JP6799425B2 - アダプター部材及び山留支保工構造 - Google Patents

アダプター部材及び山留支保工構造 Download PDF

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Description

本発明は,地盤の掘削面が崩壊するのを防ぐために利用される山留支保工の構造や,その構造を構成するアダプター部材に関する。
図8には,一般的な山留支保工構造の例を示している。図8に示されるように,山留めを行う際には,まず複数の土留壁1を地中に打ち込み,これらの土留壁1によって直方体状(平面矩形状)の作業空間と成る領域を確保する。その後,複数の土留壁1によって囲われた領域を掘削しながら,各土留壁1の内面側に複数の腹起し2を当接させて固定する。また,図8に示されるように,作業空間を横長に形成するために,比較的長めの腹起し2を利用する場合がある。このような長めの腹起し2を採用した場合,その中央部分に大きな曲げモーメントが作用するため,これを抑制するために,対向する腹起し2同士の間を架け渡すようにして一又複数の切梁3が設置される。このとき,腹起し2と切梁3の接合状態を補強するために,腹起し2の側面と切梁3の側面とを架け渡すようにして斜め方向に延びる火打ち梁4をボルト接合することもある。
上記した山留支保工構造は,例えば特許文献1にも開示されている。特許文献1に記載の山留支保工構造は,山留め壁の内側面に設置される複数の腹起と,対向する腹起間に架設される切梁とを備える。この文献において,切梁は,角形鋼管からなる切梁本体の両端部に継手として複数のボルト孔を有するエンドプレートを取り付けて構成されている。また,切梁本体の一端側に長さ調整材と油圧ジャッキが取り付けられており,長さ調整材は火打梁の端部を接合するための継手となるフランジを備えている。
特開2015−175226号公報
ところで,図8や特許文献1に示されたような山留支保工構造においては,シンプルな構造で作業空間を広く確保するために,切梁3の尺をできるだけ長くすることが求められる。しかしながら,切梁3の尺を長くすると,図9に示したようにその長手方向中央部分が重力の影響を受けて下方に大きく撓むこととなる。この撓みは,切梁3の尺が長くなればなるほど大きくなる。これに対して,撓みを小さく抑えるために切梁3を強度の高い材質で構成することも考えられるが,切梁3の強度を向上させることにも限界がある。また,図8に示したように,腹起し2と切梁3の側面の間に火打ち梁4を掛け渡して切梁3を補強することもできるが,切梁3下方に撓むことは抑制することが難しい。
このように,切梁3に大きな撓みが発生すると,腹起し2に生じる曲げモーメントを効果的に抑制することができなくなる。また,切梁3は側面からの負荷に弱いため,切梁3の長手方向中央に撓みが生じている状態で土留壁1側から大きな負荷が加わると,切梁3に破損が生じる恐れがあった。このように,安全面上の問題から,山留支保工構造において,切梁3の尺を長くすることは難しいとされていた。
そこで,本発明は,シンプルな構造で切梁の長方向中央に生じる下方への撓みを抑制し,切梁の尺を長く確保できるようにすることを解決課題とする。
本発明の発明者は,上記課題の解決手段について鋭意検討した結果,腹起しと切梁との間に傾斜面を持つアダプター部材を配置し,腹起し間に架け渡さえる切梁を上方に向かって撓んだ状態とすることで,切梁の長手方向中央に下向きの撓みが生じるのを抑制できるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
本発明の第1の側面は,アダプター部材10に関する。アダプター部材10は,腹起し2の側面と切梁3の端面との間に配置される部材である。アダプター部材10は,腹起し2側の第一面11と,この第一面11と対向する切梁3側の第二面12とを有し,第二面12が第一面11に対して傾斜した構造を成している。アダプター部材10の第一面11は,腹起し2の側面に直接接合されるものであってもよいし,この第一面11と腹起し2の間に他の部材が介在してもよい。同様に,アダプター部材10の第二面12は,切梁3の端面に直接接合されるものであってもよいし,この第二面12と切梁3の間に他の部材が介在してもよい。
上記構成のように,傾斜面(第二面12)を持つアダプター部材10を腹起し2の側面と切梁3の端面の間に介在させることで,切梁3を上方に向けて撓ませた状態で一対の腹起し2間に架け渡すことができる。従って,本発明のアダプター部材10を利用すれば,切梁3の長手方向中央に生じる下向きの撓みを抑制できる。
本発明のアダプター部材10において,第二面12の第一面11に対するキャンバー角θは0.5〜20度であることが好ましい。特に,キャンバー角θは,1〜20度又は1.5〜15度であることが好ましい。第二面12のキャンバー角θが0.5度未満であると,切梁3に生じる下向きの撓みを効果的に抑制できない。他方で,キャンバー角θが20度を超えると,切梁3が上向きに大きく撓み過ぎてしまい,腹起し2の間に架け渡すことが困難になり、施工性が低下する。従って,キャンバー角θは0.5〜20度の範囲とすることが適切である。
本発明のアダプター部材10は,第一面11と第二面12とを繋ぐ周面13をさらに有する。この場合に,アダプター部材10は,第一面11と周面13のなす角θが直角であり,第二面12と周面13のなす角θが70度以上89.5度以下であることが好ましい。このように,第一面11と周面13のなす角を直角とすることで,アダプター部材10を組み込んだ山留支保工の構造を安定化させることができる。
本発明のアダプター部材10は,第一面11から第二面12を貫通する複数のボルト穴14をさらに有することが好ましい。例えば,第一面11側からボルト穴14にボルトを差し込めば,アダプター部材10と切梁3の端面とをボルト接合できる。また,例えば,第二面12側からボルト穴14にボルトを差し込めば,アダプター部材10と腹起し2の側面とをボルト接合できる。このように,ボルト穴14を持つアダプター部材10によれば,簡単な構造で,腹起し2と切梁3との連結が可能である。
本発明の第2の側面は,山留支保工構造に関する。本発明に係る山留支保工構造は,少なくとも一対の腹起し2と,この一対の腹起し2の間に架け渡された切梁3と,この一対の腹起し2の側面と切梁3の端面との間に配置された少なくとも2つのアダプター部材10とを備える。アダプター部材10は,腹起し2側の第一面11と,この第一面11と対向する切梁3側の第二面12とを有し,第二面12が第一面11に対して傾斜した構造を成している。このように,切梁3の両端側にそれぞれ傾斜面を持つアダプター部材10を
配置しておくことで,上方に向かって撓んだ状態で切梁3を腹起し2の間に架け渡すことができるため,切梁3に下向きの撓みが生じるのを抑制できる。なお,2つのアダプター部材10の間には,1本の切梁3のみを配置することとしてもよいし,複数本の切梁3をボルト接合したものを配置することとしてもよい。
本発明に係る山留支保工構造において,第二面12は切梁3の端面に接合されていることが好ましい。アダプター部材10と切梁3との間に別の部材を介在させることもできるが,そのような場合には構造全体の強度が低下するおそれがある。このため,アダプター部材10と切梁3との間には別の部材を介在させずに,アダプター部材10の第二面12を切梁3の端面に直接接合(例えばボルト接合)することが好ましい。
本発明に係る山留支保工構造は,腹起し2とアダプター部材10の間に,切梁3に対して軸力を付与する方向に伸縮可能なジャッキ6をさらに備えることが好ましい。ジャッキ6を設けることで,切梁3に生じる上向きの撓み具合を適度に調整することが可能となる。
本発明によれば,シンプルな構造で切梁の長方向中央に生じる下方への撓みを抑制し,切梁の尺を長く確保できる。
図1は,アダプター部材の一例を示す外観斜視図である。 図2は,アダプター部材の一例を示す平面図と断面図である。 図3は,アダプター部材を腹起しと切梁の間に配置した構造の一例を示している。 図4は,アダプター部材の作用により切梁が撓む様子を模式的に示している。 図5は,アダプター部材を腹起しと切梁の間に配置した構造の別の例を示している。 図6は,アダプター部材の別の例をした断面図である。 図7は,複数の切梁を連結する構造の例を模式的に示している。 図8は,一般的な山留支保工構造の例を示した平面図である。 図9は,従来の山留支保工構造の問題点を説明するための図である。
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
本願明細書において,「A〜B」という表現を使うときは,基本的に「A以上B以下」であることを意味する。また,本願図には,各物品の立体構造を分かりやすく示すために,XYZの三次元座標を示している。X軸方向は,一対の腹起し間に切梁が架け渡された方向,すなわち切梁の長手方向に対応している。また,Y軸方向は,重力方向(鉛直方向)に対応している。また,Z軸方向は,平面的に切梁の延在方向と直交する方向,すなわち腹起しの長手方向に対応している。
図1及び図2は,本発明の一実施形態に係るアダプター部材10を単独で示している。図1は,アダプター部材10の斜視図であり,図2(a)は,アダプター部材10の平面図であり,図2(b)は,図2(a)に示されたII−II線における断面図である。アダプター部材10は,腹起しの側面と切梁の端面との間に配置され,これらを直接又は間接的に連結するための部材である。
具体的に説明すると,本実施形態に係るアダプター部材10は,プレート状の六面体に構成されている。アダプター部材10は,腹起し2に面する第一面11と,切梁3に面する第二面12と,これら第一面11と第二面12を繋ぐ周面13を持つ。第一面11と第二面12は,四角形状の面であり,特に図示した例では正方形となっている。また,第一面11と第二面12は、YZ面となる。また,本実施形態においてアダプター部材10は六面体である。このため,周面13は,第一面11と第二面12の上辺を繋ぐ上面13aと,これらの下辺を繋ぐ下面13bと,これらの左辺を繋ぐ左側面13cと,これらの右辺を繋ぐ右側面13dとによって構成される。プレート状のアダプター部材10は,中実構造となっており,各面11〜13の間に空間は形成されていない。アダプター部材10には強度が要求されるため,アダプター部材10はスチールなどの高剛性金属で構成されていることが好ましい。
図1及び図2に示されるように,アダプター部材10は,第二面12が第一面11に対して所定のキャンバー角θで傾斜した構造となっている。キャンバー角θとは,図2(b)に示されるように,第一面11を基準としたときに第二面12が傾斜している角度である。キャンバー角θは,特に限定されないが,例えば0.5〜20度であることが好ましい。特に,キャンバー角θは,1〜20度又は1.5〜15度であることが好ましい。また,第二面12は,第一面11に対してネガティブキャンバー角をもっているといえる。すなわち,第二面12は,上面13a側から下面13b側に向かうに連れて第一面11との間隔が大きくなるように傾斜している。このため,アダプター部材10は,下面13bの幅が上面13aの幅よりも大きくなる。
さらに具体的に説明すると,本実施形態に係るアダプター部材10は,図2(b)に示されるように,第一面11と周面13(上面13a・下面13b)とのなす角θが直角となる。他方で,第二面12と周面13(上面13a・下面13b)とのなす角θは,90度未満となる。なす角θは,前述したキャンバー角θに対応するものであるが,例えば70〜89.5度であることが好ましく,特に70〜89度又は75〜88.5度であることが好ましい。このように,本実施形態では,第二面12のみが傾斜面となる。
アダプター部材10のサイズは特に限定されないが,少なくとも第一面11及び第二面12は,一般的に使用される切梁の端面以上の面積を有することが好ましい。例えば,台地面11と第二面12のサイズは,横150mm×縦150mm〜横600mm×縦600mm程度とすればよい。ただし,第一面11と第二面12のサイズは,使用する切梁の端面のサイズに合わせて適宜調整できる。また,アダプター部材10の厚み(最小値)は,5〜100mm又は10mm〜50mm程度とすればよい。
また,図1及び図2に示されるように,本実施形態のアダプター部材10は,第一面11から第二面12まで厚み方向に貫通する複数のボルト穴14を有している。図示した例において,アダプター部材10は,その周縁に沿って20個のボルト穴14aを有し,その中央寄りの位置に12個のボルト穴14bを有する。例えば,周縁のボルト穴14aには,第一面11側からボルトが差し込まれる。第一面11側から差し込まれたボルトは,例えばアダプター部材10と切梁とを連結する。他方で,中央寄りのボルト穴14bには,第二面12側からボルトが差し込まれる。第二面12側から差し込まれたボルトは,例えばアダプター部材10と腹起しとを連結する。このように,アダプター部材10は腹起しと切梁とを連結する用途に用いることができる。なお,後述するように,アダプター部材10と腹起しとの間や,アダプター部材10と切梁との間には,別の部材を配置することも可能である。
なお,本実施形態では,アダプター部材10が六面体のプレート状である場合を例に挙げて説明した。ただし,本発明のアダプター部材10はこのような形態に限られず,例えば,第一面11と第二面12とが円形状,楕円形状,三角形状,その他多角形状であってもよい。用途は限られるが,第一面11と第二面12とを四角形以外の形状とすることもできる。
続いて,アダプター部材10を組み込んだ山留支保工構造について説明する。前述したように,図8は,一般的な山留支保工構造を示している。本発明のアダプター部材10も,この図8に示したような山留支保工構造に適用することができる。山留支保工構造を構築する際には,まず複数の土留壁1を地中に打ち込み,これらの土留壁1によって直方体状(平面矩形状)の作業空間と成る領域を確保する。複数の土留壁1は,掘削進行方向(鉛直方向)に沿って打ち込まれるとともに,水平方向に並べ建てられて隙間のない壁面を形成する。図1に示した例では,対向する2辺の土留壁1が,他の2辺の土留壁1よりも長く延在しており,その結果,4辺の土留壁10によって囲われた作業空間は平面長方形状となっている。土留壁1としては,U形,Z形,H形,又は直線形などの鋼矢板を採用する好ましい。また,土留壁1は,ソイルセメントのみから構成されるSMW(Soil Mixing Wall:ソイルセメント壁),あるいはソイルセメントとそれに埋設された芯材(H形鋼他)から構成されるSMWであってもよい。ただし,土留壁1は,その他の形鋼やコンクリートパイルなど,公知の部材を使用してもよい。
全ての土留壁1の打ち込みを終えた後,土留壁1によって囲われた作業領域を掘削しながら,4辺の土留壁1に当接するように腹起し2を接合する。腹起し2は,土留壁1に接合されるとともに,土留壁1の四隅においては腹起し2同士の接合も行われる。各部の接合方法は,ボルト接合や溶接などの公知の方法を採用することができるが,これらの方法に限定されない。各腹起し2の接合が完了すると,各腹起し2は土留壁1を支持する機能を持つ。つまり,掘削面から土圧等の側圧荷重が土留壁1に与えられた場合であっても,腹起し2が土留壁1を内側から支持することで,土留壁1の傾倒や掘削面の崩壊を阻止できる。なお,腹起し2としては,I形やH形などの公知の形鋼を利用できる。また,図8に示したように,長めの腹起し2を採用した場合,その中央部分に大きな曲げモーメントが作用するため,これを抑制するために,対向する腹起し2同士の間を架け渡すようにして一又複数の切梁3が設置される。このとき,腹起し2と切梁3の接合状態を補強するために,腹起し2の側面と切梁3の側面を繋ぐように斜め方向に延びる火打ち梁4をボルト接合することもできる。切梁3としては,鋼管,角型鋼管,丸型鋼管,H型鋼管など公知の部材を用いることができる。切梁3を設けることで,腹起し2の長さが長くなった場合であっても,切梁3によって腹起し2を補強することができる。このため,土圧等の側圧荷重が付加された場合でも腹起し2の変形を抑制することが可能となる。
図3は,上記したような一般的な山留支保工構造に,傾斜面を持つアダプター部材10を組み入れた場合の一例を示している。図3は,山留支保工構造の側断面であり,切梁3の一端側を拡大して示している。図3の例では,山留支保工構造の一部として,土留壁1と,腹起し2と,切梁3と,補助ピース5と,アダプター部材10が示されている。ここに示されるように,アダプター部材10は,腹起し2と切梁3との間に配置され,その第一面11が腹起し2側に面しており,傾斜面となる第二面12が切梁3側に面している。より具体的には,アダプター部材10の第二面12(傾斜面)は,切梁3の端面に直接接しており,両者は接合されている。他方で,アダプター部材10の第一面11と腹起し2との間には,補助ピース5が介在している。このため,アダプター部材10の第一面11は,補助ピース5の端面に直接接合され,この補助ピース5の端面が腹起し2の側面に接合されることとなる。このように,アダプター部材10と腹起し2の間には補助ピース5のような別部材を介在させることができる。なお,補助ピース5は,腹起し2の側面と切梁3の端面と間に生じる隙間を埋めるために,切梁3の長さを調整することを目的として配置された部材である。補助ピース5は,切梁3などと同様に,鋼管,角型鋼管,丸型鋼管,H型鋼管など公知の部材を用いることができる。
図3は,切梁3の一端側のみを拡大して示しているが,切梁3の他端側においても同様に,腹起し2の側面と切梁3の端面との間に傾斜面を持つアダプター部材10が配置されている。図4には,1本の切梁3の両端にアダプター部材10を配置した構造の例を模式的に示している。図4に示されるように,切梁3の両端の端面は,アダプター部材10の第二面12(傾斜面)が当接している。このため,切梁3は,何ら重力の影響を受けないと想定した場合には,その全体が上方に向かって弧状に撓んだ状態となる。このため,切梁3が重力の影響を受けた場合を想定すると,図4において点線で示したように,その長手方億に沿って略真っ直ぐに延びるようになると考えられる。図9を用いて説明したとおり,従来の切梁3は,重力の影響を受けたときに,その長手方向の中央部分が下方に向かって大きく撓んでしまうという問題があった。これに対して,図4に示したように,切梁3の両端に傾斜面を持つアダプター部材10を取り付けることで,このような下向きの撓みを抑制することが可能となる。特に,2つのアダプター部材10の間に配置する切梁3を1本のみとすることで,図4に示したように切梁3が上向きの弧状を形成するため,その強度が向上する。
図5は,アダプター部材10を山留支保工構造に組み込む際の様々な方法を示している。図5(a)に示した例では,アダプター部材10の第一面11が腹起し2の側面に直接接合され,アダプター部材10の第二面12が切梁3の端面に直接接合されている。このように,腹起し2と切梁3に対してアダプター部材10を直接接合する構造が,本発明において最もシンプルな構造となる。
図5(b)に示した例では,アダプター部材10の第二面12は切梁3の端面に直接接合されているが,アダプター部材10の第一面11と腹起し2の間には,2つの補助ピース5が配置され,さらにそれらの補助ピース5の間にジャッキ6が配置されている。この例では,腹起し2の側面に第1の補助ピース5が接合され,この第1の補助ピース5にジャッキ6が接合され,このジャッキ6に第2の補助ピース5が接合され,この第2の補助ピース5にアダプター部材10の第一面11が接合され,このアダプター部材10の第二面12に切梁3の端面が接合された構造となる。このように,アダプター部材10と腹起し2との間には,複数の物品を設置することも可能である。
ジャッキ6は,切梁3の長手方向に沿って伸縮可能な機能を有しており,切梁3に軸力を導入することを目的として腹起し2と切梁3の間に配置される。ジャッキ6を作動させて切梁3に一定の軸力を導入することにより,各接合部の弛みをなくして対向する山留壁を強固に支持することができる。ジャッキ6の例は,油圧ジャッキ又はネジジャッキである。特に,本発明においては,ジャッキ6の伸縮させることで,切梁3の撓み具合を適度に調整できる。つまり,ジャッキ6を長く伸長させて切梁3に与える軸力を強くすることで,切梁3の長手方向中央を上向きに大きく撓ませることできる。他方で,ジャッキ6を収縮させて切梁3に与える軸力を弱めることで,切梁3に生じる撓みは小さくなる。このように,切梁3の撓み具合を適切に調整するために,本発明においては,切梁3の少なくとも一端側にジャッキ6を導入することが好ましい。
図5(c)に示した例では,アダプター部材10の第二面12は切梁3の端面に直接接合されているが,アダプター部材10の第一面11と腹起し2の間には,補助用切梁部材7が配置されている。補助用切梁部材7の例は,鋼管,角型鋼管,丸型鋼管,H型鋼管などである。補助ピース5では腹起し2と切梁3の間を埋めることが出来ないような場合には,図5(c)に示したように比較的長い尺を持つ補助用切梁部材7を配置すればよい。
なお,図5では,図示は省略しているが,アダプター部材10の第二面12と切梁3の端面にも他の部材(例えば補助ピース5など)を配置することもできる。このように,本発明に係るアダプター部材10は,腹起し2の側面や切梁3の端面に直接接していることは必要とされない。
図6は,アダプター部材10の別の実施形態を示している。図6に示した例において,アダプター部材10は,第一面11と第二面12との間に空間15を保持した中空構造を成している。例えば,中空構造のアダプター部材10は,鋼管,角型鋼管,丸型鋼管,H型鋼管などの公知の部材を加工して,切梁3側の面を傾斜面とすることによって形成することができる。このような中空構造のアダプター部材10は,比較的長さを確保しやすいというメリットがある。このため,例えば図5(b)に示した例では,切梁3とジャッキ6の間にプレート状(中実構造)のアダプター部材10と補助ピース5とを組み合わせて配置しているが,図6に示した例では,一定の長さを持つ中空構造のアダプター部材10を採用することで,切梁3とジャッキ6の間の補助ピース5を省略することが可能となる。このように,鋼管などを加工した中空構造のアダプター部材10を用いることで,山留支保工構造を構成する物品点数を少なくすることができる。
図7は,2つのアダプター部材10の間に複数の切梁3を連結して配置した構造の例を示している。前述したとおり,本発明のアダプター部材10を用いることで,切梁3は上向きのアーチを形成することとなるが,複数本の切梁3を用いる場合には,各切梁3を接合するための工夫が必要となる。図7(a)で示した例では,互いに接合される切梁3の端面の両方又はいずれか一方を傾斜面とすることで,両端面が密着するようにしている。このように,切梁3の端面を傾斜面とする加工を施すことで,切梁3同士の端面を密着するため,両端面のボルト接合が容易になる。
図7(b)で示した例では,互いに接合される切梁3の端面が両方とも垂直面となっている。このため,切梁3同士を接合しようとすると端面の間に隙間が生じる可能性がある。そこで,図7(b)に示されるように,切梁3の端面の間にクサビ部材8を挿し込むことで,これらの端面の間に生じる隙間を埋めることができる。この場合,クサビ部材8にもボルト穴が形成されており,切梁3の端面の間にクサビ部材8を挿し込んだ状態においてボルト接合することが可能である。
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
本発明は,地盤の掘削面が崩壊するのを防ぐために利用される山留支保工の構造や,その構造に組み込まれるアダプター部材に関する。従って,本発明は,山留用の支保工の仮設工事を主とする土木・建築業において好適に利用し得る。
1…土留壁 2…腹起し
3…切梁 4…火打ち梁
5…補助ピース 6…ジャッキ
7…補助用切梁部材 8…クサビ部材
10…アダプター部材 11…第一面
12…第二面 13…周面
14…ボルト穴 15…空間

Claims (6)

  1. 腹起し(2)の側面と切梁(3)の端面との間に配置されるアダプター部材(10)であって,
    前記腹起し(2)側の第一面(11)と,
    前記第一面(11)と対向する前記切梁(3)側の第二面(12)とを有し,
    前記第一面(11)と前記第二面(12)との間が中実構造となっており,
    前記第二面(12)が上側から下側に向かうに連れて前記第一面(11)との間隔が大きくなるように傾斜している
    アダプター部材。
  2. 前記第二面(12)の前記第一面(11)に対するキャンバー角(θ)は,0.5度以上20度以下である
    請求項1に記載のアダプター部材。
  3. 前記第一面(11)から前記第二面(12)を貫通する複数のボルト穴(14)をさらに有する
    請求項1に記載のアダプター部材。
  4. 少なくとも一対の腹起し(2)と,
    前記一対の腹起し(2)の間に架け渡された切梁(3)と,
    前記一対の腹起し(2)の側面と前記切梁(3)の端面との間に配置された少なくとも2つのアダプター部材(10)と,を備える
    山留支保工構造であって,
    前記アダプター部材(10)は,それぞれ,
    前記腹起し(2)側の第一面(11)と,
    前記第一面(11)と対向する前記切梁(3)側の第二面(12)とを有し,
    前記第一面(11)と前記第二面(12)との間が中実構造となっており,
    前記第二面(12)が上側から下側に向かうに連れて前記第一面(11)との間隔が大きくなるように傾斜している
    山留支保工構造。
  5. 前記第二面(12)は,前記切梁(3)の端面に直接接合されている
    請求項4に記載の山留支保工構造。
  6. 前記腹起し(2)と前記アダプター部材(10)の間に配置され,前記切梁(3)に対して軸力を付与する方向に伸縮可能なジャッキ(6)をさらに備える
    請求項5に記載の山留支保工構造。
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