JP2020147697A - アクリル系樹脂フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィルムの靭性を保ちつつ、かつ耐折性及び製膜性に優れるアクリル系樹脂フィルム及びその製造方法、並びに、前記アクリル系樹脂フィルムを用いた積層フィルムを提供する。【解決手段】アクリル系多層構造重合体粒子(A)と、高分子加工助剤(B)とを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)からなるアクリル系樹脂フィルムであって、前記アクリル系多層構造重合体粒子(A)は、TEM観察による平均粒子径が10〜200nmであり、前記高分子加工助剤(B)は、平均重合度が20,000以上であるアクリル系樹脂フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、アクリル系樹脂フィルム及びその製造方法、並びに、前記アクリル系樹脂フィルムを用いた積層フィルムに関する。
アクリル系樹脂フィルムは、透明性が高い、表面硬度が高い、耐候性に優れる、成形加工が容易などの特徴を生かして、看板、フラットパネルディスプレイ等の表示材料、加飾フィルムに分類される車両用の内装材及び外装材、建材用の内装材及び外装材、インテリア部材等の様々な用途で使用されている。アクリル系樹脂フィルムは、特に表面特性に優れるため、各種部材の表層材料として使用されている。
アクリル系樹脂フィルムは、上記のような特徴を持ち合わせているが、(メタ)アクリル系樹脂そのものは、脆いという欠点があるため、多層構造重合体粒子を用いて靭性を付与するなどの技術が用いられている。特に建材用フィルムの中でも樹脂サッシ用デコレーションフィルム用途では、複雑な形に追随させるため、伸び性及び耐折性の良いフィルムが求められている。
例えば、特許文献1には、内層として架橋弾性重合体層と、最外層として熱可塑性重合体層とを有するアクリル系多層構造体粒子とマイカを含むアクリル系フィルムが提案されている。
国際公開第2017/141873号
しかしながら、多層構造重合体粒子を用いて溶融押出で薄肉フィルムを製膜する場合、ドローレゾナンスと呼ばれる、ダイから引きおとされたメルトカーテンの両端部のネックインや厚さが周期的に大きく変動する現象が発生するため、厚さ均一性に優れた薄肉フィルムを高いライン速度で製造するのは困難で、特に多層構造重合体粒子の含有量が多い場合、その傾向が顕著であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、フィルムの靭性を保ちつつ、かつ耐折性及び製膜性に優れるアクリル系樹脂フィルム及びその製造方法、並びに、前記アクリル系樹脂フィルムを用いた積層フィルムを提供することを目的とする。
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定のアクリル系多層構造重合体粒子と、特定の高分子加工助剤とを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物からなるアクリル系樹脂フィルムが、当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[12]を提供するものである。
[1]アクリル系多層構造重合体粒子(A)と、高分子加工助剤(B)とを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)からなるアクリル系樹脂フィルムであって、
前記アクリル系多層構造重合体粒子(A)は、TEM観察による平均粒子径が10〜200nmであり、前記高分子加工助剤(B)は、平均重合度が20,000以上であるアクリル系樹脂フィルム。
[2]温度23℃、引張速度20mm/分の条件で測定した引張破断伸度が80%以上であり、かつ、前記条件で測定した引張破断強度が30MPa以上である、上記[1]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[3]JIS P8115(2001)に準拠して測定した前記アクリル系樹脂フィルムの長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)における耐折回数が、いずれも100回以上である上記[1]又は[2]に記載のアクリル系樹脂フィルム。
[4]JIS K7128−1(1998)に準拠して測定したトラウザー引き裂き強度が1.0N/mm以上である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[5]前記高分子加工助剤(B)は、メタクリル酸メチル単量体単位60質量%以上、及びビニル系単量体単位40質量%以下からなり、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)全量に対する当該高分子加工助剤(B)の含有量が0.1〜7質量%である上記[1]〜[4]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[6]前記(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)は、さらに平均重合度2,000以下のメタクリル系樹脂(C)を含み、当該(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)全量に対する当該メタクリル系樹脂(C)の含有量が1〜50質量%である上記[1]〜[5]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[7]前記(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)は、さらにベンゾトリアゾール類の紫外線吸収剤を含む上記[1]〜[6]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[8]少なくとも一方の面に印刷が施されている上記[1]〜[7]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[9]加飾用フィルムである上記[1]〜[7]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[10]建材用フィルムである上記[1]〜[7]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
[11]上記[1]〜[10]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、金属及び金属酸化物から選ばれる1種以上よりなる層、熱可塑性樹脂層、又は基材層を備えてなる積層フィルム。
[12]前記(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)をTダイからフィルム状に溶融押出する工程と、Tダイから押出された溶融物を、金属剛体ロール及び/又は金属弾性ロールからなる一対の冷却ロールで狭持する工程とを有する、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
本発明によれば、フィルムの靭性を保ちつつ、かつ耐折性及び製膜性に優れるアクリル系樹脂フィルム及びその製造方法、並びに、前記アクリル系樹脂フィルムを用いた積層フィルムを提供することができる。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。本明細書において特定する数値は、実施形態又は実施例に開示した方法により求められる値である。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれる。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。また、(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる樹脂フィルムを「アクリル系樹脂フィルム」と称することがある。さらに、「アクリル系樹脂フィルム」は、「アクリル系フィルム」又は「フィルム」と記載する場合がある。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、アクリル系多層構造重合体粒子(A)と、高分子加工助剤(B)とを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)からなるアクリル系樹脂フィルムであって、
前記アクリル系多層構造重合体粒子(A)は、TEM観察による平均粒子径が10〜200nmであり、前記高分子加工助剤(B)は、平均重合度が20,000以上であることを特徴とする。
<(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)>
(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)は、アクリル系多層構造重合体粒子(A)と、高分子加工助剤(B)とを含む。
(アクリル系多層構造重合体粒子(A))
本発明で用いるアクリル系多層構造重合体粒子(A)は、多層構造を有するものであれば特に制限はないが、例えば、少なくとも1層の内層が、アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又は共役ジエン系単量体単位を主成分単量体単位とする架橋弾性重合体層であり、最外層が、アルキル基の炭素数が1〜8であるメタクリル酸アルキルエステル
単量体単位を主成分単量体単位とする熱可塑性重合体層であることが好ましい。
なお、本明細書において、特に明記しない限り、「主成分単量体単位」とは、50質量%以上の単量体単位とする。
アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸プロピル、アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられるが、これらの中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2―エチルヘキシルが好ましく、アクリル酸ブチルがより好ましい。ジエン系単量体としては例えば、1,3−ブタジエン、及びイソプレン等が挙げられる。
本発明におけるアクリル系多層構造重合体粒子(A)は、少なくとも1層の架橋弾性重合体層を含む1層又は複数層の内層が最外層の硬質熱可塑性重合体層により覆われた、いわゆるコア/シェル構造ゴム粒子であることが好ましい。
アクリル系多層構造重合体粒子(A)の層数は特に制限されず、2層、3層、又は4層以上であってもよい。熱安定性及び生産性の点で、アクリル系多層構造重合体粒子(A)は3層構造であることが好ましい。
アクリル系多層構造重合体粒子(A)において、最外層を除く少なくとも1層の内層を構成する架橋弾性重合体層は、この層の分子鎖と隣接する層中の分子鎖とのグラフト結合により結合されていることが好ましい。
架橋弾性重合体層は、アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル及び/又はジエン系単量体の他、これらと共重合可能なビニル系単量体を含んでいてもよい。
共重合可能なビニル系単量体としては、例えば、N−プロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、及びN−o−クロロフェニルマレイミド等のマレイミド系化合物;エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、及びトリアリルイソシアヌレート等の多官能性単量体等が挙げられる。
なお、本明細書において、「多官能性単量体」とは、2以上の重合性官能基を有する単量体である。
耐衝撃性等の観点から、架橋弾性重合体層中の、アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又は共役ジエン系単量体単位の合計含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。
本発明におけるアクリル系多層構造重合体粒子(A)は、中心側から、30〜98.99質量%のメタクリル酸メチル単量体単位と、1〜70質量%のアルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル単量体単位と、0.01〜2質量%の多官能性単量体単位とを含む架橋樹脂層からなる第1層と、70〜99.9質量%のアルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル単量体単位と、0〜30質量%のメタクリル酸メチル単量体単位と、0.1〜5質量%の多官能性単量体単位とを含む架橋弾性重合体層からなる第2層と、70〜100質量%のメタクリル酸アルキルエステル単量体単位と、0〜30質量%のアルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステル単量体単位とを含む硬質熱可塑性樹脂層からなる第3層とからなる3層構造重合体粒子であることがより好ましい。
3層構造重合体粒子において、各層の比率は特に制限されないが、第1層(最内層)が5〜40質量%であり、第2層(中間層)が20〜55質量%であり、第3層(最外層)が40〜75質量%であることが好ましい。
最外層の硬質熱可塑性重合体層に使用されるメタクリル酸アルキルエステルとしては例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、及びメタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。硬質熱可塑性重合体層中のメタクリル酸アルキルエステル単量体単位の含有量は、アクリル系多層構造重合体粒子(A)の分散性の観点から、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。
アクリル系多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径は10〜200nmである。平均粒子径が10nm未満である場合、アクリル系多層構造重合体粒子(A)の耐衝撃性、取扱い性が低下する傾向がある。一方、平均粒子径が200nm超である場合、本発明のアクリル系樹脂フィルムに応力が加えられたときに白化して光の透過性が低下しやすくなる(耐応力白化性が悪化する)傾向がある。耐応力白化性、耐衝撃性、取扱い性等の観点から、アクリル系多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径の下限値は、好ましくは40nmであり、より好ましくは70nmであり、上限値は、好ましくは150nmであり、より好ましくは110nmである。
上記平均粒子径は、ラテックスの状態でのアクリル系多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径であり、例えば、(株)堀場製作所製の「レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置 LA-300」を用いて測定することができる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの製造過程において、アクリル系多層構造重合体粒子(A)の非架橋の最外層等が溶融して、マトリクスを形成する場合がある。この場合、フィルム中のアクリル系多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径は、原料のアクリル系多層構造重合体粒子の平均粒子径よりも小さくなる。
本明細書において、特に明記しない限り、フィルム中のアクリル系多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径は、フィルムに存在している状態で透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により求めた値を用いる。当該平均粒子径は実施例に記載の方法で求めることができる。
フィルム中のアクリル系多層構造重合体粒子(A)は、TEM観察による平均粒子径が10〜200nmである。TEM観察による平均粒子径が10nm未満である場合、アクリル系多層構造重合体粒子(A)の取扱い性が低下し、また、得られたアクリル系樹脂フィルムの靭性が低下する傾向がある。一方、TEM観察による平均粒子径が200nm超である場合、本発明のアクリル系樹脂フィルムに応力が加えられたときに白化して光の透過性が低下しやすくなる(耐応力白化性が悪化する)傾向がある。耐応力白化性と耐衝撃性の観点から、TEM観察によるアクリル系多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径の下限値は、好ましくは30nmであり、より好ましくは60nmであり、上限値は、好ましくは150nmであり、より好ましくは100nmである。
アクリル系多層構造重合体粒子(A)の製造方法は特に制限されないが、乳化重合法によって製造されることが好ましい。まず、1種又は2種以上の原料単量体を乳化重合させて芯粒子をつくった後、他の1種又は2種以上の単量体を芯粒子の存在下に乳化重合させて芯粒子の周りに殻を形成させる。次いで必要に応じて、芯と殻からなる粒子の存在下にさらに1種又は2種以上の単量体を乳化重合させて別の殻を形成させる。このような重合反応を繰り返すことにより、目的とするアクリル系多層構造重合体粒子(A)を乳化ラテックスとして製造することができる。得られたラテックス中には、通常、架橋又はグラフト化されたアクリル系多層構造重合体粒子に加えて、メタクリル酸メチル単量体単位を有する直鎖の(メタ)アクリル系樹脂も存在するが、両者あわせてアクリル系多層構造重合体粒子(A)とする。
乳化重合に用いられる乳化剤としては特に制限されないが、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、及びノニオン・アニオン系乳化剤等が挙げられる。これら乳化剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
アニオン系乳化剤としては、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、及びジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;及びドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩等が挙げられる。
ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
ノニオン・アニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。
ノニオン系乳化剤又はノニオン・アニオン系乳化剤の例示化合物におけるオキシエチレン単位の付加モル数は、乳化剤の発泡性が極端に大きくならないようにするために、一般に30モル以下であり、好ましくは20モル以下であり、より好ましくは10モル以下である。
乳化剤の使用量は、例えば、アクリル系多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径が上述の範囲になるように適宜設定できる。
乳化重合に使用される重合開始剤は特に制限されず、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤;パースルホキシレート/有機過酸化物及び過硫酸塩/亜硫酸塩等のレドックス系開始剤等が挙げられる。
乳化重合には、必要に応じて連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、及びsec−ブチルメルカプタン等のアルキルメルカプタンが挙げられる。
各層の乳化重合に際し、単量体、乳化剤、重合開始剤、及び連鎖移動剤等の原料の重合反応系への添加は、一括添加法、分割添加法、及び連続添加法等の公知の任意の方法によって行うことができる。
各層の重合反応温度はいずれも好ましくは30〜120℃であり、より好ましくは50〜100℃である。各層の重合反応時間は、用いられる重合開始剤及び乳化剤の種類や使用量、重合温度によっても異なるが、各層とも通常0.5〜7時間である。単量体と水との質量比(単量体/水)は、好ましくは1/20〜1/1である。
アクリル系多層構造重合体粒子(A)は必要に応じて、乳化重合によって製造された重合体ラテックスに対して、公知方法により凝固、脱水、及び乾燥等を実施して、粉末状等の重合体として回収することができる。粉末状等のアクリル系多層構造重合体粒子(A)の分離回収方法としては、塩析凝固法、凍結凝固法、及び噴霧乾燥法等が挙げられる。中でも、不純物を水洗により容易に除去できる点から、塩析凝固法及び凍結凝固法が好ましい。なお、凝固工程の前に、エマルジョンに混入した異物を除去する目的で、目開き50μm以下の金網等を用いて濾過する工程を実施することが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)は、アクリル系多層構造重合体粒子(A)を2種以上含んでいてもよい。
(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)全量に対するアクリル系多層構造重合体粒子(A)の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは96質量%以下であり、さらに好ましくは94質量%以下である。アクリル系多層構造重合体粒子(A)の含有量が、60質量%以上であると、耐折性及び引張破断伸度等の物性を向上させることができ、98質量%以下であると製膜性を向上させることができる。
(高分子加工助剤(B))
本発明で用いる高分子加工助剤(B)は、平均重合度が20,000以上である。高分子加工助剤(B)の平均重合度が20,000未満であるとアクリル系多層構造重合体粒子(A)との相性が悪化し、引張破断伸度等の物性が低下するおそれがある。このような観点から、高分子加工助剤(B)の平均重合度は好ましくは21,000以上であり、より好ましくは22,000以上である。また、製膜性を向上させる観点から、好ましくは40,000以下であり、より好ましくは33,000以下であり、さらに好ましくは30,000以下である。
上記平均重合度は、粘度法により測定することができ、より具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
高分子加工助剤(B)は、例えば、乳化重合法によって製造することができる。
高分子加工助剤(B)は、平均重合度が20,000以上であれば特に制限されないが、メタクリル酸メチル単量体単位60質量%以上、及びこれと共重合可能なビニル系単量体単位40質量%以下からなることが好ましい。メタクリル酸メチル単量体単位の含有量は、アクリル系多層構造重合体粒子(A)との相性から、65〜95質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることがさらに好ましく、75〜85質量%であることがよりさらに好ましい。ビニル系単量体単位の含有量は、5〜35質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましく、15〜25質量%であることがよりさらに好ましい。
メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル系単量体の種類は特に制限されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、及びアクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル単量体;メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、及びメタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル;酢酸ビニル、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、及びビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα、β−不飽和カルボン酸;及びN−エチルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。これらの中でも、アクリル系多層構造重合体粒子(A)との相性から、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルが好ましく、アクリル酸ブチルがより好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)全量に対する高分子加工助剤(B)の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは7質量%以下であり、より好ましくは5.5質量%以下であり、さらに好ましくは4質量%以下であり、よりさらに好ましくは2.5質量%以下である。高分子加工助剤(B)の含有量が、0.1質量%以上であると、製膜性を向上させることができ、7質量%以下であるとアクリル系多層構造重合体粒子(A)によるフイルム靭性を維持させることができ、高分子加工助剤(B)による粘度増加を抑制することができる。
高分子加工助剤(B)としては、市販品を用いることができ、具体的には、三菱ケミカル(株)製のメタブレン(登録商標)Pタイプ、ダウケミカル社製のパラロイドシリーズ等が挙げられる。中でもメタブレン(登録商標)P530A、メタブレン(登録商標)P531Aが好ましく、特にメタブレン(登録商標)P530Aが好ましい。
高分子加工助剤(B)は、1種又は2種以上を用いることができる。
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)におけるアクリル系多層構造重合体粒子(A)及び高分子加工助剤(B)の合計の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。また、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは97質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以下である。
(メタクリル系樹脂(C))
前記(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)は、さらに平均重合度2,000以下のメタクリル系樹脂(C)を含むことが、製膜性をより向上させる観点から好ましい。
メタクリル系樹脂(C)の平均重合度が2,000を超えると溶融成形する際の流動性が低下するおそれがある。このような観点から、メタクリル系樹脂(C)の平均重合度は、好ましくは1,900以下であり、より好ましくは1,800以下であり、さらに好ましくは1,700以下である。また、好ましくは1,000以上であり、より好ましくは1,100以上であり、さらに好ましくは1,200以上である。
上記平均重合度は、粘度法により測定することができ、より具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
メタクリル系樹脂(C)は、耐熱性と靭性のバランスの観点から、メタクリル酸メチル単量体単位を80質量%以上含むことが好ましく、90〜99質量%含むことがより好ましく、92〜96質量%含むことがさらに好ましい。
メタクリル系樹脂(C)として、アクリル系多層構造重合体粒子(A)との親和性が良好で、屈折率が当該アクリル系多層構造重合体粒子(A)の屈折率と近いものを用いることによって、透明性の高い(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)を得ることができ、その結果、透明性の高いアクリル系樹脂フィルムを得ることができる。また、メタクリル樹脂(C)を含むことによってアクリル系樹脂フィルムの加工性を高めることができる。
メタクリル系樹脂(C)は、メタクリル酸メチル単量体単位以外に、共重合可能なビニル系単量体単位を20質量%以下含むことが好ましい。ビニル系単量体としては特に制限されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、及びアクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル単量体;メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、及びメタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル;酢酸ビニル、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、及びビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のα、β−不飽和カルボン酸;及びN−エチルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
メタクリル系樹脂(C)の好ましい重量平均分子量は75,000〜150,000であり、より好ましくは90,000〜145,000であり、さらに好ましくは100,000〜140,000である。メタクリル系樹脂(C)の重量平均分子量が75,000以上であると強度を向上させることができ、150,000以下であると製膜性を向上させることができる。
重量平均分子量(Mw)は実施例に記載の方法により測定することができる。
メタクリル系樹脂(C)の極限粘度は、0.3〜1.0dL/gであることが好ましく、0.4〜0.8dL/gであることがより好ましい。メタクリル系樹脂(C)の極限粘度が0.3dL/g以上であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)を溶融成形する際の粘り強さが低下するのを抑制することができる。また、メタクリル系樹脂(C)の極限粘度が1.0dL/g以下であると、溶融成形する際の流動性が低下するのを抑制することができる。
なお、上記極限粘度[η]は、20℃の水の中、ウベローデ型粘度計で比粘度(ηSP)を測定し、下記式(1)(ハギンスの式)を用いて算出される。

ηSP(dL/g):比粘度
[η](dL/g):極限粘度
C(g/dL):ポリマー粘度
K:ハギンス定数
メタクリル系樹脂(C)は、温度230℃、荷重3.8kg条件でのメルトフローレート(MFR)が好ましくは0.5〜15g/10分であり、より好ましくは0.7〜10g/10分であり、さらに好ましくは1.0〜5g/10分である。メタクリル系樹脂(C)のMFRが上記範囲内であると安定に製膜することができる。
なお、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210−1(2014)に準じて上記条件下で測定することができる。
(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)に含まれるメタクリル系樹脂(C)の含有量は特に制限されないが、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。メタクリル系樹脂(C)の含有量が1質量%以上であると加工性が向上し、50質量%以下であるとアクリル系樹脂フィルムの弾性率が増加し過ぎることを抑制し、しなやかさ及び耐応力白化性を向上させることができる。
メタクリル系樹脂(C)は、公知方法により重合されたものを用いることができる。メタクリル系樹脂(C)の重合法は特に制限されず、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、及び溶液重合法等が挙げられる。
メタクリル系樹脂(C)としては、例えば「パラペットGF」(MFR:15g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRL」(MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N))、及び「パラペットG」(MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N))[いずれも商品名、株式会社クラレ製]などの市販品又はISO8257−1の規定品を用いることができる。
(添加剤)
(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)は、上記した成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、1種又は2種以上の任意成分を含むことができる。
任意成分としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、有機色素、耐衝撃性改質剤、発泡剤、充填剤、及び蛍光体等の各種添加剤等が挙げられる。
上記任意成分の添加タイミングは特に制限されず、少なくとも1種のアクリル系多層構造重合体粒子(A)の重合時に添加されてもよいし、重合された少なくとも1種のアクリル系多層構造重合体粒子(A)に添加されてもよいし、少なくとも1種のアクリル系多層構造重合体粒子(A)及び高分子加工助剤(B)の混練時あるいは混練後に添加されてもよい。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有するといわれる化合物である。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、及びホルムアミジン類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記の中でも、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、及び波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm・mol−1cm−1以下である紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール類がより好ましい。
ベンゾトリアゾール類は、紫外線被照による着色等の光学特性低下を抑制する効果が高い。ベンゾトリアゾール類としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名:TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名:TINUVIN234)、及び2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブLA−31RG)等が好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、要求される耐光性によって変化するが、長期耐久性を求める場合、耐光性効果と添加によって問題となるブリードアウトの観点から、(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜3.5質量部であり、さらに好ましくは1〜2.5質量部である。
上記各種添加剤の合計量は特に制限されないが、(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)全量中、好ましくは0.01〜20質量%であり、より好ましくは0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは1〜5質量%である。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの全体ヘーズを低く抑える観点等から、(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)は、艶消し剤、光拡散剤等の微粒子を含まないことが好ましい。
[アクリル系樹脂フィルムの製造方法]
本発明のアクリル系樹脂フィルムの成形法としては、特に制限されず、例えば、押出成形法、溶液キャスト法、溶融流延法、インフレーション成形法、及びブロー成形法等が挙げられる。中でも、押出成形法が好ましく、(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)をTダイからフィルム状に溶融押出する工程と、フィルム状に押出された溶融物(以下、単に「溶融物」と記載する場合がある。)を、金属剛体ロール及び/又は金属弾性ロールからなる一対の冷却ロールで挟持する工程とを有する押出成形法がより好ましい。上記押出成形法によれば、フィルムの製膜性が良好となり、フィルムの凹凸や厚さムラ、筋の発生を抑制することができ、透明性が高く、厚さの均一性が高く、表面平滑性が良好なフィルムを、比較的高い生産性で得ることができる。
(Tダイ付押出機、ロール)
押出成形法では、Tダイ付き押出機が好ましく用いられる。Tダイ付き押出機は、(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)が投入されるホッパー等の原料投入部と、投入された(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)を加熱溶融し、Tダイ側に送り出すスクリュー部と、加熱溶融された(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)をフィルム状に押出すTダイとを少なくとも備える。
Tダイ付き押出機において、溶融状態となった(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)はギアポンプを用いてTダイに定量供給されることが好ましい。これによって、厚さ精度の高いフィルムを製造することができる。
溶融状態となった(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)はまた、ポリマーフィルター等を用いたろ過により不純物が除去された後、Tダイに供給されることが好ましい。Tダイ付き押出機の設定温度は特に制限されず、(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)の組成に応じて適宜設定され、好ましくは160〜280℃であり、より好ましくは220〜275℃であり、さらに好ましくは250〜270℃である。なお、Tダイ付き押出機の設定温度が、(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)の溶融温度(加工温度)である。
上記温度で溶融状態となった(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)は、Tダイの吐出口から垂直下方にフィルム状に押出される。Tダイの温度分布は好ましくは±15℃以下であり、より好ましくは±5℃以下であり、さらに好ましくは±1℃以下である。Tダイの温度分布が±15℃以下であると、溶融状態となった(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)に粘度ムラが生じず、得られるフィルムに厚さムラ、応力ムラによる歪み等が生じることを抑制することができる。
Tダイから押出された溶融物の冷却方法としては、ニップロール方式、静電印加方式、エアナイフ方式、カレンダー方式、片面ベルト方式、両面ベルト方式、及び3本ロール方式等が挙げられ、ニップロール方式が好ましい。
ニップロール方式では、Tダイから押出された溶融物は、アクリル系樹脂フィルムの所望の厚さに対応した距離の離間部を空けて互いに隣接して配置された複数の冷却ロール(ニップロール)を含む冷却ロールユニットにより加圧及び冷却される。
以下、冷却ロールユニットにおいて、上流側からn番目(nは1以上の整数)の冷却ロールを、「第nの冷却ロール」と称す。冷却ロールユニットは、Tダイの吐出口の下方に離間部を有する第1の冷却ロールと第2の冷却ロールとを少なくとも含む。冷却ロールの数は2以上であり、3〜4であることが好ましい。
Tダイから押出された溶融物は、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールとの間で挟持され、加圧及び冷却されて、本発明のアクリル系樹脂フィルムとなる。なお、上記の方法で製造されたアクリル系樹脂フィルムは、冷却ロールユニットだけでは充分に冷却されず、最下流の冷却ロールから離れる時点においても、通常、完全には固化していない。最下流の冷却ロールから離れた後、アクリル系樹脂フィルムは流下しながら、さらに冷却されていく。
上記のとおり、本発明のアクリル系樹脂フィルムの製造方法において、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールは金属剛体ロール及び/又は金属弾性ロールであることが好ましく、Tダイから押出された溶融物を金属剛体ロール及び/又は金属弾性ロールからなる一対の冷却ロールで挟持することが好ましく、少なくともどちらか一方が金属弾性ロールであることがより好ましく、一方が金属剛体ロールであり、他方が金属弾性ロールであることがさらに好ましい。
表面が平滑面、好ましくは鏡面である金属弾性ロールを用いることで、両フィルム面を、常温で高光沢を有し、良好な印刷性を有する面とすることができる。
金属剛体ロール及び金属弾性ロールに比して、ゴムロール等の非金属ロールは表面平滑性が低く、高光沢なフィルム面を得ることが難しい。
金属弾性ロールは、フィルム製造中に表面が弾性変形可能な金属ロールである。金属弾性ロールの表面は平滑面であり、好ましくは鏡面である。金属弾性ロールとしては、一般に押出成形で使用されている公知の金属弾性ロールを用いることができ、例えば、金属製中空ロールからなる内ロールと表面が平滑でフィルム製造中に弾性変形可能な金属製の外筒とを含み、内ロールの内部及び/又は内ロールと外筒との間に冷却流体が流下する二重構造の金属弾性ロールが用いられる。内ロールと外筒との間には、ゴム又は冷却目的ではない任意の流体を介在させてもよい。外筒の厚さは、フィルム製造中に破断せずに弾性変形可能な充分に薄い厚さを有し、例えば2〜8mm程度である。外筒は、溶接継ぎ部のないシームレス構造であることが好ましい。内ロール及び外筒の材料は特に制限されず、ステンレス鋼及びクロム鋼等が挙げられる。
[アクリル系樹脂フィルム]
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。本明細書において、特に明記しない限り、フィルムは未延伸フィルムを意味する。
通常、厚さが5〜250μmの場合は主に「フィルム」に分類され、250μmより厚い場合は主に「シート」に分類されるが、本明細書では、フィルムとシートとを明確に区別せず、両者を合わせて「フィルム」と称す。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの厚さは特に制限されない。
上記製造方法にて製造されるアクリル系樹脂フィルムの厚さは、好ましくは10〜500μmであり、より好ましくは20〜400μmであり、さらに好ましくは30〜120μmであり、特に好ましくは40〜80μmである。フィルムの厚さが10μm以上であると、成形しやくなる。また、厚さが500μm以下であると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性、及び打抜き性等の二次加工性が向上し、単位面積あたりの材料コストも抑えることができる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの、温度23℃、引張速度20mm/分の条件で測定した引張破断伸度は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、よりさらに好ましくは95%以上である。引張破断伸度が80%以上であると加工時の破断が生じにくくなり、生産性が向上する。
なお、上記引張破断伸度は、JIS K 7127(1999)に準拠して上記条件下で測定した値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの、温度23℃、引張速度20mm/分の条件で測定した引張破断強度は、好ましくは30MPa以上であり、より好ましくは33MPa以上であり、さらに好ましくは37MPa以上である。引張破断強度が30MPa以上であると製膜工程でのロール巻替え工程でフィルムが破断せず、連続生産性を確保することができる。
なお、上記引張破断強度は、JIS K 7127(1999)に準拠して上記条件下で測定した値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの、JIS P8115(2001)に準拠して測定した当該アクリル系樹脂フィルムの長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)における耐折回数は、いずれも好ましくは100回以上であり、より好ましくは150回以上であり、さらに好ましくは200回以上である。上記耐折回数が100回以上であると耐折性に優れたフィルムとなる。
上記耐折回数は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの、JIS K7128−1(1998)に準拠して測定したトラウザー引き裂き強度は、好ましくは1.0N/mm以上であり、より好ましくは1.2N/mm以上であり、さらに好ましくは1.4N/mm以上である。トラウザー引き裂き強度が1.0N/mm以上であるとフィルムの厚さ方向の強度を高めることができ、ハンドリング性を向上させることができる。
上記トラウザー引き裂き強度は、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよい。すなわち、上記未延伸フィルムに対して延伸処理を施して、延伸フィルムとしてもよい。延伸処理によって機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、及びチュブラー延伸法等が挙げられる。均一に延伸でき、高強度のフィルムが得られるという観点から、延伸温度の下限値は(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)のガラス転移温度(Tg)より10℃高い温度であることが好ましく、延伸温度の上限値は(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)のガラス転移温度(Tg)より40℃高い温度であることが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、加飾用フィルム、建材用フィルムであってもよい。また、本発明は、本発明のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に各種の層を備えてなる積層フィルムを含む。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面に印刷が施されていてもよい(印刷樹脂フィルム)。通常、本発明のアクリル系樹脂フィルムの任意の一方の面に印刷が施される。本発明のアクリル系樹脂フィルムは常温において、両面とも表面平滑性に優れることで、印刷抜けが抑制され、良好な印刷外観を有する印刷樹脂フィルムを提供することができる。
印刷方法としては特に制限されず、グラビア印刷法、フレキソグラフ印刷法、及びシルクスクリーン印刷法等の公知の印刷方法を用いることができる。
なお、基材上に印刷樹脂フィルムを積層する場合は、印刷面が基材と接するよう積層することが、印刷面の保護及び高級感の付与の点から好ましい。
<積層フィルム>
本発明の積層フィルムは、本発明のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、下記記載の機能層を備えてなるフィルム、金属及び金属酸化物から選ばれる1種以上よりなる層を備えてなるフィルム、基材層を備えてなるフィルム、カーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ABS系樹脂、AES系樹脂、PVB樹脂などの熱可塑性樹脂層を1種又は2種以上備えてなるフィルムが挙げられる。
上記機能層としては、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、防眩層、静電気防止層、防汚層、及び微粒子等を含む易滑性層等が挙げられる。
本発明の積層フィルムの製造方法は、特に制限されない。
本発明の積層フィルムの製造方法としては、(1)本発明のアクリル系樹脂フィルムの原料樹脂組成物((メタ)アクリル系樹脂組成物(R))と、他の熱可塑性樹脂(組成物)とを溶融共押出して、積層フィルムを製造する方法、(2)上記の本発明のアクリル系樹脂フィルムの原料樹脂組成物と、他の熱可塑性樹脂(組成物)のいずれか一方について、あらかじめフィルムを得、得られたフィルムに対して他方を溶融押出被覆して、積層フィルムを製造する方法、(3)上記の本発明のアクリル系樹脂フィルムの原料樹脂組成物と、他の熱可塑性樹脂(組成物)との双方について、あらかじめフィルムを得、これらをプレス熱圧着する方法、及び(4)上記の本発明のアクリル系樹脂フィルムの原料樹脂組成物について、あらかじめフィルムを得、得られたフィルム上にて重合性組成物を重合させて、積層フィルムを製造する方法、等が挙げられる。
上記(1)〜(4)等の方法で得られた積層フィルムに対して、本発明のアクリル系樹脂フィルムの露出面に印刷を施すことで、印刷樹脂フィルムを含む積層フィルムとすることもできる。
また、本発明のアクリル系樹脂フィルムは、基材上に、積層して、積層体とすることができる。基材上に、本発明のアクリル系樹脂フィルムを積層することによって、基材の意匠性の向上を図ることができる。また、基材保護の効果も得られる。
基材の材質としては特に制限されず、樹脂、鋼材、木材、ガラス、及びこれらの複合材料等が挙げられる。基材に用いられる樹脂としては特に制限されず、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。基材に用いられる熱可塑性樹脂としては、カーボネート系樹脂、エチレンテレフタレート系樹脂、アミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、及びABS系樹脂等が挙げられる。基材に用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、及びメラミン系樹脂等が挙げられる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムが積層された積層体の製造方法は特に制限されず、接着、ラミネート、インサート成形、及びインモールド成形等が挙げられる。
基材の材質が樹脂の場合には、基材の表面に対して、本発明のアクリル系樹脂フィルム等を、加熱下で、真空成形、圧空成形、又は圧縮成形する方法が好ましい。中でも、射出成形同時貼合法が特に好ましい。射出成形同時貼合法は、射出成形用の一対の雌雄金型間に本発明のアクリル系樹脂フィルム等を挿入した後、金型内(フィルムの一方の面上)に溶融した熱可塑性樹脂を射出成形する方法である。この方法では、射出成形体の製造とフィルムの貼合を同時に実施できる。
金型内に挿入されるフィルムは、平らなものでもよいし、真空成形又は圧空成形等で予備成形して得られた凹凸形状のものでもよい。フィルムの予備成形は、別個の成形機で行ってもよいし、射出成形同時貼合法に用いる射出成形機の金型内で行ってもよい。なお、フィルムを予備成形した後、その一方の面に溶融樹脂を射出する方法は、インサート成形法と呼ばれる。
基材の材質が樹脂の場合には、基材と積層するフィルムとを共押出成形する方法もある。
さらに、基材上に積層された本発明のアクリル系樹脂フィルムの上に紫外線(UV)又は電子線(EB)の照射によって硬化してなるコーティング層を付与することも可能である。この場合、意匠性又は基材保護性を一層高めることができる。
本発明の、アクリル系樹脂フィルム及び積層フィルムの用途は特に限定されず、意匠性の要求される各種用途に好ましく利用でき、例えば加飾用途、建材用途等に好ましく利用できる。
具体的な用途としては、家具、ペンダントライト、及びミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、及びレジャー用建築物の屋根等の建築用部品等が挙げられる。
その他の用途としては、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、及び屋上看板等の看板部品又はマーキングフィルム;ショーケース、仕切板、及び店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、及びシャンデリア等の照明部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ風防、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、自動車内装部材、及びバンパー等の自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、及びパソコン等の電子機器部品;保育器、及びレントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、及び観察窓等の機器関係部品;太陽電池のバックフィルム、及びフレキシブル太陽電池用フロントフィルム等の太陽電池用部品;各種家電製品;道路標識、案内板、カーブミラー、及び防音壁等の交通関係部品;温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ等の浴室部材、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、壁紙、及び熔接時の顔面保護用マスク等の表面に設けられる加飾フィルム兼保護フィルム等が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本発明は、上記特性値、形態、製法、用途などの技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせてなる全ての態様を包含する。なお、実施例及び比較例における物性値の測定等は以下の方法によって実施した。
〔アクリル系多層構造重合体粒子(A)のラテックス状態での平均粒子径〕
製造例1で得られたアクリル系多層構造重合体粒子(A)のラテックスを採取して、(株)堀場製作所製、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−300を用い、光散乱法によりその平均粒子径を求めた。
〔アクリル系樹脂フィルム中のアクリル系多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径(TEM観察によるアクリル系多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径)〕
透過型電子顕微鏡(TEM;JEOL製、型番:JSM−7600)を用いて加速電圧25kV、倍率10万倍でアクリル系樹脂フィルムを撮影した。得られた断面画像から100個のアクリル系多層構造重合体粒子(A)の粒子径を測定し、その平均粒子径を算出した。
〔平均重合度〕
自動粘度測定装置(柴山科学器械製作所製、型番:SS−405−L1)を用いて、クロロホルム溶媒、測定温度20℃の条件で測定した。
〔極限粘度〕
20℃の水の中、ウベローデ型粘度計(柴山科学器械製作所社製、型番:SS−405−L1)で比粘度(ηSP)を測定し、下記式(1)(ハギンスの式)を用いて極限粘度[η]を算出した。

ηSP(dL/g):比粘度
[η](dL/g):極限粘度
C(g/dL):ポリマー粘度
K:ハギンス定数
〔重量平均分子量(Mw)〕
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8320」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZM−M」と「SuperHZ4000」を直結
・検出器 :東ソー株式会社製「RI−8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.35mL/分
・サンプル濃度:8mg/10mL
・カラム温度 :40℃
〔引張破断強度と引張破断伸度〕
JIS K7127(1999)に準拠した方法で、実施例及び比較例で作製したアクリル系樹脂フィルムの中心部から試験片タイプ1Bの形状に金型を用いて打ち抜き、温度23℃、引張速度200mm/分で、引張破断強度と引張破断伸度を測定した。
〔耐折試験(耐折回数)〕
実施例及び比較例で作製したアクリル系樹脂フィルムの中心部から試験片を採取し、JIS P8115(2001)に準拠した方法で測定した。
〔トラウザー引き裂き強度〕
実施例及び比較例で作製したアクリル系樹脂フィルムの中心部から試験片を採取し、JIS K7128−1(1998)に準拠した方法で測定した。
〔製膜性〕
65mmΦベント式1軸押出機を用い、押出温度260℃で、幅400mmのダイ(リップ開度0.8mm)より、吐出量20kg/hで(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)を押出し、60℃の金属鏡面弾性ロールと65℃の金属鏡面剛体ロールの間に挟み込み、20m/分のライン速度で引き取り、厚さ50μmのフィルムを製膜した。この際、ダイから引き落とされたメルトカーテンの両端部のネックインによる膜厚の変動係数を評価した。なお、下記評価基準でA又はBであれば実用に供することができる。膜厚変動係数は、フィルム中央部を流れ方向に5mm間隔で計20点、マイクロメーター(ミツトヨ社製、型番:MDH−25)にて厚さを測定し、厚さムラを変動係数(%)(標準偏差/平均値×100)として算出した。
A:変動係数が0%以上1%未満
B:変動係数が1%以上3%未満
C:変動係数が3%以上
(製造例1:アクリル系多層構造重合体粒子(A)の重合)
(1)撹拌機、温度計、窒素ガス導入部、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、脱イオン水200質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1質量部及び炭酸ナトリウム0.05質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換して実質的に酸素がない状態にした後、内温を80℃に設定した。そこに、過硫酸カリウム0.01質量部を投入し、5分間撹拌した後、メタクリル酸メチル9.48質量部、アクリル酸n−ブチル0.5質量部及びメタクリル酸アリル0.02質量部からなる単量体混合物を20分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(2)次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.03質量部を投入して5分間撹拌した後、メタクリル酸メチル1.45質量部、アクリル酸n−ブチル27.67質量部及びメタクリル酸アリル0.88質量部からなる単量体混合物を40分間かけて連続的に滴下供給した。添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに30分間重合反応を行った。
(3)次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.06質量部を投入して5分間撹拌した後、メタクリル酸メチル53.73質量部、アクリル酸n−ブチル5.97質量部及びn−オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)0.3質量部を含む単量体混合物を100分間かけて連続的に滴下供給し、添加終了後、重合率が98%以上になるようにさらに60分間重合反応を行って、アクリル系多層構造重合体粒子(A)を含むラテックスを得た。ラテックス状態での平均粒子径は100nmであった。
続いて、アクリル系多層構造重合体粒子(A)を含むラテックスを−30℃で4時間かけて凍結させた。凍結したラテックスを2倍量の80℃温水に投入、溶解してスラリーとした後、20分間80℃に保持した後、脱水し、70℃で乾燥し、アクリル系多層構造重合体粒子(A)を得た。
(製造例2:メタクリル系樹脂(C)の重合)
メタクリル酸メチル94質量部およびアクリル酸メチル6質量部に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.18質量部を加え、溶解させて原料液を得た。イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部及び懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、当該混合液420質量部と前記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状のメタクリル系樹脂(C)を得た。得られたメタクリル系樹脂(C)は、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量が94質量%、アクリル酸メチル単量体単位の含有量が6質量%であり、平均重合度が1,605、重量平均分子量(Mw)が130,000、極限粘度が0.72dL/g、MFRが1.3g/10分であった。
高分子加工助剤、及び紫外線吸収剤は以下を用いた。
〔高分子加工助剤(B)〕
・高分子加工助剤(B1):三菱ケミカル(株)製、メタブレン(登録商標)P530A
(平均重合度:24,455、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量が80質量%、アクリル酸ブチル単量体単位の含有量が20質量%)
・高分子加工助剤(B2):三菱ケミカル(株)製、メタブレン(登録商標)P531A
(平均重合度:37,162、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量が80質量%、アクリル酸ブチル単量体単位の含有量が20質量%)
〔平均重合度が20,000未満の高分子加工助剤〕
・高分子加工助剤(D1):ダウケミカル社製、パラロイドK125P
(平均重合度:19,874、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量が79質量%、アクリル酸ブチル単量体単位の含有量が21質量%)
・高分子加工助剤(D2):三菱ケミカル(株)製、メタブレン(登録商標)P550A
(平均重合度:7,734、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量が88質量%、アクリル酸ブチル単量体単位の含有量が12質量%)
〔紫外線吸収剤〕
・紫外線吸収剤:(株)ADEKA製、アデカスタブLA−31RG
[実施例1]
製造例1で得られたアクリル系多層構造重合体粒子(A)90質量部、製造例2で得られたメタクリル系樹脂(C)10質量部、高分子加工助剤(B1)2質量部及び紫外線吸収剤2質量部を重量フィーダーでコントロールしながら41mmφの二軸混練押出機(東芝機械(株)製、TEM41−SS)のホッパーに投入し、ホッパー下の温度を150℃、その他のバレル、ダイ温度を230℃にそれぞれ設定して、(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)をストランド状に押出し、ペレタイザーでカットすることで、(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)のペレットを製造した。
得られたペレットを、65mmφのベント式1軸押出機を用い、押出温度260℃で、幅400mmのダイ(リップ開度0.8mm)より、吐出量20kg/hで押出し、60℃の鏡面である金属弾性ロールと65℃の鏡面である金属剛体ロールの間に挟み込み、20m/分のライン速度で引き取り、厚さ50μmのフィルムを製膜した。得られたフィルム中のアクリル系多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径は80nmであった。また、当該フィルムの評価結果を表1に示す。
[実施例2〜7]
表1に示す配合処方としたこと以外は、実施例1と同じ方法で(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)及びフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
[比較例1〜3]
表1に示す配合処方としたこと以外は、実施例1と同じ方法で(メタ)アクリル系樹脂組成物及びフィルムを得た。評価結果を表1に示す。平均重合度が20,000未満である高分子加工助剤(D1)及び(D2)を用いた場合には、引張破断伸度が劣る結果となった(比較例1及び2)。また高分子加工助剤を用いない場合には、製膜性が不足する結果となった(比較例3)。

Claims (12)

  1. アクリル系多層構造重合体粒子(A)と、高分子加工助剤(B)とを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)からなるアクリル系樹脂フィルムであって、
    前記アクリル系多層構造重合体粒子(A)は、TEM観察による平均粒子径が10〜200nmであり、前記高分子加工助剤(B)は、平均重合度が20,000以上であるアクリル系樹脂フィルム。
  2. 温度23℃、引張速度20mm/分の条件で測定した引張破断伸度が80%以上であり、かつ、前記条件で測定した引張破断強度が30MPa以上である、請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  3. JIS P8115(2001)に準拠して測定した前記アクリル系樹脂フィルムの長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)における耐折回数が、いずれも100回以上である請求項1又は2に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  4. JIS K7128−1(1998)に準拠して測定したトラウザー引き裂き強度が1.0N/mm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  5. 前記高分子加工助剤(B)は、メタクリル酸メチル単量体単位60質量%以上、及びビニル系単量体単位40質量%以下からなり、前記(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)全量に対する当該高分子加工助剤(B)の含有量が0.1〜7質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  6. 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)は、さらに平均重合度2,000以下のメタクリル系樹脂(C)を含み、当該(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)全量に対する当該メタクリル系樹脂(C)の含有量が1〜50質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  7. 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)は、さらにベンゾトリアゾール類の紫外線吸収剤を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  8. 少なくとも一方の面に印刷が施されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  9. 加飾用フィルムである請求項1〜7のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  10. 建材用フィルムである請求項1〜7のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、金属及び金属酸化物から選ばれる1種以上よりなる層、熱可塑性樹脂層、又は基材層を備えてなる積層フィルム。
  12. 前記(メタ)アクリル系樹脂組成物(R)をTダイからフィルム状に溶融押出する工程と、Tダイから押出された溶融物を、金属剛体ロール及び/又は金属弾性ロールからなる一対の冷却ロールで狭持する工程とを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
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