JP2021179032A - 精紡機用リングおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】リング精紡機を高速で長時間運転することを可能とするリングを提供する。【解決手段】本発明は、トラベラ(12)を介して糸を巻き取る精紡機に用いられ、トラベラが摺動する摺動面を有するリング(11)である。その摺動面には、複数の凹部と凹部の隣接間にある湾曲状の凸部とを有するテクスチャーが形成されている。凸部は、曲率半径が40〜400μmであるとよい。凹部の隣接間隔は、例えば、40〜100μmであるとよい。記摺動面は、クロムめっき層からなるとよい。このようなテクスチャーは、例えば、リングの被処理面に複数の窪みを形成した後、その窪みの周縁および/または窪みの隣接間面を丸めることで形成される。凹部となる窪みは、例えば、被処理面へレーザ照射して形成される。凸部は、例えば、窪みを形成した被処理面へ、研磨材を投射して形成される。【選択図】図2C

Description

本発明は、精紡機用リング等に関する。
原綿から糸を作る紡績工程では、そのほぼ最終段階として、粗紡工程で得られた粗糸を、引き伸して所定の太さにすると共に撚りをかけてボビンに巻き取る精紡工程がなされる。現在、精紡工程は主にリング精紡機によりなされている。リング精紡機は、リングレールに支持されて昇降するリング上を、滑走(摺動)するトラベラを介して糸を巻き取る紡機である。
ところで、紡績工程(特に精紡工程)の生産性を向上されるためには、リング精紡機を高速で長時間継続して運転できることが望まれる。このため、非液潤滑下(ドライ状態)におけるリングとトラベラの間の摺動特性を改善または向上させて、それらの長寿命化(交換寿命の長期化)等を図ることが求められる。これに関連する提案が、例えば下記の特許文献1にある。
特表2002―510755号公報 特許5910569号公報 特許5994721号公報 特許6149838号公報
特許文献1は、リングの摺動面を硬質クロム被覆することを提案している。特許文献2は、凹部と平面部とからなる周期構造をリングの摺動面に形成することを提案している。特許文献3は、リングの摺動面に設けたクロムメッキ層上に、マイクロクラック(凹部)を形成することを提案している。特許文献4は、リングの摺動面に設けたクロムメッキ層上に、大凹部(窪み)と小凹部(マイクロクラック)を形成することを提案している。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、摺動特性を改善できる新たな精紡機用リング等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究して、リングの摺動面に形成する新たなテクスチャーを着想し、その効果を実際に確認した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《精紡機用リング》
(1)本発明は、トラベラを介して糸を巻き取る精紡機に用いられ、該トラベラが摺動する摺動面を有するリングであって、該摺動面は、複数の凹部と該凹部の隣接間にある湾曲状の凸部とを有するテクスチャーを備え、該凸部は、曲率半径が40〜400μmである精紡機用リングである。
(2)本発明の精紡機用リング(単に「リング」ともいう。)によれば、ドライ環境でも、リングとトラベラの摺動間において、低摩擦な状態で長い摺動距離(稼働時間)を確保できる。これにより、リングやトラベラの長寿命化が図られ、精紡機の高速長時間運転が可能となり、精紡に係る生産性の向上が図られる。
(3)このような効果が得られる理由は必ずしも定かではないが、現状、次のように推察される。精紡中に糸から発生する繊維(主にセルロース)は、摺動間に介在して、リングとトラベラの間の摩擦低減や摩耗抑制に寄与する。テクスチャーにある凹部は、その繊維を一時的に捕捉(貯留)し、そのような摺動状態を安定化させる。
本発明に係る凹部間は、従来のような単なる平面ではなく、所定の曲率で湾曲した凸部となっている。リングとトラベラの間の摺動は、その滑らかな凸部(特に、その頂部付近)で生じ易くなる。また、凹部に捕捉されていた繊維は、凹部から滑らかに連なる凸部の曲面へ誘導され、凸部付近の摺動間へ供給され易くなる。このようなことが相乗的に作用して、リングとトラベラの間の摺動特性の向上(低摩擦化、摩耗抑制等)が図られ、低摩擦な状態で長い摺動距離が確保されるようになったと考えられる。
《精紡機用リングの製造方法》
本発明は、精紡機用リングの製造方法としても把握される。例えば、本発明は、リングの被処理面に複数の窪みを形成する第1工程と、その窪みの周縁および/または窪みの隣接間(面)を丸める第2工程とを備え、これら工程により摺動面が得られる精紡機用リングの製造方法でもよい。
《その他》
(1)本明細書では、テクスチャーをリングに設ける場合を例示したが、テクスチャーはトラベラに設けられてもよい。このとき、リングとトラベラの両方にテクスチャーが設けられてもよい。そこで本発明は、精紡機用リングとしてのみならず、精紡機用トラベラ、さらには精紡機用リング/トラベラ系(システム)としても把握され得る。さらに本発明は、そのようなリングおよび/またはトラベラを備えた紡機(精紡機の他、粗紡機を含む)として把握されてもよい。
(2)本明細書でいう「x〜y」は、特に断らない限り、下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。また、特に断らない限り、本明細書でいう「x〜yμm」はxμm〜yμmを意味する。他の単位系についても同様である。
一例であるリングの斜視図(a)と、その部分拡大斜視図(b)と、紡出中のリングとトラベラの摺接状態を示す模式断面図(c)である。 レーザ加工により窪みが形成された基板表面の一例を示す平面図である。 研磨加工の一例であるラップ加工の様子を示す模式図である。 レーザ加工後の状態とラップ加工後の状態とを例示する模式断面図である。 ラップ加工後の表面断面を例示するプロフィルである。 ボールオンディスク摩擦試験(BOD試験)の様子を示す模式図である。 BOD試験により得られた摺動距離と摩擦係数の関係を例示するグラフである。 凸部の曲率半径と摩擦係数が0.6以下である摺動距離との関係を示す散布図である。 摺動距離とボールの摩耗深さ(相手材の摩耗量)の関係を例示する棒グラフである。 試料6に係る摩擦試験後のテクスチャー表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得た写真(SEM像)である。 BOD試験(基礎試験)の摺動距離と実機試験の摺動距離の相関を示す散布図である。 BOD試験により得られた摺動距離と摩擦係数の関係(別例)を示すグラフである。 その試験後のテクスチャー表面に係るSEM像である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、物(精紡機用リング等)のみならず、製造方法にも適宜該当し得る。
《リング・トラベラ》
リング精紡機に用いられるリング11とトラベラ12を 図1(a)〜(c)に示した。リング11は、断面形状が略T型のフランジ11aを有する。トラベラ12は断面形状が略C型であり、フランジ11aに摺動可能に掛合している。リング11およびトラベラ12は共に鋼材からなり、リング11はフランジ11aの表面(摺動面)に(硬質)クロムめっき層13を有する。クロムめっき層13は膜厚が3〜20μmさらには10〜15μm程度である。
図1(c)に示すように、ドラフトパート(略図)から送出された糸Yは、トラベラ12を経て、高速回転するボビン(略図)に巻き取られる。この際、トラベラ12は糸Yの巻き取り張力によりフランジ11aのクロムめっき層13上を摺動しつつ滑走する。トラベラ12は、回転速度により滑走姿勢を多少変化させ得るが、通常の紡出運転時であれば、図1(c)に示すように、フランジ11aの内側下部と摺接する。なお、通常の紡出運転時でも、スピンドルの最高回転速度は25000rpm程度まで上昇する。
《テクスチャー》
(1)テクスチャーは、リングとリング上を滑走するトラベラとの摺動面の少なくとも一部に設けられているとよい。例えば、リングにテクスチャーを設ける場合、テクスチャーはリングの全面にあってもよいが、少なくとも、フランジの内側(さらにはその下部)面にあるとよい。
(2)テクスチャーは、複数の凹部と凸部が配設されてなる。テクスチャーが形成される領域(サイズ)は、リングとトラベラの摺動態様に応じて調整される。例えば、テクスチャーは、トラベラが主に接触しているリングの部位にあるとよい。その部位は、例えば、幅が1〜5mmさらには2〜3mmの環状に形成されているとよい。
テクスチャーに形成される凹部(または凸部)は、例えば、顕微鏡観察した視野内(263μm×350μm)に、15〜25個さらには17〜22個の密度で存在するとよい。凹部の有無は、例えば、その略中央(縦断面(摺動間に直交する断面)の最深部)が視野内にあるか否かにより判断される。
複数の凹部は、規則的に配置されてもよいし、不規則に配置されてもよい。規則的な配置は、例えば、碁盤目状でもよいし、千鳥状(列間で交互にずらして配置する状態)でもよい。各凹部は、同形状でも異形状でもよい。同形状の凹部は、各凹部が同サイズでも異サイズでもよい。
凹部の隣接間隔は、各凹部の最深部間の距離とする。上述した視野内にある複数の凹部については、それらの略中央を通過する直線(任意な1本)を引き、その直線上にある隣接間隔(中心間距離)の算術平均値を「隣接間隔」(単に「ピッチ」という。)とする。こうして求まるピッチは、例えば、40〜100μm、45〜90μmさらには55〜80μmであるとよい。凹部は規則正しく設けられているとよい。なお、本明細書でいう各寸法精度(公差)は、対象寸法の±20%程度である。
凹部の開孔形態(最表面の周縁形状)は、円形状、楕円形状、方形状等のいずれでもよい。その代表例は円形状である。凹部の大きさは、湾曲状の凸部を形成する前の状態(単に「窪み」という。)の最長幅により指標される。上述した視野内にある複数の凹部については、各窪みの最長幅の算術平均値(窪みが円形状か否かを問わず、単に「窪み径」という。)により凹部の大きさを指標する。窪み径は、例えば、10〜80μmさらには30〜60μmであるとよい。
凹部の深さも同様に、凸部の形成前の窪みについて、周縁から最深部までの深さ(最深長)により指標される。上述した視野内にある複数の凹部については、各窪みの最深長の算術平均値(単に「窪み深さ」という。)により凹部の深さを指標する。窪み深さは、例えば、2〜12μmさらには4〜10μmであるとよい。
凸部の曲率半径は、凹部の縦断面に基づいて、その頂点(最表面)付近の曲線から定める。具体的にいうと、その頂点付近の曲線を近似した円弧の半径を凸部の曲率半径とした。円弧近似は最小二乗法により行った。凸部の頂点は、その凸部の周辺にある平面(基準平面)との接点とした。基準平面は、例えば、凸部の周辺にある3つ以上の凹部(開口縁)に接する(または最近接した)平面である。
上述した視野内にある複数の凸部については、複数の凹部の中央を通過する一つの縦断面上に現れた各凸部の曲率半径の算術平均値を、本明細書でいう「曲率半径」とする。こうして求まる曲率半径は、例えば、40〜400μm、45〜370μm、50〜330μmさらには80〜280μmであるとよい。
(3)テクスチャーの形成方法は種々あり得る。テクスチャーは、例えば、リングの被処理面に複数の窪みを形成する第1工程と、その窪みの周縁および/または窪みの隣接間面を丸める第2工程とを経て形成されるとよい。
第1工程は、例えば、リングやトラベラとなる基材の被処理面へ、高エネルギービーム(例えばレーザ、電子ビーム等)を照射してなされる。高エネルギービームとして、例えば、短パルス幅(フェムト秒、ピコ秒、ナノ秒等)のパルスレーザを利用できる。一例として、パルス幅が、例えば、1〜100nsさらには5〜50nsのナノ秒パルスレーザを用いるとよい。
第2工程は、例えば、第1工程で窪みを形成した表面を研磨してなされる。研磨は、機械研磨でも化学研磨(エッチング等)でもよい。遊離砥粒を用いた機械研磨は、噴射加工(ショットブラスト、ショットピーニング等)、バレル加工、ラッピング、ポリッシング等によりなされる。研磨は、第1工程で形成された窪みを消失させず、その隣接間に湾曲状の凸部を形成できるように、適切な砥粒(材質、粒形、粒径等)と工法(工具、装置等)が選択されとよい。第2工程は、例えば、第1工程後の被処理面へ、研磨材を投射してなされるブラストまたはラッピングによりなされるとよい。
研磨の種類や研磨量(時間)等の選択や調整により、テクスチャー(凸部と凹部)の形態を制御し得る。例えば、単位面積あたりの研磨時間(量)を増加させると、概ね、凸部の曲率は大きく(曲率半径は小さく)なり、凹部は浅くなり得る。
《クロムめっき層》
摺動面は、クロムめっき層からなるとよい。クロムめっき層は、摺動面の摺動特性(耐摩耗性等)を向上させ得る。上述したテクスチャーは、そのクロムめっき層上に形成されているとよい。但し、テクスチャーの加工自体は、クロムめっき後になされても、クロムめっき前になされていてもよい。本明細書でいう「クロムめっき」は、いわゆる硬質クロムめっき(機能性クロムめっき、工業用クロムめっき(JIS)ともいう。)であるとよい。
クロムめっき層の膜厚は、例えば、3〜20μmさらには10〜15μmであるとよい。クロムめっきの硬さは、例えば、850〜1050HVさらには900〜1000HVであるとよい。クロムめっき層の硬さと耐摩耗性との相関は必ずしも明確ではないが、硬さが過小では耐摩耗性の向上が望めず、硬さが過大では相手材(トラベラ)の摩耗量を増大させ得る。
《その他》
(1)リングやトラベラは、その材質を問わない。リングは、例えば、炭素鋼や合金鋼からなるとよい。トラベラは、例えば、ばね鋼、高炭素鋼からなるとよい。トラベラは、熱処理(酸化処理)により摺動相手(リング)との凝着が防止され得る。
(2)糸(繊維)
トラベラと摺接する糸は、その種類を問わない。敢えていうなら、大気中の無液潤滑下(ドライ状態)で、潤滑成分を自然供給し得る糸、例えば、綿、麻、シルク、ウール、化学繊維(ニトロセルロース、ナイロン、ビニロン等)などが紡績対象として好ましい。
リング等は、細糸の精紡に限らず、太糸の精紡に用いられてもよい。太糸を精紡する際に重量級トラベラを用いる場合でも、本発明に係るリングと組み合わせれば、所望の摺動特性が確保され得る。
《概要》
摺動面となる基板の被処理面に、クロムめっき後にテクスチャーを形成したディスク(試料)を複数製作した。各ディスクとボールを用いて、非液潤滑下(ドライ状態)の摺動特性(低摩擦摺動距離)を、ボールオンディスク摩擦試験(単に「BOD試験」という。)により評価した(基礎試験)。
また、テクスチャーが形成された摺動面を有するリングをリング精紡機(単に「実機」という。)に装着して、テクスチャーの摺動特性への影響を実機により評価した(実機試験)。これらの具体例に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。
[基礎試験]
《試料の製造》
(1)基板
精紡機用リングに用いられる軸受鋼(JIS SUJ2)からなる基板を用意した(φ30mm×厚さ5mm)。基板の被処理面は、鏡面仕上げにより表面粗さをRa0.08μmとした。
(2)クロムめっき
その被処理面にクロムめっきを施した。クロムめっきは、高速浴を使用して、電気めっきにより行った。いずれの試料も、クロムめっき層の膜厚は約13μmとした。膜厚は、摺動試験後の摩耗痕を、CSM社製Calotestで測定して求めた。
(3)テクスチャー
クロムめっき層上の中央域(中心を囲む□10mmの領域)に、次のようにテクスチャーを形成した。先ず、ナノ秒パルスレーザまたはフェムト秒パルスレーザを用いて、クロムめっき層上に、開孔が略円形状の窪み(略半球状)を規則的(周期的)に形成した(第1工程)。各窪みは千鳥状に交互配置した。窪みの大きさは、試料毎に変更したが、同一試料中では同じにした。同サイズの窪みを千鳥状に配設した一例を図2Aに示した。各試料で形成した窪みの形態(窪み径:D、ピッチ(隣接間隔):P、深さ:H)は、表1にまとめて示した。なお、交互に配列された窪みの列間隔は半ピッチ(P/2μm)とした。また、比較のため、テクスチャーを形成しない試料も用意した。
次に、窪みを形成した被処理面を研磨加工した(第2工程)。研磨加工は、鏡面加工装置(株式会社ヤマシタワークス製AERO LAP)を用いて行った。具体的にいうと、図2Bに示すように、研磨材(同社製MultiCone)を被処理面へ投射して行った。研磨材は、ダイヤモンド粒子(粒径:2〜4μm)が食品素材からなるコアに付着された砥粒(粒径:数mm)からなる。
研磨材は、コンベア速度:120mm/s(一定)で供給して投射した。研磨度合は、被処理面に対するノズルの相対移動速度(「走査速度」という。)により調整した。なお、研磨材は、被処理面に対して約45°方向から投射した。このときノズルの先端と被処理面の距離は約50mmとした。
レーザ加工(第1工程)後と研磨加工(第2工程)後とで、テクスチャーの形態が変化する様子を図2Cに模式的に示した。研磨加工により、窪みの隣接間に形成されていた平坦面は、湾曲した凸部となり、元の窪みは外周縁(表面側)が丸められた凹部となった。
走査速度により、凸部と凹部の形態が変化する様子を図3に例示した。図3に示したプロフィルは、研磨加工後の基板表面の縦断面を三次元形状測定機(ZYGO社製NewView5022)で測定して得た。図3から明らかなように、走査速度が小さくなるほど、投射された砥粒とレーザ加工後の単位表面との接触時間が長くなるため、テクスチャーは、曲率半径の小さい凸部と浅い凹部が滑らかに連なった形態となる。
各試料について、図3に示したように測定・観察して得られた凸部の曲率半径を表1に併せて示した。なお、曲率半径は、既述したように、各凸部の頂点付近の曲線(曲面)を近似した円弧の半径とした。
《摺動試験》
各試料のディスク上でボールを摺動させるボールオンディスク試験(BOD試験/基礎試験)を、CSM社製トライボメータを用いて行った。この試験の様子を図4に模式的に示した。用いたボール(φ6mm)は、軸受鋼(JIS SUJ2)からなり、その表面粗さは0.08μmRzjis、その表面硬さはHV800(試験荷重:100g)であった。
摺動試験は、試験荷重:4N(ヘルツ面圧(最大値):1036MPa)、すべり速度:0.2m/s、摺動環境:大気中で無潤滑液状態(ドライ状態)として行った。ボールとディスクの摺動位置は、ディスクの中心から4mm(摺動半径)の円上とした。摩擦係数(μ)は、ボール側に取り付けた摩擦抵抗センサーから求まる測定値(摩擦力)と試験荷重とから算出した。
摺動試験は次のようにして行った。先ず、各試料のディスクとボールをドライ状態で直接接触させて摺動させる。この状態で5m摺動させた後、摺動部にセルロースを供給して、さらに100m(全摺動距離:105m)摺動させた。
セルロースの供給は、セルロース粉(日本製紙株式会社製KCフロック/平均粒径24μm)を溶媒(ハイドロフルオロエーテル(COCH)/3M株式会社製ノベック7100)に分散させた懸濁液を滴下して行った。懸濁液は、セルロース粉:溶媒=122mg:25mLで配合し、超音波洗浄機で撹拌して調製した。滴下量は、一試験あたり200μLとした。滴下した懸濁液はディスク上で広がり、自然乾燥した。
こうして各試料について、摺動距離に対する摩擦係数の変化を測定した。測定結果(グラフ)の一例を図5Aに示した。各試料について、摩擦係数がセルロースの滴下により一旦低下した後、0.6にまで戻ったときの距離(μ≦0.6摺動距離)を各グラフから求めた。その結果を表1と図5Bにまとめて示した。
摺動試験後のボールの摺動面にできた摩耗径を測定した。摩耗径は、セルロースの滴下後の摺動距離が10m(全摺動距離:15m)のときと、その滴下後の摺動距離が100m(全摺動距離:105m)のときと、についてそれぞれ測定した。一部の試料について、ボールの摩耗径をボールの摩耗深さ(直径の減少分)に換算して、図6に示した。
さらに、その摺動距離が10m(全摺動距離:15m)となった後のディスクの摺動面を観察したSEM像(試料6)を図7に示した。
《評価》
(1)表1および図5A、図5Bから明らかなように、摺動面に形成されたテクスチャーの凸部の曲率半径(R)と、μ≦0.6となるまでの摺動距離との間には相関があった。すなわち、曲率半径(R)が所定範囲内にあるとき、摺動距離は顕著に増加することがわかった。
(2)図6から明らかなように、その曲率半径(R)が所定範囲内にあるとき、摺動相手であるボールの摩耗量も少なくなることがわかった。従って、曲率半径(R)が所定範囲内の凸部を有するテクスチャーを摺動面に設けることにより、摺動特性が大幅に改善されることがわかった。なお、図5Aや図7等からわかるように、その摺動特性には、テクスチャーを有する摺動面に捕捉される繊維(本実施例ではセルロース)が関与していると推察される。
[実機試験]
(1)条件
表2に示すテクスチャーを摺動面に有するリングと、トラベラとを実機(株式会社豊田自動織機製リング精紡機RX240)に組み込んで、トラベラが寿命に到達するまでの摺動距離を求めた。その結果を表2にまとめて示した。なお、このとき、実機は、ドライ環境下で、最高回転速度:21000rpmで運転した。またトラベラの寿命は、トラベラの初期厚さ(t)が1/2(0.5t)になったときとし、そのときまでの摺動距離により示した。
同様なテクスチャーを有するディスクを用意して、基礎試験と同様にBOD試験に供した。このときの試験荷重は2N(ヘルツ面圧(最大値):822MPa)とした。こうして摩擦係数が0.8〜0.9に復帰するまでの摺動距離を各試料について求めた。その結果を表2に併せて示した。なお、摺動半径(ディスクとボールの摺動位置)は、4mmおよび8mmとした。摺動半径を8mmとしたとき、ディスクの形成領域は、中心を囲む□20mmの領域とした。
ちなみに、上記のBOD試験は、ドライ状態で5m摺動させた直後に、回転しているディスク中央に、セルロース粉100mgを滴下して行った。セルロース粒は外周方向に飛散しつつ、ボール(鋼球)に衝突する。ディスクとボールにより圧下されたセルロース粒は、ディスクとボールの摺動を潤滑する。セルロース粒は、飛散速度の相違により、摺動半径の小さい領域(4mm)の方よりも、摺動半径の大きい領域(8mm)へ多く供給される。このため前者の領域より後者の領域で、セルロース粒による潤滑性が高くなる。
(2)結果
表2に示したBOD試験と実機試験との結果を図8にまとめて示した。図8から明らかなように、同様なテクスチャーを摺動面に形成した場合、両試験の結果に相関があることが確認された。つまり、BOD試験が実機試験を代用し得ることが確認された。
[補足試験]
摺動距離を延長したBOD試験(試験荷重4N)を行った。その結果を図9Aに示した。このとき用いたディスクの摺動面にも、レーザ加工により形成した窪み(D:40μm、P:70μm、H:4μm)に研磨加工を行ってテクスチャーを形成しておいた(凸部の曲率半径R:86μm)。
その試験後の摺動面のSEM像を図9Bに示した。また、その試験後のボールの摺動面にできた摩耗径は347μm(摩耗深さに換算すると5μm)であった。ちなみに、テクスチャーがないディスクを用いた場合、摺動距離が100mのときのボールの摩耗径は412μm(摩耗深さ:7.1μm)、摺動距離が200mのときのボールの摩耗径は463μm(摩耗深さ:8.9μm)であった。
これらのことからも、曲率半径が所定範囲内にある凸部を有するテクスチャーが摺動面に形成されていると、繊維による潤滑効果を安定的に発揮されて、低摩擦な摺動距離が延長され、相手材の摩耗も抑制されることが明らかになった。
Figure 2021179032
Figure 2021179032
11 リング
12 トラベラ
13 クロムめっき層

Claims (6)

  1. トラベラを介して糸を巻き取る精紡機に用いられ、該トラベラが摺動する摺動面を有するリングであって、
    該摺動面は、複数の凹部と該凹部の隣接間にある湾曲状の凸部とを有するテクスチャーを備え、
    該凸部は、曲率半径が40〜400μmである精紡機用リング。
  2. 前記凹部の隣接間隔は、40〜100μmである請求項1に記載の精紡機用リング。
  3. 前記摺動面は、クロムめっき層からなる請求項1または2に記載の精紡機用リング。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の精紡機用リングの製造方法であって、
    前記摺動面は、前記リングの被処理面に複数の窪みを形成する第1工程と、
    該窪みの周縁および/または該窪みの隣接間を丸める第2工程とを経て得られる精紡機用リングの製造方法。
  5. 前記第1工程は、前記被処理面へレーザを照射してなされる請求項4に記載の精紡機用リングの製造方法。
  6. 前記第2工程は、前記第1工程後の被処理面へ、研磨材を投射してなされる請求項4または5に記載の精紡機用リングの製造方法。
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