JP6840639B2 - 両面研磨装置用キャリア - Google Patents

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本発明は、ウェーハを両面研磨する両面研磨装置で用いられる両面研磨装置用キャリアに関する。
両面研磨装置は1バッチ当り例えば5枚程度のウェーハの両面を同時に研磨するため、ウェーハ枚数と同数の保持孔を有する両面研磨機用キャリアを定盤上に設置する。キャリアの保持孔によりウェーハが保持され、上下定盤に設けられた研磨布により両面からウェーハが挟み込まれ、研磨面に研磨剤を供給しながら研磨が行われる。
両面研磨装置用キャリアは、ウェーハを保持するための保持孔を有するキャリア母材が、通常は金属製である。両面研磨装置用キャリアは、ウェーハの外周部を金属製のキャリア母材から保護するために、ウェーハ保持孔内周に樹脂製のインサート材を有している。このインサート材は嵌め込みか射出成型により形成されている。インサート材はウェーハの外周部と接するため、ウェーハのエッジ形状を作り込む上で重要となる。
このインサート材の取り付けに際して、ウェーハ加工中や搬送時にインサート材が外れることを防止するために、インサート材の外周部とキャリア母材の保持孔の内周部を楔状にして嵌合し、さらに接着剤で固定することもある(特許文献1)。
特開2000−24912号公報
インサート材の外周部とキャリア母材の保持孔の内周部の楔形状は周期的に多数存在しており、キャリアの加工時に歪みが生じることがある。さらに、インサート材の嵌合時には、加工の精度により部分的に嵌め込みがきつくなることがあり、局所的に応力が生じてキャリア母材の保持孔周辺が歪む問題がある。また、このキャリア母材の保持孔周辺の嵌合部分の歪みは、ウェーハのエッジ形状の悪化を引き起こし、また、キャリア母材とインサート材にズレを生じさせる。
この状態でウェーハの加工を行うと研磨布が局所的に変形してしまい、ウェーハ平坦度の悪化を引き起こしてしまう。また、キャリア母材とインサート材のズレは研磨により、ある程度キャリア母材とインサート材とを同等な高さになるまで修正することができるが、キャリア母材の保持孔周辺の嵌合部分の歪みまでは修正することができない。結果、この歪みによってウェーハのエッジ形状の悪化が引き起こされる。また、歪みの大きさによりエッジ形状の悪化度合いが変化するため、5枚1セットのキャリア間でもフラットネスにバラツキが生じる問題がある。したがって、ウェーハのエッジ形状の悪化とキャリア間のフラットネスのバラツキを抑えるためにも、キャリア母材の保持孔周辺部分(嵌合部分)の歪みが少ない両面研磨装置用キャリアが求められている。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、キャリア母材の保持孔周辺部分(嵌合部分)の歪みが低減された両面研磨装置用キャリアを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、ウェーハを両面研磨する両面研磨装置において配設され、研磨の際にウェーハを保持するための保持孔が形成されたキャリア母材と、前記保持孔の内周に沿って配置され、前記ウェーハの外周部と接する内周部が形成されたインサート材とを有する両面研磨装置用キャリアであって、前記キャリア母材は、前記保持孔の内周に沿って凹凸部が周期的に形成されたものであり、該凹凸部における隣接する凹部の中心同士の距離が10mm以上60mm以下であり、前記キャリア母材の面方向において前記凹凸部における凸部の面積が凹部の切り欠き部分の面積よりも大きいものであり、前記インサート材は、前記保持孔の内周に形成された前記凹凸部と嵌合可能である凹凸部が外周部に周期的に形成されたものであり、前記キャリア母材の前記保持孔の内周に形成された前記凹凸部と、前記インサート材の外周部に形成された前記凹凸部とが嵌合したものであることを特徴とする両面研磨装置用キャリアを提供する。
このような両面研磨装置用キャリアであれば、キャリア母材の保持孔周辺部分(嵌合部分)の歪みが低減された両面研磨装置用キャリアとなる。
またこの場合、前記キャリア母材の前記保持孔の内周に形成された前記凹部の切り欠き部分の形状が三角形、長方形、台形、楔形、鍵穴形、U字形、円形のいずれかであることが好ましい。
本発明の両面研磨装置用キャリアにおけるキャリア母材の保持孔の内周に形成された凹部の切り欠き部分の形状としては、上記形状が挙げられる。
またこの場合、前記キャリア母材の前記保持孔の内周に形成された凹凸部は、前記キャリア母材の面方向における前記凸部の面積が前記凹部の切り欠き部分の面積の四倍以上であることが好ましい。
このような両面研磨装置用キャリアであれば、キャリア母材の保持孔内周に形成されている凸部の強度が更に上がるため、より一層、キャリア母材の保持孔周辺部分(嵌合部分)の歪みが低減された両面研磨装置用キャリアとなるために好ましい。
本発明の両面研磨装置用キャリアであれば、キャリア母材の保持孔内周に形成された嵌合部分の強度を増すことができ、キャリア母材の保持孔周辺の歪みを少なくすることが可能となる。そして、このような両面研磨装置用キャリアを用いてウェーハを両面研磨すれば、保持孔周辺の歪み低減効果により、エッジフラットネスが向上した、フラットネスのバラツキが低減されたウェーハを得ることができる。
本発明の両面研磨装置用キャリアの一例を示す概略図である。 従来の両面研磨装置用キャリアの一例を示す概略図である。 従来の両面研磨装置用キャリアにおいて発生していた歪みを説明する説明図である。 キャリア母材の保持孔周辺の変形率と、キャリア母材の凹凸部における隣接する凹部の中心同士の距離dとの関係を示すグラフである。 実施例1及び比較例1で歪みを測定した部分を説明する説明図である。 実施例1及び比較例1で測定した保持孔周辺の歪み量(図6(A))、ESFQRrange相対値(図6(B))、ESFQRmaxの相対値(図6(C))の測定結果である。 比較例2〜4における、キャリア母材の保持孔周辺の歪みと、フラットネス(nm)との関係を示すグラフである。
上述したように、従来、キャリア母材の保持孔周辺部分(嵌合部分)の歪みが少ない両面研磨装置用キャリアが求められていた。
そして、本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、キャリア母材の保持孔の内周に形成されている凹凸部における凹部の間隔(即ち、隣接する凹部の中心同士の距離)を、従来の5mm以上10mm未満から、10mm以上60mm以下に広げることで、キャリア母材の、インサート材との嵌合部分の歪みが低減されたキャリアとなることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、ウェーハを両面研磨する両面研磨装置において配設され、研磨の際にウェーハを保持するための保持孔が形成されたキャリア母材と、前記保持孔の内周に沿って配置され、前記ウェーハの外周部と接する内周部が形成されたインサート材とを有する両面研磨装置用キャリアであって、前記キャリア母材は、前記保持孔の内周に沿って凹凸部が周期的に形成されたものであり、該凹凸部における隣接する凹部の中心同士の距離が10mm以上60mm以下であり、前記キャリア母材の面方向において前記凹凸部における凸部の面積が凹部の切り欠き部分の面積よりも大きいものであり、前記インサート材は、前記保持孔の内周に形成された前記凹凸部と嵌合可能である凹凸部が外周部に周期的に形成されたものであり、前記キャリア母材の前記保持孔の内周に形成された前記凹凸部と、前記インサート材の外周部に形成された前記凹凸部とが嵌合したものであることを特徴とする両面研磨装置用キャリアを提供する。
以下、本発明の両面研磨装置用キャリアについて詳細に説明する。
図1に、本発明の両面研磨装置用キャリアの一例を示す。本発明の両面研磨装置用キャリア1は、ウェーハを両面研磨する両面研磨装置において配設されるものであり、研磨の際にウェーハを保持するための保持孔2が形成されたキャリア母材3と、前記保持孔2の内周に沿って配置され、ウェーハの外周部と接する内周部が形成されたインサート材4とを有する。
キャリア母材3は、保持孔2の内周に沿って凹凸部5が周期的に連続的に形成されたものである。本発明は、このキャリア母材3の凹凸部5における隣接する凹部5aの中心同士の距離dが10mm以上60mm以下であり、キャリア母材3の面方向において凹凸部5における凸部5bの面積が凹部5aの切り欠き部分の面積よりも大きいものであることを特徴とする。
このように、キャリア母材3の凹凸部5における隣接する凹部5aの中心同士の距離dを10mm以上60mm以下として従来の距離よりも広げることで、キャリア母材3の、インサート材4との嵌合部分の歪みを低減した両面研磨装置用キャリア1となる。
図2に示すように、従来の両面研磨装置用キャリア10は、インサート材40とキャリア母材30とを確実に嵌合させるために、キャリア母材30の凹凸部における隣接する凹部50aの中心同士の距離は、ウェーハ径によって異なるものの、5mm〜10mm未満(直径300mmで約9.6mm)と比較的狭い間隔で多数存在していた。しかし、このような狭い間隔では部分的に応力が集中してしまい、図3に示すように、キャリア母材30の保持孔周辺に歪みが生じてしまう。
本発明では、キャリア母材3の面方向において凹凸部5における凸部5bの面積が凹部5aの切り欠き部分の面積よりも大きいもので、かつ、キャリア母材3の凹凸部5における隣接する凹部5aの中心同士の距離dを10mm以上と広げることで、従来よりも凹凸部5の数を少なくして、キャリア母材側の凸部5bの面積を相対的に大きくできる。このように、嵌合部分の間隔が広いものとすることで、キャリア母材3の保持孔周辺の歪み量を低減することができる。また、dが60mmを超えると、ウェーハ加工中等にインサート材4がキャリア母材3から外れる恐れがあるため、本発明においてdは60mm以下である。また、キャリア母材3の凹凸部5における隣接する凹部5aの中心同士の距離dは、好ましくは14mm以上50mm以下、より好ましくは18mm以上30mm以下である。
ここで、キャリア母材の保持孔内周に形成された凹凸部における隣接する凹部の中心同士の距離dの大きさと、キャリア母材の保持孔周辺部分(嵌合部分)の歪みの関係について、以下に示す。
直径300mmのシリコンウェーハを両面研磨するための、両面研磨装置用キャリアのキャリア母材の保持孔周辺の嵌合部分について、従来の隣接する凹部の中心同士の距離d(9.6mm)の時のキャリア母材の歪み量を基準として、距離dを10倍(95.5mm)まで広げた時の、キャリア母材の歪み量をシミュレーション解析(ANSYS mechanical)により数値化した。
凹凸部の切り欠き部分の形状が台形の場合と円形の場合でそれぞれ解析した結果を図4(A)、図4(B)に示す。結果、台形の場合(図4(A))、及び円形の場合(図4(B))のいずれの場合も、キャリア母材の凹凸部における隣接する凹部の中心同士の距離dが10mm未満の場合、10mm以上の場合と比較して歪み量(変形率)が大幅に大きくなっている。一方、隣接する凹部の中心同士の距離dが10mm以上であれば、隣接する凹部の中心同士の距離dが大きい程歪みが低減した。歪みの低減は、間隔が大きくなるに伴い飽和していき、切り欠き部分の形状が台形の場合は4倍の距離(d=38.2mm)以上で一定となっている。
凹部の切り欠き部分の形状が台形の場合、従来の隣接する凹部の中心同士の距離(d=9.6mm)の変形率を基準とした時に、4倍の距離(d=38.2mm)のときの歪み量は11%低減している。凹部の切り欠き部分が円形形状の場合も同様に4倍の距離以上で一定となり、従来間隔の変形率を基準としたときの歪み量は6.5%低減している。
また、本発明の両面研磨装置用キャリア1においては、キャリア母材3の保持孔2の内周に形成された凹部5aの切り欠き部分の形状が三角形、長方形、台形、楔形、鍵穴形、U字形、円形のいずれかであることが好ましい。そして、これらのいずれの形状においても、シミュレーション解析の結果、上記と同様の傾向が見出された。
また、キャリア母材3の保持孔2の内周に形成された凹凸部5は、キャリア母材3の面方向における凸部5bの面積が凹部5aの切り欠き部分の面積の四倍以上であることが好ましい。このような両面研磨装置用キャリア1であれば、凸部5bの強度が更に上がるため、より一層、キャリア母材3の保持孔周辺部分(嵌合部分)の歪みが低減されたものとなる。
図1に示すように、インサート材4は、キャリア母材3の保持孔2の内周に形成された凹凸部5と嵌合可能である凹部6aと凸部6bとからなる凹凸部6が外周部に周期的に形成されたものである。インサート材4の材質としては、例えば硬質樹脂とすることができる。
本発明の両面研磨装置用キャリア1は、このようなキャリア母材3の保持孔2の内周に形成された凹凸部5と、インサート材4の外周部に形成された凹凸部6が嵌合したものである。
このような本発明の両面研磨装置用キャリア1は、キャリア母材3の保持孔周辺部分(嵌合部分)の歪みが少ないものとなり、このような両面研磨装置用キャリア1を用いてウェーハを両面研磨すれば、保持孔周辺の歪み低減効果により、加工されるウェーハのエッジフラットネスが向上した、フラットネスのバラツキが低減されたものを得ることができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(比較例1)
両面研磨装置用キャリアとして、キャリア母材30の保持孔内周に形成された凹凸部の凹部50aの切り欠き部分の形状が台形で、隣接する凹部50aの中心同士の距離dが9.6mmのキャリア母材30と、インサート材40とを嵌合させ、図2に示すような両面研磨装置用キャリア10を製造した。
(実施例1)
両面研磨装置用キャリアとして、キャリア母材3の保持孔内周に形成された凹凸部5の凹部5aの切り欠き部分の形状が台形で、隣接する凹部5aの中心同士の距離dが19.1mmのキャリア母材3と、インサート材4とを嵌合させ、図1に示すような両面研磨装置用キャリア1を製造した。実施例1のd(19.1mm)は、比較例1のd(9.6mm)の約2倍である。
上記実施例1及び比較例1の両面研磨装置用キャリアについて、図5に示す範囲(キャリア母材の保持孔周辺)の歪みを3次元測定機(東京精密製)により確認した。測定結果を図6(A)に示す。歪み量の平均値が実施例1では24.2μm、比較例1では29.1μmであった。実施例1では比較例1よりも保持孔周辺の歪みが大幅に低減していることが確認された。尚、これらの結果は、図4(A)で示したシミュレーション結果にほぼ一致していた。
さらに、これらのキャリアを用いて、直径300mmのシリコンウェーハに対してDSP(Double Side Polishing)加工を行い、フラットネス測定を行った(LSW−3000,コベルコ)。比較例1を基準とした場合のESFQRrange相対値の結果を図6(B)、及びESFQRmaxの相対値の結果を図6(C)に示す。実施例1では、比較例1に比べESFQRのrange幅が縮小しており、エッジフラットネスのバラツキが低減していることが確認された。また、同時にESFQRmaxの値も改善させることができた。
(比較例2〜4)
比較例1の両面研磨装置用キャリアを基準としたときの、キャリア母材の保持孔周辺の歪み量が異なる両面研磨装置用キャリア(比較例2〜4)の保持孔周辺の歪み量(倍率)及びフラットネス(nm)との関係を表1及び図7に示す。結果、歪み量が少ない程、フラットネスが良好であることが確認された。
Figure 0006840639
(比較例5)
比較例1と同様にして、両面研磨装置用キャリアとして、キャリア母材30の保持孔内周に形成された凹凸部の凹部50aの切り欠き部分の形状が台形で、隣接する凹部50aの中心同士の距離dが62mmのキャリア母材30と、インサート材40とを嵌合させ、図2に示すような両面研磨装置用キャリア10を製造した。
製造したキャリアを用いて、直径300mmのシリコンウェーハに対してDSP加工を行ったが、途中、インサート材40がキャリアから外れてしまい、DSP加工を行うことができなかった。
以上により、キャリア母材の保持孔内周に形成された隣接する凹部の中心同士の距離dが10mm未満であると、保持孔周辺の歪み量が大幅に大きくなり(比較例1)、dが60mmを超えると、ウェーハ加工中にインサート材が外れてしまった(比較例5)。一方で、dを10mm以上60mm以下としたキャリアは、母材の保持孔周辺部分(嵌合部分)の歪みが少ないものとなった(実施例1)。また、dが60mmのものでは、ウェーハのDSP加工を行っても、インサート材が外れることはなかった。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1,10…両面研磨装置用キャリア、 2…保持孔、 3,30…キャリア母材、 4,40…インサート材、 5…キャリア母材の凹凸部、 5a,50a…キャリア母材の凹部、 5b…キャリア母材の凸部、 6…インサート材の凹凸部、 6a…インサート材の凹部、 6b…インサート材の凸部。

Claims (2)

  1. ウェーハを両面研磨する両面研磨装置において配設され、研磨の際にウェーハを保持するための保持孔が形成されたキャリア母材と、前記保持孔の内周に沿って配置され、前記ウェーハの外周部と接する内周部が形成されたインサート材とを有する両面研磨装置用キャリアであって、
    前記キャリア母材は、前記保持孔の内周に沿って凹凸部が周期的に形成されたものであり、該凹凸部における隣接する凹部の中心同士の距離が18mm以上60mm以下であり、前記キャリア母材の面方向において前記凹凸部における凸部の面積が凹部の切り欠き部分の面積よりも大きいものであり、
    前記インサート材は、前記保持孔の内周に形成された前記凹凸部と嵌合可能である凹凸部が外周部に周期的に形成されたものであり、
    前記キャリア母材の前記保持孔の内周に形成された前記凹凸部と、成型された前記インサート材の外周部に形成された前記凹凸部とが嵌合したものであり、
    前記ウェーハが、直径300mmのシリコンウェーハであることを特徴とする両面研磨装置用キャリア。
  2. 前記キャリア母材の前記保持孔の内周に形成された前記凹部の切り欠き部分の形状が三角形、長方形、台形、楔形、鍵穴形、U字形、円形のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の両面研磨装置用キャリア。
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