実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1にかかる歩行訓練システム1の概略構成を示す斜視図である。本実施の形態にかかる歩行訓練システム1は、例えば、脳卒中片麻痺患者などの訓練者Uの歩行訓練を行うためのシステムである。図1に示すように、歩行訓練システム1は、訓練者Uの脚部に装着された歩行補助装置2と、訓練者Uの歩行訓練を行う訓練装置3と、を備えている。
歩行補助装置2は、例えば、歩行訓練を行う訓練者Uの患脚(図1では訓練者Uの左脚)に装着され、訓練者Uの歩行を補助する。図2は、歩行補助装置2の概略構成を示す斜視図である。図2に示すように、歩行補助装置2は、上腿フレーム21と、上腿フレーム21に膝関節部22を介して連結された下腿フレーム23と、下腿フレーム23に足首関節部24を介して連結された足平フレーム25と、膝関節部22を回転駆動するモータユニット26と、足首関節部24を回転駆動するモータユニット27と、を有している。
上腿フレーム21は、訓練者Uの脚部の上腿部に取り付けられ、下腿フレーム23は訓練者Uの脚部の下腿部に取り付けられる。また、足平フレーム25は訓練者Uの脚部の足平部に取り付けられる。上腿フレーム21には、例えば、上腿部を固定するための上腿装具212が設けられている。上腿装具212は、例えば、固定バンドなどを用いて、上腿部に固定される。これにより、歩行補助装置2が訓練者Uの脚部から左右方向あるいは上下方向にずれるのを防止できる。
上腿フレーム21には、後述の第1引張部33の第1ワイヤケーブル36を接続するための、左右方向に延在する横長の第1フレーム211が設けられている。また、下腿フレーム23には、後述の第2引張部34の第2ワイヤケーブル37を接続するための、左右方向に延在する横長の第2フレーム231が設けられている。
モータユニット26は、訓練者Uの歩行動作に応じて膝関節部22を回転駆動することで訓練者Uの歩行を補助する。モータユニット26にはモータ(アクチュエータ)が内蔵され、当該モータによって、上腿フレーム21に対して下腿フレーム23が揺動する。モータユニット26に内蔵されたモータには回転角センサが取り付けられている。
モータユニット27は、訓練者Uの歩行動作に応じて足首関節部24を回転駆動することで訓練者Uの歩行を補助する。モータユニット27にはモータ(アクチュエータ)が内蔵され、当該モータによって、下腿フレーム23に対して足平フレーム25が揺動する。また、モータユニット27に内蔵されたモータには回転角センサが取り付けられている。足平フレーム25の裏側には、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部の足平部が接地しているか否かを判定するための接地センサが設けられている。
図3は、歩行訓練中において、モータユニット26により、訓練者Uの膝関節および足首関節が曲げられた状態を示す図である。図3に示すように、モータユニット26によって回転駆動される膝関節部22の曲げ角度を膝関節角度θp、モータユニット27によって回転駆動される足首関節部24の曲げ角度を足首関節角度θqとする。歩行動作中にモータユニット26により膝関節角度θpを適宜変化させる。膝関節角度θpは、歩行補助装置2を装着した脚部を伸ばした状態ではゼロ(θp=0)で、当該脚部を伸ばした状態から膝関節を曲げることにより値が増加する。また、膝関節角度θpと同様に、歩行動作中にモータユニット27により足首関節角度θqを適宜変化させる。
再び図1を参照し、訓練装置3は、トレッドミル31と、フレーム本体32と、第1引張部33および第2引張部34と、検出手段としての第1ワイヤケーブル長検出部41および第2ワイヤケーブル長検出部42と、制御装置35と、を有している。
トレッドミル31は、訓練者Uが歩行するための回転可能なリング状のベルトコンベア311を有する。訓練者Uは、ベルトコンベア311上に乗り、ベルトコンベア311の移動に応じて歩行を行う。
フレーム本体32は、トレッドミル31上に立設された2対の柱フレーム321と、各柱フレーム321に接続され前後方向に延在する一対の前後フレーム322と、各前後フレーム322に接続され左右方向に延在する2つの前方左右フレーム323および後方左右フレーム324と、を有している。なお、フレーム本体32の構成は、これに限られない。フレーム本体32は、第1引張部33および第2引張部34を適切に固定することができれば、任意のフレーム構成であってもよい。
第1引張部33は、訓練者Uの上方かつ進行方向の前方に設けられている。例えば、第1引張部33は、訓練者Uの上方かつ進行方向前方にある前方左右フレーム323に設けられている。第1引張部33は、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部を、第1ワイヤケーブル36を介して上方かつ前方に引張する。第1引張部33は、例えば、第1ワイヤケーブル36を巻取り及び巻き戻すドラム等の巻取り機構、該巻取り機構を駆動するモータ、などから構成されている。
第1ワイヤケーブル36の一端は、第1引張部33から垂れ下がっており、訓練者Uの脚部に直接的または間接的に取り付けられる。例えば、第1ワイヤケーブル36の一端は、訓練者Uの脚部に装着された歩行補助装置2に取付けられている。第1ワイヤケーブル36の他端は、第1引張部33に支持され、巻取り機構に巻きつけられている。モータが巻取り機構を回転駆動させることにより、第1ワイヤケーブル36の巻き取り又は送り出しが行われる。これにより、第1間隔としての第1ワイヤケーブル36の長さを調節することができる。ここで、第1間隔としての第1ワイヤケーブル36の長さは、第1ワイヤケーブル36における、訓練者Uの脚部への直接的または間接的な取り付け位置から、ベルトコンベア311の床面からの所定高さまでの間隔である。第1引張部33は、配線などを介して後述する制御装置35に接続されている。
第2引張部34は、訓練者Uの上方かつ進行方向の後方に設けられている。例えば、訓練者Uの上方かつ進行方向後方にある後方左右フレーム324に設けられている。第2引張部34は、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部を、第2ワイヤケーブル37を介して上方かつ後方に引張する。第2引張部34は、例えば、第2ワイヤケーブル37を巻取り及び巻き戻すドラム等の巻取り機構、該巻取り機構を駆動するモータ、などから構成されている。
第2ワイヤケーブル37の一端は、第2引張部34から垂れ下がっており、訓練者Uの脚部に直接的または間接的に取り付けられる。例えば、第2ワイヤケーブル37の一端は、訓練者Uの脚部に装着された歩行補助装置2に取付けられている。第2ワイヤケーブル37の他端は、第2引張部34に支持され、巻取り機構に巻きつけられている。モータが巻取り機構を回転駆動させることにより、第2ワイヤケーブル37の巻き取り又は送り出しが行われる。これにより、第2間隔としての第2ワイヤケーブル37の長さを調節することができる。ここで、第2間隔としての第2ワイヤケーブル37の長さは、第2ワイヤケーブル37における、訓練者Uの脚部への直接的または間接的な取り付け位置から、ベルトコンベア311の床面からの所定高さまでの間隔である。第2引張部34は、配線などを介して後述する制御装置35に接続されている。歩行訓練システム1において、第1間隔としての第1ワイヤケーブル36の長さおよび第2間隔としての第2ワイヤケーブル37の長さは、訓練者Uの歩行に応じて変化するように構成されている。
第1引張部33による引張力の鉛直上方成分、および、第2引張部34による引張力の鉛直上方成分により、歩行補助装置2の重さを支える。第1引張部33による引張力の水平前方成分により、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部の進行方向前方への振出しを補助する。第2引張部34による引張力の水平後方成分により、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部の進行方向後方への振出しを補助する。これにより、歩行訓練時における訓練者Uの歩行負荷を軽減できる。
検出手段は、第1ワイヤケーブル36および第2ワイヤケーブル37の位置または変位を検出する。第1間隔としての第1ワイヤケーブル36の長さおよび第2間隔としての第2ワイヤケーブル37の長さは、検出手段によって検出された位置または変位から求めることができる。例えば、検出手段は、第1ワイヤケーブル長検出部41および第2ワイヤケーブル長検出部42から構成される。第1ワイヤケーブル長検出部41は、例えば、第1引張部33の巻取機構の巻回軸に設けられ巻回軸の回転角(変位)を検出するロータリエンコーダなどのセンサである。第1ワイヤケーブル長検出部41の検出信号から、巻取機構が第1ワイヤケーブル36を巻き取った長さ(巻取量)を算出し、既知である第1ワイヤケーブル36の全長から当該巻取量を引くことにより、第1ワイヤケーブル36の長さを検出する。第1ワイヤケーブル長検出部41は、配線などを介して後述する制御装置35に接続されている。
第2ワイヤケーブル長検出部42は、例えば、第2引張部34の巻取機構の巻回軸に設けられ巻回軸の回転角(変位)を検出するロータリエンコーダなどのセンサである。第2ワイヤケーブル長検出部42の検出信号から、巻取機構が第2ワイヤケーブル37を巻き取った長さ(巻取量)を算出し、既知である第2ワイヤケーブル37の全長から当該巻取量を引くことにより、第2ワイヤケーブル37の長さを検出する。第2ワイヤケーブル長検出部42は、配線などを介して後述する制御装置35に接続されている。なお、上記検出手段は、第1ワイヤケーブル長検出部41および第2ワイヤケーブル長検出部42から構成されるものに限られない。第1ワイヤケーブル36および第2ワイヤケーブル37の位置または変位を検出することができるものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、ワイヤケーブルの外観情報(位置)を検出するカメラ等の撮像手段であってもよい。
制御部としての制御装置35は、トレッドミル31の駆動と、第1引張部33および第2引張部34の引張力と、歩行補助装置2の動作と、をそれぞれ制御する。制御装置35は、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部が離地または着地したことを足平フレーム25の裏側に設けた接地センサのセンサデータにより検知する。すなわち、接地センサのセンサデータより、歩行補助装置2を装着した訓練者の脚部が、立脚から遊脚に移行するタイミングおよび遊脚から立脚に移行するタイミングを検知することができる。制御装置35は、立脚から遊脚に移行するタイミングを検知すると、そのタイミングに合わせてモータユニット26およびモータユニット27の制御を開始する。
制御装置35は、正常歩行時の膝関節角度および足首関節角度の経時的変化(歩行角度パターン)を記憶しており、この歩行角度パターンを膝関節角度θpおよび足首関節角度θqの目標軌道として与え、膝関節角度θpおよび足首関節角度θqが目標軌道に追従するようにモータユニット26およびモータユニット27を制御する。これにより、歩行補助装置2は正常時の脚部の動きを再現し、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部を誘導する。こうして訓練者Uの歩行動作が補助される。制御装置35は、さらに、訓練中において、進行方向における訓練者Uの位置が基準位置Prからずれたときに、訓練者Uの位置を基準位置Prに戻すために、歩行補助装置2の動作量としての膝関節角度目標値θprefを調整する。ここで、膝関節角度目標値θprefとは、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部が遊脚から立脚に移行する時の膝関節角度θpの目標値である。制御装置35により、歩行補助装置2の動作量としての膝関節角度目標値θprefを調整する方法については後述する。
制御装置35は、例えば、演算処理、制御処理等と行うCPU(Central Processing Unit)、CPUによって実行される演算プログラム、制御プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)、各種のデータなどを記憶するRAM(Random Access Memory)、外部と信号の入出力を行うインターフェイス部(I/F)、などからなるマイクロコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。CPU、ROM、RAM及びインターフェイス部は、データバスなどを介して相互に接続されている。
次に、進行方向における訓練者Uの位置と、第1ワイヤケーブル36の長さとの関係について説明する。
図4は、歩行訓練システム1において、訓練者Uの位置が基準位置Prにある状態を示す模式図である。図4に示すように、第1間隔としての第1ワイヤケーブル36の長さLfは、第1ワイヤケーブル36における、訓練者Uの脚部への直接的または間接的な取り付け位置から、ベルトコンベア311の床面からの所定高さまでの間隔である。また、第2間隔としての第2ワイヤケーブル37の長さLbは、第2ワイヤケーブル37における、訓練者Uの脚部への直接的または間接的な取り付け位置から、ベルトコンベア311の床面からの所定高さまでの間隔である。なお、本実施の形態にかかる歩行訓練システム1では、所定高さを、例えば、ベルトコンベア311の床面(歩行面)から第1引張部33または第2引張部34までの高さHhとしている。
図5は、歩行訓練システム1において、訓練者Uの位置が基準位置Prよりも進行方向後方にある状態を示す模式図である。図5において、訓練者Uの位置が基準位置Prにある状態を仮想線(二点鎖線)で示す。訓練者Uの位置が基準位置Prにある場合の、第1ワイヤケーブル36の長さをLfi、第2ワイヤケーブル37の長さをLbiとする。図5に示すように、訓練者Uの位置が、基準位置Prよりも進行方向後方(後方位置Pb)にある場合、基準位置Prにあるときよりも、第1ワイヤケーブル36の長さLfは長くなり(Lf>Lfi)第2ワイヤケーブル37の長さLbは短くなる(Lb<Lbi)。
図6は、歩行訓練システム1において、訓練者Uの位置が基準位置Prよりも進行方向前方にある状態を示す模式図である。図6において、訓練者Uの位置が基準位置Prにある状態を仮想線(二点鎖線)で示す。図6に示すように、訓練者Uの位置が、基準位置Prよりも進行方向前方(前方位置Pf)にある場合、基準位置Prにあるときよりも第1ワイヤケーブル36の長さLfが短くなり(Lf<Lfi)、第2ワイヤケーブル37の長さLbは長くなる(Lb>Lbi)。
図7は、訓練中において、進行方向における訓練者Uの位置Pxの基準位置PrからのずれRを算出する方法について説明する模式図である。ここで、Hnは、訓練者Uの膝高さである。Hhは、上述したように、ベルトコンベア311の歩行面から第1引張部33または第2引張部34までの高さである。Raは、第1引張部33と第2引張部34との間の距離の2分の1の距離である。図7に示すように、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれR、第1ワイヤケーブル36の長さLf、Ra、HhおよびHnとの間には式1の関係が成り立つ。
よって、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれRは、式2に示すように、第1ワイヤケーブル36の長さLf、Ra、HhおよびHnによって表される。
進行方向における訓練者Uの位置Pxの基準位置PrからのずれRは、訓練者Uの位置が、基準位置Prよりも進行方向前方にある場合にゼロより大きくなり(R>0)、基準位置Prよりも進行方向後方にある場合にゼロより小さくなる(R<0)。
なお、第2ワイヤケーブル37の長さLbについても測定する場合、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれR、第2ワイヤケーブル37の長さLbf、Ra、HhおよびHnとの間には式3の関係が成り立つ。
式1および式3より、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれRは、式4に示すように、第1ワイヤケーブル36の長さLf、第2ワイヤケーブル37の長さLbおよびRaによって表される。
歩行補助装置2を装着した訓練者の脚部が、立脚から遊脚に移行する時刻t1での進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれをR(t1)とする。時刻t1に続いて、遊脚から立脚に移行する時刻t2での進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれをR(t2)とする。このとき、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれRを、R(t1)とR(t2)の平均(R=(R(t1)+R(t2))/2としてもよい。
時刻t1のときの第1ワイヤケーブル36の長さをLf(t1)とすると、時刻t1のときの進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれR(t1)は式5で表される。
時刻t2のときの第1ワイヤケーブル36の長さをLf(t2)とすると、時刻t2のときの進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれR(t2)は式6で表される。
すなわち、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれRは、式5に示すR(t1)と式6に示すR(t2)の平均として、式7で表される。
また、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれRは、訓練者Uが数歩歩く期間における平均値としてもよい。このようにする場合、平均値の算出においてローパスフィルタなどのフィルタ処理を施してもよい。
次に、制御装置35により膝関節角度目標値θprefを調整する方法について説明する。
図5または図6に示すように、訓練中において、進行方向における訓練者Uの位置が基準位置Prからずれた場合、訓練者Uの位置を基準位置Prに戻すようにする必要がある。訓練中において、進行方向における訓練者Uの位置が基準位置Prからずれたときに、制御装置35は、訓練者Uの位置を基準位置Prに戻すために、歩行補助装置2の膝関節角度目標値θprefを調整する。上述したように、膝関節角度目標値θprefとは、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部が遊脚から立脚に移行する時の膝関節角度θp(図3参照)の目標値である。
図8は、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部が遊脚から立脚に移行する時の状態を示す模式図である。図8に示すように、膝関節角度目標値θprefを変更すると、それに伴って訓練者Uの歩幅Wが変わる。すなわち、膝関節角度目標値θprefを小さくすると、訓練者Uの歩幅Wが大きくなるので、訓練者Uは進行方向前方に進みやすくなる。一方、膝関節角度目標値θprefを大きくすると、訓練者の歩幅Wが小さくなるので、訓練者Uが進行方向前方に進み難くなる。このように、訓練中において、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置からずれに応じて膝関節角度目標値θprefを調整することにより、訓練者の歩幅が変更されるので、訓練者Uの位置を基準位置に戻すことができる。
図9は、経過時間に対する膝関節角度θpの推移の一例を示すグラフである。ここで、横軸は経過時間、縦軸は膝関節角度θpを表す。訓練者の歩行周期Nの開始時刻を時刻t1(N)とする。図9に示すように、時刻t1(N)において、訓練者Uの歩行補助装置2(図7参照)を装着した脚部は、立脚から遊脚に移動する。時刻t1(N)において、図7を用いて説明した、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれRを算出し、このずれRに応じて歩行周期Nにおける歩行補助装置2の膝関節角度目標値θprefを調整する。すなわち、歩行周期N−1における膝関節角度目標値θpref(N−1)に補正値Δθprefを加算した値を、膝関節角度θpref(N)とする(θpref(N)=θpref(N−1)+Δθpref)。
進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRが、所定の範囲内にある場合(−Rh≦R≦Rhの場合)、転倒の恐れは低いため、図9の実線L1で示すように、膝関節角度目標値θprefの補正を行わない。すなわち、−Rh≦R≦Rhの場合、Δθpref=0で、θpref(N)=θpref(N−1)である。
一方、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRが、所定の範囲から外れた場合には膝関節角度θprefの補正を行う。例えば、訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の前方に外れている場合(R>Rhの場合)、Δθpref=Ga×(R−Rh)とし、訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の後方に外れている場合(R<−Rhの場合)、Δθp=−Ga×(−R−Rh)とする。すなわち、Δθpref=sgn(R)×Ga×(|R|−Rh)とする。ここで、Gaはゲイン係数であり、sgn(R)は、Rが正のとき1、Rが負のとき−1、R=0のとき0である。Gaは、一定値としてもよいし、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRの大きさに応じて変わる可変値としてもよい。
訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の前方に外れている場合(R>Rhの場合)、図9の一点鎖線L2で示すように、補正値Δθpref>0であり、膝関節角度目標値θpref(N−1)に対して、補正後の膝関節角度目標値θpref(N)が大きくなる(θpref(N)>θpref(N−1))。これにより、訓練者Uの歩幅が小さくなり、訓練者Uの位置を進行方向の前方から基準位置Prに戻すことができる。訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の後方に外れている場合(R<−Rhの場合)、図9の破線L3で示すように、補正値Δθp<0であり、膝関節角度目標値θpref(N−1)に対して、膝関節角度目標角度θpref(N)が小さくなる(θpref(N)<θpref(N−1))。これにより、訓練者Uの歩幅が大きくなり、訓練者Uの位置を進行方向の後方から基準位置Prに戻すことができる。
図10は、訓練における、歩行訓練システム1の処理の流れを示すフローチャートである。なお、以下の説明では、図7および図9を適宜参照する。図10に示すように、まず、歩行訓練システム1が動作を開始する(ステップS1)。次に、歩行補助装置2を装着した脚部が、立脚から遊脚に移行する時に、第1ワイヤケーブル長検出部41が第1ワイヤケーブル36の長さを検出する(ステップS2)。次に、制御装置35が、第1ワイヤケーブル長検出部41により検出された第1ワイヤケーブル36の長さLfを用いて、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置からのずれRを算出する(ステップS3)。
ステップS3に続いて、ステップS3で算出した進行方向における訓練者Uの位置の基準位置からのずれRを用いて補正値Δθprefを算出する(ステップS4)。ここで、Δθprefの算出方法は上述したとおりである。そして、現在の膝関節角度目標値θprefcにステップS4で算出した補正値Δθprefを加算した値を調整後の膝関節角度目標値θprefnとする(ステップS5)。続いて、制御装置35が、訓練が終了したか否かを判断する(ステップS6)。ステップS6において、訓練が終了したと判断された場合(YESの場合)は処理を終了する。ステップS6において、訓練が終了していないと判断された場合(NOの場合)は処理をステップS2に戻す。
以上より、制御装置35は、訓練中において、第1ワイヤケーブル長検出部41により検出された第1ワイヤケーブル36の長さLfを用いて、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置からのずれを算出し、基準位置からのずれRに応じて膝関節角度目標値θprefを調整する。このようにすることで、訓練中に、訓練者Uの位置が基準位置よりも進行方向後方または前方にずれた場合にも、訓練者Uの位置を基準位置に戻すことができる。これにより、訓練者Uがトレッドミル31のベルトコンベア311からから外れてしまうのを抑制し、安全な位置で訓練を継続することができる。
[変形例1]
図5または図6に示すように、訓練中において、進行方向における訓練者Uの位置が基準位置Prからずれたときに、制御装置35は、訓練者Uの位置を基準位置Prに戻すために、歩行補助装置2の動作量としての足首関節角度目標値θqrefを調整してもよい。ここで、足首関節角度目標値θqrefとは、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部が立脚から遊脚に移行する時の足首関節角度θq(図3参照)の目標値である。
図11は、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部が立脚から遊脚に移行する時の状態を示す模式図である。図11に示すように、足首関節角度目標値θqrefを変更すると立脚から遊脚に移行する時の地面を蹴る力Fsが変わる。すなわち、足首関節角度目標値θqrefを大きくすると、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部が、立脚から遊脚に移行する時の地面を蹴る力Fsが大きくなり、訓練者Uの歩幅が大きくなるので、訓練者Uは進行方向前方に進みやすくなる。一方、足首関節角度目標値θqrefを小さくすると、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部が、立脚から遊脚に移行する時の地面を蹴る力Fsが小さくなり、訓練者の歩幅が小さくなるので、訓練者Uが進行方向前方に進み難くなる。このように、訓練中において、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置からずれに応じて膝関節角度目標値θqrefを調整することにより、訓練者の歩幅が変更されるので、訓練者Uの位置を基準位置に戻すことができる。
図12は、経過時間に対する足首関節角度θqの推移の一例を示すグラフである。ここで、横軸は経過時間、縦軸は足首関節角度θqを表す。訓練者の歩行周期Nの開始時刻を時刻t1(N)、訓練者の歩行周期N+1の開始時刻を時刻t1(N+1)とする。図12に示すように、時刻t1(N)、t1(N+1)において、訓練者Uの歩行補助装置2(図7参照)を装着した脚部は、立脚から遊脚に移動する。時刻t1(N)において、図7を用いて説明した、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれRを算出し、ずれRに応じて歩行周期N+1における歩行補助装置2の足首関節角度目標値θqref(N+1)を調整する。すなわち、歩行周期Nにおける足首膝関節角度目標値θpref(N)に補正値Δθqrefを加算した値を、足首関節角度θpref(N+1)とする(θqref(N+1)=θqref(N)+Δθqref)。
進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRが、所定の範囲内にある場合(−Rh≦R≦Rh)、転倒の恐れは低いため、図12の実線L4で示すように、足首関節角度目標値θqrefの補正を行わない。すなわち、−Rh≦R≦Rhの場合、Δθqref=0で、θqref(N+1)=θqref(N)である。
一方、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRが、所定の範囲から外れた場合には足首関節角度θqrefの補正を行う。例えば、訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の前方に外れている場合(R>Rhの場合)、Δθqref=−Gb×(R−Rh)とし、訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の後方に外れている場合(R<−Rhの場合)、Δθqref=Gb×(−R−Rh)とする。すなわち、Δθqref=−sgn(R)×Gb×(|R|−Rh)とする。ここで、Gbはゲイン係数であり、sgn(R)は、Rが正のとき1、Rが負のとき−1、R=0のとき0である。Gbは、一定値としてもよいし、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRの大きさに応じて変わる可変値としてもよい。
訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の前方に外れている場合(R>Rhの場合)、図12の一点鎖線L5で示すように、補正値Δθqref<0であり、足首関節角度目標値θqref(N)に対して、足首関節角度目標値θqref(N+1)が小さくなる(θqref(N+1)<θqref(N))。これにより、訓練者Uの歩幅が小さくなり、訓練者Uの位置を進行方向の前方から基準位置Prに戻すことができる。訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の後方に外れている場合(R<−Rhの場合)、図12の破線L6で示すように、補正値Δθqref>0であり、足首関節角度目標値θqref(N)に対して、足首関節角度目標値θqref(N+1)が大きくなる(θqref(N+1)>θqref(N))。これにより、訓練者Uの歩幅が大きくなり、訓練者Uの位置を進行方向の後方から基準位置Prに戻すことができる。
図13は、変形例1にかかる、訓練における、歩行訓練システム1の処理の流れを示すフローチャートである。図13に示すように、ステップS101〜S103は、図10に示したフローチャートのステップS1〜S3と同じである。よって、これらの処理については説明を省略する。
ステップS103に続いて、ステップS103で算出した進行方向における訓練者Uの位置の基準位置からのずれRを用いて補正値Δθqrefを算出する(ステップS104)。ここで、Δθqrefの算出方法は上述したとおりである。現在における足首関節角度目標値θqrefcにステップS104で算出した補正値Δθqrefを加算した値を調整後の足首関節角度目標値θqrefnとする(ステップS105)。ステップS105に続く、ステップS106は、図10に示したフローチャートのステップS6と同じであり、説明を省略する。
[変形例2]
図5または図6に示すように、訓練中において、進行方向における訓練者Uの位置が基準位置Prからずれた場合、制御装置35は、訓練者Uの位置を基準位置Prに戻すために第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力Ffを調整してもよい。具体的には、図7を用いて説明した、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれRを算出し、ずれRに応じて第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力Ffnを調整する。すなわち、現在における第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力Ffcに補正値ΔFfを加算した値を、調整後の第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力Ffnとする(Ffn=Ffc+ΔFf)。
進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRが、所定の範囲内にある場合(−Rh≦R≦Rh)、転倒の恐れは低いため、第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力Ffの補正を行わない。すなわち、−Rh≦R≦Rhの場合、ΔFf=0で、Ffn=Ffcである。
一方、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRが、所定の範囲から外れた場合には第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力Ffの補正を行う。例えば、訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の前方に外れている場合(R>Rhの場合)、ΔFf=−Gc×(R−Rh)とし、訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の後方に外れている場合(R<−Rhの場合)、ΔFf=Gc×(−R−Rh)とする。すなわち、ΔFf=−sgn(R)×Gc×(|R|−Rh)とする。ここで、Gcはゲイン係数であり、sgn(R)は、Rが正のとき1、Rが負のとき−1、R=0のとき0である。Gcは、一定値としてもよいし、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRの大きさに応じて変わる可変値としてもよい。
R>Rhの場合、補正値ΔFf<0であり、現在の第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力Ffcに対し調整後の第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力Ffnが小さくなる(Ffn<Ffc)ので、訓練者Uは進行方向前方に進み難くなり、訓練者Uの位置を進行方向の前方から基準位置Prに戻すことができる。R<−Rhの場合、補正値ΔFf>0であり、現在の第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力Ffcに対し調整後の第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力Ffnが大きくなる(Ffn>Ffc)ので、訓練者Uは進行方向前方に進みやすくなり、訓練者Uの位置を進行方向の後方から基準位置Prに戻すことができる。
図14は、変形例2にかかる、訓練における、歩行訓練システム1の処理の流れを示すフローチャートである。図14に示すように、ステップS201〜S203は、図10に示したフローチャートのステップS1〜S3と同じである。よって、これらの処理については説明を省略する。
ステップS203に続いて、ステップS203で算出した進行方向における訓練者Uの位置の基準位置からのずれRを用いて補正値ΔFfを算出する(ステップS204)。ここで、ΔFfの算出方法は上述したとおりである。現在における第1ワイヤケーブル36の引張力FfcにステップS204で算出した補正値ΔFfを加算した値を調整後の第1ワイヤケーブル36の引張力Ffnとする(ステップS205)。ステップS205に続く、ステップS206は、図10に示したフローチャートのステップS6と同じであり説明を省略する。
なお、変形例2において、第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力を調整する代わりに、第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力を調整するようにしてもよい。または、第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力とともに第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力を調整するようにしてもよい。第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力の、制御装置35による調整方法は、上述した、第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力の、制御装置35による調整方法と同様である。すなわち、現在における第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力Fbcに補正値ΔFbを加算した値を、調整後の第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力Fbnとする(Fbn=Fbc+ΔFb)。補正値ΔFbは、ΔFb=sgn(R)×Gd×(|R|−Rh)とする。ここで、Gdはゲイン係数である。Gdは、一定値としてもよいし、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRの大きさに応じて変わる可変値としてもよい。R=Rhの場合、補正値ΔFb=0で、第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力Fbnの補正を行わない。R>Rhの場合、補正値ΔFb>0となり、調整後の第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力Fbnが現在の第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力Fbcに対して大きくなる(Fbn>Fbc)。これにより、R>Rhの場合に、訓練者Uは進行方向前方に進み難くなる。また、R<Rhの場合、補正値ΔFb<0となり、調整後の第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力Fbnが現在の第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力Fbcに対して小さくなる(Fbn<Fbc)。これにより、R<Rhの場合に、訓練者Uは進行方向前方に進みやすくなる。
[実施の形態2]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1と共通の部分については共通の符号を付してその説明を省略する。
図15は、本発明の実施の形態2にかかる歩行訓練システム501の概略構成を示す斜視図である。図15に示すように、歩行訓練システム501は、音発生部としてのスピーカ506を備えている。その他の構成は実施の形態1にかかる歩行訓練システム1と同じである。
制御装置35は、各訓練者の訓練プログラムに基づく歩行リズムに合わせた音をスピーカ506から発生させる。すなわち、制御装置35は、訓練者Uの歩行補助装置2を装着した脚部が、立脚から遊脚に移行するタイミング、および、遊脚から立脚に移行するタイミングでスピーカ506から発生させる。訓練者Uは、スピーカ506から発生された音に合わせて歩行訓練を行う。
訓練中において、進行方向における訓練者Uの位置が基準位置Prからずれた場合、制御装置35は、訓練者Uの位置を基準位置Prに戻すためにスピーカ506が音を発生させるタイミングを調整する。具体的には、制御装置35は、進行方向における訓練者Uの位置Pcの基準位置PrからのずれRを算出し、当該ずれに応じてスピーカ506が音を発生させるタイミングを調整する。すなわち、現在における立脚から遊脚に移行するタイミングt3cに、補正値Δt3を加算した値を、調整後の立脚から遊脚に移行するタイミングt3nとし(t3n=t3c+Δt3)とする。同様に、現在における遊脚から立脚に移行するタイミングt4cに、補正値Δt4を加算した値を、調整後の遊脚から立脚に移行するタイミングt4nとする。進行方向における訓練者Uの位置の基準位置からずれの算出方法は、実施の形態1において図7を用いて説明したとおりである。
進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRが、所定の範囲内にある場合(−Rh≦R≦Rh)、転倒の恐れは低いため、立脚から遊脚に移行するタイミングt3および遊脚から立脚に移行するタイミングt4の調整を行わない。すなわち、−Rh≦R≦Rhの場合、Δt3=0およびΔt4=0で、t3n=t3cおよびt4n=t4cである。一方、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRが、所定の範囲から外れた場合には、立脚から遊脚に移行するタイミングt3および遊脚から立脚に移行するタイミングt4の調整を行う。
進行方向における訓練者Uの位置が基準位置に対して前方にずれている場合、制御装置35は、訓練プログラムに設定された、立脚から遊脚に移行するタイミング、および、遊脚から立脚に移行するタイミングよりも遅く音を発生させる。すなわち、訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の前方に外れている場合(R>Rhの場合)、Δt3=Ge×(R−Rh),Δt4=Gg×(R−Rh)とする。ここで、Ge,Ggはゲイン係数である。これにより、訓練者Uの歩行周期が長くなるので、訓練者Uの位置を進行方向の前方から基準位置Prに戻すことができる。Ge,Ggは、一定値としてもよいし、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRの大きさに応じて変わる可変値としてもよい。
進行方向における訓練者Uの位置が基準位置に対して後方にずれている場合、制御装置35は、訓練プログラムに設定された、立脚から遊脚に移行するタイミング、および、遊脚から立脚に移行するタイミングよりも早く音を発生させる。すなわち、訓練者Uの位置が基準位置Prに対して進行方向の後方に外れている場合(R<−Rhの場合)、Δt3=−Ge×(−R−Rh),Δt4=−Gg×(−R−Rh)とする。これにより、訓練者Uの歩行周期が短くなるので、訓練者Uの位置を進行方向の後方から基準位置Prに戻すことができる。
以上より、進行方向における訓練者Uの位置の基準位置PrからのずれRが、所定の範囲から外れた場合には、Δt3=sgn(R)×Ge×(|R|−Rh),Δt4=sgn(R)×Gg×(|R|−Rh)とする。これにより、訓練者Uの位置が基準位置Prからずれた場合に、訓練者Uの位置を基準位置Prに戻すことができる。
図16は、本実施の形態にかかる、訓練における、歩行訓練システム1の処理の流れを示すフローチャートである。図14に示すように、ステップS301〜S303は、図10に示したフローチャートのステップS1〜S3と同じである。これらの処理については説明を省略する。
ステップS303に続いて、ステップS303で算出した進行方向における訓練者Uの位置の基準位置からのずれRを用いて補正値Δt3およびΔt4を算出する(ステップS304)。ここで、Δt3およびΔt4の算出方法は上述したとおりである。そして、現在における立脚から遊脚に移行するタイミングt3cに補正値Δt3を加算した値を、補正後の立脚から遊脚に移行するタイミングt3nとし、現在における遊脚から立脚に移行するタイミングt4cに補正値Δt4を加算した値を、補正後の遊脚から立脚に移行するタイミングt4nとする(ステップS305)。ステップS305に続く、ステップS306は、図10に示したフローチャートのステップS6と同じであり説明を省略する。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。上記実施の形態1において、進行方向における訓練者の位置を基準位置に戻す方法として、制御装置35が、膝関節角度目標値、足首関節角度目標値、第1引張部33による第1ワイヤケーブル36の引張力、または第2引張部34による第2ワイヤケーブル37の引張力を調整することについて説明したが、これらの調整対象のうちから複数を任意に選択して調整するようにしてもよい。また、上記実施の形態1と上記実施の形態2を組み合わせた構成としてもよい。
上記実施の形態にかかる歩行訓練システムでは、第1ワイヤケーブル36の長さを検出する第1ワイヤケーブル長検出部41、および、第2ワイヤケーブル37の長さを検出する第2ワイヤケーブル長検出部42に基づいて、進行方向における訓練者Uの位置を把握する。進行方向における訓練者Uの位置を把握するために、さらに、赤外線センサ、フォトカップラ、圧力センサ、カメラで撮影した画像の処理等のうちの少なくとも1つを併せて用いるようにしてもよい。このようにすることで、進行方向における訓練者Uの位置の検出精度をさらに向上させることができる。