以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
<1.第1の実施形態>
[給紙装置の全体構成]
図3は、第1の実施形態に係る給紙装置の概要を示す斜視図である。図4は、第1の実施形態に係る給紙装置の給紙方向(図3のA−A線)に沿った概略断面図である。
第1の実施形態に係る給紙装置10は、給紙トレイ11(用紙収容部の一例)の上に積載された用紙P間に用紙端面からエア(空気)を吹き付けるエア吹き付け機構を有し、エアの吹き付けにより用紙Pを1枚ずつ分離しつつ給紙するエア吸引給紙方式の給紙装置である。以下に、給紙装置10の具体的な構成について図3及び図4を参照して説明する。
図3及び図4において、用紙Pが積載された給紙トレイ11は、図示しない昇降機構によって昇降可能となっている。すなわち、用紙Pは給紙トレイ11上に昇降可能に収容されている。
給紙トレイ11上に積載された用紙Pの側方には、所定厚さの板状の側部規制部材12L,12Rが立設されている。側部規制部材12L,12Rは、用紙Pの幅方向(用紙Pの搬送方向に対し垂直なY方向)に移動自在に構成されている。側部規制部材12L,12Rは、給紙トレイ11上に積載された用紙Pの用紙幅に対応してその位置が設定され、用紙Pの用紙幅方向の位置を規制する。
側部規制部材12L,12Rは、基本的に同じ構成であり、互いに対称な構成となっている。ここでは、側部規制部材12Lを例にとってその構成について説明する。側部規制部材12Lの上面121の用紙搬送方向上流側には、図示しないが、側部規制部材12Lの上端を支持する支持部材が取り付けられる。上面121の高さは後述する吸着ベルト133の下側よりも低く設計されており、上面121の用紙搬送方向下流側は、用紙Pの搬送方向(X方向)において吸着搬送部13と重なっている。そして、用紙補充時に給紙トレイ11を図3のY方向に引き出したとき、側部規制部材12Lの上面121が吸着搬送部13の下を通過できるようにしている。
給紙トレイ11上に積載された用紙Pの搬送方向(X方向)の前端側には、前端規制部材14が配置され、後端側には後端規制部材15が配置されている。前端規制部材14は、用紙Pの搬送方向における前端位置を規制している。後端規制部材15は、用紙Pの搬送方向において移動自在に構成されている。後端規制部材15は、給紙トレイ11上に積載された用紙Pの用紙長さに対応してその位置が設定され、用紙Pの後端側から軽く押圧することによって用紙Pの搬送方向における後端位置を規制する。
また、図4に示すように、前端規制部材14には、積載された用紙P(用紙束)を検知する高さ検知センサ16が配置されている。給紙トレイ11上に積載された用紙束の高さが、エアの吹き付け及び用紙Pの捌きを行うのに適した高さを維持するために、後述する制御部40(図8参照)が、高さ検知センサ16の検知結果に基づいて、図示しない昇降モーターを駆動して給紙トレイ11を上昇させる制御を行う。
用紙Pの搬送方向(X方向)の前端部の近傍には、吸着搬送部13が配置されている。吸着搬送部13は、駆動源に接続する大ローラー131と、大ローラー131に対して所定の距離だけ離間して設けられた2個の小ローラー132A,132Bと、大ローラー131及び小ローラー132A,132Bに巻回されて回動するループ状の吸着ベルト133とを有する。
吸着ベルト133には多数の小径の貫通孔134が穿設されている。ループ状の吸着ベルト133の内方には吸引装置135が配置されている。吸引装置135(図8の吸着ポンプAP)は、吸着ベルト133に穿設された貫通孔134を介して用紙Pを吸引する。すなわち、吸着搬送部13は、用紙Pを吸引装置135によって吸着ベルト133に吸着させつつ当該吸着ベルト133によって搬送し、図4に示す搬送ローラー17へと送る構成となっている。一般に、搬送ローラーは一対のローラーからなる。
吸引装置135は、図4に示すように、用紙Pの搬送方向(X方向)に沿って2つの吸引ダクト135A,135Bに分割されている。即ち吸引装置135は、吸引ダクト135Aのみで用紙Pを吸引する場合と、吸引ダクト135A,135Bの双方で用紙Pを吸引する場合とで、吸引態様を切り換え可能な構成となっている。
給紙トレイ11上に積載された用紙Pの搬送方向の下流側の近傍には、前方送風部18(送風部の一例)が配置されている。前方送風部18は、前方送風ファン181やエアダクト182等によって構成され、給紙装置本体19に固定されている。前方送風部18は、前方送風ファン181から上向きに送られるエアを、エアダクト182によって向きを変えつつ、前方から用紙束の前面の上部(上部前端部)に吹き付ける。
前方送風部18は、後述する制御部40(図8参照)により、給紙する用紙Pの厚さ(坪量)、サイズ、環境等に応じて駆動が制御される。即ち、制御部40の制御の下で、用紙Pの厚さ、サイズ、環境等に応じて前方送風ファン181から送風されるエアの風量が制御される。前方送風部18の詳細については後述する。
また、側部規制部材12L,12Rには、押圧部材21L,21Rが設けられている。押圧部材21L,21Rはそれぞれ、押圧機構20L,20Rの駆動により用紙搬送方向と垂直な方向(Y方向)に移動する。それにより、浮上した用紙Pの左右の側端部を押圧して用紙Pを上方に湾曲させ、用紙捌きを補助する。
この押圧機構20L,20Rは、側部規制部材12L,12Rに設けられている。したがって、用紙Pのサイズが変更された場合でも、用紙幅に応じて側部規制部材12L,12Rを移動することによって、押圧機構20L,20Rも一緒に移動できることになる。なお、本例では、側部規制部材12L,12Rを給紙トレイ11の両側に設ける構成を採っているが、片側だけに側部規制部材を設けるようにしてもよい。この場合には、給紙装置本体19の不図示の壁部と一つの側部規制部材とにより、用紙束の用紙幅方向の位置を規制する。あるいは、給紙トレイ11の両側に設けられた側部規制部材12L,12Rの一方にのみ、押圧機構を設けてもよい。少なくとも押圧機構が一つあれば、本発明の効果を奏する。以下の説明において、押圧機構20L,20Rを区別しない場合には、押圧機構20と記す。
前方送風ファン181による前方からのエアの吹き付けと、押圧機構20L,20Rによる両端部側からの押圧とによって用紙Pが捌かれ、用紙束の上部にある数枚が1枚ずつに分離される。吸着搬送部13は、こうして分離された用紙Pから一番上(最上位)の用紙Pだけを吸着する。
図2に示すように、吸着ベルト133の吸着面の近傍には、吸着検知センサ31が配置されている。吸着検知センサ31は、用紙Pが吸着ベルト133に吸着されたことを検知する。吸着検知センサ31の検知結果を受けて、後述する制御部40による制御の下に、吸着ベルト133は回動を開始し、用紙Pを搬送し始める。
吸着ベルト133の搬送方向における下流側には、上下に対向するように用紙搬送ガイド部材が配置されている。吸着ベルト133により搬送された用紙Pは、この上下に配置された用紙搬送ガイド部材にガイドされて搬送ローラー17のニップ部へ導かれる。
また、吸着ベルト133の搬送方向における下流側の近傍には、送り出しセンサ32が配置されている。送り出しセンサ32は、吸着ベルト133によって搬送される用紙Pの通過を検知する。吸着ベルト133が用紙Pを吸着しながら回動を続けると、用紙PはX方向に進み、搬送ローラー17にニップされ、給紙先へ送り出される。
また、搬送ローラー17の用紙搬送方向における下流側の近傍には、搬送センサ33が配置されている。搬送センサ33は、搬送ローラー17によって搬送される用紙Pの通過を検知する。
さらに、給紙装置本体19内の任意の位置、例えば給紙トレイ11の上部(積載された用紙束の上方)には、環境センサ34が設けられている。環境センサ34は、給紙装置本体19内の温度や湿度等を測定する。
[用紙捌きの原理]
次に、給紙装置10の用紙捌きについて図5を参照して説明する。
図5は、給紙装置10の概略を示す断面模式図であり、用紙の送り先側から給紙装置を見た状態を表す。
給紙装置10は、用紙束の上部前端部付近に前方送風ファン181から送り出したエアを吹き付け、用紙束の上部の用紙Pを浮上させる。次に(もしくはそれと同時に)、給紙トレイ11の用紙幅方向の左右両側にある側部規制部材12L,12Rに設けられた押圧部材21L,21Rを、用紙搬送方向と垂直な方向(Y方向)に移動させる。それにより、押圧部材21L,21Rの各押圧面22,22により、用紙束から浮上した用紙Pの左右の側端部を用紙Pの中心方向に押して、用紙Pを上方に凸状となるように湾曲させ、用紙P1を2枚目の用紙P2と分離する。そして、吸着ベルト133が用紙束の最上位の用紙P1のみを吸着ベルト133で吸着及び搬送する。
[押圧機構]
次に、押圧部材21L,21Rを移動させる押圧機構20L,20Rについて図6及び図7を参照して説明する。押圧機構20L,20Rは同じ構造であるため、ここでは右側の押圧機構20Rについて説明する。
図6は、押圧機構20Rの説明に供する側部規制部材12Rの断面模式図である。図6Aは押圧部材21Rが用紙を押圧していない状態(通常状態)、図6Bは押圧部材21Rが第1の距離だけ移動した状態(第1の押圧状態)、及び図6Cは押圧部材21Rが第1の距離よりも長い第2の距離(第1の距離<第2の距離)だけ移動した状態(第2の押圧状態)を表す。図7は、押圧機構20Rの説明に供する側部規制部材12Rの正面模式図である。
図6A〜図6Cに示すように、押圧機構20Rは、おおよそ直方体の押圧部材21R、カム26及び弾性部材24U,24Lを備え、カム26を利用して押圧部材21Rを移動させる。
押圧部材21Rの断面形状(図6A)及び正面形状(図7)はおおよそ矩形であり、押圧部材21Rの用紙幅方向(Y方向)における一方の面は、エア吹き付けにより浮上した用紙Pの側端部を押圧する押圧面22である。押圧部材21Rの押圧面22と反対側の面は、カム26が当接する背面25である。なお、押圧面22及び背面25の形状は、矩形に限定されないことは勿論である。また、押圧面22の表面に摩擦抵抗を大きくする加工(滑り止め加工)を施したり、摩擦抵抗が大きいシート材を貼り付けたりしてもよい。これにより、用紙の側端部が押圧面22を滑らなくなるため、押圧部材21Rの押圧力が用紙の側端部に高効率で伝わる。
押圧部材21Rの上面の一部には用紙幅方向(Y方向)に沿って突条部23Uが形成されているとともに、下面の一部に用紙幅方向に沿って突条部23Lが形成されている。即ち、突条部23U,23Lは押圧面22から背面25に向かって形成されている。突条部23U,23Lの一端部は押圧面22と同一面であり、突条部23U,23Lの他端部は押圧面22と背面25の間に位置する。
側部規制部材12Rは、押圧部材21Rの形状に対応するように形成された貫通孔である孔部122を有する。孔部122は、側部規制部材12Rの正面(用紙束側)から見て横長の矩形であり、孔部122の上辺の一部にガイド溝123U、及び、下辺の一部にガイド溝123Lが形成されている(図7)。ガイド溝123Uは、孔部122の上側の一部に用紙幅方向に沿って突条部23Uの形状に対応するように形成されている。同様にガイド溝123Lは、孔部122の下側の一部に用紙幅方向に沿って突条部23Lに対応するように形成されている。突条部23L,23Rは2本のガイド溝123L,123Rに沿って移動可能である。
側部規制部材12Rの背面25側における孔部122の上側縁部には、係止部124Uが形成されている。同様に側部規制部材12Rの背面25側における孔部122の下側縁部には、係止部124Lが形成されている(図6A)。係止部124U,124Lは、背面25側の孔部122の開口部の縁端部に、つば状に形成してもよい。押圧機構20Rは、通常状態において側部規制部材12Rの用紙Pと対向する側の面(表面)と押圧面22とが合う、又は、押圧面22が側部規制部材12Rの表面よりも内側に位置するように設計することが望ましい。なお、側部規制部材12Rの背面25側における孔部122の縁部に、背面25の縁部を係止する図示しない係止部が形成されていてもよい。
側部規制部材12Rの係止部124Uと、押圧部材21Rの突条部23Uの背面25側の他端部とは、弾性部材24Uにより連結されている。同様に側部規制部材12Rの係止部124Lと、押圧部材21Rの突条部23Lの背面25側の他端部とは、弾性部材24Lにより連結されている。弾性部材24U,24Lは、一例としてつる巻ばねであり、押圧部材21Rを係止部124U,124L(背面25)側に引っ張る力(付勢力)が働くように設けられる。
カム26は、例えば板カムであり、用紙搬送方向(X方向)に延在するシャフト27の任意の位置、例えば中央付近等に取り付けられている。シャフト27は、給紙装置本体19に回動自在に軸受けされている。カム26は回転中心(シャフト27との連結位置)から周縁までの距離が一定ではなく、従節である押圧部材21Rに回転角度に応じて用紙幅方向に運動を与える。
カム26に連結されたシャフト27には、押圧用モーターPMR(図8参照)の回転軸部の回転駆動力が直接又はギヤ等を介して間接的に伝達される。カム26はシャフト27の回転駆動に応じて回転する。カム26の回転角度に応じてシャフト27との連結部(回転中心)から押圧部材21Rの背面25までの距離が変化することで、押圧部材21Rの移動量が調節される。それにより、側部規制部材12Rに設けられた押圧部材21Rを用紙幅方向(用紙側)に移動させて、用紙束から浮上している用紙Pの側端部を押圧する。
図6Aは、押圧部材21Rが用紙幅方向へ移動していない状態(移動量がゼロ)を表している。カム26が例えば時計回りに回転すると、カム26の回転中心から押圧部材21Rの背面25までの距離が大きくなり、押圧部材21Rの背面25が押圧される(第1の押圧状態)。それにより、押圧部材21Rが用紙側(図中右方向)に距離y1だけ移動し、押圧部材21Rの押圧面22が用紙束から浮上している用紙Pの側端部を押圧する(図6B)。
カム26が更に時計回りに回転すると、カム26の回転中心から押圧部材21Rの背面25までの距離が更に大きくなり、押圧部材21Rの背面25が更に押圧される(第2の押圧状態)。それにより、押圧部材21Rが用紙側に距離y2(y1<y2)だけ移動し、押圧部材21Rの押圧面22が用紙束から浮上している用紙の側端部をより強く押圧することができる(図6C)。
カム26が更に時計回りに回転すると、カム26の回転中心から押圧部材21Rの背面25までの距離が図6Cの場合を最大値として小さくなるので、用紙Pの側端部に対する押圧力が弱まり、用紙Pの湾曲が解消される。
なお、カム26は板カムに限定されず、直動カムや円筒カムなどを用いてもよい。また、弾性部材は、つる巻ばねに限らず、他の種類のばねや、ゴムでもよい。さらに、本実施形態では、給紙装置本体19がシャフト27を軸支する構成としたが、側部規制部材12R(12L)がシャフト27を回動可能に軸支する構成としてもよい。
[給紙装置の制御系]
次に、給紙装置10の制御系を説明する。
図8は、給紙装置10の制御系の構成例を示すブロック図である。
制御部40は、例えばマイクロコンピュータで構成される。制御部40は、押圧機構20L,20Rによる押圧部材21L,21Rの押圧動作の制御を司る演算制御部41と、プログラム及び該プログラムが使用するデータ等を記憶しているROM42と、演算制御部41の演算制御時に使用されるRAM43と、制御部40の指示(制御信号)に基づきモーター及びソレノイド等を駆動する駆動回路44と、バス45とを有する。ただし、制御部40については、マイクロコンピュータからなる構成に限られるものではなく、ハードウェアからなる構成とすることも可能である。
制御部40には、情報提供部50から、給紙開始の情報および用紙Pの坪量(紙厚)やサイズなどの情報(データ)が入力される。さらに、普通紙や上質紙といった用紙の種類が入力されてもよい。情報提供部50は、用紙Pの坪量やサイズを自動的に判別するセンサや、ユーザが任意に指定操作する操作部などからなる。情報提供部50は、トレイごとの用紙設定が登録されたトレイ設定データ(テーブル)でもよい。あるいは、情報提供部50として、印刷ジョブを受信する通信インタフェースを利用してもよい。
吸着検知センサ31、送り出しセンサ32、及び搬送センサ33は、制御部40の不図示の入力インタフェースに接続している。
駆動回路44は、吸引装置135と接続する吸着ポンプAP、吸着ベルトクラッチCL1、搬送ローラークラッチCL2、前方送風ファン181、押圧用モーターPML,PMRを駆動する回路である。
吸着ポンプAPは、吸着搬送部13の吸引装置135の吸引ダクト135A,135Bを真空状態にする。
吸着ベルトクラッチCL1は、大ローラー131の軸と不図示の吸着搬送モーターの駆動軸との間に設けられた駆動伝達切替手段である。吸着ベルトクラッチCL1は、吸着搬送モーターの駆動軸から大ローラー131の軸への駆動力の伝達を切り替える。
同様に、搬送ローラークラッチCL2は、搬送ローラー17の軸と不図示の搬送ローラー駆動モーターの駆動軸との間に設けられた駆動伝達切替手段である。搬送ローラークラッチCL2は、搬送ローラー駆動モーターの駆動軸から搬送ローラー17の軸への駆動力の伝達を切り替える。
吸着ベルトクラッチCL1又は搬送ローラークラッチCL2を各モーターの駆動軸に連結して駆動伝達を行う場合を「オン」、その逆を「オフ」とする。吸着ベルトクラッチCL1及び搬送ローラークラッチCL2のオン・オフのタイミングは、印刷処理の紙間制御において指示される。
演算制御部41は、吸着検知センサ31、送り出しセンサ32、及び搬送センサ33からの信号に基づいて給紙制御プログラムを実行する。即ち、演算制御部41は、これらのセンサからの信号に基づいて、不図示の吸着搬送モーター、吸着ベルトクラッチCL1、前方送風ファン181、不図示の搬送ローラー駆動モーター、及び搬送ローラークラッチCL2を駆動するための指令(制御信号)を駆動回路44に適宜出力し、用紙Pを一枚毎に搬送ローラー17の用紙搬送方向の下流側に搬送する。
また、制御部40は、情報提供部50から与えられる用紙Pの坪量(紙厚)の情報に基づいて、押圧機構20L,20Rによる押圧部材21R,21Lの押圧動作の制御、前方送風部18のエアの切り替えタイミングの制御を行う。
[給紙装置の用紙捌き時の動作]
図9は、給紙装置10の給紙時の動作例を示すフローチャートである。演算制御部41がROM42に記録されたプログラムを実行することにより本フローチャートの処理が実現される。
演算制御部41は、印刷ジョブを受信して給紙処理を開始すると、まず前方送風ファン181の動作を開始し(S11)、給紙トレイ11上の用紙束の上部前端部付近にエアを吹き付ける。このエアの吹き付けにより、用紙束から最上位付近の用紙Pが浮上する。
次に、演算制御部41は、左右の押圧機構20L,20Rの押圧用モーターPML,PMRを駆動して各々のカム26の回転角度を調整し、用紙束から浮上した用紙P1,P2…の両側の側端部に押圧部材21L,21Rの各押圧面22を押し当てる(S12)。これにより、浮上した用紙P1,P2…が上方に大きく湾曲しやすくなる(図5)。
次に、演算制御部41は、吸着ポンプAPの動作を開始し、押圧部材21L,21Rの押圧により湾曲した用紙P1,P2…のうち、最上位の用紙P1を吸着ベルト133で吸着する(S13)。上記ステップS12の処理によって用紙P1,P2…が上方により大きく湾曲することにより、吸着ベルト133で最上位の用紙P1を吸着しやすくなり、結果として用紙P1を捌くことができる。
次に、演算制御部41は、吸着検知センサ31の検知信号がオン状態であるか否か、即ち用紙P1が吸着ベルト133に吸着されているかどうかを判定し(S14)、用紙P1が吸着されている場合には(S14のYES)、前方送風ファン181の動作を停止する(S15)。用紙P1が吸着されていない場合には(S14のNO)、演算制御部41は、引き続き吸着検知センサ31の検知信号を判定する。
次に、演算制御部41は、左右の押圧機構20L,20Rの押圧用モーターPML,PMRを駆動してカム26の回転角度を変更し、押圧部材21L,21Rによる浮上した用紙P1,P2…に対する押圧を解除する(S16)。用紙P1,P2…に対する押圧を解除した際、用紙P1,P2…が湾曲状態からまっすぐな状態に復元しようとすることで、吸着ベルト133に吸着された最上位の用紙P1以外が下方に落下し、2枚目の用紙P2が分離されて用紙P1を捌くことができる。ステップS15のファン停止とステップS16の押圧解除は、同時でもよい。
なお、押圧を解除する際の押圧部材21L,21Rの移動速度は、用紙が復元しようとする速度よりも速いことが好適である。押圧部材21L,21Rの移動速度が速いと、用紙の側端部から各押圧面22が離れて、用紙の復元力を最大限に利用できる。
次に、演算制御部41は、吸着ベルト133に最上位に用紙P1が吸着された状態で、吸着ベルトクラッチCL1をオンして吸着ベルト133を回動させ、吸着ベルト133に吸着した用紙P1の搬送を開始する(S17)。
次に、演算制御部41は、送り出しセンサ32の検知信号がオン状態であるか否か、即ち用紙P1の前端が送り出しセンサ32に到達したかどうかを判定する(S18)。そして、演算制御部41は、送り出しセンサ32の検知信号がオン状態である場合には(S18のYES)、所定時間が経過した後、吸着ベルトクラッチCL1をオフし、吸着ベルト133による用紙P1の搬送を停止する(S19)。用紙P1が規定の位置に送り出されていない場合には(S18のNO)、演算制御部41は、引き続き送り出しセンサ32の検知信号を判定する。
この所定時間が経過することで、用紙P1が搬送ローラー17のニップ部に確実に突き当たる。演算制御部41は、吸着ベルトクラッチCL1をオフしてから所定時間が経過した後、搬送ローラークラッチCL2をオンし、搬送ローラー17により用紙P1を搬送する。そして、用紙P1が搬送ローラー17の用紙搬送方向の下流側へ搬送される。搬送ローラー17により用紙P1の搬送を開始後、用紙P1が搬送センサ33に到達すると、搬送センサ33が用紙P1の通過を検知する。
次に、演算制御部41は、印刷ジョブに基づき次の給紙すべき用紙があるか否かを判断する(S20)。次の給紙すべき用紙がある場合には(S20のYES)、演算制御部41は、ステップS11に進んで前方送風ファン181の動作を再度開始し、用紙束の上部前端部付近にエアを吹き付け、ステップS12〜S20の処理を繰り返す。
2枚目の給紙に際しては、吸着検知センサ31がオンし、かつ送り出しセンサ32がオフすることで、2枚目の用紙の送り出しが可能になる。また、送り出しセンサ32がオフするのとほぼ同時に、吸着ベルトクラッチCL1がオンする。また、搬送センサ33がオフするのとほぼ同時に、搬送ローラークラッチCL2をオフする。
演算制御部41は、次の給紙すべき用紙がない場合には(S20のNO)、本フローチャートの一連の処理を終了する。
上述した第1の実施形態によれば、用紙束の前方から上部前端部付近にエアを吹き付けて浮上した用紙P1,P2…の左右の側端部に対し、押圧部材21L,21Rにより押圧することにより用紙P1,P2…が上方に大きく湾曲しやすくなる。したがって、用紙束の最上位の用紙が上方に確実に湾曲し、用紙束の最上位の用紙と2枚目の用紙を良好に捌くことが可能となる。
また、第1の実施形態において、押圧部材21L,21Rによる浮上した用紙P1,P2…に対する押圧を解除するようにした場合、用紙の復元力により吸着ベルト133に吸着された最上位の用紙P1以外の他の用紙が下方に落下し、用紙P1を良好に捌くことができる。
また、第1の実施形態において、押圧部材21で用紙の側端部を押圧する構成とすることにより、従来の側方送風ファンが不要となる。送風ファンは比較的消費電力量が大きいが、側方送風ファンが不要となることで給紙装置10の電力消費が抑えられる。
[第1の実施形態の変形例]
次に、第1の実施形態の変形例として押圧機構の変形例を説明する。第1の実施形態の変形例は、ラックアンドピニオン機構を用いた構成である。左右の押圧機構は同じ構造であるため、ここでは右側の押圧機構について説明する。
図10は、第1の実施形態の変形例に係る押圧機構50Rの説明に供する側部規制部材の断面模式図である。図10Aは押圧部材21Rが用紙を押圧していない状態(通常状態)、図10Bは押圧部材21Rが第1の距離だけ移動した状態(第1の押圧状態)、及び図10Cは押圧部材21Rが第1の距離よりも長い第2の距離だけ移動した状態(第2の押圧状態)を表す。
押圧機構50Rは、押圧部材21R、ラック56、ピニオン57、及び弾性部材24U,24Lを有する。ラック56は用紙幅方向(Y方向)に沿う長尺体であり、その一端は、押圧部材21Rの背面25に固定されている。
ピニオン57は、用紙幅方向と垂直な方向(X方向)に延在するシャフト58の任意の位置、例えば中央付近等に取り付けられている。シャフト58は、給紙装置本体19に回動自在に軸受けされている。シャフト58には、押圧用モーターとしてステッピングモーター等の回転軸部の回転駆動力が伝達される。ピニオン57がシャフト58を中心に回転すると、ピニオン57の歯部とラック56の長手方向の一辺に形成された歯部が係合し、ラック56が用紙幅方向に移動する。
図10Aは、押圧部材21Rが用紙幅方向へ移動していない状態(移動量がゼロ)を表している。ピニオン57が時計回りに回転すると、ラック56が用紙側(図中右方向)へ移動し、押圧部材21Rの背面25が押圧される(第1の押圧状態)。それにより、押圧部材21Rが用紙側に距離y1だけ移動し、押圧部材21Rの押圧面22が用紙束から浮上している用紙の側端部を押圧する(図10B)。
ピニオン57が更に時計回りに回転すると、ラック56が用紙側へ更に移動し、押圧部材21Rの背面25が更に押圧される(第2の押圧状態)。それにより、押圧部材21Rが用紙側に距離y2(y1<y2)だけ移動し、押圧部材21Rの押圧面22が用紙束から浮上している用紙の側端部をより強く押圧(第2の押圧状態)することができる(図10C)。
なお、本実施形態の変形例では、給紙装置本体19がシャフト58を軸支する構成としたが、側部規制部材12R(12L)がシャフト58を回動可能に軸支する構成としてもよい。また、押圧機構は、カム機構、ラックアンドピニオン機構に限定されず、他の機構を用いて実現してもよい。
<2.第2の実施形態>
第2の実施形態は、第1の実施形態における側部規制部材12L,12Rに設けた押圧機構の押圧面が、用紙の種類(紙厚)に応じて傾斜する例である。
[用紙捌きの原理]
図11は、第2の実施形態に係る給紙装置(薄紙を給紙時)の概略を示す断面模式図である。用紙Pが薄紙の場合には、給紙装置10Aの押圧部材61L,61Rは、各押圧面62が垂直な状態で用紙束から浮上した用紙P1,P2…の左右の側端部を押圧する。
図12は、第2の実施形態に係る給紙装置(厚紙を給紙時)の概略を示す断面模式図である。用紙Pが厚紙の場合には、給紙装置10Aの押圧部材61L,61Rは、各押圧面62を内側に傾斜させた状態で用紙束から浮上した用紙P1,P2…の左右の側端部を押圧する。左右の押圧部材61L,61Rの各押圧面62間の距離は、押圧面62の上側であるほど短く、用紙Pの左右の側端部を押圧する力が強くなる。そのため、押圧された用紙Pは上位にあるほど上方への湾曲の度合いが大きくなり、良好な用紙捌きが実現できる。最上位の用紙の左右の側端部が強く押圧されるため、用紙が剛性の高い厚紙であっても湾曲させることができる。
[押圧機構]
次に、押圧部材61L,61Rを移動させる押圧機構について図13乃至図15を参照して説明する。左右の押圧機構は同じ構造であるため、ここでは右側の押圧機構について説明する。
図13は、給紙装置10Aにおける押圧機構の例を示す斜視模式図である。
図14は、給紙装置10Aにおける押圧機構の傾斜動作を示す概略側面図である。
図15は、給紙装置10Aにおける押圧機構の傾斜後の押圧動作を示す概略側面図である。
押圧部材61Rは、押圧機構60Rにより押圧動作を行い、また傾斜機構70Rにより傾斜する。押圧機構60Rと傾斜機構70Rは、側部規制部材12Rに搭載される。以下の説明において、左右の押圧機構及び傾斜機構を区別しない場合には、それぞれ押圧機構60及び傾斜機構70と記す。
図13に示すように、押圧機構60Rは、おおよそ直方体の押圧部材61R、ベース部63、シャフト27、及びカム26(図15参照)を有する。押圧部材61Rの下側端部近傍には、用紙搬送方向(X方向)に貫通孔62hが穿設されており、貫通孔62hにはシャフト71が軸通されている。シャフト71は押圧部材61Rに対し、当該シャフト71が回転したときに押圧部材61Rが回転するように取り付けられている。
ベース部63は、押圧部材61Rが下面側から挿入される溝部64が形成されるとともに、用紙搬送方向(X方向)に貫通孔63hが穿設されている。押圧部材61Rの貫通孔62hとベース部63の貫通孔63hは同一軸を有しであり、共にシャフト71が軸通される。ベース部63は、シャフト71が軸通された押圧部材61Rを回動可能に軸支する構造となっている。
ベース部63の下面の一部には、用紙幅方向(Y方向)に沿って突条部65−1,65−2が形成されている。突条部65−1,65−2は、第1の実施形態に係る突条部23U,23Lと同様の機能を有する。側部規制部材12Rには、押圧部材61Rとベース部63の形状に対応して、不図示の孔部(図6及び図7の孔部122に相当)が形成されている。その孔部の一部には、不図示の2本のガイド溝(図6及び図7のガイド溝123U,123Lと同様の機能を有する)が形成されている。この2本のガイド溝はそれぞれ、孔部の下側の一部に用紙幅方向に沿って突条部65−1,65−2の形状に対応するように形成されており、突条部65−1,65−2は2本のガイド溝に沿って移動可能である。
ステッピングモーターからなる傾斜用モーターTMRと連結されたシャフト76の一端には、クラッチ75のモーター側クラッチ板75mが固定されている。また、クラッチ75の押圧機構側クラッチ板75sにはシャフト74の一端が固定され、シャフト74の他端にはギヤ73が固定されている。シャフト74の他端に固定されたギヤ73は、シャフト71の一端に固定されたギヤ72と係合する。
傾斜用モーターTMRが駆動するとシャフト76が回転し、それに伴いクラッチ75のモーター側クラッチ板75mが回転し、その回転駆動力が押圧機構側クラッチ板75sに伝達してシャフト74が回転する。そして、シャフト74に固定されたギヤ73が回転し、ギヤ73と係合するギヤ72のシャフト71が回転して、シャフト71を支点に押圧部材61Rの角度が変わる(傾斜する)。モーター側クラッチ板75mと押圧機構側クラッチ板75sが連結(オン)することで、回転駆動力が伝達される。反対に、モーター側クラッチ板75mと押圧機構側クラッチ板75sの連結が解除(オフ)されると回転駆動力が伝達されず、モーター側クラッチ板75mが空回りの状態となる。
図14Aは、押圧部材61Rが用紙側(図中右方向)へ傾斜していない状態(傾斜角度がゼロ度)を表している。傾斜機構クラッチCLRがオン状態となり、ギヤ73と係合するギヤ72が時計回りに回転すると、シャフト71が時計回りに回転して押圧部材61Rが用紙側へ第1の傾斜角度θ1だけ傾斜する(第1の傾斜状態)。それにより、図12に示した左右の押圧部材61L,61Rの各押圧面62の上側間の距離は、各押圧面62の下側間の距離よりも短くなる(図14B)。
ギヤ73と係合するギヤ72が更に時計回りに回転すると、シャフト71が更に時計回りに回転して押圧部材61Rが用紙側へ第2の傾斜角度θ2(θ1<θ2)だけ傾斜する(第2の傾斜状態)。それにより、図12に示した左右の押圧部材61L,61Rの各押圧面62の上側間の距離は、各押圧面62の下側間の距離よりも更に短くなる(図14C)。傾斜角度は、用紙の側端部が押圧面62を滑らない範囲で設定する。図14A〜図14Cは3段階の角度調整を例示したが、2段階又は4段階などでもよい。
そして、図15に示すように、押圧用モーターCLR(後述する図16)が駆動してカム26が回転することにより、傾斜した押圧部材61Rを搭載したベース部63及びギヤ73及びシャフト74を用紙側(図中右方向)に平行移動させる。それにより、押圧部材61Rの押圧面62が用紙の側端部を押圧する。左右の押圧部材61L,61Rの上側であるほど、用紙の左右の側端部を強く押圧するので、上位にある用紙ほど上方への湾曲の度合いが大きくなり、良好な用紙捌きが実現できる。
なお、本実施形態に係る押圧機構は、カム機構を用いた機構に限定されず、ラックアンドピニオン機構など、他の機構を用いて実現してもよい。
[給紙装置の制御系]
次に、給紙装置10Aの制御系を説明する。
図16は、給紙装置10Aの制御系の構成例を示すブロック図である。図8の給紙装置10の制御系との相違点を中心に説明する。
給紙装置10Aは、給紙装置10の処理ブロックに加えて、傾斜用モーターTML,TMR、及び傾斜機構クラッチCLL,CLRを備える。傾斜用モーターTML,TMR、及び傾斜機構クラッチCLL,CLRは、演算制御部41の制御の下で、駆動回路44により駆動される。
傾斜機構クラッチCLL、CLRは、シャフト71と傾斜用モーターTML,TMRの駆動軸との間に設けられた駆動伝達切替手段である。傾斜機構クラッチCLL、CLRは、傾斜用モーターTML,TMRの駆動軸からシャフト71への駆動力の伝達を切り替える。
[給紙装置の用紙捌き時の動作]
図17は、給紙装置10Aの動作例を示すフローチャートである。図17のフローチャートは、図9のフローチャートと比較してステップS32,S33の処理を有する点が異なる。
演算制御部41は、印刷ジョブを受信して給紙を開始すると、前方送風ファン181の動作を開始し(S31)、給紙トレイ11上の用紙束(積載された複数の用紙P)の上部前端部付近にエアを吹き付ける。このエアの吹き付けにより、用紙束から最上位付近の用紙Pが浮上する。
次に、演算制御部41は、給紙トレイ11に収容された用紙Pの紙厚を情報提供部50から取得し、用紙Pの紙厚を判定する(S32)。紙厚は、用紙の坪量が規定値を超えれば厚紙、坪量が規定値以下であれば薄紙と判定する。
ここで、用紙Pが薄紙であると判定した場合には(S32の薄紙)、演算制御部41は、左右の押圧機構60L,60Rの押圧用モーターPML,PMRを駆動して各々のカム26の回転角度を調整し、用紙束から浮上した用紙P1,P2…の両側の側端部に押圧部材61L,61Rの各押圧面62を押し当てる(S33)。
一方、用紙Pが厚紙であると判定した場合には(S32の厚紙)、演算制御部41は、左右の傾斜機構70の傾斜用モーターTML,TMRを駆動して押圧部材61L,61Rの各押圧面62の傾斜角度を変更する。そして、演算制御部41は、押圧部材61L,61Rの傾斜角度を維持した状態で、左右の押圧機構60L,60Rの押圧用モーターPML,PMRを駆動して各々のカム26の回転角度を調整し、用紙束から浮上した用紙P1,P2…の両側の側端部に押圧部材61L,61Rの各押圧面62を押し当てる(S34)。
次に、ステップS33又はステップS34の処理が終了後、演算制御部41は、ステップS35〜S42の処理を行う。ステップS35〜S42の処理は、図9のステップS13〜S20の処理と同じである。
上述した第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果に加え、次のような作用効果が得られる。押圧部材61L,61Rの各押圧面62を傾斜させながら、用紙束から浮上した用紙の左右の側端部を各押圧面62で押圧することにより、最上位の用紙の左右の側端部を強く押圧することができる。それにより、最上位の用紙を確実に湾曲させるとともに最上位の用紙と2枚目の用紙との間に積極的に隙間を生成する。それ故、最上位の用紙と2枚目の用紙を安定して分離でき、良好な用紙捌きが実現できる。
なお、第2の実施形態では、傾斜機構クラッチCLL、CLRをオン状態、オフ状態とすることにより回転駆動力の伝達を切り替えたが、ギヤ72とギヤ73を離間させることにより回転駆動力の伝達を停止する構成としてもよい。
また、上述した第1及び第2の実施形態では、前方送風ファン181のオン・オフによりエアの吹き付けを切り替える構成としたが、この例に限らない。例えば前方送風ファン181から吹き付けるエアを遮断するシャッターを設け、前方送風ファン181からエアを送り出したままにして、シャッターの開閉を制御して用紙束に対するエアの吹き付けを切り替えるようにしてもよい。
<3.第3の実施形態>
第2の実施形態に係る押圧部材61R,61Lを手動により角度調整できる構成としてもよい。例えば図13の傾斜機構70Rのシャフト71又はシャフト74と直接又は間接的に連結する摘み(図示略)を設ける。一例として図13の傾斜機構70Rのギヤ72を摘みに置き換え、ユーザがこの摘みを必要な回転角度だけ適宜回転させることにより、押圧部材61R,61Lの傾斜角度を調整することができる。このとき、3段階など数段階の角度調整ができるとよい。それにより、紙厚に応じて最適な傾斜角度に調整することができる。
<4.第4の実施形態>
図18は、第3の実施形態に係る、給紙装置を用いた画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
上述した本実施形態に係る給紙装置10,10Aは、画像形成装置へ用紙を供給する給紙装置として用いて好適なものである。本実施形態に係る給紙装置10,10Aを用いる画像形成装置として、複写機、プリンタ装置、ファクシミリ装置、印刷機、複合機等を例示することができる。以下に、本実施形態に係る給紙装置10を用いる画像形成装置(本発明の画像形成装置の一例)が例えば複写機の場合を例に挙げて説明する。
図18に示すように、本例に係る画像形成装置100は、画像形成装置本体200、画像読取装置300、自動原稿送り装置400、および給紙装置500を有する構成となっている。
画像形成装置本体200は、画像形成部210、定着部220および用紙搬送部230を有する。この画像形成装置本体200において、画像形成部210は、感光体211、帯電部212、露光部213、現像部214、転写部215、およびクリーニング部216等から構成されている。
感光体211は、像担持体であり、図示しない駆動源による駆動によって回転する。帯電部212は、感光体211に電荷を与えることによって当該感光体211の表面を一様に帯電する。露光部213は、原稿dから読み取られた画像データ等に基づいて、感光体211の表面に対して露光を行うことにより、感光体211上に静電潜像を形成する。
現像部214は、トナーとキャリアからなる2成分現像剤を用いて、感光体211上に形成された静電潜像を現像してトナー像とする。転写部215は、感光体211上のトナー像を、用紙搬送部230によって搬送される用紙Pに転写する。クリーニング部216は、感光体211上の残留しているトナーを除去する、即ち、感光体211の表面をクリーニングする。
用紙搬送部230は、給紙カセット231、第1給紙部232、第2給紙部233、排紙部234、搬送路切換部235、循環再給紙部236、および反転排紙部237から構成されている。
自動原稿送り装置400の原稿台上に載置された原稿dは、給紙部410によって画像読取装置300へ搬送される。画像読取装置300へ搬送された原稿dは、その片面又は両面の画像が光学系により露光され、イメージセンサ420によって読み取られる。イメージセンサ420により光電変換されたアナログ信号は、画像処理部430において、アナログ処理、A/D変換処理、シェーディング補正処理、画像圧縮処理等の各種の処理が行われる。そして、各種の信号処理が行われた画像信号は、画像処理部430から露光部213に送られる。
画像形成部210においては、感光体211の表面が帯電部212により帯電され、露光部213からのレーザ光の照射により静電潜像が形成され、現像部214により静電潜像が顕像化されてトナー像となる。次いで、給紙カセット231に収容された用紙Pが第1給紙部232によって搬送される。用紙Pは、レジストローラから成る第2給紙部233でトナー像との同期がとられて搬送される。その後、用紙Pは、転写部215でトナー像が転写され、しかる後に定着部220により定着される。
定着後の用紙Pは、排紙部234によって画像形成装置本体200外に排出される。一方、クリーニング部216により感光体211上の転写残りのトナーの除去処理が行われる。なお、両面コピーの場合は、第1面に画像形成された用紙Pは、循環再給紙部236に送り込まれて反転され、再び画像形成部210において第2面に画像形成後、排紙部234によって画像形成装置本体200外に排出される。反転排紙の場合は、通常の排紙通路から分岐した用紙Pは、反転排紙部237においてスイッチバックして表裏反転された後、排紙部234によって画像形成装置本体200外に排出される。
給紙装置500は、画像形成装置本体200に接続されており、当該画像形成装置本体200に対してエアの吹き付けによって用紙Pを1枚ずつ分離しつつ給紙するエア吸引給紙方式の給紙装置である。
本例に係る給紙装置500は、例えば3つの給紙トレイ510を有する3段の給紙部500A,500B,500Cからなり、大量の用紙Pを収容可能な大容量の給紙装置である。3段の給紙部500A,500B,500Cは、基本的に、同じ構成となっている。したがって、ここでは、最上段の給紙部500Aの構成の概略について説明する。
給紙部500Aは、給紙トレイ510の他、前方送風部520、押圧機構530、吸着搬送部540、前端規制部材550、後端規制部材560、およびガイドレール570等を有する構成となっている。そして、給紙トレイ510は、ガイドレール570により給紙装置500から引き出し可能に構成されている。
上記構成の画像形成装置100において、給紙装置500、より具体的には給紙装置500の各給紙部500A,500B,500Cとして、先述した実施形態に係る給紙装置10,10Aを用いることができる。図18と図3および図4との主な構成要素の対応関係において、前方送風部520が前方送風部18に対応し、押圧機構530が押圧機構20、吸着搬送部540が吸着搬送部13に対応することになる。
このように、給紙装置を備える複写機など画像形成装置100において、給紙装置として先述した実施形態に係る給紙装置10,10Aを用いることで、用紙搬送性能を低下させることなく、画像形成装置本体200へ用紙Pを正確に搬送することができる。それゆえ、画像形成装置100において、印刷処理を安定的に実行可能となる。
なお、ここでは、先述した実施形態に係る給紙装置10を用いる画像形成装置100として複写機を例に挙げたが、この適用例に限られるものではない。すなわち、プリンタ装置、ファクシミリ装置、印刷機、複合機など、エア吹き付け機構を備えたエア吸引給紙方式の給紙装置を備える画像形成装置全般に対して適用可能である。
また、画像形成装置本体200の給紙カセット231に、給紙装置10,10Aを適用して同様の効果を得ることができる。
<5.その他>
なお、上述した各実施形態において、押圧部材が用紙搬送方向と垂直な方向(Y方向)に移動する場合について説明したが、この例に限られない。例えば図5、図11及び図12において、押圧部材がY方向に対して斜め上方(Y方向と垂直方向を合成した方向)に移動してもよい。この場合、図5及び図11の押圧面22,62が垂直な状態を維持したままY方向に対して斜め上方へ移動するよう、押圧部材20,60、突条部やガイド溝等を設計する。
また、上述した各実施形態では、吸着搬送部13の吸着ベルト133は1つであったが、吸着ベルトを2以上備えていてもよい。
また、上述した各実施形態では、吸着搬送部13の吸着ベルト133や各ローラーの駆動方式として、モーター(DCモーター)及びクラッチ系を例示したが、ステッピングモーターなど他の駆動方式でもよい。
さらに、本発明は上述した各実施形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施形態例は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることは可能である。また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。