JP6787080B2 - 積層体 - Google Patents
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[I]ポリエステルを主成分とする層と非晶性樹脂を主成分とする層とを、直接または他の層を介して積層してなる積層体であって、下記(1)(2)の条件を満たす、積層体。
(1)25℃における貯蔵弾性率(E’(25))と、150℃における貯蔵弾性率(E’(150))の差の絶対値|E’(25)−E’(150)|が、1.0GPa以上2.5GPa以下。
(2)25℃から150℃における寸法変化率が、60ppm/℃以上120ppm/℃以下。
[II]150℃における貯蔵弾性率(E’(150))が、0.3GPa以上2.0GPa以下である、[I]に記載の積層体。
[III]150℃30分間の熱収縮率が、0.5%以下である[I]または[II]に記載の積層体。
[IV]ポリエステルを主成分とする層の厚みの和d1と、非晶性樹脂を主成分とする層の厚みの和d2の比率(d1/d2)が、0.5以上4.0以下である[I]から[III]のいずれかに記載の積層体。
[V]ポリエステルを主成分とする層の厚みの和d1が20μm以上120μm以下である[I]から[IV]のいずれかに記載の積層体。
[VI]面内での|E’(25)−E’(150)|の最大値と最小値の差が、0GPa以上0.5GPa以下である、[I]から[V]のいずれかに記載の積層体。
[VII]150℃で30分加熱し、25℃まで冷却したときのカール量が10mm以下である[I]から[VI]のいずれかに記載の積層体。
[VIII]非晶性樹脂がシクロオレフィンポリマー(COP)である、[I]から[VII]のいずれかに記載の積層体。
[IX]前記非晶性樹脂を主成分とする層が少なくとも一方の最表層となるように積層された積層体であって、該非晶性樹脂を主成分とする層の上にITO膜を形成する用途に用いられる、[I]から[VIII]のいずれかに記載の積層体。
本発明の積層体は、ポリエステルを主成分とする層と非晶性樹脂を主成分とする層とを、直接または他の層を介して積層してなる積層体である必要がある。該構成をとることによって、非晶性樹脂側に加工を施す場合、例えばITOを蒸着する工程で、可撓性の高いポリエステルを主成分とする層を保護層とし、非晶性樹脂が加工工程中に傷つくことを抑制することが出来る。なお、本発明において主成分とするとは、層を構成する樹脂全体に対して70重量%以上をしめることを表す。
(1)25℃における貯蔵弾性率(E’(25))と、150℃における貯蔵弾性率(E’(150))の差の絶対値|E’(25)−E’(150)|が、1.0GPa以上2.5GPa以下。
(2)25℃から150℃における寸法変化率が、60ppm/℃以上120ppm/℃以下。
貯蔵弾性率E’(25)と、E’(150)は、それぞれの温度(25℃、150℃)でのヤング率を反映する。一般的に、熱可塑性である非晶性樹脂とポリエステル樹脂は、温度を上げるに従って貯蔵弾性率は低下していき、軟らかくなる。|E’(25)−E’(150)|が1.0GPa未満の場合、温度が変化する環境下でも積層体が硬いままであることを表している。例えばITO蒸着後のキュア工程などで、積層体を搬送するときに、急な張力変化で積層体にかかるストレスを積層体が吸収しきれず、積層体が破断することがある。一方、|E’(25)−E’(150)|が2.5GPaを超える場合には、周囲の温度変化で積層体が温度分布を持つ際、例えば上述のキュア工程において、積層体の硬さにムラが生じ、積層体にかかる張力で積層体が変形を起こしやすくなる。|E’(25)−E’(150)|は、より好ましくは、1.3GPa以上2.2GPa以下であり、さらに好ましくは1.5GPa以上2.2GPa以下である。
ポリエステルを主成分とする層は、機械特性の観点から、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。ここでいうポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。本発明のポリエステルフィルムは、機械特性の観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートの共重合体からなることが好ましい。
(i)120℃≦Th1(℃)≦Th0(熱固定温度)(℃)
Th1(℃)がTh0(熱固定温度)(℃)を超える場合、製膜中に形成された分子鎖の構造が破壊される結果、平面性が悪化する場合がある。一方、Th1(℃)が120℃を下回る場合、寸法変化率を好ましい範囲とすることができない場合がある。
(3)数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)から算出される分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上4.0以下。
(4)ガラス転移温度(Tg)が150℃以上。
一般に、非晶性樹脂からなる熱可塑性樹脂は、分子量分布の小さい、単分散に近いポリマーほど強度と加工性のバランスに優れているとされている。しかしながら、非晶性樹脂からなるシートやフィルムを用い、高温下で加工する場合では、分子が単分散であるより、いろいろな分子量の分子が存在する方が、温度に対する応答性が一様では無いため、加工時の応力が集中せず、全体に分散され、加工時のハンドリング性が向上する。Mw/Mnは、好ましくは2.0以上3.0以下、より好ましくは2.2以上3.0以下、さらに好ましくは2.5以上3.0以下である。
A.樹脂の融点(TmA)(℃)
試料を、JIS K 7121(1999)に基づいた方法により、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置“ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション“SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
サンプルパンに試料を5mgずつ秤量し、試料を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷する。直ちに引き続いて、再度25℃から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って測定を行い、2ndRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。当該2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、吸熱ピークである結晶融解ピークにおけるピークトップの温度を求め、これを融点(℃)とする。2以上の結晶融解ピークが観測される場合は、最もピーク面積の大きいピークトップの温度を融点とする。
JIS K 7121(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
JIS C 2318(1997)に準じて、積層体の熱収縮率を測定する。積層体を幅10mm、長さ150mmの短冊状に切り出す。測長部分がおおよそ100mmになるようにフィルムに標線をつけて標線の長さを23℃の条件下にて測定し、L0とする。その後、所定の温度(150℃)に熱した熱風オーブン内に2gのおもりをつけて積層体を吊し、30分間放置する。積層体をオーブンから取りだして23℃まで冷却した後、標線の長さを測定し、L1とする。下記(ii)式によりフィルムの収縮率を求める。サンプルは、ある一方向と、その方向に対して30°ずつ角度を変えながら90°の方向まで短冊状に切り出し、測定に供する。それらの平均値を、熱収縮率とする。
(ii)(積層体の熱収縮率)=(L0−L1)/L0×100
D.積層体の厚み(μm)
フィルム厚みは、ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992年)A−2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚さを測定した。その平均値を10で除してフィルム厚みとした。
積層体の断面を、フィルム幅方向に平行な方向にミクロトームで切り出す。該断面を走査型電子顕微鏡で5000倍の倍率で観察し、積層各層の厚み比率を求める。求めた積層比率と上記したフィルム厚みから、各層の厚みを算出する。
炉内の温度が150℃となるように調整した遠赤外炉の中に、積層体の炉内在時間が30分となるように、積層体に0.5N/cmの張力をかけながら巻出しロールから連続的に積層体を供給し、巻き取るロールによって巻き取る。積層体500mを巻き取った際に破断した回数が5回以上のものをB、5回未満のものをAとする。
JIS K7197(1991)に準じて、熱機械測定装置TMA/SS6000(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、試料幅4mmとして、試料長さ(チャック間距離)20mmのサンプルに対し、荷重3gを負荷する。25℃から160℃まで昇温速度10℃/分で昇温させ、10分間保持し、その後、20℃まで10℃/分で降温させ、各温度(℃)における試料の寸法の値を得る。150℃における試料の寸法L(150℃)(mm)と、25℃における試料の寸法L(25℃)(mm)から、下記(iii)式から算出する。なお、寸法変化率は、フィルム幅方向(TD)およびそれに直交する方向(MD)それぞれについて、n=5で実施し、その平均値として算出する。
(iii)25℃から150℃までの寸法変化率(ppm/℃)=106×(L(150℃)−L(25℃))/{20×(150−25)}
H.貯蔵弾性率E’(GPa)
JIS−K7244(1999)に従って、セイコーインスツルメンツ社製の動的粘弾性測定装置”DMS6100”を用いて測定する。引張モード、駆動周波数は1Hz、チャック間距離は5mm、昇温速度は5℃/minの測定条件にて、10mm幅の短冊状に切り出したサンプルを測定する。25℃における値をE’(25)、150℃における値をE’(150)とする。サンプルは、ある一方向と、その方向に対して30°ずつ角度を変えながら90°の方向まで短冊状に切り出し、測定に供する。各方向のE’(25)、E’(150)の測定値から、各方向の|E’(25)−E’(150)|を求め、それらの平均値でもって|E’(25)−E’(150)|の値とする。また、各方向の|E’(25)−E’(150)|の最大値と最小値から、面内での|E’(25)−E’(150)|の最大値と最小値の差を求める。また、各方向でのE’(150)の平均値を、E’(150)とする。
積層体を、10cm×10cmの大きさに切り出して150℃のオーブン内に入れ、1時間静置した。その後、オーブンの温度を20℃/分の速度で25℃まで冷却し、1時間放置した。その後、積層体を水平な面の上に、ポリエステルを主成分とする層が下側となるように置き、積層体の4隅の水平な面からの浮きの量を測定し、平均値を求め、カール量(mm)とする。上述の方法で水平な面から積層体の4隅が浮かない場合、カール量は0mmとする。
積層体を、10cm×10cmの大きさに切り出して150℃のオーブン内に入れ、1時間静置した。その後、オーブンから積層体を取り出し、ポリエステルを主成分とする層が下側となるように置き、積層体の4隅の水平な面からの浮きの量を測定し、平均値を求め、カール量(mm)を求める。カール量が10mmを超える場合、形状変化をB、10mm以下であれば形状変化をAとする。上述の方法で水平な面から積層体の4隅が浮かない場合、カール量は0mmとする。
シクロヘキサンを溶剤に用いた高速液体クロマトグラフィー(ポリイソプレン換算)より、非晶性樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を求め、その比から分子量分布(Mw/Mn)を求める。
[PET−1の製造]テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、溶融重合PETを得た。得られた溶融重合PETのガラス転移温度は80℃、融点は255℃、固有粘度は0.62であった。
[PET−Aの製造]テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、イソフタル酸共重合量がジガルボン酸成分全量に対して15mol%となるように常法により重合を行い、共重合PETを得た。得られた共重合PETのガラス転移温度は77℃、融点は243℃、固有粘度は0.62であった。
ポリエステルを主成分とする層として、以下の通り二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。A/B/Aの3層構成とし、表層を構成する樹脂として、PET−1を100質量部とし、160℃で2時間真空乾燥した後押出機1に投入した。また、内層を構成する樹脂としてPET−A70質量部、PET−1 30質量部を160℃で2時間真空乾燥した後、押出機2に投入した。押出機内でそれぞれの原料を溶融させ、合流装置で押出機1に投入した樹脂がフィルムの両表層となるように合流させ、表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、3層構造をもつ積層シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(MD方向)に3.2倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで220℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムをフィルム巻きだしロールとフィルム巻き取りロールの間に設置された熱風オーブンにて、170℃の温度にて、フィルムが熱処理される時間が5分となるようにアニール処理を施し、積層ポリエステルフィルムを得た。フィルムの各特性を表に示す。
参考例2では、熱固定温度を235℃とし、参考例3では使用する原料の組成を表の通りとし、熱固定温度を225℃とし、参考例4では使用する原料の組成を表の通りとし、熱固定温度を240℃とした以外は参考例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。参考例5では、両方の押出機にPET−1を用いる以外は参考例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。参考例6では、参考例1において、アニール処理を施す工程を経ないフィルムとした。参考例7では、横延伸倍率を4.2倍とした以外は、参考例3と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。フィルムの各特性を表に示す。
参考例8として、日本ゼオン社製の50μmのポリシクロオレフィンフィルム(“ゼオノア”(登録商標)ZF16)、参考例9として日本ゼオン社製の25μmのポリシクロオレフィンフィルム(“ゼオノア”(登録商標)ZF16)、参考例10として日本ゼオン社製の50μmのポリシクロオレフィンフィルム(“ゼオノア”(登録商標)ZF14)を用いた。参考例11として、三菱ガス化学社製の100μmのポリカーボネート/ABSアロイフィルム(“ユーピロン”(登録商標))を用いた。各特性を表に示す。
ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレートを共重合した、固形分40%のアクリル系ポリマー100重量部に対して、HDI系硬化剤(日本ポリウレタン工業社製、品名:コロネートHX)2.4重量部を添加、混合した粘着剤組成物を得た。このようにして得たアクリル系粘着剤を参考例1のフィルム面上に塗布し、120℃で60秒加熱して、厚み10μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層を介して、参考例8の非晶性樹脂を主成分とするからなる層に貼り合わせた。各特性を表に示す。|E’(25)−E’(150)|、25℃から150℃における寸法変化率が好ましい範囲にあり、カール量、搬送時の破損が抑制される積層体が得られた。
積層体の構成を表の通りに変えた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。各特性を表に示す。|E’(25)−E’(150)|、25℃から150℃における寸法変化率が好ましい範囲にあり、カール量、搬送時の破損が抑制される積層体が得られた。
積層体の構成を表の通りにした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。各特性を表に示す。比較例1では、|E’(25)−E’(150)|が小さいフィルム同士を貼り合わせたため、|E’(25)−E’(150)|が小さく、搬送時の破損が頻発した。比較例2では、|E’(25)−E’(150)|と寸法変化率がともに非常に大きいフィルムを貼り合わせたため|E’(25)−E’(150)|、寸法変化率が大きく、搬送時の破損が頻発し、また150℃における形状変化も大きいものであった。比較例3では、寸法変化率が小さいフィルムを貼り合わせたために寸法変化率が小さく、カール量評価において積層が筒状に丸まり、評価できなかった。
Claims (9)
- ポリエステルを主成分とする層と非晶性樹脂を主成分とする層とを、直接または他の層を介して積層してなる積層体であって、下記(1)(2)の条件を満たす、積層体。
(1)25℃における貯蔵弾性率(E’(25))と、150℃における貯蔵弾性率(E’(150))の差の絶対値|E’(25)−E’(150)|が、1.0GPa以上2.5GPa以下。
(2)25℃から150℃における寸法変化率が、60ppm/℃以上120ppm/℃以下。 - 150℃における貯蔵弾性率(E’(150))が、0.3GPa以上2.0GPa以下である、請求項1に記載の積層体。
- 150℃30分間の熱収縮率が、0.5%以下である請求項1または2に記載の積層体。
- ポリエステルを主成分とする層の厚みの和d1と、非晶性樹脂を主成分とする層の厚みの和d2の比率(d1/d2)が、0.5以上4.0以下である請求項1から3のいずれかに記載の積層体。
- ポリエステルを主成分とする層の厚みの和d1が20μm以上120μm以下である請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
- 面内での|E’(25)−E’(150)|の最大値と最小値の差が、0GPa以上0.5GPa以下である、請求項1から5のいずれかに記載の積層体。
- 150℃で30分加熱し、25℃まで冷却したときのカール量が10mm以下である請求項1から6のいずれかに記載の積層体。
- 非晶性樹脂がシクロオレフィンポリマー(COP)である、請求項1から7のいずれかに記載の積層体。
- 前記非晶性樹脂を主成分とする層が少なくとも一方の最表層となるように積層された積層体であって、該非晶性樹脂を主成分とする層の上にITO膜を形成する用途に用いられる、請求項1から8のいずれかに記載の積層体。
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