まず、本発明に係るプリントヘッドおよびプリンタの実施例を詳述する前に、プリントヘッドの一例およびプリントヘッドによる印字動作の一例を、図1〜図3を参照して説明する。
図1は、プリントヘッドの一例を示す図であり、吸引型のドットインパクト方式のプリントヘッド1の一例を説明するためのものである。図1において、参照符号10は復旧用コイルスプリング,11は印字ワイヤ,12はアーマチュア,13はワイヤガイド,14はストッパ,15はマグネットベース,16は支点ピン,17はカバー,そして,18はプリント基板を示す。なお、図1では、2本の印字ワイヤ11(印字ワイヤを含む可動部)のみ描かれているが、実際には、複数(例えば、24本)設けられているのはいうまでもない。
図1に示されるように、プリントヘッド1おいて、ドット印字を行う印字ワイヤ11は、例えば、ロウ付け等によりアーマチュア12に固着され、ワイヤガイド13により位置決めおよび保持される。ここで、印字ワイヤ11は、非稼働時にはアーマチュア12を付勢する復旧用コイルスプリング10によりストッパ14に押し付けられている。すなわち、非稼働時(印字を行わない場合)において、印字ワイヤ11を含む可動部は、復旧用コイルスプリング10によりリセット位置(基準位置)に保持される。
印字を行う場合、マグネットベース(電磁石)15におけるコア151に巻回されたコイル152に通電することで磁界(磁束)が発生する。そして、発生した磁界による吸引力が復旧用コイルスプリング10による付勢力以上になると、マグネットベース15におけるコア151によりアーマチュア吸引部(アーマチュア12の外周部)12aが吸引される。このアーマチュア吸引部12aの吸引により、アーマチュア12は、支点ピン16を中心として回転運動を行い、それにより、印字ワイヤ11の先端11aが突出し、例えば、インクリボンを介して用紙にドットが印刷(インパクト動作)される。
次に、コイル152への通電を停止すると、発生する磁界が弱まり、復旧用コイルスプリング10の付勢力により、印字ワイヤ11を含む可動部は、リセット位置に戻る。ここで、ストッパ14およびマグネットベース15等は、カバー17により保持され、また、コイル152には、プリント基板18を介して所定の制御電圧が印加されるようになっている。
なお、前述したように、印字ワイヤ11を含む可動部は、複数(例えば、24個)設けられ、それら複数の可動部を制御することで、複数の印字ワイヤの先端11aにより所定の文字や数字、或いは、コード等を印字(印刷)する。また、可動部は、上述した印字ワイヤ11をロウ付け等によりアーマチュア12に固着し、電磁石による吸引力を利用して印字ワイヤ11の先端11aを突出させるものに限定されず、様々な構成とすることができる。
図2は、プリントヘッドのピン配列の一例およびそのピンによる印字動作を説明するための図である。ここで、図2(a)は、印字ワイヤ11の数が24本の24ピン仕様のプリントヘッド1##の印刷部、すなわち、24ピンのプリントヘッド1##のピン配列を示すもので、図1中の左側(視点IP)から見たピン配列(印字ワイヤ11の先端11aの配置)を模式的に示すものである。また、図2(b)は、図2(a)に示すピン配列の24ピン(#1〜#24)により印字を行う場合の動作を説明するためのものである。なお、図2(a)に示す実施例のプリントヘッド1##は、例えば、図1に示すプリントヘッド1と同様のものであり、図1を参照して説明したプリントヘッド1の構成を有する。
図2(a)に示されるように、24個のピン#1〜#24は、6つの列に分割された6列配列になっている。この6列配列は、例えば、図2(a)中の左側から、ピン#11,#13(第1列)、ピン#7,#9,#15,#17(第2列)、ピン#1,#3,#5,#19,#21,#23(第3列)、ピン#2,#4,#6,#20,#22,#24(第4列)、ピン#8,#10,#16,#18(第5列)、および、ピン#12,#14(第6列)で構成されている。ここで、図2(b)に示されるように、縦方向に隣接するピン(例えば、ピン#1と#2,ピン#2と#3,…,ピン#23と#24)の間隔(ピッチ)P#は、一定(例えば、1/180インチまたは1/160インチ)とされている。
図2(b)に示されるように、24ピンのプリントヘッド1##は、例えば、用紙(印字領域)の左端から右端方向へ移動することにより24ドットの印字を行う。ここで、24個のピン#1〜#24を6列配列としているのは、6列のピングループに分けることにより、例えば、直線配列(24個のピンを1列に配列)よりも同時に稼働(駆動)するピン数を低減することで騒音を小さくすると共に、隣り合うピンの磁気干渉を受け難くするためである。なお、後に、図7を参照して詳述するが、本発明の適用は、6列配列のプリントヘッドに限定されるものではない。
また、プリントヘッド1##による印字は、例えば、用紙の左端から右端方向へプリントヘッド1##を移動させて1行分の24ドットの印字を行った後、次の行まで用紙を送り(移動させ)、用紙の右端から左端方向へプリントヘッド1##を移動させて次の行における24ドットの印字を行う往復印字(双方向印刷)が可能になっている。
図3は、図2に示すプリントヘッドにおけるピン番号に対応したコイル配列の一例を示す図である。図1〜図3に示されるように、マグネットベース15は、例えば、24本の印字ワイヤ11に対応する24個の電磁石を含み、それぞれの電磁石は、コア151およびコイル152を有している。ここで、図3に示されるように、24個のコイル152(コア151,電磁石)は、マグネットベース15において、プリントヘッド1の中心を円中心とする円周上に等間隔に設けられ、それぞれ対応するピン(印字ワイヤ11)#1〜#24を駆動するようになっている。
なお、各ピン#1〜#24を駆動するコイル152(電磁石)の並び順は、例えば、時計方向に、#1,#3,#5,…,#23,#24,#22,#20,…,#6,#4,#2,#1になっている。すなわち、図2(a)に示す6列配列の24ピンのプリントヘッド1##において、左側に配置された奇数番のピン#1,#3,#5,…,#23は、図3に示すマグネットベース15の右側のコイル152(#1,#3,#5,…,#23)により駆動され、また、図2(a)の右側に配置された偶数番のピン#2,#4,#6,…,#24は、図3に示すマグネットベース15の左側のコイル152(#2,#4,#6,…,#24)により駆動されるようになっている。
以下、本発明に係るプリントヘッドおよびプリンタの実施例を、添付図面を参照して詳述する。図4は、本発明に係るプリントヘッドの一実施例におけるピン配列およびそのピンによる印字動作を説明するための図であり、印字ワイヤ11の数が12本のプリントヘッド1AAを示すものである。ここで、図4(a)は、図2(a)に対応し、また、図4(b)は、図2(b)に対応する。
図4(a)と図2(a)の比較から明らかなように、本実施例のプリントヘッド1AAは、図2(a)に示す6列配列の24ピンのプリントヘッド1##において、奇数および偶数の最上位のピン#1,#2(ピンA1,A2に対応)から1つおきにピンを選択して使用するようになっている。ここで、図2(a)に示す24ピンのプリントヘッド1##は、既存のものであってもよいが、例えば、24ピン仕様のプリントヘッドと12ピン仕様のプリントヘッドの両方を開発する場合におけるピン数の多い(高速印字が可能な)プリントヘッドであってもよい。
ここで、本実施例の12ピンのプリントヘッド1AAと24ピンのプリントヘッド1##を対応させると、ピンA1,A2はピン#1,#2に対応し、ピンA3,A4はピン#5,#6に対応し、ピンA5,A6はピン#9,#10に対応し、ピンA7,A8はピン#13,#14に対応し、ピンA9,A10はピン#17,#18に対応し、そして、ピンA11,A12はピン#21,#22に対応する。
なお、図4(a)に示す本実施例のプリントヘッド1AAは、例えば、図1に示すプリントヘッド1と同様であり、図1を参照して説明したプリントヘッド1の構成を有する。ただし、本実施例のプリントヘッド1AAでは、12ピン分の12本の印字ワイヤ11およびその可動部等のみ設けられていればよいため、例えば、図2(a)および図2(b)を参照して説明した24ピンのプリントヘッド1##に比して、部品数を大幅に低減すると共に、組み立て作業に要する時間も短縮することが可能になる。さらに、後に詳述するように、プリントヘッド1AAを駆動するための電源や制御回路の駆動能力(容量)も削減することができ、プリンタを小型化および低廉化することが可能になる。
ここで、図4(a)に示すプリントヘッド1AAにおける奇数ピンA1,A3,A5,A7,A9,A11は、図2(a)に示すプリントヘッド1##における奇数ピン#1,#5,#9,#13,#17,#21に対応し、残りの奇数ピン#3,#7,#11,#15,#19,#23は使用しないので設けられていない。すなわち、本実施例のプリントヘッド1AAにおいて、図2(a)のプリントヘッド1##における奇数ピン#3,#7,#11,#15,#19,#23のための印字ワイヤ11および該印字ワイヤの駆動機構(例えば、可動部,復旧用コイルスプリング10,アーマチュア12,コア151,コイル152,…)は不要になるため、部品点数を大幅に削減することが可能になる。
同様に、図4(a)に示すプリントヘッド1AAにおける偶数ピンA2,A4,A6,A8,A10,A12は、図2(a)に示すプリントヘッド1##における偶数ピン#2,#6,#10,#14,#18,#22に対応し、残りの偶数ピン#4,#8,#12,#16,#20,#24は使用しないので設けられていない。すなわち、本実施例のプリントヘッド1AAにおいて、図2(a)のプリントヘッド1##における偶数ピン#4,#8,#12,#16,#20,#24のための印字ワイヤ11および該印字ワイヤの駆動機構は不要になるため、部品点数を大幅に削減することが可能になる。
さらに、本実施例のプリントヘッド1AAは、例えば、既に開発されている高速印字が可能な24ピンのプリントヘッド(1##)を利用して12ピンのプリントヘッド1AAを製造することができるため、最初から12ピンのプリントヘッド1AAを開発するための手間や時間、各部品の金型や組み立て装置、並びに、組み立てに要する時間等を削減し、プリントヘッドを低廉化することが可能になる。
図4(b)は、図4(a)に示す本実施例のプリントヘッド1AAにより印字を行う場合の動作を説明するためのものである。図4(b)に示されるように、12ピンのプリントヘッド1AAは、往復動作を行うことで、図2(a)および図2(b)を参照して説明した24ピンのプリントヘッド1##と同様の印字を行うことができるようになっている。
すなわち、本実施例のプリントヘッド1AAによる印字は、例えば、用紙の左端から右端方向へプリントヘッド1AAを移動させて1行における12ドットの印字を行い、その後、1ピッチ(縦方向に隣接するピンA1とA2,ピンA3とA4,…,ピンA11とA12の間隔)P#の2倍(=RA:例えば、2/180インチまたは2/160インチ)だけ用紙を送る(改行する)。これにより、ピンA1とA2(プリントヘッド1##のピン#1と#2)は、例えば、縦方向における図2(b)のピン#3と#4の位置になる。その後、用紙の右端から左端方向へプリントヘッド1AAを移動させて残りの12ドットの印字(プリントヘッド1##のピン#3,#4,#7,#8,#11,#12,#15,#16,#19,#20,#23,#24による印字に相当)を行うことで、1行分の24ドットの印字を行うことができる。
このように、本実施例のプリントヘッド1AAは、往路の印字を行った後、改行ピッチRA(=2・P#)だけ用紙を送ってから(改行してから)復路の印字を行う一往復の印字動作により、図2(b)を参照して説明した24ピンのプリントヘッド1##による1回の印字動作と同等の印字を行うことができる。なお、図2(b)を参照して説明した24ピンのプリントヘッド1##による、用紙の右端から左端方向へプリントヘッド1##を移動させて行う24ドットの印字(プリントヘッド1##の復路の印字)に対しては、用紙の左端から右端方向へプリントヘッド1##を移動させて行う24ドットの印字と同様に、本実施例の12ピンのプリントヘッド1AAを一往復させて印字を行う。
すなわち、プリントヘッド1##が往復印字が可能な場合、プリントヘッド1##の往路の印字は、本実施例のプリントヘッド1AAによる1回目の往復動作による印字に対応し、次の行まで用紙を送った後に行うプリントヘッド1##の往路の印字は、本実施例のプリントヘッド1AAによる2回目の往復動作による印字に対応することになる。
図5は、図4に示すプリントヘッドにおけるピン番号に対応したコイル配列の一例を示す図であり、前述した図3に対応するものである。図5に示されるように、12個のコイル152(電磁石)は、マグネットベース15において、プリントヘッドの中心を円中心とする円周上に等間隔に設けられ、それぞれ対応するピン(印字ワイヤ11)A1〜A12を駆動するようになっている。
具体的に、図4(a)に示す6列配列の12ピンのプリントヘッド1AAにおいて、左側に配置された奇数番のピンA1,A3,A5,…,A11は、図5に示すマグネットベース15の右側のコイル152(A1,A3,A5,…,A11)により駆動され、また、図4(a)の右側に配置された偶数番のピンA2,A4,A6,…,A12は、図5に示すマグネットベース15の左側のコイル152(A2,A4,A6,…,A12)により駆動されるようになっている。
図5と図3の比較から明らかなように、本実施例の12ピンのプリントヘッド1AAにおいて、マグネットベース15に対して実際に電磁石(コイル152)が設けられている12個所A1〜A12は、図3に示す24個所#1〜#24において、分散されてほぼ等間隔に配置され、ほぼ対称性が保持されるため、12本の印字ワイヤ11を安定して駆動することが可能になる。すなわち、図5(図3)に示されるように、プリントヘッド1AAによる12本の印字ワイヤ11を駆動するコイル152(電磁石)は、偏った位置に集中することなく、分散された位置に配置されてほぼ対称性が保持されるため、カバーにより均一に押さえつけることができ、印字に悪影響を及ぼす虞を低減することができる。
このように、本実施例のプリントヘッド1AAによれば、例えば、図2(a)に示すプリントヘッド1##において使用しないピン#3,#4,#7,#8,#11,#12,#15,#16,#19,#20,#23,#24に対しては、印字ワイヤ11および可動部(例えば、電磁石(コア151,コイル152)、復旧用コイルスプリング10およびアーマチュア12等を設ける必要がないため、部品に要する経費および組み立て時間を低減することが可能である。なお、図4(a)に示す本実施例のプリントヘッド1AAは、図2(a)に示す6列配列の24ピンのプリントヘッド1##から使用しない部品を取り除く、すなわち、使用しない部品を取り付けることなく組み立てを行うだけでよいため、最初から12ピンのプリントヘッド1AAを開発するための手間や時間、各部品の金型や組み立て装置、並びに、組み立てに要する時間等を削減してプリントヘッドを低廉化することが可能になる。
図6は、図4に示すプリントヘッドの変形例を説明するための図であり、例えば、既に24ピン仕様のプリントヘッド1##が存在しており、その24ピンのプリントヘッドを利用して製造された12ピン,8ピンおよび6ピンのプリントヘッドの例を示すものである。ここで、図6(a)は、前述した図4(a)に対応し、12ピンのプリントヘッド1AAの一例を示し、図6(b)は、8ピンのプリントヘッド1BBの一例を示し、そして、図6(c)は、6ピンのプリントヘッド1CCの一例を示す。
なお、図6(a)〜図6(c)において、それぞれのプリントヘッド(1AA,1BB,1CC)を往路/復路の印字から復路/往路の印字に切り替える際に行う改行ピッチ(RA,RB,RC)は、全て、24ピンのプリントヘッド1##の縦方向に隣接するピンの間隔(1ピッチ)P#の2倍(2・P#)になっている。また、それぞれのプリントヘッドの改行方向は、用紙の送り方向と逆向きになる。
まず、以下に詳述する図6(a)に示す12ピンのプリントヘッド1AA,図6(b)に示す8ピンのプリントヘッド1BBおよび図6(c)に示す6ピンのプリントヘッド1CCと、図2(a)に示す24ピンのプリントヘッド1##の関係を一般化して示す。ここで、ピン数の多い基になるプリントヘッド1##のピン数をNとし、Nを割り切れる2以上の整数をMとすると、12ピンのプリントヘッド1AAは、N=24,M=2の場合であり、8ピンのプリントヘッド1BBは、N=24,M=3の場合であり、そして、6ピンのプリントヘッド1CCは、N=24,M=4の場合である。
なお、以下に詳述するが、12ピンのプリントヘッド1AAによる印字は、往路または復路をM(=2)回、すなわち、1回の往路の印字と1回の復路の印字の一往復動作を行うことになる。また、8ピンのプリントヘッド1BBによる印字は、往路または復路をM(=3)回、すなわち、2回の往路の印字と1回の復路の印字(または、2回の往路の印字と1回の復路の印字)の一往復半の動作(1.5往復動作)を行うことになる。さらに、6ピンのプリントヘッド1CCによる印字は、往路または復路をM(=4)回、すなわち、2回の往路の印字と2回の復路の印字の二往復動作を行うことになる。
すなわち、プリントヘッド1AA,1BB,1CCは、ピン数の多い基になるプリントヘッド1##の奇数および偶数の最上位のピン#1,#2からM−1個おきにピンを選択して使用することになる。なお、ピン数の多い基になるプリントヘッド1##は、高速印字を行うための既存のものであってもよいが、例えば、異なる数のピン仕様のプリントヘッドを同時に開発する場合におけるピン数の多い(高速印字が可能な)プリントヘッドであってもよい。
すなわち、図6(a)に示す12ピンのプリントヘッド1AAで使用するピンは、ピン数の多い基になるプリントヘッド1##の奇数および偶数の最上位のピン#1,#2(ピンA1,A2に対応)からM−1個(1つ)おきにピンを選択して使用する。また、図6(b)に示す8ピンのプリントヘッド1BBで使用するピンは、ピン数の多い基になるプリントヘッド1##の奇数および偶数の最上位のピン#1,#2(ピンB1,B2に対応)からM−1個(2つ)おきにピンを選択して使用する。そして、図6(c)に示す6ピンのプリントヘッド1CCで使用するピンは、ピン数の多い基になるプリントヘッド1##の奇数および偶数の最上位のピン#1,#2(ピンC1,C2に対応)からM−1個(3つ)おきにピンを選択して使用する。
図6(a)に示す12ピンのプリントヘッド1AAは、1回の往復動作を行うことにより、24ピンのプリントヘッド1##と同様の印字を行うことができる。なお、12ピンのプリントヘッド1AAの詳細は、図4(a)および図4(b)を参照して説明したので省略する。なお、図6(b)に示すプリントヘッド1BB、および、図6(c)に示すプリントヘッド1CCは、例えば、図1に示すプリントヘッド1と同様であり、図1を参照して説明したプリントヘッド1の構成を有する。ただし、プリントヘッド1BBでは、8ピン分の8本の印字ワイヤ11およびその可動部等のみ設けられていればよく、また、プリントヘッド1CCでは、6ピン分の6本の印字ワイヤ11およびその可動部等のみ設けられていればよい。
そのため、プリントヘッド1BBおよび1CCは、図6(a)に示すプリントヘッド1AAに比べて、部品数および組み立て作業に要する時間をより一層低減することができる。さらに、プリントヘッド1BBや1CCを適用するプリンタは、プリントヘッド1AAを適用するプリンタよりも電源や制御回路の駆動能力も削減することができるため、より一層の小型化および低廉化を図ることが可能である。
まず、図6(b)を参照して8ピンのプリントヘッド1BBの一例を説明する。図6(b)と図2(a)の比較から明らかなように、本変形例のプリントヘッド1BBは、図2(a)に示す6列配列の24ピンのプリントヘッド1##において、奇数および偶数の最上位のピン#1,#2(ピンB1,B2に対応)から2つおきにピンを選択して使用するようになっている。すなわち、本変形例の8ピンのプリントヘッド1BBと24ピンのプリントヘッド1##を対応させると、ピンB1,B2はピン#1,#2に対応し、ピンB3,B4はピン#7,#8に対応し、ピンB5,B6はピン#13,#14に対応し、そして、ピンB7,B8はピン#19,#20に対応する。
このように、図6(b)に示すプリントヘッド1BBにおける奇数ピンB1,B3,B5,B7は、図2(a)に示すプリントヘッド1##における奇数ピン#1,#7,#13,#19に対応し、残りの奇数ピン#3,#5,#9,#11,…,#23は使用しないので設けられていない。すなわち、本変形例のプリントヘッド1BBにおいて、図2(a)のプリントヘッド1##における奇数ピン#3,#5,#9,#11,…,#23のための印字ワイヤ11および該印字ワイヤの駆動機構(例えば、可動部,復旧用コイルスプリング10,アーマチュア12,コア151,コイル152,…)は不要になり、図6(a)の12ピンのプリントヘッド1AAに比べても、部品点数をより一層削減することが可能になる。なお、図6(b)に示すプリントヘッド1BBにおける偶数ピンB2,B4,B6,B8に関しても、奇数ピンB1,B3,B5,B7と同様であり、その説明は省略する。
なお、本変形例のプリントヘッド1BBに使用するピンB1〜B8は、例えば、前述した図3に示すプリントヘッド1##のコイル配列#1〜#24において、分散された位置#1,#2,#7,#8,#13,#14,#19,#20に配置された8個のコイル152(電磁石)により駆動され、ほぼ対称性が保持されるため、8本の印字ワイヤ11を安定して駆動することができる。
次に、図6(b)に示す本変形例の8ピンのプリントヘッド1BBにより印字を行う場合の動作を説明する。この8ピンのプリントヘッド1BBは、1.5往復動作(一往復半の動作)を行うことで、24ピンのプリントヘッド1##と同様の印字を行うことができる。すなわち、プリントヘッド1BBによる印字は、例えば、用紙の左端から右端方向へプリントヘッド1BBを移動させて1行における8ドットの印字を行い、その後、改行ピッチRB(=2・P#)だけ改行した(用紙を送った)後、用紙の右端から左端方向へプリントヘッド1BBを移動させて次の8ドットの印字(プリントヘッド1##のピン#3,#4,#9,#10,#15,#16,#21,#22による印字に相当)を行う。
さらに、改行ピッチRBだけ改行した後、用紙の左端から右端方向へプリントヘッド1BBを移動させて残りの8ドットの印字(プリントヘッド1##のピン#5,#6,#11,#12,#17,#18,#23,#24による印字に相当)を行うことで、1行分の24ドットの印字を行うことができる。
このように、本変形例のプリントヘッド1BBは、往路の印字を行った後、改行ピッチRBだけ改行してから復路の印字を行い、さらに、改行ピッチRBだけ改行してからさらなる往路の印字を行う一往復半(1.5往復)の印字動作により、24ピンのプリントヘッド1##による1回の印字動作と同等の印字を行うことができる。
次に、図6(c)を参照して6ピンのプリントヘッド1CCの一例を説明する。図6(c)と図2(a)の比較から明らかなように、本変形例のプリントヘッド1CCは、図2(a)に示す6列配列の24ピンのプリントヘッド1##において、奇数および偶数の最上位のピン#1,#2(ピンC1,C2に対応)から3つおきにピンを選択して使用するようになっている。すなわち、本変形例の6ピンのプリントヘッド1CCと24ピンのプリントヘッド1##を対応させると、ピンC1,C2はピン#1,#2に対応し、ピンC3,C4はピン#9,#10に対応し、そして、ピンC5,C6はピン#17,#18に対応する。
このように、図6(c)に示すプリントヘッド1CCにおける奇数ピンC1,C3,C5は、図2(a)に示すプリントヘッド1##における奇数ピン#1,#9,#17に対応し、残りの奇数ピン#3,#5,#7,#11,…,#23は使用しないので設けられていない。すなわち、本変形例のプリントヘッド1CCにおいて、図2(a)のプリントヘッド1##における奇数ピン#3,#5,#7,#11,…,#23のための印字ワイヤ11および該印字ワイヤの駆動機構は不要になり、図6(a)の12ピンのプリントヘッド1AAおよび図6(b)の8ピンのプリントヘッド1BBに比べても、部品点数をより一層削減することが可能になる。なお、図6(c)に示すプリントヘッド1CCにおける偶数ピンC2,C4,C6に関しても、奇数ピンC1,C3,C5と同様であり、その説明は省略する。
さらに、図6(c)に示す本変形例の6ピンのプリントヘッド1CCにより印字を行う場合の動作を説明する。この6ピンのプリントヘッド1CCは、二往復動作(往復動作を2回)を行うことで、24ピンのプリントヘッド1##と同様の印字を行うことができる。すなわち、プリントヘッド1CCによる印字は、例えば、用紙の左端から右端方向へプリントヘッド1CCを移動させて1行における6ドットの印字を行い、改行ピッチRC(=2・P#)だけ改行した後、用紙の右端から左端方向へプリントヘッド1CCを移動させて次の6ドットの印字(プリントヘッド1##のピン#3,#4,#11,#12,#19,#20による印字に相当)を行う。
さらに、改行ピッチRCだけ改行した後、用紙の左端から右端方向へプリントヘッド1CCを移動させてさらに次の6ドットの印字(プリントヘッド1##のピン#5,#6,#13,#14,#21,#22による印字に相当)を行い、改行ピッチRCだけ改行した後、用紙の右端から左端方向へプリントヘッド1CCを移動させて残りの6ドットの印字(プリントヘッド1##のピン#7,#8,#15,#16,#23,#24による印字に相当)を行うことで、1行分の24ドットの印字を行うことができる。すなわち、本変形例のプリントヘッド1CCは、二往復の印字動作により、24ピンのプリントヘッド1##による1回の印字動作と同等の印字を行うことができる。なお、上述した24ピンのプリントヘッド1##に対する12ピンのプリントヘッド1AA,8ピンのプリントヘッド1BBおよび6ピンのプリントヘッド1CCは、単なる例であり、様々な変形および変更が可能なのはいうまでもない。
図7は、本発明が適用されうるプリントヘッドの例を説明するための図であり、それぞれ24ピン(仕様)のプリントヘッドを12ピンのプリントヘッドとして使用する場合の例を示すものである。ここで、図7(a)は、直線配列の24ピンのプリントヘッドを利用して製造した12ピンのプリントヘッド1DDのピン配列を示し、図7(c)は、菱形配列の24ピンのプリントヘッドを利用して製造した12ピンのプリントヘッド1EEのピン配列を示す。なお、図7(b)は、前述した図6(a)に対応するもので、6列配列の24ピンのプリントヘッド1##を利用して製造した12ピンのプリントヘッド1AAのピン配列を示す。
図7(a)〜図7(c)に示されるように、本発明に係るプリントヘッドの適用は、図7(b)に示す6列配列のプリントヘッド1AAに限定されず、例えば、図7(a)に示す直線配列のプリントヘッド1DDおよび図7(c)に示す菱形配列のプリントヘッド1EEを始めとして様々なプリントヘッドに対して幅広く適用することが可能である。さらに、本発明に係るプリントヘッドの適用は、図6(a)〜図6(c)を参照して説明したのと同様に、例えば、直線配列のプリントヘッド1DDおよび菱形配列のプリントヘッド1EEに対しても、8ピンおよび6ピンのプリントヘッドとして構成することも可能なのはいうまでもない。
以上のように、本実施例に係るプリントヘッドによれば、例えば、高速印字が可能な多数ピン(例えば、24ピン)のプリントヘッドが既に存在している場合、新規にピン数の少ない(例えば、12ピン,8ピン,6ピンの)プリントヘッドを開発および製造する手間を省いて低廉化することが可能になる。すなわち、例えば、12ピン仕様のプリントヘッドの開発において、従来の技術では必要であった新規部品を開発するための開発投資や開発工数の削減が可能になり、また、例えば、24ピン仕様のプリントヘッドで適用している部品との共通部品を使用することで部品の単価を低減し、24ピンおよび12ピンの両方の仕様のプリントヘッドのコストダウンも可能になる。
図8は、本発明に係るプリンタの一実施例の要部を示すブロック図であり、例えば、図4(a)および図4(b)等を参照して説明したプリントヘッド1AAを適用したドットインパクト方式のプリンタ100の一例の要部を示すものである。図8に示されるように、本実施例のプリンタ100は、プリントヘッド1AA,プリンタ制御部2および印刷イメージバッファ(フレームメモリ)3を有する。
プリンタ制御部2は、ヘッド制御波形成部21およびプリントヘッド制御回路22を有する。印刷イメージバッファ3は、外部からの印字データを受け取り、例えば、ドットイメージに展開して保持する。ヘッド制御波形成部21は、印刷イメージバッファ3からドットイメージに展開された印刷データを受け取り、プリントヘッド1AAを制御するための波形(信号)を生成し、プリントヘッド制御回路22は、ヘッド制御波形成部21からの信号に基づいてプリントヘッド1AAを制御する。
なお、図示しないが、プリンタ100は、さらに、単票または連帳の用紙を制御する機構、1枚目の用紙に印字するためのインクリボンを送る機構、或いは、外部との通信や印字データを受け取るための様々な構成を含むのはいうまでもない。また、プリントヘッド1AAによる印字は、文字や数字に限定されるものではなく、バーコードやQRコード(登録商標)といった各種コードや図形等であってもよい。また、本実施例のプリンタは、図8の構成を有するものに限定されず、例えば、前述した本実施例またはその変形例のプリントヘッドを適用した様々なドットインパクト方式のプリンタであってもよい。
このように、例えば、本実施例の12ピンのプリントヘッド1AAを適用してプリンタ100を製造する場合、前述した24ピンのプリントヘッド1##を適用する場合よりも、電源やプリントヘッドを駆動する回路の容量等を低減することができ、電源の小型化、並びに、プリンタの小型化および低廉化を図ることが可能になる。すなわち、本実施例によれば、印字速度は低下するものの、印字品質の低下を抑えつつ、新規にピン数の少ないプリントヘッドを開発および製造する手間を省いて、プリントヘッドを低廉化すると共に、プリンタを小型化および低廉化することができる。
以上、実施形態(実施例)を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではない。また、明細書のそのような記載は、発明の利点および欠点を示すものでもない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。