以下に、本発明の実施の形態によるカード型記録装置および当該カード型記録装置が挿抜されるスロット装置の一例について説明する。
図1は、本発明の実施の形態によるカード型記録装置が用いられる電子機器の一例を示す図である。
図示の電子機器は、例えば、デジタルカメラ(以下単にカメラと呼ぶ)などの撮像装置であり、図示のカメラはカメラ本体1を有し、当該カメラ本体1にはカメラ本体1に備えられたインターフェイス3を介して複数のレンズユニット5から選択的に1つのレンズユニット2が装着される。カメラ本体1にはカメラを操作するための操作部4が備えられている。例えば、操作部4によって動画撮影および記録のための操作が行われる。カメラ本体1には画像データなどを記録するためのカード型記録装置(以下カード媒体と呼ぶ)5が装着される。このカード媒体5必要に応じてカメラ本体1に備えられたスロット装置(以下単にスロットと呼ぶ)に挿抜される。
例えば、カード媒体5に記録された画像データ(例えば、動画ファイル)を編集する際には、ユーザはカメラ本体1からカード媒体5を抜いて、カードリーダー6に挿入する。なお、当該カードリーダー6にもカード媒体5を挿入するためのスロットが備えられている。カードリーダー6はケーブル7を介してパソコン(PC)8に接続され、ユーザはカード媒体5から画像データをPC8に読み込んで画像データを編集する。
このように、カード媒体5はカメラ本体1又はカードリーダー6に必要に応じて挿入/抜去される。なお、ここでは、カード媒体5とは、可搬性および検索性(ラベルなどの貼り易さ)などのため扁平で薄い形状の媒体をいう。
図2は図1に示すカメラおよびカード媒体の構成についてその一例を説明するためのブロック図である。そして、図2(a)はカメラの構成を示すブロック図であり、図2(b)はカード媒体の構成を示すブロック図である。なお、図2において、図1に示す構成要素と同一の構成要素については同一の参照番号を付す。
まず、図2(a)を参照して、カメラ本体1はカメラシステム制御回路(以下カメラ制御回路という)10を備えており、カメラシステム制御回路10はカメラ全体の制御を司る。操作検出部4には、レリーズボタンなどが備えられており、レリーズボタンの操作に応じてカメラ制御回路10は撮像制御を行う。撮像素子12には、レンズユニット(以下単にレンズと呼ぶ)に備えられた撮影光学系22を介して光学像が結像する。そして、撮像素子12は光学像に応じた画像信号を出力する。
カメラ制御回路10の制御下で、レンズシステム制御回路(以下レンズ制御回路という)20はレンズ駆動部21を駆動制御して撮影光学系22の調整を行う。例えば、レンズ制御回路20は撮影光学系22による結像面が撮像素子12の位置にくるように撮影光学系22を駆動制御する(所謂ピント合わせ)。さらには、レンズ制御回路20は画像信号のレベルに基づいて絞り制御を行う。また、カメラ制御回路20は画像信号のレベルに基づいて撮像素子12の電荷蓄積を制御して明るさを調整する(所謂露出制御)。
撮像素子12の出力である画像信号は画像処理部13に送られる。画像処理部13は、A/D変換器、ホワイトバランス調整回路、ガンマ補正回路、および補間演算回路などを備えている。カメラ制御回路10の制御下で、画像処理部13は画像信号に対して所定の画像処理を行って画像データを生成する。そして、カメラ制御回路10は当該画像データに応じた画像を表示部14に表示する。さらに、画像処理部13は予め定められた手法を用いて画像データなどの圧縮を行ってメモリ部11に記録する。なお、前述のように、動画撮影を行った際には、動画ファイルがメモリ部11に記録される。
メモリ部11には記憶部が備えられるとともにスロットが備えられている。そして、当該スロットにはカード型記録装置(カード媒体)5が挿入される。カメラ制御回路10の制御下で、画像処理部13は動画ファイルなどをカード媒体5に記録する。
カメラ制御回路10はレリーズボタンの操作を操作検出部4が検出すると、撮像素子6を駆動するとともに、画像処理部19を動作させて圧縮処理などを制御する。さらに、カメラ制御回路10は表示部14にカメラの状態などを示す情報を表示する。
カメラ制御回路10は、撮像素子12の出力である画像信号に応じて生成された画像データに基づいて、撮影光学系22の焦点位置および絞り位置を求める。そして、カメラ制御回路10はインターフェイス(I/F)3を介してレンズ制御回路20を制御してレンズ駆動部21を駆動制御する。これによって、ピント合わせおよび露出制御が行われる。
図示のように、カメラ本体1に設けられた伝熱部15は、画像処理部13およびメモリ部11と熱的に接続されている。この伝熱部15は、例えば、ヒートパイプ又はグラファイトシートなどで構成される。伝熱部15はカメラ本体1における代表的な熱源である画像処理部13およびメモリ部と放熱部分(カメラ本体1の外装など)を熱的に接続する。この結果、図中矢印16で示すように伝熱部15を介してカメラ本体1から外部に自然対流および放射などによって熱が放出される。
続いて、図2(b)を参照して、カード媒体5は、電源IC27、カードコントローラ(コントローラ)28、およびフラッシュメモリ29を有している。そして、カード媒体5はカードインターフェイス(I/F)26によって電源24およびホストコントローラ25に接続される。なお、図示の電源24はカメラ本体1に備えられた電源であり、ホストコントローラ25は図2(a)に示すカメラ制御回路10である。また、ここでは、1つのフラッシュメモリ29が示されているが、複数のフラッシュメモリ29を備えるようにしてもよい。
I/F26の物理構造および信号ラインなどの仕様はカード媒体5の規格として予め定められている。I/F26には電源供給のための電源接点と情報伝達のための信号接点とが備えられている。電源接点は電源24と電源IC27とを接続し、信号接点はホストコントローラ25とコントローラ28とを接続する。
電源IC27は、電源24の電圧をコントローラ28およびフラッシュメモリ29に必要な電圧レベルとする。コントローラ28はエラー訂正、ブロック管理、およびウェアレベリングなどを行う。そして、コントローラ28はホストコントローラ25およびフラッシュメモリ29に対するインターフェイスを備える。これによって、コントローラ28はホストコントローラ25から送られたデータをフラッシュメモリ29に記録し、さらには、フラッシュメモリ29に記録されたデータをホストコントローラ25に送る。
カード媒体5がメモリ部11に接続されると(つまり、スロットに挿入されると)、ホストコントローラ25はメモリ部11を介してカード媒体5に動画ファイルを記録することができる。また、ホストコントローラ25はカード媒体5から動画ファイルを読み出して再生して表示部14に表示することができる。
図3は、図2に示すカード媒体のメモリ部への挿入を説明するための図である。そして、図3(a)はカメラとカード媒体との関係を示す図であり、図3(b)は図2に示すメモリ部に備えられたスロット装置(スロット)を分解して示す斜視図である。
まず、図3(a)を参照して、操作部4にはスロット蓋を開けるためのカバー操作スイッチ4aが備えられている。カード媒体5をカメラ本体1に挿入する際には、ユーザはカバー操作スイッチ4aを操作する。これによって、スロット蓋30に設けられたフック30aの係合が外れて、スロット蓋30が開いて、スロット31が露出する。その後、ユーザはカード媒体5をスロット31に挿入する。
スロット31にはイジェクタ機構が設けられており、カード媒体5を挿入すると、イジェクトボタン46が外側に突出する。なお、図示の例では、同種又は異種のカード媒体5を2枚平行に挿入することができる。つまり、スロット31は2つ並んで設けられている。
カード媒体5をスロット31に挿入した後、スロット蓋30を閉じると、カメラ制御回路10とカード媒体5とが通信可能な状態となる。カメラ本体1にはスロット蓋30の開閉を検知するための検知スイッチ(図示せず)が備えられており、スロット蓋30が閉じられたことを検知すると、カメラ制御回路10はカード媒体5の有無をチェックして、カード媒体5が存在すると通信可能な状態となる。一方、スロット蓋30が開けられたことを検知すると、カメラ制御回路10は画像データの記録などを速やかに終了させる処理を行う。
ユーザがスロット31からカード媒体5を抜去する場合には、操作スイッチ4aを操作する。これによってスロット蓋30に設けられたフック30aの係合が外れてスロット蓋30が開く。その後、イジェクトボタン46を押し込むと、ユーザが掴み易い位置までカード媒体5が突出する。ユーザはカード媒体5の端部を把持して手前に引けばカード媒体5を抜去することができる。上記のイジェクトに関する動作については後述する。
続いて、図3(b)を参照して、スロット31は、スロット基板41を有している。そして、スロット基板41上にはスロットベース42が配置されている。スロットベース42にはスロットコネクタ部42aが設けられており、さらに、スロットベース42にはスロット左側面ガイド部42bおよびスロット右側面ガイド部42cが設けられている。これらスロット左側面ガイド部42bおよびスロット右側面ガイド部42cは所定の間隔をおいてスロットコネクタ部42aを挟んで互いに対向している。
スロットベース42には、複数のスロット電気接点43(端子部)が圧入されて保持されている。スロット電気接点43には、電源用スロット電気接点43aと情報を伝達するための通信用スロット電気接点43bとがある。
また、スロットベース42にスロットカバー45が係合し、スロットカバー45にはイジェクトボタン46が設けられている。さらに、スロットカバー45にはイジェクト機構47が設けられている。カード媒体5は、図中矢印50で示す方向にスロット31に挿入される。カード媒体5において、カード媒体の左側面側にカード左側面ガイド部55aが設けられ、カード媒体の右側面側にはカード右側面ガイド部56aが設けられている。
このように、スロット31はスロットベース42、スロット電気接点43、およびスロットカバー45を備えている。
図示のように、スロットベース42において、スロット下面部(スロット基板面)42eには金属製の板状の熱伝導部材(熱伝導板)48がインサートされている。このスロット下面部42eはカード媒体5がスロット31に挿入された状態で、第1面53(主面)と対向する位置にある。スロット下面部42eの詳細については後述する。さらに、スロット電気接点43よりも後ろ側の位置にはスロット左側厚み方向ガイド部42fおよびスロット右側厚み方向ガイド部42gが配置されている。
スロットベース42はリフローに耐えられる耐熱性、そして、小型薄型に作成するための薄肉性、および複雑な形状を作成可能な流動性、摺動性などの観点からLCP(液晶ポリマー)で成形されている。スロット電気接点43は接点を接触させるためのバネ性、半田のぬれ性、および接点電気抵抗などの観点からリン青銅に所定のメッキ処理(金メッキなど)を施して成形されている。スロットカバー45は薄肉な状態における強度、加工性、および耐食性などの観点からステンレスのバネ鋼で成形されている。
カード媒体5はスロットカバー45によって粗く位置決めされつつ(多少のガタをもって案内されつつ)矢印50方向に挿入される。その後、カード左側面ガイド部55aとスロット左側面ガイド部42b、カード右側面ガイド部56aとスロット右側面ガイド部42cとによってカード媒体5は精密に位置決めされて通信可能な位置まで挿入される。最終的に、カード媒体5はスロットベース42上のカード突きあて面(図示せず)とカード媒体5の端子面とが接触する位置まで挿入される。この位置においては、スロット電気接点43と後述するカード電気接点とが接触して安定して通信が可能となる。
図4は、図3に示すカード媒体の構成を説明するための図である。そして、図4(a)は斜視図であり、図4(b)はカードラベルを剥がした状態で上側から見た図である。また、図4(c)はカード媒体の内部を上側から見た図であり、図4(d)はカード媒体を下側から見た図である。さらに、図4(e)はカード媒体の内部を下側から見た図である。
図4(a)において、カード媒体5は端子面51を有しおり、端子面51に対向して後端面52が規定されている。また、左側面55および右側面56が互いに対向して、カード媒体5は矩形状(カード状)に規定されている。カード媒体5の互いに対向する面は第1面53および第2面54とされ、第2面54には第2面カードラベル57が設けられ、端子面51にはカード電気接点58が設けられている。
カード媒体5は、図3で説明したようにしてスロット31に挿入される。挿入および抜去の際に移動させる方向を挿抜方向とする。そして、一般にカード媒体5は厚み方向又は斜め方向に挿抜されることはないので、厚み方向と挿抜方向とは直交(つまり、交差)する。なお、厚み方向とは第1面53から第2面54に向う方向である。さらに、厚み方向および挿抜方向に直交する方向を幅方向とする。
図4(a)に示す例では、厚み方向において第1面53から第2面54に向かう方向を正方向とする。挿抜方向においてはカード媒体5をスロット31に挿入する際の方向を正方向とする。さらに、ここでは、左手系をなす座標を設定する。また、挿抜方向において正方向を挿入方向、負方向を抜去方向と呼ぶことにする。そして、主要な熱源(図4に示す例ではコントローラ)が存在する側の面を第1面53とし、その反対の面を第2面54とする。ここでは、カード媒体5の挿入方向に向かって左にある面を左側面55、挿入方向に向かって右にある面を右側面56とする。
説明の便宜上、ここでは、スロット31においては、スロット基板41側を下とし、カード媒体5についても、通信状態となった際にはスロット基板41側を下とする。図4(a)に示す例では、第1面53がカード媒体5の下面であり、第2面54がカード媒体5の上面となる。但し、図4(a)においては、カード媒体5の上下方向がカメラ本体1の左右方向になるように、カード媒体5がカメラ本体1に挿入される。
前述のように、第2面54には第2面カードラベル57が貼付されている。第2面カードラベル57にはカード媒体5の対応規格、記憶容量、および通信速度などを示す情報が記載されている。カード媒体5における端子の配置は、図3(b)で説明したスロットにおける端子の配置と対応する。
図4(b)では、第2面カードラベル57を剥がしてカード媒体5を上側から見た状態が示されている。また、図4(c)においては、後述する第2面カード外装を外してカード媒体5を上側から見た状態が示されている。そして、図4(d)では、カード媒体5を下から見た状態が示されている。さらに、図4(e)では、後述する第1面カードラベルおよび第1面カード外装を外してカード媒体5を下側から見た状態が示されている。なお、図4(b)から図4(e)においては、端子面51が上側になるように描画されている。
図4(b)から図4(e)を参照して、カード媒体5は、略コ字形状のカード枠体62を有するとともに、カードコネクタ61が備えられている。さらに、カード媒体5は、第2面カード外装63を備え、第2面カード外装63には穴63aが形成されている。カードは媒体5内にはカード基板64が実装され、図示の例ではフラッシュメモリ65a〜65dを実装するための領域がカード基板64に設けられている。さらに、カード基板64にはフラッシュメモリおよびカードコントローラ(以下単にコントローラと呼ぶ)69以外の部品を実装するための領域66aおよび66bが設けられている。また、カード媒体5は第1面カード外装67を有するとともに、第1面カードラベル68を備えている。
カード媒体5においては、カード基板64とカードコネクタ61とが半田付けで接続されてカード枠体62とカードコネクタ61とが組み合わされる。さらに上下からそれぞれ第1面カード外装67と第2面カード外装63が嵌めこまれてスナップフィット(所謂パッチン止め)で組み合わされる。これによって、カード媒体5の外形形状は完成してカード筐体となる。つまり、カード筐体は、カードコネクタ61、カード枠体62、第2面カード外装63、および第1面カード外装67を有している。
この状態において、ポッティング材を穴63aから注入する。そして、第1面カードラベル68および第2面カードラベル57を貼付した後加熱してカード媒体5が完成する。加熱によってポッティング材が硬化して、これによってカード媒体5における熱伝導が促進される。さらに、カード媒体5の堅牢性および耐候性が向上する。
なお、上述の部品以外の部品についてはカードコネクタ61又はカード基板64に圧入又は半田付けによって固定されている。また、図4においては、ポッティング材を図示すると、カード媒体5の構造が不明確になるので省略されている。
スロットベース42と同様に耐熱性および小型薄型に作成するため、カードコネクタ61はLCPで成形されている。また、カード電気接点58はバネ性を有しておらず、半田のぬれ性および接点電気抵抗などを考慮して、純銅又は銅合金にメッキ処理(金メッキなど)を施して形成されている。
カード熱接点59は熱伝導性、摺動性、および耐摩耗性などを考慮して純銅又は銅合金にメッキ処理(硬質クロムメッキなど)を施して形成されている。カードコネクタ61には穴およびスナップフィット部が設けられており、この穴にカード電気接点58が圧入されて保持される。
カード基板64には、フラッシュメモリ65a〜65d、コントローラ69が配置されている。また、詳細には図示しないが、領域66aおよび66bに電源ICおよびコンデンサなどが実装される。コントローラ69はカード媒体5において最も消費電力が大きく、主要な熱源となる。フラッシュメモリ65a〜65dはその他の熱源となる。
カード基板64には、穴64aが形成されており、ポッティング材が第2面から第1面側に移動可能となっている。カード基板64にはカードコネクタ61を実装するための領域(ランド)が設けられており、半田付けによってカード基板64とカードコネクタ61とが位置決めされて相互に固定される。カード媒体5の下面である第1面には第1面カードラベル68が貼付されており、ユーザのメモ欄などとして用いられる。
図5は、図4に示すカード媒体5の厚み方向における部品の配置を説明するための図である。そして、図5(a)はカード媒体5およびスロット31を上側から見た図であり、図5(b)および図5(c)はそれぞれカード媒体およびスロット31を図5(a)に示すB−B線およびC−C線で破断した断面図である。
図5(a)において、イジェクトアーム47aはイジェクトボタン46と連動し、イジェクト機構は回転中心47bを中心として回転する。イジェクト機構は回転アーム47cおよびイジェクト板47dを備えており、イジェクト板47には爪部47eが設けられている。なお、参照番号70はポッティング材を示す。
図5(b)には、スロット電気接点43と主要な熱源であるコントローラ69を含む位置における断面が示されている。コントローラ69はカード基板64においてホスト基板41側に実装されている。コントローラ69はポッティング材70を介して第1面カード外装67と接続されている。その他の熱源であるフラッシュメモリ65aおよび65dはカード基板64の両面にそれぞれ実装されている。フラッシュメモリ65aおよび65dはコントローラ69と同様にポッティング材70を介してそれぞれ第2面カード外装63および第1面カード外装67に接続されている。
前述のように、熱源と外装の間をポッティング材70で埋めた場合は、ポッティング材70で埋めなかった(すなわち、熱源と外装にエアギャップがある)場合と比較して、熱抵抗を低減することができる。これによって、熱源からの熱をより効率よくカード媒体5の第1面カード外装67および第2面カード外装63に導くことができる。
前述のように、スロット電気接点43はバネ性を有しており、図5(b)において上から下に向かってカード電気接点58を押圧しつつ接触する。カード電気接点58の厚み方向の位置を適切に設定することによって、スロット電気接点43とカード電気接点58との接触が所望の状態となる。例えば、電気的な通信を行う位置においてカード電気接点58の位置を、カード媒体5が挿入されていない場合のスロット電気接点43の下端位置よりも高く、スロット電気接点43の弾性限界よりも低い位置に設定する。これによって、スロット電気接点43とカード電気接点58の接触が所望の状態となる。
挿抜方向に着目すると、カード突きあて面42dと端子面51とが接触していることが分かる。当該位置において、カード電気接点58とスロット電気接点43とは挿抜方向に関して矛盾のない位置となる。つまり、カード電気接点58が挿抜方向に延び、延在方向のいずれかの位置においてスロット電気接点43が接触可能となる。
図5(c)にはイジェクタ機構を含む位置における断面が示されている。ここで、図5(a)および図5(c)を参照してイジェクタ機構の動作について説明する。イジェクタ機構47は、イジェクトボタン46、イジェクトアーム47a、回転アーム47c、およびイジェクト板47dを有している。そして、イジェクト機構47はスロットカバー45上に配置されている。
スロットカバー45上の突起に回転中心47bを中心として回転可能に回転アーム47cが配置されている。イジェクトアーム47aはスロットカバー45上に設けられた案内突起によって、図5(a)の左右方向(カード媒体5の挿抜方向)にスライドのみ可能に保持されている。また、イジェクトアーム47aの先端にはイジェクトボタン46が取り付けられている。
回転アーム47cと連動して回転アーム47cとイジェクトアーム47aは、イジェクト板47dの位置で係合されている。さらに、イジェクト板47dはスロットカバー45上に設けられた案内部(図示せず)によってイジェクトアーム47aと同様に図5(a)の左右方向にスライドのみ可能に保持されている。回転アーム47cとイジェクト板47dはイジェクト板47dの位置で係合されている。上述の構成によって、イジェクトアーム47aが図中の左側に動くと、イジェクト板47dは反対に右に動くことになる。
図3(a)に関連して説明したように、カード媒体5をスロット31に挿入すると、イジェクトボタン46が突出する。この際、図5(c)に示すように、カード媒体5はイジェクト板47dに設けられた爪部47eを押し込みつつ挿入される。その結果、図5(a)において、イジェクト板47dは左方向に移動し、回転アーム47cは時計回り方向に回転して、イジェクトアーム47aは右方向に移動する。これによって、イジェクトボタン46が突出する。
カード媒体5を抜去する場合には、イジェクトボタン46が押し込まれる。その結果、図5(a)においてイジェクトアーム47aが左方向に移動し、回転アーム47cは反時計回り方向に回転して、イジェクト板47dは右方向移動する。これによって、イジェクト板47dに設けられた爪部47eがカード媒体5をスロット31から押し出す。
図6は、図3に示すスロットベースに形成されたスロット下面部および熱伝導板を説明するための図である。そして、図6(a)はスロットカバーを除いた状態でスロットを上面から見た図であり、図6(b)はその斜視図である。また、図6(c)はスロットカバーおよびスロット基板を除いた状態でスロットをスロット下面部側から見た図であり、図6(d)は図6(a)に示すE−E線の断面を一部拡大して示す図である。さらに、図6(e)は熱伝導板を示す斜視図であり、図6(f)は図6(a)に示す状態においてスロットにカード媒体を挿入した際のカード基板の第1面に実装された熱源を厚み方向から投影して示す図である。
図6(a)において、破線(点線)で囲まれた範囲はスロット下面部42eを示す。本実施形態では、スロット31にカード媒体5が挿入された状態で、スロット下面部42eは、熱伝導板48を挟んでカード媒体5の第1面53の反対側に位置する。また、この状態で、スロット下面部42eはカード媒体5とスロット基板41とに挟まれる。スロット下面部42eの位置には、図6(e)に示す金属製の熱伝導板48が配置されている。図6においては、説明の便宜上熱伝導板48は斜線で示されている。
熱伝導板48はスロットベース42を形成する樹脂材よりも熱伝導率の高い金属で成形されている。例えば、熱伝導板48はアルミ、銅、又はステンレス材などのプレス加工可能な材料で成形することが望ましい。熱伝導板48は、スロットベース42をLCPによって射出成形する際にインサートされ、これによって、熱伝導板48の周辺部はLCPで囲まれる。
図6(c)に示すように、熱伝導板48の中央近傍はLCPで覆われておらず、開口部となる。スロット下面部42eの面積に対して厚み方向の厚さが薄いので、インサート成形の際にLCPが熱伝導板48の中央近傍まで流れ込むことが困難あるため、開口部が形成される。
図6(e)に示すように、熱伝導板48は左側設置部48aおよび右側設置部48bをその両側面に有している。図6(a)および図6(b)に示すように、左側設置部48aおよび右側設置部48bはそれぞれスロット左側側面ガイド部42bおよびスロット右側側面ガイド部42cから突出する。そして、熱伝導板48はスロット基板41に半田付けによって固定される。
熱伝導板48に伝導した熱は、熱伝導板48からスロット基板41に効率的に伝導される。そして、熱はスロット基板41から図2に示す伝熱部15を介して外部に排熱される。スロット基板41は多層基板で構成されており、中間層に電源およびグラウンド(所謂ベタグラウンド)などが配置される結果、銅を多く残すようにパターニングされており、スロット基板41の熱抵抗は小さい。よって、熱源からスロット基板41までの熱抵抗値を小さくして、スロット基板41まで熱を輸送すれば、伝熱部15によって外部に効率的に放熱を行うことができる。
図6(a)および図6(b)に示すように、スロットベース42に形成されたスロット左側厚み方向ガイド部42fおよびスロット右側厚み方向ガイド部42gは、カード媒体5を抜去する方向において、スロット下面部42eの範囲よりも後端子面側(後側)に延在している。挿入の際、カード媒体5はスロット左側厚み方向ガイド部42fおよびスロット右側厚み方向ガイド部42gによって第1面53側を厚み方向にガイドされる。また、カード媒体5は第2面54側をスロットカバー45によってガイドされる。
図7は、図6に示すスロットの厚み方向のガイドを説明するための図である。そして、図7(a)は、図6(b)においてカード媒体を挿入した状態を示す斜視図であり、図7(b)には図7(a)をスロットの右側から見た図である。また、図7(c)はスロットにカード媒体を挿入する途中の状態を示す図である。なお、図7(b)および図7(c)においては、説明の便宜上、スロット左側厚み方向ガイド部42gにハッチングを付している。
図7(a)および図7(b)に示すように、カード媒体5を挿入する際には、スロット右側厚み方向ガイド部42gにカード右側面ガイド部が当接して、厚み方向においてカード媒体5の下側の位置が規制されている。また、カード媒体5の厚み方向上側の位置はスロットカバー45(図7には示さず)によって粗く規制されている。さらに、図7(b)においては、熱伝導板48が延在する位置が破線201で示されている。図7(b)においては、熱伝導板48は見えないが、点線201の位置に熱伝導板48の端子側の端が位置する。
図7(b)において、熱伝導板48の延在位置である点線201の位置よりもさらに左側(後端子側)までスロット右側厚み方向ガイド部42gが延在する。なお、図7(b)において、スロット31の左側に位置する側面においても同様に、スロット左側厚み方向ガイド部42fが存在する。そして、スロット左側厚み方向ガイド部42fによって、カード左側側面ガイド部の厚み方向の位置が規制される。
図7(c)を参照すると、カード媒体5のスロット31への挿入を開始すると、カード媒体5の端子面側にあるカード右側面ガイド部56aがスロット右側厚み方向ガイド部42gに沿って厚み方向の位置を規制されつつ挿入される。そして、カード媒体5が完全に挿入されると、カード媒体5は図7(b)に示す位置に達する。
図7(c)に示す熱伝導板48の端部の位置201よりもスロット右側厚み方向ガイド部42gが左側(後端子面側)に延在しているので、カード媒体5は先にスロット右側厚み方向ガイド部42gによって厚み方向の位置が規制される。つまり、カード媒体5の挿入時には、カード媒体5がスロット下面部42eにインサートされた熱伝導板48に当接することがない。この結果、カード媒体5の傷つきおよび摩耗を防止することができる。例えば、熱伝導板48の端部にバリなどが存在するとしても、カート媒体5の傷つきおよび摩耗を低減することができる。
ここで、図6(d)を参照して、スロット下面部42eの厚み方向の構成について説明する。
図中、矢印211はカード媒体5とスロット基板41との間隔を示す。矢印212は熱伝導板48の厚みを示す。また、矢印213はカード媒体5と熱伝導板48とのエアギャップを示す。そして、矢印214は熱伝導板48とスロット基板41とのエアギャップを示す。
ところで、カード媒体5とスロット基板41との間に、熱伝導部として、スロットベース42のスロット下面部42eや熱伝導板48を設けないような従来のスロットにおいては、カード媒体5の第1面とスロット基板41との間に、矢印211で示すエアギャップが存在してしまう。また、前述の特許文献1で説明したように、板ばね構造を配置した場合おいても、ばね構造を取り付けチャージするための厚みが必要となってある程度のエアギャップが生じる。
従来のスロットなどにおいては、カード媒体5で発生した熱をスロット基板41に伝導しようとすると、カード媒体5とスロット基板41との間に熱伝導率の低いエアギャップが存在するので熱抵抗が高くなる。この結果、カード媒体5からスロット基板41に伝導される熱の伝熱効率が低下する。
一方、本実施の形態によるスロット31においては、矢印211で示す間隔(空間)に、スロット下面部42eと矢印212で示す厚みの熱伝導板48が配されている。この結果、カード媒体5とスロット基板41との間のエアギャップは、矢印213および214で示すように薄くなる。よって、矢印211で示す間隔に対してエアギャップの厚みを少なくするとことができ、スロット基板41までの熱抵抗を低減することができる。
例えば、矢印211で示す間隔が0.5mm程度であり、矢印213で示すエアギャップはカード媒体5の挿抜を考慮して0.1〜0.2mm程度であるとする。また、矢印214で示すエアギャップは0.1mm以下であるとする。さらに、熱伝導板48はエアギャップおよび樹脂と比べると熱伝導率の高い金属で構成されるので、例えば、熱伝導板48が設けられていない場合と比較して、カード媒体5の下面側からスロット基板41への熱伝導率が向上する。つまり、矢印211で示す間隔が全てエアギャップである場合に比べて、本実施の形態によるスロット31では、カード媒体5からスロット基板41までの熱抵抗値を大幅に低減することができる。また、熱伝導板48はカード媒体5を厚み方向の面においてその大半を覆うように配置されている。
図6(f)において、破線で示すエリアは、カード基板64の第1面側に実装されたフラッシュメモリ66cおよび66dとコントローラ69を厚み方向から投影したものである。熱源となるフラッシュメモリ66cおよび66dとコントローラ69は、熱伝導板48と重なる位置に配置されている。これによって、カード媒体5の熱が熱伝導板48に伝導し、熱伝導板48からスロット基板41に熱を伝導しつつ熱伝導板48に熱を分散させることができる。このため、カード媒体5の第1面カード外装67が局所的に熱くなることを防ぐことができる。
なお、図6(f)においては、フラッシュメモリ66cおよび66dとコントローラ69とが熱伝導板48の範囲に含まれているが、少なくとも主要な熱源であるコントローラ69が熱伝導板48の範囲に含まれていればよい。
図8は、本発明の実施の形態によるスロットの放熱経路を従来のスロットの放熱経路と比較して説明するための図である。そして、図8(a)は、本発明の実施の形態によるスロットの放熱経路を示すブロック図であり、図8(b)および図8(c)は従来のスロットの放熱経路を示すブロック図である。なお、ここでは、主要な熱源であるコントローラ(コントローラIC)69で発生した熱を放熱する放熱経路について説明する。
図8(a)を参照して、コントローラIC69で発生した熱は、カード媒体5内のポッティング剤70を介して第1面カード外装67に伝導する。第1面カード外装67から、図6(d)において矢印213で示したエアギャップ213を介して熱伝導板48に熱が伝導する。そして、熱伝導板48から主に、図6(d)において矢印214で示したエアギャップ214を介してスロット基板41に熱が伝導する。
その他、スロット基板41への放熱経路として、例えば、スロットベース下面部42eの樹脂部を介する経路がある。また、スロット基板41に半田付けされた熱伝導板48の左側設置部48aおよび右側設置部48bを介する経路が放熱経路として存在する。空気層の熱伝導率は金属および樹脂よりも低いものの、接触面積の少ないスロット下面部41eおよびスロット基板41と熱伝導板48の半田付け面に比べると、熱伝導板48の厚み方向に略直交する平面の面積は大きい。さらに、熱伝導板48とスロット基板41との間のエアギャップも非常に薄いので、エアギャップ214を介した放熱経路が最も熱を伝導する。
一方、図8(b)に示すように、第1面カード外装67からスロット基板41までの間に熱伝導板48が設けられておらず、図6(d)で図示した矢印211の間隔がエアギャップである場合は、間隔(エアギャップ)211の厚み分だけ熱抵抗値が高くなる。したがって、この場合、図8(a)の構成を採用した場合と比較して、スロット基板41への熱伝導は効率的が低下してしまう。
また、図8(c)に示すように、板ばね222を第1面カード外装67に押圧して当接させると、第1面カード外装67の熱は板ばね221に伝導する。そして、板ばね222を支持するスロットベース下面部42eを介してスロット基板41に熱が伝導する。その他の放熱経路として、板ばね222以外の箇所においては前述したエアギャップ211を介してスロット基板41に伝統する経路がある。
ところが、板ばね222と第1面カード外装67の接触面積は線接触であるので、放熱経路として十分でない。また、接触熱抵抗を下げるため、板ばね222の押圧力を高くすると、カード媒体5を挿抜する際に、カード媒体5に傷および摩耗が生じ易い。さらには、板ばね222のようなばね構造を構成するため、第1面カード外装67とカードスロット41との間に十分な距離(間隔)が必要となる。その結果、板ばね222以外の平面において第1面カード外装67とカードスロット41とのエアギャップ211が大きくなって熱抵抗値が大きくなる。
前述のように、本実施の形態のスロット31では、スロット下面部42eを延在させて、さらに熱伝導板48を配置して第1面カード外装67とカード基板41とのエアギャップを小さくしている。これによって、第1面カード外装67からカード基板41までの熱抵抗値を下げる。そして、カード媒体5を挿抜する際の傷および摩耗の発生を低減しつつ、カード媒体5の放熱を効率的に行うことができる。
上述の放熱経路を考慮して、放熱において望ましいスロット電気接点43とカード電気接点58との位置関係について説明する。
図5(b)に関連して説明したように、スロット電気接点43は導電性とばね性を有し、カード電気接点58をスロット下面部42eの方向に押圧する。例えば、スロット電気接点43がカード電気接点58をスロットカバー45側に押圧している場合、カード媒体5は第2面54とカードカバー45とのエアギャップを狭くするよう移動する。つまり、第1面53と熱伝導板48とのエアギャップが広がる方向になって、第1面53から熱伝導板48までの熱抵抗値が高くなって放熱効率が低下する。
一方、上述のようにスロット電気接点43を構成すると、カード媒体5の第1面53と熱伝導板43とのエアギャップを狭くする側にカード媒体5が移動する。その結果、熱伝導板43に対する熱抵抗値を低減することができる。よって、スロット電気接点58およびカード電気接点58は、図5(b)で説明した構成が望ましい。
ここで、カード電気接点58が、図5(b)で説明したスロット電気接点43のように導電性およびばね性を有し、スロット電気接点43がばね性を有さない場合について説明する。この場合、カード電気接点58によってスロット電気接点43がカードカバー43側に押圧するように構成することが望ましい。このように構成すれば、カード媒体5はカード電気接点58によって押圧の反力を受けて、スロット下面部42e側に移動して、第1面53と熱伝導板48とのエアギャップを狭めることになる。よって、第1面53から熱伝導板48までの熱抵抗値を下げることができ、放熱効率を上げることができる。
図6(e)に関連して説明したように、第1面53と熱伝導板48との間には十分に薄いもののエアギャップ213が存在するものの、次のような構成を用いると放熱効率を向上させることができる。第1面53から熱伝導板48までの熱抵抗値を下げるためには、互いの表面の放射率が高いことが望ましい。そこで、熱伝導板48をアルマイト処理又は黒メッキ処理する。これによって、第1面53と対向する面に処理を施さない場合に比べて放射率が上がる、例えば、黒色塗装を施すと、さらに放熱効率を上げることができる。なお、熱伝導板48からカード基板41までの熱抵抗値を下げるために、基板41放射率が上がる塗装等を行うようにしてもよい。
前述のように、熱伝導板48においては、左側設置部48aおよび右側設置部48bがスロット基板41に半田付けで接着されているが、次のように熱伝導板48をスロット基板41に接着してもよい。スロット電気接点43および熱伝導板48を含むスロットベース42をスロット基板41にリフローで接着する際、熱伝導板48の他の面をスロット基板41に半田付けするようにしてもよい。
例えば、図6(c)に示す熱伝導板48においてスロット下面部42eの開口部から見える面をスロット基板41に半田付けするようにしてもよい。このようにすれば、図6(d)に示すエアギャップ214がなくなるので、さらにカード媒体5の熱源からスロット基板41までの熱抵抗値が下がって、放熱効率を上げることができる。
前述のように、本実施の形態では、スロットベース42の一部としてスロット下面部42eを備えて、スロット下面部42eに熱伝導板48がインサートされる。すなわち、本実施の形態では、スロットベース42と熱伝導板48とがそれぞれ別部材である。これに対して、スロットベース42と熱伝導板48とが一体的に形成されている構成であってもよい。具体的に、スロット下面部42eが、スロットカバー45側に突出形成された熱伝導面であってもよい。この場合、スロット下面部42eの高さ方向(カード媒体5が挿入された状態の厚み方向)に突出量は、熱伝導板48が設けられている場合の、熱伝導板48の高さと略同一になるような量であればよい。
また、本実施の形態では、スロットベース42のスロット下面部42eに熱伝導板48がインサートされる構成について説明したが、熱伝導板48がスロット下面部42eに接着されているような構成であってもよい(例えば、接着剤を充填する)。この場合、熱伝達率の大きさが、熱伝導板48<接着剤<スロット下面部42eであれば、より効果的にカード媒体5から排熱することができる。このように、本発明の実施の形態では、カード媒体5をスロット31に対して挿抜する際に生じる傷および摩耗を低減しつつ、カード媒体5の放熱を効果的に行うことができる。
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。