得られることが示された。
次に、接種源のpHによって接種源中の菌糸の含有量に変化が生じるかについて検証した。
日向土(無機質担体)にカラマツ粉炭を、日向土と炭とを合わせた全重量に対して、5重量%混合した。次に、含水率が20〜30重量%となるように、pH5.1、pH4.5、pH3.9の太田培地(液体培地)を添加し、オートクレーブにより滅菌した(121℃、40分間)。次に、クリーンベンチ内で、含水率が30〜60重量%となるように、マツタケの栄養菌糸を含む太田培地(液体培地)を添加して、温度条件20〜25℃で、キノコ栽培用の耐熱性プラスチック袋内で3週間培養し、接種源を得た。培養開始時の培地のpHは順番に、pH6.6、pH6.5、pH6.4であった。各々のpHの接種源について、エルゴステロール量を測定することで、マツタケの菌糸の含有量を検討した。なお、比較例として、カラマツ粉炭を混合しないこと以外は上記同様に調製された接種源(図6において「炭(−)」)についても、エルゴステロール量を測定した。
結果を図6に示す。比較例である「炭(−)」に比して、いずれのpHの接種源においてもマツタケの菌糸の含有量が大幅に増加していた。
以上より、炭含有培地を用いることで、活性の高い接種源が得られることが示された。また、本実施例の炭含有培地においては、添加される液体培地のpHによらず活性の高い接種源が得られることが示された。

Claims (3)

  1. (a)宿主植物を水耕長日処理によって育成する工程と、
    (b)炭含有培地においてマツタケの菌糸を培養することで接種源を調製する工程と、
    (c)前記工程(a)で育成された前記宿主植物に、前記接種源を接種して、長日処理で育成することで菌根苗を得る工程と、
    (d)前記菌根苗を土中に埋設する工程と、
    を含み、
    前記工程(a)及び(c)〜(d)は、非無菌環境下で行われる、
    ことを特徴とするマツタケの栽培方法。
  2. 前記炭含有培地は、無機質担体に混合された炭を含む、
    ことを特徴とする請求項1に記載の栽培方法。
  3. 前記炭含有培地において、前記炭は、前記無機質担体及び前記炭の重量に対して、0.2重量%〜20重量%含まれる、
    ことを特徴とする請求項2に記載の栽培方法。
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