JP3857590B2 - 硬質クロムめっき摺動部材、ピストンリング、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬質クロムめっき摺動部材、ピストンリング、及びこれらの製造方法に関し、特に水素をめっき被膜中に含有する硬質クロムめっき摺動部材、ピストンリング、及びこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、内燃機関用摺動部材の摺動面に施されるめっき被膜としては、いわゆる硬質チャンネルポーラスめっきが用いられている。硬質クロムめっきでは、めっきの成長時において生じた内部応力を自己解放することにより、めっき被膜にチャンネルポーラス、即ち微細亀裂が発生するが、この微細亀裂を潤滑油溜まりとして利用することで、耐摩耗性、耐スカッフ性の向上を図っている。
【0003】
微細亀裂は硬質クロムめっきの層の外周表面にのみ発生する。従って、硬質クロムめっきが一層のみの摺動部材では、摺動面におけるめっき層が摩耗して亀裂が消えてしまうと、潤滑油溜まりとしての効果を期待することができない。そこで、硬質クロムめっき層を複数層生成することが行われている。各層には亀裂が形成されているため、最外層の摺動面が摩耗するとその下の層の亀裂が現れ、潤滑油溜まりとしての効果の持続を期待することができる。
【0004】
特開2001−89873号公報には、アンダーコート層たる最内層の硬質クロムめっき層と、中間層をなす複数の硬質クロムめっき層と、最外層の硬質クロムめっき層とからなる多層構造のめっき被膜を有するピストンリングが記載されている。中間層をなす複数の硬質クロムめっき層のそれぞれには、微細亀裂が形成されている。最外層は一番厚く、次に最内層が厚く、中間層をなす複数の硬質クロムめっき層の各々は厚さが略同一であり、最外層、最内層よりも薄く構成されている。最外層の外周表面は、摺動面に沿って研磨加工されている。最外層、最内層を厚くすることによって、硬質クロムめっき被膜の疲労強度及び被膜衝撃強度の向上を図っている。
【0005】
国際公開第WO01/48267号公報には、摺動面に複数層の硬質クロムめっき層が積層された摺動部材が記載されている。硬質クロムめっき層の反母材側表面には微細亀裂が形成されており、また、各硬質クロムめっき層内には、各めっき層の積層方向に独立した微小な空洞が形成されている。複数の硬質クロムめっき層からなる積層硬質クロムめっき層の断面及び表面における空孔率や微細亀裂の数を所定の値に限定することで、耐摩耗性、耐焼き付き性、耐剥離性を向上させている。
【0006】
これらの公報以外にも、例えば、特開平10−53881号公報、特許公報第2602499号に、微細亀裂が形成された複数の硬質クロムめっき層からなる積層構造の硬質クロムめっき被膜が設けられた摺動部材が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開2001−89873号公報記載のピストンリングでは、主として疲労強度及び被膜衝撃強度の向上が図られており、耐摩耗性はそれほど改善されていない。
【0008】
また、国際公開WO01/48267号公報記載の摺動部材では、耐摩耗性、耐焼付性、及び耐剥離性が改善されているが、高温高圧下においてはこれらの性能は改善されていない。即ち、それほど負苛のかからない状況下で摺動部材を用いた場合には、所望の耐摩耗性、耐焼付性、及び耐剥離性を得ることができるのであるが、例えば、この摺動部材によりピストンリングを構成し、高出力、高Pmaxのエンジンに用いた場合には、同公報に記載されているような耐摩耗性、耐焼付性、及び耐剥離性を期待することはできなかった。
【0009】
そこで本発明は、高温、高圧下でも高い耐摩耗性、耐焼付性、及び耐剥離性を有する硬質クロムめっき摺動部材、ピストンリング、及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、母材と、少なくとも該母材表面上の摺動面相当位置に設けられ複数の硬質クロムめっき層からなる積層構造の硬質クロムめっき被膜とを有し、各該硬質クロムめっき層内には、該硬質クロムめっき層の反母材側に開口部が形成された複数の微細亀裂が形成された硬質クロムめっき摺動部材において、該複数の微細亀裂は、隣接する該硬質クロムめっき層内に跨って連続して形成された複数層微細亀裂と、一の層内において閉塞し隣接する他の層に跨らない単一層微細亀裂とからなり、該単一層微細亀裂は、該硬質クロムめっき層の積層方向の断面における面積比で1.5〜35.0%形成され、該複数層微細亀裂は、該硬質クロムめっき層の積層方向の断面における面積比で0.5〜25.0%形成され、微細亀裂全体としては面積比で2.0〜40.0%形成され、該硬質クロムめっき被膜は水素を0.1〜0.15質量%含んでいる硬質クロムめっき摺動部材を提供している。
【0011】
ここで、各該硬質クロムめっき層の1層間厚さが5.0〜30.0μmであり、各該微細亀裂の該開口部の幅の最小値が0.2μm以下であることが好ましい。
【0012】
又は、該複数のクロムめっき層のうちの最外層は厚さが50μm以下であり他の該硬質クロムめっき層よりも厚く、他の該硬質クロムめっき層の厚さが5.0〜30.0μmであり、各該微細亀裂の該開口部の幅の最小値が0.2μm以下であることが好ましい。
【0013】
又は、該硬質クロムめっき被膜は3層以上の該硬質クロムめっき層からなり、母材表面上の摺動面相当位置上に直接積層された最内層の該硬質クロムめっき層の厚さは80μm以下であり該複数の硬質クロムめっき層の中で最も厚く、最外層の該硬質クロムめっき層は厚さが50μm以下であり該複数の硬質クロムめっき層の中で2番目に厚く、これら以外の他の該硬質クロムめっき層の厚さは5.0〜30.0μmであり、各該微細亀裂の該開口部の幅の最小値が0.2μm以下であることが好ましい。
【0014】
又は、該硬質クロムめっき被膜は、マイクロビッカース試験方法により測定した硬さがHv900〜Hv1200を有していることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、上述の硬質クロムめっき摺動部材からなるピストンリングを提供している。
【0016】
また、本発明は、上述の硬質クロムめっき摺動部材又はピストンリングを製造するための方法であって、クロムめっき槽中において、母材表面上の摺動面相当位置に対して硬質クロムめっき工程を行った後に、100〜2000マイクロ秒の時間をかけて極性を反転させ、エッチング工程を行い、更に該硬質クロムめっき工程と該エッチング工程とを少なくとも1回繰り返すことにより2層以上の硬質クロムめっき層からなる硬質クロムめっき被膜を生成し、該クロムめっき槽を組成が公知のフッ化浴により構成し、液温を45〜55℃とし、該硬質クロムめっき工程及び該エッチング工程において印加する電流密度を60〜100A/dm2とする硬質クロムめっき摺動部材の製造方法を提供している。
【0017】
更に、本発明は、上述の硬質クロムめっき摺動部材又はピストンリングを製造するための方法であって、クロムめっき槽中において、母材表面上の摺動面相当位置に硬質クロムめっき工程を行った後に、100マイクロ秒以内の時間をかけて極性を反転させ、エッチング工程を行うことにより、母材表面上の摺動面相当位置上に直接厚さが80μm以内の最内層の硬質クロムめっき層を生成し、該最内層の硬質クロムめっき層の上に再び硬質クロムめっき工程を行った後に、100〜2000マイクロ秒の範囲の時間をかけて極性を反転させ、エッチング工程を行うことにより、中間層の硬質クロムめっき層を生成し、更に該中間層の硬質クロムめっき層を生成する該硬質クロムめっき工程と該エッチング工程を少なくとも1回繰り返すことにより、必要な数の中間層及び最外層の硬質クロムめっき層を生成し、該クロムめっき槽を組成が公知のフッ化浴により構成し、液温を45〜55℃とし、該硬質クロムめっき工程及び該エッチング工程において印加する電流密度を60〜100A/dm2とする硬質クロムめっき摺動部材の製造方法を提供している。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態による硬質クロムめっき摺動部材たるピストンリング1について図1に基づき説明する。ピストンリング1は、母材10と、母材10表面上の摺動面相当位置に設けられた硬質クロムめっき被膜20とを備える。母材10は、マルテンサイトステンレス鋼、Si−Cr鋼、オーステナイトステンレス鋼等の従来からピストンリング1の母材10として用いられる素材により構成されている。硬質クロムめっき被膜20は、後述のように少なくとも4層の硬質クロムめっき層により構成されており、いずれの硬質クロムめっき層においても組成がフッ化浴であり、水素を0.1〜0.15質量%(1000〜1500ppm)の量で含有している。この量の水素を含有することで、硬質クロムめっき被膜内の結晶格子が歪んだ状態となっている。
【0019】
硬質クロムめっき被膜は、マイクロビッカース試験方法により測定した場合にHv900〜Hv1200の値の硬さを有している。硬さ試験方法においては、ピストンリングを所望の厚さに切断し、樹脂に埋め込み、切断面を研磨することで試験片を作成した。そしてめっき被膜断面の硬度を確認することで被膜硬さとした。硬さの測定はマイクロビッカース硬さ試験機を用い、荷重50gで行った。めっき被膜は後述するように1層内及び2層間にまたがる微細亀裂(チャンネルポーラス)を有するため、圧痕を打つ位置がチャンネルポーラスを含まないようにして硬度がばらつかないようにする必要がある。圧痕の直下にチャンネルポーラスを含むと、硬さの値は極端に小さくなり、ばらつきが大きくなるため正規な値との差別化は可能である。また、圧痕一部にチャンネルポーラスを含むと圧痕形の対角線長さ比が崩れ、対角線長さが異常な縦横比を示す。以上のようなばらつきの大きい硬さの値は硬さ値としては採用しない。よって硬さは、硬度測定を行いばらつきの大きい値を除いてから平均化した数値とした。
【0020】
硬質クロムめっき皮膜中に所定量の水素を含有することにより、めっき被膜内の結晶格子を歪んだ状態とすることができ、後述の所定の面積比の値を採る微細亀裂と相まって、ピストンリング1に設けられた硬質クロムめっき被膜20を、高温高圧下においても耐摩耗性、耐焼き付き性、耐剥離性に優れたものとすることができる。水素含有量は、0.11〜0.14質量%(1100〜1400ppm)であることがより望ましく、更に、0.115〜0.135質量%(1150〜1350ppm)であることが望ましい。
【0021】
硬質クロムめっき被膜20は、母材表面上の摺動面相当位置上に直接設けられた最内層21をなす一層の硬質クロムめっき層と、中間層22、23をなす2層の硬質クロムめっき層と、最外層24をなす一層の硬質クロムめっき層とが積層された少なくとも4層の積層構造をしている。各硬質クロムめっき層内には、複数の微細亀裂が一様に分布して形成されている。複数の微細亀裂は、複数層微細亀裂20aと単一層微細亀裂20bとからなる。ここで、複数層微細亀裂20aとは、隣接する硬質クロムめっき層内に跨って連続して形成された微細亀裂のことをいい、単一層微細亀裂20bとは一の層内において閉塞し隣接する他の層に跨らない状態で形成されている微細亀裂のことをいう。微細亀裂には開口部が形成されており、開口部は、各硬質クロムめっき層の反母材側表面において開口した状態となっている。反母材側とは、各硬質クロムめっき層を画成する2つの表面のうちの、母材からより離間した位置にある側をいう。
【0022】
より具体的には、微細亀裂は、最内層21においては最内層21の反母材側に開口して形成されており、その直上の中間層22においては、中間層22の反母材側に開口して形成されており、さらにその上に積層されている中間層23においては、中間層23の反母材側に開口して形成されており、最外層24においては、最外層24の反母材側に開口して形成されている。また、最内層21を除けば、硬質クロムめっき層には複数層微細亀裂20aと単一層微細亀裂20bが形成されている。複数層微細亀裂20aの中には、互いに隣接する2層に跨って連続して形成された微細亀裂と、互いに隣接する3層以上に跨って連続して形成された微細亀裂とがある。いずれのタイプの微細亀裂においても、積層された硬質クロムめっき層の反母材側表面において開口している。
【0023】
反母材側表面から見た場合には、開口部は主として細長い溝状に開口している。溝状の開口部どうしが交差することにより網目状となっている部分もある。微細亀裂は、図1に示されるように断面が略V字状をしており、微細亀裂の底の位置は各々異なっている。
【0024】
本実施の形態によるピストンリング1においては、微細亀裂を有する硬質クロムめっき層を2層以上積層してクロムめっき被膜を形成する。このため、開口部は、すぐ上の層の硬質クロムめっき層によって封孔される。最外層24は、それよりも上の層が存在しないため開口部が封孔されていない。開口部が封孔されていない状態の微細亀裂は、より下層へ亀裂を生じさせる切欠きの効果を果たしてしまうが、最外層24よりも下の層の硬質クロムめっき層21、22、23中の微細亀裂は、各層のすぐ上の層によって封孔されることにより被覆、保護されているので、すぐ上の層が摩耗によって消失するまでは切り欠き効果を果たさない。この結果、本実施の形態によるピストンリング1の硬質クロムめっき被膜20は、微細亀裂自身の切欠き効果による微細亀裂の拡張・進展が生じ難く、疲労強度に優れ、硬質クロムめっき被膜20の劣化やピストンリング1自体の折損を防止することができる。
【0025】
また、ピストンリング1においては、各硬質クロムめっき層に形成された微細亀裂が断面略V字状であることから、硬質クロムめっき被膜20の摩耗の進行に伴って、微細亀裂の開口部面積及び開放された空洞容積が減少していく。例えば、符号aで示される深さにおける微細亀裂の開口部面積及び開放された空洞容積と比べて、符号bで示される深さにおけるそれらの量は小さい。しかし、上層の硬質クロムめっき層が摩耗によって完全に消失すると、下層に開口する新しい微細亀裂が多量に出現するので、微細亀裂の開口部面積及び開放された空洞容積が再び増加し、優れた保油性を回復する。例えば、硬質クロムめっき被膜20の中間層23における符号dで示される深さの微細亀裂の開口部面積及び開放された空洞容積は、それよりも上の層である最外層24における符号aで示される深さの微細亀裂の開口部面積及び開放された空洞容積の値と同等である。
【0026】
しかも、本実施の形態に係るピストンリング1においては、各硬質クロムめっき層の微細亀裂は複数層微細亀裂20aを含んでいるので、上層の硬質クロムめっき層が摩耗により沈み込んで下層の硬質クロムめっき層が出現する寸前の位置まで摩耗したときにも、十分な量の微細亀裂が存在している。例えば、硬質クロムめっき被膜20の符号cで示される深さにおいても、複数層微細亀裂20aの開放された空洞が存在する。このため、本実施の形態によるピストンリング1は、硬質クロムめっき被膜20の摩耗が進行しても保油性の周期的な低下を全く生じないか又は生じても変動幅が少なく、一定した耐摩耗性及び耐焼付き性を示すことができる。
【0027】
硬質クロムめっき被膜20中の微細亀裂量は、硬質クロムめっき被膜20の厚さ方向に沿った断面における微細亀裂の面積比率で表すと、単一層微細亀裂20bについては1.5〜35.0%、複数層微細亀裂20aについては0.5〜25.0%の範囲内であり、単一層、複数層微細亀裂20aを合わせた微細亀裂全体では2.0〜40.0%の範囲内に留まる。このような面積比の値とすることで、被膜全体の保油性と強度を十分確保しつつ、摺動により被膜が摩耗した場合の摩耗量の違いによって生ずる保油性の変動を少なくすることができる。
【0028】
面積比を上述の値とする理由は以下の通りである。単一層微細亀裂20bの占める面積比が1.5%未満の場合には、微細亀裂からなる空洞が少なくなってしまうため保油性に劣る。単一層微細亀裂20bの面積比を1.5%未満の値にし、保油性を維持するために複数層微細亀裂20aの占める面積比を高めるとすると、亀裂の進展を生じやすくなり、硬質クロムめっき被膜20の劣化、及び、折損強度の低下を招く。複数層微細亀裂20aが、より下層へ亀裂を生じさせる切欠きの効果を発揮してしまうためである。
【0029】
単一層微細亀裂20bの占める面積比が35.0%を超える場合には、複数層微細亀裂20aの量が相対的に少なくるため、摺動により被膜が摩耗した場合の摩耗量の違いによって生ずる保油性の変動が大きくなる。仮に、単一層微細亀裂20bの量を35.0%超としたままで、複数層微細亀裂20aを保油性の変動を押さえるのに十分な量だけ形成すると、硬質クロムめっき被膜20のコラプション傾向が大きくなり、めっき被膜の強度不足を招く。
【0030】
複数層微細亀裂20aの占める面積比が0.5%未満の場合には、摺動により被膜が摩耗した場合の摩耗量の違いによって生ずる保油性の変動が大きくなる。複数層微細亀裂20aの占める面積比が25.0%を超える場合には、前述の切欠きの効果により亀裂の進展を生じやすくなり、硬質クロムめっき被膜20の劣化、及び折損強度の低下の原因となる。
【0031】
複数層微細亀裂20a、単一層微細亀裂20bを合わせた微細亀裂の占める面積比が2.0%未満の場合には、潤滑油を保持する微細亀裂の空洞の量が不足して保油性に劣る。40.0%を超える場合には、硬質クロムめっき被膜20のコラプション傾向が大きくなり、被膜の強度不足を招く。
【0032】
特に、微細亀裂量を面積比で、単一層微細亀裂20bについて1.5〜24.5%、複数層微細亀裂20aについて0.5〜15.0%とし、微細亀裂全体では2.0〜25.0%とすることにより、被膜全体の保油性と強度を十分確保しつつ、摺動によりめっき被膜が摩耗した場合の摩耗量の違いによって生ずる保油性の変動を少なくする効果を、よりいっそう高めることができる。
【0033】
硬質クロムめっき被膜20を構成する硬質クロムめっき層は、最内層21がもっとも厚く、次いで最外層24が2番目に厚い。これら以外の他の層である中間層22、23はいずれも最外層24、最内層21よりも薄い。最内層21の厚さは80μm以内であり、最外層24の厚さは50μm以内であり、これら以外の層は5.0〜30.0μmである。いずれの層においても各層内に形成された各微細亀裂の開口部の幅の最小値は0.2μm以下であり、0.15μm以下であればなおよい。ここで、各微細亀裂の開口部の幅の最小値は0.2μm以下であるとは、実質的に全ての微細亀裂の開口部の幅の最小値が0.2μm以下であることを意味しており、開口部の幅の最小値が0.2μmを超える微細亀裂は全く無いか、あったとしても摺動部材たるピストンリング1の性能に影響を及ぼさないほどの無視できる量であることを意味する。
【0034】
微細亀裂の開口部の幅の最小値が0.2μm以下であるため、優れた耐食性を得ることができる。また、内燃機関では、燃料中の硫黄により硫酸が発生するが、摺動部材がピストンリング1である場合に、この硫酸が硬質クロムめっき被膜20内部に入りにくくなり、腐食を防止することができる。
【0035】
また、中間層22、23の厚さを5.0〜30.0μmとし、各微細亀裂の開口部の幅の最小値を0.2μm以下としたため、ピストンリング1に対する諸要求性能のバランスを良好に維持しながらも、単一層微細亀裂20bの量と複数層微細亀裂20aの量とを前述の値の範囲内に調節することができる。
【0036】
また、最外層24の厚さが中間層22、23の1層分よりも薄い場合には、硬質クロムめっき被膜20の反母材側表面近傍の剛性が充分でない。また、最外層24の厚さが50μmを超えると、摺動抵抗による変形が最表面の部分だけで止まり、中間層22、23を含む被膜全体で変位を吸収するという効果を発揮しない。しかし、本実施の形態においては最外層24の厚さを50μm以内として中間層よりも厚くしたため、ピストンリング1の摺動抵抗によるピストンリング1自身の変形を、最外層24の反母材側表面近傍の部分の剛性によって押さえることができ、この部分の剛性を増すことによって折損抵抗を大きくすることができ、ピストンリング1たる摺動部材に高い耐折損性を付与することができる。最外層24については、5〜50μm以内とすることによって前述の効果を更に高めることができる。
【0037】
最内層21の厚さを80μm以内として厚く構成し、各微細亀裂の開口部の幅の最小値は0.2μm以下としたため、この部分の硬質クロムめっき層の微細亀裂を少なく且つ細くすることができ、硬質クロムめっき被膜20全体の剛性を上げることができる。最内層の厚さを最外層24の硬質クロムめっき層の厚さよりも厚くしたのは、最外層24の外周表面側の硬質クロムめっき層の剛性と中間層22、23の靭性とのバランスをとり、被膜全体で摺動時の変位を吸収するためである。最内層21の厚さが他の硬質クロムめっき層よりも薄い場合には、ピストンリング1の摺動時に、硬質クロムめっき被膜20の母材10表面近傍の位置において生ずる変位の量を抑制する効果が十分でない。また、最内層21の厚さが80.0μmを超える場合には、硬質クロムめっき被膜20全体の厚さに占める最内層21の厚さの割合が大きくなり、中間層22、23をなす薄いめっき層の数が相対的に少なくなり、多層クロムめっき被膜が有する靱性を有効に発揮できなくなる。最内層21をめっき被膜中で最も厚い層とし、厚さを80μm程度とすると、開口部の幅が0.2μmの微細亀裂は深さが50μm程度となり、微細亀裂と母材10との間に微細亀裂が形成されていない最内層21の部分が厚さで30μm程度残る。このため、母材10が耐腐食性及び密着性に優れるという効果を発揮することができる。
【0038】
次に、本実施の形態による硬質クロムめっき摺動部材により構成されるピストンリング1の製造方法について説明する。先ず、クロムめっき処理される前に、所定形状に成形された母材10の表面について脱脂、洗浄、ホーニング等の前処理を行う。より具体的には、先ず、母材10表面の油脂分をトリクロロエチレン等の有機溶剤の蒸気により洗浄して脱脂工程を行い、次に、母材10を30〜80℃に加熱された塩酸中に15〜300秒浸漬させて母材10表面の酸化物等を除去し、母材10の下地を露出させる酸洗浄工程を行う。次に、母材10の表面全体にセラミックス等の硬質粒子を懸濁溶解した水溶液を均一に圧力噴射(2〜10kg/mm2)することにより表面を梨地状にして、めっき被膜との密着強度の向上を図る液体ホーニング工程を行う。
【0039】
次に、母材10表面にめっき工程(正電工程)とエッチング工程(逆電工程)を繰返すことによって、微細亀裂を有する硬質クロムめっき層を積層する。クロムめっき槽としては、従来から用いられている酸性のクロム酸液等を含む公知のフッ化浴を用いる。より具体的には、先ず、母材10をクロムめっき槽に浸漬させ、クロムめっき槽の温度を45〜55℃に維持する。そして、母材10を陽極とし対極を陰極として、電流密度60〜100A/dm2、印加時間10〜120秒間の条件で電解研磨を行う。なお、クロムめっき槽の温度は、後述の各めっき工程、各エッチング工程においても引続き45〜55℃に維持される。
【0040】
次に、母材10表面上に最内層21の硬質クロムめっき層を生成する。具体的には、電解研磨を行った状態から極性を反転させて母材10を陰極とし対極を陽極として、電流密度60〜100A/dm2、印加時間10〜200分間の条件で電流を印加し、所望の厚さの硬質クロムめっき層を析出させるめっき工程を行う。
【0041】
次に、100マイクロ秒(μsec)以内といった比較的早い切り替え時間で極性を反転させ、母材10を陽極とし対極を陰極として、電流密度60〜100A/dm2、印加時間10〜200秒間の条件でエッチング工程を行う。この段階では、最内層21の硬質クロムめっき層を生成するので、微細亀裂の深さを最内層21内に留め、微細亀裂が母材にまで至らないようにする必要がある。このため、めっき工程からエッチング工程への切替え時間を比較的早くする。後述のように、ピストンリング1の多層構造をした硬質クロムめっき被膜20の最内層21は80μm以内の範囲で被膜中最も厚く生成するのが好ましいが、この厚さを考慮すると、最内層21を生成する段階ではめっき工程からエッチング工程への切り替え時間を100マイクロ秒(μsec)以内とすることにより、開口部の幅が0.2μm以下で且つ適度な深さの微細亀裂を形成することができる。
【0042】
次に、中間層22の硬質クロムめっき層を生成する。具体的には、最内層21のエッチング工程が終了した後、再び極性を反転させ、母材10を陰極とし対極を陽極として、電流密度60〜100A/dm2、印加時間2〜100分間の条件で印加し、5.0〜30μmの厚さの硬質クロムめっき層を析出させるめっき工程を行う。次に、100〜2000マイクロ秒といった緩慢な切替え時間で極性を反転させ、母材10を陽極とし対極を陰極として、電流密度60〜100A/dm2、印加時間10〜200秒間の条件で電流を印加し、所望の厚さが残るように硬質クロムめっき層を溶出させるエッチング工程を行う。このめっき工程とエッチング工程とにより、最内層21の直上の中間層が生成される。この後、このめっき工程及びエッチング工程を繰り返すことにより、所望の層数の中間層を積層生成する。本実施の形態では中間層22、23は2層である。
【0043】
前述のように、ピストンリング1の多層構造をした硬質クロムめっき被膜20の中間層22、23は5.0〜30.0μmの厚さに生成するのが好ましいが、この厚さを考慮すると、最内層21を生成する現段階では、めっき工程からエッチング工程への切り替え時間を100〜2000マイクロ秒とすることにより、開口幅が0.2μm以下の単一層微細亀裂20bと複数層微細亀裂20aとが混在する複数の微細亀裂を形成することができる。
【0044】
次に、最外層24をなす硬質クロムめっき層を生成する。中間層23を生成するエッチング工程が終了した後、極性を反転させ、母材10を陰極とし対極を陽極として、電流密度60〜100A/dm2、印加時間2〜200分間の条件で、所望の厚さの最外層たる硬質クロムめっき層を析出させるめっき工程を行う。次に、100〜2000マイクロ秒といった緩慢な切替え時間で極性を反転させ、母材10を陽極とし対極を陰極として、電流密度60〜100A/dm2、印加時間10〜200秒間の条件で印加し、最外層24が50μm以下の厚さで所定量残るように硬質クロムめっき層を溶出させるエッチング工程を行う。
【0045】
上述のように、ピストンリング1の多層構造をした硬質クロムめっき被膜20の最表面層は50μm以下の厚さに生成されるのが好ましいが、この厚さを考慮すると、めっき工程からエッチング工程への切替え時間を100〜2000マイクロ秒とすることにより、開口幅が0.2μm以下の単一層微細亀裂20bと複数層微細亀裂20aとが混在する複数の微細亀裂を形成することができる。以上の工程を経て、多層構造の硬質クロムめっき被膜20が生成され、ピストンリング1の硬質クロムめっき被膜20を有する摺動部材たるピストンリング1を得る。
【0046】
なお、硬質クロムめっき層の厚さ、及び、微細亀裂の量と深さは、めっき工程及びエッチング工程(逆電工程)におけるめっき温度、電流密度、印加時間等の諸条件を変えることによって調節することができる。
【0047】
クロムめっき槽の温度を、各めっき工程、各エッチング工程を通して45〜55℃に維持し、且つめっき工程及びエッチング工程で印加する電流密度を60〜100A/dm2としたため、めっき被膜中に水素を多く吸蔵させることができる。クロムめっき槽の温度を45℃以上としたのは、母材10と硬質クロムめっき被膜20との密着性を担保するためである。また、55℃以下としたのは、これ以上の温度では水素をめっき被膜中に十分に吸蔵することができずに所望の硬度を得ることができないからである。更に48〜52℃の範囲であることが望ましい。また、電流密度を60A/dm2以上したのは、この値よりも低いと水素をめっき被膜中に十分に吸蔵することができずに所望の硬度を得ることができないからである。また、100A/dm2以下としたのは、この値よりも高いと各硬質クロムめっき層の表面が荒れてしまうためである。
【0048】
次に、本発明による摺動部材たるピストンリングの効果を試す性能試験を行った。試験では、本発明によるピストンリングである本発明品1、本発明品2と、従来品、比較品1、比較品2、比較品3、比較品4とを用いて比較を行った。本発明品、従来品比較品のいずれも、硬質クロムめっき被膜内に微細亀裂が形成されており、微細亀裂の開口部の幅の最小値は0.2μm以下である。従来品は硬質クロムめっき被膜が一層構造である点で本発明による硬質クロムめっき被膜とは異なっており、比較品1〜4は微細亀裂の量が本発明による微細亀裂の量とは異なる。また、含有する水素の量もそれぞれ異なる。本発明品1、本発明品2、従来品、比較品1、比較品2、比較品3、比較品4の製造方法等の詳細については以下の通りである。
【0049】
先ず、本発明品1の製造方法について説明する。本発明品1の母材としてSi−Crを用いた。製造に際しては、先ず、母材をトリクロロエチレンの蒸気により脱脂した。次に、母材を30〜80℃に加熱された塩酸中に15〜300秒問浸漬して酸洗浄を行うことにより表面の酸化物等を除去した。次に、母材の表面全体にセラミックス等の硬質粒子を懸濁溶解した水溶液を用いて圧力噴射(5kg/mm2)し、下地を梨地状に仕上げた。次に、公知のフッ化浴のめっき槽中に梨地状に仕上げた母材を浸漬し、電流密度60A/dm2、印加時間20秒の条件で電流を印加して電解研磨を行った。
【0050】
次に、極性を反転させ、母材を陰極とし対極を陽極として、電流密度80A/dm2、印加時間25分の条件でめっき工程を行った。めっき工程に引続き、100μsecの切替え時間で極性を反転させ、母材を陽極とし対極を陰極として、電流密度60A/dm2、印加時間10秒の条件でエッチング工程を行い、厚さが30μmの最内層の硬質クロムめっき層を生成した。
【0051】
次に、再び極性を反転させ、母材を陰極とし対極を陽極として電流密度80A/dm2、印加時間11分の条件でめっき工程を行った。めっき工程に引続き、750μsecの切替え時間で極性を反転させ、母材を陽極とし対極を陰極として、電流密度60A/dm2、印加時間90秒の条件でエッチング工程を行い、厚さが10μmの第1層目の中間層の硬質クロムめっき層を生成した。この中間層を生成するめっき工程とエッチング工程とを繰返すことにより、合計11層の中間層を生成した。
【0052】
次に、再び極性を反転させ、母材を陰極とし対極を陽極として、電流密度80A/dm2、印加時間13分の条件でめっき工程を行い、厚さが15μmの最外層の硬質クロムめっき層を生成した。
【0053】
次に、本発明品2の製造方法について説明する。本発明品2の母材としてはSi−Crを用いた。製造に際しては、先ず、母材をトリクロロエチレンの蒸気により脱脂した。次に、母材を30〜80℃に加熱された塩酸中に15〜300秒問浸漬して酸洗浄を行うことにより表面の酸化物等を除去した。次に、母材の表面全体にセラミックス等の硬質粒子を懸濁溶解した水溶液を用いて圧力噴射(5kg/mm2)し、下地を梨地状に仕上げた。次に、公知のフッ化浴のめっき槽中に梨地状に仕上げた母材を浸漬し、電流密度60A/dm2、印加時間20秒の条件で電流を印加して電解研磨を行った。
【0054】
次に、極性を反転させ、母材を陰極とし対極を陽極として、電流密度80A/dm2、印加時間24分の条件でめっき工程を行った。めっき工程に引続き、750μsecの切替え時間で極性を反転させ、母材を陽極とし対極を陰極として、電流密度60A/dm2、印加時間630秒の条件でエッチング工程を行い、厚さが30μmの最内層の硬質クロムめっき層を生成した。
【0055】
次に、再び極性を反転させ、母材を陰極とし対極を陽極として電流密度80A/dm2、印加時間11分の条件でめっき工程を行った。めっき工程に引続き、750μsecの切替え時間で極性を反転させ、母材を陽極とし対極を陰極として、電流密度60A/dm2、印加時間630秒の条件でエッチング工程を行い、厚さが10μmの第1層目の中間層の硬質クロムめっき層を生成した。このめっき工程とエッチング工程とを繰返すことにより、合計11層の中間層を生成した。
【0056】
次に、再び極性を反転させ、母材を陰極とし対極を陽極として、電流密度80A/dm2、印加時間13分の条件でめっき工程を行い、厚さが15μmの最外層の硬質クロムめっき層を生成した。なお本発明品1、2は最外層を形成した後逆電処理は行っていない。これは最外層のめっきを形成することで(厚さ15μm)皮膜全体保護を果たす。このままでは摺動面の摺動特性が悪くなるが、ピストンリング摺動面は研削加工するため、摺動面の最外層全て研削加工により削除去れて無くなる。従って摺動面には下層(中間層)のチャンネルポーラスを含む摺動面が露出するため優れた摺動特性が得られる。また摺動面以外に残る最外層めっき皮膜はチャンネルポーラスを含まないため下層(中間層及び最下層)に形成された皮膜を保護し、更に皮膜端面も保護することができる。
【0057】
次に、従来品の製造方法について説明する。ピストンリング母材としては本発明品1と同一のSi−Crを用いた。このピストンリング母材に本発明品1の場合と同じ手順で脱脂、酸洗浄、液体ホーニングを行うことにより下地を梨地状に仕上げた。
【0058】
次に、本発明品の製造に用いたのと同じ組成のめっき槽にピストンリング母材を浸漬し、本発明品1と同じ条件で電解研磨を行った。その後、極性を反転させ、母材を陰極とし対極を陽極として、電流密度60A/dm2、印加時間15分の条件でめっき工程を行った。次に、めっき工程に引続き、1500μsecの切り替え時間で極性を反転させ、母材を陽極とし対極を陰極として、電流密度60A/dm2、印加時間90秒の条件でエッチング工程を行い、単層の硬質クロムめっき被膜を生成した。
【0059】
比較材1〜4については、本発明品1の製造方法に準じて行い、表1に示される被膜を生成できる条件を設定し製造を行った。
【0060】
試験は、摩耗試験、スカッフ試験、疲労強度試験、被膜衝撃強度試験の4種類を行った。摩耗試験においては、アムスラー型摩耗試験機を使用し、製造したピストンリング材相当を固定片とし、相手材である回転片(シリンダライナ相当)のほぼ半分を油に浸漬して荷重をかけながら固定片に接触させた。下記の条件で試験を実施し、粗さ計による段差プロフィールにて摩耗量(摩耗沈み:μm)を測定した。試験条件は以下の通りである。
摩耗試験条件
相手材:FC25(硬さ(HRB)98)
潤滑油:タービン油(#100)
油温:80℃
周回速度:1m/sec(478rpm)
荷重:80kg
時間:7hr
【0061】
スカッフ試験においては、アムスラー型摩耗試験機を使用し、製造したピストンリング材相当を固定片とし、相手材である回転片に油を付着させ、荷重をかけながら固定片に接触させた。下記の条件で、荷重を10kg/minの割合で線形連続的に増加させ続け、スカッフが発生して負荷信号が発生した時点の荷重を被試験材の耐スカッフ荷重(kg)とした。
スカッフ試験条件
相手材:FC25(硬さ(HRB)98)
潤滑油:2号スピンドル油
油温:成り行き
周回速度:1m/sec(478rpm)
【0062】
疲労強度試験においては、リング実体型疲労試験機を使用し、リングに所定の荷重を負荷しながら、繰り返し速度を2000cycle/minとして107回繰返した。所定の荷重にて107回をクリアしたら荷重の段階を上げて同様の速度で107回繰り返した。107回をクリアできた最も大きい荷重を、被試験材の疲労強度(kg)とした。
【0063】
被膜衝撃強度試験においては、自社オリジナルの衝撃試験機を使用し、被試験材のリングコーナー45°にストローク1.5mmで打撃することにより、めっき被膜の剥離が発生するまで所定荷重の衝撃エネルギーを加え続け、剥離発生までの打撃回数を測定した。各試験結果は以下の表1に示す通りである。
【0064】
【表1】
【0065】
表1においては、従来品に関する各試験の測定値を100として、本発明品1、2、比較品1〜4それぞれについて試験結果を表した。摩耗量比は100より小さい数値であれば摩耗量が少ないことを意味し、数値が小さいことが望ましい。スカッフ限界荷重比は100より大きい数値であれば、スカッフ限界荷重が高いことを示し、数値が大きい方が望ましい。疲労強度指数及び被膜衝撃強度指数は、100より大きい方が、優れた強度を持つことを意味し望ましい。
【0066】
比較品1と本発明品1、2とを比較すると、単一層微細亀裂と複数層微細亀裂とを含む微細亀裂の量が多く水素含有量も多い本発明品1、2の方が、各種の試験において比較品1よりも結果は良好であることが分かる。また、比較品2と本発明品1、2とを比較すると、複数層微細亀裂の量が多いが単一層微細亀裂の量が少なく、水素含有量も少ない比較品2では、摩耗量比、疲労強度指数、被膜衝撃強度指数において本発明品1、2よりも大幅に劣っていることが分かる。また、比較品3と本発明品1、2とを比較すると、単一層微細亀裂の量が多いが複数層微細亀裂の量が少なく、水素含有量も少ない比較品3では、摩耗量比、疲労強度指数、被膜衝撃強度指数において本発明品1、2よりも大幅に劣っていることが分かる。また、比較品4と本発明品1、2とを比較すると、微細亀裂の全体の量が多すぎ、水素含有量も少ない比較品4では、摩耗量比、疲労強度指数、被膜衝撃強度指数において本発明品1、2よりも大幅に劣っていることが分かる。
【0067】
また、硬質クロムめっき被膜が単層構造であり水素含有量の少ない従来品と本発明品1、2とを比較すると、従来品の方が摩耗量比、スカッフ限界荷重比、疲労強度指数、被膜衝撃強度指数のいずれにおいても本発明品1、2よりも大幅に劣っていることが分かる。
【0068】
更に、本発明品1と本発明品2とを比較すると、両者共に硬質クロムめっき被膜中の水素含有量は0.1〜0.15質量%(1000〜1500ppm)の範囲内にあるが、更に0.115〜0.135質量%(1150〜1350ppm)の範囲内であって水素の含有量がより多い本発明品2の方が、各種の試験結果は良好であることが分かる。
【0069】
更に、本発明品1、2について実機にて耐久試験を行った。具体的には、本発明品1、2をトップリングとして排気量3000cc(φ96mm)のディーゼルエンジンに用いて、15MPa:S=0.05wt%の条件下で市場パターン再現相当試験を250時間実施し、リング摩耗量比とライナ摩耗量比とを求めた。
【0070】
結果は、本発明品1についてリング摩耗量比、ライナ摩耗量比をそれぞれ1とすると、本発明品2は、リング摩耗量比が0.29であり、ライナ摩耗量比は0.26であった。水素含有量の多い本発明品2の方が本発明品1よりも結果が良好であることが分かる。
【0071】
本発明による硬質クロムめっき摺動部材、ピストンリング、及びその製造方法は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、硬質クロムめっき摺動部材はガソリン、ディーゼルのいずれのタイプの内燃機関のピストンリングにも適用することができる。また、これらに以外の他の摺動部材、例えば、ピストンリング以外のものにも適用が可能である。
【0072】
また、本実施の形態では硬質クロムめっき被膜20を構成する各硬質クロムめっき層には微細亀裂が均一に分布しており、この状態が好ましいが、均一に分布していなくてもよい。
【0073】
また、摺動部材たるピストンリング1の硬質クロムめっき被膜を構成する各層の厚さや各層における微細亀裂の開口幅は、本実施の形態による値に限定されない。摺動部材の種類や用途によって適宜調節すればよい。
【0074】
また、本実施の形態による硬質クロムめっき被膜20では、硬質クロムめっき被膜20を構成する各硬質クロムめっき層は、最内層21の硬質クロムめっき層がもっとも厚く、次いで最外層24が2番目に厚く、これら以外の他の層である中間層22、23はいずれも最外層24、最内層21よりも薄く構成されたが、これに限定されない。硬質クロムめっき被膜が用いられる用途等に応じて、例えば、それほど高温高圧とならないエンジン内で用いられるピストンリングを構成する場合や、ピストンリング以外の摺動部材に用いられる場合等、その場合場合に応じて適宜変えればよい。
【0075】
従って、すべて同じ厚さ層からなる複数層構造の硬質クロムめっき被膜としてもよい。この場合には、以下のようにして硬質クロムめっき層を積層する。先ず、フッ化浴からなるクロムめっき槽を用いて、母材の表面に対してめっき工程を行った後、100〜2000マイクロ秒の時間をかけて極性を反転させてエッチング工程を行い、さらにこれらめっき工程とエッチング工程とを少なくとも1回繰り返すことにより2層以上の硬質クロムめっき層からなる硬質クロムめっき被膜を生成する。
【0076】
ピストンリング1の製造方法では、クロムめっき処理される前に、所定形状に成形された母材10の表面について脱脂、洗浄、ホーニング等の前処理を行ったが、これらは、必要に応じて行えばよい。
【0077】
【発明の効果】
請求項1記載の硬質クロムめっき摺動部材によれば、硬質クロムめっき被膜は水素を0.1〜0.15質量%(1000〜1500ppm)含み、硬質クロムめっき被膜中の結晶格子は含有する水素によって歪んだ状態となっているため、積層構造の硬質クロムめっき被膜の硬さを高めることができる。このため、高温高圧下において硬質クロムめっき摺動部材を使用した場合でも耐摩耗性、耐焼付性、及び耐剥離性を高いレベルで維持することができる。
【0078】
また、複数の微細亀裂は、隣接する複数の硬質クロムめっき層内に跨って連続して形成された複数層微細亀裂と、一の層内において閉塞し隣接する他の層に跨らない単一層微細亀裂とからなるため、各硬質クロムめっき層の上層から下層に移行する寸前の領域にも微細亀裂の空洞が存在しており、保油性の周期的な低下が発生しないか、発生しても保油性の落ち込みが少ない。従って、長期間使用しても常に安定した耐摩擦性、耐焼付き性を発揮することができる。
【0079】
請求項2記載の硬質クロムめっき摺動部材によれば、各硬質クロムめっき層の厚さが5.0〜30.0μmであり、各微細亀裂の開口部の幅の最小値は0.2μm以下であるため、めっき表面のチャンネルポーラス、即ち微細亀裂を狭く深い形状とすることができる。このため、硬質クロムめっき被膜に優れた保油性を持たせることができる。また、硬質クロムめっき被膜が摩耗しても、幅の狭いチャンネルポーラスが多く形成されているため、潤滑油を保持し続けることができ、長期にわたり焼き付けを防止することができる。
【0080】
また、微細亀裂の開口部の幅の最小値が0.2μm以下であるため、優れた耐食性を得ることができる。また、摺動部材を内燃機関に用いた場合に、燃料から生成される硫酸が硬質クロムめっき被膜内部に入りにくくなり、腐食を防止することができる。
【0081】
請求項3記載の硬質クロムめっき摺動部材によれば、複数のクロムめっき層のうちの最外層は厚さが50μm以下であり他の硬質クロムめっき層よりも厚く、他の硬質クロムめっき層の厚さは5.0〜30.0μmであるため、硬質クロムめっき摺動部材の摺動抵抗による摺動部材自身の変形を、最外層の反母材側表面近傍の部分の剛性によって押さえることができ、この部分の剛性を増すことによって折損抵抗を大きくすることができ、摺動部材に耐折損性を付与することができる。
【0082】
請求項4記載の硬質クロムめっき摺動部材によれば、硬質クロムめっき被膜は3層以上の硬質クロムめっき層からなり、母材表面上の摺動面相当位置上に直接積層された硬質クロムめっき層の厚さは80μm以下であり複数の硬質クロムめっき層の中で最も厚く、複数のクロムめっき層のうちの最外層は厚さが50μm以下であり複数の硬質クロムめっき層の中で2番目に厚く、これら以外の他の硬質クロムめっき層の厚さは5.0〜30.0μmであるため、最内層の硬質クロムめっき層の微細亀裂を少なく且つ細くすることができ、硬質クロムめっき被膜全体の剛性を上げることができる。また、最外層の外周表面側の硬質クロムめっき層の剛性と中間層の靭性とのバランスをとることができ、被膜全体で摺動時の変位を吸収することができる。
【0083】
請求項5記載の硬質クロムめっき摺動部材によれば、硬質クロムめっき被膜は、マイクロビッカース硬さ試験方法により測定した硬さがHv900〜Hv1200の値を有しているため、高温高圧下において硬質クロムめっき摺動部材を使用した場合でも耐摩耗性、耐焼付性、及び耐剥離性を高いレベルで維持することができる。
【0084】
請求項6記載のピストンリングによれば、高温高圧下においても高いレベルの耐摩耗性、耐焼付き性、疲労強度を有する硬質クロムめっき被膜を備えたピストンリングとすることができる。また、硬質クロムめっきピストンリングを低価格とすることができ、経済性とのバランスから中級位の内燃機関における高出力化を図ることができる。
【0085】
請求項7記載の硬質クロムめっき摺動部材の製造方法によれば、クロムめっき槽を液温45〜55℃のフッ化浴とし、硬質クロムめっき工程及びエッチング工程において印加する電流密度を60〜100A/dm2とするようにしたため、硬質クロムめっき層の表面を荒らしてしまうことなくめっき被膜中に水素を多く吸蔵させることができる。
【0086】
また、母材表面上の摺動面相当位置に硬質クロムめっき工程を行った後に、100〜2000マイクロ秒の範囲の時間をかけて緩慢に極性を反転させ、エッチング工程を行うようにしたため、開口幅の最小値が0.2μm以下の単一層微細亀裂と複数層微細亀裂とが混在する複数の微細亀裂を、硬質クロムめっき被膜中に形成することができる。
【0087】
請求項8記載の硬質クロムめっき摺動部材の製造方法によれば、クロムめっき槽を液温45〜55℃のフッ化浴とし、硬質クロムめっき工程及びエッチング工程において印加する電流密度を60〜100A/dm2とするようにしたため、硬質クロムめっき層の表面を荒らしてしまうことなくめっき被膜中に水素を多く吸蔵させることができる。
【0088】
また、中間層に生成に際して母材表面上の摺動面相当位置に硬質クロムめっき工程を行った後に、100〜2000マイクロ秒の範囲の時間をかけて緩慢に極性を反転させ、エッチング工程を行うようにしたため、開口幅の最小値が0.2μm以下の単一層微細亀裂と複数層微細亀裂とが混在する複数の微細亀裂を、硬質クロムめっき被膜中に形成することができる。
【0089】
また、母材表面上の摺動面相当位置に硬質クロムめっき工程を行った後に、100マイクロ秒以内の時間をかけて極性を反転させ、エッチング工程を行うことにより、母材表面上の摺動面相当位置上に直接最内層の硬質クロムめっき層を生成するようにしたため、硬質クロムめっき被膜を構成する最内層中に、開口部の幅が0.2μm以下で且つ適度な深さの微細亀裂を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による硬質クロムめっき摺動部材を示す要部断面図。
【符号の説明】
1 ピストンリング
10 母材
20 硬質クロムめっき被膜
20a 複数層微細亀裂
20b 単一層微細亀裂
21 最内層
22、23 中間層
24 最外層
Claims (8)
- 母材と、
少なくとも該母材表面上の摺動面相当位置に設けられ複数の硬質クロムめっき層からなる積層構造の硬質クロムめっき被膜とを有し、
各該硬質クロムめっき層内には、該硬質クロムめっき層の反母材側に開口部が形成された複数の微細亀裂が形成された硬質クロムめっき摺動部材において、
該複数の微細亀裂は、隣接する該硬質クロムめっき層内に跨って連続して形成された複数層微細亀裂と、一の層内において閉塞し隣接する他の層に跨らない単一層微細亀裂とからなり、
該単一層微細亀裂は、該硬質クロムめっき層の積層方向の断面における面積比で1.5〜35.0%形成され、該複数層微細亀裂は、該硬質クロムめっき層の積層方向の断面における面積比で0.5〜25.0%形成され、微細亀裂全体としては面積比で2.0〜40.0%形成され、
該硬質クロムめっき被膜は水素を0.1〜0.15質量%含んでいることを特徴とする硬質クロムめっき摺動部材。 - 各該硬質クロムめっき層の1層間厚さが5.0〜30.0μmであり、各該微細亀裂の該開口部の幅の最小値が0.2μm以下であることを特徴とする請求項1記載の硬質クロムめっき摺動部材。
- 該複数のクロムめっき層のうちの最外層は厚さが50μm以下であり他の該硬質クロムめっき層よりも厚く、他の該硬質クロムめっき層の厚さが5.0〜30.0μmであり、各該微細亀裂の該開口部の幅の最小値が0.2μm以下であることを特徴とする請求項1記載の硬質クロムめっき摺動部材。
- 該硬質クロムめっき被膜は3層以上の該硬質クロムめっき層からなり、母材表面上の摺動面相当位置上に直接積層された最内層の該硬質クロムめっき層の厚さは80μm以下であり該複数の硬質クロムめっき層の中で最も厚く、最外層の該硬質クロムめっき層は厚さが50μm以下であり該複数の硬質クロムめっき層の中で2番目に厚く、これら以外の他の該硬質クロムめっき層の厚さは5.0〜30.0μmであり、
各該微細亀裂の該開口部の幅の最小値が0.2μm以下であることを特徴とする請求項1記載の硬質クロムめっき摺動部材。 - 該硬質クロムめっき被膜は、マイクロビッカース硬さ試験方法により測定した硬さがHv900〜Hv1200を有していることを特徴とする請求項1記載の硬質クロムめっき摺動部材。
- 請求項1乃至5記載の硬質クロムめっき摺動部材からなることを特徴とするピストンリング。
- 請求項1乃至5いずれかに記載の硬質クロムめっき摺動部材又は請求項6のピストンリングを製造するための方法であって、クロムめっき槽中において、母材表面上の摺動面相当位置に対して硬質クロムめっき工程を行った後に、100〜2000マイクロ秒の時間をかけて極性を反転させ、エッチング工程を行い、
更に該硬質クロムめっき工程と該エッチング工程とを少なくとも1回繰り返すことにより2層以上の硬質クロムめっき層からなる硬質クロムめっき被膜を生成し、
該クロムめっき槽をフッ化浴により構成し、液温を45〜55℃とし、
該硬質クロムめっき工程及び該エッチング工程において印加する電流密度を60〜100A/dm2とすることを特徴とする硬質クロムめっき摺動部材の製造方法。 - 請求項1乃至5いずれかに記載の硬質クロムめっき摺動部材又は請求項6のピストンリングを製造するための方法であって、クロムめっき槽中において、母材表面上の摺動面相当位置に硬質クロムめっき工程を行った後に、100マイクロ秒以内の時間をかけて極性を反転させ、エッチング工程を行うことにより、母材表面上の摺動面相当位置上に直接厚さが80μm以内の最内層の硬質クロムめっき層を生成し、
該最内層の硬質クロムめっき層の上に再び硬質クロムめっき工程を行った後に、100〜2000マイクロ秒の範囲の時間をかけて極性を反転させ、エッチング工程を行うことにより、中間層の硬質クロムめっき層を生成し、
更に該中間層の硬質クロムめっき層を生成する該硬質クロムめっき工程と該エッチング工程を少なくとも1回繰り返すことにより、必要な数の中間層及び最外層の硬質クロムめっき層を生成し、
該クロムめっき槽をフッ化浴により構成し、液温を45〜55℃とし、
該硬質クロムめっき工程及び該エッチング工程において印加する電流密度を60〜100A/dm2とすることを特徴とする硬質クロムめっき摺動部材の製造方法。
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