JP6807271B2 - 光硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、フィルムを成形加工する際に表面への傷つきを防止するため、フィルムに塗布するマスキング樹脂等に有用な光硬化性樹脂組成物に関する。
自動車内装部品やモバイル型電子製品のプラスチック筐体を成型する方法として、ポリエチレンテレフタレート(以下PET)に代表されるポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のフィルムを用いたインサート成形がある。インサート成形法は、上記フィルムに絵柄を印刷塗布したインサートフィルムを用い、当該フィルムを加熱により軟化させた状態で印刷面とは逆側の面から金型を用いて真空吸引することで立体形状に加工し、更に絵柄が印刷された凹面側に熱可塑性樹脂を射出成型してトリミングする方法が広く知られている。
インサート成形で加工された筐体表面は、インサートフィルムの基材がそのまま露出するため傷がつきやすく、そのためハードコート処理が行われる場合があり、そのハードコート樹脂として例えば、平均分子量200〜20000のトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーに、残存する未反応の水酸基をイソシアネート化合物と反応させてなること、を特徴とする樹脂組成物が提案されている。(特許文献)
しかしながら、ハードコート層を硬くしすぎると立体形状に加工する際、曲面のRが小さい部分でマイクロクラックが入るため、形状面ではRを小さくしないような制約を受けると同時に、ハードコート層についても硬くすることには限界があった。その結果、インサート成型のプロセスにおいてハードコート面に傷がついたり、ごみがついた状態で加熱〜立体成形されることにより、成型物表面にピットが形成されたりして歩留まりが低下するという問題があった。そのため、こうした問題への対応策としてハードコート面に保護フィルムを貼り合せる方法があるが、この方法ではインサートフィルムのコストを高くするということに加え、加工途中で剥離が発生するという新たな技術課題が発生し、改善の余地があった。
第4307458号
本発明は、フィルムを成形加工する際に表面への傷つきを防止するため、フィルムに塗布するマスキング樹脂で、フィルムとの密着性が良好で、成形時の伸びに追随でき、成形後には剥離性に優れる光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
請求項1記載の発明は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するブタジエンとアクリロニトリルの共重合体と、アニオン系界面活性剤と、単官能脂環式アクリレートモノマーと、を含む光硬化性樹脂組成物を提供する。
請求項2記載の発明は、フィルムに塗布するマスキング樹脂であることを特徴とする請求項1記載の光硬化性樹脂組成物を提供する。
請求項3記載の発明は、プラスチックフィルムを基材とし、請求項1または2記載の光硬化性樹脂組成物層が形成された成型用フィルムを提供する。
本発明の光硬化性樹脂は、フィルムを成形加工する際に表面への傷つきを防止するため、フィルムに塗布するマスキング樹脂等に有用な光硬化性樹脂組成物として有用である。
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の組成物の構成は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するブタジエンとアクリロニトリルの共重合体と、アニオン系界面活性剤である。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
本発明で使用する共重合体は、可撓性が良好で低温でも接着力に優れるブタジエンとアクリロニトリルを付加反応させた構造で、分子の両末端に(メタ)アクリロイル基を持つため、反応性の高い共重合体である。共重合体の重量平均分子量(以下Mwと表記)は、1000〜30000が好ましく、2000〜10000が更に好ましい。Mwを1000以上とすることで充分な凝集力を確保でき、30000以下とすることで、作業性に適した粘度に調整しやすくなる。凝集力が不足すると、成形したフィルムから剥離する際、ちぎれてスムーズに剥離できず生産性が低下する。なおMwはゲル透過クロマトグラフィー法により、標準ポリスチレン換算の分子量を測定・換算した。
ブタジエンとアクリロニトリルの共重合モル比率は、ブタジエン:アクリロニトリル=65〜90%:35〜10%が好ましく、75〜85%:25〜15%が更に好ましい。ブタジエンのモル比率を65%以上とすることで、共重合体のガラス転移点(以下Tgと表記)を低くしフィルムとの密着性を確保することができ、90%以下とすることでフィルムからの剥離性を安定化することができる。共重合体のTgは−30℃以下が好ましく、−40℃以下が更に好ましい。
ブタジエンとアクリロニトリル共重合体の側鎖には、反応性の高い官能基としてアクリロニトリルに起因するニトリル基の他に、ブタジエン構造に起因するビニル基、および末端に導入したメタクリル系化合物に起因するメタクリロイル基が存在してもよく、側鎖に官能基が存在することで架橋反応を促進し、凝集力の高い皮膜を形成することが期待できる。また末端の(メタ)アクリロイル基はより凝集力を上げられる点で、メタクリロイル基が好ましい。
本発明で使用する前記界面活性剤は、水中にて親水基がマイナスイオンに電離するアニオン型で、硬化皮膜とフィルムとの密着性をコントロールするため添加する。アニオン型界面活性剤にはその構造からカルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型等があるが、これらの中ではブタジエンとアクリロニトリル共重合体と相溶性が良い硫酸エステル型が好ましく、更にフィルムとの密着力と剥離性のバランスの観点から、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウムがとりわけ好ましい。
アニオン系界面活性剤の添加量は、全固形分に対する配合量は0.5〜13重量%が好ましく、1〜10重量%が更に好ましい。0.5重量%以上とすることで充分な剥離性を確保することができ、13重量%以下とすることで剥離性と密着力とのバランスを取ることが可能となる。
上記に加えて、本組成物には更に単官能脂環式アクリレートモノマーを含んでも良い。アクリレートモノマーを添加することで、作業性に適した粘度に希釈することができ、また光硬化性を向上させることが可能となる。同じ単官能であっても芳香族のアクリレートモノマーのみを配合した場合は、硬化皮膜が硬くなり剥離しやすくなる傾向があり、また2官能以上の多官能アクリレートモノマーのみを配合した場合は、架橋度が上がりすぎ皮膜の伸びが低くなる傾向があり、成型性で悪影響を及ぼす場合がある。全固形分に対する配合量は40〜70重量%が好ましく、45〜65重量%が更に好ましく、50〜60重量%がとりわけ好ましい。40重量%以上とすることで充分な光硬化性を確保でき、70重量%以下とすることで作業性に適した粘度とすることができる。
単官能の脂環式アクリレートモノマーとしては、例えばジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンタニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレートなどがあり、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、低粘度で、共重合体との相溶性が良く、また皮膚への刺激性が低いイソボルニルアクリレートが好適である。
本発明で使用される光重合開始剤は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、汎用の光重合開始剤で良い。配合量はラジカル重合性成分100重量部に対し、3〜13重量%配合することが好ましく、5〜12重量%が更に好ましい。
光重合開始剤としては、例えば2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンなどがあり、単独または2種以上を併用してもよい。これらの中では反応性が非常に高く、表面硬化性に優れるα−アミノアルキルフェノン系が好ましい。
更に加えて本発明の光硬化性樹脂組成物は、性能を損なわない範囲で、更に必要に応じ反応性希釈剤、可塑剤、粘着付与剤、酸化防止剤、難燃剤、充填剤、シランカップリング剤、重合禁止剤などの添加剤、および溶剤を併用することができる。
可塑剤としては、例えばブタジエンとアクリロニトリルの共重合体と相溶性の良いオリゴマーまたはポリマーがあり、具体的にはポリブタジエンの液状ポリマーがあげられる。末端や側鎖には水酸基のような官能基を含んでも良く、全固形分に対する配合量は10重量%以下が好ましい。市販品としてはPolybd(商品名:出光興産社製、水酸基末端ポリブタジエン)などがある。
光硬化性樹脂組成物を塗布するフィルムとしては種々公知なものが使用でき、プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム、シクロオレフィン(コ)ポリマーフィルム等を挙げることができる。
光硬化性樹脂組成物を塗布したプラスチックフィルムは、基材に傷がつきにくい各種の成形フィルムとして使用できる。成形フィルムの用途としては、例えばシートを加熱軟化させオスメス型で加圧成形する熱高圧成型、シートを型の上に固定して加圧軟化させ圧縮空気で成型する圧空成型、シートを加圧軟化させ型に挟み込み真空にする真空成形、高圧成形などで加工したフィルムにプラスチックを射出成形するインサート成形などが挙げられる。
特にこれらの中でインサート成形に用いるインサートフィルムとしては、加工性、印刷性、汎用性などの点でPETフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルムが好ましい。またフィルムの厚みとしては23μm〜250μmが例示できるが、加工性の点で75μm〜150μmが好ましい。光硬化性樹脂組成物は、これらフィルムに直接塗布しても良いし、これらフィルムにハードコート層が塗布された上に塗布しても良い。ハードコート層の厚みとしては0.1〜10μmが例示されるが、加工性及び耐擦傷性の点で0.3〜5μmが好ましい。
光硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成できる。塗布する膜厚は、硬化膜厚として20μm〜200μmを例示できるが、加工性の点で30μm〜60μmが好ましい。
光硬化性樹脂組成物を塗布した後は、紫外線照射機を用いて100mW/cm〜3000mW/cmの照射強度で、積算光量が300mJ/cm以上の紫外線処理を行い硬化させる。紫外線発生光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極放電ランプ等の公知の光源が使用でき、照射する雰囲気は空気中でもよいし、また窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。
実施例1〜5
末端にメタクリロイル基を有するブタジエンとアクリロニトリルの共重合体としてVTBNX(商品名:CVC ThermosetSpecialities社製、ブタジエン:アクリロニトリル=82:18、Mw3900、Tg−49℃)を、アニオン系界面活性剤としてハイテノールHF−17(商品名:第一工業製薬社製、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸アンモニウム)を、単官能アクリレートモノマーとしてIB−XA(商品名:共栄社化学社製、イソボルニルアクリレート)を、光重合開始剤としてIrgacure379EGおよびIrgacure184およびLucirinTOP(商品名:BASFジャパン社製)を、可塑剤としてPoly bd45(商品名:出光興産社製、水酸基末端ポリブタジエン液状ポリマー)を表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、実施例1〜5の光硬化性透明樹脂組成物を調製した。
比較例1〜5
実施例で用いた材料の他、アクリル系オリゴマーとしてRX71−44IB90(商品名:亜細亜工業社製、ブタジエン骨格ウレタンアクリレート)を、界面活性剤としてDOS(商品名:豊国製油社製、セバシン酸ビス(2エチルヘキシル))を、シリコン系表面調整剤としてBYK−UV3570(商品名:ビックケミー社製)を、ポリエーテル系表面調整剤としてBYK−UV3535(商品名:ビックケミー社製)を表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し、比較例1〜5の光硬化性透明樹脂組成物を調整した。
表1
評価方法は以下の通りとした。
紫外線硬化条件
フュージョンUVシステムズジャパン製の無電極UV照射装置F300S/LC−6Bを用い、Hバルブ、700mW/cm、積算光量が600mJ/cmとした。
粘度:東機産業製のコーンプレート型粘度計RC−550Rを用い、コーン角3°×R17.65で25±1℃、回転数1rpmで測定し、200〜5,000mPa・sを○、この範囲から外れる場合を×とした。なお相溶性が悪く均一に溶解しない場合は、混合不良とした。
伸び率:ミネベア製の引張圧縮試験機テクノグラフTGI-1kNを用いて、チャック間距離を70mmとし、クロスヘッドスピード300mm/分で引張り試験を実施して、破断するまでの変位から伸び率を算出した。算出式は以下とし、伸び率が150%以上を○、未満を×とした。
伸び率(%)= 破断時の変位(長さ)÷70mm×100
例)全く伸びずに破断した場合:70mm÷70mm×100=100%
試験片は上記紫外線硬化条件で硬化させた厚さ1mmの樹脂組成物を、JIS K6251に準拠した3号ダンベル型にて打ち抜きしたサンプルを用いた。
剥離性:厚さ180μmのパンライトシートPC2151(商品名:帝人社製、ポリカーボネートフィルム) 100mm×100mmの上に、厚さ100μmの光硬化性樹脂組成物を塗布し上記条件で硬化させた試験片を用い、硬化した被膜を手で剥離した際に、膜がちぎれずに全て剥離できた場合を○、膜は一部ちぎれたが全て剥離できた場合を△、ちぎれて剥離できなかった場合を×とした。
密着強度:25mm×150mmのパンライトシートPC2151上に、厚さ100μmの光硬化性樹脂組成物を塗布し上記条件で硬化させた試験片を、引張圧縮試験機テクノグラフTGI-1kNを用いて、クロスヘッドスピード300mm/分でT字剥離試験を行い、3N/25mm未満を○、以上を×とした。また○の中でも特に0.5N/25mm未満の場合は◎とした。
評価結果
表2
実施例の各樹脂組成物は粘度、伸び率、皮膜強度、剥離性いずれの評価においても良好な結果を得た。
一方、共重合体の替わりにウレタンアクリレートを用いた比較例1は相溶性が悪く、HF17を抜いた比較例2、HF17の替わりにDOS、UV3535を用いた比較例3,5は皮膜強度が劣り、更にHF17の替わりにUV3570を用いた比較例4は相溶性が悪く、いずれも本願発明に適さないものであった。
本願発明の光硬化性樹脂組成物は、インサートフィルム用のマスキング樹脂として有用である。


Claims (3)

  1. 末端に(メタ)アクリロイル基を有するブタジエンとアクリロニトリルの共重合体と、アニオン系界面活性剤と、単官能脂環式アクリレートモノマーと、を含む光硬化性樹脂組成物。
  2. フィルムに塗布するマスキング樹脂であることを特徴とする請求項1記載の光硬化性樹脂組成物。
  3. プラスチックフィルムを基材とし、請求項1または2記載の光硬化性樹脂組成物層が形成された成型用フィルム。
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