JP2004042342A - 積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラスの保護用途、特に建材用窓ガラスやフラットディスプレイ等の表示用ガラスの保護に好適なフィルムを提供すること。
【解決手段】少なくとも厚み方向に5層以上積層された積層フィルムであって、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上であることを特徴とする積層フィルム。
【選択図】なし
【解決手段】少なくとも厚み方向に5層以上積層された積層フィルムであって、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上であることを特徴とする積層フィルム。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス保護フィルムに関するものである。更に詳しくは、建材や自動車用の窓ガラス、あるいはCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の表示ガラスの保護に好適なガラス保護フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラスは優れた光線透過性、ガスバリア性、寸法特性等から、さまざまな用途に使用されている。たとえば、建材用途では窓ガラスとしてさまざまな使用のされ方がなされているが、最近の外観を重視した建築物では視認性を高めるためにガラスの固定部分が減少したため、破壊時のガラスの飛散防止機能がより一層もとめられるようになってきている。
【0003】
また、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等に代表されるフラットディスプレイの分野では、より高性能なガラスが提供されている。しかしながら、これらの用途では、フラットディスプレイに対する薄肉化の要求から、表示用ガラス自体についても薄肉化する傾向にあり、それに伴い使用時において破損しやすいといった問題がある。
【0004】
このようなガラス破損やさらに破損によって起こるガラス飛散の問題に対し、ガラスに熱可塑性樹脂からなるフィルムを貼りつけることにより防止する方法が種々提案されている。例えば、特開平6−190995号公報には剛性なポリエステル層と延性なポリエステル層とを多層に積層したフィルムをガラス表面に貼りつけることにより、ガラスの破損および飛散を大幅に防止できることが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平6−190995号公報の方法では、ガラスの破損や飛散を防止することに効果はあるものの、窓ガラスやフラットディスプレイに貼り付ける際の施工性に問題があり、外観よく貼り付けることが困難であった。また、多層積層フィルムを構成する延性なポリエステル層のガラス転移温度が低いために、しだいに結晶化が生じ白化することとなり、可視光線透過率が低下する現象が生じていた。従って、外観に対する要求の高いガラス保護フィルムの用途、たとえば高級建築物の窓ガラスやフラットディスプレイ用ガラス保護フィルムとしては使用できなかった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決し、ガラス保護用途、特に窓ガラスやフラットディスプレイ等の表示用ガラスの保護フィルム等として好適に用いられ得るフィルムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は下記の(1)記載の構成をとり、更に好ましい態様として、(2)から(8)記載の構成をとるものである。
すなわち、
(1)少なくとも厚み方向に5層以上積層された積層フィルムであって、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上であることを特徴とする積層フィルム。
【0008】
(2)25℃におけるフィルム長手方向と幅方向のヤング率の合計値が6GPa以下であることを特徴とする上記(1)に記載の積層フィルム。
【0009】
(3)フィルム長手方向および/または幅方向の引裂強度が50N/mm以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の積層フィルム。
【0010】
(4)全光線透過率が88%以上であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0011】
(5)ヘイズが0.1%以上3%以下であることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0012】
(6)25℃におけるフィルム長手方向および幅方向の破断伸度が200%以上であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0013】
(7)平面表示素子用のガラス保護フィルムであることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0014】
(8)窓ガラス用のガラス保護フィルムであることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明の積層フィルムは、少なくとも厚み方向に5層以上積層されたフィルムであって、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上であるものである。このような特性を満たすフィルムはガラス保護フィルムとした際に優れた飛散防止性能を発揮するとともに、ガラスに貼り付ける際の施工性も向上することから、非常に外観にも優れたたガラス保護フィルムとなる。
【0017】
ここで、厚み方向に5層以上積層されたフィルムとは、異なる2種以上の熱可塑性樹脂から構成される構造体のことをさし、これらの熱可塑性樹脂が連続した層状構造としてフィルム表面にほぼ平行に5層以上存在している状態と定義されるものである。従って、全層が同一の熱可塑性樹脂から構成される構造体のものは本発明のものに該当しないものである。
【0018】
ここで積層数としては、より好ましくは8層以上であり、さらに好ましくは16層以上である。上限は特に限定されるものではないが、透明性や生産性の観点から、100層以下であることが好ましい。このような多層積層構造を有することにより、厚み方向への衝撃の伝播が妨げられ、特に大きなガラス破損防止効果を得ることができるのである。
【0019】
更にまた、本発明の積層フィルムではフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上でなければならない。該値は、より好ましくは215%以上であり、さらに好ましくは230%以上である。
【0020】
また、特に好ましくはフィルム長手方向および幅方向の破断伸度が双方とも200%以上のものである。
【0021】
上述のように破断伸度の平均値が200%以上の場合には、施工性に優れるようになり、外観よくガラスに容易に貼り付けられるようになるばかりか、複雑な形状のガラスにも貼り付けることが可能となる。
【0022】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、フィルム形成できるものであればよく、特に限定されないが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。
【0023】
これらの樹脂はホモ樹脂であってもよく、あるいは共重合またはブレンドであってもよい。また、これらの樹脂の中に、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤などが添加されていてもよい。
【0024】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂の少なくとも1種は、好ましくはポリエステル樹脂であり、中でも、ポリエチレン−2,6−ナフタレートやポリエチレンテレフタレートが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0025】
また、本発明で用いられる他の熱可塑性樹脂の少なくとも1種は、共重合ポリエステルであることが好ましい。さらに好ましくは、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン、および/あるいはシクロヘキサンジメタノールを共重合されてなるポリエステルである。このようなポリエステルとしては、少なくともジオール成分としてのビスフェノールAエチレンオキサイド付加物および/あるいはシクロヘキサンジメタノール、その他のジオールとして、たとえばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどから選ばれるジオール成分と、たとえばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などから選ばれるジカルボン酸成分との任意の組み合わせにより重縮合されて得られる。
【0026】
これらの共重合量としては、特に限定されるものではないが、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン、もしくはシクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上であることが好ましい。より好ましくは25mol%以上であり、さらに好ましくは30mol%以上である。
【0027】
本発明の積層フィルムでは、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向のヤング率の合計値が6GPa以下であることが好ましい。より好ましくは、5.6GPa以下であり、さらに好ましくは5GPa以下である。このように25℃におけるフィルム長手方向と幅方向のヤング率の合計値が6GPa以下である場合には、さらにガラスに貼り付ける際の施工性が向上し、容易に外観よくガラスにフィルムを貼り付けることが可能となる。
【0028】
また、本発明の積層フィルムの長手方向および/もしくは幅方向の引裂強度が50N/mm以上であると好ましい。より好ましくは、75N/mm以上であり、さらに好ましくは100N/mm以上である。このように積層フィルムの長手方向および/もしくは幅方向の引裂強度が50N/mm以上である場合には、フィルムが容易に引き裂くことができなくなるため、ガラス保護フィルムとして優れた飛散防止機能を発現する好ましい。
【0029】
本発明の積層フィルムにおいては、全光線透過率が88%以上であることが好ましい。より好ましくは、89%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。このように高い光線透過率は、ガラスに貼り付けた際にも、ガラス本来の透明性を損なわないため好ましい。
【0030】
また、本発明の積層フィルムにおいてはヘイズが0.1%以上3%以下であることが好ましい。より好ましくは、2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。このように低いヘイズは、ガラス同等の透明性を有するため、ガラスに貼り付けた際にも、ガラス本来の透明性を損なわないため好ましい。
【0031】
本発明の積層フィルムは、好ましくは窓ガラス用もしくは平面表示素子用のガラス保護フィルムとして用いられる。窓ガラスとしては、一般建築用の窓ガラスや、自動車用窓ガラスなどが挙げられる。
【0032】
また、平面表示用素子とは、たとえばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等であり、とくにCRTディスプレイやプラズマディスプレイのガラス保護フィルムとして好適に用いられる。
【0033】
また、本発明の積層フィルムには、その表面あるいは内部に易接着層、易滑層、反射防止層、帯電防止層、粘着層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、光線透過率制御層、ハードコート層などが設けられていてもよい。
【0034】
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。
【0035】
熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、事前乾燥を熱風中あるいは真空下で行い、押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルタ等を介して異物や変性した樹脂をろ過される。さらに、樹脂は、ダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。
【0036】
積層フィルムを得るための方法としては、例えば、2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された熱可塑性樹脂をフィールドブロックやスタティックミキサー、マルチマニホールドダイ等を用いて多層に積層する方法等を使用することができる。特に、本発明ではフィールドブロックおよびスタティックミキサーを用いて多層に積層することが好ましい。
【0037】
ダイから吐出された積層シートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ、急冷固化させるのが好ましい。
【0038】
このようにして得られたキャスティングフィルムは、必要に応じて二軸延伸しても構わない。二軸延伸とは、縦方向および横方向に延伸することをいう。延伸は、逐次二軸延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに縦および/または横方向に再延伸を行ってもよい。
【0039】
ここで、縦方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行ってもよい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。ここで、さらに本発明の積層フィルムを得るためには、縦延伸温度が80〜140℃で、縦延伸倍率が2〜3倍であることが特に好ましいものである。
【0040】
また、こうして得られたフィルムの表面に、グラビアコーターやメタリングバー等のコーティング技術を用いて、コーティングを施すことにより、易接着層や易滑層、高光線透過率を付与しても構わない。
【0041】
また、横方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸を言い、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては、樹脂の種類により異なるが、通常2〜10倍が好ましく用いられる。特に、本発明の積層フィルムを得るためには、横延伸温度が80〜150℃の範囲にて、横方向に2〜3倍延伸することが特に好ましい。
【0042】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましく、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。本発明のフィルムにおいては、熱処理温度が120℃〜200℃である方が、高い引裂強度を得ることができるが、その場合、高温下での熱収縮など耐熱性の点で問題となることがあり、好ましくは200℃以上であると良い。
【0043】
特に、本発明の25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上であるフィルムを得るためには、縦延伸温度が80〜140℃で、2.8〜4倍ほど延伸した後、続いて横延伸温度が80〜150℃の範囲にて、3〜5倍程度延伸し、130℃〜240℃の範囲で熱処理した後、150〜230℃の温度範囲にて長手方向および幅方向にリラックスすることが特に好ましい。あるいはまた、熱処理後、いったんフィルムを巻き取った後、別工程にて上述のリラックスを施してもよい。この際のリラックス率としては、3%以上20%以下であることが好ましい。すなわち、特に、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値を200%以上とするには、延伸前の微細な構造制御を行うことが有効であってこれを実現するために、低倍率延伸、慨して2〜3倍の低倍率延伸を行うことが重要であり、あるいは、熱結晶化による架橋点増加を行うことが有効であってこれを実現するためには、熱処理後、高温でのリラックス処理または高リラックス率でのリラックス処理を行うことが重要である。また、あるいは上述した低倍率延伸と上述したリラックス処理の双方を行なうことも重要な実現手段である。
【0044】
また、更に25℃におけるフィルム長手方向と幅方向のヤング率の合計値を6GPa以下とするには、低倍率延伸および/あるいは高温・高倍リラックスとすることが重要である。
【0045】
また、更にフィルム長手方向および/または幅方向の引裂強度が50N/mm以上とするには、少なくとも5層以上の積層フィルムとし、ポリエステルを主成分とする層とコポリエステルを主成分とする層から形成されるようにすることが重要である。さらに好ましくは、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする層と、シクロヘキサンジメタノール基もしくは/および2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基を有するコポリエステルを主成分とする層からなるようにするとよい。
【0046】
また、更に積層フィルムの全光線透過率を88%以上とするには、低屈折率の層を表層に設けることにより、表層の反射を抑制することが重要である。低屈折率の層としては、特に限定されるものではないが、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系などのいずれでもよい。
【0047】
また、更に積層フィルムのヘイズを0.1%以上3%以下とするには、特に限定されるものではないが、例えば、易滑性付与のための平均粒径が0.01μm以上10μm以下の粒子を極表面に規則正しく配列させることが好ましい。粒子を規則正しく配列させる方法としては、押出積層やコーティングなどがあげられる。
【0048】
また、更に積層フィルムの25℃におけるフィルム長手方向および幅方向の破断伸度が200%以上とするには、特に限定されるものではないが、例えば、縦方向の延伸倍率および横方向の延伸倍率を2〜3倍程度の低倍率にすることが重要である。
【0049】
このようにして得られる本発明の積層フィルムは、施工性がよく、かつガラスに貼り付けた際に高いガラス破損防止・飛散防止機能を発現し、さらに高い透明性とを併せ持つフィルムであり、特に高級建材用窓ガラスやフラットディスプレイ用のガラス保護フィルムに好適なものである。
【0050】
【実施例】
本発明の説明に使用した物性値の評価法について、以下に説明する。
(1)破断伸度およびヤング率:
テンシロン(オリエンテック製AMF/RTA−100)を用いて、幅10mmのサンプルフィルムをチャック間長さ100mmとなるようにセットし、25℃、65%RHの条件下で引張速度300mm/分で引張試験を行い、ヤング率と破断伸度を求めた。ヤング率はフィルム長手方向(MD)とフィルム幅方向(TD)の合計値で表した。また、破断伸度は(破断したときの伸張長さ/元の試料長)×100とした。ここでこれらの値は10回測定した際の、それらの平均値を採用している。
(2)引裂強度:
重荷重引裂試験機(東洋精機製)を用いて測定した。サンプルサイズは幅70mm、長さ60mmで、幅方向中央部に端から20mmの切れ込みを入れ、残り50mmを引き裂いたときの指示値を読みとった。引裂強度としては、指示値より求めた引裂力(N)をフィルム厚み(mm)で除した値とした。なお、測定は10本のサンプルを用いて行い、その平均値を採用した。なお、本試験にて引き裂けない場合は、引裂不可能(NB)とした。この場合、実質的には引裂強度は200N/mm以上と判断できるものである。
(3)全光線透過率およびヘイズ:
全光線透過率およびヘイズの測定は、常態(23℃、相対湿度65%)において、フィルムを2時間放置した後、スガ試験機(株)製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて行った。3回測定した平均値を該サンプルの平均値とした。
(4)耐衝撃性試験:
JIS R3205に準じて測定した。但し、重量1Kgの鉄球を使用し、落下高さは4m、ガラスには厚さ5mmのフロートガラスを用いた。また、ガラスとフィルムとのはり合わせにはアクリル系架橋タイプの粘着剤を使用し、粘着層の厚さは10μmとした。鉄球が貫通し、ガラスが飛散しなかった場合を優れているという意味で「○」、鉄球が貫通しガラスが飛散した場合を不十分という意味で「×」とした。
(5)施工性:
曲面半径1000mmのガラス(縦300mm×横300mm)に、アクリル系架橋タイプの粘着剤にて貼り合わせした際の外観を目視にて判定した。全面にわたって、しわや弛みなどがなく外観よく貼られた場合には優れているという意味で「○」、しわや弛みがあり外観が良くない場合には不十分という意味で「×」とした。
(6)ガラス転移温度:
示差走査熱量計として、セイコー電子工業(株)製DSC RDC220、データ解析装置として同社製ディスクステーション SSC/5200を用いて測定した。測定条件としては、アルミパンにサンプル約5mgを封入し、300℃で5分間保持、液体窒素で急冷した後、昇温速度20℃/分で測定した。
(7)固有粘度:
ポリエステルをo−クロロフェノールに溶解し、25℃において測定した。
実施例1
熱可塑性樹脂Aとして、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度76℃)を用いた。また熱可塑性樹脂Bとして固有粘度0.8のビスフェノールAエチレンオキサイド付加物30mol%共重合ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度74℃)を用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれ乾燥した後、押出機に供給した。
【0051】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、フィードブロックにて合流させた。合流した熱可塑性樹脂AおよびBは、スタティックミキサーに供給し、熱可塑性樹脂Aが17層、熱可塑性樹脂Bが16層からなる厚み方向に交互に積層された構造とした。ここで、積層厚み比がA/B=6になるよう、吐出量にて調整した。このようにして得られた計33層からなる積層体をTダイに供給しシート状に成形した後、静電印加しながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
【0052】
得られたキャストフィルムは、90℃に設定したロール群で加熱し、縦方向に2.7倍延伸した。この縦方向に一軸延伸したフィルムの両面には、空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面にポリエステル/メラミン架橋剤/平均粒径140nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。さらにこのフィルムをテンターに導き、105℃の熱風で予熱後、横方向に2.7倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で150℃の熱風にて熱処理を行い、室温まで徐冷後、巻き取った。
【0053】
得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を、表1に示した。
実施例2
実施例1と同様の装置・条件で、計33層からなる積層フィルムを得た。ただし、熱可塑性樹脂Bとして固有粘度0.85のシクロヘキサンジメタノール33mol%共重合ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度79℃)を用いた。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果は表1を示す。
実施例3
実施例2と同様の装置・条件で、計33層からなる積層フィルムを得た。但し、熱処理を230℃の温度にて施した。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1を示した。
実施例4
実施例2と同様の装置・条件で、計33層からなる積層フィルムを得た。但し、縦延伸倍率を3.2倍とし、横延伸倍率を3.4倍とし、150℃の熱処理の後、つづいて150℃にて長手方向および幅方向に8%リラックスを施した。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1を示した。
実施例5
実施例2と同様の装置・条件で、計33層からなる積層フィルムを得た。但し、縦延伸倍率を3.2倍とし、横延伸倍率を3.4倍とし、230℃の熱処理の後、つづいて180℃にて長手方向および幅方向に8%リラックスを施した。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1を示した。
比較例1
実施例1と同様の装置・条件で、次の単膜フィルムを得た。すなわち、押出機は1台のみを使用し、フィールドブロックおよびスタティックミキサーは用いず、熱可塑性樹脂としては、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度76℃)を用いて、単層シートとした。得られたこの単層のキャストフィルムは、90℃に設定したロール群で加熱し、縦方向に2.7倍延伸した。この縦方向に一軸延伸したフィルムの両面には、空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面にポリエステル/メラミン架橋剤/平均粒径140nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。さらにこのフィルムをテンターに導き、105℃の熱風で予熱後、横方向に2.7倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で150℃の熱風にて熱処理を行い、室温まで徐冷後、巻き取った。
【0054】
得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を、表1に示した。
比較例2
実施例2と同様の装置・条件で、積層フィルムを得た。但し、縦延伸倍率を3.2倍とし、横延伸倍率を3.4倍とした。得られた結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
本発明により、ガラスの破損および飛散防止を目的とした耐衝撃性と、ガラスに貼りつけた際の視認性を両立したガラス保護フィルムを提供することができ、さらに貼りあわせ時の施工性も大幅に向上する。本発明により得られる積層フィルムは、特に、建材用窓ガラスやフラットディスプレイ等の表示用ガラスの保護フィルムとして好適なフィルムを提供できたものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス保護フィルムに関するものである。更に詳しくは、建材や自動車用の窓ガラス、あるいはCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の表示ガラスの保護に好適なガラス保護フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガラスは優れた光線透過性、ガスバリア性、寸法特性等から、さまざまな用途に使用されている。たとえば、建材用途では窓ガラスとしてさまざまな使用のされ方がなされているが、最近の外観を重視した建築物では視認性を高めるためにガラスの固定部分が減少したため、破壊時のガラスの飛散防止機能がより一層もとめられるようになってきている。
【0003】
また、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等に代表されるフラットディスプレイの分野では、より高性能なガラスが提供されている。しかしながら、これらの用途では、フラットディスプレイに対する薄肉化の要求から、表示用ガラス自体についても薄肉化する傾向にあり、それに伴い使用時において破損しやすいといった問題がある。
【0004】
このようなガラス破損やさらに破損によって起こるガラス飛散の問題に対し、ガラスに熱可塑性樹脂からなるフィルムを貼りつけることにより防止する方法が種々提案されている。例えば、特開平6−190995号公報には剛性なポリエステル層と延性なポリエステル層とを多層に積層したフィルムをガラス表面に貼りつけることにより、ガラスの破損および飛散を大幅に防止できることが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平6−190995号公報の方法では、ガラスの破損や飛散を防止することに効果はあるものの、窓ガラスやフラットディスプレイに貼り付ける際の施工性に問題があり、外観よく貼り付けることが困難であった。また、多層積層フィルムを構成する延性なポリエステル層のガラス転移温度が低いために、しだいに結晶化が生じ白化することとなり、可視光線透過率が低下する現象が生じていた。従って、外観に対する要求の高いガラス保護フィルムの用途、たとえば高級建築物の窓ガラスやフラットディスプレイ用ガラス保護フィルムとしては使用できなかった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決し、ガラス保護用途、特に窓ガラスやフラットディスプレイ等の表示用ガラスの保護フィルム等として好適に用いられ得るフィルムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は下記の(1)記載の構成をとり、更に好ましい態様として、(2)から(8)記載の構成をとるものである。
すなわち、
(1)少なくとも厚み方向に5層以上積層された積層フィルムであって、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上であることを特徴とする積層フィルム。
【0008】
(2)25℃におけるフィルム長手方向と幅方向のヤング率の合計値が6GPa以下であることを特徴とする上記(1)に記載の積層フィルム。
【0009】
(3)フィルム長手方向および/または幅方向の引裂強度が50N/mm以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の積層フィルム。
【0010】
(4)全光線透過率が88%以上であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0011】
(5)ヘイズが0.1%以上3%以下であることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0012】
(6)25℃におけるフィルム長手方向および幅方向の破断伸度が200%以上であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0013】
(7)平面表示素子用のガラス保護フィルムであることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載の積層フィルム。
【0014】
(8)窓ガラス用のガラス保護フィルムであることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明の積層フィルムは、少なくとも厚み方向に5層以上積層されたフィルムであって、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上であるものである。このような特性を満たすフィルムはガラス保護フィルムとした際に優れた飛散防止性能を発揮するとともに、ガラスに貼り付ける際の施工性も向上することから、非常に外観にも優れたたガラス保護フィルムとなる。
【0017】
ここで、厚み方向に5層以上積層されたフィルムとは、異なる2種以上の熱可塑性樹脂から構成される構造体のことをさし、これらの熱可塑性樹脂が連続した層状構造としてフィルム表面にほぼ平行に5層以上存在している状態と定義されるものである。従って、全層が同一の熱可塑性樹脂から構成される構造体のものは本発明のものに該当しないものである。
【0018】
ここで積層数としては、より好ましくは8層以上であり、さらに好ましくは16層以上である。上限は特に限定されるものではないが、透明性や生産性の観点から、100層以下であることが好ましい。このような多層積層構造を有することにより、厚み方向への衝撃の伝播が妨げられ、特に大きなガラス破損防止効果を得ることができるのである。
【0019】
更にまた、本発明の積層フィルムではフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上でなければならない。該値は、より好ましくは215%以上であり、さらに好ましくは230%以上である。
【0020】
また、特に好ましくはフィルム長手方向および幅方向の破断伸度が双方とも200%以上のものである。
【0021】
上述のように破断伸度の平均値が200%以上の場合には、施工性に優れるようになり、外観よくガラスに容易に貼り付けられるようになるばかりか、複雑な形状のガラスにも貼り付けることが可能となる。
【0022】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、フィルム形成できるものであればよく、特に限定されないが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。
【0023】
これらの樹脂はホモ樹脂であってもよく、あるいは共重合またはブレンドであってもよい。また、これらの樹脂の中に、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤などが添加されていてもよい。
【0024】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂の少なくとも1種は、好ましくはポリエステル樹脂であり、中でも、ポリエチレン−2,6−ナフタレートやポリエチレンテレフタレートが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0025】
また、本発明で用いられる他の熱可塑性樹脂の少なくとも1種は、共重合ポリエステルであることが好ましい。さらに好ましくは、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン、および/あるいはシクロヘキサンジメタノールを共重合されてなるポリエステルである。このようなポリエステルとしては、少なくともジオール成分としてのビスフェノールAエチレンオキサイド付加物および/あるいはシクロヘキサンジメタノール、その他のジオールとして、たとえばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどから選ばれるジオール成分と、たとえばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などから選ばれるジカルボン酸成分との任意の組み合わせにより重縮合されて得られる。
【0026】
これらの共重合量としては、特に限定されるものではないが、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン、もしくはシクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上であることが好ましい。より好ましくは25mol%以上であり、さらに好ましくは30mol%以上である。
【0027】
本発明の積層フィルムでは、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向のヤング率の合計値が6GPa以下であることが好ましい。より好ましくは、5.6GPa以下であり、さらに好ましくは5GPa以下である。このように25℃におけるフィルム長手方向と幅方向のヤング率の合計値が6GPa以下である場合には、さらにガラスに貼り付ける際の施工性が向上し、容易に外観よくガラスにフィルムを貼り付けることが可能となる。
【0028】
また、本発明の積層フィルムの長手方向および/もしくは幅方向の引裂強度が50N/mm以上であると好ましい。より好ましくは、75N/mm以上であり、さらに好ましくは100N/mm以上である。このように積層フィルムの長手方向および/もしくは幅方向の引裂強度が50N/mm以上である場合には、フィルムが容易に引き裂くことができなくなるため、ガラス保護フィルムとして優れた飛散防止機能を発現する好ましい。
【0029】
本発明の積層フィルムにおいては、全光線透過率が88%以上であることが好ましい。より好ましくは、89%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。このように高い光線透過率は、ガラスに貼り付けた際にも、ガラス本来の透明性を損なわないため好ましい。
【0030】
また、本発明の積層フィルムにおいてはヘイズが0.1%以上3%以下であることが好ましい。より好ましくは、2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。このように低いヘイズは、ガラス同等の透明性を有するため、ガラスに貼り付けた際にも、ガラス本来の透明性を損なわないため好ましい。
【0031】
本発明の積層フィルムは、好ましくは窓ガラス用もしくは平面表示素子用のガラス保護フィルムとして用いられる。窓ガラスとしては、一般建築用の窓ガラスや、自動車用窓ガラスなどが挙げられる。
【0032】
また、平面表示用素子とは、たとえばCRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等であり、とくにCRTディスプレイやプラズマディスプレイのガラス保護フィルムとして好適に用いられる。
【0033】
また、本発明の積層フィルムには、その表面あるいは内部に易接着層、易滑層、反射防止層、帯電防止層、粘着層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、光線透過率制御層、ハードコート層などが設けられていてもよい。
【0034】
次に、本発明の積層フィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。
【0035】
熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。ペレットは、必要に応じて、事前乾燥を熱風中あるいは真空下で行い、押出機に供給される。押出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、ギヤポンプ等で樹脂の押出量を均一化され、フィルタ等を介して異物や変性した樹脂をろ過される。さらに、樹脂は、ダイにて目的の形状に成形された後、吐出される。
【0036】
積層フィルムを得るための方法としては、例えば、2台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された熱可塑性樹脂をフィールドブロックやスタティックミキサー、マルチマニホールドダイ等を用いて多層に積層する方法等を使用することができる。特に、本発明ではフィールドブロックおよびスタティックミキサーを用いて多層に積層することが好ましい。
【0037】
ダイから吐出された積層シートは、キャスティングドラム等の冷却体上に押し出され、冷却固化され、キャスティングフィルムが得られる。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ、急冷固化させるのが好ましい。
【0038】
このようにして得られたキャスティングフィルムは、必要に応じて二軸延伸しても構わない。二軸延伸とは、縦方向および横方向に延伸することをいう。延伸は、逐次二軸延伸しても良いし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに縦および/または横方向に再延伸を行ってもよい。
【0039】
ここで、縦方向への延伸とは、フィルムに長手方向の分子配向を与えるための延伸を言い、通常は、ロールの周速差により施される。この延伸は1段階で行ってもよく、また、複数本のロール対を使用して多段階に行ってもよい。延伸の倍率としては樹脂の種類により異なるが、通常、2〜15倍が好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2〜7倍が特に好ましく用いられる。ここで、さらに本発明の積層フィルムを得るためには、縦延伸温度が80〜140℃で、縦延伸倍率が2〜3倍であることが特に好ましいものである。
【0040】
また、こうして得られたフィルムの表面に、グラビアコーターやメタリングバー等のコーティング技術を用いて、コーティングを施すことにより、易接着層や易滑層、高光線透過率を付与しても構わない。
【0041】
また、横方向の延伸とは、フィルムに幅方向の配向を与えるための延伸を言い、通常は、テンターを用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。延伸の倍率としては、樹脂の種類により異なるが、通常2〜10倍が好ましく用いられる。特に、本発明の積層フィルムを得るためには、横延伸温度が80〜150℃の範囲にて、横方向に2〜3倍延伸することが特に好ましい。
【0042】
こうして二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点以下の熱処理を行うのが好ましく、均一に徐冷後、室温まで冷やして巻き取られる。本発明のフィルムにおいては、熱処理温度が120℃〜200℃である方が、高い引裂強度を得ることができるが、その場合、高温下での熱収縮など耐熱性の点で問題となることがあり、好ましくは200℃以上であると良い。
【0043】
特に、本発明の25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上であるフィルムを得るためには、縦延伸温度が80〜140℃で、2.8〜4倍ほど延伸した後、続いて横延伸温度が80〜150℃の範囲にて、3〜5倍程度延伸し、130℃〜240℃の範囲で熱処理した後、150〜230℃の温度範囲にて長手方向および幅方向にリラックスすることが特に好ましい。あるいはまた、熱処理後、いったんフィルムを巻き取った後、別工程にて上述のリラックスを施してもよい。この際のリラックス率としては、3%以上20%以下であることが好ましい。すなわち、特に、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値を200%以上とするには、延伸前の微細な構造制御を行うことが有効であってこれを実現するために、低倍率延伸、慨して2〜3倍の低倍率延伸を行うことが重要であり、あるいは、熱結晶化による架橋点増加を行うことが有効であってこれを実現するためには、熱処理後、高温でのリラックス処理または高リラックス率でのリラックス処理を行うことが重要である。また、あるいは上述した低倍率延伸と上述したリラックス処理の双方を行なうことも重要な実現手段である。
【0044】
また、更に25℃におけるフィルム長手方向と幅方向のヤング率の合計値を6GPa以下とするには、低倍率延伸および/あるいは高温・高倍リラックスとすることが重要である。
【0045】
また、更にフィルム長手方向および/または幅方向の引裂強度が50N/mm以上とするには、少なくとも5層以上の積層フィルムとし、ポリエステルを主成分とする層とコポリエステルを主成分とする層から形成されるようにすることが重要である。さらに好ましくは、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする層と、シクロヘキサンジメタノール基もしくは/および2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシアルコキシフェニル)プロパン基を有するコポリエステルを主成分とする層からなるようにするとよい。
【0046】
また、更に積層フィルムの全光線透過率を88%以上とするには、低屈折率の層を表層に設けることにより、表層の反射を抑制することが重要である。低屈折率の層としては、特に限定されるものではないが、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系などのいずれでもよい。
【0047】
また、更に積層フィルムのヘイズを0.1%以上3%以下とするには、特に限定されるものではないが、例えば、易滑性付与のための平均粒径が0.01μm以上10μm以下の粒子を極表面に規則正しく配列させることが好ましい。粒子を規則正しく配列させる方法としては、押出積層やコーティングなどがあげられる。
【0048】
また、更に積層フィルムの25℃におけるフィルム長手方向および幅方向の破断伸度が200%以上とするには、特に限定されるものではないが、例えば、縦方向の延伸倍率および横方向の延伸倍率を2〜3倍程度の低倍率にすることが重要である。
【0049】
このようにして得られる本発明の積層フィルムは、施工性がよく、かつガラスに貼り付けた際に高いガラス破損防止・飛散防止機能を発現し、さらに高い透明性とを併せ持つフィルムであり、特に高級建材用窓ガラスやフラットディスプレイ用のガラス保護フィルムに好適なものである。
【0050】
【実施例】
本発明の説明に使用した物性値の評価法について、以下に説明する。
(1)破断伸度およびヤング率:
テンシロン(オリエンテック製AMF/RTA−100)を用いて、幅10mmのサンプルフィルムをチャック間長さ100mmとなるようにセットし、25℃、65%RHの条件下で引張速度300mm/分で引張試験を行い、ヤング率と破断伸度を求めた。ヤング率はフィルム長手方向(MD)とフィルム幅方向(TD)の合計値で表した。また、破断伸度は(破断したときの伸張長さ/元の試料長)×100とした。ここでこれらの値は10回測定した際の、それらの平均値を採用している。
(2)引裂強度:
重荷重引裂試験機(東洋精機製)を用いて測定した。サンプルサイズは幅70mm、長さ60mmで、幅方向中央部に端から20mmの切れ込みを入れ、残り50mmを引き裂いたときの指示値を読みとった。引裂強度としては、指示値より求めた引裂力(N)をフィルム厚み(mm)で除した値とした。なお、測定は10本のサンプルを用いて行い、その平均値を採用した。なお、本試験にて引き裂けない場合は、引裂不可能(NB)とした。この場合、実質的には引裂強度は200N/mm以上と判断できるものである。
(3)全光線透過率およびヘイズ:
全光線透過率およびヘイズの測定は、常態(23℃、相対湿度65%)において、フィルムを2時間放置した後、スガ試験機(株)製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて行った。3回測定した平均値を該サンプルの平均値とした。
(4)耐衝撃性試験:
JIS R3205に準じて測定した。但し、重量1Kgの鉄球を使用し、落下高さは4m、ガラスには厚さ5mmのフロートガラスを用いた。また、ガラスとフィルムとのはり合わせにはアクリル系架橋タイプの粘着剤を使用し、粘着層の厚さは10μmとした。鉄球が貫通し、ガラスが飛散しなかった場合を優れているという意味で「○」、鉄球が貫通しガラスが飛散した場合を不十分という意味で「×」とした。
(5)施工性:
曲面半径1000mmのガラス(縦300mm×横300mm)に、アクリル系架橋タイプの粘着剤にて貼り合わせした際の外観を目視にて判定した。全面にわたって、しわや弛みなどがなく外観よく貼られた場合には優れているという意味で「○」、しわや弛みがあり外観が良くない場合には不十分という意味で「×」とした。
(6)ガラス転移温度:
示差走査熱量計として、セイコー電子工業(株)製DSC RDC220、データ解析装置として同社製ディスクステーション SSC/5200を用いて測定した。測定条件としては、アルミパンにサンプル約5mgを封入し、300℃で5分間保持、液体窒素で急冷した後、昇温速度20℃/分で測定した。
(7)固有粘度:
ポリエステルをo−クロロフェノールに溶解し、25℃において測定した。
実施例1
熱可塑性樹脂Aとして、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度76℃)を用いた。また熱可塑性樹脂Bとして固有粘度0.8のビスフェノールAエチレンオキサイド付加物30mol%共重合ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度74℃)を用いた。これら熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれ乾燥した後、押出機に供給した。
【0051】
熱可塑性樹脂AおよびBは、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、フィードブロックにて合流させた。合流した熱可塑性樹脂AおよびBは、スタティックミキサーに供給し、熱可塑性樹脂Aが17層、熱可塑性樹脂Bが16層からなる厚み方向に交互に積層された構造とした。ここで、積層厚み比がA/B=6になるよう、吐出量にて調整した。このようにして得られた計33層からなる積層体をTダイに供給しシート状に成形した後、静電印加しながら、表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
【0052】
得られたキャストフィルムは、90℃に設定したロール群で加熱し、縦方向に2.7倍延伸した。この縦方向に一軸延伸したフィルムの両面には、空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面にポリエステル/メラミン架橋剤/平均粒径140nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。さらにこのフィルムをテンターに導き、105℃の熱風で予熱後、横方向に2.7倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で150℃の熱風にて熱処理を行い、室温まで徐冷後、巻き取った。
【0053】
得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を、表1に示した。
実施例2
実施例1と同様の装置・条件で、計33層からなる積層フィルムを得た。ただし、熱可塑性樹脂Bとして固有粘度0.85のシクロヘキサンジメタノール33mol%共重合ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度79℃)を用いた。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果は表1を示す。
実施例3
実施例2と同様の装置・条件で、計33層からなる積層フィルムを得た。但し、熱処理を230℃の温度にて施した。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1を示した。
実施例4
実施例2と同様の装置・条件で、計33層からなる積層フィルムを得た。但し、縦延伸倍率を3.2倍とし、横延伸倍率を3.4倍とし、150℃の熱処理の後、つづいて150℃にて長手方向および幅方向に8%リラックスを施した。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1を示した。
実施例5
実施例2と同様の装置・条件で、計33層からなる積層フィルムを得た。但し、縦延伸倍率を3.2倍とし、横延伸倍率を3.4倍とし、230℃の熱処理の後、つづいて180℃にて長手方向および幅方向に8%リラックスを施した。得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を表1を示した。
比較例1
実施例1と同様の装置・条件で、次の単膜フィルムを得た。すなわち、押出機は1台のみを使用し、フィールドブロックおよびスタティックミキサーは用いず、熱可塑性樹脂としては、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(ガラス転移温度76℃)を用いて、単層シートとした。得られたこの単層のキャストフィルムは、90℃に設定したロール群で加熱し、縦方向に2.7倍延伸した。この縦方向に一軸延伸したフィルムの両面には、空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、その処理面にポリエステル/メラミン架橋剤/平均粒径140nmのシリカ粒子からなる積層形成膜塗液を塗布した。さらにこのフィルムをテンターに導き、105℃の熱風で予熱後、横方向に2.7倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で150℃の熱風にて熱処理を行い、室温まで徐冷後、巻き取った。
【0054】
得られたフィルムの厚みは、100μmであった。得られた結果を、表1に示した。
比較例2
実施例2と同様の装置・条件で、積層フィルムを得た。但し、縦延伸倍率を3.2倍とし、横延伸倍率を3.4倍とした。得られた結果を表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
本発明により、ガラスの破損および飛散防止を目的とした耐衝撃性と、ガラスに貼りつけた際の視認性を両立したガラス保護フィルムを提供することができ、さらに貼りあわせ時の施工性も大幅に向上する。本発明により得られる積層フィルムは、特に、建材用窓ガラスやフラットディスプレイ等の表示用ガラスの保護フィルムとして好適なフィルムを提供できたものである。
Claims (8)
- 少なくとも厚み方向に5層以上積層された積層フィルムであって、25℃におけるフィルム長手方向と幅方向の破断伸度の平均値が200%以上であることを特徴とする積層フィルム。
- 25℃におけるフィルム長手方向と幅方向のヤング率の合計値が6GPa以下であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
- フィルム長手方向および/または幅方向の引裂強度が50N/mm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の積層フィルム。
- 全光線透過率が88%以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の積層フィルム。
- ヘイズが0.1%以上3%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の積層フィルム。
- 25℃におけるフィルム長手方向および幅方向の破断伸度が200%以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の積層フィルム。
- 平面表示素子用のガラス保護フィルムとして用いられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の積層フィルム。
- 窓ガラス用のガラス保護フィルムとして用いられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のガラス保護フィルム。
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