JP6829160B2 - 電解コンデンサの駆動用電解液およびそれを用いた電解コンデンサ - Google Patents

電解コンデンサの駆動用電解液およびそれを用いた電解コンデンサ Download PDF

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本発明は、耐電圧を向上させつつ、製品特性変化の抑制を図った電解コンデンサの駆動用電解液(以下、電解液と称する)に関する。また、本発明は、このような電解液を用いた電解コンデンサに関するものでもある。
電解コンデンサは一般的な電子部品の1つであり、様々な電子機器、電気製品において、主に電源回路用やデジタル回路のノイズフィルタ用として広く使用されており、高圧用電解コンデンサにおいては、耐電圧特性を維持するために、エチレングリコール等を主成分とする溶媒に、主骨格を直鎖のアルキル基とした分子量の大きい高級二塩基酸もしくはその塩を溶解してなる電解液が用いられている(例えば、特許文献1および2)。
しかし、従来の高級二塩基酸は、高温雰囲気にて溶媒であるエチレングリコール等とエステル化反応し、電解液の比抵抗上昇などの特性劣化が起こるため、長寿命化が困難である。
また、耐電圧向上を図る手法としては、溶質(高級二塩基酸)を高分子量化する方法等が知られているが、高級二塩基酸は、分子量が大きくなるに従って、溶媒溶解性が低下するため、使用できる分子量、および添加量が限定されるという問題点があった。
この他に、更なる耐電圧向上を図る方法としては、溶質を構成しているアニオン成分(高級二塩基酸)、カチオン成分(アンモニア)について、高級二塩基酸をアンモニアに対して過多に添加して耐電圧を向上させる方法が挙げられ、この方法の場合、耐電圧特性を向上させることはできるが、エチレングリコールとのエステル化が起こりやすく、製品特性の経時変化が大きいという問題点があった。
特開2000−315629号公報 特開2006−108158号公報
本発明は、上述の問題点を解決し、耐電圧を向上させつつ特性変化の抑制を図ることが可能な電解コンデンサ駆動用電解液およびそれを用いた電解コンデンサを提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行なった結果、電解液中に、>C=O基(ケトン基)を含む特定の化学構造を有する化合物(ケトン基の炭素原子の一方に炭素数3以上の直鎖のアルキル基が結合し、他方に分岐したアルキル基が結合した構造を有する化合物)の少なくとも1種を配合することによって、電解コンデンサの耐電圧を向上させることができ、しかも、製品特性の経時変化を改善(特に、高温雰囲気下での特性変化を抑制)できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、溶媒に溶質を溶解してなる電解コンデンサの駆動用電解液であって、下記の一般式〔化1〕を有する化合物の少なくとも1種が配合されていることを特徴とするものである。
Figure 0006829160
(上式中のRは、下記式〔化2〕:
Figure 0006829160
で示される炭素数nが3以上の直鎖のアルキル基であり、
上式中のRは、下記式〔化3〕〜〔化5〕:
Figure 0006829160
Figure 0006829160
Figure 0006829160
のグループから選ばれた基である)
また、本発明は、上記の特徴を有する電解液において、前記一般式〔化1〕を有する化合物の配合割合が2.0〜5.0重量%であることを特徴とするものである。
また、本発明は、上記の特徴を有する電解液において、前記溶媒が、グリコール類、ラクトン類、ニトリル類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、カーボネート類、スルホラン類、アミド類、オキサゾリジノン類、スルホン類および水からなる群より選ばれた一種または二種以上であることを特徴とするものでもある。
また、本発明は、上記の特徴を有する電解液において、前記溶媒が、エチレングリコールを主溶媒とする溶媒であり、前記溶質を構成しているアニオン成分が高級二塩基酸で、カチオン成分がアンモニアであることを特徴とするものである。
さらに本発明の電解コンデンサは、上記の電解液を含浸させてなるコンデンサ素子を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、電解液中に前記一般式〔化1〕を有する化合物を配合することによって、耐電圧向上と特性変化の抑制の両立を図ることができる。
本発明に係る電解液は、>C=O基(ケトン基)の炭素原子の一方に炭素数3以上の直鎖のアルキル基が結合し、他方に分岐したアルキル基が結合した構造(前記一般式〔化1〕)を有する化合物の少なくとも1種を含むものであれば良く、当該化合物を1種のみ含んでも2種以上含んでいてもよい。
前記一般式〔化1〕中のR基は、〔化2〕で示される炭素数が3以上の直鎖のアルキル基であり、3〜7の炭素数を有した直鎖のアルキル基が特に好ましい。このようなアルキル基Rには、当該アルキル基とカルボン酸のアルキル基の分子鎖同士が絡み合うことによって、電解液中で大きな分子を形成して見かけの分子量を大きくし、耐電圧を向上させる役割がある。なお、炭素数が3より小さくなると耐電圧特性の向上効果が小さく、炭素数が7より大きくなると溶媒への溶解度が低下する。
また、前記一般式〔化1〕中のR基は、〔化3〕、〔化4〕、〔化5〕で示される分岐したアルキル基であり、このような分岐アルキル基Rには、ケトン基の水素化反応を抑制し、高温雰囲気化での特性変化を抑制する役割があり、これによって、電解液の耐熱性(熱安定性)が向上する。本発明における前記一般式〔化1〕中のR基は、分岐アルキル基であるが、仮にR基が直鎖のアルキル基である化合物を電解液中に配合した場合には、〔化1〕のケトン基が水素化反応を受けてアルコールに変化し易くなり、生成したアルコールが高温雰囲気下でカルボン酸とエステル化反応を起こして、電解液の比抵抗が上昇し、製品の経時変化が大きくなってしまう。本発明によれば、R基を分枝アルキル基にすることにより、このようなメカニズムによる製品の経時変化を抑制することができる。
このように、本発明では、前記一般式〔化1〕の化合物を電解液中に配合することによって、高級二塩基酸の見かけの分子量を大きくすることができ、耐電圧を向上させる(更なる高耐電圧化を図る)ことが可能であり、しかも、この化合物がカルボン酸基を有しておらず、アニオン成分(高級二塩基酸)が過多でないために、製品特性の経時変化を改善することができる。
本発明の電解液中に配合される、前記一般式〔化1〕の化合物としては、例えば以下の表1に記載されている化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
また、本発明の電解液中の、前記一般式〔化1〕の化合物の好ましい配合割合は1.3〜10.0重量%、より好ましくは2.0〜5.0重量%の範囲であるが、化合物の種類に応じて適宜選択することができる。
Figure 0006829160
本発明で用いる溶媒としては、グリコール類、ラクトン類、ニトリル類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、カーボネート類、スルホラン類、アミド類、オキサゾリジノン類、スルホン類および水が挙げられ、これらの溶媒は一種だけでなく、二種以上を混合して使用することができる。溶媒の具体例は以下のとおりである。
グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコールなどが挙げられ、温度特性に優れた電解液を得るために特にエチレングリコールが好ましい。エチレングリコールは単独で用いることもできるが、比抵抗を低減するため、水との混合液を用いてもよい。
ラクトン類としては、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンなどが挙げられる。
ニトリル類としては、アセトニトリル、アクリロニトリル、アジポニトリル、3−メトキシプロピオニトリルなどが挙げられる。
アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール、アミルアルコール、フルフリルアルコール、グリセリン、ヘキシトールなどが挙げられる。
エーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
カーボネート類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
アミド類として、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等が挙げられる。
オキサゾリジノン類として、N−メチル−2−オキサゾリジノン、3,5−ジメチル−2−オキサゾリジノン等が挙げられる。
スルホン類として、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホンなどが挙げられ、スルホラン類としては、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホランなどが挙げられる。
その他の副溶媒としては、水、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホオキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、トルエン、キシレン、パラフィン類、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールおよびその共重合体等の高分子量体が挙げられる。
また、本発明では、漏れ電流の低減、耐電圧の向上、ガス吸収剤の目的で種々の添加剤を加えることができる。
上記の目的で添加される添加剤としては、オルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸イソプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチルなどのリン酸化合物、ホウ酸およびその錯化合物などのホウ酸化合物、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ペンタエリスリトール、ポリビニルアルコールなどの多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールのランダム共重合体およびブロック共重合体に代表される高分子化合物、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロアセトフェノンなどのニトロ化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明において好ましい電解液組成としては、主溶媒がエチレングリコールで、溶質を構成しているアニオン成分が高級二塩基酸(例えば、セバシン酸や1,6−デカンジカルボン酸等のカルボキシル基間の炭素数が6〜8のジカルボン酸)由来のアニオンで、カチオン成分がアンモニウムイオンである組成が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、主溶媒とは、溶媒全体の60重量%以上、より好ましくは80重量%以上を占める溶媒を意味する。
高級二塩基酸の配合割合は2〜10重量%が好ましく、3〜7重量%がより好ましく、アンモニウムイオンの配合割合は、高級二塩基酸1モルに対して1.5〜2.5モルとすることが好ましく、1.7〜2.3モルとすることがより好ましい。
本発明の電解液は、例えば巻回型の電解コンデンサに用いることができる。
本発明に係る電解液を用いたコンデンサは、通常の方法で製造することができ、例えば、エッチング処理および酸化皮膜形成処理をした陽極箔と、エッチング処理をした陰極箔とをセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、該コンデンサ素子を電解液に含浸した後、有底筒状の外装ケースに収納する方法によって製造することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
[電解液の調製]
主溶媒としてエチレングリコールを使用し、溶質を構成しているアニオン成分としてセバシン酸を使用し、カチオン成分としてアンモニアを使用し、前記一般式〔化1〕の化合物として、2−メチル−4−ウンデカノン(n=7、R=〔化4〕)、2−メチル−3−ヘプタノン(n=4、R=〔化3〕)、3−メチル−4−ヘプタノン(n=3、R=〔化5〕)を使用して、以下の表2に記載される電解液組成を有する電解液(実施例1〜6)を調製した。
一方、比較のために、本発明における添加剤を含まない電解液として、以下の表2の従来例1および2に記載される電解液組成を有した電解液を調製した。
そして、実施例1〜6および従来例1〜2の電解液について、製品耐電圧と、損失角の正接(tanδ)変化率を、以下の方法により測定・評価した。
[製品耐電圧の評価]
実施例1〜6および従来例1〜2の各電解液についての耐電圧の評価は、電解コンデンサに2.5mAの定電流を105℃にて通電したときに時間−電圧の上昇カーブを測定し、はじめにスパークまたはシンチレーションが観測された電圧を測定し、これを耐電圧とした。
使用した電解コンデンサは、ケースサイズφ16×25L(mm)、定格電圧500V(化成電圧940V)、静電容量17μFを用いた。
[tanδ変化率の測定]
実施例1〜6および従来例1〜2の各電解液について、初期特性tanδと、105℃雰囲気中で350Vを印加し、1000h経過後のtanδを測定し、以下の式を用いてtanδ変化率を算出した。
Figure 0006829160
その結果を以下の表2に示す。
Figure 0006829160
従来例1と2の電解液を比較してみると、従来例1に比べて、従来例2はセバシン酸が過多に配合されていることで製品耐電圧が高く、耐電圧は向上している。しかしながら、従来例2のtanδ変化率(%)は大きく、特性が劣化していることがわかる。
また、従来例1と実施例1〜6の電解液の比較から、前記一般式〔化1〕の化合物が配合された電解液(実施例1〜6)は従来例1に比べて製品耐電圧が高く、耐電圧が向上しており、tanδ変化率(%)は同等で、特性変化が大きくなるという問題点は認められない。
さらに、従来例2と実施例2〜6の電解液の比較から、前記一般式〔化1〕の化合物が配合された電解液(実施例2〜6)は従来例2に比べて耐電圧特性が同等であり、耐電圧向上効果が認められ、実施例2〜6の電解液はtanδ変化率が従来例2に比べて低く、特性変化が大きくなるという課題が改善されていることがわかる。
上記のとおり、実施例1〜6の結果から、nが3以上で、Rが〔化3〕、〔化4〕、〔化5〕である前記一般式〔化1〕の化合物を配合することによる耐電圧向上効果とtanδ変化率抑制効果が認められ、前記一般式〔化1〕の化合物の好ましい配合割合は1.3〜10.0重量%であることがわかる。なお、実施例3と実施例6を比較すると前記一般式〔化1〕の化合物の配合割合を5.0重量%から10.0重量%に増やしても耐電圧はあまり高くならないことから、前記一般式〔化1〕の化合物のより好ましい配合割合は2.0〜5.0重量%であることがわかる。
また、本発明は、上記実施例に限られるものではなく、前記一般式〔化1〕の化合物を単独または複数使用した場合にも、上記と同様の効果が得られる。
また、本発明の上記実施例では、溶媒としてエチレングリコールを使用したが、グリコール類、ラクトン類、ニトリル類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、カーボネート類、スルホラン類、アミド類、オキサゾリジノン類、スルホン類からなる群より選ばれた一種または二種以上の溶媒を用いた場合にも、上記と同様の効果が得られる。
さらに、本発明の上記実施例では、前記一般式〔化1〕の化合物として、2−メチル−4−ウンデカノン、2−メチル−3−ヘプタノン、3−メチル−4−ヘプタノンを用いたが、同様の化学構造を有した他の化合物を使用した場合にも、上記実施例と同様の効果が得られる。
本発明の電解液を用いることで、耐電圧を向上させつつ特性変化の抑制を図ることが可能な電解コンデンサを製造することができ、本発明の電解液は非常に有用である。

Claims (5)

  1. 溶媒に溶質を溶解してなる電解コンデンサの駆動用電解液であって、下記の一般式〔化1〕を有する化合物の少なくとも1種が配合されていることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
    Figure 0006829160
    (上式中のRは、下記式〔化2〕:
    Figure 0006829160
    で示される炭素数nが3以上の直鎖のアルキル基であり、
    上式中のRは、下記式〔化3〕〜〔化5〕:
    Figure 0006829160
    Figure 0006829160
    Figure 0006829160
    のグループから選ばれた基である)
  2. 前記一般式〔化1〕を有する化合物の配合割合が2.0〜5.0重量%であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサの駆動用電解液。
  3. 前記溶媒が、グリコール類、ラクトン類、ニトリル類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、カーボネート類、スルホラン類、アミド類、オキサゾリジノン類、スルホン類および水からなる群より選ばれた一種または二種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電解コンデンサの駆動用電解液。
  4. 前記溶媒が、エチレングリコールを主溶媒とする溶媒であり、前記溶質を構成しているアニオン成分が高級二塩基酸で、カチオン成分がアンモニアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解コンデンサの駆動用電解液。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の駆動用電解液を含浸させてなるコンデンサ素子を有することを特徴とする電解コンデンサ。
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