JP6672819B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
[I]非晶性樹脂からなる透明導電基板に貼り合わせて用いるポリエステルフィルムであって、以下(1)〜(3)を満たすポリエステルフィルム。
(1)MD、TD方向の150℃30分熱処理後の熱収縮率が、いずれも−0.3%以上0.3%以下であること。
(2)50℃から150℃の線膨張係数が、MD、TD方向の平均値で35ppm/℃以上60ppm/℃以下であること。
(3)フィルムヘイズが2.0%以下であること。
[II]MD方向とTD方向の120℃におけるヤング率の和が1.0GPa以上2.0GPa以下である[I]に記載の非晶性樹脂からなる透明導電基板に貼り合わせて用いるポリエステルフィルム。
[III]非晶性樹脂からなる透明導電基板の少なくとも一方の表面に[I]または[II]に記載のポリエステルフィルムを積層した積層体。
[IV]非晶性樹脂からなる透明導電基板の50℃から150℃の線膨張係数が、MD、TD方向の平均値で50ppm/℃以上120ppm/℃以下である、[III]に記載の積層体。
[V]非晶性樹脂が、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)より選ばれる少なくとも1種を含む[III]または[IV]に記載の積層体。
[VI]透明導電基板に設ける透明導電膜が酸化インジウムスズ(ITO)からなる[III]から[V]のいずれかに記載の積層体。
本発明のポリエステルフィルムは、機械特性の観点から、ポリエステルフィルムであることが必要である。ここでいうポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。本発明のポリエステルフィルムは、機械特性の観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートの共重合体からなることが好ましい。
(1)溶融したポリエステルを口金から吐出して未延伸シートを作製する際に、表面温度10℃以上40℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製する。
(2)(1)で得られた未延伸シートを、下記(i)式を満たす温度T1n(℃)にて、ポリエステルフィルムの長手方向(MD)とフィルムの幅方向(TD)に面積倍率8.5倍以上15.0倍以下に二軸延伸する。
(i)Tg(℃)≦T1n(℃)≦Tg+40(℃)
Tg:ポリエステルフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度(℃)
(3)(2)で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムを、下記(ii)式を満足する温度(Th0(℃))で、1秒間以上30秒間以下の熱固定処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却することによって、ポリエステルフィルムを得る。
(ii)Tm−40(℃)≦Th0(℃)≦Tm−10(℃)
Tm:ポリエステルフィルムを構成する樹脂の融点(℃)
(1)を満たす条件によって未延伸シートを得ることにより実質的に非晶のポリエステルフィルムを得ることができ、(2)以降の工程においてフィルムに配向を付与せしめ易くし、機械特性に良好なフィルムを得やすくすることができる。
(2)を満たす条件によって二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることにより、フィルムに適度な配向を付与せしめ、機械特性の良好なポリエステルフィルムとすることができる。
(ii)を満たす条件によって結晶配向を完了させることにより、配向が形成されたポリエステル分子鎖の構造が安定し、機械特性が良好なフィルムとすることができる。
Th0が、Tm−10℃を超える場合、延伸によって付与したフィルムの配向が崩れ、平面性が悪くなる場合がある。Th0がTm−30℃を下回る場合、適切な配向を付与することができない。
(iv)180℃≦Th1(℃)≦Th0(熱固定温度)(℃)
該工程では、冷却後に熱を与えるため、平面性を損なわないまま(2)(3)の工程、すなわち延伸、配向付与によって分子鎖に蓄えられたひずみを解消することができ、フィルムの熱収縮、熱膨張を低減することが可能となる。Th1(℃)がTh0(熱固定温度)(℃)を超える場合、(4)の工程において、(3)の工程で固定化されたフィルム内の分子鎖の構造が破壊される結果、フィルムが大きく収縮することとなり、平面性が悪化する場合がある。一方、Th1(℃)が180℃を下回る場合、150℃での熱収縮率を好ましい範囲とすることができない場合がある。
A.フィルムの融点(Tm)(℃)
試料を、JIS K 7121(1999)に基づいた方法により、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置“ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション“SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
サンプルパンに試料を5mgずつ秤量し、試料を25℃から300℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し(1stRUN)、その状態で5分間保持し、次いで25℃以下となるよう急冷する。直ちに引き続いて、再度25℃から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温を行って測定を行い、2ndRUNの示差走査熱量測定チャート(縦軸を熱エネルギー、横軸を温度とする)を得る。当該2ndRUNの示差走査熱量測定チャートにおいて、吸熱ピークである結晶融解ピークにおけるピークトップの温度を求め、これを融点(℃)とする。2以上の結晶融解ピークが観測される場合は、最もピーク面積の大きいピークトップの温度を融点とする。
JIS K 7121(1999)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置”ロボットDSC−RDC220”を、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いて、下記の要領にて、測定を実施する。
JIS C 2318(1997)に準じて、フィルムの熱収縮率を測定する。フィルムを幅10mm、長さ150mmの短冊状に切り出す。測長部分がおおよそ100mmになるようにフィルムに標線をつけて標線の長さを23℃の条件下にて測定し、L0とする。その後、所定の温度(150℃)に熱した熱風オーブン内に2gのおもりをつけてフィルムを吊し、30分間放置する。フィルムをオーブンから取りだして23℃まで冷却した後、標線の長さを測定し、L1とする。下記(vi)式によりフィルムの収縮率を求める。測定は、フィルム長手方向またはフィルム幅方向が150mmの長さになるようにランダムに5箇所切り出して測定する。長手方向、幅方向それぞれに平均値を算出し、フィルムの熱収縮率とする。
(vi)(フィルム熱収縮率)=(L0−L1)/L0×100
D.フィルムの厚み(μm)
フィルム厚みは、ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992年)A−2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚さを測定した。その平均値を10で除してフィルム厚みとした。
JIS K7197(1991)に準じて、熱機械測定装置TMA/SS6000(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、試料幅4mmとして、試料長さ(チャック間距離)20mmのサンプルに対し、荷重3gを負荷する。室温から160℃まで昇温速度10℃/分で昇温させ、10分間保持し、その後、20℃まで10℃/分で降温させ、各温度(℃)における試料の寸法の値を得る。150℃における試料の寸法L(150℃)(mm)と、50℃における試料の寸法L(50℃)(mm)から、下記(v)式から算出する。なお、熱膨張係数は、フィルム幅方向(TD)およびそれに直交する方向(MD)それぞれについて、n=5で実施し、その平均値として算出する。
(v)CTE(ppm/℃)=106×(L(150℃)−L(50℃))/{20×(150−50)}
F.ヘイズ(%)
フィルムを1辺10cmの正方形状に切り出し、日本電色(株)製ヘイズメーターNDH−5000を用い、ランダムに3カ所のヘイズを測定して平均値を算出する。
G.透明導電基板との貼り合わせ
本発明のフィルムを20cm×20cmの大きさに切り出し、透明導電基板を構成する非晶性樹脂からなるフィルムと貼り合わせ、積層体を得る。貼り合わせにはリンテック(株)製粘着シートMO−3006を用いる。該積層体を130℃のオーブン内に入れ、1時間静置した後、オーブンの温度を20℃/分の速度で室温まで冷却した。その後、積層体を観察し、3cm以上の長さを持つシワの数を計測し、以下のように判定する。
4本以上9本以下;B
10本以上;C
Aが最も優れ、Cが最も劣る。
フィルムを1cm×15cmの大きさに、長辺がフィルムのMD・TDに平行となるようにそれぞれ切り出し、ASTM−D882(1997)に基づいて、チャック間5cm、引っ張り速度300mm/分にて引っ張ったときのヤング率を求める。MD、TD方向それぞれn5の平均値とし、MD方向とTD方向のヤング率を算出した後、それらの平均値を求める。
上記G.項の積層体にITO電極基板を蒸着した後、本発明のフィルム側から積層体を観察し、電極の形状が認識できれば視認性A、認識できなければ視認性Bとする。Aが最も優れ、Bが劣る。
上記G.項が評価B以上、かつ上記I.項がAの積層体が、評価A、それ以外を評価Bとする。評価Aが積層体として優れる。
[PET−Aの製造]テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、溶融重合PETを得た。得られた溶融重合PETのガラス転移温度は80℃、融点は255℃、固有粘度は0.62であった。
[PET−Bの製造]テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、イソフタル酸共重合量がジガルボン酸成分全量に対して5mol%となるように常法により重合を行い、共重合PETを得た。得られた共重合PETのガラス転移温度は77℃、融点は243℃、固有粘度は0.62であった。
[PET−Cの製造]テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、イソフタル酸共重合量がジガルボン酸成分全量に対して10mol%となるように常法により重合を行い、共重合PETを得た。得られた共重合PETのガラス転移温度は76℃、融点は235℃、固有粘度は0.62であった。
[PET−Dの製造]テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、イソフタル酸共重合量がジガルボン酸成分全量に対して15mol%となるように常法により重合を行い、共重合PETを得た。得られた共重合PETのガラス転移温度は74℃、融点は230℃、固有粘度は0.62であった。
[PET−Fの製造]PET−Aを製造する際、平均粒径0.8μmの炭酸カルシウム粒子(屈折率1.6)を5000ppm添加し、PET−Fを得た。
[PET−Gの製造]PET−Aを製造する際、平均粒径0.2μmの二酸化チタン(屈折率2.5)の添加量が、二酸化チタンを含むポリエステル組成物全体に対して5質量%となるように添加し、PET−Gを得た。
PET−Aを、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、押出機内で溶融させ、表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で幅方向に直角な方向(MD方向)に3.2倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の100℃の温度の加熱ゾーンでフィルム幅方向(TD方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで235℃の温度で10秒間の熱固定を施し、さらに2%の弛緩率でMD、TD方向とも弛緩処理を行った。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。さらに、得られたフィルムをフィルム巻きだしロールとフィルム巻き取りロールの間に設置された熱風オーブンにて、200℃の温度にて、フィルムが熱処理される時間が5分となるようにアニール処理を施し、厚さ50μmのフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの特性を表に示す。CTEはMD方向、TD方向の平均値で35ppm/℃以上50ppm/℃以下であり、150℃の熱収縮率はMD方向TD方向とも0.5%以下であり、ヘイズも2.0%以下であった。このフィルムをCOPと貼り合わせて積層体とした場合にも、積層体として良好なものであった。
フィルムを構成する樹脂、製膜条件を表の通りに変えた以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。ポリエステルフィルムの特性を表に示す。実施例2から7では、熱収縮率、CTE、ヘイズが好適な範囲にあり、非晶性樹脂からなるフィルムと貼り合わせ積層体とした場合でも、積層体として良好なものであった。比較例1、4、5では、熱固定処理工程での弛緩処理が無いため、CTEが低い。比較例2では、用いる樹脂の共重合量が多いため熱収縮率が大きく、また比較例6では熱収縮率、CTEとも大きい。比較例3では、フィルムに含有される無機粒子の屈折率が大きいため、フィルムヘイズが高い。比較例で得られたフィルムを非晶性樹脂からなるフィルムと貼り合わせて積層体とした場合、非晶性樹脂からなるフィルムと比較例のフィルムの間にシワが生じたり、視認性が悪くなり、積層体として劣るものであった。
Claims (5)
- 非晶性樹脂からなる透明導電基板の少なくとも一方の表面に、
非晶性樹脂からなる透明導電基板に貼り合わせて用いるポリエステルフィルムであって、以下(1)〜(3)を満たすポリエステルフィルムを積層した積層体。
(1)MD、TD方向の150℃30分熱処理後の熱収縮率が、いずれも−0.3%以上0.3%以下であること。
(2)50℃から150℃の線膨張係数が、MD、TD方向の平均値で35ppm/℃以上60ppm/℃以下であること。
(3)フィルムヘイズが2.0%以下であること。 - 前記ポリエステルフィルムが、MD方向とTD方向の120℃におけるヤング率の和が1.0GPa以上2.0GPa以下である請求項1に記載の積層体。
- 非晶性樹脂からなる透明導電基板の50℃から150℃の線膨張係数が、MD、TD方向の平均値で50ppm/℃以上120ppm/℃以下である、請求項1または2に記載の積層体。
- 非晶性樹脂が、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
- 請求項1から4のいずれかに記載の積層体に、酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明導電膜を設けた電極基板。
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