以下、ドットインパクトプリンターの一実施形態について図面を参照して説明する。以下の各図においては、各部材等を認識可能な程度の大きさにするため、各部材等の尺度を実際とは異ならせて示している。
まず、図1を参照してドットインパクトプリンターの構成を説明する。図1に示すドットインパクトプリンター11(以下、単に「プリンター11」)は、同図における左右方向を長手方向とするとともに上方(図1の紙面と直交する方向)に向かって一部が開放された略直方体形状の筐体12を備えている。この筐体12内において、長手方向における両端部には、互いに対向する一対のフレーム部材13が配置されている。二つのフレーム部材13には、回転軸14及びガイド軸15が、各々の軸方向を長手方向に一致させた状態で互いに平行に延びた状態で架設されている。回転軸14は、フレーム部材13に対して回転可能に支持され、その両端部を除く部分の外周部には、軸方向に長尺な円筒状のローラー16(プラテン)が取り付けられている。ローラー16は、回転軸14と共に回転可能であり、回転することにより例えば用紙等の媒体Pを搬送する。すなわち、ローラー16は、媒体Pを搬送する搬送部として機能する。媒体Pは、ローラー16に巻き掛けられた状態でローラー16が回転することによって、副走査方向Y(搬送方向)に搬送される。
ガイド軸15には、副走査方向Yと交差(特に直交)する主走査方向Xにガイド軸15に沿って移動可能なキャリッジ17が取り付けられている。キャリッジ17には、媒体Pに印刷(印字)するドットインパクト式の印刷ヘッド21が搭載されている。プリンター11には、印刷ヘッド21を主走査方向Xに移動させる主走査部23(移動機構)が設けられている。本例では、主走査部23として、例えばベルト移動方式が採用されている。主走査部23は、その駆動源となるキャリッジモーター24と、キャリッジモーター24により回転可能な一対のプーリー25と、一対のプーリー25に巻き掛けられた無端状のベルト26とを備え、ベルト26の一部にキャリッジ17が固定されている。キャリッジモーター24が正逆転駆動されることにより、印刷ヘッド21は、ガイド軸15に沿って主走査方向Xに往復移動する。
また、プリンター11は、媒体Pを副走査方向Yに搬送する副走査部28(搬送部)を備えている。副走査部28は、前述のローラー16と、ローラー16を回転駆動させる駆動源である搬送モーター27とを備えている。搬送モーター27は不図示の歯車機構を介してローラー16の回転軸14と動力伝達可能に連結されている。搬送モーター27の駆動によりローラー16が回転することによって媒体Pは、印刷ヘッド21と対向する状態で副走査方向Yに搬送される。
図1に示す印刷ヘッド21は、ローラー16に向かって突出するノーズ部22を備えている。そして、印刷ヘッド21は、ローラー16と対向するノーズ部22の先端からワイヤピン31(図2、図4を参照)を突出させ、ワイヤピン31で媒体Pを打ち付けることにより媒体Pに印字する。こうしたプリンター11は、インクリボンなどを介してワイヤピン31が媒体Pに圧力(打圧)を加えることで、媒体Pにドットを複写して文字や符号などを印字する。プリンター11は、媒体Pとして例えばノーカーボンペーパーなどの感圧紙を用いる場合、インクリボンを用いることなく、媒体Pに印字可能である。そして、シリアル印刷方式を採用するプリンター11は、副走査部28により媒体Pを副走査方向Yに搬送する搬送動作と、主走査部23により印刷ヘッド21を主走査方向Xに移動させながらその移動途中で印刷ヘッド21がローラー16に支持される媒体Pに印字する印字動作とが繰り返し行われ、媒体Pに印刷データに基づく文書等が印刷される。なお、図1において、印刷ヘッド21は印刷中において主走査方向Xに往復動するが、+X方向を順方向(往動方向)、−X方向を逆方向(復動方向)とする。
図2及び図3は、印字動作の一例を説明するための説明図である。図2はワイヤピン31を媒体Pに打ち付ける動作を示し、図3はワイヤピン31を媒体Pから離す動作を示す。
プリンター11が内蔵する制御部41(図6を参照)内の不図示のスイッチ(例えばトランジスター)が、マイクロコンピューターから出力された印字制御信号がHighになってオンした場合にコイル32に電流が流れると磁力が発生する。そして、図2に示すように、発生した磁力によって金属製のレバー33が軸34を中心に同図に矢印で示す方向に回動して鉄心35に引き寄せられる。そして、レバー33に接続されているワイヤピン31が、インクリボン36を紙等の媒体Pに打ち付けることにより、媒体Pにドットの画像を形成する。また、媒体Pが感圧紙である場合は、インクリボン36を介さずワイヤピン31を媒体Pに直接打ち付けることにより、媒体Pに印字される。
また、図3に示すように、戻しばね37は、同図に矢印せ示す上方にレバー33を押し、レバー33を鉄心35から離れる方向に付勢する。制御部41内のマイクロコンピューターから出力された印字制御信号に応じて不図示のスイッチがオフし、コイル32に流していた電流を遮断すると、コイル32に磁力が発生しなくなる。そのため、レバー33は、戻しばね37の付勢力によって軸34を中心に図3に矢印で示す復帰方向に回動して元の位置に戻る。これにより、ワイヤピン31も媒体P及びインクリボン36から離れて元の位置に戻る。なお、図2及び図3では、1本のワイヤピン31の動作のみ説明したが、図4に示す複数のワイヤピン31ごとに、コイル32、レバー33及び戻しばね37等からなるワイヤピン駆動機構が設けられ、各ワイヤピン31は制御部41により個別に駆動制御される。なお、前述のとおり、媒体Pが感圧紙である場合、プリンター11はインクリボン36を取り外した状態で使用される。
次に、図4を参照して、印刷ヘッドが有するワイヤピン列について説明する。図4に示すように、印刷ヘッド21のノーズ部22におけるローラー16の表面と対向する板状のワイヤガイド22aには、複数(K列)のワイヤ群の一例としてのワイヤピン列38が設けられている。図4に示す例では、ワイヤガイド22aに4列(例えばA列〜D列)のワイヤピン列38が配置されている。ここで、図4に示す4列のワイヤピン列38について、印刷ヘッド21が往動するときの進行方向先頭側から順に、A列を第1ワイヤピン列38A、B列を第2ワイヤピン列38B、C列を第3ワイヤピン列38C及びD列を第4ワイヤピン列38Dとする。なお、以下の説明では、ワイヤピン列38A〜38Dを特に区別しない場合は、単に「ワイヤピン列38」という。
ワイヤピン列38は、副走査方向Yに一定のピッチYpで配置された複数(J本(但し、JはJ≧4を満たす自然数(本例では12本)))のワイヤピン31を含んでいる。各ワイヤピン列38を構成するJ本のワイヤピン31は、副走査方向YのピッチYpが、例えば1/72インチとなるように配列されている。なお、ワイヤピン31の副走査方向YのピッチYpは、所望の印刷解像度に応じて変更でき、例えば1/36インチ又は1/144インチでもよい。
ここで、ワイヤピン列38を構成するJ本(本例では12本)のワイヤピン31に対してそれぞれ#1〜#12の符号を割り当てる。図4に示す4列のワイヤピン列38は、ワイヤガイド22aの表面における中央部に配置されている。図4において、4列のワイヤピン列38を構成する4列分(計48本)のワイヤピン31は、ワイヤガイド22a(又は4つのワイヤピン列38)の主走査方向Xにおける中心線Lc上の中心点Cに対して点対称となる位置関係となる配列パターンをとる。すなわち、図4に示すように、第1ワイヤピン列38A(A列)を構成するJ本のワイヤピン31と第4ワイヤピン列38D(D列)を構成するJ本のワイヤピン31とは中心点Cに対して互いに点対称となる配列パターンをとる。また、第2ワイヤピン列38B(B列)を構成するJ本のワイヤピン31と第3ワイヤピン列38C(C列)を構成するJ本のワイヤピン31とは中心点Cに対して互いに点対称となる配列パターンをとる。
図4において、第1ワイヤピン列38Aと第2ワイヤピン列38Bにより例えば漢字1文字を印字でき、第3ワイヤピン列38Cと第4ワイヤピン列38Dにより例えば漢字1文字を印字できる。本実施形態の印刷ヘッド21は、2文字ずつの印字が可能なため、高速印字が可能になっている。1文字を印字可能な2列1組のワイヤピン列38A,38Bと38C,38Dは、組をなすもの同士が同じ配列パターンを有するとともにワイヤピン列38間で副走査方向Yにおけるワイヤピン31の位置が半ピッチ(=Yp/2)ずれている。このため、2列ずつのワイヤピン列38A,38Bと38C,38Dにより、1文字を144dpiの解像度で印字できる。なお、1文字の印字に2列のワイヤピン列38を用いる本例では、ピッチYpが1/36インチのときに印刷解像度が72dpi、ピッチYpが1/144インチのときに印刷解像度が288dpiとなる。
図4、図5に示すように、本実施形態では、ワイヤピン列38を構成する複数(J本)のワイヤピン31が、主走査方向Xに3つ以上の異なる位置にずれて配置されている。特に本例では、J本(12本)のワイヤピン31は、N個(但し、Nは、3≦N≦J/2を満たす自然数)のワイヤピン群39を含んでいる。ワイヤピン群39に属するM本(但し、Mは、2≦M≦J−4を満たす自然数)のワイヤピン31は主走査方向Xに同じ位置に配置されている。図4、図5の例では、ワイヤピン群39に属するワイヤピン31の数Mは、全てのワイヤピン群39で共通でM=2であるが、条件2≦M≦J−4を満たしていれば、ワイヤピン列38に、それぞれに属するワイヤピン数Mの異なるワイヤピン群39が混在していてもよい。
また、本例では特にNは4以上(N≧4)であり、N個のワイヤピン群39が4つ以上(例えば6つ)の異なる位置にずれて位置するジグザグに配置されている。本例では、N個のワイヤピン群39は、主走査方向Xの位置が互いに異なっている。N個のワイヤピン群39がジグザグに配置されることにより、それらに属するJ本のワイヤピン31は同じくジグザグに配置され、主走査方向Xに4つ以上(例えば6つ)の異なる位置にずれて配置されている。本例では、J本のワイヤピン31が主走査方向Xに配置される異なる位置の数は、ワイヤピン群39の数と等しい数N(本例では6つ)となっている。なお、図4では、第1ワイヤピン列38A(A列)に属する全て(6つ)のワイヤピン群39を二点鎖線の矩形で囲んで示しているが、他のワイヤピン列38B〜38Dについてはワイヤピン♯1,♯2を含む第1ワイヤピン群39のみ二点鎖線で囲んで示し、他のワイヤピン群の表示は省略している。
図5に示すように、ワイヤピン列38を構成する全て(J本)のワイヤピン31は、主走査方向Xにおいてワイヤピン31の副走査方向YにおけるピッチYp(中心間距離)と同じ寸法の範囲内で、3つ以上(本例では特に6つ)の異なる位置にずれて配置されている。換言すれば、J本のワイヤピン31は、主走査方向Xに3つ以上(本例では特に6つ)の異なる位置にずれて配置され、かつ主走査方向Xの最大ずれ量ΔXmaxが、ワイヤピン31の副走査方向YのピッチYpの寸法以下となっている。すなわち、最大ずれ量ΔXmaxは、ΔXmax≦Ypの条件を満たしている。ここで、最大ずれ量ΔXmaxとは、ワイヤピン列38を構成するJ本のワイヤピンのうち最も−X方向側に位置するワイヤピン31と、最も+X方向側に位置するワイヤピン31との中心間距離を指す。
また、本例では、J本のワイヤピン31が3つ以上(本例では特に6つ)の異なる位置にずれて配置されている範囲、すなわち最大ずれ量ΔXmaxが、ワイヤピン31の半径以上となっている。特に本例では、最大ずれ量ΔXmaxが、ワイヤピン31の直径以上となっている。この最大ずれ量ΔXmaxが大きいほど、かつワイヤピン31の主走査方向Xに3つ以上の異なる位置の数が少ないほど、分散インパクト印字の実施頻度が高まる。このため、所望の分散インパクト印字の実施頻度が得られるように、最大ずれ量ΔXmax及びワイヤピン31の3つ以上の異なる位置の数を決めればよい。なお、ワイヤピン31の配列は、ワイヤガイド22aに開口する図示しないガイド孔の配列によって決定される。ここではワイヤピン31に注目して説明するが、ワイヤピン31の配列とガイド孔の配列は一致しているため、ワイヤピン31の配列をガイド孔の配列と読み替えることもできる。
図4及び図5に示す例では、ワイヤピン列38を構成するN個のワイヤピン群39を主走査方向Xに3つ以上の異なる位置にずらすことで、主走査方向XにおいてJ本のワイヤピン31を最大ずれ量ΔXmaxが副走査方向YのピッチYpと同じ寸法の範囲内でN個の異なる位置に配置する。このため、図5に示すワイヤピン配列を採用する本実施形態によれば、J本のワイヤピン全てを主走査方向XにJ個の異なる位置にずらした構成に比べ、主走査方向Xにおけるワイヤピン31の中心線間隔であるずれ量Δxを相対的に大きく確保できている。図5に示すように、ジグザグに配置されたJ本(12本)のワイヤピン31を、副走査方向Yと直交する投影線Lpに対して副走査方向Yに投影した場合、その投影線Lp上のN個(6つ)の投影ワイヤピンの主走査方向Xにおけるずれ量Δxが全て等しくなっている。つまり、J本のワイヤピン31は主走査方向Xに一定のピッチXpで配置されている。
次に、印刷ヘッド21を主走査方向Xに移動させて行う印字動作について説明する。媒体Pに印字する際、印刷ヘッド21は、主走査方向Xに移動しながら印字を行う。このとき、印刷ヘッド21は、例えば順方向+Xに移動(往動)する際に、各ワイヤピン列38A〜38Dのそれぞれにおいて、J本(12本)のワイヤピン31のうち往動時の進行方向先端側のワイヤピン31から順に駆動させて印字を行う。また、印刷ヘッド21は、逆方向−Xに移動(復動)する際に、各ワイヤピン列38A〜38Dのそれぞれにおいて、J本のワイヤピン31のうち復動時の進行方向先端側のワイヤピン31から順に駆動させて印字を行う。
特に複数のワイヤピン群39を含む本実施形態の印刷ヘッド21では、図4に示すように、印刷ヘッド21が順方向+Xに移動する際に、K列(4列)のワイヤピン列38A〜38Dではそれぞれに属するN個のワイヤピン群39のうち、進行方向先頭側に位置するワイヤピン群39から順に駆動するように制御される。詳しくは、第1ワイヤピン列38Aを構成するJ本(12本)のワイヤピン31のうち、1番目にワイヤピン♯5,♯6、2番目にワイヤピン♯9,♯10、3番目にワイヤピン♯3,♯4、4番目にワイヤピン♯7,♯8、5番目にワイヤピン♯1,♯2、6番目にワイヤピン♯11,♯12の順序で打ち付けられる。次に第2ワイヤピン列38Bを構成するワイヤピン♯1〜♯12が、第1ワイヤピン列38Aと同様の順序で打ち付けられる。さらに第3ワイヤピン列38Cを構成するワイヤピン31のうち、1番目にワイヤピン♯1,♯2、2番目にワイヤピン♯11,♯12、3番目にワイヤピン♯5,♯6、4番目にワイヤピン♯9,♯10、5番目にワイヤピン♯3,♯4、6番目にワイヤピン♯7,♯8の順番でワイヤピンが打ち付けられる。次に第4ワイヤピン列38Dを構成するワイヤピン♯1〜♯12が、第3ワイヤピン列38Cと同様の順番で打ち付けられる。
一方、印刷ヘッド21が逆方向−Xに移動(復動)する際は、K列(4列)のワイヤピン列38A〜38Dのそれぞれに属するN個のワイヤピン群39のうち、進行方向先頭側に位置するワイヤピン群39から順に駆動するように制御される。詳しくは、印刷ヘッド21が逆方向−Xに移動するときは、K列のワイヤピン列38A〜38Dを構成するワイヤピン群39が、順方向+Xのときの順序と逆の順序で駆動される。なお、印刷ヘッド21は、各ワイヤピン列38A〜38Dを構成する合計K列×J本のワイヤピン31を、媒体Pに対して主走査方向X及び副走査方向Yに互いに異なる位置に打ち付けてドットを形成することで印字する。また、K列×J本のワイヤピン31のうち印刷データPDに基づき選択されたワイヤピンが打ち付け駆動されることで文字が印字される。
次に、図6を参照して、プリンター11の電気的構成を説明する。プリンター11は、プリンター11の制御を司る制御部41、印刷ヘッド21、キャリッジモーター24、搬送モーター27及びエンコーダー29を備えている。エンコーダー29は、キャリッジモーター24の回転又は主走査部23の動力伝達系(例えば歯車)の回転を検出し、キャリッジ17の移動量(移動距離)に比例する数のパルスを含む回転検出信号(エンコーダー信号)を制御部41へ出力する。
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)及びカスタムLSIであるASIC(Application Specific Integrated Circuit)(特定用途向け集積回路)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリー等を含むマイクロコンピューター(いずれも図示せず)を備える。制御部41は、主走査部23の動作と、副走査部28の動作と、印刷ヘッド21に含まれるワイヤピン31の動作とを制御する。制御部41は、CPUが不揮発性メモリーに記憶されたプログラムを実行したときに構築されるソフトウェアからなるヘッド制御部42、キャリッジ制御部43及び搬送制御部44を備える。また、制御部41は、不揮発性メモリーに図7に示す速度制御プロファイルデータVDを記憶している。さらに制御部41は、制御回路45及びモーター駆動回路46,47を備えている。なお、各制御部42〜44は、ソフトウェアに替え、ハードウェアからなる構成、又はソフトウェアとハードウェアとの協働による構成であってもよい。
ヘッド制御部42は、図示しない外部装置(ホスト装置)からプリンター11が受信した印刷データPDを制御回路45に送る。制御回路45は、印刷データPDに基づく印字タイミングで印刷ヘッド21の各ワイヤピン31(図4参照)を駆動させることが可能な印字制御信号Spを生成し、その生成した印字制御信号Spを印刷ヘッド21に出力する。制御回路45は、ワイヤピン31が主走査方向Xに3つ以上(例えば6つ)の異なる位置にずれて配置されていることに対応して、主走査方向Xに位置の異なるワイヤピン単位(本例ではワイヤピン群単位)に印字タイミングを規定する印字制御信号Spを生成し出力する。
キャリッジ制御部43は、モーター駆動回路46を介してキャリッジモーター24を駆動制御することによりキャリッジ17を制御し、印刷ヘッド21を主走査方向Xに移動させる移動動作(主走査)を制御する。キャリッジ制御部43は、不揮発性メモリーに記憶された図7に示す速度制御プロファイルデータVDに基づいてキャリッジモーター24を速度制御する。図6に示すキャリッジ制御部43は、エンコーダー29から入力した回転検出信号のパルスを計数してその時々のキャリッジ17の位置(キャリッジ位置)を逐次取得する。キャリッジ制御部43は、キャリッジ17の移動開始位置P0を起点とするその時々のキャリッジ位置(現在位置)を取得し、そのときのキャリッジ位置を基に速度制御プロファイルデータVDを参照して、現在のキャリッジ位置に応じた目標速度を取得する。キャリッジ制御部43は、目標速度に応じた指令値をモーター駆動回路46に出力することによりキャリッジ17を速度制御プロファイルに沿って速度制御する。その結果、キャリッジ17は、図7にグラフで示すように、加速過程・定速過程・減速過程を経て一方向(順方向又は逆方向)に1回移動(1走査)する。なお、キャリッジ制御部43は、キャリッジ速度を目標速度に近づけるフィードバック制御(例えばPID制御)を行うが、例えば加速域と減速域についてはフィードフォワード制御を行ってもよい。
図7に示すように、印刷ヘッド21は、加速過程においてその途中の印字開始位置P1から定速度Vcに達する加速終了位置P2までの区間で印刷する加速印刷と、定速度Vcで移動する定速域で印刷する定速印刷と、定速度Vcからの減速を開始する減速開始位置P3から減速過程の途中の印字終了位置P4までの区間で印刷する減速印刷とを行う。なお、本実施形態では、変速印刷として加速印刷と減速印刷との両方を行うが、加速過程と減速過程とのうち少なくとも一方の変速過程で印刷する変速印刷であればよい。
図6に示す搬送制御部44は、モーター駆動回路47を介して搬送モーター27を駆動制御してローラー16を回転させることにより、媒体Pを次行の印字位置又は排出位置などの目標位置まで搬送する。印刷中は、キャリッジ制御部43がキャリッジ17(つまり印刷ヘッド21)を主走査方向Xに移動させる移動動作(主走査)と、搬送制御部44が媒体Pを次行の印字位置まで搬送する搬送動作(副走査)とを繰り返すことにより、媒体Pに1枚分の印字が行われる。
また、本実施形態の制御回路45は、ヘッド制御部42から受信した印刷データPDに基づいて各ワイヤピン31の印字タイミングを規定する印字制御信号Spを生成する。制御回路45は、エンコーダー29から入力した印刷ヘッド21の移動速度(ヘッド走査速度)に応じた所定周期のパルスを含む回転検出信号(エンコーダー信号)を逓倍回路(図示せず)により印字駆動周期のパルスを含む基準パルス信号St(図8参照)に変換する。制御回路45は、基準パルス信号を基に各ワイヤピンを駆動させる印字制御信号Spを生成する。本実施形態では、ワイヤガイド22aの面上においてワイヤピン列38を構成するJ本のワイヤピン31は主走査方向Xのずれ量Δx(ピッチXp)が一定であるため、基準パルス信号に対して一定の遅延時間Δtずつ遅らせた設定遅延時間ΔT(=0,Δt,2Δt,…)の遅延により各ワイヤピン31の印字制御信号Spを生成する。一定の遅延時間Δtは、そのときのヘッド走査速度に応じて変化する値である。なお、J本のワイヤピン31のうち印刷ヘッド21の進行方向の先頭に位置するワイヤピン31を基準ワイヤピンとする。また、印字制御信号Spは、パルスの出現時期がコイル32の通電時期となり、ワイヤピン31の駆動時期を規定するパルス信号である。
また、制御回路45は、複数のワイヤピン31に対応する複数のスイッチ素子(図示せず)を内蔵する。制御回路45は、入力した印刷データPDにおけるワイヤピン31に対応するドット値(画素値)が「1」であればそのワイヤピン31に対応するスイッチ素子をONさせ、ワイヤピン31に対応するドット値が「0」であればそのワイヤピン31に対応するスイッチ素子をOFFのまま保持する。スイッチ素子が1回ONする期間は、設定遅延時間ΔTの最大値よりも少し長く、スイッチ素子がONのときに印字制御信号Spは出力され、スイッチ素子がOFFのときは印字制御信号Spが出力されない。
制御回路45は、例えばディレイカウンター(図示せず)を内蔵する。ディレイカウンターは、基準パルス信号Stの入力時点から、不図示のクロック回路から入力するパルス信号のパルス数を計数することにより、設定遅延時間ΔTを計時する。制御回路45は、ディレイカウンターの計数値が設定遅延時間ΔTに相当する値に達すると、基準パルス信号Stをその入力から設定遅延時間ΔTだけ遅らせて出力することで、対応するワイヤピン31を駆動させる印字制御信号Spを出力する。
次に、図8を参照して、制御回路45における印字制御信号Spを生成する回路部分の構成を詳細に説明する。なお、図8では、制御回路45における印字制御信号Spを生成する要部のみを示している。また、ワイヤピン列38の印字制御信号Spの生成方法は、ワイヤピン列38間の主走査方向Xの距離に応じた分だけ出力時期が異なるものの、J本のワイヤピン31を駆動させる印字制御信号Spの生成処理についてはワイヤピン列38間で同じなので、図8では、1つのワイヤピン列38の制御に用いられる回路部分のみ示している。
図8に示すように、制御回路45は、指示信号生成回路51と出力信号生成回路52とを備える。指示信号生成回路51は、遅延時間Δtを設定可能なレジスタ53を内蔵する。ヘッド制御部42は、エンコーダー29から入力した回転検出信号を基にヘッド走査速度を取得し、その取得したヘッド走査速度に応じた遅延時間Δtをレジスタ53に設定する。例えば不揮発性メモリーには、ヘッド走査速度と遅延時間Δtとの対応関係を示す参照データが記憶されており、ヘッド制御部42は、そのときのヘッド走査速度を基に参照データを参照してヘッド走査速度に応じた遅延時間Δtを取得する。指示信号生成回路51は、レジスタ53から読み出した遅延時間Δtを指示する遅延時間設定信号Sdを生成する。なお、ヘッド走査速度(キャリッジ速度)は、キャリッジ制御部43がエンコーダー29から入力した回転検出信号に含まれるパルスのエッジ間隔を計時した値の逆数に基づき取得したものを使用する。
また、指示信号生成回路51は、出力信号生成回路52に印字制御信号Spの出力順序を選択させる出力順序選択信号Ssを生成する。制御回路45は、エンコーダー29からの回転検出信号に基づき印刷ヘッド21の走査が順方向+X(往動)か逆方向−X(復動)かを検出する。本例のワイヤピン列38は、図5に示すように、ワイヤピン31がジグザグに配置され、J本のワイヤピン31が主走査方向Xにおいて非対称な配列パターンで配列されている。このため、印刷ヘッド21が順方向+Xに移動するときと逆方向−Xに移動するときとで、ヘッド進行方向の先頭から末尾までのワイヤピン31の順序が異なる。すなわち、図5に示すワイヤピン列38(A列又はB列)の例では、印刷ヘッド21の走査が順方向+Xのときに、1番目にワイヤピン♯5,♯6、2番目にワイヤピン♯9,♯10、3番目にワイヤピン♯3,♯4、4番目にワイヤピン♯7,♯8、5番目にワイヤピン♯1,♯2、6番目にワイヤピン♯11,♯12の順序となる。また、印刷ヘッド21の走査が逆方向−Xのときは、順方向+Xのときと逆の順番で、1番目にワイヤピン♯11,♯12、2番目にワイヤピン♯1,♯2、3番目にワイヤピン♯7,♯8、4番目にワイヤピン♯3,♯4、5番目にワイヤピン♯9,♯10、6番目にワイヤピン♯5,♯6の順序となる。指示信号生成回路51は、印刷ヘッド21の走査が順方向+X(往動)であるか逆方向−Xであるかに応じた上記の出力順序を選択しうる出力順序選択信号Ssを生成する。
また、図4に示す例では、A列・B列のワイヤピン列38A,38Bと、C列・D列のワイヤピン列38C,38Dとで、ワイヤピン31の配列パターンが異なっている。そのため、印刷ヘッド21の走査が順方向+Xであっても、A列・B列のワイヤピン列38A,38BとC列・D列のワイヤピン列38C,38Dとで、印刷ヘッド21の進行方向の先頭から末尾までのワイヤピン31の順序、つまり出力順序が異なる。指示信号生成回路51は、A列・B列のワイヤピン列38A,38Bに対応する各出力信号生成回路52に出力する出力順序選択信号Ssと、C列・D列のワイヤピン列38C,38Dに対応する各出力信号生成回路52に出力する出力順序選択信号Ssとをそれぞれ変えて、それぞれに合った出力順序を選択しうる各出力順序選択信号Ssを生成する。これら遅延時間設定信号Sd及び出力順序選択信号Ssは、指示信号生成回路51から出力信号生成回路52へ出力される。
図8に示すように、出力信号生成回路52は、ワイヤピン列38を構成するJ本(本例では12本)のワイヤピン♯1〜♯12のそれぞれに対応するJ個(本例では12個)の出力順序選択回路54A〜54Lを備える。各出力順序選択回路54A〜54Lは、それぞれ対応するN本(本例では12本)のワイヤピン♯1〜♯12を個別に駆動させるための印字制御信号Spを出力する。各出力順序選択回路54A〜54Lは、入力した基準パルス信号Stに対して設定遅延時間ΔTの異なるJ通り(本例では12通り)の印字タイミングを選択可能なJ個(本例では12個)の出力回路55A〜55Lを備えている。つまり、複数の出力順序選択回路54A〜54Lは、それぞれ12個の出力回路55A〜55Lのうち出力順序選択信号Ssで指定された1つを選択し、その選択した出力回路からワイヤピン単位で印字制御信号Spを出力する。なお、出力順序選択回路54A〜54Lは、特に区別しない場合は、単に「出力順序選択回路54」と記す。また、出力回路55A〜55Lについても、特に区別しない場合は、単に「出力回路55」と記す。
出力順序選択回路54は、指示信号生成回路51から入力した遅延時間設定信号Sdで指定された遅延時間Δtを基に、J個の出力回路55A〜55Lに12通りの設定遅延時間ΔT1〜ΔT12を設定する。出力順序選択回路54A〜54Lは、遅延時間Δtを整数(0〜11)倍して12通りの設定遅延時間ΔT1〜ΔT12を取得し、12個の出力回路55A〜55Lにこれら12通りの設定遅延時間ΔT1=0,ΔT2=Δt,ΔT3=2Δt,ΔT4=3Δt,…,ΔT11=10Δt,ΔT12=11Δtをこの順番に設定する。
この設定遅延時間ΔTの設定の後、出力順序選択回路54A〜54Lは、指示信号生成回路51から出力順序選択信号Ssを入力すると、12個の出力回路55A〜55Lのうち出力順序選択信号Ssにより指示された1つを選択し、その選択した1つの出力回路に印字制御信号Spを出力させる。各出力回路55A〜55Lのうち選択された1つは、入力した基準パルス信号Stを、自身に設定された設定遅延時間ΔTだけ遅延させたタイミングで出力することにより印字制御信号Spを出力する。本実施形態では、ワイヤピン31の主走査方向Xに3つ以上の異なる位置の数が6つなので、J個の出力順序選択回路54A〜54Lは、印字タイミングの異なる6種類(12個)の印字制御信号Spを出力する。
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用について説明する。印刷ヘッド21の主走査方向Xへの走査(印字動作)と、媒体Pの副走査方向Yへの副走査(搬送動作)とが繰り返し行われることで、媒体Pに印刷データPDに基づく複数の文字が印字される。キャリッジモーター24が速度制御プロファイルデータVDに基づき速度制御されることにより、印刷ヘッド21は図7に示す速度プロファイルに沿って速度制御される。すなわち、図7に示すように、印刷ヘッド21は移動開始位置P0から加速し、加速過程の途中の印字開始位置P1から加速終了位置P2までの区間で加速印刷を行う。そして、印刷ヘッド21は加速終了位置P2から減速開始位置P3までの定速領域で定速印刷を行う。さらに、印刷ヘッド21は減速開始位置P3から減速過程の途中の印字終了位置P4までの区間で減速印刷を行う。減速印刷を終えると、印刷ヘッド21はそのまま減速した後、停止位置P5で停止する。
例えば特許文献1に記載された環状型のワイヤ配列を有する印刷ヘッドでは、各ワイヤピンに応じた定速印刷用の一定の印字タイミングで、加速印刷及び減速印刷を行うとすると、主走査方向に位置の異なるワイヤピン間で印字位置がずれてしまう。特に環状型のワイヤ配列を有する印刷ヘッドでは、印刷ヘッドにおける進行方向の先頭のワイヤピンから末尾のワイヤピンまでの主走査方向の距離が比較的長いため、先頭のワイヤピンと末尾のワイヤピンとの間で主走査方向Xにおける印字ずれ(ドット印刷ずれ)が著しくなる。
これに対して、本実施形態のプリンター11では、制御部41は、印刷ヘッド21の走査速度に応じてワイヤピン列38に属する複数(J本)のワイヤピン31を、主走査方向Xに位置の異なるワイヤピン単位で異なる印字タイミングに制御する。つまり、制御部41は、ワイヤピン列38に属する複数のワイヤピン31のうち印刷ヘッド21の進行方向における先頭のワイヤピン31の印字タイミングに対して、先頭のワイヤピン31と他のワイヤピン31との主走査方向Xの距離(つまり出力順序)とヘッド走査速度(つまり遅延時間Δt)とに基づく設定遅延時間ΔTだけ遅らせた印字タイミングで他のワイヤピン31を駆動させる。このため、加速過程で印刷する加速印刷と減速過程で印刷する減速印刷とを含む変速印刷時においても、主走査方向Xに3つ以上の位置の異なるワイヤピン31,31間で印字ずれ量(印刷ドットずれ量)が小さく抑えられる。
また、印刷ヘッド21の進行方向の先頭のワイヤピン31と末尾のワイヤピン31との距離が比較的離れていると、ヘッド走査速度に応じた遅延時間Δtを設定しても、先頭のワイヤピン31が印字するときと、末尾のワイヤピン31が印字するときとで、印刷ヘッド21の走査速度が変化している。すなわち、先頭のワイヤピン31が印字した時から末尾のワイヤピン31が印字タイミングに達した時までに、印刷ヘッド21は加速してヘッド走査速度が変化している。この場合、先頭と末尾のワイヤピン31間の距離に応じた設定遅延時間ΔTを設定して印字制御信号Spを出力しても、先頭のワイヤピン31と末尾のワイヤピン31との間で主走査方向Xにおける印字ずれ(ドット印刷ずれ)が発生し易い。
そこで、本実施形態のプリンター11では、印刷ヘッド21の進行方向における先頭のワイヤピン31と末尾のワイヤピン31との距離を相対的に狭くしている。ワイヤピン列38を構成するJ本(例えば12本)のワイヤピン31を、主走査方向Xに3つ以上の異なる位置に配置するとともに、ワイヤピン列38の副走査方向YのピッチYpと同じ寸法の範囲内に収まるように配置している。換言すれば、ワイヤピン列38を構成するJ本のワイヤピン31は、主走査方向Xの最大ずれ量ΔXmaxが、ワイヤピン31の副走査方向YにおけるピッチYpの寸法以下となる範囲内(ΔXmax≦Yp)で、主走査方向Xに3つ以上の異なる位置にずらして配列されている。このため、印刷ヘッド21の進行方向の先頭のワイヤピン31から末尾のワイヤピン31との主走査方向Xの中心間距離(最大ずれ量ΔXmax)がピッチYp以下と比較的短い。したがって、ヘッド進行方向における先頭の基準ワイヤピン31の印字時期と、末尾のワイヤピン31の印字時期との間における印刷ヘッド21の走査速度の変化が比較的小さい。このため、先頭のワイヤピン31と末尾のワイヤピン31との間で主走査方向Xにおける印字ずれ量(ドットずれ量)が小さく抑えられる。よって、変速印刷時においても印字ずれが発生しにくい。
また、J本のワイヤピン31が主走査方向Xに分散して配置されていないと、ワイヤピン31が同時に駆動される同時インパクト印刷の実施頻度が相対的に高くなって、印刷時の騒音が大きくなる。そこで、本実施形態では、主走査方向XにピッチYp以下の範囲内で、N個(例えば6個)のワイヤピン群39を主走査方向Xに3つ以上(N個)の異なる位置に配置している。つまり、J本のワイヤピン31は、主走査方向XにピッチYp以下の範囲内で、J個(例えば12個)よりも少ないN個(例えば6個)の異なる位置に分散して配置されている。そのため、分散インパクト印字の実施頻度が相対的に高くなる。さらに、分散インパクト印字の実施頻度を一層高くするため、ワイヤピン群39をジグザグに配置している。
このようにJ本のワイヤピン31を主走査方向Xに3つ以上の異なる位置に分散して配置するため、図5に示すように、J本のワイヤピン31がジグザグに配置され、主走査方向Xにおいて非対称な配列パターンで配列されている。このため、印刷ヘッド21が順方向+Xに移動するときと逆方向−Xに移動するときとで、印刷ヘッド21の進行方向の先頭から末尾までのワイヤピン31の印字順序が異なる。
本実施形態の制御回路45内では、指示信号生成回路51が、出力信号生成回路52に印字制御信号Spの出力順序を選択させる出力順序選択信号Ssを生成する。制御回路45は、エンコーダー29からの回転検出信号に基づき印刷ヘッド21の走査が順方向+X(往動)か逆方向−X(復動)かを検出する。指示信号生成回路51は、印刷ヘッド21が順方向+Xに移動するときは、図5に示すワイヤピン列38(A列又はB列)の例では、1番目にワイヤピン♯5,♯6、2番目にワイヤピン♯9,♯10、3番目にワイヤピン♯3,♯4、4番目にワイヤピン♯7,♯8、5番目にワイヤピン♯1,♯2、6番目にワイヤピン♯11,♯12の出力順序となる出力順序選択信号Ssを生成して出力する。一方、指示信号生成回路51は、印刷ヘッド21の走査が逆方向−Xのときは、順方向+Xのときと逆の順番で、1番目にワイヤピン♯11,♯12、2番目にワイヤピン♯1,♯2、3番目にワイヤピン♯7,♯8、4番目にワイヤピン♯3,♯4、5番目にワイヤピン♯9,♯10、6番目にワイヤピン♯5,♯6の出力順序となる出力順序選択信号Ssを生成して出力する。このように指示信号生成回路51は、他のワイヤピン列38に対応する出力信号生成回路52に対しても、印刷ヘッド21の走査が順方向+X(往動)であるか逆方向−Xであるかに応じた出力順序を選択しうる出力順序選択信号Ssを生成して出力する。このため、印刷ヘッド21が双方向印刷を行うときに、印刷ヘッド21が順方向+Xに移動して行う印字と、印刷ヘッド21が逆方向−Xに移動して行う印字との間で印字ずれが発生しにくい。
また、図4に示す例では、A列・B列のワイヤピン列38A,38Bと、C列・D列のワイヤピン列38C,38Dとで、ワイヤピン31の配列パターンが異なっている。そのため、指示信号生成回路51は、印刷ヘッド21の走査が順方向+Xであっても、A列・B列のワイヤピン列38A,38BとC列・D列のワイヤピン列38C,38Dとで、それぞれに合った出力順序を選択しうる各出力順序選択信号Ssを生成する。これら遅延時間設定信号Sd及び出力順序選択信号Ssは、指示信号生成回路51から出力信号生成回路52へ出力される。このため、印刷ヘッド21が配列パターンの異なる複数のワイヤピン列38を備えていても、指示信号生成回路51は、それら複数のワイヤピン列38の配列パターンに応じた出力順序で出力順序選択信号Ssを生成するので、適切な印字を行うことができる。
本実施形態の印刷ヘッド21は、1文字ずつの印字に用いられるA・B列とC・D列の2列2組(2文字分)のワイヤピン列38を有しているので、ワイヤピン列が1組だけ設けられた構成に比べ、高速印刷が可能である。高速印刷によって印刷ヘッド21の走査速度が高速化しても、その割に先頭のワイヤピン31と末尾のワイヤピン31との印字ずれ量を相対的に小さく抑えることができる。
また、複数のワイヤピンが同時に駆動する同時インパクト印字の実施頻度が相対的に高くなると、他の電気部品の消費電力も含めたプリンター11の最大消費電力が相対的に高くなり、最大消費電力を定格値以下に収めるために大型の電源装置が必要になる場合がある。この点、本実施形態の印刷ヘッド21では、分散インパクト印字の実施頻度が相対的に高くなるので、印刷ヘッド21が文字を印字する際に低騒音効果が得られるとともに、モーター24,27等の他の電気部品の消費電力も含めたプリンター11の最大消費電力を相対的に低く抑えることができる。最大消費電力を低く抑えられれば、最大消費電力を定格値以下に収めるための電源装置が相対的に小型で済む。
上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)ドットインパクトプリンター11は、ドットインパクト式の印刷ヘッド21を主走査方向Xに走査する主走査部23と、媒体Pを副走査方向に搬送する副走査部28とを備える。また、プリンター11は、複数のワイヤピン31が副走査方向に一定ピッチで配列されてなるワイヤ群の一例であるワイヤピン列38を少なくとも1つ備え、ワイヤピン列38を構成する全てのワイヤピン31が主走査方向Xに3つ以上の異なる位置にずれて配置されたドットインパクト式の印刷ヘッド21を備える。さらに、プリンター11は、主走査部23の動作と、副走査部28の動作と、印刷ヘッド21に含まれるワイヤピン31の動作とを制御する制御部41を備える。制御部41は、印刷ヘッド21の走査速度に応じた各ワイヤピン31の印字タイミングを主走査方向Xの位置の異なるワイヤピン単位で異ならせる。よって、印刷ヘッド21が印刷を行うときに、ワイヤピン列38を構成する複数のワイヤピン31のうち主走査方向Xに最も位置の離れたワイヤピン31,31間で、主走査方向Xの印字ずれ量(ドットずれ量)を小さく抑えることができる。
(2)制御部41は、ワイヤピン列38に属する複数のワイヤピン31のうち印刷ヘッド21の進行方向における先頭のワイヤピン31の印字タイミングに対して、先頭のワイヤピン31と他のワイヤピン31との主走査方向Xの距離に応じた遅延時間(設定遅延時間ΔT)だけ遅らせた印字タイミングで他のワイヤピン31を駆動させる。よって、他のワイヤピン31の印字タイミングは、印刷ヘッド21の進行方向における先頭のワイヤピン31の印字タイミングに対して、先頭のワイヤピン31と他のワイヤピン31との主走査方向の距離と走査速度とに基づく設定遅延時間ΔTだけ遅らせて決まる。よって、印刷時に、主走査方向Xに最も離れたワイヤピン31,31間で印字ずれ量を小さく抑えることができる。
(3)複数(J本)のワイヤピン31が配置される3つ以上の異なる位置を、主走査方向Xに等間隔な位置とした。よって、その間隔に応じた1つの遅延時間Δtを用いて主走査方向Xに位置の異なるワイヤピン単位で異なる印字タイミングに制御することができる。すなわち、印刷ヘッド21の進行方向の先頭のワイヤピン31の印字タイミングに対して他のワイヤピン31の印字タイミングを比較的簡単に設定できる。よって、制御部41による印字タイミング制御が比較的簡単になる。
(4)ワイヤピン列38を構成するJ個(Jは6以上の自然数)のワイヤピン31は、副走査方向YにN個(Nは3≦N≦J/2を満たす自然数)のワイヤピン群39を含み、ワイヤピン群39に属するM個(Mは2≦M≦J−4を満たす自然数)のワイヤピン31は主走査方向Xに同じ位置に配置される。制御部41は、J本のワイヤピン31をワイヤピン群単位で異なる印字タイミングに制御する。よって、主走査方向Xにワイヤピン群単位でN個の異なる位置にずらす構成であるため、主走査方向Xにワイヤピン単位でJ個の異なる位置にずらす構成に比べ、複数のワイヤピン31を主走査方向Xにより広い中心線間隔を開けて分散配置することができる。よって、ワイヤピン駆動時の一層の低騒音効果と主走査方向Xに最も位置の離れたワイヤピン31,31間の印字ずれ抑制効果とを得ることができる。
(5)N個のワイヤピン群39は、主走査方向Xに3つ以上の位置の異なるワイヤピン群39として、第1ワイヤピン群39(♯5,♯6)、第2ワイヤピン群39(♯9,♯10)、第3ワイヤピン群39(♯3,♯4)を含む。制御部41は、印刷ヘッド21を順方向+Xに走査させるときに、第1ワイヤピン群39(♯5,♯6)、第2ワイヤピン群39(♯9,♯10)、第3ワイヤピン群39(♯3,♯4)の順序でワイヤピン31を駆動させる。また、制御部41は、印刷ヘッド21を逆方向−Xに走査させるときに、第3ワイヤピン群39(♯3,♯4)、第2ワイヤピン群39(♯9,♯10)、第1ワイヤピン群39(♯5,♯6)の順序でワイヤピンを駆動させる。よって、ドットインパクト式の印刷ヘッド21の順方向+Xへの走査時の印字位置と、印刷ヘッド21の逆方向−Xへの走査時の印字位置とのずれを小さく抑制できる。このため、双方向印刷時の印刷品質を高めることができる。
(6)ワイヤピン群39がジグザグに配置されている。すなわち、ワイヤピン群39をジグザグに配置することにより、複数(J本)のワイヤピン31がジグザグに配置されている。よって、全てのワイヤピン31が主走査方向Xに配置される範囲、つまり最大ずれ量ΔXmaxを相対的に狭くでき、しかもその範囲の広さの割に、複数のワイヤピン31を主走査方向Xにより広い中心線間隔を開けて分散配置することができる。このため、例えばワイヤピン単位でジグザグに配置した構成に比べ、複数のワイヤピン31を主走査方向Xに一層分散させることができ、ワイヤピン駆動時の低騒音効果を一層高めることができる。また、例えば、全て(J本)のワイヤピンを主走査方向X及び副走査方向Yに斜めに交差する斜めの配列とした場合、例えばドットが斜めに並んだ斜めのラインを含む文字(例えば「V」)を印字する場合、同時インパクト印字の実施頻度が高まり騒音が大きくなり易い。これに対して、N個のワイヤピン群39がジグザグに配置されていれば、全てのワイヤピンを斜めに配列した構成に比べ、例えば斜めのラインを含む文字を印字する場合でも、分散インパクト印字の実施頻度を相対的に高めることができる。よって、印刷時の一層の低騒音効果と印字ずれ抑制効果とを得ることができる。
(7)ドットインパクトプリンター11は、印刷ヘッド21の定速過程で印刷する定速印刷と、印刷ヘッド21の加速過程と減速過程とのうち少なくとも一方で印刷する変速印刷とを行う。全て(J本)のワイヤピン31は主走査方向Xの最大ずれ量ΔXmaxが、ワイヤピン31の副走査方向YのピッチYpと同じ寸法に収まる範囲内(ΔXmax≦Yp)で主走査方向Xに3つ以上の異なる位置に配置されている。このため、変速印刷時に主走査方向Xに最も位置の離れたワイヤピン31,31間で印刷ドットの主走査方向Xの位置ずれ量を小さく抑えることができる。
(8)制御部41は、ワイヤピン単位又はワイヤピン群単位で印字タイミングを制御する制御回路45を備える。制御回路45は、印刷ヘッド21の走査が順方向か逆方向かに応じた出力順序を選択させる出力順序選択信号を生成して出力する指示信号生成回路51を備える。また、制御回路45は、ワイヤピン31を駆動させる印字制御信号Spを主走査方向Xに位置の異なるワイヤピン単位で出力する複数の出力順序選択回路54を備える。複数の出力順序選択回路54は、指示信号生成回路51から入力した出力順序選択信号Ssに基づきそれぞれ選択した出力順序で印字制御信号Spを出力する。このため、複数のワイヤピン31が主走査方向に3つ以上の異なる位置にずれていても、印刷ヘッド21の走査が順方向(往動)か逆方向(復動)かに応じた適切な出力順序で各出力順序選択回路54から印字制御信号Spを出力できるので、印刷ヘッド21により適切な位置に印字することができる。
また、ワイヤピン列38が、印刷ヘッド21の走査が順方向+Xであるか逆方向であるかによって印字制御信号Spの出力順序が変わってしまう例えばジグザグの配列パターンをとっても、指示信号生成回路51が印刷ヘッド21の走査が順方向+Xか逆方向−Xかに応じて、出力順序選択信号Ssで指示する出力順序を変更すればよい。よって、印刷ヘッド21の走査が順方向でも逆方向でも、媒体Pに適切な印字を行うことができる。
さらに、例えば印刷ヘッド21がワイヤピン31の配列パターンの異なる複数のワイヤピン列38(38A〜38D)(ワイヤ群の一例)を備える構成である場合、出力順序選択信号Ssで指示する出力順序をワイヤピン列38の配列パターンに応じて変更すればよい。よって、配列パターンが異なるワイヤピン列38を複数備える印刷ヘッド21に対しても、共通の指示信号生成回路51及び複数の出力順序選択回路54(出力信号生成回路52)を使用できる。よって、複数のワイヤピン列38間で回路を共通化でき、制御回路45の構成を簡素化できる。
(9)指示信号生成回路51は、印刷ヘッド21の走査速度に応じた遅延時間Δtを指示する遅延時間設定信号Sdを生成して出力する。複数の出力順序選択回路54は、印刷ヘッド21の走査速度に応じたパルス周期の基準パルス信号Stを入力し、指示信号生成回路51から入力した遅延時間設定信号Sdで指示された遅延時間Δtと出力順序とに基づく設定遅延時間ΔTだけ基準パルス信号Stを遅延させることにより印字制御信号Spを生成して出力する。よって、印刷ヘッド21の走査方向(順方向/逆方向)及び走査速度に応じた適切な印字タイミングで各ワイヤピン31を駆動制御することができる。
(10)ワイヤピン列38を構成する複数のワイヤピン31が配置される3つ以上の異なる位置を、主走査方向Xに等間隔な位置としているので、複数の出力順序選択回路54は、入力した基準パルス信号Stを、指示された遅延時間Δtを指示された出力順序に応じた整数倍した設定遅延時間ΔTだけ遅らせて印字制御信号Spを出力すればよい。すなわち、複数の出力順序選択回路54は、指示された遅延時間Δtずつ異なる複数の異なる設定遅延時間ΔT(=0,Δt,2Δt〜11Δt)を設定し、入力した出力順序選択信号Ssにより指示された出力順序に対応する設定遅延時間ΔTだけ基準パルス信号Stを遅延させて印字制御信号Spを出力する。よって、指示信号生成回路51における遅延時間設定信号Sdの信号生成処理、及び出力順序選択回路54における印字制御信号Spの信号生成処理が共に簡単となる。
上記実施形態は以下に示す変更例でもよい。また、上記実施形態に含まれる構成と下記変更例に含まれる構成とを任意に組み合わせてもよいし、下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
・主走査方向Xの位置が同じ複数のワイヤピン31の集まりであるワイヤピン群39を無くしてもよい。図9に示すように、ワイヤピン列38がワイヤピン群を含まず、ワイヤピン列38を構成する複数(J本)のワイヤピン31が、副走査方向YのピッチYpと同じ寸法の範囲内で、一定のずれ量ΔxでJ個の異なる位置にずらして配置されてもよい。このようにJ本のワイヤピン31の主走査方向Xに異なる位置の数が、ワイヤピン数Jと同数であっても、図8に示す制御回路45を用いれば、ワイヤピン31ごとに設定遅延時間ΔTの異なる印字制御信号Spを生成してワイヤピン単位で個別に印字タイミングを制御することができる。なお、図9に示すように、ワイヤピン列38を構成する全てのワイヤピン31をジグザグに配置することが好ましい。
・図10に示すように、各出力順序選択回路54において、ワイヤピン群39(図5参照)ごとに出力回路55を設け、出力回路55の数を減らしてもよい。例えばワイヤピン列38を構成するJ本のワイヤピン31を6分割した例では、出力順序選択回路54内の出力回路55を、6つのワイヤピン群に対応する6つの出力回路55A〜55Fとすることにより、出力回路55の数を、ワイヤピン数Jと同数であった前記実施形態に比べ半分に減らすことができる。このため、出力回路55の大幅な低減により、制御回路45の回路構成を簡単にすることができる。各出力順序選択回路54では、遅延時間設定信号Sdに基づき各出力回路55A〜55Fに設定遅延時間ΔT=0,Δt,2Δt,3Δt,4Δt,5Δtがこの順番に設定される。出力順序選択信号Ssにより選択された出力回路55が、基準パルス信号Stに対して自身に設定された設定遅延時間ΔTだけ遅延させた印字制御信号Spを、それぞれ対応するワイヤピン群39に属するM本のワイヤピン31を駆動する各コイル32に出力する。
・ワイヤピン列38を構成するワイヤピン群39に属するM本(例えば2本)のワイヤピン31は、副走査方向Yに連続して並んでいない(隣合わない)ワイヤピンでもよい。例えば、副走査方向Yに1本おきのワイヤピンによりワイヤピン群39を構成してもよい。この場合、ワイヤピン群39をジグザグに配置することが好ましい。なお、ワイヤピン群39に属するM本のワイヤピン31は2本おきでもよいし、連続して並ぶ(隣合う)ものと連続して並んでいないものとが混在してもよい。
・最大ずれ量ΔXmaxは、ワイヤピン列を構成する全てのワイヤピン31の副走査方向YのピッチYp以下であればよい。例えば、最大ずれ量ΔXmaxをワイヤピン31の直径以下としてもよい。また、最大ずれ量ΔXmaxはワイヤピン31の半径未満でもよいが、分散インパクト印字の実施頻度を高めて有効な低騒音効果を得るうえで、ワイヤピン31の半径以上であることが好ましい。
・ワイヤピン列38を構成するワイヤピン群39の数N、すなわちワイヤピン列を構成する複数のワイヤピンの分割数Nは、6つに限定されず、適宜な数に変更してもよい。例えばワイヤピン列を構成するワイヤピン数が12本である場合、N=3、N=4でもよい。この場合、ワイヤピン群39に属するワイヤピン31の数Mは、N=3の場合にM=4、N=4の場合にM=3になる。また、例えばワイヤピン列を構成するワイヤピン数が9本である場合、N=3でもよい。この場合、ワイヤピン群39に属するワイヤピン31の数Mは、M=3になる。また、ワイヤピン数が9本である場合、N=4とし、M=2のワイヤピン群を3つ、M=3のワイヤピン群を1つとしてもよい。
・ワイヤピン列を構成するワイヤピン数Jは、9本又は12本以外の数でもよい。ワイヤピン数Jは、例えば4本以上の自然数であればよい。また、ワイヤピン群39がN個のワイヤピン群を含む場合、ワイヤピン数Jは、例えば6本以上の自然数であることが好ましい。また、1つのワイヤピン列を構成するワイヤピン群の数N(分割数)は、3≦N≦J/2を満たす自然数であることが好ましい。
・ワイヤピン列を構成する複数のワイヤピンがジグザグに配置されていることに限定されず、主走査方向Xに少なくとも3つの異なる位置にずれていればよい。
・ワイヤピン列38を構成するワイヤピン31の主走査方向XにおけるピッチXp(ずれ量Δx)を、異なるワイヤピン31間で異ならせてもよい。
・ワイヤ群の一例としてのワイヤピン列38の数Kは、K=4(4列)に限定されず、適宜な数に変更してもよい。例えばワイヤピン列38を構成するワイヤピン数Jが漢字印字用の12本×2列の例では、ワイヤピン列の数を2列にしてもよい。また、例えばワイヤピン列を構成するワイヤピン数Jがアルファベット印字用の9本×1列の例では、ワイヤピン列の数は1列〜4列のうち任意の数を選択でき、例えば3列としてもよい。
・J本のワイヤピン31が3つ以上の異なる位置にずらして配置される範囲、つまり最大ずれ量ΔXmaxは、副走査方向YのピッチYpを超えても構わない。例えば、特許文献1に記載された環状型のワイヤ配列を有する印刷ヘッドを備えたドットインパクトプリンターに適用してもよい。このような環状型のワイヤ配列でも、図8及び図10に示す制御回路45を用いることにより、主走査方向Xに位置の異なるワイヤピン単位で印字タイミングを制御することができる。
・前記実施形態において、出力順序選択回路54は、入力した遅延時間設定信号Sdにより指定された遅延時間Δtを基に、ヘッド進行方向の先頭のワイヤピン31の印字時のヘッド走査速度と、他のワイヤピン31の印字時のヘッド走査速度との速度差を見込んで補正した設定遅延時間ΔTを設定することもできる。すなわち、出力順序選択回路54は、遅延時間Δtを基に、各出力回路55に対して、ヘッド進行方向の先頭のワイヤピン31と他のワイヤピン31との主走査方向Xの距離に応じたそれぞれの印字時のヘッド走査速度の変化分を見込んで補正した設定遅延時間ΔTを設定する。この構成によれば、先頭のワイヤピン31と他のワイヤピン31との間で印字時のヘッド走査速度に速度差が生じても、その速度差に起因する印刷ドットずれ量を小さく抑えることができる。
・指示信号生成回路51が遅延時間設定信号Sdにより複数の異なる設定遅延時間ΔTを指定する構成とし、出力順序選択回路54が、入力した遅延時間設定信号Sdにより指定された複数の異なる設定遅延時間ΔTを各出力回路55に設定する構成としてもよい。この場合、ワイヤピン31の主走査方向Xのずれ量Δxがワイヤピン31間で異なっていても、各ワイヤピン31の主走査方向Xの位置に応じた適切な出力順かつ適切な出力タイミングで印字制御信号Spを出力できる。また、ヘッド進行方向の先頭のワイヤピン31が印字する時のヘッド走査速度と、他のワイヤピン31が印字する時のヘッド走査速度との両ワイヤピン31間の主走査方向Xの距離に応じた速度変化分を見込んで設定遅延時間ΔTを補正し、それらの補正した各設定遅延時間ΔTを出力順序選択回路54に設定することもできる。
・変速印刷は、加速印刷と減速印刷とのうち少なくとも一方であればよい。例えば、加速印刷と減速印刷とのうち一方のみを行う構成でもよい。
・ドットインパクトプリンターは、シリアル印刷方式に限定されず、印刷ヘッド21が主走査方向と副走査方向との2方向に移動可能なラテラル印刷方式でもよい。