JP7163632B2 - リング式紡機のリング/トラベラ系 - Google Patents

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Description

本発明は、リング式紡機のリング/トラベラ系に関する。
リング式紡機のリング/トラベラ系においては、ボビンに糸を巻き取るときに、リング上をトラベラが摺動(滑走)する。その際、トラベラとリングの摺動面では、摩擦による摩耗や焼き付きなどが起こりやすい。特に近年では、リング式紡機の生産性を向上させるために、リング上におけるトラベラの移動速度が高速化され、これによってトラベラやリングの摩耗が早く進行する傾向にある。トラベラやリングの摩耗が早く進行すると、リング/トラベラ系の寿命が短くなり、トラベラ等の部品を頻繁に交換する必要がある。また一般に、トラベラやリングの摩耗は、両者の摺動面に生じる摩擦力が大きいほど早く進行する。そこで、トラベラやリングの摩耗を抑える方法として、たとえば、オイルなどの潤滑液を使用する方法がある。ただし、この方法では、潤滑液の付着によって糸が汚れてしまう。
そこで、特許文献1には、トラベラの滑走時におけるトラベラとリングとの摺動面に400個/cm以上の凹部を有する、非液潤滑環境下で摺動するリング式紡機のリング/トラベラ系に関する発明が記載されている。また、同文献には、上記凹部が、硬質クロムメッキ層の表面に形成されたマイクロクラックである旨が記載されている。同文献に記載の発明によれば、トラベラとリングとの摺動面に複数のマイクロクラックを形成することにより、紡出中に糸から脱落する繊維がマイクロクラックに保持されて薄膜を形成し、この薄膜の潤滑機能によって摩擦低減効果が得られる。このため、リング/トラベラ系の長寿命化を図ることができる。
特開2014-29046号公報
しかしながら、本願の発明者らが、特許文献1に記載の発明について鋭意検討したところ、次のような新たな課題があることが分かった。
すなわち、同文献に記載の発明では、トラベラとリングとの摺動面に400本/cm以上のマイクロクラックを形成するため、マイクロクラックの存在によって摺動面の面粗度が増大する。そうすると、リング上をトラベラが滑走するときの初期の滑走抵抗が高くなり、所望の摩擦低減効果が得られるまでの時間、すなわち慣らし運転時間が長くなってしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、リング/トラベラ系の長寿命化と慣らし運転時間の短縮化を同時に実現することができる、リング式紡機のリング/トラベラ系を提供することにある。
本発明は、非液潤滑環境下で摺動するリング式紡機のリング/トラベラ系において、トラベラの滑走時における前記トラベラとリングとの摺動面に長さや方向がランダムな複数のマイクロクラックを有するとともに、前記複数のマイクロクラックにおけるクラック幅の平均値が0.6μm以上1.5μm以下であり、かつ、前記複数のマイクロクラックにおけるクラック本数の平均値が400本/cm未満である、リング式紡機のリング/トラベラ系である。
本発明のリング式紡機のリング/トラベラ系において、前記複数のマイクロクラックにおけるクラック幅の平均値は0.7μm以上であってもよい。
本発明のリング式紡機のリング/トラベラ系において、前記複数のマイクロクラックにおけるクラック本数の平均値は380本/cm以下であってもよい。
本発明のリング式紡機のリング/トラベラ系において、複数のマイクロクラックにおけるクラック幅の平均値の上限値は1μm未満であってもよい。
本発明によれば、リング/トラベラ系の長寿命化と慣らし運転時間の短縮化を同時に実現することができる。
リング式紡機のリング/トラベラ系の構成例を示すもので、(a)はリングの斜視図、(b)はリングの部分拡大斜視図、(c)は紡出中のトラベラとリングの関係を模式的に示す斜視図である。 摩擦低減部の模式図である。 従来例、実施例および比較例の評価結果を示す図である。 滑走抵抗と滑走距離との関係を示す図である。 従来例に相当するリングのメッキ表面を電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。 実施例に相当するリングのメッキ表面を電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。 リング上のトラベラ摩耗粉を電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、リング式紡機のリング/トラベラ系の構成例を示すもので、(a)はリングの斜視図、(b)はリングの部分拡大斜視図、(c)は紡出中のトラベラとリングの関係を模式的に示す斜視図である。「リング式紡機」とは、リングレールに支持されて昇降するリング上を滑走するトラベラを介して糸の巻き取りを行うリング精紡機、リング撚糸機等の紡機を意味する。
図1(a)~(c)において、リング11およびトラベラ12は、リング/トラベラ系を構成するものである。リング11は、たとえば、軸受鋼によって構成されている。リング11には、フランジ11aが形成されている。フランジ11aは、リング11と一体構造をなして断面T字形に形成されている。
一方、トラベラ12は、たとえば、酸化処理したばね鋼によって構成されている。トラベラ12は、C字形に形成されている。トラベラ12は、リング11のフランジ11aに取り付けられている。
リング11のフランジ11aの表面にはクロムメッキ層13が形成されている。クロムメッキ層13は、好ましくは硬質クロムメッキ層であって、たとえば厚さが10~20μm程度に形成されている。硬質クロムメッキ層とは、JIS H8615 工業用クロムめっきにおいて規定されるメッキ層をいう。フランジ11aを被覆するクロムメッキ層13のうち、少なくとも、フランジ11aの内周面を被覆するクロムメッキ層13の表層部分には、摩擦低減部14が形成されている。摩擦低減部14は、クロムメッキ層13の一部であって、リング11上をトラベラ12が摺動するときに生じる摩擦力を低減する部分である。摩擦低減部14による摩擦低減のメカニズムについては後段で説明する。
リング式紡機でボビンに糸を巻き取る場合は、図1(c)に示すように、トラベラ12に糸Yが通される。糸Yは、図示しないドラフト装置から送り出され、トラベラ12を経由してボビン(不図示)に巻き取られる。その際、トラベラ12に通される糸Yには所定の張力が付与される。このため、トラベラ12は、糸Yに引っ張られてリング11のフランジ11aに接触し、その接触状態を維持しながらフランジ11aに沿って周回移動する。このため、ボビンに糸Yを巻き取っている間、すなわち紡出中は、トラベラ12上をリング11が摺動(滑走)する。
ここで、トラベラ12の滑走時におけるトラベラ12とリング11との摺動面は、リング11とトラベラ12が互いに接触する面となる。このため、トラベラ12とリング11との摺動面は、リング11とトラベラ12の両方に存在する。本実施形態においては、一例として、トラベラ12に対するリング11の摺動面を摩擦低減部14としている。具体的には、リング11のフランジ11aの内周面をクロムメッキ層13で被覆し、そのクロムメッキ層13の表面に摩擦低減部14を形成した構成を採用している。このため、本実施形態では、フランジ11aの内周面を被覆するクロムメッキ層13の摩擦低減部14が、トラベラ12とリング11との摺動面に相当する。
クロムメッキ層13の摩擦低減部14には、図2に示すように複数のクラック15が形成されている。複数のクラック15の長さや方向はランダムである。クラック15はJIS H8615 工業用クロムめっきにおいて規定されている、250本/cm以上のクラック、すなわちマイクロクラックであることが好ましい。
本実施形態においては、摩擦低減部14に形成される複数のクラック15が、以下の2つの条件を同時に満たす。
(条件1)複数のクラック15におけるクラック幅の平均値が0.5μm以上、1.5μm以下であること。
(条件2)複数のクラック15におけるクラック本数の平均値が400本/cm未満であること。
クラック幅は、たとえば、クロムメッキ層13の摩擦低減部14の表面を顕微鏡で撮影し、これによって得られた顕微鏡写真に写っているクラック15の幅を顕微鏡のスケールバー等を利用して測定することにより特定可能である。
クラック本数は、たとえば、クロムメッキ層13の摩擦低減部14の表面を顕微鏡で撮影し、これによって得られた顕微鏡写真に直線を引いて、1cmの長さの部分の直線と交差するクラック15の本数を数えることにより特定可能である。その際、クラック15の長さや方向はランダムであるため、顕微鏡写真のどの位置に直線を引くかは特に条件を付ける必要はない。
クロムメッキ層13の摩擦低減部14において、複数のクラック15におけるクラック幅およびクラック本数は、いずれも、正規分布またはそれに近い分布でばらつく。
ところで、リング11にクロムメッキ処理によってクロムメッキ層13を形成する場合、クロムメッキ処理だけでは上記2つの条件を同時に満たすクラック15を形成することはできない。このため、本実施形態においては、クロムメッキ処理によってリング11にクロムメッキ層13を形成した後、電解エッチングを行うことにより、上記2つの条件を同時に満たすクラック15を形成することとした。
その際、複数のクラック15におけるクラック幅の平均値が0.5μm以上1.5μm以下となり、かつ、クラック本数の平均値が400本/cm未満となるように、電解エッチングのエッチング条件を決定した。エッチング条件としては、たとえば、電流密度とエッチング時間を挙げることができる。
ここで、クラック幅の平均値が0.5μm未満であると、リング11とトラベラ12の摺動面に発生する摩耗粉の粒径に対してクラック15の幅が過度に小さくなる。このため、摺動面に発生する摩耗粉をスムーズにクラック15に逃がすことができなくなる。また、比較的粒径の小さい摩耗粉であればクラック15に逃がすことができるものの、幅狭のクラック15では受け入れ可能な摩耗粉の量が少ないため、クラック15が短期間で摩耗粉によって埋められてしまう。これに対し、クラック幅の平均値を大きくすれば、摺動面に発生する摩耗粉をスムーズにクラック15に逃がすことができるとともに、マイクロクラックが摩耗粉によって埋められるまでの期間を長く確保することができる。ただし、クラック幅の平均値が1.5μmを超えると、幅広のクラック15の存在によって摩擦低減部14の表面の凹凸が顕在化し、リング11とトラベラ12の摺動面で摩耗が起こりやすくなる。したがって、クラック幅の平均値は、0.5μm以上1.5μm以下が好ましいものとなる。また、摩耗粉をクラック15に素早く逃がすためには、クラック幅の平均値は0.6μm以上であることがより好ましく、0.7μm以上であることが更に好ましい。また、摺動面で摩耗の発生を抑えるためには、クラック幅の平均値は1.3μm以下であることがより好ましく、1.2μm以下であることが更に好ましい。
一方、クラック本数に関しては、クラック本数の平均値が400本/cm以上であると、摩擦低減部14の面粗度が高くなり、これにともなってリング式紡機の慣らし運転時間が長くなる。面粗度は、物体表面の性状を表す用語であり、物体表面における単位長さあたりの凹凸の数で評価される。すなわち、物体表面における単位面積あたりの凹凸の数が多いほど面粗度は高くなり、該凹凸の数が少ないほど面粗度は低くなる。このため、クラック本数の平均値を400本/cm以上に増やすと、それだけ摩擦低減部14の面粗度が高くなる。
これに対し、慣らし運転時間とは、それぞれ新品のリング11とトラベラ12を使用してボビンに糸を巻き取る場合に、摩擦低減部14が所望の摩擦低減効果を発揮するまでに要する時間をいう。この慣らし運転時間を短くするには、初期の滑走抵抗が小さくなるよう、摩擦低減部14の面粗度を低くしたほうが有利である。初期の滑走抵抗は、新品のリング11上をトラベラ12が滑走するときに生じる滑走抵抗であって、特に、滑走距離が0km超500km以下の範囲における滑走抵抗を意味する。摩擦低減部14の表面に多数の凹凸が存在すると、初期の滑走抵抗が高くなるとともに、後述する摩擦低減のメカニズムで述べる、セルロースの繊維が摩擦低減部14の表面全体に行き渡るまでの時間、すなわち所望の摩擦低減効果が得られるまでの時間が長くなる。このため、クラック本数の平均値は400本/cm未満であることが好ましい。また、クラック15による面粗度の増大を抑えるためには、クラック本数の平均値は380本/cm以下であることがより好ましく、370本/cm以下であることが更に好ましい。ただし、クラック本数の平均値が過度に小さくなると、セルロースの繊維を保持するクラック15の本数が不足して、摩擦低減部14による摩擦低減効果が充分に得られないおそれがある。このため、クラック本数の平均値は250本/cm以上であることが好ましく、300本/cm以上であることがより好ましい。
ここで、摩擦低減部14による摩擦低減のメカニズムについて説明する。
まず、本実施形態においては、リング11とトラベラ12との摺動面が、非液潤滑環境下で摺動する下で摺動する面となっている。非液潤滑とは、液状の潤滑剤が存在しない状態をいう。一般に、非液潤滑の下で金属同士を摺動させると、摺動面で激しい摩耗が起こる。特に、リング/トラベラ系では、リング11上をトラベラ12が高速で周回移動するため、両者の摺動面で摩耗が急速に進行し、数分から数時間で焼き付きが起こると予想される。しかし、現実のリング/トラベラ系では、予想に反して摩耗の進行が遅い。たとえば、綿糸紡績では通常、1週間から2週間ほど交換なしでトラベラ12を使用できることが多い。このため、リング11とトラベラ12との摺動面は、トライボロジー的には無潤滑ではなく、境界潤滑状態にあると考えられる。本発明者らが行った分析では、リング11上でトラベラ12が滑走する滑走表面にセルロースの被膜が形成され、この被膜が潤滑機能を果たすことによって摩擦低減効果が得られることが分かっている。セルロースは、糸Yの原料となる綿花などに含まれるものである。このため、紡出中にトラベラ12を通過する糸Yからセルロースの繊維が離脱し、この繊維がリング11とトラベラ12との接触界面、すなわち摺動面に入り込んで被膜を形成したものと推測される。
本実施形態のリング/トラベラ系においては、トラベラ12の滑走時におけるリング11とトラベラ12との摺動面に、複数のクラック15が形成されている。このため、糸Yから離脱したセルロースの繊維が、リング11とトラベラ12との摺動面に入り込むと、その摺動面に形成されている各々のクラック15に繊維が付着保持され、その繊維に含まれる潤滑成分(主に炭素)が薄く膜状に広がる。その結果、リング11とトラベラ12との摺動面に、セルロースの繊維による被膜が形成され、この被膜の潤滑機能によって摩擦低減効果が得られる。したがって、非液潤滑の下でも、リング11とトラベラ12との摺動面に生じる摩擦力を低減し、リング11やトラベラ12の摩耗を抑えることができる。
本発明らは、摩擦低減部14による摩擦低減効果を確認するため、クラック15の形成条件が異なる4つのリング11を用いて部品の寿命を評価した。その結果を図3および図4に示す。
図3においては、評価の対象品を、従来例、実施例、比較例1、比較例2に分けて記載している。従来例は、リング11の表面をクロムメッキ処理しただけのものである。実施例は、リング11の表面をクロムメッキ処理した後、電流=2A、エッチング時間=120secの条件で電解エッチング処理したものである。比較例1は、リング11の表面をクロムメッキ処理した後、電流=4A、エッチング時間=120secの条件で電解エッチング処理したものである。比較例2は、リング11の表面をクロムメッキ処理した後、電流=4A、エッチング時間=240secの条件で電解エッチング処理したものである。
図5は、従来例に相当するリングのメッキ表面を電子顕微鏡で観察した結果を示す図であり、図6は、実施例に相当するリングのメッキ表面を電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。また、図7は、リング上のトラベラ摩耗粉を電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。図5および図6を対比すると分かるように、従来例ではメッキ表面のクラックがはっきり見えないが、実施例ではメッキ表面のクラックがはっきりと見える。その理由は、クロムメッキ処理によってクロムメッキ層13の表面に生じた微細なクラックの寸法が、電解エッチングによって幅方向と深さ方向に拡大したためと考えられる。一方、リング11とトラベラ12の摺動面に生じる摩耗粉は、図7に示すように、摩耗粉の粒径に若干のバラツキがあるものの、全体的には粒径が揃う傾向が見られる。
上述した処理条件の違いにより、クラック幅の平均値に関しては、従来例が0.5μm未満、実施例が0.74μm、比較例1が1.07μm、比較例2が2.01μmとなっている。また、クラック幅の標準偏差に関しては、実施例が0.26μm、比較例1が0.42μm、比較例2が0.83μmとなっている。一方、クラック本数の平均値に関しては、従来例が151.5本/cm、実施例が356.5本/cm、比較例1が573.8本/cm、比較例2が896.9本/cmとなっている。また、クラック本数の標準偏差に関しては、従来例が51.0本/cm、実施例が56.0本/cm、比較例1が139.0本/cm、比較例2が127.2本/cmとなっている。
一方、部品の寿命は、ボビンの回転速度を決めるスピンドルの回転数を20000rpmに設定し、リング11上を摺動しながら周回するトラベラ12が摩耗によってフランジ11aから外れるまでのトラベラの滑走距離で評価した。その結果、部品の寿命に関しては、従来例が1890km、実施例が7091km以上、比較例1が7091km以上、比較例2が3072kmであった。なお、実施例と比較例1は、いずれも寿命が7091km以上となっているが、これはトラベラの滑走距離が7091kmとなった時点で評価試験を打ち切ったためである。
上記評価結果から分かるように、実施例および比較例1では、従来例に比べて部品の寿命が3倍超も延びている。ただし、比較例1の場合は、クラック本数の平均値が573.8本/cmと大きな値になっている。このため、比較例1では、摩擦低減部14の面粗度が増大し、慣らし運転時間が長くなってしまう。
図4においては、縦軸にトラベラの滑走抵抗(gf)、横軸にトラベラの滑走距離(km)をとり、従来例、実施例、比較例1、比較例2の各々につき、滑走距離が長くなるに従って滑走抵抗がどのように変化するかを示している。滑走抵抗は、リングを回転可能に支持し、その状態でトラベラによりリングに与えられる連れ回り力をロードセルで計測して求めた。その結果、従来例では滑走距離が1000kmを超えた段階で滑走抵抗が急激に上昇し始めて部品が寿命に達し、比較例2でも滑走距離が2000kmを超えた段階で滑走抵抗が急激に上昇し始めて部品が寿命に達した。
これに対して、実施例では、滑走距離が2000kmを超えても滑走抵抗の急激な上昇は認められず、この傾向は滑走距離が7000kmを超えた段階でも維持された。また、比較例1では、実施例に比べると滑走抵抗のバラツキが大きいものの、寿命に関しては実施例と同様の評価結果となった。ただし、初期の滑走抵抗を比較すると、実施例のほうが比較例1に比べて滑走抵抗が小さく抑えられていた。その理由としては、実施例の場合は、比較例1に比べてクラック本数の平均値が小さく、これによって摩擦低減部14の面粗度の増大が抑えられたためと推測される。
<実施形態の効果>
本発明の実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
本実施形態においては、リング11とトラベラ12との摺動面に形成される複数のクラック15におけるクラック幅の平均値を0.5μm以上1.5μm以下としている。これにより、リング11とトラベラ12の摺動面に発生する摩耗粉をスムーズにクラック15内に逃がすことができるとともに、クラック15が摩耗粉によって埋められない状態を長く維持することができる。したがって、摩擦低減部14による摩擦低減効果を高めることができるとともに、高い摩擦低減効果を長く維持することができる。また、本実施形態においては、複数のクラック15におけるクラック本数の平均値を400本/cm未満としている。このため、摩擦低減部14の面粗度の増大を抑えて初期の滑走抵抗を低減し、セルロースの繊維が摩擦低減部14の表面全体に行き渡るまでの時間を短くすることができる。その結果、本実施形態によれば、リング/トラベラ系の長寿命化と慣らし運転時間の短縮化を同時に実現することが可能となる。
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
たとえば、上記実施形態においては、リング11のフランジ11aをクロムメッキ層13で被覆しているが、これに限らず、フランジ11aを含むリング11全面をクロムメッキ層13で被覆した構成を採用してもよい。
また、上記実施形態においては、リング11にクロムメッキ処理によってクロムメッキ層13を形成した後、電解エッチングを施すこととしたが、これに限らず、たとえば、電解エッチングに代えて化学エッチングを適用してもよい。
また、上記実施形態においては、リング11およびトラベラ12のうち、リング11側に摩擦低減部14を形成したが、これに限らず、トラベラ12側に摩擦低減部14を形成してもよいし、リング11とトラベラ12の両方に摩擦低減部14を形成してもよい。
また、紡出する糸は綿に限らず、たとえば、麻、シルク、ウール、化学繊維(ニトロセルロース、ナイロン、ビニロン)であってもよい。
また、リング/トラベラ系を構成するリング11は、断面T字形のフランジ11aを有するものに限らず、たとえば、傾斜型のフランジを有するものであってもよい。その場合は、傾斜型のフランジに適合する形状のトラベラを使用することになる。
11 リング、12 トラベラ、14 摩擦低減部(摺動面)、15 クラック。

Claims (4)

  1. 非液潤滑環境下で摺動するリング式紡機のリング/トラベラ系において、トラベラの滑走時における前記トラベラとリングとの摺動面に長さや方向がランダムな複数のマイクロクラックを有するとともに、前記複数のマイクロクラックにおけるクラック幅の平均値が0.6μm以上1.5μm以下であり、かつ、前記複数のマイクロクラックにおけるクラック本数の平均値が400本/cm未満であることを特徴とするリング式紡機のリング/トラベラ系。
  2. 前記複数のマイクロクラックにおけるクラック幅の平均値が0.7μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のリング式紡機のリング/トラベラ系。
  3. 前記複数のマイクロクラックにおけるクラック本数の平均値が380本/cm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のリング式紡機のリング/トラベラ系。
  4. 前記複数のマイクロクラックにおけるクラック幅の平均値の上限値は1μm未満であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のリング式紡機のリング/トラベラ系。
JP2018120701A 2018-06-26 2018-06-26 リング式紡機のリング/トラベラ系 Active JP7163632B2 (ja)

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