JP6843637B2 - インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
近年、インクジェット記録装置は、低電力、低コスト、及び省スペースという利点を活かし、オフィスなどでの利用が増加しつつある。従来から、インクジェット記録装置には、紙送り方向(主走査方向)に対して直交する方向(副走査方向)に記録ヘッドを繰り返し移動させて画像を記録するシリアル方式の記録ヘッド(いわゆるシリアルヘッド)が採用されている。近年では、インクジェット記録装置のさらなる利用拡大を目指して、シリアルヘッドではなく、吐出口の配列幅を記録媒体の最大幅相当まで延ばした記録ヘッド、すなわち、ラインヘッドを用いることが提案されている(特許文献1)。シリアル方式とは異なり、ラインヘッド方式では記録ヘッドの移動は行わずに、記録媒体の搬送のみが行われるため、記録速度の向上に有利である。
一方、記録速度の向上に伴い、複数の記録媒体に連続して記録を行う連続記録時においては、記録物における記録箇所が乾燥する前に、そこへ次の記録物が接触することによる汚れ(スミア)の発生が懸念される。インクの定着性向上を図る手段として、インクの動的表面張力の変化を制御することが提案されている(特許文献2)。
特開2010−143147号公報 特開2008−001891号公報
ラインヘッド方式では、ヘッドを固定して使用するため、予備吐出を複数のページ間に、又は記録媒体上に行うことになる。ページ間で予備吐出を行うと記録速度が低下し、記録媒体上に予備吐出を行うと画像品位が低下する。したがって、予備吐出を行わないでもインクを安定に吐出しうる時間を長くする必要があるため、ラインヘッド方式はシリアルヘッド方式と比較して、インクの間欠吐出安定性により大きな課題を有している。一方で、上述の通り、ラインヘッド方式では、記録速度の向上に伴い、連続記録時における汚れ(スミア)の発生が懸念される。
本発明者らの検討の結果、記録速度の向上を図るためにラインヘッド方式を採用し、かつ、インクの間欠吐出安定性の向上を達成するためにラインヘッドの吐出口と記録媒体との間を加湿する工程を採用したインクジェット記録方法を行うこととした。さらに、この方法において、本発明者らは、スミアを低減するために短い寿命時間における動的表面張力を制御したインクを使用した。そのような記録方法を実行したところ、新たな弊害として、画像を記録した記録媒体における記録面とは反対側の面(裏面)から画像が透けて見える現象(以下、「裏抜け」という)が発生した。この現象は、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間を加湿することで記録媒体の内部まで濡れた状態となり、それによって、インクの浸透がより促進されたことが主な原因であると考えられる。
したがって、本発明の目的は、ラインヘッドを用いて画像を記録する場合に、スミア、及び裏抜けが抑制された画像を記録することが可能であり、インクの間欠吐出安定性が良好なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記インクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、インクジェット方式のラインヘッドから水性インクを吐出して記録媒体に画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、前記ラインヘッドの吐出口と前記記録媒体との間を加湿する工程を有し、前記水性インクが、硬化型インクではなく、DBP吸油量が140mL/100g以上200mL/100g以下であるカーボンブラックを含有し、かつ、前記水性インクの寿命時間10m秒における25℃での動的表面張力が45mN/m以下であり、前記加湿する工程では、前記ラインヘッドの前記吐出口と前記記録媒体との間に加湿空気を供給することにより、前記ラインヘッドの前記吐出口と前記記録媒体との間を、温度35℃以下かつ絶対湿度0.013kg/kgDA以上の雰囲気とすることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
本発明によれば、ラインヘッドを用いて画像を記録する場合に、スミア、及び裏抜けが抑制された画像を記録することが可能であり、インクの間欠吐出安定性が良好なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記インクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置を提供することができる。
ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置の一例の概略構成を示す模式的側面図である。 ヘッドカートリッジの吐出口面を示す斜視図である。 ヘッドカートリッジにおける一記録素子基板の吐出口付近の構造を示す部分破断斜視図である。 ラインヘッド及び加湿部を備えたインクジェット記録装置の一例の概略構成を示す模式図である。 インクをラインヘッドに供給する供給機構及び回復機構の一例を示す模式図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。また、物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値とする。
<インクジェット記録方法>
近年、記録媒体の搬送方向の幅(最大用紙幅)の全幅にわたってインクを吐出する吐出口(ノズル)が配置されたライン型の記録ヘッド(以下、「ラインヘッド」とも記す)を採用した記録装置が開発されている。ラインヘッドを用いる場合には次のような利点がある。すなわち、ラインヘッドでは、記録ヘッドを往復移動させる必要がなく、最大用紙幅に対応した数のノズルが存在する。したがって、記録媒体の単位領域が記録ヘッド直下を1回のみ通過する、すなわち「1パス」で画像を記録可能であり、記録に要する時間を短縮化することができる。また、高速で記録した場合であっても1ノズル当たりの吐出回数を減少させることができる。したがって、吐出周波数を低く抑えることができるため、記録ヘッドの1のノズルの使用頻度や、熱エネルギーを利用する吐出方式の場合の温度上昇をシリアルヘッドに比して抑制することができる。
しかし、先述したように、ラインヘッド方式はシリアルヘッド方式と比較し、インクの間欠吐出安定性がより高いレベルで求められる。ラインヘッド方式で記録を行う場合、ヘッドを走査せず固定して使用するため、予備吐出を複数のページ間で、又は記録媒体上に行うことになる。ページ間で予備吐出する場合は、ページ間隔を広げたり、ページ間の送り速度を下げたりして予備吐出を行うことになるため、記録速度が低下する。また、記録媒体上へ予備吐出する場合は、記録媒体上に視認できるドットが増えるため、画像品位が低下する。したがって、ラインヘッド方式で一定レベルの記録速度と画像品位を維持するためには、シリアルヘッド方式と比較して予備吐出の頻度や予備吐出の吐出回数を少なくする必要があるため、よりレベルの高い間欠吐出安定性が求められる。
そこで、本発明者らは、インクの間欠吐出安定性を向上させるため、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間を加湿することに着目した。インクの間欠吐出安定性が低下する主な要因は、ノズル先端のインクが蒸発し、インクの粘度が高くなることであると考えられる。したがって、ラインヘッドの吐出口と記録媒体の間を加湿することで、ノズル先端のインクの蒸発を抑制し、インクの粘度上昇を抑制できると推測される。
一方、ラインヘッド方式はシリアルヘッド方式と比較して、より高いレベルのスミア抑制が求められる。その理由は、以下に述べる現象が生じるためである。ラインヘッド方式の場合、複数の記録媒体に連続して記録を行うとき、1枚目の記録物における記録箇所が乾燥する前に、そこへ次の記録物が接触するため、汚れ(スミア)が発生しやすい。本発明者らは、記録媒体に付与された後のインクの記録媒体への浸透が早くなると、スミアが抑制される傾向にあることを踏まえ、短い時間におけるインクの動的表面張力を下げることに着目した。
本発明者らは、ラインヘッド方式を用い、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間を加湿し、インクの短い時間における動的表面張力を下げる検討を行ったところ、この組み合わせの場合、新たに裏抜けの現象が発生することがわかった。この理由は以下のように推測される。ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間を加湿したことにより、記録媒体の表面だけでなく内部まで湿った状態となる。湿った記録媒体は、湿っていない記録媒体と比較して、インクの浸透速度が速くなる。そのため、短い時間における動的表面張力が低く浸透しやすいインクを使用することによって、そのインクの記録媒体の厚さ方向への浸透がさらに促進され、裏抜けが発生したと推測される。
そこで、本発明者らが検討した結果、インクの色材として、DBP吸油量の高いカーボンブラックを用いることで、裏抜けを抑制できることがわかった。この理由に関して、本発明者らは以下のように推測している。
カーボンブラックは、一次粒子の状態で個々に分散されているのではなく、これらの一次粒子が数個から数十個で連なって房状のストラクチャーを形成して分散されている。カーボンブラックのストラクチャーは、カーボンブラックのDBP吸油量の特性により規定することができ、DBP吸油量の高いカーボンブラックはストラクチャーが大きく、DBP吸油量の低いカーボンブラックはストラクチャーが小さい。すなわち、DBP吸油量の高いカーボンブラックは、DBP吸油量の低いカーボンブラックと比較して、一次粒子の凝集構造が発達しており、上記発達した凝集構造の隙間に液媒体がより多く含まれる。したがって、DBP吸油量の高いカーボンブラックは、インクが記録媒体に付与された後、水の蒸発が進むと局所的に水溶性有機溶剤の比率が高くなり、カーボンブラックの凝集が促進されるため、裏抜けを抑制する効果が得られたと考えられる。
以上より、本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式のラインヘッドから水性インクを吐出して記録媒体に画像を記録する工程と、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間を加湿する工程とを有する。このインクジェット記録方法では、ラインヘッドから吐出させる水性インクとして、DBP吸油量が140mL/100g以上であるカーボンブラックを含有し、かつ、寿命時間10m秒における動的表面張力が45mN/m以下である水性インクを用いる。上記工程を有するインクジェット記録方法に上記水性インクを用いることで、ラインヘッドにおける高速記録下においても、インクの間欠吐出安定性が良好であり、さらには、スミア、及び裏抜けが抑制された画像を記録することが可能となる。
以下、本発明のインクジェット記録方法に用いるインクを構成する各成分やインクの物性などについて詳細に説明する。
[インク]
本発明のインクジェット記録方法では、インクジェット方式のラインヘッドから水性インクを吐出して記録媒体に画像を記録する工程を有する。水性インクを吐出するインクジェット方式のラインヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用して、インクを記録媒体に付与することができる。インクをインクジェット方式のラインヘッドから吐出する方式としては、インクに熱エネルギー又は力学的エネルギーを付与する方法を挙げることができる。本方法においては、インクに熱エネルギーを付与してインクジェット方式のラインヘッドからインクを吐出する方式を採用することが好ましい。本発明で用いるインクは、いわゆる「硬化型インク」である必要はない。したがって、本発明で用いるインクは、外部エネルギーの付加により重合しうる重合性モノマーなどの化合物を含有しなくてもよい。
(カーボンブラック)
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクは、DBP吸油量が140mL/100g以上であるカーボンブラックを含有する。インク中のカーボンブラックの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.00質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。カーボンブラックとしては、インクジェット用のインクに使用可能なものであれば、いずれも用いることができる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラックなどを挙げることができる。また、インクには、調色などの目的のために染料などを併用してもよい。
カーボンブラックの分散方法としては、分散剤として樹脂を用いる樹脂分散タイプのカーボンブラックや、カーボンブラック粒子の表面に親水性基が直接又は他の原子団を介して結合した自己分散型のカーボンブラックを挙げることができる。インクには、これらのカーボンブラックの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが可能であり、分散方法の異なるカーボンブラックを併用することも可能である。
自己分散顔料のアニオン性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基などを挙げることができる。また、他の原子団は、顔料の粒子表面とイオン性基とのスペーサの機能を持つものであり、分子量が1,000以下であることが好ましい。他の原子団としては、炭素数1乃至6程度のアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基などのアリーレン基;エステル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
親水性基としては、アニオン性基を挙げることができる。アニオン性基は酸型(H型)及び塩型のいずれであっても良いが、塩型のほうが好ましい。塩型の場合のカウンターイオンとしては、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。カウンターイオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びアンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
樹脂分散タイプのカーボンブラックの具体例としては、以下のものを挙げることができる。例えば、樹脂分散剤を使用した樹脂分散型、カーボンブラック粒子の表面を樹脂で被覆したマイクロカプセル型、及びカーボンブラック粒子の表面に樹脂由来の有機基が化学的に結合した樹脂結合型、などのカーボンブラックがある。樹脂としては、(メタ)アクリル酸などのアニオン性基を有するユニットと、芳香環や脂肪族基を有するモノマーなどのアニオン性基を有しないユニットとを少なくとも有する、アクリル樹脂を用いることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法では、インクに含有させるカーボンブラックが、酸化処理された自己分散カーボンブラックを含むことが好ましい。酸化処理された自己分散カーボンブラック(酸化カーボンブラック)は、カーボンブラック粒子を酸化処理することで得ることができる。酸化処理された自己分散カーボンブラックは、他のカーボンブラックと比較して、カーボンブラック粒子に酸化処理を行うことでカーボンブラック粒子の表面が荒れた状態となる。液媒体中では、酸化処理された自己分散カーボンブラックの荒れた表面の隙間により多く液媒体が含まれることになるため、インクが記録媒体に付与された後のカーボンブラックの凝集が促進され、裏抜けをさらに抑制できると推測される。カーボンブラックの酸化処理の方法としては、例えば、原料となるカーボンブラックの表面に、オゾン、次亜塩素酸及びその塩、並びに過硫酸及びその塩などを作用させて、カーボンブラックを酸化させる方法を挙げることができる。
本発明のインクジェット記録方法では、インクに含有させるカーボンブラックが、オゾンにより酸化処理された自己分散カーボンブラックを含むことがさらに好ましい。オゾンにより酸化処理されたカーボンブラック(オゾン酸化カーボンブラック)は、カーボンブラック粒子の表面にオゾンを作用させて、カーボンブラックを酸化させて得ることができる。カーボンブラックの表面に酸化剤を用いて酸化処理を行うと、酸化剤に含まれるクロロ基などのマイナスに分極しやすい物質がカーボンブラック粒子の表面に微量ながら導入され、これにより親水性が極僅かに高まる。したがって、オゾンによる酸化処理では、前記物質が混入しにくいことから、親水性も高まりにくいので、カーボンブラックの凝集がより促進され、裏抜けをさらに抑制できると推測される。
酸化処理された自己分散カーボンブラックにおけるカーボンブラック粒子の表面に導入される親水性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基などのアニオン性基を挙げることができる。アニオン性基のカウンターイオンとしては、アルカリ金属、アンモニウム、及び有機アンモニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンがより好ましい。
インクに用いられるカーボンブラックは、DBP吸油量が140mL/100g以上であることが必須である。さらには、DBP吸油量が145mL/100g以上であることが好ましく、155mL/100g以上であることがより好ましく、160mL/100g以上であることが特に好ましい。この範囲であれば、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間を加湿しつつ、寿命時間10m秒(ミリ秒)における動的表面張力が低く浸透しやすいインクを使用しても、裏抜けの抑制が実現可能となる。カーボンブラックのDBP吸油量の上限は、特に制限されないが、200mL/100g以下であることが好ましく、180mL/100g以下であることがさらに好ましい。
カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート)吸油量(mL/100g)は、ASTM D−2414に準拠して測定することができる。カーボンブラックのDBP吸油量は、カーボンブラックのストラクチャーと相関がある。実施例で使用したカーボンブラックのDBP吸油量についても、ASTM D−2414に準拠して測定した。
(水性媒体)
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、40.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。さらには、60.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましく、75.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。
インクには、水性媒体として、さらに水溶性有機溶剤を含有させることができる。水溶性有機溶剤としては、インクジェット用のインクに使用可能なものであれば、その種類は特に限定されない。複数種の水溶性有機溶剤を組み合わせて使用することもできる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましく、5.00質量%以上30.00質量%以下であることが好ましい。この水溶性有機溶剤の含有量は、後述する比誘電率が27.0以下である水溶性有機溶剤Aを含む値である。
(比誘電率が27.0以下である水溶性有機溶剤A)
インクは、水溶性有機溶剤として、25℃における比誘電率が27.0以下の水溶性有機溶剤Aを含有することが好ましい。インクに比誘電率が27.0以下の水溶性有機溶剤Aが含有されていると、インクが記録媒体に付与された後のカーボンブラックの凝集がより早くなる。特に、インク中の比誘電率が27.0以下の水溶性有機溶剤Aの含有量(質量%)が、インク中のカーボンブラックの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.20倍以上であることが好ましい。前記質量比率が0.20倍以上であると、カーボンブラックの凝集がさらに早くなるため、裏抜けがより効果的に抑制される。前記質量比率は、10.00倍以下であることが好ましく、5.00倍以下であることがさらに好ましい。
水溶性有機溶剤の比誘電率は、誘電率計(例えば、商品名「BI−870」(BROOKHAVEN INSTRUMENTS CORPORATION製)など)を用いて、周波数10kHzの条件で測定することができる。本明細書において、水溶性有機溶剤の比誘電率は、25℃で測定した値である。後述する実施例では、前記誘電率計を用いて、水溶性有機溶剤の25℃における比誘電率を測定した。25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率は、50質量%水溶液の比誘電率を測定し、下記式(1)から算出した値とする。通常「水溶性有機溶剤」とは液体を指すものであるが、本発明においては、25℃(常温)で固体であるものも水溶性有機溶剤に含めることとする。
εsol=2ε50%−εwater ・・・(1)
εsol:25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率
ε50%:25℃で固体の水溶性有機溶剤の50質量%水溶液の比誘電率
εwater:水の比誘電率
ここで、25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率を、50質量%水溶液の比誘電率から求める理由は次の通りである。25℃で固体の水溶性有機溶剤のうち、水性インクの構成成分となり得るもののなかには、50質量%を超えるような高濃度の水溶液を調製することが困難なものがある。一方、10質量%以下であるような低濃度の水溶液では、水の比誘電率が支配的となり、当該水溶性有機溶剤の確からしい(実効的な)比誘電率の値を得ることができない。そこで、本発明者らが検討を行った結果、25℃で固体の水溶性有機溶剤のうち、インクに用いることが可能な殆どのもので測定対象の水溶液を調製することができ、かつ、求められる比誘電率も本発明の効果と整合することが判明した。このような理由から、50質量%水溶液を利用することとした。25℃で固体の水溶性有機溶剤であって、水への溶解度が低いために50質量%水溶液を調製できないものについては、飽和濃度の水溶液を利用し、上記εsolを求める場合に準じて算出した比誘電率の値を便宜的に用いることとする。
水性インクに汎用であり、25℃で固体である水溶性有機溶剤としては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、エチレン尿素、尿素、及び数平均分子量1,000のポリエチレングリコールなどを挙げることができる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール(33.1)、エチルアルコール(23.8)、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(18.3)、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、及びtert−ブチルアルコールなどの炭素数1乃至4の1価アルコール類;1,2−プロパンジオール(28.8)、1,3−ブタンジオール(30.0)、1,4−ブタンジオール(31.1)、1,5−ペンタンジオール(27.0)、1,2−ヘキサンジオール(14.8)、1,6−ヘキサンジオール(7.1)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(28.3)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(24.0)、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(18.5)、及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール(23.9)などの2価アルコール類;1,2,6−ヘキサントリオール(28.5)、グリセリン(42.3)、トリメチロールプロパン(33.7)、及びトリメチロールエタンなどの多価アルコール類;エチレングリコール(40.4)、ジエチレングリコール(31.7)、トリエチレングリコール(22.7)、テトラエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びチオジグリコールなどのアルキレングリコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(9.8)、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(9.4)、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(8.5)などのグリコールエーテル類;数平均分子量200のポリエチレングリコール(18.9)、同600のポリエチレングリコール(11.4)、同1,000のポリエチレングリコール(4.6)、及びポリプロピレングリコールなどの数平均分子量200乃至1,000のポリアルキレングリコール類;2−ピロリドン(28.0)、N−メチル−2−ピロリドン(32.0)、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン(37.6)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリン、1−(ヒドロキシメチル)−5,5−ジメチルヒダントイン(23.7)、トリエタノールアミン(31.9)、γ−ブチロラクトン(41.9)、尿素(110.3)、及びエチレン尿素(49.7)などの含窒素化合物類;並びにジメチルスルホキシド(48.9)、及びビス(2−ヒドロキシエチルスルホン)などの含硫黄化合物類などを挙げることができる。上記の水溶性有機溶剤の具体例における括弧内の数値は比誘電率を示す。インクに含有させる水溶性有機溶剤としては、比誘電率が3.0以上であるもの、25℃における蒸気圧が水よりも低いものを用いることが好ましい。
水溶性有機溶剤Aの具体例としては、上記の水溶性有機溶剤のうち、比誘電率が27.0以下のものを挙げることができる。比誘電率が27.0以下である水溶性有機溶剤Aの好適な具体例としては、括弧内に比誘電率を示すと、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(23.9)、1,5−ペンタンジオール(27.0)、トリエチレングリコール(22.7)、1,2−ヘキサンジオール(14.8)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(9.8)、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(9.4)、1,6−ヘキサンジオール(7.1)、及び数平均分子量が200、600、又は1,000のポリエチレングリコール(それぞれ18.9、11.4、4.6)などを挙げることができる。これらの比誘電率が27.0以下の水溶性有機溶剤Aは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明において、水溶性有機溶剤Aの含有量には、後述するような添加剤は含まないものとする。添加剤は、一般的にインク中の含有量もかなり少なく、本発明の効果への影響も小さいためである。
本発明のインクジェット記録方法においては、さらに、種々の画像特性やインクの信頼性などを考慮して、水の含有量や、水溶性有機溶剤の種類とその含有量を決定することができる。比誘電率が27.0以下の水溶性有機溶剤Aに加えて、比誘電率が27.0超の水溶性有機溶剤もインクに含有させることができる。
(その他の成分)
水性インクには、上記成分の他に、樹脂、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、顔料凝集剤、蒸発促進剤などの種々の添加剤を含有させてよい。但し、樹脂を使用する場合、裏抜け抑制の観点から、その含有量は少量とすることが好ましい。具体的には、インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.50質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以下であることがさらに好ましい。
(インクの物性)
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクは、寿命時間10m秒における動的表面張力が45mN/m以下であることを要する。インクに含有させることが可能な界面活性剤や水溶性有機溶剤の種類及び含有量を適切に選択することで、上述のような動的表面張力の特性をインクに持たせることができる。界面活性剤により動的表面張力を調整する場合には、アセチレングリコール系界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。インクの寿命時間10m秒における動的表面張力は、28mN/m以上であることが好ましい。
インクの寿命時間10m秒における動的表面張力は、最大泡圧法によって測定することができる。最大泡圧法は、測定する液体中に浸したプローブ(細管)の先端部分で形成された気泡を放出するために必要な最大圧力を測定し、測定した最大圧力から液体の表面張力を求める方法である。寿命時間は、最大泡圧法において、プローブの先端部分で気泡を形成する際に、気泡が先端部分から離れて新しい気泡の表面が形成された時点から、最大泡圧時(気泡の曲率半径とプローブ先端部分の半径が等しくなる時点)までの時間である。本明細書において、インクの寿命時間10m秒における動的表面張力は、25℃で測定した値である。
インクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、インクの25℃における静的表面張力は、28mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。さらに、インクの25℃におけるpHは、5以上9以下であることが好ましい。
[反応液]
本発明のインクジェット記録方法として、インク中のカーボンブラックを凝集させる反応液を用いることもできる。反応液を用いれば、裏抜けの抑制においてさらに効果的である。反応液は、水性媒体として少なくとも水を含有する、水性の反応液であることが好ましい。
反応液を用いる場合のインクジェット記録方法は、さらに、インク中のカーボンブラックを凝集させる反応液を記録媒体に付与する工程を有する。この場合、反応液、及び反応液を記録媒体に付与する機構を備えるインクジェット記録装置を用いることができる。反応液を記録媒体に付与する方式としては、インクと同様に、インクジェット方式のラインヘッドから吐出する吐出方式や、ローラーを用いたローラーコーティング方式及びバーコーターを用いたバーコーティング方式などの塗布方式などを挙げることができる。これらのうち、上記吐出方式が好ましい。インクジェット記録方法において、反応液を用いる場合、インクと反応液の記録媒体への付与順序は、特に限定されないが、記録媒体に反応液を付与した後、インクを付与する順序を含むことが好ましい。
反応液には、インク中のカーボンブラックを凝集させる成分として、従来公知の有機酸、多価金属イオン、及びカチオン性化合物などを含有させることができる。反応液はこれらの成分を2種類以上含有してもよい。
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸などのモノカルボン酸又はその塩;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、及びグルタル酸などのジカルボン酸又はその塩若しくはその水素塩;クエン酸などのトリカルボン酸又はその塩若しくはその水素塩;リンゴ酸及び酒石酸などのヒドロキシカルボン酸又はその塩などを挙げることができる。なかでも、炭素原子数3以下のアルキル鎖を有するカルボン酸が、水溶性が高いために好ましい。塩を形成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、及びカリウムなどのアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、並びに有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。
多価金属イオンは、二価以上の金属イオンであれば好適に用いることができる。二価の金属イオンとしては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びラジウムなどのアルカリ土類金属のイオンを挙げることができる。また、三価以上の金属イオンとしては、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、鉄、及びその他の遷移金属のイオンを挙げることができる。多価金属イオンは、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;塩酸、硝酸、及び硫酸などの鉱酸の塩;スルホン酸基を有する有機酸の塩などの形態で用いられてもよく、解離して生じるイオンとして用いられてもよい。
カチオン性化合物は、塩の形態で反応液中に含有させることができる。反応液中のカチオン性化合物は、記録媒体上で接触した水性インク中のカーボンブラックのアニオン性基とイオン反応を生じることで、カーボンブラックを凝集させる作用を有する。カチオン性化合物としては、下記一般式(1)で表される第4級アルキルアンモニウム塩が好ましい。
Figure 0006843637
一般式(1)中、R1〜R3は、それぞれ独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表し、R4は、炭素原子数8以上16以下のアルキル基を表す。R1〜R4のアルキル基は、置換基を有してもよく、直鎖でも分岐鎖でもよい。X-は、無機酸イオン、有機酸イオン、又は水酸化物イオンを表す。一般式(1)で表される第4級アルキルアンモニウム塩は、調製したものであっても、市販品であってもよい。第4級アルキルアンモニウム塩の市販品としては、例えば、商品名「カチオーゲンES−OW」及び「カチオーゲンES−L」(いずれも第一工業製薬製)などを挙げることができる。
反応液及びインクの反応物が記録ヘッドの吐出口近傍に固着すると、正常な吐出が妨げられる。したがって、反応物の固着抑制の観点から、インク中のカーボンブラックを凝集させる成分としてカチオン性化合物を含有する反応液を用いることが好ましい。
(水性媒体)
反応液は、水性媒体として少なくとも水を含有する、水性の反応液であることが好ましい。反応液には、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。反応液中の水の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、40.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。
反応液中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、反応液全質量を基準として、1.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。反応液に含有させる水溶性有機溶剤としては、前述のインクに含有させる水溶性有機溶剤と同様のものを用いることができる。
(その他の成分)
反応液には、上記成分の他に、上記のインクの説明で挙げた、水、水溶性有機溶剤、樹脂、界面活性剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、及び還元防止剤などを含有してもよい。
[加湿工程]
本発明のインクジェット記録方法においては、画像を記録する際に、好ましくは画像を記録する以前に、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間を加湿する工程(以下、「加湿工程」とも記す)を行う。加湿工程では、ノズル先端のインクの蒸発を抑制し、インクの粘度上昇を抑制できる程度に加湿を行うことが好ましく、その方法としては、例えば、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間に加湿空気を供給する方法などを挙げることができる。なかでも、加湿工程を、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間に加湿空気を供給することで行い、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間を、温度35℃以下かつ絶対湿度0.013kg/kgDA以上の雰囲気とする条件で行うことが好ましい。ここで、前記絶対湿度は、質量絶対湿度のことであり、その単位kg/kgDAにより表されるように、乾き空気(Dry Air)の質量(kg)に対して、湿り空気中に含まれる水蒸気の質量(kg)を示す。温度の下限は15℃以上であることが好ましい。これらの前提条件として、相対湿度が100%未満であることが好ましい。
加湿工程は、ノズル先端のインクの蒸発を抑制し、インクの粘度上昇を抑制できればよいため、上述の方法に限定されるものではない。また、インクジェット記録方法は、さらに上述の加湿工程に加えて、画像を記録する以前にノズル先端のインクの蒸発を抑制し、インクの粘度上昇を抑制できるように、画像を記録する前に、記録媒体を加湿するプレ加湿工程を有してもよい。
本発明のインクジェット記録方法では、記録を行わないときは、ラインヘッドの吐出口をキャッピングすることができる。このキャッピングにより、ラインヘッドの各吐出口近傍におけるインク中の液体成分の蒸発を防止することができる。また、本発明のインクジェット記録方法では、吐出回復処理として、記録開始前など、このキャッピング状態で加圧回復又は吸引回復を行うことができる。加圧回復は、ポンプなどの手段により加圧することで、ラインヘッドのインク流路内のインクを吐出口から排出するものである。また、吸引回復は、ポンプなどの手段によりキャップ内を減圧することで、ラインヘッドのインク流路内のインクを排出するものである。加圧及び吸引の両方による回復処理を行なってもよい。さらにその後、各ラインヘッドの吐出口が形成された面に残ったインクなどの付着物をワイピング部材で拭き取るワイピングを行うことも可能である。
本発明のインクジェット記録方法で用いるインクは、いわゆる「硬化型インク」である必要はない。したがって、本発明のインクジェット記録方法では、インクを硬化するための工程を実施する必要もない。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録装置は、水性インクを吐出して記録媒体に付与するインクジェット方式のラインヘッドを備える。このインクジェット記録装置は、さらに、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間を加湿する加湿部を備える。ラインヘッドから吐出されるインクは、DBP吸油量が140mL/100g以上であるカーボンブラックを含有し、かつ、寿命時間10m秒における動的表面張力が45mN/m以下のものである。このインクジェット記録装置に用いられるインクは、前述のインクジェット記録方法に用いられる水性インクと同様である。本発明のインクジェット記録装置は、前述のインクジェット記録方法に用いることができる。
本発明のインクジェット記録装置は、前述のインク及びそれを収容するためのインク収容部、並びにラインヘッドから前述のインクを吐出して記録媒体に画像を記録するための画像記録部などを備えることもできる。また、本発明のインクジェット記録装置は、反応液及びそれを収容するための反応液収容部、並びに反応液を記録媒体に付与する機構を備えていてもよい。
以下、図面を参照しつつ、本発明のインクジェット記録装置の詳細について説明する。以下に挙げる図面は、本発明のインクジェット記録装置の一例を表す図であり、本発明のインクジェット記録装置は、以下の記載によって限定されるものではない。
図1は本発明を適用可能なラインヘッドを備えたインクジェット記録装置の概略構成を示す模式的側面図である。この記録装置は、記録媒体の搬送方向(同図中、矢印A方向)に沿って所定位置に配置された複数のラインヘッド(ヘッド群)101gよりインクを吐出して記録を行うインクジェット方式を採用するものである。
ヘッド群101gの各ラインヘッド(記録ヘッド101Bk、101C、101M、及び101Yのそれぞれ)は、図中矢印A方向に搬送される記録媒体103の幅方向に1200dpiの密度で約14000個の吐出口が配列されている。
記録媒体103は搬送モータにより駆動される一対のレジストローラー114の回転によってA方向に搬送され、一対のガイド板115により案内されて、その先端のレジ合わせが行われた後、搬送ベルト111によって搬送される。エンドレスベルトである搬送ベルト111は2個のローラー112、113によって保持されており、その上側部分の上下方向の変位は、プラテン104によって規制されている。ローラー113が回転駆動されることにより、記録媒体103が搬送される。搬送ベルト111に対する記録媒体103の吸着は、静電吸着により行われる。ローラー113は不図示のモータなどの駆動源により記録媒体103を矢印A方向に回転駆動する。搬送ベルト111によって搬送される間にヘッド群101gによって記録が行われた記録媒体103は、ストッカ116へ排出される。
ヘッド群101gの各記録ヘッドは、ブラックインク用のヘッド101Bk、カラーインク用の各ヘッド(101C、101M、101Y)が記録媒体103の搬送方向Aに沿って図示の通りに配置されている。カラーインク用の各ヘッドは、シアンインク用のヘッド101C、マゼンタインク用のヘッド101M、イエローインク用のヘッド101Yで構成される。ブラックインクには、前述のカーボンブラックを含有するインクを用いることができる。そして、各記録ヘッドにより各色のインクを吐出することによってブラックのテキストや、フルカラーの写真画質などの画像の記録が可能となる。
図2は図1に示すインクジェット記録装置に搭載可能な記録ヘッド群101gのうち、一色あたりのヘッドカートリッジHの構成例を示している。図2に示すように、ヘッドカートリッジHは、インクを吐出するための記録素子基板120と、記録素子基板120に電力を供給及び制御信号を伝達するためのフレキシブルケーブル130を備える。図2中の矢印はインクの吐出方向を示している。
図3は、図2に示すヘッドカートリッジHにおける一記録素子基板120の吐出口付近の構造を示している。図3に示すように、記録素子基板120は、基板123と、吐出口122や吐出口122へのインク流路を形成する流路壁126が設けられた流路形成部材とを備える。この流路形成部材は、吐出口プレート125及び樹脂被膜層127で構成されている。基板123には、インクを加熱するためのヒータ121及びサブヒータ(不図示)と、インク収容部(サブタンクT2)から供給されるインクを供給するためのインク供給口124と、ヘッドの温度を検出する温度センサ128が設けられている。
温度センサ128はダイオードであり、温度に応じて順方向電圧が変化する性質を利用している。インクの温度を直接検出することは困難であるため、一般には、記録ヘッド基板の温度を検出し、これを記録ヘッドの温度として用いている。記録ヘッドの温度を検出するための構成としては、ダイオードセンサ以外に、例えば金属薄膜センサなど、ダイオード以外の温度検出手段を用いてもよい。また、キャリッジ基板上にはサーミスタが取り付けられており、環境温度を読み取ることができる。
インクはインク供給口124から吐出口122までのインク流路中に充填される。インクを吐出する際には、ヒータ121でインクを加熱し、インクに膜沸騰を発生させて、生成した気泡の圧力によって吐出口122付近のインクを飛翔させる。
次に、上述のインクジェット記録方法における加湿工程に用いることが可能な加湿部の構成について説明する。図4は、ラインヘッド及び加湿部を備えたインクジェット記録装置の画像記録部1の一例の概略構成を示す模式図である。
図4に示すインクジェット記録装置は、画像記録部1において、上述の図1に示すヘッド群101gの各記録ヘッドのように、異なるインク色にそれぞれ対応した複数のラインヘッド(記録ヘッド)101を備える。また、このインクジェット記録装置は、画像記録部1において、ラインヘッド101の吐出口と記録媒体103との間を加湿する加湿部102を備えている。この加湿部102は、ラインヘッド101の吐出口と記録媒体103との間(いわゆる紙間)に加湿空気を供給する。この加湿空気はラインヘッド101の吐出口と記録媒体103との間だけでなく、筐体1bの中の略閉空間の全体に行き渡るように供給され、この空間の全体に渡って加湿空気により温度と湿度が所望の雰囲気となるように調整されていてもよい。また、ラインヘッド101の搬送方向における上流側には、記録媒体103がラインヘッド101を含む画像形成位置に進入する以前にその記録媒体103を加湿するプレ加湿部(不図示)を設けてもよい。
インクジェット記録装置が設置される周囲の環境によっては、上述の加湿工程により設定されるような温湿度の条件になる場合もある。しかし、外部環境の温湿度は常に変動しているため、定常的に所望の温湿度の条件を満たしているとは限らない。したがって、本発明で設定するような温湿度の条件にするために加湿工程を行うことは、本発明の効果を安定して得るうえで有効であることに変わりはない。
本発明のインクジェット記録装置は、さらに、インクや、任意に用いられる反応液をラインヘッドに供給する供給機構を備えていてもよい。図5は、インクをラインヘッドに供給する供給機構の一例を示す模式図である。図5に示すように、インクは、サブタンクT2に貯蔵されており、ポンプP1によって、サブタンクT2からインク供給路を経てラインヘッドH1000へと供給される。ラインヘッドH1000から溢れたインクはサブタンクT2へと戻される。バルブV1は、回復動作時にインク液室を加圧又は開放する切り替えのために設けられている。加圧回復時はバルブV1を閉じ、ポンプP1で加圧することによって流路及びノズル内の泡の一部が除去される。サブタンクT2内のインク液面は、ラインヘッドH1000の吐出口面H1001との水頭差を一定の範囲で保持するように構成されており、ラインヘッドH1000の吐出口面H1001の負圧を適正な範囲で維持する。サブタンクT2内のインクが不足した場合は、ポンプP2により、メインタンクT1からサブタンクT2へとインクが送られる。
ノズルH100内のインクを加圧して流動させるには、バルブV1を閉じ、バルブV2を開いた状態としてポンプP1で加圧する。これにより、ラインヘッドH1000のノズルH100から増粘したインクが排出される。一方、ノズルH100内のインクを吸引して流動させるには、バルブV1を閉じ、バルブV2を開いた状態で吐出口面H1001にキャップC10を密着させ、ポンプP3で吸引する。これにより、ラインヘッドH1000のノズルH100から増粘したインク(廃インク75)が排出される。
本発明のインクジェット記録装置は、各ラインヘッドやキャップを図5中の上下方向に移動させる機構(移動機構)を備えていてもよい。その移動機構で各ラインヘッドを図5中の上方に移動させ、キャップC10を対応するラインヘッドの下側にスライドさせた後、各ラインヘッドを下降させることにより、それぞれのラインヘッドの吐出口をキャッピングすることができる。また、インクジェット記録装置は、ラインヘッドの吐出口面に残ったインクなどの付着物をワイピング部材で拭き取る払拭機構を備えていてもよい。この払拭機構によるワイピングでラインヘッドの吐出口面の状態を回復することができる。
本発明のインクジェット記録方法により画像を記録する対象の記録媒体としては、どのようなものを用いてもよい。なかでも、普通紙や非コート紙などのコート層を有しない記録媒体、及び、光沢紙やアート紙などのコート層を有する記録媒体のような、浸透性を有する紙を用いることが好ましい。特に、普通紙や非コート紙などの、コート層を有しない記録媒体を用いることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
特表2003−535949号公報の実施例3の記載を参考にし、オゾンガスを用いて顔料を酸化処理して自己分散顔料を調製した。具体的には、まず、顔料をイオン交換水に予備分散させた後、オゾン処理を行った。顔料としては、カーボンブラック(DBP吸油量150mL/100g)を用いた。次いで、水酸化カリウムを添加して混合物のpHを7程度に調整しながら、液−液衝突型の分散機を用いて混合物を循環させた。その後、適量の水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液1を得た。
(顔料分散液2)
顔料の表面をオゾンにより酸化処理する原料顔料として、DBP吸油量が140mL/100gのカーボンブラックを用いた以外は、顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液2を得た。
(顔料分散液3)
顔料の表面をオゾンにより酸化処理する原料顔料として、DBP吸油量が158mL/100gのカーボンブラックを用いた以外は、顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液3を得た。
(顔料分散液4)
顔料の表面をオゾンにより酸化処理する原料顔料として、DBP吸油量が160mL/100gのカーボンブラックを用いた以外は、顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液4を得た。
(顔料分散液5)
国際公開第00/058411号の実施例1の記載を参考にし、酸化剤を用いて顔料を酸化処理して、自己分散顔料を調製した。顔料としては、カーボンブラック(DBP吸油量150mL/100g)を用い、酸化剤として次亜塩素酸カリウムを用いた。その後、適量の水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液5を得た。
(顔料分散液6)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で1.6gの4−アミノフタル酸(処理剤)を加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保ち、これに5℃の水9gに2.2gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌後、6gのカーボンブラック(DBP吸油量150mL/100gのもの)を撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名「標準用濾紙No.2」、アドバンテック製)でろ過し、粒子を十分に水冷し、110℃のオーブンで乾燥させた。その後、水を加えて顔料の含有量が10.0%となるようにして、分散液を得た。さらに、イオン交換法によりナトリウムイオンをカリウムイオンに置換した。このようにして、顔料粒子の表面に、カウンターイオンがカリウムイオンであるフタル酸基が結合している自己分散顔料が水中に分散された状態の顔料分散液6を得た。顔料分散液6中の顔料の含有量は10.0%であった。
(顔料分散液7)
スチレン/アクリル酸共重合体(組成(質量)比26:74)を中和当量1となる水酸化ナトリウムを用いてイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が20.0%である樹脂分散剤の水溶液を調製した。この共重合体の重量平均分子量は10,000であり、酸価は200mgKOH/gである。カーボンブラック(DBP吸油量150mL/100gのもの)10.0部、樹脂分散剤の水溶液30.0部、水60.0部の混合物をサンドグラインダーに入れ、1時間分散処理を行った。その後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、水を加えて、顔料分散液7を得た。顔料分散液7中の顔料の含有量は10.0%、樹脂の含有量は6.0%であった。
(顔料分散液8)
DBP吸油量が150mL/100gのカーボンブラック500g、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン(APSES)45g、蒸留水900gを反応器に仕込んだ。そして、55℃、回転数300rpmで20分間撹拌し、混合物を得た。この混合物に25%の亜硝酸ナトリウム40gを15分間かけて滴下し、さらに蒸留水50gを加えた。そして、60℃で2時間反応させた。反応物を蒸留水で希釈しながら取り出し、固形分の含有量が15.0%となるように調整した。この後、遠心分離により不純物を除去し、分散液Aを得た。この分散液A中には、APSESが結合したカーボンブラックが含まれていた。
次に、この分散液A中のカーボンブラックに結合した基のモル数を求めるために、以下の操作を行った。ナトリウムイオン電極(1512A−10C;堀場製作所製)を用いて、分散液中のナトリウムイオン濃度を測定し、カーボンブラックの固形分あたりのモル数に換算した。室温で、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)溶液に、固形分の含有量が15.0%である分散液Aを強力に撹拌しながら1時間かけて滴下した。このときのPEHA溶液中のPEHA濃度は、上記で測定したナトリウムイオンのモル数の1〜10倍量とし、溶液量は分散液Aと同量とした。この混合物を48時間撹拌した後、不純物を除去し、分散液Bを得た。この分散液B中には、粒子表面にAPSESを介してPEHAが結合したカーボンブラックが含まれ、固形分の含有量が10.0%であった。
重量平均分子量8,000、酸価140mgKOH/gのスチレン−アクリル酸樹脂190gを、中和当量1となる水酸化カリウムを用いて1,800gの蒸留水に溶解させ、樹脂水溶液を得た。この樹脂水溶液に、上記で得られた固形分の含有量が10.0%である分散液Bの500gを撹拌しながら滴下した。そして、上記の混合物を蒸発皿に移し、150℃で15時間加熱し、液体成分を蒸発させ、その後、乾燥物を室温に冷却した。次に、水酸化カリウムでpHを9.0に調整した蒸留水に、この乾燥物を添加し、分散機を用いて分散させた。さらに撹拌下で1.0mol/Lの水酸化カリウム水溶液を添加し、液体のpHを10〜11に調整した。この後、脱塩、不純物と粗大粒子を除去し、さらに、遠心分離処理を行って顔料に結合していない樹脂を除去し、顔料分の含有量が10.0%、樹脂分の含有量が6.0%の顔料分散液8を調製した。
(顔料分散液9)
特許文献2の顔料分散液Aの記載を参考にし、酸化剤を用いて顔料を酸化処理して、自己分散顔料を調製した。顔料としては、カーボンブラック(商品名「MA77」、三菱化学製、DBP吸油量68mL/100g)を用い、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いた。その後、適量の水を添加して顔料の含有量を調整し、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液9を得た。
(顔料分散液10)
顔料の表面をオゾンにより酸化処理する原料顔料として、DBP吸油量が138mL/100gのカーボンブラックを用いた以外は、顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液10を得た。
(顔料分散液11)
顔料の表面をオゾンにより酸化処理する原料顔料として、DBP吸油量が128mL/100gのカーボンブラックを用いた以外は、顔料分散液1と同様の手順で、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液11を得た。
<インクの調製>
表1の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズが2.5μmであるポリプロピレンフィルター(ポール製)にて加圧ろ過を行って、各インクを調製した。各インクについて、寿命時間10m秒における動的表面張力を測定した。インクの動的表面張力は、前述の最大泡圧法により動的表面張力を測定する装置(商品名「Bubble Pressure Tesiometer BP2」、KRUSS製)を使用して測定した。
表1中のサーフィノール465は、エアープロダクツ製のアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物であり、エチレンオキサイド基の付加モル数が10の界面活性剤である。エマルミンCO−50は、三洋化成工業製のポリオキシエチレンオレイルエーテルであり、エチレンオキサイド基の付加モル数が5の界面活性剤である。また、表1中の水溶性有機溶剤には、括弧書で比誘電率を付した。ポリエチレングリコールは数平均分子量600のものを用いた。表1の下段には、インク中の、比誘電率が27.0以下の水溶性有機溶剤Aの含有量A(%)及びカーボンブラックの含有量B(%)、並びにA/Bの値(倍)、及び25℃での寿命時間10m秒における動的表面張力(mN/m)を示した。
Figure 0006843637
Figure 0006843637
Figure 0006843637
<反応液の調製>
下記に示す各成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズが4.5μmであるポリプロピレンフィルター(ポール製)にて加圧ろ過を行って、反応液を調製した。カチオーゲンES−OWは第一工業製薬製の第4級アルキルアンモニウム塩(オクチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート)である。
・カチオーゲンES−OW : 5.00%
・トリエチレングリコール :15.00%
・1,5−ペンタンジオール: 5.00%
・サーフィノール465 : 1.00%
・イオン交換水 :74.00%
<評価>
本実施例では、1/600インチ×1/600インチを1ピクセルと定義し、1ピクセルに20ngのインクを付与する条件で記録した画像を記録デューティが100%であると定義する。参考例1以外の画像の記録には、上記で調製したインク、反応液、図1〜3を用いて説明した前述のラインヘッド、及び図4を用いて説明した前述の加湿部を備えたインクジェット記録装置を用いた。参考例1の画像の記録には、前述のラインヘッドを、シリアルヘッド(インクジェット記録装置、商品名「PIXUS iP3100」と同様のもの)に置き換えた構成とする以外は同様のインクジェット記録装置を用いた。加湿工程を行う場合は、加湿空気の供給により、ラインヘッドの吐出口と記録媒体との間(紙間)の雰囲気が、温度35℃、絶対湿度0.015kg/kgDAの加湿空気の条件となるようにした。各例における評価条件として、使用した各インクの番号、並びに反応液及び加湿工程の有無を表2に示す。表2に示す通り、実施例17では、インクの付与に先立って1ピクセルに16ngの反応液を付与して画像の記録を行い、また、参考例1及び2、並びに比較例3では、加湿工程を実行せずに試験を行った。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「AAA」、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表2に示す。
(スミア)
上記で得られたインクを用いて、以下の3種の記録媒体(普通紙)の中央部分に、15cm×15cmのサイズで記録デューティが100%であるベタ画像を2枚連続で記録した。この際、1枚目の記録媒体のうえに、2枚目の記録媒体が積載されるように排紙した。そして、2枚目の記録媒体の裏面に付着した汚れの状態を目視で確認して、以下の基準にしたがってスミアを評価した。
・商品名「Hammermill Tidal MP」(インターナショナルペーパー製)
・商品名「STEINBEIS Classic White」(Steinbeis製)
・商品名「Bright White Inkjet Paper」(ヒューレッドパッカード製)
A:1種のみの記録媒体において、2枚目の記録媒体の裏面に汚れが付着していた。
C:2種以上の記録媒体において、2枚目の記録媒体の裏面に汚れが付着していた。
(裏抜け)
上記で得られたインクを用いて、A4サイズの記録媒体の表側の中央部分に、2cm×2cmのサイズで記録デューティが100%であるベタ画像を記録した。記録媒体としては、普通紙(商品名「PB PAPER」、キヤノン製)を用いた。記録の1日後に、得られた記録物の裏側におけるベタ画像に対応する位置の光学濃度を、反射濃度計(商品名「Macbeth RD−918」、マクベス製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で測定し、裏抜けを評価した。裏抜けが顕著になるほど、裏側における光学濃度が高くなる。
AAA:裏側の光学濃度が0.15未満だった。
AA:裏側の光学濃度が0.15以上0.20未満だった。
A:裏側の光学濃度が0.20以上0.25未満だった。
B:裏側の光学濃度が0.25以上0.30未満だった。
C:裏側の光学濃度が0.30以上だった。
(間欠吐出安定性)
上記で得られたインクを充填した上記インクジェット記録装置を用いた。この記録装置を、温度30℃、相対湿度10%の環境下で、吐出口の近傍に存在するインクの温度が上昇しないようにしたまま、5時間以上吐出を行わないで放置した後、同じ環境下でインクを吐出させた。そして、吐出を5秒間休止した後、ヘッドの吸引回復動作及び予備吐出動作を行わないまま、インクを吐出し、記録媒体(高品位専用紙、商品名:HR−101;キヤノン製)に横罫線を記録した。得られた画像を目視で確認して、間欠吐出安定性の評価を行った。
A:罫線の乱れがなかった。
B:罫線がやや乱れていたが、連続した罫線となっていた。
C:罫線が大きく乱れており、連続した罫線とはならなかった。
Figure 0006843637
同様のパターンを記録する場合の記録速度について参考例1及び2を比較すると、参考例1のほうが5倍程度速かった。また、比較例1及び2の裏抜けを比較すると、比較例2のほうが劣っていた。

Claims (10)

  1. インクジェット方式のラインヘッドから水性インクを吐出して記録媒体に画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、
    前記ラインヘッドの吐出口と前記記録媒体との間を加湿する工程を有し、
    前記水性インクが、硬化型インクではなく、DBP吸油量が140mL/100g以上200mL/100g以下であるカーボンブラックを含有し、かつ、前記水性インクの寿命時間10m秒における25℃での動的表面張力が45mN/m以下であり、
    前記加湿する工程では、前記ラインヘッドの前記吐出口と前記記録媒体との間に加湿空気を供給することにより、前記ラインヘッドの前記吐出口と前記記録媒体との間を、温度35℃以下かつ絶対湿度0.013kg/kgDA以上の雰囲気とすることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記カーボンブラックが、酸化処理された自己分散カーボンブラックを含む請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記カーボンブラックが、オゾンにより酸化処理された自己分散カーボンブラックを含む請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記水性インクは、25℃における比誘電率が27.0以下の水溶性有機溶剤Aを含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記水性インク中の前記比誘電率が27.0以下の水溶性有機溶剤Aの含有量が、前記水性インク中の前記カーボンブラックの含有量に対する質量比率で、0.20倍以上である請求項4に記載のインクジェット記録方法。
  6. さらに、前記水性インク中の前記カーボンブラックを凝集させる反応液を前記記録媒体に付与する工程を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記加湿する工程により、前記記録媒体の表面及び内部を湿った状態とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記水性インクの寿命時間10m秒における25℃での動的表面張力が28mN/m以上45mN/m以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記記録媒体が、コート層を有しない紙である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 水性インクを吐出して記録媒体に付与するインクジェット方式のラインヘッドを備えるインクジェット記録装置であって、
    さらに、前記ラインヘッドの吐出口と前記記録媒体との間を加湿する加湿部を備え、
    前記水性インクが、硬化型インクではなく、DBP吸油量が140mL/100g以上200mL/100g以下であるカーボンブラックを含有し、かつ、前記水性インクの寿命時間10m秒における25℃での動的表面張力が45mN/m以下であり、
    前記加湿部は、前記ラインヘッドの前記吐出口と前記記録媒体との間に加湿空気を供給することにより、前記ラインヘッドの前記吐出口と前記記録媒体との間を、温度35℃以下かつ絶対湿度0.013kg/kgDA以上の雰囲気とするものであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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