JP6787001B2 - フィルム - Google Patents
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Description
一方で、アクリル樹脂は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表されるフッ化ビニリデン樹脂と相溶しやすいことが知られている。フッ化ビニリデン樹脂とのポリマーブレンドによるアクリル樹脂の改質は、これまでに広く取り組まれてきた。
[1] アクリル樹脂(A)61〜90質量%及びフッ化ビニリデン樹脂(B)10〜39質量%を含む樹脂組成物であって、
示差走査熱量計により、30℃から200℃まで10℃/分で昇温する過程で観測される結晶融解エンタルピーが0〜5J/gであり、
前記アクリル樹脂(A)が、アクリルゴムをコアとし、さらにグラフト部を設けたコアシェル構造を有する樹脂を含有する、樹脂組成物。
[2] 前記アクリル樹脂(A)のゲル含有率が、アクリル樹脂(A)を100質量%としたときに40質量%〜80質量%である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 示差走査熱量計により200℃から30℃まで10℃/分で降温する過程で観測される結晶化エンタルピーが0〜5J/gである、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
[5] JIS K7128−3に準拠して、23℃で200mm/分の速度で測定した引裂き伸度が12%以上である、[4]に記載のフィルム。
[6] JIS K7128−3に準拠して、23℃で200mm/分の速度で測定した引裂き強度が70〜200N/mm以上である、[4]又は[5]に記載のフィルム。
[7] JIS K7128−3に準拠して、23℃で200mm/分の速度で測定した引裂き強度が85N/mm以上である、[4]〜[6]のいずれか1項に記載のフィルム。
[8] [4]〜[7]のいずれか1項に記載のフィルムを基材とする保護フィルム。
本発明のフィルムは、透明性と引裂き耐性に優れ、かつ貯蔵温度下で物性が変質しにくいため、有用である。
本発明の樹脂組成物は、アクリル樹脂(A)61〜90質量%及びフッ化ビニリデン樹脂(B)10〜39質量%を含む。
本発明で用いるアクリル樹脂(A)は、アクリルゴムをコアとし、さらにグラフト部を設けたコアシェル構造を有する樹脂である。
ここで、アクリルゴムとは、後述する単量体を重合して得られる三次元網目構造を有する重合体を指す。
また、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
なお、本発明において、「ゲル含有率」とは、所定質量w1(g)の試料(例えば、アクリル樹脂(A))をアセトン中還流下で6時間抽出処理し、この処理液を遠心分離(14000rpm、30分間)により分別し、溶液をデカンテーションで取り除き、アセトン不溶分を回収して乾燥後(50℃、24時間)、そのアセトン不溶分の質量w2(g)を測定し、下記式にて算出される値である。
ゲル含有率(質量%)=w2/w1×100
本発明で用いるフッ化ビニリデン樹脂(B)は、アクリル樹脂(A)と相溶性が高いものが挙げられる。本発明で用いるフッ化ビニリデン樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマー、又はフッ化ビニリデン系樹脂中フッ化ビニリデン単位を70質量%以上含有するコポリマーが挙げられる。フッ化ビニリデン樹脂は、フッ化ビニリデン単位の含有率が高いほど結晶性が良好であり、好ましい。
フッ化ビニリデン樹脂(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した値をいい、例えば、テトラヒドロフランや水、ジメチルヒドロフラン等の溶媒を溶離液として、ポリスチレン換算分子量として求めた値を用いる。
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物に含まれる重合体の100質量%に対して、61〜90質量%のアクリル樹脂(A)、及び10〜39質量%のフッ化ビニリデン樹脂(B)を含有する。
フッ化ビニリデン樹脂(B)の含有率が10〜39質量%であれば、フッ化ビニリデン樹脂(B)が結晶化しないため透明性が高く、かつ引裂き耐性が向上する。ここで、透明性に優れるとは、例えば、樹脂組成物を成形し、厚さ50μmのフィルムとしたときに、ヘーズ値が0〜5%を示すものを指す。
アクリル樹脂(A)の含有率が61質量%以上であれば結晶化が進行しにくい。すなわち、貯蔵温度下での経時や加温による結晶化が進行しにくく、寸法が安定しやすい。また、90質量%以下であれば、引裂き耐性が向上する。
フッ化ビニリデン樹脂(B)の含有率が10質量%以上であれば、引裂き耐性が向上する。また、39質量%以下であれば、貯蔵温度下での経時や加温による結晶化が進行しにくく、寸法が安定しやすい。
示差走査熱量計により測定した樹脂組成物の結晶融解エンタルピーが小さいほど、結晶化度が小さいことを示す。なお、本発明における結晶融解エンタルピーの値は、樹脂組成物調製における熱履歴の影響を除外するために、JIS K7121、3.(2)に従って熱処理を行った後に測定したものを指す。
結晶化に伴う発熱ピークが観測されない物に関しては、熱履歴の影響は乏しく、概ね非晶性の成形体が得られる。また、結晶化に基づく発熱ピークが観測された場合でも、そのピークトップの値(凝固点)により結晶化の遅速を比較することができ、凝固点が低いほど結晶化が遅い樹脂組成物であると判断できる。
添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、強化剤、耐衝撃改質剤、合成シリカやシリコン樹脂粉末等のブロッキング防止剤、可塑剤、抗菌剤、防カビ剤、ブルーイング剤、帯電防止剤が挙げられる。
本発明のフィルムは、本発明の樹脂組成物を成形したものである。
本発明のフィルムは、透明性と引裂き耐性に優れ、かつ貯蔵温度下で物性が変質しにくい。
本発明において、フィルムの厚みは、製膜時の流れ方向に垂直な方向(TD方向)で任意に三か所測定した測定値の平均値をいう。
耐久性と加工性から引裂き強度は75N/mm以上であることがより好ましく、80N/mm以上であることが更に好ましく、80〜200N/mmであることが特に好ましく、85〜180N/mmが最も好ましい。
本発明のフィルムは、樹脂組成物に含まれる重合体100質量%に対して、61質量%〜90質量%のアクリル樹脂(A)、及び10質量%〜39質量%のフッ化ビニリデン樹脂(B)を含有する樹脂組成物を溶融押出しし、次いで、得られた溶融押出物を、表面温度が30〜75℃、好ましくは30〜60℃、より好ましくは30〜50℃の少なくとも1本の冷却ロールに接触させて製膜する方法で製造することができる。
また、成形可能な流動性を確保する点から、Tダイの設定温度は200℃以上が好ましく、210℃以上がより好ましく、220℃以上が更に好ましい。
つまり、Tダイの設定温度は200〜260℃が好ましく、210〜250℃がより好ましく、220〜240℃が更に好ましい。
冷却ロールの表面温度を30℃以上とすることにより、耐熱性の高いフィルムを得ることができる。また、冷却ロールの表面温度を75℃以下とすることにより、フィルムのブロッキングを抑制し、巻き取ることができる。
尚、実施例中の「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を示す。
実施例、比較例における各評価は、以下の方法により実施した。
(1)結晶融解エンタルピーおよび融点
示差走査熱量測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製、商品名:DSC6200)を用いて、JIS K7121に則り樹脂組成物の結晶融解エンタルピーおよび融点を測定した。
測定サンプルは樹脂組成物を細かく切り出して準備し、JIS K7121、3.(2)に従い熱処理を行った後、測定を行った。30℃から200℃まで10℃/分で昇温する過程で観測された結晶融解ピークの面積から結晶融解エンタルピーを、ピークトップの値から融点を求めた。なお、結晶融解ピークが観測されなかった場合には、結晶融解エンタルピーは0J/gとした。
示差走査熱量測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製、商品名:DSC6200)を用いて、JIS K7121に則り樹脂組成物の冷却過程における結晶化エンタルピーおよび凝固点を測定した。
測定サンプルは樹脂組成物を細かく切り出して準備した。JIS K7121、3.(1)の状態調節後、測定サンプルを示差走査熱量測定装置の容器に入れ、30℃から200℃まで昇温し、200℃で10分間保持した後、測定を開始した。200℃から30℃まで10℃/分で降温する過程で観測された結晶化ピークの面積から降温過程における結晶化エンタルピーを、ピークトップの値から凝固点を求めた。なお、結晶化ピークが観測されなかった場合には、降温過程における結晶化エンタルピーは0J/gとした。
(3)引裂き試験
フィルムをMD方向に打ち抜いた直角型試験片を用いて、JIS K7128−3に準拠して、テンシロン万能試験機RTC−1250A(オリエンテック製)にて引張試験を行った。室温23℃及び引張速度200mm/分で試験を実施し引裂き強度、引裂き伸度を求めた。1サンプルあたり5本ずつ試験し、平均値を求めた。
ヘーズメーターNDH2000(日本電色工業(株)製)を用いて、JIS K7136およびJIS K7361−1に則りヘーズ及び全光線透過率を測定した。1サンプルにつき3点ずつ測定して平均値を求めた。
示差走査熱量測定装置((株)日立ハイテクサイエンス製、商品名:DSC6200)を用いて、JIS K7121に則りフィルムの昇温過程における結晶化エンタルピーを測定した。
測定サンプルはフィルムを細かく切り出して準備した。測定サンプルはJIS K7121、3.(1)に従い調温調湿したものを使用した。30℃から200℃まで10℃/分で昇温する過程で観測された結晶化による発熱ピークの面積から結晶化エンタルピーを求めた。なお、結晶化による発熱ピークが観測されなかった場合には、結晶化エンタルピーは0J/gとした。
[アクリル樹脂(A)]
攪拌機を備えた容器内に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA(メチルメタクレート)0.3部、n−BA(n−ブチルアクリレート)4.5部、1,3−BD(1,3−ブチレングリコールジメタクリレート)0.2部、及びAMA(アリルメタクリレート)0.05部からなる単量体混合物と、CHP(クメンヒドロパーオキサイド)0.025部とを投入し、室温下にて攪拌混合した。ついで、攪拌しながら、乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名「フォスファノールRS610NA」)1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。
[樹脂組成物の作製]
製造例1で作製したアクリル樹脂(A)90部とフッ化ビニリデン樹脂(B)としてPVDF(アルケマ(株)製、商品名:kynar740)10部を60℃で一晩予備乾燥させた後、ドライブレンドしたのちφ30mm二軸混練押出機(Werner&Pfleiderer社製)により最高温度240℃で押出し、ペレット状の成形材料(樹脂組成物)を得た。
上記手法で得られたペレットを60℃で一晩予備乾燥させた後、150mm幅のTダイが搭載されたφ30mm単軸押出機(GMエンジニアリング社製)により押出温度180〜240℃、Tダイ温度240℃で一本の冷却ロール温度40℃で製膜して厚さ50μmのフィルムを得た。
樹脂組成物の示差走査熱量分析結果、および、フィルムの光学試験結果、引裂き試験結果、示差走査熱量分析結果を表1に示す。
アクリル樹脂(A)、フッ化ビニリデン樹脂(B)を表1に記載のとおり用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物及びフィルムを得た。
樹脂組成物の示差走査熱量分析結果、および、フィルムの光学試験結果、引裂き試験結果、示差走査熱量分析結果を表1に示す。
また、実施例5と比較例4で用いたPVDF(アルケマ(株)製、商品名:kynar720)は、フッ化ビニリデン単位からなるホモポリマーであり、結晶融点は169℃であり、質量平均分子量は257000であった。
特に、本発明のフィルムは透明性と引裂き耐性に優れるため、保護フィルムとしての利用に適する。保護フィルムとは、貼り合せた保護対象を紫外光や雨風、小石等のチッピングによる劣化・傷付きから保護する役割を果たすものを総称する。透明性に優れるため保護対象の外観を損ないにくく、引裂き耐性に優れるため後貼り時に張力をかけても破れにくい。保護フィルムは、オーバーレイフィルム、オーバーラミフィルム、ラミネートフィルム、といった名称でも呼称される。
Claims (7)
- アクリル樹脂(A)70〜90質量%及びフッ化ビニリデン樹脂(B)10〜30質量%を含み、
示差走査熱量計により、30℃から200℃まで10℃/分で昇温する過程で観測される結晶融解エンタルピーが0〜5J/gであり、
前記アクリル樹脂(A)が、アクリルゴムをコアとし、さらにグラフト部を設けたコアシェル構造を有する樹脂を含有する樹脂組成物からなるフィルムであって、
JIS K7136に準拠して測定したヘーズ値が0〜1%である、フィルム。 - 前記アクリル樹脂(A)のゲル含有率が、アクリル樹脂(A)を100質量%としたときに40〜80質量%である、請求項1に記載のフィルム。
- 示差走査熱量計により、200℃から30℃まで10℃/分で降温する過程で観測される結晶化エンタルピーが0〜5J/gである、請求項1又は2に記載のフィルム。
- JIS K7128−3に準拠して、23℃で200mm/分の速度で測定した引裂き伸度が12%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム。
- JIS K7128−3に準拠して、23℃で200mm/分の速度で測定した引裂き強度が70〜200N/mm以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム。
- JIS K7128−3に準拠して、23℃で200mm/分の速度で測定した引裂き強度が85N/mm以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムを基材とする保護フィルム。
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