以下、図面を参照して、本発明の第一及び第二実施形態を説明する。図1及び図2を参照して、多針ミシン(以下、単にミシンという)1、及び刺繍枠5の物理的構成について説明する。以下の説明では、図1の上側、下側、左斜め下側、右斜め上側、左斜め上側、右斜め下側を各々、ミシン1及び刺繍枠5の上側、下側、前側、後ろ側、左側、右側とする。
図1に示すように、ミシン1は、支持部2と、脚柱部3と、アーム部4とを備える。支持部2は、ミシン1全体を支持する。脚柱部3は、支持部2の後端部から上方へ立設される。アーム部4は、脚柱部3の上端部から前方に延びる。アーム部4の先端には、針棒ケース21が左右方向に移動可能に装着される。針棒ケース21の内部には、上下方向に伸びる10本の針棒(図示略)が左右方向に等間隔で配置される。10本の針棒のうち、縫製位置にある1本の針棒(縫製針棒)が、主軸モータ(図示略)を駆動源として駆動する針棒駆動機構(図示略)によって上下方向に摺動される。針棒の下端には、縫針(図示略)が装着可能である。押え足(図示略)は、針棒の上下動と連動して、間欠的に被縫製物C(図4(B)参照)を下方へ押圧する。被縫製物Cは、例えば、加工布、皮、及び樹脂シート等のシート状である。
図1に示すように、アーム部4には、操作部6が設けられる。操作部6は、スタート/ストップスイッチ9を備える。スタート/ストップスイッチ9は、縫製の開始又は停止を指示する際に使用される。アーム部4の下方には、脚柱部3の下端部から前方へ延びる筒状のシリンダベッド10が設けられる。シリンダベッド10の先端部の内部には、釜(図示略)が設けられる。釜は、下糸(図示略)が巻回されたボビン(図示略)を収納する。シリンダベッド10の内部には、釜駆動機構(図示略)がある。釜駆動機構は、釜を回転駆動する。シリンダベッド10の上面には、平面視矩形の針板27がある。針板27には、縫針が挿通する針穴16が設けられる。10本の針棒のうち、針穴16の直上に位置している針棒が縫製針棒である。アーム部4の下方には更に、移動機構(図示略)のホルダ25、Yキャリッジ26、及びXキャリッジ28が設けられる。図2に示すように、移動機構のホルダ25は、枠取付部材31を介して、刺繍枠5を支持する。移動機構は、ホルダ25に装着された刺繍枠5を、固有のXY座標系(刺繍座標系)で示される位置に移動可能である。アーム部4の上面の後ろ側には、左右一対の糸駒台12が設けられる。各糸駒台12には、複数の糸立棒14が設けられる。糸立棒14は、糸駒13を支持する。上糸15は、糸駒台12に設置された糸駒13から供給される。上糸15は、糸道経路を経由して、針棒の下端に装着された各縫針の目孔(図示略)に供給される。糸道経路は、糸案内17と、糸調子器18と、天秤19とを含む。
図1及び図2を参照して、刺繍枠5に保持された被縫製物Cに縫目を形成する動作について説明する。被縫製物Cを保持した刺繍枠5は、枠取付部材31を介して移動機構のホルダ25に支持される。針棒ケース21が左右に移動することで、10本の針棒のうち1本が縫製針棒として選択される。移動機構によって、刺繍枠5が所定の位置に移動される。針棒駆動機構及び天秤駆動機構は、主軸モータを駆動源として、選択された針棒及びそれに対応する天秤19が上下駆動される。また、主軸モータの回転によって釜駆動機構が駆動され、釜が回転駆動される。このように、縫針と天秤19と釜とが同期して駆動され、被縫製物Cに縫目が形成される。
図2から図9を参照して、刺繍枠ユニット30について説明する。刺繍枠ユニット30は、ミシン1に取り外し可能に装着される部材である。刺繍枠ユニット30は、刺繍枠5と、枠取付部材31とを備える。刺繍枠5は、第一枠51と、第二枠52と、装着部55とを有し、第一枠51と、第二枠52との間に磁力で被縫製物Cを保持可能である。枠取付部材31は、ミシン1のホルダ25に取り外し可能に装着される。枠取付部材31は、刺繍枠5を取り外し可能に装着する。つまり本実施形態のミシン1には、枠取付部材31を介して、刺繍枠5を装着可能である。本例の刺繍枠5は、ミシン1に装着された状態では、第一枠51と第二枠52とで上下方向に被縫製物Cを保持する。つまり、第一枠51は上枠であり、第二枠52は下枠である。第一枠51と第二枠52との各々は内縁73、83が多角形状である。第一枠51及び第二枠52は、平面視角が丸みを帯びた正方形状の枠状の部材である。図2及び図3に示すように、第一枠51は、第二枠52に対して接近又は離間可能である。
第一枠51は、本体部71と一対の把持部72とを備える。本体部71は角が丸みを帯びた正方形状で、厚み方向(上下方向)に貫通する孔61を有する枠状である。図4(B)及び図5に示すように、第一枠51の本体部71は、磁石62、ヨーク63、及び外装部64を備える。磁石62は、第一枠51の内縁73の周縁部に配置される。磁石62は直方体状であり、第一枠51の内縁73に沿って、一辺に2個ずつ、合計8個設けられる。各磁石62の長手方向は、該磁石62が配置された第一枠51の辺の延設方向と同じである。ヨーク63は磁石62による磁束を導く。図4(B)に示すように、ヨーク63は下方が開口する逆U字状の磁性体(例えば、鉄板)である。ヨーク63の凹部には、磁石62が配置される。ヨーク63の第二枠52側(下側)の端部69は、磁石62の下側の端部よりも下側に位置する。図5に示すように、1つの磁石62につき、2つのヨーク63が配置される。
図4(B)に示すように、外装部64は、磁石62とヨーク63とを保持する、非磁性体(例えば、樹脂)で構成された部材である。本例の外装部64は第一部65と第二部66とを有し、第一部65と、第二部66とで、磁石62とヨーク63とを挟持する。第一部65と、第二部66とは、8個の螺子67によって固定されている。8個の螺子67の内の4つは正方形状の第一枠51と4つの角部付近に固定され、残りの4つは第一枠51の四辺の中点付近に固定されている。図5に示すように、磁石62及びヨーク63は、底面視隣合う2つの螺子67の間に配置される。第一部65は、本体部71の上側をなす部分であり、上面の左右の端部は各々、左右一対の把持部72と連結する。一対の把持部72は、ユーザが第一枠51を第二枠52に対して、接近させたり、離隔させたりする際の持ち手となる。図4(A)に示すように、第一枠51が第二枠52に対して接近し、被縫製物Cを磁力で保持可能な使用状態では、左側の把持部72の左端は、第二枠52の左端よりも左方にある。右側の把持部72の右端は、第二枠52の右端よりも右方にある。図4(A)に示すように、平面視において、第一枠51の本体部71の正方形状の外縁74は、第二枠52の正方形状の外縁85よりも小さい。第一枠51(第一部65)の上面の内、平面視正方形状の四辺の中点付近には、位置合わせ用の三角形状のマークが付与されている。
第二部66は、本体部71の内の第二枠52側(下側)をなす部分であり、断面形状が上側が開放したU字状の凹部を備える部材である。第二部66は、第二枠52側となる面に複数の孔68を有する。各孔68は第一方向(上方)に貫通し、ヨーク63の第二枠52と対向する側の端部69を挿通させ、ヨーク63を外装部64の外部に露出させる。ヨーク63の第二枠52と対向する側の端部69は、第二部66の孔68を介して、外装部64から露出し、且つ、外装部64の第二枠52と対向する側の端部(下面)70より第二枠52側へ突出していない。第一枠51と第二枠52とで被縫製物Cが挟持された時、外装部64の端部70は、被縫製物Cと接触するが、磁石62及びヨーク63は被縫製物Cと接触しない。
第二枠52は、第一枠51と共に被縫製物Cを磁力で挟持可能である。第二枠52は、本体部56と、案内部57とを有する。図6に示すように、本体部56は、平面視角が丸みを帯びた正方形状の、上下方向に貫通する孔81を有する枠状である。本体部56は、第一枠51の磁石62と対向する位置が磁性体により構成された挟持面82を有する。挟持面82は、本体部56の内縁83の周縁に、水平に延設されている。挟持面82は本体部56の上面の内、案内部57よりも内縁83側の部位である。第一枠51と第二枠52とで被縫製物Cが挟持された状態では、被縫製物Cは挟持面82に載置される。外縁85の周縁に、第二枠52の内側から外側に向け第一方向に傾斜した一対の傾斜部86を備える。本例の一対の傾斜部86は、本体部56の左右方向の端部に設けられる。左側の傾斜部86は、左方ほど第一方向(上方)となるように傾斜している。右側の傾斜部86は、右方ほど上方となるように傾斜している。
本体部56の後端部は、後述の装着部55の取付部材130の前端部に連結する。本例では、本体部56と、取付部材130とがステンレス等の磁性体により一体に構成されている。本体部56と取付部材130との連結部付近の下面には、左右方向に延び、下方に突出した突出部材90が設けられている。図9(A)に示すように、突出部材90の左右方向の端部には、左右方向の中央部87よりも第一方向とは逆方向(下方)に突出した突出部88、89を備える。図9(B)に示すように、使用状態において、中央部87の下端の位置は、第二枠52の内縁83と略同じであり、突出部88、89の下端の位置は、第二枠52の内縁83よりも下方にある。突出部88、89は面取りされた、丸みを帯びた形状である。突出部材90の突出部88、89はミシン1がシリンダベッド10に対して刺繍枠5を左右方向に移動する際に、シリンダベッド10の上面と当接し、シリンダベッド10に対する刺繍枠5の上下方向の位置を規定する。突出部材90の左右方向の長さは、本体部56の左右方向の長さよりもやや長い。使用状態では、第一方向から見た第二枠52の本体部56の内縁83は、第一枠51の本体部71の内縁73と略一致する。
案内部57は挟持面82の外縁部に設けられた、第一枠51を挟持面82に案内する部位である。案内部57は挟持面82に対して挟持面82に交差する第一方向(上方)に挟持面82よりも突出する。本例の第一方向は、使用状態において、挟持面82に直交する方向の内、第一枠51側となる方向である。案内部57は、プラスチック樹脂等の非磁性体で構成される。案内部57は、第一方向(上方)から見た形状が第二枠52の内縁83よりも大きく、複数の角部95から98を有する多角形の枠状である。角部95から98は各々、正方形状の案内部57の左前部、左後部、右後部、及び右前部に設けられる。本例の案内部57は、本体部56の内縁83の形状を本体部56の内縁83側から外縁85側に向かって大きくした、平面視正方形状である。案内部57は、第二枠52の外側から内側に向かう第二方向程、挟持面82側(下方)に傾斜した傾斜面91から94を有する。傾斜面91から94は各々、正方形状の案内部57の各辺のうち、本体部56の内縁83側に設けられる。傾斜面91、93は互いに対向し、傾斜面92、94は互いに対向する。例えば、案内部57の左辺部では、第二方向は右方で有り、左辺部に設けられた傾斜面91は、右方程下方に傾斜する。同様に、案内部57の右辺部では、第二方向は左方であり、右辺部に設けられた傾斜面93は左方程下方に傾斜する。挟持面82に対する傾斜面91から94の角度は、例えば30度から60度の何れかに設定される。複数の角部95から98は各々、挟持面82に対して第一方向に突出しているが、案内部57の他の部分(案内部57の四辺をなす部分)に比べ挟持面82に対する第一方向の突出量が小さい。
本例の案内部57は、一対の移動部材58、59を有する。本例の第二枠52は更に、複数の案内部材101から104を有する。本例の一対の移動部材58、59は各々、案内部57の少なくとも一部をなし、第二方向及び第二方向と逆の第三方向に移動可能に、本体部56に固定される。一対の移動部材58、59は各々、同様の形状を有し、第一方向から見た場合の形状(平面形状)はL字状である。図4(B)に示すように、一対の移動部材58、59の第二方向における断面形状は、下方が開放する鉤状である。一対の移動部材58、59は、第三方向の端部が本体部56と接触し、第二方向の端部は本体部56から離間している。一対の移動部材58、59は、L字状の角が対角に配置され、正方形状の枠状の案内部57をなす。移動部材58は、正方形状の案内部57の左辺及び後辺に設けられた傾斜面91、92と、角部96における第二方向及び第三方向に延びる複数の長孔111から113とを有し、本体部56に対して移動可能である。移動部材59は、正方形状の案内部57の右辺及び前辺に設けられた傾斜面93、94と、角部98における第二方向及び第三方向に延びる複数の長孔121から123とを有し、本体部56に対して移動可能である。複数の案内部材101から104は各々、第一方向に延びる。案内部材101は、長孔111、121に挿通され、移動部材58、59の移動を案内する。案内部材102、104は各々、長孔112、122に挿通され、移動部材58、59の移動を案内する。案内部材103は、長孔113、123に挿通され、移動部材58、59の移動を案内する。案内部材101、103は、本体部56の上面から第一方向に延びるピンであり、上端が止め輪で固定されている。案内部材102、104は、第一方向に延びる螺子であり、移動部材58、59を本体部56に固定する。図4(B)に示すように、案内部57の内縁75と、本体部56との間には、隙間Dがある。隙間Dは案内部57の内縁75全周にかけてある。隙間Dの第一方向の長さは、刺繍枠5で挟持可能な被縫製物Cの厚みを考慮して設定される。
第一枠51と、第二枠52とで被縫製物Cを磁力で保持する時(使用状態)、第二枠52の挟持面82は第一枠51の外装部64の下端部70と対向する。第一枠51の本体部71は、案内部57よりも第二方向に配置される。つまり、本体部71の外縁74は案内部57によって囲まれる。
装着部55はミシン1に取り外し可能に装着される。装着部55は、後述する所定の装着位置において、ミシン1が有する枠取付部材31によって取り外し可能に装着される。装着部55は、取付部材130及び位置決め部材140を有する。取付部材130は、枠取付部材31によって支持される部位である。取付部材130は刺繍枠5の後部に設けられる。取付部材130は左右一対の挿通部134、及び凸部137を備える。左右一対の挿通部134は、取付部材130の左右方向の端部を上方に折り曲げることによって形成されており、左右方向に貫通する孔138を有する。凸部137は、取付部材130の後部の左右方向において中央付近において下方へ突出する。取付部材130に対する凸部137の左右方向における位置は、刺繍枠5に固有の位置に設定される。位置決め部材140は、枠取付部材31に対する取付部材130の装着位置を規定する部材である。位置決め部材140は、左右方向に延びる、可撓性を有する板バネ部材である。位置決め部材140は、左右一対の摘み部142を有する。左右一対の摘み部142は各々、位置決め部材140の左端及び右端に設けられる。一対の摘み部142は各々、ユーザの操作によって、位置決め部材140の上下方向の位置を移動させることができる部位である。図2に示すように、一対の摘み部142は各々、取付部材130の孔138に挿通される。
図2及び図3に示すように、枠取付部材31は、取付部32及び切替プレート33を主に備える。取付部32には、刺繍枠5を装着可能である。取付部32は、取付部材34及び押圧部材35を主に備える。取付部材34は、左右方向に延びる板部材である。取付部材34は、枠取付部材31を図2に示すミシン1のホルダ25に固定すると共に、切替プレート33の移動を案内する。押圧部材35は、平面視左右方向に長い矩形状である。刺繍枠5の取付部材130が装着位置に位置する場合、押圧部材35は取付部材130の上側に配置され、取付部材130を取付部材34側(下側)に付勢する。取付部材130が装着位置に位置する状態で、摘み部142が操作された場合、押圧部材35は更に、位置決め部材140を取り外し方向に付勢する。取り外し方向は、取付部材130を装着位置から移動させる際の取付部材130の移動方向である。本実施形態の取り外し方向は、装着方向と反対の方向であり、後ろから前に向かう方向である。押圧部材35は、貫通孔の各々に挿通された螺子によって、取付部材34に固定される。
切替プレート33は、刺繍枠5の取付部材130を取付部32に装着する動作に連動して右方向に移動する移動部材であって、刺繍枠5の種類に応じて移動量が設定された部材である。切替プレート33は、付勢部材(図示略)によって、左方に付勢される。切替プレート33は、左後端部から上方にフック状に延設された係合部37を備える。係合部37は、回転型ポテンショメータ(図示略)が有する検出子29と係合する。検出子29は、切替プレート33の移動量に応じて回転する。したがって、回転型ポテンショメータは、切替プレート33の移動量を、検出子29の回転量に基づき検出可能である。ミシン1は、回転型ポテンショメータが検出した検出子29の回転量に基づき、刺繍枠5の種類を検出可能である。
図4、図6から図8を参照して、刺繍枠5で被縫製物Cを保持する操作を説明する。ユーザは、被縫製物Cの厚みに応じて、本体部56に対する移動部材58、59の位置を調整する。被縫製物Cの厚みが比較的薄い場合、ユーザは、案内部材101から103を各々、長孔111から113の第三方向側の端部に配置し、案内部材101、104、及び103を各々、長孔121から123の第三方向側の端部に配置するように、本体部56に対して移動部材58、59を移動し、移動部材58、59を本体部56に対して固定する。この場合、図4(A)及び(B)に示すように、第一枠51の本体部71の外縁74と、案内部57の内縁75との間隔が比較的狭くなる。被縫製物Cの厚みが比較的厚い場合、ユーザは案内部材101から103を各々、長孔111から113の第二方向側の端部に配置し、案内部材101、104、及び103を各々、長孔121から123の第二方向側の端部に配置するように、本体部56に対して移動部材58、59を移動し、移動部材58、59を本体部56に対して固定する。この場合、図7(A)及び(B)に示すように、第一枠51の本体部71の外縁74と、案内部57の内縁75との間隔が図4(A)及び(B)に例示する場合に比べ広くなる。
ユーザは第二枠52に被縫製物Cを載置し、第一枠51を被縫製物Cに対して第二枠52側とは反対側から接近させる。図8に示すように、第一枠51が第二枠52に対して平面視で回転した姿勢で第二枠52に接近した場合、第一枠51は案内部57の傾斜面91から94に案内され、第一枠51と、第二枠52との間に働く磁力により、平面視時計回りに回転しながら第二枠52の挟持面82に引き寄せられる。第一枠51は、第二枠52に対して、第一枠51の孔61と第二枠52の孔81とが略一致する位置に移動し、第一枠51と、第二枠52との間に働く磁力により被縫製物Cを保持する。
本例では案内部57の内縁75と、本体部56との間には隙間Dがある。被縫製物Cは、刺繍枠5の内側に設定される縫製領域となる部位では水平に展張され、第一枠51の端部70と挟持面82とで保持される。被縫製物Cは第一枠51の本体部71の外縁74及び案内部57の内縁75付近で、案内部57の傾斜面91から94に沿って折れ曲がる。この時、被縫製物Cは隙間Dに入り込むことができ、且つ、傾斜面91から94に沿った部位では、第一枠51によって押圧されない為、被縫製物Cに案内部57の内縁75に沿った保持痕が付きにくい。また本例の案内部57の角部95から98は各々、案内部57の他の部位よりも、第一方向(上方)の突出量が小さい。この為、被縫製物Cは他の部位よりも低くなった角部95から98に入り込むことができ、被縫製物Cに多角形の角状の保持痕が付きにくい。
図3及び図4を参照して、ミシン1に刺繍枠5を装着する操作を説明する。ユーザは、取付部材34の孔(図示略)と、ホルダ25の孔(図示略)とに一対の摘み螺子43を挿通し、締付けることで、枠取付部材31をホルダ25に取り付ける。ミシン1に装着された枠取付部材31に刺繍枠5を装着する場合、ユーザはまず、刺繍枠5を装着方向(後方)に水平移動させる。凸部137は取付部材34に案内されながら所定の位置に収容される。このとき、取付部材34に対する凸部137の位置に応じて、切替プレート33が右方に移動する。ユーザは刺繍枠5を更に装着方向に水平移動させると、取付部材130の水平方向の移動が規制され、刺繍枠5の水平方向の位置が固定される。取付部材130は、押圧部材35によって上方から押さえられている為、取付部材130は、押圧部材35と取付部材34とで挟持される。取付部材130は、上下方向の位置が固定される。以上の動作によって、刺繍枠5がミシン1の枠取付部材31に装着される。ミシン1は、切替プレート33の移動量を検出子29の回転量によって検出することによって、刺繍枠5の種類を検出可能である。
刺繍枠5をミシン1に装着された枠取付部材31から取り外す場合は、ユーザは摘み部142を上方へ持ち上げる。摘み部142が上方に持ち上げられると、位置決め部材140が撓んで、押圧部材35から取り外し方向の力を受ける。取付部材130は水平方向に移動可能となり、ユーザは、押圧部材35から受ける取り外し方向の力を利用して、刺繍枠5を取り外し方向にスムーズに水平移動させることができる。即ち、ユーザは、刺繍枠5を装着位置から容易に取り外すことができる。
図9(B)に示すように、刺繍枠5が枠取付部材31を介してミシン1に装着された状態で、シリンダベッド10の右方又は左方に、第二枠52が配置されている場合、刺繍枠5は自重で下端の位置がシリンダベッド10の上面よりも下方になることがある。このような状態で、ミシン1が刺繍枠5を縫製位置に移動すると、第二枠52の端部がシリンダベッド10に衝突する。本例では第二枠52は、突出部材90を備える。この為、図9(B)に示すように、ミシン1が刺繍枠5を縫製位置に移動する過程で、突出部材90の突出部88又は89はシリンダベッド10に当接して、刺繍枠5がシリンダベッド10の上側に位置するように持ち上げられ、第二枠52の端部がシリンダベッド10に衝突しないようにする。本例では第二枠52の左右方向の外縁85に傾斜部86を備える。この為、図9(C)に示すように、ミシン1が刺繍枠5を縫製位置に移動する過程で、第二枠52の端部がシリンダベッド10に衝突した場合にも、傾斜部86によって刺繍枠5の移動が案内され、刺繍枠5はスムーズにシリンダベッド10に乗り上げる。
第二実施形態の刺繍枠5について説明する。第二実施形態の刺繍枠5は第二枠150の構成のみが第一実施形態の刺繍枠5と異なり、他の構成は第一実施形態の刺繍枠5と同じである。図10に示す第二実施形態の第二枠150は、第一実施形態の第二枠52と同様の構成には、同じ符号を付与している。図10に示すように、第二実施形態の第二枠150は、本体部146及び案内部147の構成、並びに付勢部材186から189を備える点で、第一実施形態の第二枠52と異なる。第一実施形態の刺繍枠5と同一の構成については説明を省略し、第一実施形態の刺繍枠5と異なる構成について説明する。
図10(A)に示すように第二実施形態の第二枠150は、本体部146、案内部147、案内部材161から168を有する。本体部146は第一実施形態と同様の孔185及び挟持面190を有する、正方形状の枠状である。本体部146の後端部は、装着部55の取付部材130の前端部に連結する。本例は、本体部146と、装着部55の取付部材130とがステンレス等の磁性体により一体に構成されている。挟持面190は、本体部146の内縁191の周縁に、水平に延設されている。挟持面190は本体部146の上面の内、案内部147よりも内縁191側の部位である。第一枠51と第二枠150とで被縫製物Cが挟持された状態では、被縫製物Cは挟持面190に載置される。本体部146は外縁部をなす左辺、右辺、及び前辺の各々が第一方向(上方)に折り曲げ加工された取付部181、183、及び184を備える。取付部181、183、及び184は各々、挟持面190に対して直角に折り曲げ加工されている。本体部146は後部の左右方向略中央部に、挟持面190から第一方向(上方)に突出した取付部182を備える。
案内部147は挟持面190の外縁部に設けられた、第一枠51を挟持面190に案内する部位である。案内部147は挟持面190に対して第一方向(上方)に挟持面190よりも突出し、第二枠150の外側から内側に向かう第二方向程、挟持面190側に傾斜した傾斜面156から159を有する。案内部147は、プラスチック樹脂等の非磁性体で構成される。
案内部147は、移動部材151から154を備える。移動部材151から154は各々傾斜面156から159を備え、互いに同じ形状を有する。各移動部材151から154は、平面視、挟持面190の外周部に、正方形状の内縁191の辺に沿って延びる矩形状である。各移動部材151から154は、移動部材154に例示するように、移動部材154に対して、第二方向に延びる一対の長孔171、172を長手方向の両端部に備える。案内部材161から168は、本体部146から第一方向に延びるピンであり、上端が止め輪で固定されている。案内部材168、167に例示するように、案内部材161から168は各々、対応する移動部材の長孔171、172に挿通され、該移動部材の本体部146に対する移動を案内する。
各移動部材151から154の第三方向の端部をなす面には各々、付勢部材186から189の一端部が固定されている。付勢部材186から189の一端部は各々、第三方向の端部をなす面の内の移動部材151から154の長手方向の略中央部に固定される。付勢部材186から189の他端部は各々、取付部181から184に固定されている。移動部材151から154は各々、付勢部材186から189によって第二方向に付勢されている。付勢部材186から189は例えばコイルバネである。図10(B)に示すように、例えば、第二枠150の内縁191の左辺と平行に設けられた移動部材151は、第二方向となる右方程下方に傾斜した傾斜面156を備える。移動部材151は、左側面の前後方向中央部に付勢部材186の一端が固定され、付勢部材186によって右方に付勢されている。移動部材151の内縁175と、本体部146との間には、隙間がある。
第二実施形態の刺繍枠5で被縫製物Cを保持する場合、ユーザは、事前に被縫製物Cの厚みに応じて、本体部146に対する移動部材151から154の位置を調整する必要はない。本体部146に対する移動部材151から154の位置は、被縫製物Cの厚みに応じて、付勢部材186から189の作用により自動的に調整される為である。被縫製物Cの厚みが比較的薄い場合、案内部材161から168は、長孔171又は172の第三方向の端部側に配置される。被縫製物Cの厚みが比較的厚い場合、案内部材161から168が、長孔171又は172の第二方向の端部側に配置されるように、本体部146に対して移動部材151から154が付勢部材186から189の付勢力に抗して移動する。
上記第一及び第二実施形態において、刺繍枠5、第一枠51、傾斜部86、磁石62、ヨーク63、外装部64は各々、本発明の刺繍枠、第一枠、傾斜部、磁石、ヨーク、外装部の一例である。第二枠52、152は本発明の第二枠の一例である。案内部57、147は、本発明の案内部の一例である。本体部56、146は、本発明の本体部の一例である。傾斜面91から94、156から159は、本発明の傾斜面の一例である。移動部材58、59、151から154は、本発明の移動部材の一例である。案内部材101から104、161から168は、本発明の案内部材の一例である。付勢部材186から189は、本発明の付勢部材の一例である。突出部88、89は、本発明の突出部の一例である。
第一及び第二実施形態の刺繍枠5に共通する効果を、第一実施形態の刺繍枠5を例に説明する。刺繍枠5は、第一枠51と、第二枠52とで被縫製物Cを挟持する時、第一枠51は、案内部57に案内され、被縫製物Cが載置された第二枠52の挟持面82側にスムーズに移動する。この時、案内部57は非磁性体で構成されている為、第一枠51の磁石62と引き合うことはない。故に、刺繍枠5では、従来の刺繍枠に比べ、第一枠51と第二枠52との間に働く磁力により、第一枠51と第二枠52との間に被縫製物Cを適切に保持させる作業が容易である。本例の刺繍枠5は第一枠51に一対の把持部72を備えるので、把持部がない刺繍枠に比べ、第一枠51に対して第二枠52を装着したり、取り外したりする作業が容易である。
案内部57は、第一方向から見た形状が第二枠52の内縁83よりも大きい枠状である。第二枠52の内縁83に沿った方向である周方向において案内部57の一部分は、案内部57の他の部分に比べ挟持面82に対する第一方向の突出量が小さい。第一枠51と第二枠52とで被縫製物Cを縫製する場合、被縫製物Cが折り重なり、他の部位よりも第一枠51と第二枠52との間の被縫製物Cの厚みが厚くなる部位が出てくることがある。このような場合があっても、刺繍枠5は、案内部57の一部分で、被縫製物Cの厚みが増した場合の影響を緩和できる。
刺繍枠5の第一枠51と第二枠52との各々は内縁73、83が多角形状である。第一枠と第二枠との各々は内縁が多角形状である場合、第一枠と第二枠とで被縫製物を保持する際に、角部で被縫製物Cが折りたたまれてしわになりやすい。これに対し、本例の案内部57は、第一方向から見た形状が第二枠52の内縁83よりも大きい、複数の角部95から98を有する多角形の枠状であり、複数の角部95から98は各々、案内部57の他の部分に比べ挟持面82に対する第一方向の突出量が小さい。刺繍枠5は、第一枠51と第二枠52とに挟まれた被縫製物Cが案内部57の角部95から98で折りたたまれる等して、しわになることを抑制できる。
案内部57は、案内部57の少なくとも一部をなし、第二方向及び第二方向と逆の第三方向に移動可能に、本体部56に固定される移動部材58、59を備える。刺繍枠5は、被縫製物Cの厚みが比較的薄い場合には本体部56に対する案内部57の少なくとも一部の位置を第二方向に移動させ、被縫製物Cの厚みが比較的厚い場合には本体部56に対する案内部57の少なくとも一部の位置を第二方向とは反対側の第三方向に移動させることで、両者を適切に挟持できる。移動部材58、59の第二方向における断面形状は、下方が開放する鉤状である。故に、刺繍枠5は移動部材58、59の重量を比較的軽くすることができる。
案内部57は、移動部材58、59を備え、第二枠52は更に、案内部材101から104を備える。移動部材58は、傾斜面91、92と、角部96における第二方向及び第三方向に延びる複数の長孔111から113を有し、本体部56に対して移動可能である。移動部材59は、傾斜面93、94と、角部98における第二方向に延びる長孔121から123とを有し、本体部56に対して移動可能である。案内部材101から104は、第一方向に延び、移動部材58、59の移動を案内する。刺繍枠5は、本体部56に対する移動部材58、59の位置を変更することで、第一枠51の本体部71の外縁74と、案内部57の内縁75との間隔を変更可能である。刺繍枠5は、被縫製物Cの厚みが比較的薄い場合にはユーザは移動部材58を案内部材101から103が長孔111から113の第三方向の端部側に位置するように移動し、移動部材59を案内部材101、104、103が長孔121から123の第三方向の端部側に位置するように移動する。被縫製物Cの厚みが比較的厚い場合にはユーザは移動部材58を案内部材101から103が各々挿通された長孔111から113の第二方向の端部側に位置するように移動し、移動部材59を案内部材101、104、103が各々挿通された長孔121から123の第二方向の端部側に位置するように移動する。このように本体部56に対する移動部材58、59の位置を変更することで、刺繍枠5は厚みが異なる被縫製物Cの各々を適切に挟持できる。刺繍枠5は、案内部57の構成を簡単にできる。
刺繍枠5は、案内部57の内縁75と、本体部56との間には隙間Dがある。刺繍枠5では、案内部57の内縁75と本体部56との間の隙間Dに、被縫製物Cが入り込むことができる。したがって、刺繍枠5は、第一枠51と第二枠52との間に挟まれた被縫製物にしわが形成されることを抑制できる。
本体部56は、外縁85の周縁に、第二枠52の内側から外側に向けて第一方向に傾斜した傾斜部86を備える。刺繍枠5がミシン1に装着された状態で、刺繍枠5が移動されることによって、第二枠52がミシン1のシリンダベッド10が当たった場合にも、刺繍枠5は傾斜部86に案内されてスムーズに移動できるので、第二枠52とシリンダベッド10とが衝突する不具合を避けることができる。
刺繍枠5は第二枠52の内縁83よりも第三方向となる部分において、第二枠52の内縁83よりも、第一方向とは逆の方向(下方)に突出した部分であって、丸みを帯びた突出部88、89を備える。故に、図9(B)に示す如く、刺繍枠5が、シリンダベッド10の上方に位置しない位置に移動された後、ミシン1が刺繍枠5を縫製位置に移動する過程で、突出部材90の突出部88又は89はシリンダベッド10に当接して、シリンダベッド10に対する刺繍枠5の移動をスムーズに案内する。これにより、刺繍枠5の第二枠52はシリンダベッド10の上側に位置するように持ち上げられ、第二枠52の端部がシリンダベッド10に衝突することを回避できる。刺繍枠5が縫製位置に移動した場合、シリンダベッド10の上方には、突出部材90の中央部287が配置され、第二枠52の下面と、シリンダベッド10(針板27)との間の距離は、縫製に適した距離となるので、突出部材90が縫製の妨げになることがない。
第一枠51は、ヨーク63、及び外装部64を備える。ヨーク63は、磁石62による磁束を導く。外装部64は、磁石62とヨーク63とを保持する、非磁性体で構成される。刺繍枠5は、ヨーク63により磁石62の磁力を増強できる。刺繍枠5は、ヨーク63を有しない刺繍枠5に比べ強い磁力で被縫製物Cを挟持できる。
ヨーク63の第二枠52と対向する側の端部は、外装部64から外部(第二枠52側)に露出し、且つ、外装部64の本体部56と対向する側の端部より第二枠52側へ突出していない。刺繍枠5は、第一枠51のヨーク63を第二枠52の非磁性体側になるべく近づけつつ、ヨーク63が被縫製物Cに当接し、被縫製物Cを傷つける可能性を抑制できる。磁石62は比較的衝撃に弱い。本例の刺繍枠5は磁石62が外装部64から外部に露出していないので、磁石62が外部の物体と接触して破損する可能性を抑制できる。
第二実施形態の刺繍枠5に特有の効果を説明する。第二実施形態の刺繍枠5の第二枠150は、移動部材151から154を、第二方向に付勢する付勢部材186から189を備える。第二実施形態の刺繍枠5は、付勢部材186から189を有するので、被縫製物Cの厚みに応じて本体部146に対する案内部147の位置を変更する作業が容易である。第二実施形態の案内部147は、第一実施形態の案内部57とは異なり、第一枠51の外縁74の内、平面視で正方形状の本体部71の角部に対応する部分がない。このため、該角部付近では、被縫製物Cは本体部146に沿って配置可能である。したがって、刺繍枠5は該角部付近で被縫製物Cがしわになる可能性を抑制できる。
本発明の刺繍枠は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。刺繍枠5、刺繍枠ユニット30、及びミシン1の構成は適宜変更してよい。ミシン1が備える針棒の数は1以上であればよい。ミシン1は1種類以上の刺繍枠を装着可能であればよい。刺繍枠5は、ミシン1のホルダ25に直接装着される構成であってもよい。刺繍枠5が枠取付部材31を介してミシン1に取り付けられる場合、枠取付部材31の構成は適宜変更されてよい。刺繍枠をミシンに装着する装着部は、第一枠及び第二枠の少なくとも何れかに連結されればよい。突出部は省略されてもよい。突出部の数、形状及び配置は適宜変更されてもよい。突出部は第二枠及び装着部の少なくとも何れかの下面に設けられてもよい。ミシンに対する刺繍枠の取付姿勢は適宜変更してよい。
刺繍枠5の大きさ、平面形状、及び厚み等は適宜変更されてもよい。第一枠と第二枠との各々は内縁が円状、楕円状等、多角形状以外の形状でもよい。第一枠と第二枠との各々の内縁が、多角形状である場合、三角形状、矩形状、及び五角形状等、正方形状以外の形状でもよい。例えば、図11に示す刺繍枠250のようであってもよい。
図11に示すように変形例の刺繍枠250は、第一枠251、第二枠252、及び第一実施形態と同様の装着部55を備える。第一枠251は本体部271と、一対の把持部272とを備える。本体部271は平面視円状の、正円状の、上下方向に貫通する孔261を有する枠状である。一対の把持部272は各々、本体部271の左右方向の両端に連結する。図11(A)に円状の仮想線内に示す図は、変形例の刺繍枠250の断面図を拡大した図であり、図4(B)の拡大図に対応する図である。図11(A)に円状の仮想線内に示す図のように、第一枠251の本体部271は、磁石262、ヨーク263、及び外装部264を備える。外装部264は第一部265と、第二部266とを備え、第一部265と、第二部266とで磁石262とヨーク263を保持する。磁石262、ヨーク263は、第一実施形態の第一枠51と同様に、第一枠251の内縁に沿った周方向に配置される。
第二枠252は、第一枠251と共に被縫製物Cを磁力で挟持可能であり、本体部256と、案内部257と、案内部材301から304を有する。本体部256は、正円状の、上下方向に貫通する孔281を有する枠状である。本体部256は、内縁283の周縁部に、第一枠251の磁石262と対向する位置が磁性体により構成された挟持面282を有する。本体部256は左右方向に外縁の周縁に一対の傾斜部286を有する。案内部257は、傾斜面290を有する4つの移動部材258から構成される。各移動部材258は、互いに同じ円弧状の形状を有し、両端に一対の長孔259を有する。一対の長孔259は、移動部材258の中心における第二及び第三方向に延びる。各移動部材258の他の移動部材との重なり部分は、移動部材258の他の部分よりも第一方向(上方)への突出量が小さい。移動部材258は、移動部材258の重なり部分以外の部分が他の部分よりも第一方向への突出量が小さく構成されていてもよい。案内部材301から304は、本体部256から第一方向に延びるピンであり、移動部材258の長孔259を挿通する。
被縫製物Cの厚みが比較的薄い場合、図11(A)に示すように、ユーザは、案内部材301から304を各々、長孔259の第三方向の端部側に配置し、各移動部材258を本体部256に対して固定する。被縫製物Cの厚みが比較的厚い場合、図11(B)に示すように、ユーザは案内部材301から304を各々、長孔259の第二方向の端部側に配置し、各移動部材258を本体部256に対して固定する。刺繍枠250では被縫製物Cの厚みが比較的厚い位置に対応させた場合に、案内部257の内縁が正円状になるように設計されている。
刺繍枠250は、複数の移動部材258が円弧状である為、被縫製物Cの厚みに応じて位置を調整すると、各移動部材258の位置によっては案内部257の第二方向の端部の形状が正円状にならない。故に、各移動部材258の少なくとも一部分は第一枠251の外縁に沿って変形可能な、例えば樹脂製の弾性材料で構成されているのが好ましい。例えば、弾性材料製の複数の移動部材の各々が、薄い被縫製物Cを保持した際に案内部の内縁の形状が正円状になるように設計された場合、少なくとも各移動部材の長孔よりも端部側を樹脂製の弾性材料で構成されることが好ましい。
第一枠51の構成は適宜変更されてよい。刺繍枠5の第一枠51が備える、磁石62、ヨーク63、外装部64、把持部72等の形状、大きさ、配置、及び個数構成は適宜変更されてもよい。磁石は一以上あればよい。ヨーク63は省略されてもよい。刺繍枠がヨーク63を備える場合、ヨーク63の下端部69は外装部64から外部に露出する必要はない。ヨーク63の下端部69は、外装部64の下端よりも下方に位置してもよい。ヨーク63の断面形状は逆U字状である必要はない。
第二枠52の構成は適宜変更されてよい。装着部55の構成は、ミシン1の構成に応じて変更されてよい。本体部56は、第一枠51の磁石62と対向する部位を磁性体で構成すればよく、本体部56全体を磁性体で構成しなくてもよい。例えば、本体部56は、挟持面82のみを磁性体で構成してもよいし、挟持面82の内、磁石62と対向する部位のみを磁性体で構成してもよい。磁性体は、ヨーク63の下端部69とは反対の極の磁石でもよい。案内部57は本体部56に対して移動不能でもよい。案内部は、丸枠形状等の一つの部材から構成されていてもよい。案内部57の一部が移動部材であってもよい。より具体的には案内部57が移動部材58、59を含む場合に、移動部材58のみが本体部56に対して移動可能で、移動部材59は移動不能であってもよい。一対の移動部材58、59の第二方向における断面形状は、下方が開放する鉤状でなくてもよい。案内部は、傾斜面を有した1つの部材から構成された枠形状のものであってもよい。
案内部57の形状等は適宜変更されてよい。第二枠の案内部の内縁は、第二枠の本体部の内縁の形状と相似関係になくてもよい。案内部の第二方向の端部によって表される形状が多角形状である場合、案内部の少なくとも一部の角部の第一方向の突出量は、案内部の他の部位よりも小さくなくてもよい。案内部の第二方向の端部と、本体部との間には隙間Dがなくてもよい。案内部の内縁全周ではなく、一部だけ、案内部の第二方向の端部と、本体部との間に隙間があってもよい。案内部下部の第二方向の端部全周が、第三方向に屈曲していてもよい。本体部は傾斜部を備える必要はない。ミシン1が刺繍枠5全体を、シリンダベッド10の前方に配置可能である場合、傾斜部は、本体部の後辺に設けられてもよい。案内部が移動部材を備える場合、移動部材は付勢部材によって第二方向に付勢されてもよいし、されなくてもよい。案内部が複数の移動部材を備える場合、一部の移動部材が付勢部材によって第二方向に付勢されてもよい。付勢部材は、板バネ、ゴム等コイルバネ以外の部材であってもよい。平面視L字状の移動部材58、59、及び平面視円弧状の移動部材258の少なくとも何れかが付勢部材によって第二方向に付勢されてもよい。