JP6171381B2 - アクリル樹脂ペレットの製造方法及びアクリル樹脂成形体 - Google Patents

アクリル樹脂ペレットの製造方法及びアクリル樹脂成形体 Download PDF

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Description

本発明は、成形体用アクリル樹脂ペレットの製造方法及びアクリル樹脂成形体等に関する。
アクリル樹脂製の成形体は透明性に優れており、美しい外観と耐候性を有することから、電器部品、車輌部品、光学用部品、装飾品、看板などの用途に幅広く用いられている。特に、ゴム含有重合体を含有するアクリル樹脂からなるアクリル樹脂成形体は広く利用されている。
このようなゴム含有重合体は、例えば、乳化重合法などによって製造されている。即ち、ポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ラテックス、アクリル酸エステル含有アクリルゴムラテックスを乳化重合法などで製造し、これらのラテックスに対して塩析、酸析凝固、噴霧乾燥、又は凍結乾燥等の処理を行なうことによって、粉体状の重合体が分離回収される。この粉体状の重合体は、通常、適宜、配合剤が添加され、単軸押出機や二軸押出機などで溶融混練されてストランドとして押出され、コールドカット法やホットカット法などでカットされて、ペレット化される。次いで、このペレットは成形機に供給されてアクリル樹脂成形体に加工される。
フィルム状のアクリル樹脂成形体(以下、「アクリル樹脂フィルム」という。)は、透明性、耐候性、柔軟性、加工性に優れているという特長を生かし、各種樹脂成形品、木工製品および金属成形品の表面に積層されている。
特許文献1は、優れた耐衝撃性を備えるとともに、フィッシュアイと呼ばれる欠陥が少ないメタクリル樹脂組成物の製造方法として、弾性重合体層と硬質重合体層とを含む多段重合体(A)とメタクリル酸アルキルを主体とする単量体が重合してなる重合体(B)との混合比、並びに、比エネルギーを、特定条件に設定して二軸混練押出機中で溶融混練を行なうことを提案している。
しかしながら、特許文献1において提案されている方法で溶融押出によりアクリル樹脂ペレットを回収し、そのペレットを用いてフィルム状に成形した場合、樹脂の分散不良により、フィルム表面にダイラインが発生し外観が悪化するという問題があった。
特開2009−263566号公報
本発明の目的は、樹脂の分散性が良好で、ダイラインなどの欠陥がない外観に優れた成形体を得ることが可能なアクリル樹脂ペレットを提供することにある。
本発明は、上記課題を解決するため、下記の手段〔1〕〜〔〕を提供する。
〔1〕 成形体用のアクリル樹脂ペレットの製造方法であって、ゴム含有重合体を含むアクリル樹脂組成物を押出機内において溶融混練する際の押出機の原料搬送部のシリンダー温度Te1(℃)、混練部のシリンダー温度Te2(℃)及び溶融混練する際の押出機のヘッド部でのアクリル樹脂組成物の温度RTが下記の条件(1)〜(3)を満たすアクリル樹脂ペレットの製造方法
(1)Te1<Te2
(2)RT≧270℃
(3)RT−Te2≧30℃
〔2〕 混練部のシリンダー温度Te2(℃)がさらに下記条件(4)を満たす前記〔1〕記載のアクリル樹脂ペレットの製造方法
(4)200℃≦Te2≦260℃
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法で得られたアクリル樹脂ペレットを溶融押出成形する、アクリル樹脂成形体の製造方法
〔4〕 形状がフィルムである前記〔〕に記載のアクリル樹脂成形体の製造方法
本発明によれば、樹脂の分散性が良好で、ダイラインなどの欠陥がない外観に優れた成形体を得ることが可能なアクリル樹脂ペレットを提供することができる。
本発明のアクリル樹脂ペレットの製造に用いられる押出機の一例を示す図である。
以下、本発明のアクリル樹脂ペレットの製造方法及びアクリル樹脂成形体について説明する。尚、以下の説明において「アクリル酸アルキル」および「メタクリル酸アルキル」とは、各々、アクリル酸のアルキルエステルおよびメタクリル酸のアルキルエステルを意味する。「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびまたはメタクリルを意味する。また「(メタ)アクリル酸アルキル」とは、アクリル酸アルキルおよびまたはメタクリル酸アルキルを意味する。
<アクリル樹脂組成物>
本発明において用いられるアクリル樹脂組成物はゴム含有重合体を含むが、このゴム含有重合体は以下に示すゴム含有重合体(G)であることが好ましい。
ゴム含有重合体(G)は、アクリル酸アルキルを30質量%以上含む単量体成分(a)を重合してゴム重合体(A)を製造する工程、及び、該ゴム重合体(A)の存在下にメタクリル酸アルキルを51質量%以上含む単量体成分(b)を重合する工程を経て製造される重合体である。単量体成分(a)は、それを単独で重合して得られる重合体のガラス転移温度(Tg)が−50〜25℃となる成分であることが好ましい。また、単量体成分(b)は、それを単独で重合して得られる重合体のガラス転移温度(Tg)が70〜120℃となる成分であることが好ましい。
単量体成分(a)の重合に先立ち、それを単独で重合して得られる重合体のTgが70〜120℃となる成分(s)を乳化重合する工程を含むことができる。また、単量体成分(a)の乳化重合工程と単量体成分(b)の乳化重合工程の間には、必要に応じて単量体成分(c)等を乳化重合する工程を含むことができる。
また、本発明において用いられるゴム含有重合体を含むアクリル樹脂組成物は、ゴム含有重合体(G)以外に、熱可塑性重合体を含むことができる。熱可塑性重合体としては、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート単位50〜100重量%及びこれと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種の単量体単位0〜50重量%を含有し、重合体の還元粘度が0.1L/g以下である熱可塑性重合体を挙げることができる。尚、この還元粘度は、重合体0.1gをクロロホルム100mlに溶解し、25℃で測定される。前記アルキルメタクリレート単位の含有量は70〜100重量%であることが好ましい。また熱可塑性重合体は、ガラス転移温度が80〜110℃であることが好ましい。このような熱可塑性重合体の具体例として、例えば、三菱レイヨン(株)製の「アクリペットVH」、「アクリペットMD」、「アクリペットMF」(いずれも商品名)等が挙げられる。
アクリル樹脂組成物中に占めるゴム含有重合体(G)と前記熱可塑性重合体の含有量の比率は、95:5〜5:95(質量部)程度であることが好ましい。
〔ゴム含有重合体(G)の製造方法〕
前記ゴム含有重合体(G)の製造方法として、先ず単量体成分を説明し、次いで重合方法を説明する。
〔単量体成分(a)〕
単量体成分(a)は、単量体の総量100質量%を基準にしてアクリル酸アルキルを30質量%以上含む単量体混合物であって、一段目の重合の原料となる単量体混合物である。単量体成分(a)を原料として重合することによってゴム重合体(A)が製造される。
アクリル酸アルキル(以下、「単量体(a1)」という場合がある。)としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−,i−プロピル、アクリル酸n−,i−,t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸n−オクチルが挙げられる。これらの中で、アクリル酸n−ブチルが好ましい。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
単量体成分(a)中のアクリル酸アルキル以外の単量体としては、メタクリル酸アルキル(以下、「単量体(a2)」という場合がある。)、これらと共重合可能な二重結合を1個有する他の単量体(以下、「単官能性単量体(a3)」という場合がある。)、及び多官能性単量体(以下、「多官能性単量体(a4)」という場合がある。)等が挙げられる。
メタクリル酸アルキルとしては、例えば、アルキル基が直鎖状は分岐鎖状のものが挙げられる。メタクリル酸アルキルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−,i−プロピル及びメタクリル酸n−,i−,t−ブチルが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
単官能性単量体(a3)としては、例えば、アクリル酸アルコキシ、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド、(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体;スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;及びアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
多官能性単量体(a4)としては、共重合性の二重結合を1分子内に2個以上有する架橋性単量体が挙げられ、具体例としては以下のものが挙げられる。ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール等のジ(メタ)アクリル酸アルキレングリコール;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン等のポリビニルベンゼン;及びトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌレート系単量体、メタクリル酸アリル等のα,β−不飽和カルボン酸又はジカルボン酸のアリル、メタリル又はクロチルエステル等。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
単量体成分(a)中のアクリル酸アルキルの含有量は、好ましくは30〜99.9質量%である。単量体成分(a)中のメタクリル酸アルキルの含有量は、好ましくは0〜69.9質量%である。単量体成分(a)中の単官能性単量体(a3)の含有量は、好ましくは0〜20質量%である。単量体成分(a)中の多官能性単量体(a4)の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%である。
ゴム重合体(A)のガラス転移温度(以下、「Tg」という。)は、例えばフィルム用途における柔軟性、および衝撃強度改質剤用途における耐衝撃性などの点から、好ましくは−50℃以上25℃以下である。なお、本発明においては、Tgは、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook(J.Brandrup,Interscience,1989)〕に記載されている値を用いてFOXの式から算出される値をいう。また、ゴム含有重合体(G)中のゴム重合体(A)の含有量は、例えばフィルム用途におけるゴム含有重合体(G)の製膜性、および衝撃強度改質剤用途におけるゴム含有重合体(G)が添加された樹脂成形体の耐衝撃性などの点から、好ましくは5〜70質量%である。
ゴム含有重合体(G)中の単量体成分(a)は2段以上に分けて重合してもよい。
〔単量体成分(b)〕
単量体成分(b)は最終段目の重合の原料となる単量体混合物であり、ゴム含有重合体(G)の成形性、機械的性質に関与する成分である。単量体成分(b)中のメタクリル酸アルキルとしては、単量体成分(a)の説明において「単量体(a2)」として挙げた一種以上の単量体を用いることができる。単量体成分(b)中の、メタクリル酸アルキル以外の他の単量体としては、アクリル酸アルキル、及び、これらと共重合可能な二重結合を1個有する他の単量体(以下、「単官能性単量体(b3)」という場合がある。)を挙げることができる。アクリル酸アルキルとしては、「単量体(a1)」として挙げた一種以上の単量体を用いることができる。単官能性単量体(b3)としては、「単官能性単量体(a3)」として挙げた一種以上の単量体を用いることができる。単量体成分(b)を乳化重合する工程は、二段以上とすることができる。
単量体成分(b)中のメタクリル酸アルキルの含有量は、好ましくは51〜100質量%である。単量体成分(b)中のアクリル酸アルキルの含有量は、好ましくは0〜20質量%である。単量体成分(b)中の単量体(b3)の含有量は、好ましくは0〜49質量%である。
重合方法の全工程において使用される単量体成分の総量100質量%中に占める、単量体成分(b)の使用量は、例えばフィルム用途におけるゴム含有重合体(G)の製膜性、および衝撃強度改質剤用途におけるゴム含有重合体(G)が添加された樹脂成形体の耐衝撃性などの点から、好ましくは30〜95質量%である。
〔単量体成分(s)〕
単量体成分(a)を重合してゴム重合体(A)を製造する工程に先立ち、それを単独で重合して得られる重合体のTgが70〜120℃となる成分(s)を乳化重合する工程を含むことができる。単量体成分(s)としては単量体成分(b)と同じものを挙げることができる。
〔単量体成分(c)〕
単量体成分(a)を重合してゴム重合体(A)を製造する工程、及び、該ゴム重合体(A)の存在下に単量体成分(b)を重合する工程の間には、単量体成分(c)を乳化重合する工程を含むことができる。単量体成分(c)としては、アクリル酸アルキル9.9〜90質量%、メタクリル酸アルキル0〜90質量%、これらと共重合可能な二重結合を1個有する他の単量体0〜20質量%、及び多官能性単量体0.1〜10質量%を含む混合物が挙げられる。ここで用いられる他の単量体及び多官能性単量体としては、前述の単官能性単量体(a3)および多官能性単量体(a4)が挙げられる。
単量体成分(c)を乳化重合する工程は、二段以上とすることができる。二段以上で重合する場合、単量体成分(c)の組成は同一でもよく異なっていてもよい。また、単量体成分(c)は界面活性剤を含んでいても良く、さらに水と混合・撹拌して乳化液として重合容器内に供給しても良い。
〔重合方法〕
ゴム含有重合体(G)の製造法としては、例えば、逐次多段乳化重合法が挙げられる。3段階で重合する方法として、ゴム状重合体(A)を得るための単量体成分(a)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で重合容器内に供給して重合した後に、単量体成分(c)を重合容器内に供給して重合し、さらに単量体成分(b)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で重合容器内に供給して重合する方法が挙げられる。なお、単量体成分(c)を重合容器内に供給して重合する工程は、必要に応じて行われる工程である。
上記の方法で製造されたゴム含有重合体(G)を用いて得られる重合体製品は、最終的に得られる重合体ラテックス中における粗大粒子が少ないという利点を有する。特に重合体製品がフィルムである場合はフィッシュアイが少ない点で好ましい。
逐次多段乳化重合法で製造する際に使用される界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系及びノニオン系の界面活性剤が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。アニオン系の界面活性剤としては、例えば以下のものが挙げられる。ロジン石鹸、オレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム系等のカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム系等のスルホン酸塩;及び、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩。アニオン系の界面活性剤の市販品の具体例としては、例えば以下の商品名のものが挙げられる。三洋化成工業(株)製のエレミノールNC−718、東邦化学工業(株)製のフォスファノールLO−529、フォスファノールRS−610NA、フォスファノールRS−620NA、フォスファノールRS−630NA、フォスファノールRS−640NA、フォスファノールRS−650NA及びフォスファノールRS−660NA、並びに花王(株)製のラテムルP−0404、ラテムルP−0405、ラテムルP−0406及びラテムルP−0407。
単量体成分、水及び界面活性剤を混合して乳化液を調製する方法としては、例えば以下の(1)〜(3)の方法が挙げられる。(1)水中に単量体成分を仕込んだ後、界面活性剤を投入する方法、(2)水中に界面活性剤を仕込んだ後に単量体成分を投入する方法、及び(3)単量体成分中に界面活性剤を仕込んだ後に水を投入する方法。
単量体成分を水及び界面活性剤と混合して乳化液を調製するための混合装置としては、例えば、攪拌翼を備えた攪拌機;ホモジナイザー、ホモミキサー等の強制乳化装置;及び膜乳化装置が挙げられる。
上記乳化液としては、単量体成分の油中に水滴が分散したW/O型、水中に単量体成分の油滴が分散したO/W型のいずれの分散体でも使用することができる。O/W型であってかつ分散相の油滴の直径が100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが特に好ましい。
上記乳化液の調製に用いる界面活性剤の量は、重合のすべての段階における単量体成分の総量を100質量部としたとき、0.5質量部以上1.6質量部以下とすることが望ましい。逐次多段重合体の粒径調整において、通常、一段目の界面活性剤の使用量により粒径が調整される。しかしながら、本発明においては、単量体成分に加える界面活性剤とは別に、重合容器内に予め仕込む水(水性媒体)中に界面活性剤を添加することにより、少ない界面活性剤の使用量で、ゴム含有重合体の粒子径を小さくすることができる。
単量体成分(a)及び単量体成分(b)を重合する際、または更に単量体成分(c)を重合する際に使用される重合開始剤及び連鎖移動剤としては公知のものが使用できる。重合開始剤及び連鎖移動剤の添加方法としては、水相中および単量体相中のいずれか一方に添加する方法、又は両相中に添加する方法が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ系開始剤及びレドックス系開始剤が挙げられる。レドックス系開始剤とは、過酸化物と酸化剤又は還元剤を組み合わせた開始剤、及びアゾ系開始剤と酸化剤又は還元剤を組み合わせた開始剤であり、レドックス系開始剤の具体例としては、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート及びヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、炭素数2〜20のアルキルメルカプタン、メルカプト酸類、チオフェノール及び四塩化炭素が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。例えば、n−オクチルメルカプタンが挙げられる。
ゴム含有重合体(G)のラテックスの製造方法として、単量体成分(a)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で反応器内に供給して重合した後に、単量体成分(c)を反応器内に供給して重合し、さらに単量体成分(b)、水及び界面活性剤を混合して乳化液とした状態で反応器内に供給して重合する方法で製造する方法が挙げられる。この場合、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸ニナトリウム及びソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート2水和物を含む、反応器内の水溶液を重合温度まで昇温した後に、単量体成分(a)、水及び界面活性剤を混合した乳化液を反応器内に供給して重合した後に、単量体成分(c)を反応器内に供給して重合し、さらに単量体成分(b)、水及び界面活性剤を混合した乳化液を反応器内に供給して重合する方法が好ましい。
ゴム含有重合体(G)のラテックスを得るための重合温度としては用いる重合開始剤等の種類や量によって異なるが、例えば40〜120℃程度である。
上記の方法で得られたゴム含有重合体(G)のラテックスは、必要に応じてろ材を配したろ過装置を用いて処理することができる。
このようにして得られたゴム含有重合体(G)のラテックスは、ラテックス状態のままで各種用途に使用することができる。また、塩析凝固法、酸析凝固法、凍結凝固法、スプレードライ法など公知の方法により、ラテックス中からゴム含有重合体(G)を回収し、これを乾燥して、ゴム含有重合体(G)の粉体として使用することができる。更に、この粉体を溶融押し出ししてペレット化して、使用することができる。
ゴム含有重合体(G)を、金属塩を用いた塩析処理による凝固法で回収する場合、最終的に得られたゴム含有重合体(G)中の残存金属含有量を800ppm以下にすることが好ましく、残存金属含有量は微量であるほど好ましい。
〔添加剤〕
本発明のアクリル樹脂組成物には、必要に応じて、例えば安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤等の配合剤を含むことができる。
特にアクリル樹脂成形体がアクリル樹脂フィルムであって基材の保護層として使用される際は、耐候性を付与するためにアクリル樹脂組成物中には紫外線吸収剤が含有されていることが好ましい。紫外線吸収剤の種類は、特に限定されないが、分子量400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤が特に好ましい。前者の市販品としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の商品名チヌビン234、(株)ADEKAの商品名アデカスタブLA−31、後者の市販品としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の商品名チヌビン1577、(株)ADEKAの商品名アデカスタブLA−46等が挙げられる。
紫外線吸収剤の添加量は、アクリル樹脂成形体を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。耐候性の観点から、より好ましくは0.5質量部以上、特に好ましくは1質量部以上である。他方、製膜時の工程汚れを防止する観点、成形体の透明性の観点から、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下が特に好ましい。
アクリル樹脂組成物には、特に、光安定剤が含有されていることが好ましい。光安定剤としては、公知のものを用いることが出来るが、特にヒンダードアミン系光安定剤等のラジカル捕捉剤が好ましい。このような光安定剤の市販品として、(株)ADEKAのアデカスタブLA−57、アデカスタブLA−67、サノールLS−770、BASF社のCHIMASSORB2020FDL、CHIMASSORB944FDL等(以上、商品名)が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、アクリル樹脂成形体を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましい。耐光性の観点から、より好ましくは0.2質量部以上である。他方、製膜時の工程汚れを防止する観点から、より好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1.5質量部以下である。
<溶融混練>
〔押出機〕
本発明の成形体用のアクリル樹脂ペレットの製造方法において、アクリル樹脂組成物は押出機内において溶融混練される。好ましい押出機としては、一軸、同方向二軸、異方向二軸等の一般的な装置が挙げられる。好ましい押出機は、二軸混練押出機等の混練効果の大きい装置である。好ましい二軸押出機としては、東芝機械(株)製のTEMシリーズなどが挙げられる。また、スクリュー構成としては、樹脂組成物を搬送する搬送部とニーディングゾーンや溶融樹脂の送り方向が逆のスクリューセグメント(螺旋の巻き方向が逆のスクリューセグメント)など樹脂組成物を混練するための混練部を有するスクリュー構成が挙げられる。
また、押出機は原料であるアクリル樹脂組成物中の水分や溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましい。ベントには真空ポンプの如き減圧用ポンプが好ましく設置される。かかる設置により発生水分や揮発ガスは効率よく押出機外部へ排出される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機のダイ部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、および焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などが例示される。
また、混練効果を大きくする方法としては、スクリューの回転数をできるだけ高くし、樹脂の供給量を少なくすることも挙げられ、このようにして溶融押し出しされた樹脂組成物は剪断発熱しやすくなりヘッド部での温度RTが高くなる傾向にある。押出機内で溶融混練された樹脂組成物は、ヘッド部に設置された直径3〜5mm程度のノズルを有するダイからストランドとして押出され、コールドカット法やホットカット法などでカットされて、ペレット化される。
〔原料搬送部のシリンダー温度Te1〕
本発明の成形体用のアクリル樹脂ペレットの製造方法において、押出機の原料搬送部のシリンダー温度Te1は混練部のシリンダー温度Te2より低く設定される。Te1がTe2より低い場合、混練部でアクリル樹脂組成物に十分剪断がかかるため、樹脂の分散性が良好になり、得られる成型品の外観が良好になる。Te1はTe2より5℃以上低いことが好ましく、10℃以上低いことがより好ましい。また、Te1とTe2との差の上限はアクリル樹脂組成物がスムーズに押し出される範囲であれば特に制限されず、40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。なお「原料搬送部」とは、樹脂が混練される混練部より原料供給側の部分をいう。また、Te1は原料搬送部の平均の設定温度を意味する。
〔混練部のシリンダー温度Te2〕
本発明の成形体用のアクリル樹脂ペレットの製造方法において、押出機の混練部のシリンダー温度Te2は200〜260℃の範囲内のある温度に設定される。Te2が200℃以上であれば溶融押出がしやすく生産性が良好になり、260℃以下であればアクリル樹脂組成物の熱劣化が進みにくくなるためフィッシュアイ等の発生を抑制でき外観の良好な成形体が得られる。なお「混練部」とは、ニーディングゾーンや溶融樹脂の送り方向が逆のスクリューセグメント(螺旋の巻き方向が逆のスクリューセグメント)など、樹脂に剪断がかかる部分をいう。また、Te2は混練部の平均の設定温度を意味する。
〔アクリル樹脂組成物の温度RT〕
本発明の成形体用のアクリル樹脂ペレットの製造方法において、アクリル樹脂組成物を溶融混練する際に押出機のヘッド部でのアクリル樹脂組成物の温度RTが270℃以上であることが好ましい。温度RTが270℃以上の場合、アクリル樹脂組成物の分散性が良好となり、成形体に成形した際に表面状態が良く外観が良好になる傾向にある。特にフィルム状の成形体ではダイラインが軽減され、外観の良好なフィルムが得られる傾向にある。温度RTの上限は樹脂の分解が進まない範囲であれば特に限定されず、310℃以下が好ましく、300℃以下が特に好ましい。
また、このときの混練部からヘッド部までのシリンダー温度は、適宜設定することができ、混練部と同じ温度とすることもでき、RTと同じ温度とすることもできる。
本発明の成形体用のアクリル樹脂ペレットの製造方法において、アクリル樹脂組成物の温度RTと押出機の混練部のシリンダー温度Te2との差「RT−Te2」は30℃以上であることが必要である。「RT−Te2」が30℃以上の場合、剪断発熱が大きいためアクリル樹脂組成物の分散性が良好になり、成形体の外観が良好になる傾向にある。「RT−Te2」の上限は特に制限はないが、押出機の能力や樹脂の分解温度に合わせて設定すればよく、60℃以下が好ましい。
<アクリル樹脂ペレット>
以上のようにして製造されたアクリル樹脂ペレットは、樹脂成分の分散性が良好であり、アクリル樹脂フィルム等のアクリル樹脂成形体の原料として好適である。この樹脂ペレットは、特にゴム成分の含有量の多い軟らかめのアクリル樹脂フィルムを得る際に、ダイラインの発生が抑制でき、外観の良好な樹脂成形体が得られるため有効である。
<アクリル樹脂成形体、フィルム>
本発明のアクリル樹脂成形体としてはアクリル樹脂フィルム等が挙げられる。本発明のアクリル樹脂フィルムは、溶融流延法や、Tダイ法、インフレーション法などの溶融押出法、カレンダー法等の公知の方法によって製造することができるが、経済性の点からTダイ法が好ましい。成形時の溶融温度は100〜280℃が好ましい。
Tダイ法によりアクリル樹脂フィルムを成形する場合、金属ロール、非金属ロール及び金属ベルトから選ばれる複数のロール又はベルトに狭持して製膜する方法を用いれば、得られアクリル樹脂フィルムの表面平滑性を向上させ、アクリル樹脂フィルムに印刷処理した際の印刷抜けを抑制することができる。なお、金属ロールとしては、特許第2808251号公報に記載の金属製の鏡面タッチロール、またはWO97/28950号公報に記載の金属スリーブ(金属製薄膜パイプ)と成型用ロールからなるスリーブタッチ方式で使用されるロール等を例示することができる。また、非金属ロールとしては、シリコンゴム性等のタッチロール等を例示することができる。更に、金属ベルトとしては、金属製のエンドレスベルト等を例示することができる。なお、これらの金属ロール、非金属ロール及び金属ベルトを複数組み合わせて使用することもできる。
以上に述べた、金属ロール、非金属ロール及び金属ベルトから選ばれる複数のロール又はベルトに狭持して製膜する方法では、溶融押出後のアクリル樹脂を、実質的にバンク(樹脂溜まり)が無い状態で狭持し、実質的に圧延されることなく面転写させて製膜することが好ましい。バンク(樹脂溜まり)を形成することなく製膜した場合は、冷却過程にあるアクリル樹脂が圧延されることなく面転写されるため、この方法で製膜したアクリル樹脂フィルムの加熱収縮率を低減することもできる。
なお、Tダイ法などで溶融押出しをする場合は、200メッシュ以上のスクリーンメッシュで溶融状態にあるアクリル樹脂組成物を濾過しながら押出しすることも、フィルム中のフィッシュアイ低減の観点から好ましい。
〔積層フィルム〕
また、本発明のアクリル樹脂フィルムの表面には他の樹脂を積層することができる。例えば、他のアクリル樹脂を積層し表面硬度が必要な場合は、本発明のアクリル樹脂フィルムよりも表面硬度が高いアクリル樹脂を用いることが好ましい。具体的には、鉛筆硬度(JIS K5400に基づく測定)が2H以上のアクリル樹脂を用いることによって、耐成形白化、表面硬度(耐擦傷性)、及び耐熱性を備えたアクリル樹脂積層フィルムが得られるため、好ましい。
また、耐候性、耐溶剤性を向上させる観点から、フッ素樹脂を積層してもよい。フッ素系樹脂の種類は特に限定されず、公知のフッ素系樹脂を使用することができる。具体的には、フッ化ビニリデン重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニル、テトラフロロエチレン等のフッ素化合物、あるいはアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等のアクリル系単量体とフッ化ビニリデンとの共重合体、またはフッ化ビニリデン重合体を主成分とした樹脂組成物が挙げられる。
この積層フィルム中におけるフッ素樹脂層の位置は特に限定はされないが、アクリル樹脂フィルムの耐候性および耐溶剤性の観点から、フッ素樹脂層はアクリル樹脂フィルムの上層(最表層)に設けることが好ましい。このフッ素樹脂層は、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を含むことができる。
本発明のアクリル樹脂フィルムと他の樹脂を積層する方法としては、例えば以下の(1)〜(4)の方法が挙げられる。(1)アクリル樹脂フィルムと他の樹脂のフィルムを積層する方法、(2)他の樹脂のフィルムに対して、アクリル樹脂をフィルム状に溶融押出しながら同時に積層する方法、(3)アクリル樹脂フィルムに対して、他の樹脂をフィルム状に溶融押出しながら同時に積層する方法、および、(4)アクリル樹脂と他の樹脂とをフィルム状に溶融押出しながら同時に積層する方法。
〔フィルムの厚み〕
本発明のアクリル樹脂フィルムの厚みは300μm以下が好ましい。積層成形品に用いる場合は、その厚みは50μm〜300μmが好ましい。この厚みが50μm以上であると、成形品外観において十分な深みが得られる。また特に、複雑な形状に成形する場合、延伸によって十分な厚みが得られる。一方、厚みが300μm以下であると、適度な剛性を有することになるので、ラミネート性、二次加工性等が向上する。また、単位面積あたりの質量の点で、経済的に有利になる。さらには、製膜性が安定してフィルムの製造が容易になる。
また、本発明のアクリル樹脂フィルムには、必要に応じて、各種機能付与のための表面処理を施すことができる。表面処理としては、シルク印刷、インクジェットプリント等の印刷処理、金属調付与あるいは反射防止のための金属蒸着、スパッタリング、湿式メッキ処理、表面硬度向上のための表面硬化処理、汚れ防止のための撥水化処理あるいは光触媒層形成処理、塵付着防止、あるいは電磁波カットを目的とした帯電防止処理、反射防止層形成、防眩処理等が挙げられる。
上述した処理の中でも、印刷処理を施す場合には、アクリル樹脂フィルムに片側印刷処理を行うことが好ましく、中でも、印刷面を基材樹脂との接着面に配した裏面印刷が、印刷面の保護や高級感の付与の点から特に好ましい。
〔フィルムと基材との積層体〕
また、本発明のアクリル樹脂フィルムは、基材に積層することができる。例えば、アクリル樹脂フィルムを透明のまま使用し、基材上に積層すれば、クリアな塗装の代替として用いることができ、基材の色調を生かすことができる。このように基材の色調を生かす用途においては、アクリル樹脂フィルムは、ポリ塩化ビニルフィルムやポリエステルフィルムに比べ、透明性、深み感や高級感の点で優れている。
アクリル樹脂フィルムを積層する基材としては、各種樹脂成形品、木工製品および金属成形品が挙げられる。また、樹脂成形品のうち、本発明のフィルム状のアクリル樹脂成形体と溶融接着可能な熱可塑性樹脂成形品を構成する樹脂としては、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂あるいはこれらを主成分とする樹脂が挙げられる。これらの中でも、接着性の点でABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂あるいはこれらの樹脂を主成分とする樹脂が好ましい。なお、ポリオレフィン樹脂等の溶融接着しづらい基材樹脂でも接着層を用いることでアクリル樹脂フィルムと基材とを接着させることは可能である。
厚みが薄く実質的に2次元形状の基材に対してアクリル樹脂フィルムを積層する場合、熱融着できる基材に対しては熱ラミネーション等の公知の方法により貼り合わせることができる。また、熱融着しない基材に対しては、接着剤を用いたり、アクリル樹脂フィルムの片面を粘着加工したりするなどして貼り合わせることができる。
また、3次元形状の基材に対してアクリル樹脂フィルムを積層する場合、予め形状加工したアクリル樹脂フィルムを射出成形用金型に挿入するインサート成形法、金型内で真空成形後、射出成形を行うインモールド成形法等の公知の成形方法により貼り合わせることができる。これらの中でも、インモールド成形法が好ましい。インモールド成形法では、アクリル樹脂フィルムを真空成形により、三次元形状に成形した後、その成形品の中に、射出成形により基材樹脂を流し込み一体化させるので、表層にアクリル樹脂フィルムを有するアクリル積層成形品を容易に得ることができる。また、フィルムの成形と射出成形とを一工程で行えるので、作業性、経済性に優れている。
インモールド成形法における加熱温度としては、アクリル樹脂フィルムが軟化する温度以上であって、通常70〜170℃であることが好ましい。70℃未満であると、成形が困難になることがあり、170℃を超えると、表面外観が悪化したり、離型性が悪くなったりする。
このようなアクリル樹脂成形体は、外観、耐候性、透明性、印刷性、耐水白化性等に優れているので、特に浴室、台所などの水周り部材やサイディング材等の屋外建材部品の保護フィルムとして非常に有用であり、工業的価値が高い。また、アクリル樹脂成形体は、浴室、台所等の水周り部材および外壁材、サイディング材等の外装建材部品の保護フィルム以外の用途にも使用できる。特に、外観の良好なアクリル樹脂フィルムは、例えば、液晶ディスプレイ等の偏光板に使用される偏光膜保護フィルム、あるいは視野角補償、位相差補償のための位相差板に使用される位相差フィルムなどにも使用できる。
また、アクリル樹脂フィルムを積層した積層体の工業的利用分野としては、例えば、道路標識、表示板あるいは視認性を目的とした安全器具に使用される高輝度反射材が挙げられる。高輝度反射材の種類としては、アルミニウム蒸着を施したガラスビーズを基材に埋め込んだカプセル型反射材、プリズム加工した樹脂シートを反射体として使用したプリズム型反射材等があり、いずれのタイプにおいても、上述のアクリル樹脂フィルムは、反射材の表面に積層して使用する保護フィルムとして好適に用いることができる。即ち、上述のアクリル樹脂フィルムを表面に有する高輝度反射材は、雨水等の白化による高輝度反射材の視認性の低下が少ないため、高輝度反射材の保護フィルムとして工業的利用価値が極めて高い。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明する。尚、以下の説明において、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味し、略記号は表1に記載の化合物を意味する。
Figure 0006171381
先ず、評価方法およびゴム含有重合体の調製例を説明する。
<評価方法>。
(1)外観(ダイライン)
フィルム状の樹脂成形体を目視にて透過で観察し、ダイラインが目立たないときを「○」、目立つときを「×」とした。
(2)生産性
アクリル樹脂をペレット化する際にベントアップ、噛み込み不良等の異常がみられないときを「○」、みられるときを「×」とした。
(3)フィルム中のフィッシュアイの数
アクリル樹脂ペレットをフィルム状に成形し、得られたフィルム中に存在する面積0.01mm2以上0.1mm2未満のフィッシュアイの個数と、面積0.1mm2以上のフィ
ッシュアイの個数を、(株)メック製の表面欠陥検査装置LSC−400(1画素:0.05mm×0.18mm)を使用して測定した。尚、光の透過率が75%以下となる画素をフィッシュアイとし、当該画素数を測定することで、フィルム中のフィッシュアイの面積と個数を測定した。
<調製例1> ゴム含有多段重合体(I)の製造
攪拌機を備えた容器内に脱イオン水10.8部を仕込んだ後、MMA0.3部、n−BA4.5部、1,3−BD0.2部、AMA0.05部およびCHP0.025部からなる単量体成分を投入し、室温下にて攪拌混合した。次いで、攪拌しながら、乳化剤(東邦化学工業(株)製、商品名「フォスファノールRS610NA」)1.3部を上記容器内に投入し、攪拌を20分間継続して「乳化液1」を調製した。
次に、冷却器付き重合容器内に脱イオン水139.2部を投入し、75℃に昇温した。さらに、脱イオン水5部にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.20部、硫酸第一鉄0.0001部およびEDTA0.0003部を加えた混合物を調製し、この混合物を前記重合容器内に一度に投入した。次いで、窒素雰囲気下で攪拌しながら、前記乳化液1を8分間にわたって重合容器内に滴下した後、15分間反応を継続させ、弾性重合体(I−a1)の重合を完結した。続いて、MMA9.6部、n−BA14.4部、1,3−BD1.0部およびAMA0.25部からなる単量体成分を、CHP0.016部と共に、90分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、弾性重合体(I−a2)を生成させた。このようにして弾性重合体(I−a1)および弾性重合体(I−a2)含む弾性重合体(I−A)を得た。なお、弾性重合体(I−a1)用および弾性重合体(I−a2)用の各単量体成分を、それぞれ別個に、前記と同条件で重合した場合、弾性重合体(I−a1)のTgは−48℃、弾性重合体(I−a2)のTgは−10℃であった。
続いて、MMA6部、MA4部およびAMA0.075部からなる単量体成分を、CHP0.0125部と共に、45分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、中間重合体(I−B)を形成させた。なお、中間重合体(I−B)用の単量体成分を、別個に、前記と同条件で重合した場合、中間重合体(I−B)のTgは60℃であった。
続いて、MMA57部、MA3部、n−OM0.264部およびt−BH0.075部からなる単量体成分を140分間にわたって前記重合容器内に滴下した後、60分間反応を継続させ、硬質重合体(I−C)を形成して、ゴム含有多段重合体(I)の重合体ラテックスを得た。
得られたゴム含有多段重合体(I)の重合体ラテックスを、濾材にSUS製のメッシュ(平均目開き:54μm)を取り付けた振動型濾過装置を用い、濾過した後、酢酸カルシウム3.5部を含む水溶液中で塩析させ、水洗して回収した後、乾燥し、粉体状のゴム含有多段重合体(I)を得た。
<調製例2> ゴム含有多段重合体(II)の製造
窒素雰囲気下、還流冷却器付き重合容器内に脱イオン水244部を入れ、80℃に昇温した。そして、以下に示す原料(1)を添加し、撹拌しながら、以下に示す弾性重合体(II−A1)用の原料(2)の質量の1/15を仕込み、15分間保持した。次いで、残りの原料(2)を、水に対する単量体成分[原料(2)]の増加率8%/時間で、連続的に添加した後、60分間保持し、弾性重合体(II−A1)の「ラテックス1」を得た。なお、弾性重合体(II−A1)用の原料を、別個に、前記と同条件で重合した場合、弾性重合体(II−A1)のTgは24℃であった。
続いて、このラテックス1を含む重合容器内にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部を加え、15分間保持した。そして、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、以下に示す弾性重合体(II−A2)用の原料(3)を、水に対する単量体成分[原料(3)]の増加率4%/時間で、連続的に添加した後、120分間保持し、弾性重合体(II−A2)の重合を行って「ラテックス2」を得た。なお、弾性重合体(II−A2)用の原料を、別個に、前記と同条件で重合した場合、弾性重合体(II−A2)のTgは−38℃であった。
続いて、このラテックス2を含む重合容器内にソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部を加え、15分間保持した。そして、窒素雰囲気下、80℃で撹拌しながら、以下に示す硬質重合体(II−B)用の原料(4)を、水に対する単量体成分[原料(4)]の増加率10%/時間で、連続的に添加した後、60分間保持し、硬質重合体(II−B)の重合を行って、ゴム含有多段重合体(II)の「ラテックス3」を得た。なお、硬質重合体(II−B)用の原料を、別個に、前記と同条件で重合した場合、硬質重合体(II−B)のTgは99℃であった。またゴム含有多段重合体(II)の質量平均粒子径は0.28μmであった。
得られたゴム含有多段重合体(II)のラテックス3に対し、酢酸カルシウムを用いて凝析、凝集、固化反応を行い、ろ過、水洗後、乾燥してゴム含有多段重合体(II)の紛体を得た。
Figure 0006171381


<実施例1〜4、比較例1〜5>
アクリル樹脂(ア)として、調整例1で得られたゴム含有多段重合体(I)80部、調整例2で得られたゴム含有多段重合体(II)10部、熱可塑性重合体として三菱レイヨン(株)製「アクリペットMD」10部に、配合剤としてBASF社製「チヌビン234」1.4部、(株)ADEKA製「アデカスタブLA-57G」0.3部、BASF社製「イルガノックス1076」0.1部を添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、得られた混合物を二軸押出機(東芝機械製のTEM35)で、表1に示す条件で押し出し切断してペレット化した。得られたペレットを乾燥後、ムサシノキカイ製40φ製膜機用いてT−ダイ法で製膜し125μm程度の厚みのフィルムを得た。なお、このときのシリンダー温度は220〜250℃に設定し、T−ダイの温度を250℃に設定した。得られたフィルムのダイライン、フィッシュアイを評価した結果を表1に示す。

Figure 0006171381


上記の実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。即ち、実施例1〜4において得られたフィルムは、ダイラインも目立たず、更にフィッシュアイも少ないため、アクリル樹脂が本来有する耐候性、意匠性を備えつつ、良好な外観を有している。
一方、比較例1〜5において得られたフィルムはフィッシュアイは少ないが、原料搬送部のシリンダー温度が混練部のシリンダー温度より低くないためダイラインが目立つものとなり、外観が不良であった。
本発明の製造方法によって得られる成形体用のアクリル樹脂ペレットを用いることによって、外観が良好なアクリル樹脂成形体を得ることができる。特にフィルム状のアクリル樹脂成形体は耐候性、意匠性を備えたダイラインの目立たない良好な外観を有する成形体であって、例えば、建築物の内外装用途、とりわけ直射日光の厳しい外装用途などに有効に使用することができる。
1 シリンダー
2 原料搬送部
3 混練部
4 ヘッド部
5 ベント
6 ホッパー
7 原料供給スクリュー

Claims (4)

  1. 成形体用のアクリル樹脂ペレットの製造方法であって、
    ゴム含有重合体を含むアクリル樹脂組成物を押出機内において溶融混練する際の押出機の原料搬送部のシリンダー温度Te1(℃)、混練部のシリンダー温度Te2(℃)及び溶融混練する際の押出機のヘッド部でのアクリル樹脂組成物の温度RTが下記の条件(1)〜(3)を満たすアクリル樹脂ペレットの製造方法
    (1)Te1<Te2
    (2)RT≧270℃
    (3)RT−Te2≧30℃
  2. 混練部のシリンダー温度Te2(℃)がさらに下記条件(4)を満たす請求項1記載のアクリル樹脂ペレットの製造方法
    (4)200℃≦Te2≦260℃
  3. 請求項1又は2に記載の方法で得られたアクリル樹脂ペレットを溶融押出成形する、アクリル樹脂成形体の製造方法
  4. 形状がフィルムである請求項に記載のアクリル樹脂成形体の製造方法
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