以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明に係るカード型電子装置として、カード型記憶装置を取り上げる。また、本発明に係る電子機器として、カード型記憶装置の挿抜が可能なスロットを備える撮像装置を取り上げることとする。
図1は、本発明の実施形態に係るカード型記憶装置を利用する撮像装置を含む撮像システムの構成を説明する図である。撮像システムは、カメラ本体1、レンズユニット2、カード型記憶装置5、カードリーダ6、接続ケーブル7及びパーソナルコンピュータ(PC)8を有する。カメラ本体1は、所謂、デジタル一眼レフカメラのボディである。カメラ本体1は、レンズユニット2の着脱を可能とするためのインタフェース3(マウント)と、カメラ本体1に対する各種操作を行う操作部4と、レンズユニット2を通過した光の像を画像データに変換する撮像素子を有する。カメラ本体1、レンズユニット2及びカード型記憶装置5により、撮像装置が構成される。
カード型記憶装置5は、カメラ本体1とカードリーダ6のそれぞれに対して挿抜(挿入/抜去)可能な、扁平で薄い略矩形のカード形状を有する。カメラ本体1に所定のレンズユニット2が装着され、且つ、カード型記憶装置5が装着された状態での撮像により、画像データがカード型記憶装置5に記憶される。カードリーダ6とPC8とは、接続ケーブル7により通信可能に接続される。カード型記憶装置5がカードリーダ6に挿入された状態で、カード型記憶装置5に格納された画像データをPC8へ接続ケーブル7を介して送信することができる。なお、PC8は、ネットワーク上のサーバ等であってもよい。また、カード型記憶装置5とPC8とは、接続ケーブル7を用いずに、無線通信により通信可能に接続されてもよい。更に、カードリーダ6を用いずにカメラ本体1とPC8とが通信可能に接続されることにより、カメラ本体1に装着されたカード型記憶装置5とPC8との間で通信が可能な構成であってもよい。
図2(a)は、撮像装置の概略構成を示すブロック図である。図2(a)では、図1に示した構成要素と同じ構成要素については、同じ符号を付している。カメラ本体1は、操作部4、カメラシステム制御回路10、記憶部11、撮像素子12、画像処理部13、表示部14及び伝熱部15を備える。レンズユニット2は、レンズシステム制御回路20、レンズ駆動部21及び撮像光学系22を有する。なお、カメラ本体1とレンズユニット2は、前述した通り、インタフェース3を介して着脱自在となっている。
カメラシステム制御回路10は、マイクロコンピュータやASIC等の専用プロセッサであり、撮像装置の全体的な動作を制御する。操作部4がユーザにより操作されることにより、カメラシステム制御回路10に対して各種の動作が指示され、カメラシステム制御回路10は、操作部4からの入力に応じた動作や処理を行う。撮像素子12は、撮像光学系22から導かれた光の像を電気信号に変換し、画像処理部13へ供給する。カメラシステム制御回路10、レンズシステム制御回路20及びレンズ駆動部21は、撮像光学系22を駆動して、所謂、AF(自動合焦)やAE(自動露出)等を行う。表示部14は、撮影者が被写体を確認するためのファインダや、被写体や撮影された画像、カメラ本体1の設定条件等の表示が可能な液晶パネルを含む。
画像処理部13は、A/D変換器、ホワイトバランス調整回路、ガンマ補正回路、補間演算回路等を有しており、撮像素子12から供給された電気信号に基づいて画像データを生成する。また、画像処理部13は、画像データや音声データ等の圧縮/伸張を行う。記憶部11は、カード型記憶装置5の挿抜が可能なスロットと、カード型記憶装置5とカメラシステム制御回路10及び画像処理部13との間での通信を可能にするインタフェースを有する。カメラシステム制御回路10による指示に応じて、画像処理部13で生成された画像データがカード型記憶装置5へ書き込まれ、逆に、カード型記憶装置5に格納された画像データが画像処理部13へ読み出される。
伝熱部15は、ヒートパイプもしくはグラファイトシート等で構成されており、撮像装置内で熱源となる画像処理部13及び記憶部11をカメラ本体1の放熱部(例えば、外装部材等)に熱的に接続する。これにより、カメラ本体1の内部で生じた熱を、自然対流や放射等により撮像装置から外部の空間に放出することができる。なお、撮像装置について、カード型記憶装置5以外については周知の構成を用いることができるため、カード型記憶装置5以外の構成要素についてのより詳細な説明は省略する。
図2(b)は、カード型記憶装置5の電気的な概略構成を示すブロック図である。カード型記憶装置5は、電源IC27、カードコントローラ28及びフラッシュメモリ29を有する。カメラ本体1は、ホスト電源24及びホストコントローラ25を有する。カード型記憶装置5は、カメラ本体1(記憶部11)に対してカードインタフェース26を介して電気的に接続される。なお、カードインタフェース26の仕様は、カード型記憶装置5について定められた規格に沿うものとなっている。
カードインタフェース26の電源供給用接点を介してホスト電源24と電源IC27とが接続されると共に、カードインタフェース26の信号伝達用接点を介してホストコントローラ25とカードコントローラ28とが接続される。ホスト電源24は、カメラ本体1が有するバッテリ及び電源IC等からなる安定電源である。電源IC27は、ホスト電源24から供給された電力を用いてカードコントローラ28及びフラッシュメモリ29の動作に必要な電圧レベルを作成し、それぞれに供給する。ホストコントローラ25は、カードコントローラ28との間のデータ通信と通信の制御を行う制御手段であり、その機能はカメラシステム制御回路10又は画像処理部13に持たせることができる。フラッシュメモリ29は、画像処理部13から受信した画像データ等の画像データを格納する。カードコントローラ28は、エラー訂正、ブロック管理、ウェアレベリング等の機能を有する。カードコントローラ28は、ホストコントローラ25を介して画像処理部13から送られてきた画像データをフラッシュメモリ29に格納し、また、フラッシュメモリ29に格納されたデータを画像処理部13へホストコントローラ25を介して送出する。なお、ここでは、1つのフラッシュメモリ29を示しているが、電源IC27とカードコントローラ28が複数のフラッシュメモリ29に対応する構成となっていてもよい。
図3(a)は、カメラ本体1に対するカード型記憶装置5の挿抜の形態を模式的に説明する図である。カメラ本体1の背面部には、フック30aを有するスロット蓋30と、フック30aを操作するボタン4aが設けられている。なお、ボタン4aは、操作部4の構成要素の1つである。ボタン4aが押下されると、スロット蓋30に設けられたフック30aの係合が外れて、スロット蓋30が開き、カード型記憶装置5が挿抜されるスロット31の開口部が外部に露出する。こうして、カード型記憶装置5のスロット31に対する挿抜が可能となる。カメラ本体1には、スロット31に隣接してイジェクトボタン46が設けられており、スロット31にカード型記憶装置5が挿入(装着)されると、イジェクトボタン46が突出する。イジェクトボタン46がカメラ本体1側へ押し込まれると、カード型記憶装置5はスロット31から指等による把持が可能な位置まで突出し、これにより、カード型記憶装置5をスロット31から抜去することが可能になる。
スロット31は、同種又は異種の2枚のカード型記憶装置5を平行に装着可能な構造を有する。スロット蓋30には、不図示の開閉検知センサが設けられている。カメラシステム制御回路10は、開閉検知センサからの信号によりスロット蓋30が閉じられたことを検知すると、カード型記憶装置5のスロット31への装着の有無を確認する。そして、カメラシステム制御回路10は、カード型記憶装置5がスロット31に装着されている場合に、カメラ本体1とカード型記憶装置5との間での通信を可能とする。一方、カメラシステム制御回路10は、ボタン4aが押下されると、カメラ本体1とカード型記憶装置5との間の通信を速やかに終了させる。
図3(b)は、スロット31の概略構成と、カード型記憶装置5のスロット31への挿入方法を説明する模式図であり、スロット31の構成を分解して示している。スロット31は、スロット側基板41、スロットベース42、スロットカバー45及びスロット枠体301を備える。スロットベース42は、スロット側基板41に固定される。スロットベース42は、カード型記憶装置5のカード電気接点58(図4参照)と電気的に接続されるスロット側コネクタ42aと、カード型記憶装置5の挿入時に先端部となる端子面51(図4参照)が突き当てられるカード突き当て面42dを有する。また、スロットベース42には、複数のスロット電気接点43が圧入保持されている。スロット電気接点43は、通信信号に対応する通信用スロット電気接点43aと、電源用信号に対応する電源用スロット電気接点43bとを有する。電源用スロット電気接点43bは、図2(b)に示したホスト電源24と電源IC27との電気的接続に用いられる。通信用スロット電気接点43aは、図2(b)に示したホストコントローラ25とカードコントローラ28との電気的接続に用いられる。
スロットベース42には、リフローに耐えられる耐熱性、小型薄型に作成するための薄肉性、複雑な形状を成形可能な湯流れ性及び摺動性等の観点から、LCP(液晶ポリマー)からなる成形品(例えば、射出成形品)が好適に用いられる。スロット電気接点43には、カード型記憶装置5のカード電気接点58と適切な力で接触させるためのバネ性、はんだの濡れ性、接点電気抵抗等の観点から、リン青銅にメッキ処理(例えば金メッキ等)が施されたものが好適に用いられる。スロットカバー45は、薄肉での強度、加工性、耐食性等の観点からステンレスのバネ鋼が好適に用いられる。
スロット枠体301は、四角枠状の形状を有し、スロット側基板41及びスロットベース42に固定される。スロット枠体301は、カード型記憶装置5の挿入方向を示す矢印50方向に延在し、カード型記憶装置5の挿抜時にカード型記憶装置5を案内するスロット側ガイド部301a,301bを有する。図3(b)では、スロット側ガイド部301aは、スロット31の幅方向(カード型記憶装置5の挿抜方向及びスロット側基板41の厚み方向の両方向と直交する方向)でスロット側ガイド部301bと対向しているが、図示の視点の関係で見えていない。
スロット枠体301は、カード型記憶装置5からの放熱を行う機能役割を担うため、金属材料で形成されていることが望ましい。一方、スロットベース42には、スロット側コネクタ42aとスロット電気接点43が設けられるため、前述の通り、LCP等の誘電材料(絶縁材料)で形成されていることが望ましい。そのため、スロットベース42とスロット枠体301には、異種材料からなる別部品を用いることが望ましい。但し、スロットベース42において必要となる絶縁部のみを樹脂等の絶縁材料で形成し、その他の部分が金属材料から構成されるようにスロットベース42とスロット枠体301を一体形成(製造)したものを用いることもできる。
カード型記憶装置5の幅方向(カード型記憶装置5がスロット31に装着されたときのスロット31の幅方向に対応する)の外側の面にはそれぞれ、カード側ガイド部55a,56aが設けられている。カード型記憶装置5は、スロットカバー45で粗く位置決めされながら(がたつきの多い状態で案内されながら)、矢印50方向に挿入される。その後、カード側ガイド部55a,56aがそれぞれスロット側ガイド部301a,301bと係合し、カード型記憶装置5は、矢印50方向に精密に位置決めされて案内される。カード型記憶装置5は、最終的にスロットベース42のカード突き当て面42dに当接する位置まで挿入され、これにより、スロット電気接点43とカード電気接点58が接触して、カード型記憶装置5とカメラ本体1との間の安定した通信が可能となる。なお、図3(b)では、イジェクトボタン46と、イジェクトボタン46の押下によるカード型記憶装置5の抜去機構の図示を省略しており、また、カード型記憶装置5の抜去動作についても、本発明とは直接の関係がないため、説明を省略する。
図4(a)は、カード型記憶装置5の概略構造を示す斜視図である。カード型記憶装置5は、前述の通り、扁平で薄い略矩形のカード形状を有する。そこで、説明の便宜上、図4(a)に示すようにカード型記憶装置5に対して、互いに直交する3方向として、厚み方向、挿抜方向及び幅方向を規定することとする。厚み方向は、カード型記憶装置5において、最も小さい寸法となる方向である。挿抜方向は、スロット31に対してカード型記憶装置5が挿入/抜去される方向である。幅方向は、厚み方向及び挿抜方向の両方向と直交する方向である。これに伴い、カード型記憶装置5の厚み方向の2面をそれぞれ第一面53及び第二面54と称呼し、挿抜方向の2面をそれぞれ端子面51及び後端面52と称呼する。なお、図4(a)では、図示の視点の関係で、後端面52と第一面53は見えていない。カード型記憶装置5の第二面54には第二面カードラベル57が貼り付けられている。第二面カードラベル57には、カード型記憶装置5の対応規格、記憶容量、通信速度等の情報が記載されている。
図4(b)は、第二面カードラベル57を剥離させた状態で、カード型記憶装置5を第二面54側から第一面53側へ向けて厚み方向から見た平面図であり、上側が端子面51側、下側が後端面52側となっている。第二面カードラベル57が剥離されると、第二面カードラベル57が貼り付けられていた第二面カード外装63の全体が現れる。第二面カード外装63は、後端面52側と幅方向側をカード枠体62によって囲まれている。
図4(c)は、カード型記憶装置5を、第一面53側から第二面54側へ向けて厚み方向から見た平面図であり、上側が端子面51側、下側が後端面52側となっている。図4(c)には、第一面カード外装67の表面に第一面カードラベル68が貼り付けられた状態が示されている。第一面カード外装67は、後端面52側と幅方向側をカード枠体62によって囲まれている。第二面カード外装63と第一面カード外装67は、カード側コネクタ61(図4(e)参照)及びカード枠体62と共に、カード型記憶装置5の外装(カード筐体)を構成する部品である。なお、第一面カードラベル68は、例えば、ユーザのメモ欄等に用いられる。
図4(d)は、カード型記憶装置5から第二面カード外装63を取り除いた状態を第二面54側から第一面53側へ向けて厚み方向から見た平面図(図4(b)から第二面カード外装63を取り除いた平面図)である。図4(e)は、カード型記憶装置5から第一面カード外装67を取り除いた状態を、第一面53側から第二面54側へ向けて厚み方向から見た平面図(図4(c)から第一面カード外装67を取り除いた平面図)である。カード型記憶装置5は、カード側基板64、カード側コネクタ61、カード枠体62、フラッシュメモリIC65a,65b,65c,65d、コントローラIC69を有する。
カード側基板64の第二面54側には、フラッシュメモリIC65a,65bが実装されており、カード側基板64の第一面53側には、フラッシュメモリIC65c,65d及びコントローラIC69が実装されている。フラッシュメモリIC65a〜65dは、図2(b)に示したフラッシュメモリ29に相当する。コントローラIC69は、図2(b)に示したカードコントローラ28に相当する。また、不図示の電源ICやコンデンサ等が、カード側基板64上に設定された実装領域66a,66bに実装される。
コントローラIC69は、カード型記憶装置5において最も消費電力が大きく、そのため、コントローラIC69の動作によって多くの熱が発生する。また、フラッシュメモリIC65a〜65dでも、動作によって熱が発生する。つまり、フラッシュメモリIC65a〜65d及びコントローラIC69は、動作により熱を発生する電子部品である。なお、以下の説明では、コントローラIC69やフラッシュメモリIC65a〜65d等を特に区別することなく、動作することによって熱を発生する電子部品として説明する際に「発熱性素子」という称呼を用いることとする。
略コの字形状に構成されたカード枠体62の幅方向(左右)の内壁部には、後述する熱伝導部材302a,302b(不図示)が配置される。また、カード枠体62には、熱伝導部材302a,302bを介してカード側基板64を可動な状態で支持するための後述する基板受け部62a,62b(不図示)が設けられる。熱伝導部材302a,302b及び基板受け部62a,62bは、カード側基板64上で発生した熱をカード枠体62全体へ伝える役割を果たす。そのため、カード枠体62は、カード側基板64で発生した熱を外部へ放熱する役割を担うことから、熱伝導率の高い銅合金等の金属材料で形成されていることが望ましい。一方、カード型記憶装置5は、可搬性の電子装置であるため、ユーザが撮像装置の使用後すぐにカード型記憶装置5をスロット31から取り出す事態が想定される。したがって、カード側基板64で発生した熱によって温度が上昇したカード枠体62をユーザが直接に把持することを防止する観点から、カード枠体62には把持部303が設けられている。把持部303は、熱伝導性の低い樹脂やテープ等で形成されており、ユーザが火傷を負うことや、カード型記憶装置5が熱かったために反射的にカード型記憶装置5を落としてしまうこと等を防止する役割を担う。把持部303は、インサート成形等によりカード枠体62と一体形成されていてもよいし、別部材として準備されてカード枠体62に組み付けられてもよい。
カード型記憶装置5の端子面51側に対応するカード側基板64の先端側には、カード側コネクタ61を実装するためのランドが設けられており、はんだ付けにより、カード側基板64とカード側コネクタ61とは位置決めされた状態で相互に固定される。カード側コネクタ61には、スロットベース42と同様に、リフローに耐えられる耐熱性、小型薄型に作成するための薄肉性、複雑な形状を成形可能な湯流れ性及び摺動性等の観点から、LCPからなる成形品が好適に用いられる。カード型記憶装置5の端子面51では、カード側コネクタ61に設けられたカード電気接点58が露出する。カード電気接点58はバネ性を有しておらず、カード電気接点58には、はんだの濡れ性や接点電気抵抗等の観点から、銅合金にメッキ処理(例えば金メッキ等)が施されたものが好適に用いられる。カード側コネクタ61には、穴部と嵌め込みスナップフィットのための係合部が設けられており、カード電気接点58は穴部に圧入されることによってカード側コネクタ61に保持されている。
図5は、カード型記憶装置5がスロット31に装着された状態での構成を示す図である。図5(a)は、カード型記憶装置5の平面図である。図5(b)は、図5(a)に示す矢視B−Bの断面図である。図5(c)は、図5(a)に示す矢視C−Cの断面図である。図5(d)は、図5(a)に示す矢視D−Dの断面図である。なお、図5(b)〜(d)では、図示内容が煩雑になるのを避けるため、熱伝導部材302a,302bにのみハッチングを付して、その他の各種部材の断面を明示するためのハッチング表示を省略している。
図5(d)に示されるように、カード枠体62の幅方向部位の内側には基板受け部62a,62bが設けられており、基板受け部62a,62bの第二面54側の面となる基板受け面304a,304bに、熱伝導部材302a,302bが配置されている。熱伝導部材302a,302bは、挿抜方向の寸法が長く、厚み方向と幅方向の寸法が短い短冊状の形状を有しており、例えば、シリコーンゴム等の弾性のある熱伝導性材料が用いられる。熱伝導部材302a,302bは、カード側基板64の幅方向側の一部と密着するように、且つ、長手方向が挿抜方向と略平行となるように、カード枠体62に対して配置される。これにより、カード側基板64で発生した熱を熱伝導部材302a,302bを介してカード枠体62へ逃がすための放熱パスが形成される。
図5(b)には、スロット電気接点43とコントローラIC69を含む位置での構造が示されており、図5(c)には、カード枠体62の一方の基板受け部62bと一方の熱伝導部材302bを含む位置での構造が示されている。コントローラIC69は、カード側基板64においてスロット側基板41と対向する面に実装されている。また、フラッシュメモリIC65a〜65dは、カード側基板64の両面に2個ずつ実装されている。そのため、カード側基板64のスロット側基板41側での発熱量の合計は、スロットカバー45側での発熱量の合計よりも大きくなる。これに応じて、基板受け面304a,304bは、厚み方向においてカード側基板64よりもスロット側基板41側となる位置に設けられている。つまり、カード側基板64おいてコントローラIC69が実装された面が熱伝導部材302a,302bと接触する構造となっている。これにより、カード側基板64において発熱量の合計が大きくなる面で発生した熱を、熱伝導部材302a,302bを介してカード枠体62へ効率的に伝熱することができ、よって、カード側基板64の温度上昇を効率的に抑制することができる。
カード枠体62の後端面52側には、カード側基板64を支持する凹部62cが、後端面52に沿って幅方向に延在するように設けられている。凹部62cの第二面54側には、カード側基板64を厚み方向の第二面54側から支持する基板支持面305が設けられている。カード側基板64の第二面54側の後端部は、凹部62cにおいて基板支持面305と当接し、これにより、基板支持面305はカード側基板64を第一面53側へ押圧する。一方、カード側基板64は、熱伝導部材302a,302bが有する弾性に起因する反力を受けることで、カード側基板64を第二面54側へ押圧する。こうして、カード側基板64は、基板支持面305から受ける力と熱伝導部材302a,302bから受ける力によってカード枠体62に保持される。このとき、カード側基板64は、熱伝導部材302a,302bを介して、基板受け部62a,62bの基板受け面304a,304bに対してがたつくことなく保持される。このようなカード側基板64の保持構造は、後述するカード型記憶装置5の組み立て手順により実現される。
ところで、スロット31を構成するスロット枠体301は、図5(d)に示すように、厚み方向ガイド面301c,301dを備える。厚み方向ガイド面301c,301dはそれぞれ、スロット側ガイド部301a,301b(図3(b)参照)のそれぞれと直交するように、スロットカバー45側に設けられている。カード型記憶装置5は扁平形状を有するため、厚みを増加させずに所定の体積を維持しようとすると、必然的に厚み方向ガイド面301c,301dと接触する面は、スロット側ガイド部301a,301bと接触する面よりも小さくなる。一方、カード型記憶装置5からの放熱性を向上させるためには、カード型記憶装置5とスロット枠体301との接触面積は大きいことが望ましい。また、カード型記憶装置5において発熱量が大きいコントローラIC69に近い部位でスロット枠体301に対する接触面積を大きくすることにより、効率的な伝熱を行うことができる。したがって、カード枠体62において多くの熱を伝えるスロット側基板41側にスロット側ガイド部301a,301bを設けることが望ましい。
次に、カード型記憶装置5の分解斜視図を参照して、カード型記憶装置5の組み立て手順について説明する。図6は、カード型記憶装置5の分解斜視図である。最初に、カード側基板64とカード側コネクタ61とがはんだ付けにより接合(結合)される。カード枠体62には、カード側コネクタ61との係合部であるカード側コネクタ係合部62d,62eが設けられており、続いて、カード側コネクタ61とカード枠体62との係合が行われる。このとき、カード枠体62に設けられた基板受け部62a,62bの第一面53側の面である基板受け面304a,304bに配置された熱伝導部材302a、302bにカード側基板64が接触する。そして、厚み方向から第一面カード外装67と第二面カード外装63が、カード枠体62に対して嵌め込みスナップフィット(所謂パッチン止め)により組み付けられ、こうして、カード型記憶装置5のカード筐体が完成する。なお、図6には、カード型記憶装置5の構成の理解を容易にするために、第一面カード外装67が先にカード枠体62に嵌め込まれた状態を示している。最後に、第一面カードラベル68及び第二面カードラベル57を貼りつけることにより、カード型記憶装置5は完成する。なお、上記の説明以外の部品は、圧入やはんだ付けにより予めカード側コネクタ61又はカード側基板64に取り付けられている。
このように、カード型記憶装置5の組み立てでは、カード側基板64とカード側コネクタ61とがはんだ付けされた後に、カード側コネクタ61とカード枠体62との係合が行われる。そのため、カード側コネクタ61とカード枠体62とが係合されるときにカード側基板64が熱伝導部材302a,302bに対して押し当てられるようにすることが、組み立て工程上、望ましい。換言すれば、カード側コネクタ61とカード枠体62との係合方向が、カード側基板64と熱伝導部材302a,302bとの接触面と略直交することが望ましい。このような観点から、カード側コネクタ61及びカード側基板64は、カード枠体62に対して厚み方向の第二面54側から組み付けられる。この点について、図7を参照してより詳細に説明する。
図7は、カード型記憶装置5の組み立て手順を説明する図である。図7(a)は、カード側コネクタ61がはんだ付けされたカード側基板64とカード枠体62とを係合させる途中の状態を表す斜視図である。図7(b)は、図7(a)に示す矢視F−Fでの断面図である。前述の通り、カード側基板64の後端部は、カード枠体62に設けられた凹部62cに挿入されて基板支持面305に当接し、基板支持面305によってカード側基板64は厚み方向の第一面53側へ押圧される。このような状態を、端子面51側から後端面52側へカード側基板64を係合させていくことで実現するのは容易ではない。また、このような方法では、熱伝導部材302a,302bを基板受け面304a,304bに配置することも容易ではない。
そこで図7に示すように、カード枠体62の凹部62cにカード側基板64の後端部を斜めに挿入した後、カード側コネクタ61がカード側コネクタ係合部62d,62eと係合するように矢印309方向にカード側コネクタ61及びカード側基板64を回転させる。このとき、カード側基板64の後端部と基板支持面305との接触部が支点となることで、カード側コネクタ61とカード側基板64の回転操作が可能になる。また、基板受け面304a,304bに配置された熱伝導部材302a,302bは、カード側基板64によって厚み方向に加圧されながらカード側基板64と接触していく。よって、熱伝導部材302a,302bの位置ずれを回避しながら、カード側基板64を熱伝導部材302a,302bを介して基板受け部62a,62bに接続することができる。
ここで、熱伝導部材302a,302bが基板受け面304a,304bに配置されていないと仮定すると、カード側基板64は、基板受け面304a,304bに直接接触することでカード枠体62に設けられた基板受け部62a,62bに係合する。また、カード側基板64とカード側コネクタ61とは、はんだ付けにより結合されている。そのため、カード側基板64は、カード側コネクタ61を介してカード枠体62のカード側コネクタ係合部62d,62eと係合することになる。この場合、カード側基板64の係合が2カ所で行われることによる二重嵌合が発生し、カード側基板64、カード枠体62及びカード側コネクタ61間の係合状態によっては、破損が生じるおそれがある。例えば、カード側基板64とカード側コネクタ61のはんだ付け部の強度は高くないため、はんだにクラックが入る等の破損が起こり得る。また、基板受け部62a,62bが加工誤差により厚み方向に厚く仕上がった状態でカード側コネクタ61がカード側コネクタ係合部62d,62eと係合すると、カード側コネクタ61に対して厚み方向を第二面54側に押し上げられる力がカード側基板64に働く。その結果、カード側基板64とカード側コネクタ61のはんだ付け部に破損が生じる可能性がある。これに対して、本実施形態では、カード枠体62の基板受け部62a,62bは、弾性を有する熱伝導部材302a,302bを介してカード側基板64を支持する。したがって、熱伝導部材302a,302bの弾性による緩衝作用により、二重嵌合となることを回避することができる。つまり、カード型記憶装置5では、カード側基板64が二重嵌合となって保持されることを回避しながら、内部で発生した熱を効率よく外部へ放出することができる。
次に、基板受け部62a,62bの基板受け面304a,304bに対する熱伝導部材302a,302bの配置形態について、より詳細に説明する。これまで、熱伝導部材302a,302bはそれぞれ、基板受け面304a,304b上に配置されるとして説明した。ここで、基板受け面304a,304bは平坦であっても構わないが、好ましくは、基板受け面304a,304bのそれぞれに熱伝導部材302a,302bを位置決めして保持可能な溝部を設けることが望ましい。ここでは、熱伝導部材302a,302bを基板受け面304a,304bに配置するための、より好ましい形態について説明する。
図8は、カード枠体62に設けられた基板受け部62bの近傍の構造を示す部分的な斜視図である。図8には、図6との対応位置を参考のために示しているが、図6と重複する部分についての大部分の符号の記載を省略している。また、カード枠体62に設けられた基板受け部62a,62bはそれぞれ同等の構造を有するため、ここでは、図8に示した基板受け部62bについて説明し、基板受け部62aについての説明を省略する。
基板受け部62bの第二面54側の面である基板受け面304bには、厚み方向において一段低い段差部である溝部308が設けられており、溝部308に熱伝導部材302bが配置されている。このような構成とする理由は、次の通りである。即ち、図7を参照して説明した組み立て手順にしたがって、はんだ付けされたカード側基板64及びカード側コネクタ61をカード枠体62に組み付ける場合、熱伝導部材302bは、カード側基板64の後端面52側から、順次、カード側基板64に接触していく。このとき、溝部308が設けられていない場合には、熱伝導部材302bが徐々に端子面51側へずれてしまうおそれがある。しかし、熱伝導部材302bとカード側基板64の接触具合を、周囲から観察しながら組み立てることは容易ではない。そこで、基板受け面304に設けた溝部308に熱伝導部材302bを配置して、組み立て中に熱伝導部材302bの位置がずれてしまうことを防止することが望ましい。
次に、カード枠体62からスロット枠体301への伝熱構造について説明する。図9(a)は、熱伝導部材302bの近傍の構造を示す断面図であり、図5(a)に示す矢視D−Dの断面で示している。図9(b)は、熱伝導部材302bの配設位置を変えた第1の変形例での熱伝導部材302bの近傍の構造を示す断面図である。図9(c)は、熱伝導部材302bの配設位置を変えた第2の変形例での熱伝導部材302bの近傍の構造を示す断面図である。なお、図9(b),(c)に示す構造では、熱伝導部材302bの配設位置の変更に伴い、熱伝導部材302bの配設位置及びその近傍でのカード枠体62の形状が変更されている。また、熱伝導部材302aについても同様の構成とされるが、その図示と説明は省略する。
カード側基板64からカード枠体62への熱伝導について検討する。主要な熱源となるコントローラIC69及びフラッシュメモリIC65a〜65dはそれぞれ、カード側基板64の各面にバランスを取って配置されているが、コントローラIC69はフラッシュメモリIC65a〜65dよりも発熱量が大きい。よって、カード側基板64からカード枠体62への熱伝達を考えると、コントローラIC69で発生した熱を、カード側基板64の厚み方向に通過させてカード側基板64の反対面へ輸送する必要なく、同じ面上からカード枠体62へ逃がす構造とすることが望ましい。
このような観点から、図9(a)に示すように、カード型記憶装置5では、カード側基板64において発熱量の合計が大きくなる面であるコントローラIC69が実装された面に熱伝導部材302bを接触させている。これに対して、図9(b)に示す構成では、カード側基板64においてコントローラIC69が実装された面の反対側の面に熱伝導部材302bを接触させている。この場合、コントローラIC69で発生した熱は、カード側基板64を厚み方向に伝わった後に熱伝導部材302bへ伝わる。そのため、カード側基板64からカード枠体62への熱伝導性の観点からは、図9(b)の構成よりも図9(a)の構成の方が優れていると言える。一方、図9(c)に示す構成では、カード側基板64においてコントローラIC69が実装された面に熱伝導部材302bが接触する構成となっている。そのため、カード側基板64からカード枠体62への熱伝導性の観点からは、図9(a)の構成と図9(c)とに大きな差異はないと考えられる。
続いて、発熱性素子からスロット31への直接的な熱伝導について検討する。カード型記憶装置5がスロット31に装着された状態では、カード側基板64は、スロット31を構成するスロット側基板41とスロットカバー45との間にこれらに近接して配置される。スロット側基板41は、放熱パスとして、スロット側基板41からの自然放熱パスに加えて、スロット側基板41が接続されているその他の部材へ熱伝導する放熱パスを有する。これに対して、スロットカバー45は、放熱パスとして、自然放熱パスを有するが、その他の有効な放熱パスを有しておらず、また、スロットカバー45自体が薄いために熱容量は大きくなく、放熱性に優れているとは言い難い。そのため、放熱性の高い放熱パスを構築するという観点からは、発熱性素子は、カード側基板64においてスロットカバー45に対向する面ではなく、スロット側基板41に対向する面に設けることが望ましい。図9(a)〜(c)の各構成は、カード側基板64において発熱量の合計が大きい面(コントローラIC69が実装された面)がスロット側基板41と対向する構成となっている。したがって、発熱性素子からスロット31への直接的な放熱性の観点からは、図9(a)〜(c)の各構成に大きな差異はないと考えられる。
次に、カード枠体62からスロット31への熱伝導について検討する。図9(a)の構成では、カード型記憶装置5とスロット枠体301との接触面積に関して、スロット側ガイド部301bの接触面積の方が厚み方向ガイド面301dの接触面積よりも大きい。また、図9(a)の構成では、厚み方向において、スロット側ガイド部301bが厚み方向ガイド面301dよりも基板受け面304b側に配置されている。つまり、スロット側ガイド部301bと基板受け面304bとがスロット側基板41側に、厚み方向ガイド面301dがスロットカバー45側に設けられている。このような構成では、カード枠体62からスロット枠体301へ矢印306aで示すように熱を効率よく逃がすことができる。
これに対して、図9(c)の構成は、図9(a)と比較すると、スロット枠体301においてスロット側ガイド部301bと厚み方向ガイド面301dの配置が厚み方向で入れ替わったものとなっている。そして、このような変形に対応した係合が可能となるように、カード枠体62の側面構造が変更されている。図9(c)の構成では、カード枠体62からスロット枠体301へ矢印306bで示すように熱が伝わり、その際にカード枠体62において断面積の小さい部分を通らなければならないために、熱が伝わり難い。図9(b)の構成でも、図9(c)の構成と同様に、カード枠体62からスロット枠体301へは、カード枠体62において断面積の小さい部分を通らなければならない。よって、スロット側ガイド部301bと厚み方向ガイド面301dとの位置関係としては、スロット側ガイド部301bが基板受け面304に近いことが好ましい。したがって、カード枠体62からスロット31への熱伝導性の観点からは、図9(b)の構成よりも図9(c)の構成の方が望ましく、更に図9(c)の構成よりも図9(a)の構成の方が望ましい。
図9についての上記説明から、本実施形態に係るカード型記憶装置5が備える図9(a)の構成は、カード型記憶装置5から外部への放熱性に最も優れた構成であると言える。また、図9(a)の構成は、従来技術として説明した特許文献2に記載されているような架橋部を設ける必要がないため、カード型記憶装置5の薄型化を実現することができる。
次に、カード型記憶装置5がスロット31に装着された状態での、スロット電気接点43によるカード電気接点58に対する付勢方向と、熱伝導部材302a,302bに対するカード側基板64の押圧方向との関係について説明する。図10は、図5(a)に示す矢視E−Eの断面図であり、スロット電気接点43とカード枠体62に設けられた基板受け部62bとを含んでいる。
スロット電気接点43は、カード型記憶装置5が挿入されると、カード電気接点58を矢印307の方向へ付勢し、この付勢方向は、カード型記憶装置5の厚み方向と略平行であって、第二面54側から第一面53側へ向かう方向である。また、カード側基板64が熱伝導部材302a,302bを介してカード枠体62に設けられた基板受け部62a,62bに押圧される方向も、既説の通り、カード型記憶装置5の厚み方向と略平行な方向であり、第二面54側から第一面53側へ向かう方向である。この場合、スロット電気接点43によってカード電気接点58やカード側コネクタ61が第一面53側へ押圧されたときに、カード側基板64は、より確実に熱伝導部材302a,302bと接触する方向へ押圧される。そのため、カード側基板64からカード枠体62への熱伝導が確実に行われることになり、放熱の観点から望ましい。
これに対して、例えば、図9(b)の構成では、スロット電気接点43がカード電気接点58を押圧する方向と、カード側基板64が熱伝導部材302a,302bに対して押圧される方向とは、逆になる。この場合、スロット電気接点43によってカード側基板64が熱伝導部材302a,302bから引き離れされる方向へ押圧される。すると、カード側基板64とカード枠体62の間の熱抵抗が大きくなってしまい、放熱効率が低下してしまう。このような理由から、スロット電気接点43によるカード電気接点58の付勢方向と、カード側基板64が熱伝導部材302a,302bを介して基板受け部62a,62bに押圧される方向とは一致していることが望ましい。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。例えば、上記実施形態では、カード型電子装置として、ストレージ系の1種である記憶装置について説明した。しかし、これに限定されず、本発明に係るカード型電子装置は、外部機器とのインタフェースとして機能するもの、ネットワーク機器として機能するもの、マルチメディア機器として機能するものへの適用が可能である。また、カード型電子装置が装着可能な電子機器も、撮像装置やパーソナルコンピュータに限定されず、例えば、プリンタやMFP(複合機)等への適用も可能である。