JP6814725B2 - 精紡機用リング - Google Patents

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Description

本発明は、耐摩耗性の向上により長寿命化を図れる精紡機用リングに関する。
原綿から糸を作る紡績工程では、そのほぼ最終段階として、粗紡工程で得られた粗糸を、引き伸して所定の太さにすると共に撚りをかけてボビンに巻き取る精紡工程がなされる。現在、その精紡工程は主にリング精紡機によりなされている。リング精紡機は、リングレールに支持されて昇降するリング上を滑走(摺動)するトラベラを介して、糸の巻き取りを行う紡機である。
ところで、紡績工程(特に精紡工程)の生産性を向上されるためには、リング精紡機を高速で長時間運転できることが望まれる。そのためには、非液潤滑下(ドライ状態)で摺動するリングとトラベラの交換寿命を延ばすことが求められる。これに関連する提案が、例えば下記の特許文献1にある。
特開2014−29046号公報 特許4843318号公報 WO2010/119747号公報
特許文献1は、リング式紡機のリングとトラベラの摺動面に、マイクロクラック(凹部)を有する硬質クロムめっき層を設けることを提案している。摺動面の摩擦低減効果がある繊維薄膜がマイクロクラックに入り込んで剥離し難くなる結果、トラベラの滑走抵抗が安定して低減されて、リングやトラベラの寿命が延長する旨が特許文献1に記載されている。しかし、特許文献1には、その硬質クロムめっき層の組成、構造、製造方法等について、何ら記載されていない。
なお、特許文献2や特許文献3にもクロムめっきに関する記載がある。しかし、それらは精紡機に関するものではなく、当然、リングやトラベラ等についても何らの記載もされていない。そして、それらに記載されているクロムめっきは、後述する本発明に係るクロムめっきとは異なっている。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なるクロムめっきを摺動面に設けることにより、耐摩耗性の向上や長寿命化を図れる精紡機用リングを提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、特定のクロムめっきをリングの摺動面に設けることにより、リングの耐摩耗性の向上を図れると共に、摺動相手材であるトラベラの長寿命化も図れることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《精紡機用リング》
(1)本発明は、リングの摺動面上をドライ状態で摺動するトラベラを介して糸を巻き取る精紡機に用いられるリングであって、前記摺動面は、クロムめっきにより被覆されてなり、該クロムめっきは、グロー放電発光分析(GD―OES)により定まるCr原子の発光強度に対するH原子の発光強度の比が0.1以上であると共に該Cr原子の発光強度に対するC原子の発光強度の比が0.01以上である精紡機用リングである。
(2)本発明の精紡機用リング(単に「リング」という。)は、ドライ状態でトラベラが滑走する場合でも、リング自体の摩耗が非常に少なく、優れた耐摩耗性を発揮する。また、本発明のリングは、摺動相手であるトラベラの摩耗も抑制し得る。従って、本発明によれば、リングやトラベラの長寿命化が図られ、精紡機を高速で長時間運転することが可能となり、精紡工程の生産性の大幅な向上が図られ得る。
(3)本発明のリングがそのような効果を発揮する理由は必ずしも定かではないが、現状では次のように推察される。本発明に係るクロムめっきは、リングの摺動面を被覆していた従来のクロムめっきよりも、Hの(相対)含有量が大きい。これにより、クロムめっきの結晶構造が微細化したり低配向化し、その結果として、上述したリングの耐摩耗性の向上やトラベラの摩耗の抑制が生じるようになったと考えられる。
《その他》
(1)本明細書でいう「クロムめっき」は、いわゆる硬質クロムめっき、機能性クロムめっき、または工業用クロムめっき(JIS)といわれるものである。
(2)本明細書でいう「x〜y」は、特に断らない限り、下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
一形態例であるリングの斜視図(a)と、その部分拡大斜視図(b)と、紡出中のリングとトラベラの摺接を示す模式断面図(c)である。 クロムめっきをGD―OESで測定して得られたプロフィル例(試料1)である。 各試料に係るクロムめっきのX線回折プロフィルである。 摺動試験後の各試料に係る摺動面を示す写真である。 クロムめっきの硬さと摩耗深さとの関係を示す散布図である。 クロムめっき中のH/Crと摩耗深さとの関係を示す散布図である。 クロムめっき中のC/Crと摩耗深さとの関係を示す散布図である。 クロムめっき中のO/Crと摩耗深さとの関係を示す散布図である。 (222)の半値幅と摩耗深さとの関係を示す散布図である。 (200)/(222)のピーク面積比と摩耗深さとの関係を示す散布図である。 実機の運転時間と各試料に係るリングの摩耗深さとの関係を示す散布図である。 その各リングに組み込んだトラベラの寿命比を示す棒グラフである。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明の精紡機用リングとしてのみならず、その製造方法(特にクロムめっきの形成方法)にも適宜該当し得る。
《リング・トラベラ》
リング精紡機に用いられるリング11とトラベラ12を 図1(a)〜(c)に示した。リング11は、断面形状が略T型のフランジ11aを有する。トラベラ12は断面形状が略C型であり、フランジ11aに摺動可能に掛合している。リング11およびトラベラ12は共に鋼材(軸受鋼等)からなり、リング11はフランジ11aの表面(摺動面)に(硬質)クロムめっき膜13を有する。クロムめっき膜13は厚さが3〜20μmさらには5〜15μm程度である。
図1(c)に示すように、ドラフトパート(略図)から送出された糸Yは、トラベラ12を経て、高速回転するボビン(略図)に巻き取られる。この際、トラベラ12は糸Yの巻き取り張力によりフランジ11aのクロムめっき膜13上を摺動しつつ滑走する。トラベラ12は、回転速度により滑走姿勢を多少変化させ得るが、通常の紡出運転時であれば、図1(c)に示すように、フランジ11aの内側下部と摺接している。なお、通常の紡出運転時のスピンドルの最高回転速度は25000rpm程度にもなる。
《クロムめっき》
(1)膜組成
クロムめっきは、主成分であるCrの他に、少なくともHを含む。Hは、Crに対する発光強度の比(単に「H/Cr」という。)で0.1以上、0.11以上、0.13以上さらには0.14以上含まれ得る。Hが過少であると、クロムめっきの微結晶化や低配向化が不十分となり、その耐摩耗性等が低下し得る。なお、H量の上限値は、敢えていうと、H/Crが0.3以下さらには0.2以下であると好ましい。Hが過多になると、膜の靱性が低下し、耐摩耗性が低下し得る。
クロムめっきは、さらにCを含み得る。Cは、Hほどクロムめっきの摺動特性に及ぼす影響が大きくないと考えられる。但し、CはCrに対する発光強度の比(単に「C/Cr」という。)が0.01以上であると好ましい。Cは、Hと共存することにより、クロムに固溶強化され、クロムめっきの耐摩耗性を向上させると考えられる。なお、C量の上限値は、敢えていうと、C/Crが0.03以下さらには0.02以下であると好ましい。Cが過多になると、アモルファス化し、靱性が低下し、耐摩耗性が低下し得る。
クロムめっきは、さらにOを含み得る。Oは、クロムめっきの摺動特性に殆ど影響を及ぼさないと考えられるが、Oが過多になると、硬さを低下することで、耐摩耗性が低下し得る。そこでOのCrに対する発光強度の比(単に「O/Cr」という。)は、敢えていうと、0.001〜0.2さらには0.005〜0.15程度であると好ましい。
なお、本明細書でいうクロムめっきの組成分析は、グロー放電発光分析(GD―OES:Glow discharge optical emission spectrometry)により、主成分であるCrに対する発光強度の比として特定される。
(2)膜構造
クロムめっきは、X線回折分析(XRD)により定まる(222)面のピークの半値幅が3°以上、3.5°以上さらには4°以上であると好ましい。半値幅が大きくなるほど、シェラー(Scherrer)の式から求まるCrの結晶子径(サイズ)が小さくなり、クロムめっきが微結晶化しているといえる。なお、半値幅は、XRDプロファイルのピーク強度の1/2に対応する2点間の間隔(Δ2θ)として求まる半値全幅(FWHM)を意味する。
また、クロムめっきは、XRDにより定まる(222)面に対する(200)面のピークの面積比(「ピーク面積比」ともいう。)が0.06以上、0.07以上、0.1以上さらには0.15以上であると好ましい。面積比が大きくなるほど、Crの結晶の(222)面に対する配向度合が相対的に低くなり、クロムめっきは低配向化しているといえる。
(3)膜厚
クロムめっきの膜厚は、例えば、3〜20μmさらには10〜15μmであると好ましい。膜厚が過小では耐摩耗性が低下し得る。膜厚が過大になると、クロムめっきの形成時間が長くなり好ましくない。
(4)膜硬さ
クロムめっきの硬さは、例えば、850〜1050HVさらには900〜1000HVであると好ましい。本発明に係るクロムめっきの場合、硬さと耐摩耗性の間に明確な相関は必ずしもない。但し、その硬さが過小ではリングの耐摩耗性が低下し得るおそれがあり、硬さが過大では相手材であるトラベラの摩耗抑制が低下し得るおそれがある。
《クロムめっきの形成》
クロムめっきは、通常、電解析出(単に「電析」という。)により形成(成膜)される。このときに用いられるめっき浴として、サージェント浴(普通浴)、フッ化浴(混合触媒浴)、高速浴等がある。サージェント浴の液組成は、通常、無水クロム酸(CrO)と硫酸(HSO)からなる。フッ化浴は、通常、無水クロム酸および硫酸に加えて、フッ化物(HSiF等)を含む。高速浴は、通常、無水クロム酸および硫酸に加えて、有機酸あるいは有機物触媒を含む。
クロムめっきを効率的に形成するために、高速浴を用いると好ましい。高速浴を用いるときのめっき温度は40〜70℃さらには40〜50℃の範囲で調整されると好ましい。液組成にも依るが、めっき温度の調整により、クロムめっき中に含有するH量の制御が可能となる。なお、ここでいうめっき温度は、めっき浴の液温である。
高速浴を用いるときの電流密度は20〜90A/dmさらには50〜80A/dmの範囲で調整されると好ましい。電流密度が過小ではクロムめっきの効率的な形成が図れず、電流密度が過大になると均一的なクロムめっきの形成が困難となる。
《その他》
(1)リングのクロムめっき上を摺動するトラベラは、その材質を問わないが、炭素鋼や合金鋼からなると、その耐摩耗性の確保(高寿命化)も図られて好ましい。また、トラベラの材質は、一般のばね鋼あるいは高炭素鋼を用い、熱処理により酸化処理がなされている方が好ましい。酸化処理により、金属からなる摺動相手(リング)との凝着が防止される。
(2)糸(繊維)
トラベラと摺接する糸は、その種類を問わない。敢えていうなら、大気中の無液潤滑下(ドライ状態)で潤滑成分を自然供給し得る糸、例えば、綿、麻、シルク、ウール、化学繊維(ニトロセルロース、ナイロン、ビニロン等)などが紡績対象として好ましい。
《概要》
リング精紡機のリングまたはトラベラに用いられる鋼材(基材)上に形成した種々のクロムめっきの耐摩耗性を、非液潤滑下(ドライ状態)で行うボールオンディスク摩擦試験により評価した(基礎試験)。その結果を踏まえて、各クロムめっきによりフランジ表面が被覆されたリングとトラベラを装着したリング精紡機(単に「実機」という。)を用いて、それぞれのリングとトラベラの耐摩耗性を評価した(実機試験)。これらの詳細を示しつつ、本発明をより具体的に説明する。
[基礎試験]
《試料の製造》
(1)基材
リング精紡機のリングまたはトラベラに用いられる軸受鋼(JIS SUJ2)を基材としたディスク(φ30mm×厚さ3mm)とボール(φ6mm)を用意した。クロムめっきするディスクの被処理面は、鏡面仕上げにより表面粗さをRa0.08μmとした。また、ボールの表面粗さは0.08μmRzjisとした。また、そのボールの表面硬さはHV800であった。
(2)クロムめっき
ディスクの片面(表面粗さ:Ra0.08μm)にクロムめっきした。クロムめっきは高速浴を使用して、電気めっきにより行った。高速浴の液組成(特に有機酸)とその液温(めっき温度)を制御して、膜組成(H量、C量等)や膜構造が異なる種々のクロムめっき(膜)を、基材表面に形成した。特に、H量を比較的多く含むクロムめっきは、液温を低めに調整して成膜した。この際、日本金属学会誌 第68巻 第8号(2004)552-557の記載を参考にした。ちなみに、いずれの試料も、クロムめっきの膜厚は10〜15μmとした。膜厚は、後述する摺動試験後の摩耗痕をCMS社製Calotestで測定して特定した。
(3)膜組成
各試料に係るクロムめっきの組成は、株式会社堀場製作所社製 マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置 GD-Profiler2を用いてGD−OESにより特定した。その一例として、試料1に係る分析結果を図2に示した。膜組成は、各元素量(率)が安定している領域(評価範囲)の平均値として求めた。具体的にいうと、検出されたCrを基準とし、その発光強度に対する検出されたH、C、Oの発光強度の比を算出した。こうして求めた各試料に係る膜組成を表1にまとめて示した。
(4)膜硬さ
各試料に係るクロムめっきの硬さをマイクロビッカース硬度計により測定した。なお、荷重は300g以下で測定した。こうして求めた各試料に係る膜硬さも表1に併せて示した。
(5)膜構造
各試料に係るクロムめっきをXRDにより分析した。これにより得られた各プロフィルの一部を図3に示した。各プロフィルから求めた各試料に係る(222)の半値幅と(200)/(222)の面積比も表1に併せて示した。
なお、XRDは、CuKαの特性X線(波長:λ=1.5418Å)を用いて行った。また、半値幅およびピーク面積比は、XRDにより得られたプロフィルを画像解析して算出した。画像解析には、XRD装置(株式会社リガク社製 Ultima IV)に付属している画像処理ソフト(MDI社製 JADE 9.3)を利用し、凝フォークト関数によるピークフィッティング解析を行い算出した。
《摺動試験》
各試料に係るクロムめっきを施したディスク上でボールを摺動させるボールオンディスク試験(単に「摺動試験」という。)を行った。摺動条件は、試験荷重:2N(ヘルツ面圧:210MPa)、すべり速度:0.2m/s、試験時間:50分(摺動距離:600m相当)、摺動環境:大気中の無潤滑状態(非液潤滑状態)とした。一部の試料について、摺動試験後のディスク(クロムめっき)とボールの摺動面を図4に示した。また、各試料について、摺動試験後の摩耗深さをレーザ顕微鏡により測定した。なお、摩耗深さは、非摺動面(クロムめっきの平滑面)から測定した摩耗痕の最深部までの距離とした。
《評価》
(1)クロムめっきの耐摩耗性
図4から明らかなように、試料1に係るクロムめっきは、試料C1や試料C2に係るクロムめっきに対して、摩耗深さが1/3〜1/2程度にまで低減した。また、相手材側(ボール側)の摩耗痕径も、試料1の方が試料C1や試料C2よりも小さくなった。従って、試料1に係るクロムめっきは、それ自身が耐摩耗性に優れると共に、相手材への攻撃性も低く、摺動特性に優れることが明らかとなった。
(2)クロムめっきの硬さ
表1に示した各試料について、クロムめっきの硬さとその摩耗深さの関係を図5に示した。図5から明らかなように、硬さが十分でも摩耗深さが大きい試料(例えば、試料C2、試料C3)が存在している。従って、クロムめっきの耐摩耗性は、必ずしも硬さのみに依存している訳ではないといえる。但し、摩耗深さが小さい試料1〜4のクロムめっきは、いずれも十分な硬さを有していた。
(3)クロムめっきの組成
表1に示した各試料について、クロムめっきの膜組成(Cr量で正規化した組成)とその摩耗深さの関係を図6A〜図6C(これらを併せて単に「図6」という。)に示した。図6から明らかなように、クロムめっきの耐摩耗性は、クロムめっき中に含まれ得る元素の中で、H量による影響が大きいことがわかった。特に図6Aから明らかなように、Hが高濃度なクロムめっきは、耐摩耗性に優れることが明らかとなった。
また、図6Bから明らかなように、クロムめっき中に含まれるC量が多くなるほど、概して、その耐摩耗性は向上する傾向が観られた。但し、試料C3のように、C量が多くても摩耗深さが大きい試料も存在していることから、クロムめっきの耐摩耗性に及ぼすCの影響は副次的であると考えられる。つまり、H量が多くてC量も多いクロムめっきは、耐摩耗性に優れると推察される。
一方、図6Cから明らかなように、各試料間で、クロムめっき中に含まれるO量に大差はないにもかかわらず、摩耗深さは大きく異なった。従って、クロムめっきの耐摩耗性にOは殆ど影響を及ぼしていないと推察される。
(4)クロムめっきの構造
先ず、図3から明らかなように、摩耗深さが小さい試料1のクロムめっきでは、(222)に加えて(200)についても、大きいピーク強度が観察された。逆に、摩耗深さが大きい試料C1では、(200)に係るピークが殆ど検出されず、(222)面への強い配向性が認められた。このような傾向は試料C3でも、ほぼ同様であった。また、図3から明らかなように、試料1は試料C1や試料C3よりも、(222)に係るピークがブロードで半値幅が大きかった。
そこで、表1に示した各試料について、(222)に係るピークの半値幅と摩耗深さの関係を図7に、(200)と(222)に係るピークに基づく面積比と摩耗深さの関係を図8に、それぞれ示した。
図7から明らかなように、(222)の半値幅が大きい試料ほど、摩耗深さも小さいことが明らかとなった。つまり、その半値幅が大きいクロムめっきほど、耐摩耗性に優れることがわかった。
なお、シェラーの式(Scherrer's equation)を用いて、半値幅から各試料の結晶子(単結晶とみなせる最大の集まり)のサイズを求めると、例えば、試料1:49Å、試料C1:81Åとなる。これを踏まえると、微結晶化したクロムめっきほど、耐摩耗性に優れるともいえる。
さらに、図8から明らかなように、(200)/(222)の面積比が大きくなるほど、摩耗深さも小さくなることが明らかとなった。その面積比が大きくなるほど、クロムめっきの(222)に係る配向性が弱くなること、すなわち、クロムめっきの低配向化を示す。従って、図8から、低配向化したクロムめっきほど、耐摩耗性に優れる傾向にあるともいえる。
以上から明らかなように、H含有量が多く、微結晶化および低配向化したクロムめっきほど、耐摩耗性に優れると共に、摺動相手への攻撃性も低く、摺動特性に優れることがわかった。
[実機試験]
(1)試験条件
上述した各試料に係るクロムめっきを施したリングとトラベラを組み込んだリング精紡機(株式会社豊田自動織機製 RX240)を用いて実機試験を行った。リングおよびトラベラの概略は図1に示した通りである。なお、リングのフランジ部分を被覆したクロムめっきの膜厚は10μm以上とした。また、実機は、ドライ環境下で、最高回転速度:21000rpmとして運転した。
(2)試験結果
各リングの摩耗深さの時間変化を図9に示した。試料2のクロムめっきを施したリングは、運転時間が0.7年を経過しても、摩耗深さが0.1μm以下であり、非常に優れた耐摩耗性を発現した。一方、試料C1と試料C2のクロムめっきを施したリングは、運転時間が0.7年を経過した時点で、それぞれの摩耗深さが2μm超と1.3μmとなった。
また、各試料に係るリングと組合わせたトラベラの寿命比を図10に示した。寿命比は、試料C1に係るリングを用いたときのトラベラの寿命を基準とした。試料2のクロムめっきを施したリングを用いた場合、トラベラも大幅に長寿命化することが明らかとなった。
以上から、本発明に係るクロムめっきが施されたリングを用いると、リングのみならずトラベラの耐摩耗性の向上、ひいてはそれらの長寿命化を図れることが明らかとなった。
11 リング
12 トラベラ
13 クロムめっき膜

Claims (4)

  1. リングの摺動面上をドライ状態で摺動するトラベラを介して糸を巻き取る精紡機に用いられるリングであって、
    前記摺動面は、クロムめっきにより被覆されてなり、
    該クロムめっきは、グロー放電発光分析(GD―OES)により定まるCr原子の発光強度に対するH原子の発光強度の比が0.1以上であると共に該Cr原子の発光強度に対するC原子の発光強度の比が0.01以上である精紡機用リング。
  2. 前記クロムめっきは、X線回折分析により定まる(222)面のピークの半値幅が3°以上である請求項1に記載の精紡機用リング。
  3. 前記クロムめっきは、X線回折分析により定まる(222)面に対する(200)面のピークの面積比が0.06以上である請求項1または2に記載の精紡機用リング。
  4. 前記Cr原子の発光強度に対するH原子の発光強度の比は0.2以下である請求項1〜3のいずれかに記載の精紡機用リング。
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