JP2018193534A - 艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた外観と耐薬品性を備え、製造する際に安定的な艶消し発現が可能となる艶消し熱可塑性樹脂フィルム、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム及びその積層フィルムを用いた積層成形品を提供すること。【解決手段】熱可塑性樹脂(C)と、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)と、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)を含有する艶消し熱可塑性樹脂フィルム並びに該艶消し熱可塑性樹脂フィルムに、該艶消し熱可塑性樹脂フィルムと異なる樹脂組成の熱可塑性樹脂層を積層した積層フィルム又は積層シート。【選択図】なし
Description
本発明は、艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムに関する。
フッ化ビニリデン系樹脂等のフッ素フィルムは、耐候性、耐溶剤性及び耐汚染性に優れているため、プラスチック、ガラス、スレート、ゴム、金属板及び木板等の各種基材表面にラミネートされる保護フィルムとして広く使用されている。また、フッ素フィルムで表面が保護された基材は建築物の内装材、外装材及び家具等の多くの用途で使用されている。しかしながら、近年、特に屋内で使用される壁紙やレザー家具等の基材については、イメージの高級化が要望されるようになり、艶消しフィルムがラミネートされたものの使用が多くなっている。
この艶消しフィルムの製法としては、主として(1)表面を荒らした金属製又はゴム製のマットロールによってフィルム表面に微細な凹凸を付与し、熱成形する方法、(2)砂又は金属等の微粒子を被処理フィルム表面に吹き付けて微細な凹凸を付与する方法(サンドブラスト法)、(3)被処理フィルムに艶消し剤をコーティングする方法、(4)微細な有機又は無機の充填剤(艶消し剤)をフィルム構成用樹脂中に添加する方法、及び(5)フッ素樹脂とアクリル樹脂との溶解度パラメータの差を利用し艶消し外観を持つフィルムとする方法が知られている。
(1)マットロールによるフィルムの艶消し方法には、フッ素樹脂に添加した紫外線吸収剤等の添加剤によりマットロール表面の凹凸が目詰まりし易いという問題や、薄いフィルムでは厚さ斑がそのまま艶斑となり、均質な艶消しフィルムが得られにくいという問題がある。
(2)サンドブラスト法には、薄く柔らかいフィルムでは、サンドブラスト時に被処理フィルムが伸びたり、破断したりするという問題がある。
(3)艶消し剤をコーティングする方法では、艶消し剤がフッ素樹脂に対して非粘着(非接着)性なのでフッ素樹脂の表面に艶消し剤のコーティングを容易に行うことが出来ないという問題がある。
(4)艶消し剤をフィルム構成用樹脂中に添加する方法に関し、例えば、特許文献1に、有機系の艶消し剤を使用する場合には、良好な外観・艶消し性を有し、且つ耐溶剤に優れたフッ化ビニリデン系樹脂フィルムが提供できることが記載されている。しかしながら、該特許文献に記載の有機系の艶消し剤を使用し、Tダイを用いた溶融押出成形法によりフッ化ビニリデン系樹脂フィルムを製造した場合、Tダイの吐出口付近に、樹脂が堆積し易くなる。この樹脂が堆積すると、いわゆる「メヤニ」という塊が生じる場合がある。「メヤニ」が生じた場合、この「メヤニ」がフィルムに付着し外観を損ねる場合がある。
(5)フッ素樹脂とアクリル樹脂との溶解度パラメータの差を利用し艶消し外観を持つフィルムとする方法として、例えば、特許文献2には、水酸基含有非架橋アクリル樹脂を艶消し剤として添加する方法が記載されている。しかしながら、該特許文献に記載の方法は細やかな艶消し性発現と耐溶剤性には優れるが、製造条件によっては艶消し性の発現が不充分な場合があった。
(2)サンドブラスト法には、薄く柔らかいフィルムでは、サンドブラスト時に被処理フィルムが伸びたり、破断したりするという問題がある。
(3)艶消し剤をコーティングする方法では、艶消し剤がフッ素樹脂に対して非粘着(非接着)性なのでフッ素樹脂の表面に艶消し剤のコーティングを容易に行うことが出来ないという問題がある。
(4)艶消し剤をフィルム構成用樹脂中に添加する方法に関し、例えば、特許文献1に、有機系の艶消し剤を使用する場合には、良好な外観・艶消し性を有し、且つ耐溶剤に優れたフッ化ビニリデン系樹脂フィルムが提供できることが記載されている。しかしながら、該特許文献に記載の有機系の艶消し剤を使用し、Tダイを用いた溶融押出成形法によりフッ化ビニリデン系樹脂フィルムを製造した場合、Tダイの吐出口付近に、樹脂が堆積し易くなる。この樹脂が堆積すると、いわゆる「メヤニ」という塊が生じる場合がある。「メヤニ」が生じた場合、この「メヤニ」がフィルムに付着し外観を損ねる場合がある。
(5)フッ素樹脂とアクリル樹脂との溶解度パラメータの差を利用し艶消し外観を持つフィルムとする方法として、例えば、特許文献2には、水酸基含有非架橋アクリル樹脂を艶消し剤として添加する方法が記載されている。しかしながら、該特許文献に記載の方法は細やかな艶消し性発現と耐溶剤性には優れるが、製造条件によっては艶消し性の発現が不充分な場合があった。
本発明の目的は、優れた外観と耐薬品性を備え、製造する際に安定的な艶消し発現が可能となる艶消し熱可塑性樹脂フィルム、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム及びその積層フィルムを用いた積層体を提供することにある。
本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]水酸基非含有熱可塑性樹脂(C)と、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)と、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)を含有する艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
[2]熱可塑性樹脂(C)がフッ素樹脂(A)を含有する前記[1]に記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
[3]更にフェノール系酸化防止剤(F)を含有する前記[1]又は[2]に記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
[4]リン系酸化防止剤(P)の含有量が、熱可塑性樹脂(C)及び水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
[5]230℃、5000g荷重及び保持時間4分の条件でのメルトフローレート(MFR)を100%とした場合、230℃、5000g荷重及び保持時間20分の条件でのメルトフローレート(MFR)が70%以上である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルムに、該艶消し熱可塑性樹脂フィルムと異なる樹脂組成の熱可塑性樹脂層を積層した積層フィルム又は積層シート。
[7]前記[6]に記載の積層フィルム又は積層シートに基材を積層した積層体。
[1]水酸基非含有熱可塑性樹脂(C)と、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)と、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)を含有する艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
[2]熱可塑性樹脂(C)がフッ素樹脂(A)を含有する前記[1]に記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
[3]更にフェノール系酸化防止剤(F)を含有する前記[1]又は[2]に記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
[4]リン系酸化防止剤(P)の含有量が、熱可塑性樹脂(C)及び水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
[5]230℃、5000g荷重及び保持時間4分の条件でのメルトフローレート(MFR)を100%とした場合、230℃、5000g荷重及び保持時間20分の条件でのメルトフローレート(MFR)が70%以上である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルムに、該艶消し熱可塑性樹脂フィルムと異なる樹脂組成の熱可塑性樹脂層を積層した積層フィルム又は積層シート。
[7]前記[6]に記載の積層フィルム又は積層シートに基材を積層した積層体。
本発明によれば、優れた外観と耐薬品性を備え、製造する際に安定的な艶消し発現が可能となる艶消し熱可塑性樹脂フィルム、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム、及びその積層フィルムを用いた積層体を提供することができる。
以下、本発明について好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、水酸基非含有熱可塑性樹脂(C)と、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)と、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)を含有する。以下、各成分について説明する。
本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、水酸基非含有熱可塑性樹脂(C)と、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)と、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)を含有する。以下、各成分について説明する。
[水酸基非含有熱可塑性樹脂(C)]
熱可塑性樹脂(C)としては、水酸基を含有しない公知の熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。耐薬品性の点から、熱可塑性樹脂(C)はフッ素樹脂(A)を含有することが好ましい。また、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)に対する相溶性の点から、熱可塑性樹脂(C)はフッ素樹脂(A)に加えて、水酸基非含有アクリル樹脂を含有することがより好ましい。水酸基非含有アクリル樹脂としては例えば後述の熱可塑性重合体(C−1)、又は後述のゴム含有重合体(α)のうち、水酸基含有単量体を原料に用いていないものが挙げられる。また、必要に応じてこれらを単独又は併用することもできる。
熱可塑性樹脂(C)としては、水酸基を含有しない公知の熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。耐薬品性の点から、熱可塑性樹脂(C)はフッ素樹脂(A)を含有することが好ましい。また、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)に対する相溶性の点から、熱可塑性樹脂(C)はフッ素樹脂(A)に加えて、水酸基非含有アクリル樹脂を含有することがより好ましい。水酸基非含有アクリル樹脂としては例えば後述の熱可塑性重合体(C−1)、又は後述のゴム含有重合体(α)のうち、水酸基含有単量体を原料に用いていないものが挙げられる。また、必要に応じてこれらを単独又は併用することもできる。
[フッ素樹脂(A)]
本発明で使用されるフッ素樹脂(A)としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体、フッ化ビニリデンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のアクリル系単量体との共重合体が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を併用して使用できる。これらの中でも、特に、フッ素樹脂(A)の成形性やアクリル樹脂との相溶性の観点から、フッ化ビニリデン系重合体及びフッ化ビニリデン系重合体を主成分とするフッ化ビニリデン系重合体と他のフッ素樹脂との混合樹脂が好ましい。
本発明で使用されるフッ素樹脂(A)としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体、フッ化ビニリデンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のアクリル系単量体との共重合体が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を併用して使用できる。これらの中でも、特に、フッ素樹脂(A)の成形性やアクリル樹脂との相溶性の観点から、フッ化ビニリデン系重合体及びフッ化ビニリデン系重合体を主成分とするフッ化ビニリデン系重合体と他のフッ素樹脂との混合樹脂が好ましい。
フッ化ビニリデン系重合体は、フッ化ビニリデン単量体単位を有するビニル重合体であれば特に限定されず、フッ化ビニリデンの単独重合体であってもよく、フッ化ビニリデンとフッ化ビニリデンと共重合可能な他のビニル単量体との共重合体であってもよい。フッ化ビニリデンと共重合可能な他のビニル単量体としては、例えば、フッ化ビニル、四フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン及び六フッ化プロピレン等のフッ素化されたビニル単量体並びにスチレン、エチレン、ブタジエン及びプロピレン等のビニル単量体が挙げられる。
熱可塑性樹脂(C)中のフッ素樹脂(A)の含有率は、耐薬品性の観点から好ましくは60〜100質量%であり、より好ましくは70〜100質量%である。
[熱可塑性重合体(C−1)]
熱可塑性重合体(C−1)は、メタクリル酸アルキル単位を主成分とする重合体である。
メタクリル酸アルキル単位を主成分とする重合体としては、耐熱性の点で、メタクリル酸アルキル50〜100質量%、アクリル酸アルキル0〜50質量%及びこれらと共重合可能な二重結合を有する他の単量体0〜49質量%を含有する単量体成分を重合して得られる重合体が好ましい。
熱可塑性重合体(C−1)は、メタクリル酸アルキル単位を主成分とする重合体である。
メタクリル酸アルキル単位を主成分とする重合体としては、耐熱性の点で、メタクリル酸アルキル50〜100質量%、アクリル酸アルキル0〜50質量%及びこれらと共重合可能な二重結合を有する他の単量体0〜49質量%を含有する単量体成分を重合して得られる重合体が好ましい。
メタクリル酸アルキルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル及びメタクリル酸n−ブチルが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
アクリル酸アルキルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸n−オクチルが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸n−ブチルが好ましい。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
これら(アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキル)と共重合可能な二重結合を有する他の単量体としては、アクリル酸低級アルコキシ、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
アクリル酸アルキルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸n−オクチルが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸n−ブチルが好ましい。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
これら(アクリル酸アルキル及びメタクリル酸アルキル)と共重合可能な二重結合を有する他の単量体としては、アクリル酸低級アルコキシ、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
メタクリル酸アルキルの含有率は、耐熱性の点から、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは85〜99.9質量%、更に好ましくは92〜99.9質量%である。
アクリル酸アルキルの含有率は、耐熱性の点から、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、更に好ましくは0.1〜8質量%である。
これらと共重合可能な二重結合を有する他の単量体の含有率は、耐熱性の点で、好ましくは0〜49質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜3質量%である。
アクリル酸アルキルの含有率は、耐熱性の点から、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、更に好ましくは0.1〜8質量%である。
これらと共重合可能な二重結合を有する他の単量体の含有率は、耐熱性の点で、好ましくは0〜49質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜3質量%である。
熱可塑性重合体(C−1)の重合方法としては、例えば、懸濁重合法、乳化重合法及び塊状重合法が挙げられる。熱可塑性重合体(C−1)の質量平均分子量は、好ましくは5000〜200000であり、より好ましくは30000〜170000である。尚、熱可塑性重合体(C−1)の質量平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフ(GPC)を用いて以下の条件により測定したものである。
<GPC測定条件>
使用機器:東ソー(株)製HLC−8320GPCシステム
カラム:TGKgel SupaerHZM−H(東ソー(株)製、商品名)2本
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率(RI)
<GPC測定条件>
使用機器:東ソー(株)製HLC−8320GPCシステム
カラム:TGKgel SupaerHZM−H(東ソー(株)製、商品名)2本
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率(RI)
熱可塑性重合体(C−1)としては市販品を用いることができる。かかる市販品としては、例えば、三菱レイヨン製「アクリペットVH」、「アクリペットMD」、「アクリペットMF」(商品名)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂(C)中の熱可塑性重合体(C−1)の含有率は、耐薬品性の観点から好ましくは0〜40質量%であり、より好ましくは0〜30質量%である。
[ゴム含有重合体(α)]
ゴム含有重合体(α)は、好ましくはアクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキル、例えば、熱可塑性重合体(C−1)の説明で例示したアクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキル60〜99.99質量%と、必要に応じて用いる共重合可能な二重結合を有する他の単量体0〜39.99質量%と、必要に応じて用いる多官能性単量体0〜7質量%と、グラフト交叉剤0.01〜3.5質量%とを構成成分としてなる重合体である。
共重合可能な二重結合を有する他の単量体の具体例としては、アクリル酸低級アルコキシ、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。
多官能性単量体の具体例としては、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンが挙げられる。
グラフト交叉剤の具体例としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリルまたはクロチルエステルが挙げられる。
ゴム含有重合体(α)は、好ましくはアクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキル、例えば、熱可塑性重合体(C−1)の説明で例示したアクリル酸アルキル及び/又はメタクリル酸アルキル60〜99.99質量%と、必要に応じて用いる共重合可能な二重結合を有する他の単量体0〜39.99質量%と、必要に応じて用いる多官能性単量体0〜7質量%と、グラフト交叉剤0.01〜3.5質量%とを構成成分としてなる重合体である。
共重合可能な二重結合を有する他の単量体の具体例としては、アクリル酸低級アルコキシ、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。
多官能性単量体の具体例としては、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジメタクリル酸プロピレングリコール、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンが挙げられる。
グラフト交叉剤の具体例としては、共重合性のα,β−不飽和カルボン酸またはジカルボン酸のアリル、メタリルまたはクロチルエステルが挙げられる。
熱可塑性樹脂(C)中のゴム含有重合体(α)の含有率は、耐薬品性の観点から好ましくは0〜40質量%であり、より好ましくは0〜30質量%である。
[水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)]
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)とは、炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル1〜80質量%、炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル20〜99質量%及び炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル0〜79質量%を含有する単量体成分を共重合して得られる水酸基含有重合体であり、かつ架橋剤単量体単位やグラフト交叉剤単量体単位等の多官能性単量体単位を含まない非架橋のアクリル樹脂をいう。尚、(メタ)アクリルは、メタクリル又はアクリルを意味する。本発明では、この水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)を使用することにより、得られる艶消し熱可塑性樹脂フィルムの伸度をフッ素樹脂の伸度と比べてほとんど低下しないようにすることができる。その結果、本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムは、二次加工時にフィルム切れ等が起こりにくくなる。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)とは、炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル1〜80質量%、炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル20〜99質量%及び炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキル0〜79質量%を含有する単量体成分を共重合して得られる水酸基含有重合体であり、かつ架橋剤単量体単位やグラフト交叉剤単量体単位等の多官能性単量体単位を含まない非架橋のアクリル樹脂をいう。尚、(メタ)アクリルは、メタクリル又はアクリルを意味する。本発明では、この水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)を使用することにより、得られる艶消し熱可塑性樹脂フィルムの伸度をフッ素樹脂の伸度と比べてほとんど低下しないようにすることができる。その結果、本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムは、二次加工時にフィルム切れ等が起こりにくくなる。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)を構成する炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及びアクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併用して使用できる。中でも、艶消し発現性が優れる点で、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが特に好ましい。
単量体成分100質量%中の炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルの含有率は1〜80質量%である。この含有率を通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%とすることにより、本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムの艶消し効果(艶消し性及び外観)が良好となる。また、この含有率を通常80質量%以下、好ましくは50質量%以下とすることにより、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)粒子の分散性がより良好となり、艶消し熱可塑性樹脂フィルム中の水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の未分散の粒子が存在することを抑制し、製膜性が良好となる。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)を構成する炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル及びメタクリル酸t−ブチルが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併用して使用できる。中でも、耐候性の点で、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
単量体成分100質量%中の炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルの含有率は、耐候性の点で、通常20質量%以上、好ましくは30質量%以上である。また、その含有率は艶消し発現性の点で、99質量%以下、好ましくは90質量%以下である。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)を構成する炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併用して使用できる。
単量体成分100質量%中の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルの含有率は0質量%でもよいが、非架橋のアクリル樹脂(B)の分散性の点で、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、その含有率は耐候性、耐熱性の点で、通常79質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)(単位:℃)は、本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムの艶消し発現性や、艶消し熱可塑性樹脂フィルム中での水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)粒子の分散性の点で、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。Tgを考慮すると、単量体成分中の炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルの含有率は、0.5〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)のTgは、各単量体成分の単独重合体のガラス転移温度の値(ポリマーハンドブック[Polymer Handbook, J. Brandrup, Interscience, 1989]に記載されているもの)を用いて下記式(1)で示されるFOXの式から算出される。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の固有粘度は、本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルム中での水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の分散性を良好とし、艶消し熱可塑性樹脂フィルム中の水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の未溶融成分を低減して、本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムの外観を良好とする点で、0.3L/g以下が好ましく、0.12L/g以下がより好ましい。また、その固有粘度は、本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムの艶消し性を良好とする点で、0.01L/g以上が好ましい。尚、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の固有粘度は、サン電子工業製AVL−2C自動粘度計を使用して、溶媒にはクロロホルムを用い、25℃で測定して得られる値を示す。
非架橋のアクリル樹脂(B)の固有粘度を調節する為に、例えば、メルカプタン等の重合調節剤を用いることができる。メルカプタンとしては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン及びt−ドデシルメルカプタンが挙げられる。メルカプタンの含有量は、特に限定されるものではないが、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)を構成する単量体100質量部に対し、分散性の点で0.01質量部以上が好ましい。また、艶消し性を良好とする点で1質量部以下が好ましい。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)のMw(質量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は、2.2以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。このMw/Mnが小さい程、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の分子量分布は単分散に近くなるため、高分子量成分が減少し、本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム中にフィッシュアイ等の外観不良の原因となる未溶融物の発生が抑制される。尚、Mw/MnはGPCを用いて以下の条件で測定して得られる値を示す。
<GPC測定条件>
使用機器:東ソー(株)製HLC−8320GPCシステム
カラム:TGKgel SupaerHZM−H(東ソー(株)製、商品名)2本
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率(RI)
<GPC測定条件>
使用機器:東ソー(株)製HLC−8320GPCシステム
カラム:TGKgel SupaerHZM−H(東ソー(株)製、商品名)2本
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折率(RI)
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の製造方法としては、例えば、懸濁重合及び乳化重合が挙げられる。
懸濁重合に使用される重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の含有量は、炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルの合計100質量部に対して0.1質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。懸濁安定剤としては、例えば、有機コロイド性高分子物質、無機コロイド性高分子物質、無機微粒子及びこれらと界面活性剤とを組み合わせたものが挙げられる。中でも、有機系の懸濁安定剤が好ましく、例えば、特開平1−168,702号公報に開示されているメタクリル酸メチルとメタクリル酸カリウムの共重合体及びメタクリル酸メチルとメタクリル酸カリウムとメタクリル酸2−スルフォエチルナトリウム塩との共重合体が挙げられる。無機系の懸濁安定剤を使用する場合は、洗浄等の重合後処理により除去できるものが好ましく、例えば、第三リン酸カルシウムが挙げられる。懸濁安定剤の含有量は特に限定はされないが、懸濁重合を安定させる点で、炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルの合計100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましい。また、経済性の点で10質量部以下であることが好ましい。
懸濁重合に使用される重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の含有量は、炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルの合計100質量部に対して0.1質量部以上1.0質量部以下であることが好ましい。懸濁安定剤としては、例えば、有機コロイド性高分子物質、無機コロイド性高分子物質、無機微粒子及びこれらと界面活性剤とを組み合わせたものが挙げられる。中でも、有機系の懸濁安定剤が好ましく、例えば、特開平1−168,702号公報に開示されているメタクリル酸メチルとメタクリル酸カリウムの共重合体及びメタクリル酸メチルとメタクリル酸カリウムとメタクリル酸2−スルフォエチルナトリウム塩との共重合体が挙げられる。無機系の懸濁安定剤を使用する場合は、洗浄等の重合後処理により除去できるものが好ましく、例えば、第三リン酸カルシウムが挙げられる。懸濁安定剤の含有量は特に限定はされないが、懸濁重合を安定させる点で、炭素数1〜8の水酸基含有アルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと炭素数1〜13のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルと炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルの合計100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましい。また、経済性の点で10質量部以下であることが好ましい。
通常、懸濁重合は懸濁安定剤の存在下に単量体等を重合開始剤と共に水性懸濁したものを使用して行われる。また、必要に応じて懸濁重合する際に単量体に可溶な重合体を単量体に溶解して重合することができる。懸濁重合後には、懸濁重合により得られるビーズ状物から、外観不良の原因となる、重合中に発生するクロロホルムに不溶な成分であるカレットを、篩別によって除去することが好ましい。篩別で使用される篩としては、充分な収率を確保する場合、150メッシュ以下が好ましく、50メッシュ以下がより好ましい。また、カレットを充分除去する場合には、50メッシュ以上が好ましく、150メッシュ以上がより好ましい。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)中には、300μm以上のカレットを含まない様にすることが好ましく、100μm以上のカレットを含まない様にすることがより好ましい。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)中には、300μm以上のカレットを含まない様にすることが好ましく、100μm以上のカレットを含まない様にすることがより好ましい。
無機系懸濁安定剤を用いて重合する場合には、得られる本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム中のフィッシュアイの発生を抑制して印刷抜けを抑制するために、懸濁重合で得られた水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)のビーズ状物を水洗浄して水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)中の無機物の含有量を低減させることが好ましい。この水洗浄の方法としては、例えば、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)のビーズ状物に硝酸等の洗浄液を加えて分散させた後に固液分離する分散洗浄法、及び、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)のビーズ状物に洗浄液を通過させる通過洗浄法が挙げられる。洗浄温度は、洗浄効率の点で、10〜90℃が好ましい。
上述したような重合終了後の篩別や水洗浄等の後処理において、製品収率を低下させることなく篩別によりカレットを効率的に取除くために、また洗浄により効率的に無機物を除去するために、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の平均粒子径は300μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。また、その平均粒子径は、重合体の取扱性の点で10μm以上が好ましい。尚、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の平均粒子径は、HORIBA(株)製のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置LA−910を用いて測定した値を示す。
[フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)]
本発明では、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤を艶消し熱可塑性樹脂に含有する。このリン系酸化防止剤がフェニル基を有し且つ融点が220℃以下であれば、フィルム製造時の熱履歴による艶消し熱可塑性樹脂の熱劣化が抑制され、外観の良好なフィルムを得ることができる。また、このリン系酸化防止剤に含まれるフェニル基の個数は、フィルム製造時の熱履歴による艶消し熱可塑性樹脂の熱劣化抑制の観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、このリン系酸化防止剤の融点は、同じ観点から、210℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。
本発明では、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤を艶消し熱可塑性樹脂に含有する。このリン系酸化防止剤がフェニル基を有し且つ融点が220℃以下であれば、フィルム製造時の熱履歴による艶消し熱可塑性樹脂の熱劣化が抑制され、外観の良好なフィルムを得ることができる。また、このリン系酸化防止剤に含まれるフェニル基の個数は、フィルム製造時の熱履歴による艶消し熱可塑性樹脂の熱劣化抑制の観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、このリン系酸化防止剤の融点は、同じ観点から、210℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。
フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)としては、市販品を用いることができる。かかる市販品としては、例えば、Irgafos168、Irgafos168FF(以上いずれも商品名、BASFジャパン(株)製)を挙げることができる。
[フェノール系酸化防止剤(F)]
本発明では、酸化防止剤として、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)に加えて、フェノール系酸化防止剤(F)を含有することが、製造する際に安定的な艶消し発現を可能とする観点から好ましい。フェノール系酸化防止剤(F)としては、市販品を用いることができる。かかる市販品としては、例えば、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−80(以上いずれも商品名、(株)ADEKA製)、Irganox1010、Irganox1035、Irganox1076(以上いずれも商品名、BASFジャパン(株)製)を挙げることができる。
本発明では、酸化防止剤として、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)に加えて、フェノール系酸化防止剤(F)を含有することが、製造する際に安定的な艶消し発現を可能とする観点から好ましい。フェノール系酸化防止剤(F)としては、市販品を用いることができる。かかる市販品としては、例えば、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−80(以上いずれも商品名、(株)ADEKA製)、Irganox1010、Irganox1035、Irganox1076(以上いずれも商品名、BASFジャパン(株)製)を挙げることができる。
[艶消し熱可塑性樹脂フィルム]
本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、前述した水酸基非含有熱可塑性樹脂(C)、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)及びフェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)、好ましくはフェノール系酸化防止剤(F)を含有するフィルムである。また、本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルムには、必要に応じて、各種添加剤を配合することもできる。
本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、前述した水酸基非含有熱可塑性樹脂(C)、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)及びフェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)、好ましくはフェノール系酸化防止剤(F)を含有するフィルムである。また、本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルムには、必要に応じて、各種添加剤を配合することもできる。
熱可塑性樹脂(C)の含有率は、艶消し熱可塑性樹脂の粘度を押出成形に好適な粘度とする観点から70質量%以上、艶消し熱可塑性樹脂フィルム又は艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムに良好な艶消し外観を付与する観点から99質量%以下であることが好ましく、80質量%以上、98質量%以下であることがより好ましい。
水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の含有率は、艶消し熱可塑性樹脂フィルム又は艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムに良好な艶消し外観を付与する観点から1質量%以上、艶消し熱可塑性樹脂の粘度を押出成形に好適な粘度とする観点から30質量%以下であることが好ましく、2質量%以上、20質量%以下であることがより好ましい。
フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)の含有量は、熱可塑性樹脂(C)及び水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることがより好ましい。
フェノール系酸化防止剤(F)の含有量は、熱可塑性樹脂(C)及び水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましい。
各種添加剤の具体例として、(P)成分及び(F)成分以外の酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、艶消し剤、加工助剤、耐衝撃助剤、抗菌剤、防カビ剤、発泡剤、離型剤、着色剤、紫外線吸収剤及び熱可塑性重合体等の各種添加剤が挙げられる。
(P)成分及び(F)成分以外の酸化防止剤としては、例えば、(P)成分以外のリン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
(P)成分以外のリン系酸化防止剤としては、アデカスタブPEP−36、アデカスタブPEP−8(以上いずれも商品名、(株)ADEKA製)、JP−333E、JP−312L(以上いずれも商品名、城北化学工業(株)製)等が挙げられる。(P)成分以外のリン系酸化防止剤を用いる場合、その含有量は、(P)成分100質量部に対し、好ましくは20質量部以下である。
熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤、硫黄系熱安定剤及びヒドラジン系熱安定剤が挙げられる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、オキシ安息香酸エステル、エポキシ化合物及びポリエステルが挙げられる。滑剤としては、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、高級アルコール及びパラフィンが挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤及び両イオン系帯電防止剤が挙げられる。これら添加剤はそれぞれ単独で、又は二種以上を併用して使用できる。
添加剤を配合する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂(C)、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)、及びフェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)と共に各種混練機にて混練する方法が挙げられる。この方法で使用される混練機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリミキサー及びロール混練機が挙げられる。また、熱可塑性樹脂(C)、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)、及びフェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)を混練する回数は特に限定されず、1度又はマスターバッチ化による多段階混練することができる。艶消し熱可塑性樹脂の形状としては、例えば、塊状物、粉体状物及びペレット状物が挙げられる。これらの中で、樹脂組成物の取扱い性の点で、ペレット状物が好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムを艶消し熱可塑性樹脂フィルムとすることで、このフィルムを用いた成形体の表面に、艶消し外観及び耐薬品性等の性能を付与することが可能となる。
本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、きめの細かい艶消し性及び耐薬品性が付与されたフィルムである。
本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、きめの細かい艶消し性及び耐薬品性が付与されたフィルムである。
本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、60度表面光沢度が5〜80%であることが好ましい。60度表面光沢度を5〜80%の範囲内とすることで、フィルムの外観が良好な艶消し外観と認識できるため好ましい。より好ましくは7〜65%の範囲内である。
艶消し熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、フィルムの取扱い性、ラミネート性並びにフィルム状に成形する際の製膜性及び加工性の観点から、5〜500μmの範囲内であることが好ましく、15〜300μmの範囲内であることがより好ましく、30〜300μmの範囲内であることが更に好ましい。
艶消し熱可塑性樹脂フィルムの光の透過率としては、JIS K7361−1に準拠して測定した全光線透過率が80%以上であることが好ましい。艶消し熱可塑性樹脂フィルムが80%以上の全光線透過率を有することで、フィルムに印刷された加飾層を、加飾層が印刷されていない面から視認した際の加飾層の美麗さの観点から好ましい。より好ましくは83%以上、更に好ましくは85%以上である。
艶消し熱可塑性樹脂フィルムのヘーズとしては、全光線透過率が80%以上であれば特に制限されないが、艶消しフィルムの外観の美麗さの観点から90%以下であることが好ましい。より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。
艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、230℃、5000g荷重及び保持時間4分の条件でのメルトフローレート(MFR)を100%とした場合、230℃、5000g荷重及び保持時間20分の条件でのメルトフローレート(MFR)が70%以上であることが製造する際に安定的な艶消し発現を可能とする観点から好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましい。
艶消し熱可塑性樹脂フィルムの製造法としては、例えば、溶融流延法、Tダイ法、インフレーション法等の溶融押出法及びカレンダー法が挙げられるが、経済性の点でTダイ法が好ましい。
艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、押出機等を用いたTダイ法で製膜した後、巻き取り機で紙管等の管状物に巻き取って、ロール状物品とすることができる。また、必要に応じて製膜工程中に、公知の延伸方法による一軸延伸(機械方向又は横方向(機械方向に垂直な方向))、二軸延伸(逐次二軸延伸、同時二軸延伸)等の延伸工程を設けることができる。
艶消し熱可塑性樹脂フィルムを溶融押出法で製造する場合は、外観不良の原因となる核や異物を取り除く為に、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある樹脂組成物を濾過しながら押出しすることが好ましい。
艶消し熱可塑性樹脂フィルムを溶融押出法で製造する場合は、外観不良の原因となる核や異物を取り除く為に、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある樹脂組成物を濾過しながら押出しすることが好ましい。
艶消し熱可塑性樹脂フィルム表面には、必要に応じて、微細構造を形成することもできる。微細構造を形成する方法としては、例えば、熱転写法及びエッチング法が挙げられる。これらの中でも、微細構造を有する金型を加熱した後に、フィルムの表面に、加熱された金型をプレスして、フィルムの表面に微細構造を形成する熱転写法が生産性や経済性の点で好ましい。
上記の熱転写法としては、例えば、微細構造を有する金型をロール状物品から切り出された艶消し熱可塑性樹脂フィルムに加熱プレスして微細構造を枚葉で熱転写させる方法及び加熱されたベルト状の微細構造を有する金型にニップロールを用いてロール状物品から巻き出された艶消し熱可塑性樹脂フィルムを挟みこみ加圧し、艶消し熱可塑性樹脂フィルムの表面に微細構造を熱転写させる連続賦形方法が挙げられる。
上記の微細構造を有する金型を作製する方法としては、例えば、サンドブラスト法、エッチング法及び放電加工法が挙げられる。
上記の微細構造を有する金型を作製する方法としては、例えば、サンドブラスト法、エッチング法及び放電加工法が挙げられる。
艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、そのフィルム同士を積層するだけでなく、他の基材に積層することもできる。
[艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシート]
本発明の艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートは、前述した艶消し熱可塑性樹脂をフィルム状に成形してなる艶消し熱可塑性樹脂フィルムに、該艶消し熱可塑性樹脂フィルムと異なる樹脂組成の熱可塑性樹脂層を積層した積層フィルム又は積層シートである。該艶消し熱可塑性樹脂フィルムと異なる樹脂組成の熱可塑性樹脂層としてはアクリル樹脂フィルムであることが好ましい。艶消し熱可塑性樹脂フィルムにアクリル樹脂フィルムを積層することで、該積層フィルムの成形性や加飾層の視認性が向上するため好ましい。艶消し熱可塑性樹脂フィルムと異なる樹脂組成の熱可塑性樹脂層としては、アクリル樹脂フィルム以外にも、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂等のその他の樹脂からなるフィルムを用いることもできる。尚、本発明において、フィルムは、厚さが250μm未満の膜状のものを意味し、シートは、厚さ250μm以上の薄い板状のものを意味する。
本発明の艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートは、前述した艶消し熱可塑性樹脂をフィルム状に成形してなる艶消し熱可塑性樹脂フィルムに、該艶消し熱可塑性樹脂フィルムと異なる樹脂組成の熱可塑性樹脂層を積層した積層フィルム又は積層シートである。該艶消し熱可塑性樹脂フィルムと異なる樹脂組成の熱可塑性樹脂層としてはアクリル樹脂フィルムであることが好ましい。艶消し熱可塑性樹脂フィルムにアクリル樹脂フィルムを積層することで、該積層フィルムの成形性や加飾層の視認性が向上するため好ましい。艶消し熱可塑性樹脂フィルムと異なる樹脂組成の熱可塑性樹脂層としては、アクリル樹脂フィルム以外にも、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂等のその他の樹脂からなるフィルムを用いることもできる。尚、本発明において、フィルムは、厚さが250μm未満の膜状のものを意味し、シートは、厚さ250μm以上の薄い板状のものを意味する。
本発明の艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートを製造する為の方法としては、従来から知られる各種の方法を用いることができる。例えば、フィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイ等を介した共押出成形法で艶消し熱可塑性樹脂とアクリル樹脂の積層構造を形成する方法や、艶消し熱可塑性樹脂とアクリル樹脂を夫々Tダイを用いた溶融押出し法等によりフィルム状に成形して、その2種のフィルムを熱ラミネート法により積層する方法がある。また、艶消し熱可塑性樹脂をフィルム状にし、その後アクリル樹脂を溶融押出し法により積層する押出しラミネーション法等でもよい。この場合、艶消し熱可塑性樹脂とアクリル樹脂を入れ替えて製造してもよい。本発明の艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートの製造方法としては、特に経済性及び工程簡略化の観点から、共押出成形法により艶消し熱可塑性樹脂(以下、「フッ素樹脂層」ともいう)及びアクリル樹脂層の積層構造を形成することが好ましい。具体的には、例えば、上述したようなフィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイを介した共押出成形法が特に好ましい。
また、例えば、特開2002−361712号公報に記載されているように、フィードブロックダイ又はマルチマニホールドダイ等を介した共押出成形法によりフッ素樹脂層及びアクリル樹脂層の積層構造を形成する際、鏡面ロールとゴムロールで挟持して製造する方法も好ましい。この方法は、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムを構成するアクリル樹脂層側が鏡面ロールに接するようにした場合、アクリル樹脂層が積層されている側の鏡面平滑性がさらに優れ、その結果優れた印刷適性の付与が可能となるので好ましい。また、フッ素樹脂層側はゴムロールに接するようにするのが好ましい。この場合、フッ素樹脂層の表面光沢度を上げることなく(つまり、良好な艶消し度合いを保持しつつ)、アクリル樹脂層側の鏡面平滑性を向上でき、工業的利用価値が高い。ゴムロールは特に限定されないが、耐熱性の観点からシリコーン製ゴムロールが好ましい。シリコーン製ゴムロールの表面仕上げには、公知の加工方法を使用できる。ただし、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムの表面外観と、最終的にインサート成形或いはインモールド成形により得られる積層体の表面外観との合致性の観点から、室温硬化型シリコーンゴムを最表面に塗布仕上げすることで製造したゴムロールが好ましい。
艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートを構成するフッ素樹脂層とアクリル樹脂層はそれぞれ複数層から構成されていてもよい。
各々の層を溶融押出法で製造する場合は、印刷抜けの原因となる核や異物を取り除く為に、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある各々の層を構成する樹脂組成物を濾過しながら押出しすることが好ましい。
各々の層を溶融押出法で製造する場合は、印刷抜けの原因となる核や異物を取り除く為に、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にある各々の層を構成する樹脂組成物を濾過しながら押出しすることが好ましい。
艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートの厚さは500μm以下が好ましい。積層成形品に用いるフィルム又はシートの場合は、その厚さは30〜400μmが好ましい。この厚さが30μm以上であると、成形品外観において充分な深みが得られる。また特に、複雑な形状に成形する場合、延伸によって充分な厚さが得られる。厚さが400μm以下であると、適度な剛性を有することになるので、ラミネート性、二次加工性等が向上する。また、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利になる。さらには、製膜性が安定してフィルム又はシートの製造が容易になる。
艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートの艶消し熱可塑性樹脂層とアクリル樹脂層の厚さの比率は、特に制限されないが、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートの耐溶剤性、コスト、表面硬度、透明性、艶消し外観及び印刷適性の観点から、艶消し熱可塑性樹脂層/アクリル樹脂層=1/99〜20/80が好ましく、2/98〜15/85がより好ましく、3/97〜10/90が更に好ましい。
艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートは、60度表面光沢度が5〜80%であることが好ましい。60度表面光沢度を5〜70%の範囲内とすることで、フィルムの外観が良好な艶消し外観と認識できるため好ましい。より好ましくは7〜65%の範囲内である。
艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートの光の透過率としては、JIS K7361−1に準拠して測定した全光線透過率が80%以上であることが好ましい。80%以上の全光線透過率を有することで、フィルム又はシートに印刷された加飾層を、加飾層が印刷されていない面から視認した際の加飾層の美麗さの観点から好ましい。より好ましくは83%以上、更に好ましくは85%以上である。
艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートのヘーズとしては、全光線透過率が80%以上であれば特に制限されないが、艶消し熱可塑性樹脂フィルム又はシートの外観の美麗さの観点から90%以下であることが好ましい。より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。
また、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートには微細構造を形成することもできる。この微細構造は艶消し熱可塑性樹脂フィルムのところで説明した方法と同様の方法で形成することができる。
また、艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートには微細構造を形成することもできる。この微細構造は艶消し熱可塑性樹脂フィルムのところで説明した方法と同様の方法で形成することができる。
[積層体]
本発明の積層体は、前述した艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートに、基材を積層したものである。積層体製造に使用する基材の材料としては、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。また基材の形状としては、特に制限されないが、例えば、フィルム、シート及び三次元形状を有する成形品等といった形状の基材を用いることができる。
本発明の積層体は、前述した艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム又はシートに、基材を積層したものである。積層体製造に使用する基材の材料としては、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。また基材の形状としては、特に制限されないが、例えば、フィルム、シート及び三次元形状を有する成形品等といった形状の基材を用いることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を説明する。以下の記載において、「部」は「質量部」を表す。また、艶消し熱可塑性樹脂組成物及び各積層フィルムの評価は下記の方法で行った。尚、以下の記載における略号は次の通りである。
「MMA」:メタクリル酸メチル
「MA」:アクリル酸メチル
「n−BA」:アクリル酸n−ブチル
「St」:スチレン
「AMA」:メタクリル酸アリル
「1,3−BD」:ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール
「CHP」:クメンハイドロパーオキサイド
「t−BH」:t−ブチルハイドロパーオキサイド
「EDTA」:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
「n−OM」:n−オクチルメルカプタン
「RS610NA」:乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名:「フォスファノールRS610NA」)
「MMA」:メタクリル酸メチル
「MA」:アクリル酸メチル
「n−BA」:アクリル酸n−ブチル
「St」:スチレン
「AMA」:メタクリル酸アリル
「1,3−BD」:ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール
「CHP」:クメンハイドロパーオキサイド
「t−BH」:t−ブチルハイドロパーオキサイド
「EDTA」:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
「n−OM」:n−オクチルメルカプタン
「RS610NA」:乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名:「フォスファノールRS610NA」)
(1)積層フィルムの光学特性(全光線透過率及びヘーズ)
積層フィルムの全光線透過率及びヘーズを以下の条件で測定した。
全光線透過率はJIS K7361−1に準拠し、ヘーズはJIS K7136に準拠して、日本電色工業(株)製のヘーズメーターNDH2000を用いて測定した。
積層フィルムの全光線透過率及びヘーズを以下の条件で測定した。
全光線透過率はJIS K7361−1に準拠し、ヘーズはJIS K7136に準拠して、日本電色工業(株)製のヘーズメーターNDH2000を用いて測定した。
(2)60度表面光沢度測定
JIS Z8741に準じ、ポータブル光沢計(コニカミノルタセンシング(株)製、商品名:GM−268)を用い、積層フィルムの艶消し熱可塑性樹脂層側の幅方向の中心の60度表面光沢度を測定した。
JIS Z8741に準じ、ポータブル光沢計(コニカミノルタセンシング(株)製、商品名:GM−268)を用い、積層フィルムの艶消し熱可塑性樹脂層側の幅方向の中心の60度表面光沢度を測定した。
(3)積層フィルム製造時の外観評価
目視観察により、積層フィルムの外観を下記の基準で評価した。
○:艶消しが均一に発現している
×:艶消しが斑になっている又はメルトフラクチャが発生している
目視観察により、積層フィルムの外観を下記の基準で評価した。
○:艶消しが均一に発現している
×:艶消しが斑になっている又はメルトフラクチャが発生している
(4)耐薬品性
積層フィルムのフッ素樹脂層側の表面にジョンソンエンドジョンソン社製の日焼け止め(商品名:「ニュートロジーナSPF45」)を1.5g/100cm2で塗布した後、日焼け止めを塗布したフィルム(試験片)を、80℃に保持した恒温槽に入れ24時間放置した。試験後、試験片を水洗・風乾し、試験片の表面を目視観察により下記の基準で評価し耐薬品性の評価とした。
・評価基準
○:試料表面に変化はない。
△:試料表面に僅かに日焼け止めの痕が残っている。
×:試料表面に日焼け止めが固着している又は日焼け止めが接触した面が白濁している。
積層フィルムのフッ素樹脂層側の表面にジョンソンエンドジョンソン社製の日焼け止め(商品名:「ニュートロジーナSPF45」)を1.5g/100cm2で塗布した後、日焼け止めを塗布したフィルム(試験片)を、80℃に保持した恒温槽に入れ24時間放置した。試験後、試験片を水洗・風乾し、試験片の表面を目視観察により下記の基準で評価し耐薬品性の評価とした。
・評価基準
○:試料表面に変化はない。
△:試料表面に僅かに日焼け止めの痕が残っている。
×:試料表面に日焼け止めが固着している又は日焼け止めが接触した面が白濁している。
(5)艶消し熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレートの測定
艶消し熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて、以下の条件で艶消し熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレートを測定し、230℃、5000g荷重及び保持時間4分の条件でのメルトフローレート(MFR)を100%とした場合の230℃、5000g荷重及び保持時間20分の条件でのメルトフローレートの比率(MFR保持率(%))を求めた。
装置:東芝機械(株)製 二軸混練押出機 TEM−35B
炉内温度:230℃
荷重:5000g
保持時間:4分,20分
艶消し熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて、以下の条件で艶消し熱可塑性樹脂組成物のメルトフローレートを測定し、230℃、5000g荷重及び保持時間4分の条件でのメルトフローレート(MFR)を100%とした場合の230℃、5000g荷重及び保持時間20分の条件でのメルトフローレートの比率(MFR保持率(%))を求めた。
装置:東芝機械(株)製 二軸混練押出機 TEM−35B
炉内温度:230℃
荷重:5000g
保持時間:4分,20分
[調製例1]
<水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)>
攪拌機、還流冷却器及び窒素ガス導入口の付いた反応容器に以下の単量体混合物(1)を仕込んだ。
・単量体混合物(1)
MA :1部
MMA :79部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:20部
t−ドデシルメルカプタン:0.5部
ラウリルパーオキサイド:1部
第三リン酸カルシウム:5部
水:250部
<水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)>
攪拌機、還流冷却器及び窒素ガス導入口の付いた反応容器に以下の単量体混合物(1)を仕込んだ。
・単量体混合物(1)
MA :1部
MMA :79部
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル:20部
t−ドデシルメルカプタン:0.5部
ラウリルパーオキサイド:1部
第三リン酸カルシウム:5部
水:250部
次いで、反応容器内を充分に窒素ガスで置換した後、反応容器内の単量体混合物(1)を攪拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で3時間反応させた。この後、反応容器内の温度を90℃に昇温して、更に45分保持して重合体のビーズを得た。得られた重合体のビーズを150メッシュ(目開き100μm)の条件で篩別を行い、通過したビーズを脱水、乾燥して水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)のビーズを得た。水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)のTgは77℃、固有粘度は0.11L/g、Mw/Mnは2.1、体積平均粒子径は70μmであった。
[調製例2]
<ゴム含有重合体(α’)>
攪拌機を備えた容器に脱イオン水 10.8部を仕込んだ後、MMA 0.3部、n−BA 4.5部、1,3−BD 0.2部、AMA 0.05部及びCHP 0.025部からなる単量体成分(α’−1−1)を投入し、室温下にて攪拌混合した。次いで、攪拌しながらRS610NA 1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水 186.5部を投入し、70℃に昇温した。さらに、イオン交換水 5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.20部、硫酸第一鉄 0.0001部及びEDTA 0.0003部を加えて調製した混合物を、重合容器内に一度に投入した。次いで、混合物を窒素下で攪拌しながら、調製した乳化液を8分間にわたって重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、単量体成分(α’−1−1)からなるゴム重合体(α’1−1)を得た。
続いて、以下に示すMMA 9.6部、n−BA 14.4部、AMA0.25部、1,3−BD 1.0部及びCHP 0.016部からなる単量体成分(α’−1−2)を、90分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、単量体成分(α’−1−2)からなるゴム重合体(α’1−2)を得た。
続いて、MMA 6部、MA 4部、AMA 0.075部及びCHP 0.0125部からなる単量体成分(α’−2−1)を、45分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体(α’2−1)を得た。
続いて、MMA 57部、MA 3部、n−OM 0.264部及びt−BH 0.075部からなる単量体成分(α’−2−2)を、140分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体(α’2−2)を得ることで、ゴム含有重合体(α’)の重合体ラテックスを得た。
得られたゴム含有重合体(α’)の重合体ラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、酢酸カルシウム 3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収し、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(α’)を得た。
ゴム含有重合体(α’)の組成は表1にまとめた。
<ゴム含有重合体(α’)>
攪拌機を備えた容器に脱イオン水 10.8部を仕込んだ後、MMA 0.3部、n−BA 4.5部、1,3−BD 0.2部、AMA 0.05部及びCHP 0.025部からなる単量体成分(α’−1−1)を投入し、室温下にて攪拌混合した。次いで、攪拌しながらRS610NA 1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して乳化液を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水 186.5部を投入し、70℃に昇温した。さらに、イオン交換水 5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.20部、硫酸第一鉄 0.0001部及びEDTA 0.0003部を加えて調製した混合物を、重合容器内に一度に投入した。次いで、混合物を窒素下で攪拌しながら、調製した乳化液を8分間にわたって重合容器に滴下した後、15分間反応を継続させ、単量体成分(α’−1−1)からなるゴム重合体(α’1−1)を得た。
続いて、以下に示すMMA 9.6部、n−BA 14.4部、AMA0.25部、1,3−BD 1.0部及びCHP 0.016部からなる単量体成分(α’−1−2)を、90分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、単量体成分(α’−1−2)からなるゴム重合体(α’1−2)を得た。
続いて、MMA 6部、MA 4部、AMA 0.075部及びCHP 0.0125部からなる単量体成分(α’−2−1)を、45分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体(α’2−1)を得た。
続いて、MMA 57部、MA 3部、n−OM 0.264部及びt−BH 0.075部からなる単量体成分(α’−2−2)を、140分間にわたって重合容器に滴下した後、60分間反応を継続させ、重合体(α’2−2)を得ることで、ゴム含有重合体(α’)の重合体ラテックスを得た。
得られたゴム含有重合体(α’)の重合体ラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:62μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、酢酸カルシウム 3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収し、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(α’)を得た。
ゴム含有重合体(α’)の組成は表1にまとめた。
[調製例3]
<ゴム含有重合体(α’’)>
窒素雰囲気下、攪拌機及び還流冷却器を備えた反応容器内に脱イオン水 204部を入れ、80℃に昇温し、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.25部、硫酸第一鉄 0.0001部及びEDTA 0.0003部を添加した。
次いで、反応容器内の液体を撹拌しながら、MMA 11.2部、n−BA 12.4部、St 1.2部、AMA 0.1部、1,3−BD 0.7部、t−BH 0.04部及びRS610NA 0.7部からなる単量体成分(α’’−1−1)の1/10を仕込み、15分間保持した。
更に、単量体成分(α’’−1−1)の残り(9/10)を水に対する単量体混合物の増加率が8%/時間となるように連続的に添加した後に1時間保持して、ゴム重合体(α’’1−1)の重合体ラテックスを得た。
続いて、ゴム重合体(α’’1−1)の重合体ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.12部を加え、15分間保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、n−BA 30.7部、St 6.5部、AMA 0.65部、1,3−BD 0.1部、CHP 0.11部及びRS610NA 0.59部からなる単量体成分(α’’−1−2)を水に対する単量体成分の増加率が4%/時間となるように連続的に添加した後に120分間保持して、ゴム重合体(α’’1−2)を形成させて、ゴム重合体(α’’1−1)と(α’’1−2)からなるゴム重合体(α’’1)の重合体ラテックスを得た。
次いで、ゴム重合体(α’’1)の重合体ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.12部を加え、15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、MMA 35.3部、MA 1.9部、n−OM 0.11部及びt−BH 0.06部からなる単量体成分(α’’−2)を、水に対する単量体混成分の増加率が10%/時間となるように連続的に添加した後に1時間保持して、重合体(α’’2)を形成させて、ゴム含有重合体(α’’)の重合体ラテックスを得た。
得られたゴム含有重合体(α’’)の重合体ラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:150μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、脱イオン水 306部に酢酸カルシウム 3部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(α’’)を得た。
ゴム含有重合体(α’’)の組成は表1にまとめた。
<ゴム含有重合体(α’’)>
窒素雰囲気下、攪拌機及び還流冷却器を備えた反応容器内に脱イオン水 204部を入れ、80℃に昇温し、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.25部、硫酸第一鉄 0.0001部及びEDTA 0.0003部を添加した。
次いで、反応容器内の液体を撹拌しながら、MMA 11.2部、n−BA 12.4部、St 1.2部、AMA 0.1部、1,3−BD 0.7部、t−BH 0.04部及びRS610NA 0.7部からなる単量体成分(α’’−1−1)の1/10を仕込み、15分間保持した。
更に、単量体成分(α’’−1−1)の残り(9/10)を水に対する単量体混合物の増加率が8%/時間となるように連続的に添加した後に1時間保持して、ゴム重合体(α’’1−1)の重合体ラテックスを得た。
続いて、ゴム重合体(α’’1−1)の重合体ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.12部を加え、15分間保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、n−BA 30.7部、St 6.5部、AMA 0.65部、1,3−BD 0.1部、CHP 0.11部及びRS610NA 0.59部からなる単量体成分(α’’−1−2)を水に対する単量体成分の増加率が4%/時間となるように連続的に添加した後に120分間保持して、ゴム重合体(α’’1−2)を形成させて、ゴム重合体(α’’1−1)と(α’’1−2)からなるゴム重合体(α’’1)の重合体ラテックスを得た。
次いで、ゴム重合体(α’’1)の重合体ラテックスにソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.12部を加え、15分保持し、窒素雰囲気下80℃で撹拌を行いながら、MMA 35.3部、MA 1.9部、n−OM 0.11部及びt−BH 0.06部からなる単量体成分(α’’−2)を、水に対する単量体混成分の増加率が10%/時間となるように連続的に添加した後に1時間保持して、重合体(α’’2)を形成させて、ゴム含有重合体(α’’)の重合体ラテックスを得た。
得られたゴム含有重合体(α’’)の重合体ラテックスを、濾材としてSUS製のメッシュ(平均目開き:150μm)を取り付けた振動型濾過装置を用いて濾過した後、脱イオン水 306部に酢酸カルシウム 3部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有重合体(α’’)を得た。
ゴム含有重合体(α’’)の組成は表1にまとめた。
<実施例1>
熱可塑性樹脂(C)としてクレハ(株)製ポリフッ化ビニリデン「KFポリマーT♯850」(商品名)68部及び三菱レイヨン製アクリル樹脂「アクリペットVH#001」(商品名)17部、調製例1にて製造した水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)15部、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤としてBASF社製「イルガフォス168」(商品名)(化合物名:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト/融点:183〜186℃)0.5部並びにフェノール系酸化防止剤としてADEKA社製「アデカスタブAO−60」(商品名)0.1部を配合し、ヘンシェルミキサーを用いて30秒間混合し、2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM35)を用いて、シリンダー温度140〜240℃及びダイヘッド温度240℃の条件で♯300のスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押出し、切断して艶消し熱可塑性樹脂(I)のペレットを得た。
また、ゴム含有重合体(α’)80部、ゴム含有重合体(α’’)10部、熱可塑性重合体(C−1)10部、紫外線吸収剤としてBASF社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン234」(商品名)1.4部、光安定剤としてADEKA社製ヒンダードアミン系光安定剤「アデカスタブLA−57」(商品名)0.3部及び酸化防止剤としてBASF社製のヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1076」(商品名)0.1部を配合し、艶消し熱可塑性樹脂(I)のペレットを得た場合と同様にしてアクリル樹脂(D)のペレットを得た。
尚、熱可塑性重合体(C−1)は、メチルメタクリレート(MMA)−メチルアクリレート(MA)共重合体(MMA/MA=90/10(質量比))であり、還元粘度:0.060l/g、Mn:42,000、Mw:92,000、Mw/Mn:2.2、JIS K7191の1.8MPaにおける荷重たわみ温度:89℃、であった。
熱可塑性樹脂(C)としてクレハ(株)製ポリフッ化ビニリデン「KFポリマーT♯850」(商品名)68部及び三菱レイヨン製アクリル樹脂「アクリペットVH#001」(商品名)17部、調製例1にて製造した水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)15部、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤としてBASF社製「イルガフォス168」(商品名)(化合物名:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト/融点:183〜186℃)0.5部並びにフェノール系酸化防止剤としてADEKA社製「アデカスタブAO−60」(商品名)0.1部を配合し、ヘンシェルミキサーを用いて30秒間混合し、2軸押出機(東芝機械(株)製、商品名:TEM35)を用いて、シリンダー温度140〜240℃及びダイヘッド温度240℃の条件で♯300のスクリーンメッシュで異物を取り除きながら押出し、切断して艶消し熱可塑性樹脂(I)のペレットを得た。
また、ゴム含有重合体(α’)80部、ゴム含有重合体(α’’)10部、熱可塑性重合体(C−1)10部、紫外線吸収剤としてBASF社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン234」(商品名)1.4部、光安定剤としてADEKA社製ヒンダードアミン系光安定剤「アデカスタブLA−57」(商品名)0.3部及び酸化防止剤としてBASF社製のヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1076」(商品名)0.1部を配合し、艶消し熱可塑性樹脂(I)のペレットを得た場合と同様にしてアクリル樹脂(D)のペレットを得た。
尚、熱可塑性重合体(C−1)は、メチルメタクリレート(MMA)−メチルアクリレート(MA)共重合体(MMA/MA=90/10(質量比))であり、還元粘度:0.060l/g、Mn:42,000、Mw:92,000、Mw/Mn:2.2、JIS K7191の1.8MPaにおける荷重たわみ温度:89℃、であった。
艶消し熱可塑性樹脂(I)のペレット及びアクリル樹脂(D)のペレットを80℃で一昼夜乾燥した。乾燥後、シリンダー温度240〜270℃に設定した♯500のスクリーンメッシュを設けたノンベントスクリュー型65mmφの押出機を用いて、艶消し熱可塑性樹脂(I)のペレットを可塑化し、他方、同じくシリンダー温度230〜250℃に設定した♯500のスクリーンメッシュを設けた25mmφの押出機を用いてアクリル樹脂(D)のペレットを可塑化し、アクリル樹脂(D)側の押出機吐出を16.1kg/h、艶消し熱可塑性樹脂側の押出機吐出を1.24kg/hに設定し、次いで250℃に設定した2種2層用マルチマニホールドダイで、アクリル樹脂(D)層側が80℃の第1鏡面冷却ロールと75℃の第2鏡面冷却ロールに接するようにしてフィルムを搬送し、フィルム厚さ125μm(艶消し熱可塑性樹脂(I)層9μm、アクリル樹脂(D)層116μm)の厚さからなる2層構造の艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムを得た。得られた艶消し熱可塑性樹脂積層フィルムの外観及び耐薬品性評価を行った。結果は表2にまとめた。
<実施例2〜8、比較例1及び比較例4>
各成分の配合量を表2に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表2に示した。
各成分の配合量を表2に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表2に示した。
<比較例2>
「イルガフォス168」の代わりに城北化学工業社製の亜リン酸エステル「JP333E」(商品名)(化合物名:トリス(トリデシル)ホスファイト/融点:−20℃以下)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表2に示した。
「イルガフォス168」の代わりに城北化学工業社製の亜リン酸エステル「JP333E」(商品名)(化合物名:トリス(トリデシル)ホスファイト/融点:−20℃以下)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表2に示した。
<比較例3>
「イルガフォス168」の代わりにADEKA社製のホスファイト系酸化防止剤「PEP−36」(商品名)(化合物名:3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン/融点:234〜240℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表2に示した。
「イルガフォス168」の代わりにADEKA社製のホスファイト系酸化防止剤「PEP−36」(商品名)(化合物名:3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン/融点:234〜240℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。評価結果を表2に示した。
酸化防止剤として、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)を用いた実施例1〜8の積層フィルムは、MFR保持率が70%以上で艶消しが均一に発現しており、外観に優れるとともに耐薬品性に優れる。
酸化防止剤として、(P)成分を用いていない比較例1〜4の積層フィルムは、耐薬品性には優れるものの、MFR保持率が70%未満で、艶消しの発現が不均一であり、いずれも外観の点で劣る。
酸化防止剤として、(P)成分を用いていない比較例1〜4の積層フィルムは、耐薬品性には優れるものの、MFR保持率が70%未満で、艶消しの発現が不均一であり、いずれも外観の点で劣る。
本発明の艶消し熱可塑性樹脂フィルムは、優れた外観と耐薬品性を備え、製造する際に安定的な艶消し発現が可能であることから、車輌用部材用の積層成形品、及び建材用の積層成形品に適している。これらの積層成形品具体例としては、以下のものが挙げられる。インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用部材;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用部材;AV機器、OA機器、家具製品等のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等;携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等;家具用外装材;壁面、天井、床等の建築用内装材;マーキングフィルム、高輝度反射材被覆用フィルム;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材;窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材;各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラス等の光学部材;電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用部材;瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器、包装材料;景品、小物等の雑貨等の用途に用いることができる。
Claims (7)
- 水酸基非含有熱可塑性樹脂(C)と、水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)と、フェニル基を有する融点が220℃以下であるリン系酸化防止剤(P)を含有する艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
- 熱可塑性樹脂(C)がフッ素樹脂(A)を含有する請求項1に記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
- 更にフェノール系酸化防止剤(F)を含有する請求項1又は2に記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
- リン系酸化防止剤(P)の含有量が、熱可塑性樹脂(C)及び水酸基含有非架橋アクリル樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部である請求項1〜3のいずれか一項に記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
- 230℃、5000g荷重及び保持時間4分の条件でのメルトフローレート(MFR)を100%とした場合、230℃、5000g荷重及び保持時間20分の条件でのメルトフローレート(MFR)が70%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルム。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の艶消し熱可塑性樹脂フィルムに、該艶消し熱可塑性樹脂フィルムと異なる樹脂組成の熱可塑性樹脂層を積層した積層フィルム又は積層シート。
- 請求項6に記載の積層フィルム又は積層シートに基材を積層した積層体。
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JP2017097391 | 2017-05-16 | ||
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JP2018016482A Pending JP2018193534A (ja) | 2017-05-16 | 2018-02-01 | 艶消し熱可塑性樹脂フィルム及び艶消し熱可塑性樹脂積層フィルム |
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2018
- 2018-02-01 JP JP2018016482A patent/JP2018193534A/ja active Pending
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