JP2022011004A - アクリル系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】高分子加工助剤の量が少なくても製膜安定性良くフィルムを製造できる、多層構造重合体粒子を含むアクリル系樹脂組成物を提供する。【解決手段】多層構造重合体粒子(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)とを含むアクリル系樹脂組成物であって、高分加工助剤を0.5質量%以下含み、キャピログラフのメルトテンション測定装置を用いて、押出温度270℃で、1mmφのキャピラリーから、10mm/分のピストンスピードで押出したストランドを、10倍のドロー比で引取った際の、30秒間のメルトテンションの平均値が8~20mNである、アクリル系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、製膜安定性良くフィルムを製造可能なアクリル系樹脂組成物に関する。
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは優れた透明性、色調、外観、耐候性、光沢及び加工性を有するため、様々な分野で使用されている。特に(メタ)アクリル系樹脂から成形されたフィルムは、透明性が高く、透湿性も小さく、一次加工及び二次加工が容易であるため光学用途や加飾用途等に広く使用されている。
一方、(メタ)アクリル系樹脂フィルムは一般的にもろく、靭性に欠けるという性質を有している。したがって、この性質を補うために(メタ)アクリル系樹脂に対して、架橋ゴム層を備え且つ特定の粒子径を有するグラフト共重合体の粒子を配合することにより、靭性を向上させる技術が提案されている(特許文献1~3)。
また、多層構造重合体粒子を用いて溶融押出で薄肉フィルムを製膜する場合に、ドローレゾナンスと呼ばれる、ダイから引きおとされたメルトカーテンの両端部のネックインや厚みが周期的に大きく変動する現象が発生し、製膜安定性良く(例えば長手方向の製膜安定性)薄肉フィルムを製造するのは困難である。
製膜安定性良くフィルムを製造する方法について、高分子加工助剤を加えることが知られているが、コストアップや欠点の増加、ヘーズの上昇に繋がる可能性がある。(特許文献4、5)
特開昭48-55233号公報 国際公開第2016/139927号 国際公開第2017/204243号 国際公開番号WO2017/141873 特許第5846809号
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高分子加工助剤の量が少なくても製膜安定性良くフィルムを製造できる、多層構造重合体粒子を含むアクリル系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題について鋭意検討した結果、樹脂組成物のメルトテンションの平均値を特定の範囲とすることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記[1]~[11]である。
[1]多層構造重合体粒子(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)とを含むアクリル系樹脂組成物であって、高分加工助剤を0.5質量%以下含み、キャピログラフのメルトテンション測定装置を用いて、押出温度270℃で、1mmφのキャピラリーから、10mm/分のピストンスピードで押出したストランドを、10倍のドロー比で引取った際の、30秒間のメルトテンションの平均値が8~20mNである、アクリル系樹脂組成物。
[2]前記多層構造重合体粒子(A)は、架橋ゴム(I)を含む内層と、前記内層とグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)とを含む外層とを有し、前記(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量は、70,000~150,000である、[2]に記載のアクリル系樹脂組成物。
[3]前記多層構造重合体粒子(A)は、前記内層の質量(V1)に対する前記外層の質量(V2)の比[V2/V1]が0.3~0.8である、[2]に記載のアクリル系樹脂組成物。
[4]前記多層構造重合体粒子(A)は、前記内層とグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)について、前記内層の質量に対する前記熱可塑性樹脂(II)の質量の比率で表されるグラフト率が25~90質量%である、[2]または[3]に記載のアクリル系樹脂組成物。
[5]前記多層構造重合体粒子(A)は、前記外層のガラス転移温度が80~120℃である[2]~[4]のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物。
[6]前記多層構造重合体粒子(A)は、前記グラフト結合している熱可塑性樹脂(II)の数平均分子量が20,000~50,000である、[2]~[5]のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物。
[7]前記多層構造重合体粒子(A)は、レーザー回析・散乱法により測定したメジアン径が80~500nmである、[1]~[6]のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物。
[8]前記高分子加工助剤を実質的に含まない、[1]~[7]のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物。
[9][1]~[8]のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物からなるフィルム。
[10][9]に記載のフィルムからなる加飾用フィルム。
[11][9]に記載のフィルムからなる光学用フィルム。
本発明によれば、高分子加工助剤の量が少なくても製膜安定性良くフィルムを製造できる、多層構造重合体粒子を含むアクリル系樹脂組成物を提供することができる。
本発明に用いられる多層構造重合体粒子の一例であって、内層が1つの層(第1層)からなり、外層が2つの層(第2層、第3層)からなる多層構造重合体粒子を示す図である。 本発明に用いられる多層構造重合体粒子の一例であって、内層が2つの層(第1層、第2層)からなり、外層が1つの層(第3層)からなる多層構造重合体粒子を示す図である。 本発明に用いられる多層構造重合体粒子の一例であって、内層が2つの層(第1層、第2層)からなり、外層が2つの層(第3層、第4層)からなる多層構造重合体粒子を示す図である。 本発明に用いられる多層構造重合体粒子のであって、内層が2つの層(第1層、第2層)からなり、外層が2つの層(第3層、第4層)からなる多層構造重合体粒子を示す図である。
本発明のアクリル系樹脂組成物は、多層構造重合体粒子(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)とを含むアクリル系樹脂組成物であって、高分子加工助剤を0.5質量%以下含み、キャピログラフのメルトテンション測定装置を用いて、押出温度270℃で、1mmφのキャピラリーから、10mm/分のピストンスピードで押出したストランドを、10倍のドロー比で引取った際の、30秒間のメルトテンションの平均値が8~20mNである。
本発明のアクリル系樹脂組成物の上記メルトテンションの平均値は、8.5mN%以上であることが好ましく、9.5mN以上であることがより好ましく、10mN以上であることが更に好ましい。また18mN以下であることが好ましく、15mN以下であることがより好ましく、13mN以下であることが更に好ましく、12mN以下であることがより更に好ましい。上記メルトテンションの平均値が8mN未満では、フィルムの製膜が難しくなり、20mN超では、機械への負荷が大きくなり、安定した製膜が困難になる。
上記メルトテンションの平均値は、多層構造重合体粒子(A)の各層の質量を調整することなどによって調整することができる。
また、本発明のアクリル系樹脂組成物は高分子加工助剤を0.5質量%以下含む。本発明アクリル系樹脂組成物は、高分子加工助剤の量が少なくても、製膜安定性良くフィルムを製造することができる。本発明のアクリル系樹脂組成物中の高分子加工助剤の含有量は、0.4質量%以下であってもよく、0.3質量%以下であってもよく、0.2質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。高分子加工助剤が0.5%超では、コストアップに繋がり、また、フィルム中のゲル欠点が増加する可能性がある。
本発明のアクリル系樹脂組成物は、多層構造重合体粒子(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む。
本発明のアクリル系樹脂組成物は、多層構造重合体粒子(A)と熱可塑性樹脂(B)との質量比[(A)/(B)]が10/90~90/10であることが好ましく、15/85~80/20であることがより好ましく、20/80~70/30であることが更に好ましく、25/75~60/40であることがより更に好ましく、25/75~50/50であることが特に好ましい。質量比[(A)/(B)]が前記範囲内であるとフィルムの耐衝撃性を向上させることができる。
また、本発明のアクリル系樹脂組成物における多層構造重合体粒子(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計含有量は80質量以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることがより更に好ましく、97質量%以上であってもよい。
[多層構造重合体粒子(A)]
多層構造重合体粒子(A)としては、架橋ゴム(I)を含む内層と、前記内層とグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)を含む外層とを有し、前記内層の質量(V1)に対する前記外層の質量(V2)の比[V2/V1]が0.3~0.8であるものを用いることが好ましい。
[V2/V1]は、内層及び外層の重合に用いる単量体混合物の量によって調整することができる。[V2/V1]は0.35~0.78であることがより好ましく、0.40~0.75であることが更に好ましい。上記範囲であることによって、多層構造重合体粒子(A)の長期熱安定性と耐衝撃性、マトリクス中での多層構造重合体粒子(A)の分散性が向上する。前記質量比[V2/V1]が0.30未満である場合、マトリクス中での分散不良により、製膜安定性が悪くなる可能性がある。また、前記質量比[V2/V1]が0.8超である場合、樹脂組成物の物性が低下し、製膜安定性に悪影響を与える可能性がある。マトリクス樹脂中における架橋ゴムの分解性や、多層構造重合体粒子のフィルムの製膜時等の滞留部での熱安定性の観点から、[V2/V1]は0.5以上であることがより好ましく、0.55以上であることがより更に好ましく、0.60以上であることがより更に好ましく、0.65以上であることがより更に好ましく、0.70以上であることが特に好ましい。[V2/V1]の上限値は前記のとおり、0.78であることがより好ましく、0.75であることが更に好ましい。
多層構造重合体粒子(A)において、架橋ゴム層が1層である場合は該架橋ゴム層を単独で、又は該架橋ゴム層とその内側の層をあわせて「内層」といい、該架橋ゴム層よりも外側の層を「外層」という。一方、架橋ゴム層を2層以上有する場合は、最も外側にある架橋ゴム層及び該架橋ゴム層よりも内側の層を合わせて「内層」といい、該架橋ゴム層よりも外側の層を「外層」という。本発明の多層構造重合体粒子の具体例を図1~4に例示する。
図1は、架橋ゴム層を1つ有する多層構造重合体粒子であって、該架橋ゴム層が単独で内層を形成し、該架橋ゴム層よりも外側の架橋PMMA(ポリメチルメタクリレート)層及びPMMA層が外層を構成する多層構造重合体粒子を示す図である。また、図2は架橋ゴム層とその内側の架橋PMMA層とが内層を形成し、該架橋ゴム層よりも外側のPMMA層が外層を形成する多層構造重合体粒子を示す図である。
更に、図3は架橋ゴム層とその内側の架橋PMMA層とが内層を形成し、該架橋ゴム層よりも外側の2つのPMMA層が外層を形成する多層構造重合体粒子を示す図であり、図4は、架橋ゴム層とその内側の架橋PMMA層とが内層を形成し、該架橋ゴム層よりも外側の架橋PMMA層とPMMA層とが外層を形成する多層構造重合体粒子を示す図である。
<内層>
本発明に用いられる多層構造重合体粒子(A)の内層は、架橋ゴム(I)を含むものである。
〔架橋ゴム(I)〕
内層を構成する架橋ゴム(I)としては、特に制限はなく、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム等が挙げられ、これらの中でも、アクリルゴムが好ましい。
架橋ゴム(I)に用いるアクリルゴムは、アクリル酸エステルに由来する構造単位(以下、「アクリル酸エステル単位」ともいう)と、多官能性単量体に由来する構造単位(以下、「多官能性単量体単位」ともいう)とを含むことが好ましい。多官能性単量体に由来する構造単位を含むことにより、架橋ゴム(I)と熱可塑性樹脂(II)とがグラフト結合できるようになる。
架橋ゴム(I)に用いられるアクリル酸エステルとしては、例えばエステル部分が置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基であるアクリル酸エステルが挙げられる。具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n―プロピルアクリレート、i―プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、エステル部分が置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基であるアクリル酸エステルが好ましく、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレートがより好ましく、n-ブチルアクリレートが更に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋ゴム(I)中のアクリル酸エステル単位の含有量は50.0~99.99質量%であることが好ましく、60.0~99.0質量%であることがより好ましく、70.0~98.0質量%であることが更に好ましく、75.0~96.0質量%であることがより更に好ましい。アクリル酸エステル単位の含有量がこの範囲内であることにより、多層構造重合体粒子(A)の耐衝撃性を向上させることができる。
架橋ゴム(I)に用いられる多官能性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルマレエート、アリルフマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。これらの中でも、アリルアクリレート、アリルメタクリレートが好ましく、アリルメタクリレートがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋ゴム(I)中の多官能性単量体単位の含有量は、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.1~4.5質量%であることがより好ましく、1.0~4.0質量%であることが更に好ましい。多官能性単量体単位の含有量がこの範囲内であることにより、所望のグラフト率を達成することができる。
架橋ゴム(I)は、前記アクリル酸エステル又は多官能性単量体と共重合可能な他の不飽和単量体を更に含んでもよい。他の不飽和単量体としては、例えば1,3-ブタジエン、1,2-ブタジエン、イソプレン、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、i-プロピルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらの中でも、透明性を向上させる観点からスチレンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋ゴム(I)が前記他の不飽和単量体を含む場合、その含有量は、0~49.99質量%であることが好ましく、0.99~39.99質量%であることがより好ましく、1.99~29.99質量%であることが更に好ましい。
〔架橋硬質体〕
本発明に用いられる多層構造重合体粒子(A)における内層は、架橋ゴム(I)を含む層の単層であってもよいし、組成の異なる架橋ゴム(I)をそれぞれ含む2層以上であってもよいし、架橋ゴム(I)とは組成の異なる1又は2以上の層を含んでもよいが、多層構造重合体粒子の強度を向上させる観点から、架橋硬質体を含む最内層(例えば図2、3、及び4に示す架橋PMMA層)を含むことが好ましい。本発明に用いられる多層構造重合体粒子(A)は、架橋硬質体、架橋ゴム(I)、熱可塑性樹脂(II)の3層構造であることが特に好ましい。
架橋硬質体は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位(以下、「メタクリル酸エステル単位」ともいう)を含むことが好ましい。具体的には、メタクリル酸エステルとしては、エステル部分が炭素数1~4のアルキル基であるメタクリル酸エステルが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
架橋硬質体中のメタクリル酸エステル単位の含有量は、40.0~99.0質量%であることが好ましく、50.0~98.0質量%であることがより好ましく、60.0~97.0質量%であることが更に好ましく、80.0~97.0質量%であることが特に好ましい。メタクリル酸エステル単位の含有量がこの範囲内であることにより、多層構造重合体粒子(A)の強度を向上させることができる。
また、架橋硬質体はアクリル酸エステルに由来する構造単位を含有することが好ましい。アクリル酸エステルとしては、例えばエステル部分が置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基であるエステルが挙げられる。具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n―プロピルアクリレート、i―プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、エステル部分が置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基であるアクリル酸エステルが好ましく、メチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレートがより好ましく、メチルアクリレートが更に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋硬質体中のアクリル酸エステル単位の含有量は0.1~20.0質量%であることが好ましく、1.0~15.0質量%であることがより好ましく、3.0~10.0質量%であることが更に好ましい。アクリル酸エステル単位の含有量がこの範囲内であることにより、多層構造重合体粒子(A)の耐衝撃性を向上させることができる。
また、架橋硬質体は多官能単量体に由来する構造単位を含有することが好ましい。架橋硬質体に用いられる多官能性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルマレエート、アリルフマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。これらの中でも、アリルアクリレート、アリルメタクリレートが好ましく、アリルメタクリレートがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋硬質体中の多官能性単量体単位の含有量は、0.01~3.0質量%であることが好ましく、0.1~2.0質量%であることがより好ましい。多官能性単量体単位の含有量がこの範囲内であることにより、多層構造重合体粒子(A)および該フィルムを所望の硬さに調整しやすい。
<外層>
本発明に用いられる多層構造重合体粒子(A)の外層は、前記内層とグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)を含む。外層は熱可塑性樹脂(II)とその他の樹脂とを含んで構成されていてもよい。マトリクス樹脂との相溶性の観点、製造容易性の観点から、多層構造重合体粒子(A)の外層は、熱可塑性樹脂(II)を50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましく、95質量%以上含むことがよりさらに好ましく、熱可塑性樹脂(II)のみからなるものであってもよい。
外層のガラス転移温度は80~120℃であることが好ましく、85~115℃であることがより好ましく、85~105℃であることが更に好ましい。ガラス転移温度は、実施例に記載の方法で測定することができる。
〔熱可塑性樹脂(II)〕
熱可塑性樹脂(II)としては、特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、(メタ)アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂(II)として用いられる(メタ)アクリル系樹脂はメタクリル酸エステル単位を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂(II)に用いられるメタクリル酸エステルとしては、エステル部分が炭素数1~4のアルキル基であるメタクリル酸エステルが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。熱可塑性樹脂(II)に用いられるメタクリル酸エステルは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂(II)中のメタクリル酸エステル単位の含有量は、40.0~100質量%であることが好ましく、50.0~99.0質量%であることがより好ましく、60.0~98.0質量%であることが更に好ましい。メタクリル酸エステル単位の含有量がこの範囲内であることにより、多層構造重合体粒子(A)の強度を適切に保つことができる。
熱可塑性樹脂(II)は、前記単量体と共重合可能な他の不飽和単量体に由来する構造単位を更に含むことができる。他の不飽和単量体としては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、コストの観点からメチルアクリレートが好ましい。
熱可塑性樹脂(II)に用いられる他の不飽和単量体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂(II)中の前記不飽和単量体の含有量は0~60質量%であってもよく、1~50質量%であってもよく、2~40質量%であってもよいが、耐熱分解性の観点から、上限値は25質量%であることが好ましく、12質量%であることがより好ましく、8質量%であることが更に好ましい。下限値は4質量%であってもよい。
熱可塑性樹脂(II)の数平均分子量は、20,000~50,000であることが好ましく、21,000~45,000であることがより好ましく、22,000~40,000であることが更に好ましく、30,000~40,000であることがより更に好ましい。熱可塑性樹脂(II)の数平均分子量が前記範囲内であることにより、フィルムの製膜時等における滞留部での熱安定性に優れた多層構造重合体粒子を得ることができる。
前記内層とグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)の数平均分子量を、多層構造重合体粒子から直接測定することは困難である。したがって、本発明においては、前記内層とグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)の数平均分子量を測定するために、内層とグラフト結合していない熱可塑性樹脂(II)を内層とグラフト結合させる時と同様の条件で製造し、その樹脂の数平均分子量からグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)の数平均分子量を推定する。前記グラフト結合していない熱可塑性樹脂(II)の数平均分子量は、標準ポリスチレンの分子量を基準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により求めることができる。
<多層構造重合体粒子(A)の製造方法>
本発明に用いられる多層構造重合体粒子(A)の製造方法は特に制限されないが、粒子径の制御のしやすさ等から乳化重合法により製造することが好ましい。具体的には、例えば架橋硬質体、架橋ゴム(I)、熱可塑性樹脂(II)の順で積層された3層構造の多層構造重合体粒子の場合、架橋硬質体を形成する重合反応工程(S1)、架橋ゴム(I)を含む層を形成する重合反応工程(S2)、熱可塑性樹脂(II)を含む層を形成する重合反応工程(S3)を、積層順序で行うことによって製造することができる。以下、前記3層構造の多層構造重合体粒子(A)を乳化重合法で製造する場合を例に説明する。
重合反応工程(S1)及び(S2)では、架橋硬質体、架橋ゴム(I)の組成に対応した単量体混合物を公知の方法により共重合することができ、具体的には、乳化剤、pH調整剤、重合開始剤、単量体混合物、連鎖移動剤等を水に混合し、加熱することによって、重合反応を行い、架橋硬質体のエマルジョン、及び架橋ゴム(I)のエマルジョンをそれぞれ得ることができる。
前記重合反応工程(S1)を行った後、架橋ゴム(I)の組成に対応した単量体混合物、重合開始剤、連鎖移動剤等を前記エマルジョンに加えることで、内側の第1層として架橋硬質体、第2層として架橋ゴム(I)を含む層を得ることができる。なお、(S1)及び(S2)はそれぞれ複数回行ってもよく、そうすることによって、より多数層の多層構造重合体粒子(A)を製造することができる。
重合反応工程(S3)では、熱可塑性樹脂(II)の組成に対応する単量体混合物、重合開始剤、連鎖移動剤をエマルジョンに加え(共)重合させることによって、多層構造重合体粒子(A)を得ることができる。
前記重合反応工程(S1)~(S3)に用いる乳化剤としては、乳化重合に用いられる乳化剤であれば特に制限されないが、アニオン系乳化剤、及びノニオン系乳化剤等を用いることができる。これら乳化剤は、1種又は2種以上用いることができる。
アニオン系乳化剤としては、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、及びジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられる。
ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
前記重合反応工程(S1)~(S3)に用いる重合開始剤としては、反応性ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えばtert-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert-ヘキシルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエ-ト、tert-ヘキシルパーオキシネオデカノエ-ト、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1-ビス(tert-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、過硫酸カリウムが好ましい。
重合開始剤の使用量は、重合反応工程(S1)~(S3)のそれぞれの単量体混合物100質量部に対して、それぞれ0.001~0.5質量部であることが好ましく、0.01~0.4質量部であることがより好ましく、0.05~0.3質量部であることが更に好ましい。
前記重合反応工程(S1)~(S3)に用いる連鎖移動剤としては、例えばn-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス-(β-チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート等が挙げられる。これらのうちn-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタンが好ましく、n-オクチルメルカプタンがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の使用量は適宜調整することができるが、重合反応工程(S3)における使用量は、重合反応原料100質量部に対して、好ましくは0.01~0.2質量部であり、より好ましくは0.02~0.18質量部であり、更に好ましくは0.03~0.17質量部であり、特に好ましくは0.05~0.15質量部である。また、重合反応工程(S3)における連鎖移動剤の使用量は、使用する重合開始剤100質量部に対して、好ましくは1~199質量部であり、より好ましくは5~190質量部、更に好ましくは10~150質量部である。
連鎖移動剤の使用量が前記範囲内であることによって、多層構造重合体粒子(A)におけるグラフト率を調整することができる。
多層構造重合体粒子(A)のグラフト率は、多層構造重合体粒子(A)の内層(例えば架橋ゴム(I)及び架橋樹脂)と前記内層とグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)について、前記内層の質量に対する前記内層とグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)の質量の比率である。係るグラフト率(質量%)は、実施例に記載の方法で求めることができる。
多層構造重合体粒子(A)のグラフト率は、好ましくは25~90質量%であり、より好ましくは28~80質量%であり、更に好ましくは30~70質量%であり、より更に好ましくは40~60質量%である。グラフト率がこの範囲内であることにより、マトリックス樹脂(ベース樹脂)中における長期熱安定性と耐衝撃性が向上する。グラフト率は、多官能性単量体の配合量、連鎖移動剤の配合量等によって調整することができる。
乳化重合法により得られた多層構造重合体粒子(A)を含有するエマルジョンからの多層構造重合体粒子(A)の取り出しや精製は、公知の方法によって行うことができる。例えば、凍結凝固や水洗により行うことができる。
多層構造重合体粒子(A)のエマルジョンについて、レーザー回析-散乱法により測定したメジアン径Deは、80~500nmであることが好ましく、150~400nmであることがより好ましく、200~300nmであることが更に好ましい。多層構造重合体粒子(A)のメジアン径Deが前記範囲内であることによって、必要な耐衝撃性が得られる。
ここで多層構造重合体粒子(A)のメジアン径Deとは、多層構造重合体粒子(A)の外径の平均値であり、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
[(メタ)アクリル系樹脂(B)]
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、熱可塑性樹脂(II)として挙げた(メタ)アクリル系樹脂と同じものを用いることができる。(メタ)アクリル系樹脂(B)に用いられるメタクリル酸エステルは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、アクリル酸エステルを含んでいてもよく、アクリル酸エステルとしては、例えばエステル部分が置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基であるエステルが挙げられる。具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、i-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、エステル部分が置換基を有していてもよい炭素数1~8の炭化水素基であるエステルが好ましく、メチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレートがより好ましく、メチルアクリレートが更に好ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、メタクリル酸エステル単位を80.0~99.9質量%、アクリル酸エステル単位を0.1~20.0質量%含む(メタ)アクリル系樹脂であることが好ましく、メタクリル酸エステル単位を85.0~99.8質量%、アクリル酸エステル単位を0.2~15.0質量%含む(メタ)アクリル系樹脂であることがより好ましく、メタクリル酸エステル単位を90.0~99.7質量%、アクリル酸エステル単位を0.3~10.0質量%含む(メタ)アクリル系樹脂であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、50~170℃であることが好ましく、70~150℃であることがより好ましく、90~140℃であることが更に好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)が前記範囲内であることにより、安定に製膜することができる。
なお、(メタ)アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度はJIS K7121:2012に準拠して測定することができ、具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。測定には、示差走査熱量測定(DSC)装置(例えば、TA製;Q20)を用いることができる。DSC曲線の測定条件は、試料を230℃まで一度昇温し、次いで-90℃まで冷却し、その後、-90℃から230℃までを10℃/分で昇温させる条件とする。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から中間点ガラス転移温度を求め、係る中間点ガラス転移温度をガラス転移温度(Tg)とする。
(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量は、フィルムが適度な強度を有する点から、70,000~150,000であることが好ましく、75,000~140,000であることがより好ましく、80,000~130,000であることがさらに好ましい。

[任意成分:添加剤]
本発明のアクリル系樹脂組成物は、上記した成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、1種または2種以上の任意成分を含むことができる。
任意成分としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、有機色素、耐衝撃性改質剤、発泡剤、充填剤、および蛍光体等の各種添加剤等が挙げられる。
上記任意成分の添加タイミングは特に制限されず、少なくとも1種の(メタ)アクリル系樹脂の重合時に添加されてもよいし、重合された少なくとも1種の(メタ)アクリル系樹脂に添加されてもよいし、少なくとも1種の(メタ)アクリル系樹脂、および必要に応じて任意成分の混練時あるいは混練後に添加されてもよい。
<酸化防止剤>
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、およびチオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、同一分子中にリン系酸化防止剤の効果を持つ部分およびフェノール系酸化防止剤の効果を持つ部分を含む酸化防止剤を用いることもできる。これらの酸化防止剤は1種または2種以上を用いることができる。中でも、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤等が好ましく、フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
リン系酸化防止剤としては、2,2-メチレンビス(4,6-ジt-ブチルフェニル)オクチルホスファイト(ADEKA社製;商品名:アデカスタブHP-10)、トリス(2,4-ジt-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRGAFOS168)、および3,9-ビス(2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサー3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製;商品名:アデカスタブPEP-36)等があげられる。
フェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジt-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANOX1010)、およびオクタデシル-3-(3,5-ジt-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名IRGANOX1076)等があげられ、ブリードアウトの発生が少ない観点から、融点の高いペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジt-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANOX1010)がより好ましい。
同一分子中にリン系酸化防止剤の効果を持つ部分およびフェノール系酸化防止剤の効果を持つ部分を含む酸化防止剤としては、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]-ジオキサスホスフェピン(住友化学工業社製;商品名:Sumilizer GP)等があげられる。
酸化防止剤の添加量は、酸化劣化防止効果と添加によるブリードアウトの観点から、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部であり、より好ましくは0.03~0.5質量部であり、さらに好ましくは0.05~0.3質量部である。
<熱劣化防止剤>
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。熱劣化防止剤としては、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、および2,4-ジt-アミル-6-(3’,5’-ジt-アミル-2’-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)等が好ましい。
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有するといわれる化合物である。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、およびホルムアミジン類等が挙げられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。上記の中でも、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、および波長380~450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール類は、紫外線被照による着色等の光学特性低下を抑制する効果が高い。ベンゾトリアゾール類としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)、および、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール](ADEKA社製;LA-31)等が好ましい。
トリアジン類の紫外線吸収剤は、長期の耐光性が要求される場合に好ましく用いられ、光による分解が少なく長期まで紫外線抑制効果が得られる。トリアジン類としては、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(ADEKA社製;LA-F70)、およびその類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;TINUVIN477-D、TINUVIN460、TINUVIN479、TINUVIN1600)等が挙げられ、ビフェニルタイプのTINUVIN479、TINUVIN1600が特に好ましい。
トリアジン類の紫外線吸収剤は、耐光性に優れるが高価であるため、経済性も含めて考えた場合には、ベンゾトリアゾール類とトリアジン類の併用が好ましい。ベンゾトリアゾール類/トリアジン類の重量比は90/10~10/90であることが好ましく、70/30~30/70であることがより好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、要求される耐光性によって変化するが、長期耐久性を求める場合、耐光性効果と添加によって問題となるブリードアウトの観点から、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.5~3.5質量部であり、さらに好ましくは1~2.5質量部である。
<光安定剤>
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有するといわれる化合物である。光安定剤としては公知のものを用いることができるが、好適な光安定剤としては、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類等が挙げられる。このような光安定剤として、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-77などの市販品を用いることができる。なかでも、融点が100℃以上である光安定剤が好ましく、アデカスタブLA-57が好適に用いられる。
光安定剤の添加量は、耐光性とブリードアウトの観点から、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~1質量部であることがより好ましく、0.1~0.5質量部であることがさらに好ましい。
<滑剤>
滑剤としては、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、および硬化油等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。
<離型剤>
離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;および、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。特に、高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用することが好ましい。高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、その割合は特に制限されないが、高級アルコール類:グリセリン脂肪酸モノエステルの質量比で、2.5:1~3.5:1であることが好ましく、2.8:1~3.2:1であることがより好ましい。
<高分子加工助剤>
上記のとおり、本発明のアクリル系樹脂組成物中の高分子加工助剤の含有量は、0.5質量%以下あり、0質量%であってもよい。
本発明のアクリル系樹脂組成物が高分子加工助剤を含む場合、高分子加工助剤としては、例えば、乳化重合法によって製造され、60質量%以上のメタクリル酸メチル単位およびこれと共重合可能な40質量%以下のビニル系単量体単位からなり、平均重合度が3,000~40,000であり、0.05~0.5μmの粒子径を有する重合体粒子が用いられる。かかる重合体粒子は、単一組成および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、組成または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。特に、内層に比較的低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の比較的高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましい。高分子加工助剤は、極限粘度が3~6dl/gであることが好ましい。
極限粘度が過小あるいは過大では、製膜性が低下する恐れがある。具体的には、三菱レイヨン社製メタブレン-Pシリーズ、ロームアンドハース社製、ダウケミカル社製、および呉羽化学社製のパラロイドシリーズ等が挙げられる。
<有機色素>
有機色素としては、紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物等が好ましく用いられる。
<蛍光体>
蛍光体としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、および蛍光漂白剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。
上記各種添加剤の合計量は特に制限されないが、アクリル系樹脂組成物100質量%中、好ましくは0.01~20質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%であり、さらに好ましくは1~5質量%である。本発明のアクリル系樹脂組成物からなるフィルムの全体ヘーズを低く抑える観点等から、艶消し剤、光拡散剤等の微粒子を含まないことが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂組成物は、粉状であってもよく、粒子状であってもよく、ベレットであってもよい。これらは、上記多層構造重合体粒子(A)と上記(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む樹脂組成物を用いて製造される。
本発明は、本発明のアクリル系樹脂組成物からなるフィルムを含む。本発明のフィルムは、上記多層構造重合体粒子(A)と上記(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む樹脂組成物を用いて製造される。
[フィルムの成形方法]
本発明のフィルムの成形法としては、押出成形法、溶液キャスト法、溶融流延法、インフレーション成形法、およびブロー成形法等が挙げられる。中でも、押出成形法が好ましく、多層構造重合体粒子(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む混合物(アクリル系脂組成物)をTダイからフィルム状に溶融押出する工程と、フィルム状に押出された溶融物(以下、単に「溶融物」と記載する場合がある。)を、一方が金属剛体ロールであり、他方が金属弾性ロールである一対の冷却ロールで挟持する工程とを含む押出成形法がより好ましい。上記押出成形法によれば、フィルムの製膜性が良好となり、フィルムの凹凸や厚みムラ、筋の発生を抑制することができ、透明性が高く、厚さの均一性が高く、表面平滑性が良好なフィルムを、比較的高い生産性で得ることができる。
[押出工程]
本発明において、アクリル系樹脂組成物を溶融状態でフィルム状に形成する為に押出機を好適に用いることができ、該押出機として、例えば単軸押出機、同方向噛合型二軸押出機、同方向非噛合型二軸押出機、異方向非噛合型二軸押出機、多軸押出機等が挙げられる。その中でも、樹脂の熱劣化防止の観点から、単軸押出機が好ましい。また、樹脂中の残存揮発分および加熱分解物を除去するため、ベント機構を有する押出機を使用することが好ましい。
押出機に投入するアクリル系樹脂組成物の形態としては、固体状態の樹脂、好ましくは約3mm角のペレット形状を用いることが好ましい。このペレット形状の樹脂は、一般に押出機の原料供給口に取り付けられたホッパーを介して押出機内に供給される。
押出機に供給されるアクリル系樹脂組成物は、加水分解や酸化劣化を抑制する観点から、事前に加熱乾燥することが好ましい。係る乾燥条件としては100℃で3時間以上が好ましく、アクリル系樹脂組成物中の水分量を200ppm以下とすることが好ましい。また、係る乾燥は窒素等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。なお、乾燥は、押出機にペレットを供給するホッパーに乾燥機構を設けるホッパー型乾燥機を用いる方法;ホッパーにアクリル系樹脂組成物を供給する前に乾燥機を用いて乾燥し、吸湿しないようホッパーに供給する方法;またはその両方を用いる方法などを好適に用いることができる。これらのうち、押出機にアクリル系樹脂組成物を供給する直前まで乾燥できるため、ホッパー型乾燥機を用いる方法が好ましく、さらにホッパー前にも乾燥機を用いることがより好ましい。
押出機で使用するスクリュとしては、圧縮比2~3程度の一般的なフルフライト構成のものを用いることができるが、未溶融物が生じないよう、バリアフライト等の特殊な混練機構を持つスクリュを用いてもよい。スクリュ回転数は好ましくは15~45rpm、より好ましくは20~40rpmである。
押出機を使用する際の押出条件は、押出機出口での樹脂温度(押出し温度)が好ましくは220~280℃、より好ましくは240~270℃となるように各シリンダー部の温度を設定することが好ましい。押出機出口での樹脂温度が220℃未満であると、押出機のトルクオーバーが生じたりフィルム成形が困難となることがあり、280℃を超えると樹脂の熱劣化が生じたり、金型汚れが生じる傾向となる。また、押出機のシリンダー部の温度は、ダイ吐出時の樹脂温度との差が好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは5℃以下となるように設定することが好ましい。シリンダー部の温度とダイ吐出時の樹脂温度との差が20℃より大きい場合、フィルムの均一性が低下する傾向となる。
押出機などの溶融手段により得られた溶融樹脂は、次いでギアポンプを用いてダイに供給することが好ましい。ギアポンプを用いることで押出機における吐出量変動を低減し、供給定量性が向上し、フィルム厚さの安定性が向上する。ギアポンプより定量的に供給された溶融樹脂、或いは押出機から直接供給された溶融樹脂は、例えば管状の流路を通りダイに供給され、ダイからフィルム状に吐出される。
[Tダイ、ロール]
本発明のフィルムの製造において、フィルム状に吐出される溶融樹脂を形成する為に、各種構造のダイを使用することができるが、Tダイが好ましい。また、幅方向の厚さ調整機構としてボルト等の押し込みによりリップの幅方向任意部分の間隙を調整できるものが好ましい。更に、フィルムの厚さをオンラインで測定し、任意の厚さプロファイルとの偏差を自動調整可能な、例えば熱作動式ボルトを用いて自動で厚さプロファイルの調整をすることが、精度良く厚さを調整できるため好ましい。
Tダイから押出された溶融物の冷却方法としては、ニップロール方式、静電印加方式、エアナイフ方式、カレンダー方式、片面ベルト方式、両面ベルト方式、および3本ロール方式等が挙げられ、ニップロール方式がより好ましい。
ニップロール方式では、Tダイから押出された溶融物は、フィルムの所望の厚みに対応した距離の離間部を空けて互いに隣接して配置された複数の冷却ロール(ニップロール)を含む冷却ロールユニットにより加圧および冷却される。
以下、冷却ロールユニットにおいて、上流側からn番目(nは1以上の整数)の冷却ロールを、「第nの冷却ロール」と称す。冷却ロールユニットは、Tダイの吐出口の下方に離間部を有する第1の冷却ロールと第2の冷却ロールとを少なくとも含む。冷却ロールの数は2以上であり、3~4であることが好ましい。
Tダイから押出された溶融物は、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールとの間で挟持され、加圧および冷却されて、本発明のフィルムとなる。なお、上記の方法で製造されたフィルムは、冷却ロールユニットだけでは充分に冷却されず、最下流の冷却ロールから離れる時点においても、通常、完全には固化していない。最下流の冷却ロールから離れた後、フィルムは流下しながら、さらに冷却されていく。
上記のとおり、本発明のフィルムの製造方法において、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールは金属剛体ロールまたは金属弾性ロールであることが好ましく、少なくともどちらか一方が金属弾性ロールであることがより好ましい。
表面が平滑面、好ましくは鏡面である金属弾性ロールを用いることで、両フィルム面を、常温で高光沢を有し、良好な印刷性を有する面とすることができる。
金属剛体ロールおよび金属弾性ロールに比して、ゴムロール等の非金属ロールは表面平滑性が低く、高光沢なフィルム面を得ることが難しい。
金属弾性ロールは、フィルム製造中に表面が弾性変形可能な金属ロールである。金属弾性ロールの表面は平滑面であり、好ましくは鏡面である。金属弾性ロールとしては、一般に押出成形で使用されている公知の金属弾性ロールを用いることができ、例えば、金属製中空ロールからなる内ロールと表面が平滑でフィルム製造中に弾性変形可能な金属製の外筒とを含み、内ロールの内部および/または内ロールと外筒との間に冷却流体が流下する二重構造の金属弾性ロールが用いられる。内ロールと外筒との間には、ゴムまたは冷却目的ではない任意の流体を介在させてもよい。外筒の厚みは、フィルム製造中に破断せずに弾性変形可能な充分に薄い厚みを有し、例えば2~8mm程度である。外筒は、溶接継ぎ部のないシームレス構造であることが好ましい。内ロールおよび外筒の材料は特に制限されず、ステンレス鋼およびクロム鋼等が挙げられる。
第1の冷却ロールおよび第2の冷却ロールのうち少なくとも一方は、ロール両端部の外径がロール中央部の外径よりも小さく設計されていることが好ましい。この場合、外周面に形成されるロール両端部とロール中央部との間の段差は、好ましくは0.5~1.0mmである。少なくとも一方の冷却ロールの外周面に上記段差が形成されていると、フィルムの両端部の厚みを中央部よりも若干厚くすることができ、両端部から切れが発生して生産性が低下することを抑制することができる。上記段差の形状は特に制限されず、垂直状、テーパ状、および階段状のいずれでもよい。なお、フィルムの中央部より多少厚くしたフィルムの両端部は、必要に応じて、後工程で切断除去することができる。段差は、それぞれの場所のロールの外周を測定してその差から算出することができる。
第1の冷却ロールおよび第2の冷却ロールの温度はフィルムの外観不良の観点から、好ましくはマトリクス樹脂のTg-50℃~Tg-15 ℃であることが好ましい。
第1の冷却ロールおよび第2の冷却ロールから溶融物にかかる線圧は特に制限されないが、溶融物を均一に加圧する観点から、好ましくは5kg/cm以上であり、より好ましくは10kg/cm以上であり、さらに好ましくは15kg/cm以上である。第1の冷却ロールおよび第2の冷却ロールから溶融物にかかる線圧の上限は特に制限されず、冷却ロールが弾性変形でき、フィルムの破断を防止できることから、50kg/cm程度である。
本発明のフィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。本明細書において、特に明記しない限り、フィルムは未延伸フィルムを意味する。
通常、厚みが5~250μmの場合は主に「フィルム」に分類され、250μmより厚い場合には主に「シート」に分類されるが、本明細書では、フィルムとシートとを明確に区別せず、両者を合わせて「フィルム」と称す。
本発明のフィルムの厚みは特に制限されないが、厚みの薄いフィルムを製膜する場合において、特に本発明のアクリル系樹脂組成物の効果が奏功する傾向にある。
本発明の未延伸のフィルム(未延伸フィルム)の厚さは、好ましくは10~500μmであり、より好ましくは30~400μmであり、さらに好ましくは40~120μmであり、特に好ましくは50~100μmである。厚さが10μm未満のフィルムは、製造が難しくなる傾向がある。また、厚さが500μm超であると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性、および打抜き性等の二次加工性が低下し、単位面積あたりの材料コストも増大する傾向がある。
<延伸フィルム>
本発明のフィルムは、延伸フィルムであってもよい。すなわち、上記未延伸フィルムに対して延伸処理を施して、延伸フィルムとしてもよい。延伸処理によって機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、およびチュブラー延伸法等が挙げられる。均一に延伸でき、高強度のフィルムが得られるという観点から、延伸温度の下限は好ましくはアクリル系脂組成物のガラス転移温度(Tg)より10℃高い温度であることが好ましく、延伸温度の上限は好ましくはアクリル系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)より40℃高い温度であることが好ましい。
本発明のフィルムを用いることによって、本発明のフィルムからなる印刷樹脂フィルム、加飾用フィルム、光学用フィルム、建材用フィルム、また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムを含む積層フィルムおよび積層体を得ることができる。
<印刷樹脂フィルム>
本発明のフィルムからなる印刷樹脂フィルムは、本発明のフィルムの少なくとも一方の面に印刷が施されたものである。通常、本発明の樹脂フィルムの任意の一方の面に印刷が施される。本発明のフィルムは常温において、両面とも表面平滑性に優れることで、印刷抜けが抑制され、良好な印刷外観を有する印刷樹脂フィルムを提供することができる。
印刷方法としては特に制限されず、グラビア印刷法、フレキソグラフ印刷法、およびシルクスクリーン印刷法等の公知の印刷方法を用いることができる。
なお、基材上に本発明の印刷樹脂フィルムを積層する場合は、印刷面が基材と接するよう積層することが、印刷面の保護および高級感の付与の点から好ましい。
<積層フィルム>
本発明のフィルムを含む積層フィルムは、本発明のフィルムを少なくとも1つ含む複数の層を有するフィルムであり、例えば、下記記載の機能層を設けたフィルム、カーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ABS系樹脂、AES系樹脂、PVB樹脂などの熱可塑性樹脂等からなるフィルムを1種または2種以上積層したものである。
上記機能層としては、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、防眩層、静電気防止層、防汚層、および微粒子等を含む易滑性層等が挙げられる。
上記の積層フィルムの製造方法は、特に制限されない。
本発明のフィルムを含む積層フィルムの製造方法としては、(1)本発明のフィルムの原料樹脂組成物と、他の熱可塑性樹脂(組成物)とを溶融共押出して、積層フィルムを製造する方法、(2)上記の本発明のフィルムの原料樹脂組成物と、他の熱可塑性樹脂(組成物)のいずれか一方について、あらかじめフィルムを得、得られたフィルムに対して他方を溶融押出被覆して、積層フィルムを製造する方法、(3)上記の本発明のフィルムの原料樹脂組成物と、他の熱可塑性樹脂(組成物)との双方について、あらかじめフィルムを得、これらをプレス熱圧着する方法、 および、(4)上記の本発明のフィルムの原料樹脂組成物について、あらかじめフィルムを得、得られたフィルム上にて重合性組成物を重合させて、積層フィルムを製造する方法、等が挙げられる。
上記(1)~(4)等の方法で得られた積層フィルムに対して、本発明のフィルムの露出面に印刷を施すことで、印刷樹脂フィルムを含む積層フィルムとすることもできる。
<積層体>
本発明のフィルムを含む積層体は、基材上に、本発明のフィルムが積層されたものである。基材上に、本発明のフィルムを積層することで、基材の意匠性向上を図ることができる。また、基材保護の効果も得られる。
基材の材質としては特に制限されず、樹脂、鋼材、木材、ガラス、およびこれらの複合材料等が挙げられる。基材に用いられる樹脂としては特に制限されず、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられる。基材に用いられる熱可塑性樹脂としては、カーボネート系樹脂、エチレンテレフタレート系樹脂、アミド系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、およびABS系樹脂等が挙げられる。基材に用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、およびメラミン系樹脂等が挙げられる。
上記の積層体の製造方法は特に制限されず、接着、ラミネート、インサート成形、およびインモールド成形等が挙げられる。
基材の材質が樹脂の場合には、基材の表面に対して、本発明のフィルム等を、加熱下で、真空成形、圧空成形、または圧縮成形する方法が好ましい。中でも、射出成形同時貼合法が特に好ましい。射出成形同時貼合法は、射出成形用の一対の雌雄金型間に本発明のフィルム等を挿入した後、金型内(フィルムの一方の面上)に溶融した熱可塑性樹脂を射出成形する方法である。この方法では、射出成形体の製造とフィルムの貼合を同時に実施できる。
金型内に挿入されるフィルムは、平らなものでもよいし、真空成形または圧空成形等で予備成形して得られた凹凸形状のものでもよい。フィルムの予備成形は、別個の成形機で行ってもよいし、射出成形同時貼合法に用いる射出成形機の金型内で行ってもよい。なお、フィルムを予備成形した後、その一方の面に溶融樹脂を射出する方法は、インサート成形法と呼ばれる。
基材の材質が樹脂の場合には、基材と積層するフィルムとを共押出成形する方法もある。
さらに、基材に積層された本発明のフィルムの上に紫外線(UV)または電子線(EB)の照射によって硬化してなるコーティング層を付与することも可能である。この場合、意匠性または基材保護性を一層高めることができる。
本発明のフィルムの用途は特に限定されず、意匠性の要求される各種用途に好ましく利用でき、例えば加飾用途、建材用途等に好ましく利用できる。
具体的な用途としては、家具、ペンダントライト、およびミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、およびレジャー用建築物の屋根等の建築用部品等が挙げられる。
その他の用途としては、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、および屋上看板等の看板部品またはマーキングフィルム;ショーケース、仕切板、および店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、およびシャンデリア等の照明部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ風防、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、自動車内装部材、およびバンパー等の自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、およびパソコン等の電子機器部品;保育器、およびレントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、および観察窓等の機器関係部品;太陽電池のバックフィルム、およびフレキシブル太陽電池用フロントフィルム等の太陽電池用部品;各種家電製品;道路標識、案内板、カーブミラー、および防音壁等の交通関係部品;温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ等の浴室部材、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、壁紙、および熔接時の顔面保護用マスク等の表面に設けられる加飾フィルム兼保護フィルム等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。物性値の測定等は以下の方法によって実施した。実施例及び比較例に使用した単量体等の略称は以下の通りである。
MMA :メチルメタクリレート
ALMA:アリルメタクリレート
MA :メチルアクリレート
BA :n-ブチルアクリレート
St :スチレン
n-OM:n-オクチルメルカプタン
[グラフト率]
多層構造重合体粒子の粉末2gを精秤し、これをサンプルの質量(W)とした。精秤した粉末をアセトン118gに25℃で24時間浸漬した。その後、粉末及びアセトンを撹拌することで、多層構造重合体粒子をアセトン中に均一に分散させた。以上により、調合液を作製した。その後、4本のステンレス製遠沈管に調合液を各30g分取した。遠沈管はあらかじめ秤量しておいた。高速冷却遠心機(日立製作所製:CR22GIII)にて、0℃、20,000rpmで90分間遠沈管を遠心した。それぞれの遠沈管から上澄み液をデカンテーションにより除去した。その後、各遠沈管に新たにアセトン30gを入れた。沈殿物及びアセトンを撹拌した。再び遠沈管を遠心した後、上澄み液を除去した。撹拌、遠心分離及び上澄み除去を計4回繰り返した。以上により、アセトン可溶成分を十分に除去した。
その後、沈殿物を、遠沈管ごと真空乾燥にて乾燥させた。乾燥後に沈殿物を秤量することで、アセトン不溶成分の質量を求めた。下記の式に基づいて多層構造重合体粒子のグラフト率を算出した。
(グラフト率)={〔(アセトン不溶成分の質量)-(内部の架橋物(内層)の質量)〕/(内層の質量)}×100
ここで、内部の架橋物(内層)の質量は、内層の架橋ゴム(I)層、又は、内層の架橋ゴム(I)及びその内側の層(例えば架橋樹脂)を合わせた質量であり、多層構造重合体粒子の内部の架橋物(内層)を合成するために用いた成分の合計質量である。
[マトリクス樹脂((メタ)アクリル系樹脂(B))の重量平均分子量]
GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)を用いて測定した値に基づき、ポリスチレン換算分子量として求めた。測定条件は以下のとおりであった。
装置 :東ソー株式会社製GPC装置「HCL-8320」
分離カラム:東ソー株式会社製「TTSKguradcolumn SuperHZ-H」、「TSKgel HZM-M」及び「TSKgel SuperHZ4000」を直列に連結
溶離剤 :テトラヒドロフラン
溶離剤流量:0.35mL/分
カラム温度:40℃
検出方法 :示差屈折率(RI)法
[メジアン径De]
乳化重合によって得られた多層構造重合体粒子を含むエマルジョンを水で200倍に希釈した。係る水分散液をレーザー回析/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製:LA-950V2)にて分析し、分析値よりメジアン径Deを算出した。この際、多層構造重合体粒子及び水の屈折率をそれぞれ、1.4900及び1.3333とした。
[ガラス転移温度(Tg)]
JIS K7121:2012に準拠して測定した。測定に示差走査熱量測定(DSC)装置(島津製作所製;DSC-50)を用いた。多層構造重合体粒子の粉末5mgを精秤し、これを試料とした。DSC曲線の測定に際して、試料を230℃まで一度昇温し、次いで-90℃まで冷却し、その後、-90℃から230℃までを10℃/分で昇温させる条件を用いた。2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から中間点ガラス転移温度を求めた。係る中間点ガラス転移温度をガラス転移温度(Tg)とした。
[メルトテンション]
実施例または比較例で得られたアクリル系樹脂組成物のペレットを、キャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製 型式1D)を用いて、押出温度270℃で、直径1mmφ長さ40mmのキャピラリーより、ピストンスピード10mm/分で押出して得られるストランドを、付属のメルトテンション測定器で、引取速度9.8m/分(ドロー比10倍)で引き取り、測定間隔0.125秒で、30秒間測定し、その平均値を求めた。
[製膜安定性]
実施例または比較例に記載の方法でフィルムを製膜した際、ダイから引き落とされたメルトカーテンの両端部のネックインの変動やちぎれを目視で評価した。
A(良い): メルトカーテンの両端部のネックインの変動やちぎれがない。
B(普通):メルトカーテンの両端部のネックインの変動はあるが、やちぎれははい。
C(劣る):メルトカーテンの両端部のネックインの変動やちぎれがある。
[製造例1:3層構造の多層構造重合体粒子(A-1)の製造]
〔架橋硬質体を含む層(第1層)の合成〕
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管及び還流冷却管を備えた反応器を用意した。係る反応器内に、イオン交換水733質量部、ポリオキシエチレン(EO=3)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.09質量部、及び炭酸ナトリウム0.5質量部を仕込んだ。反応器内を窒素ガスで十分に置換した。次いで内温を80℃にした。
別途、表1に示す第1層の組成からなる単量体混合物175質量部を調製した。係る単量体混合物に乳化剤としてポリオキシエチレン(EO=3)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム1.23質量部を溶解することで、第1層原料を調製した。反応器内に過硫酸カリウム0.17質量部を投入し、続いて、前記第1層原料を、45分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に40分間重合反応を行った。以上により第1層の重合体成分を含むエマルジョンを得た。
〔架橋ゴム(I)を含む層(第2層)の合成〕
次いで同反応器内に、過硫酸カリウム0.225質量部を投入した。別途、表1に示す第2層の組成からなる単量体混合物225質量部を調製した。係る単量体混合物に乳化剤としてポリオキシエチレン(EO=3)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.59質量部を溶解することで、第2層原料を調製した。前記工程で得られたエマルジョンを撹拌し、第2層原料を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に90分間重合反応を行い、架橋ゴム(I-1)を含むエマルジョンを得た。
〔熱可塑性樹脂(II)を含む層(第3層)の合成〕
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.289質量部を投入した。別途、表1に示す第3層の組成からなる単量体混合物289質量部を調製した。架橋ゴム(I-1)を含むエマルジョンを撹拌し、第3層の組成からなる単量体混合物を、75分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に115分間重合反応を行った。
以上の操作により、架橋ゴムに熱可塑性樹脂がグラフト重合している多層構造重合体粒子を含むエマルジョンを得た。係るエマルジョンを凍結することで、多層構造重合体粒子を凝固させた。次いで凝固物を水洗するとともに、乾燥することで多層構造重合体粒子(A-1)の粉体を得た。
[製造例2:3層構造の多層構造重合体粒子(A-2)の製造]
1層目及び2層目まで製造例1と同様の方法で架橋ゴム重合体を含むエマルジョンを得た。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.289質量部を投入した。別途、表1に示す第3層の組成からなる単量体混合物289質量部を調整した。架橋ゴム(I-1)を含むエマルジョンを撹拌し、第3層の組成からなる単量体混合物を、75分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に115分間重合反応を行った。
以上の操作により、架橋ゴムに熱可塑性樹脂がグラフト重合している多層構造重合体粒子を含むエマルジョンを得た。係るエマルジョンを凍結することで、多層構造重合体粒子を凝固させた。次いで凝固物を水洗するとともに、乾燥することで多層構造重合体粒子(A-2)の粉体を得た。
[製造例3:3層構造の多層構造重合体粒子(A-3)の製造]
1層目及び2層目まで製造例1と同様の方法で架橋ゴム重合体を含むエマルジョンを得た。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.289質量部を投入した。別途、表1に示す第3層の組成からなる単量体混合物289質量部を調整した。架橋ゴム(I-1)を含むエマルジョンを撹拌し、第3層の組成からなる単量体混合物を、75分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に115分間重合反応を行った。
以上の操作により、架橋ゴムに熱可塑性樹脂がグラフト重合している多層構造重合体粒子を含むエマルジョンを得た。係るエマルジョンを凍結することで、多層構造重合体粒子を凝固させた。次いで凝固物を水洗するとともに、乾燥することで多層構造重合体粒子(A-3)の粉体を得た。
[製造例4:3層構造の多層構造重合体粒子(A-4)の製造]
1層目及び2層目まで製造例1と同様の方法で架橋ゴム重合体を含むエマルジョンを得た。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.289質量部を投入した。別途、表1に示す第3層の組成からなる単量体混合物289質量部を調整した。架橋ゴム(I-1)を含むエマルジョンを撹拌し、第3層の組成からなる単量体混合物を、75分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に115分間重合反応を行った。
以上の操作により、架橋ゴムに熱可塑性樹脂がグラフト重合している多層構造重合体粒子を含むエマルジョンを得た。係るエマルジョンを凍結することで、多層構造重合体粒子を凝固させた。次いで凝固物を水洗するとともに、乾燥することで多層構造重合体粒子(A-4)の粉体を得た。
[製造例5:3層構造の多層構造重合体粒子(A-5)の製造]
1層目及び2層目まで製造例1と同様の方法で架橋ゴム重合体を含むエマルジョンを得た。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.2質量部を投入した。別途、表1に示す第3層の組成からなる単量体混合物200質量部を調製した。架橋ゴム(I-1)を含むエマルジョンを攪拌し、第3層の組成からなる単量体混合物を50分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に80分間重合反応を行った。
以上の操作により、架橋ゴムに熱可塑性樹脂がグラフト重合している多層構造重合体粒子を含むエマルジョンを得た。係るエマルジョンを凍結することで、多層構造重合体粒子を凝固させた。次いで凝固物を水洗するとともに、乾燥することで多層構造重合体粒子(A-5)の粉体を得た。
[製造例6:3層構造の多層構造重合体粒子(A-6)の製造]
1層目及び2層目まで製造例1と同様の方法で架橋ゴム重合体を含むエマルジョンを得た。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.1質量部を投入した。別途、表1に示す第3層の組成から成なる単量体混合物100質量部を調整した。架橋ゴム(I-1)を含むエマルジョンを撹拌し、第3層の組成からなる単量体混合物を、25分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、更に45分間重合反応を行った。
以上の操作により、架橋ゴムに熱可塑性樹脂がグラフト重合している多層構造重合体粒子を含むエマルジョンを得た。係るエマルジョンを凍結することで、多層構造重合体粒子を凝固させた。次いで凝固物を水洗するとともに、乾燥することで多層構造重合体粒子(A-6)の粉体を得た。
Figure 2022011004000001
表1中、V1-1は、多層構造重合体粒子(A)の内層の架橋硬質体の含有量(質量部)、V1-2は多層構造重合体粒子(A)の内層の架橋ゴム(I)の含有量(質量部)、V2は多層構造重合体粒子(A)の外層の含有量(質量部)を表す。
[(メタ)アクリル系樹脂(B)]
(メタ)アクリル系樹脂(B)としてB1:株式会社クラレ製パラペットHR-1000S(重量平均分子量:80,000)を使用した。
[実施例1]
株式会社クラレ製パラペットHR-1000S(B1)72質量部、及び製造例1において製造した多層構造重合体粒子(A-1)28質量部を重量フィーダーでコントロールしながら41mmφの二軸混練押出機(東芝機械株式会社製、TEM41-SS)のホッパーに投入し、ホッパー下の温度を150℃、バレル温度を250℃にそれぞれ設定して、アクリル系樹脂組成物をストランド状に押出し、ペレタイザーでカットすることで、アクリル系樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたアクリル系樹脂組成物のペレットをΦ15mmの二軸押し出し機(KZW テクノベル製)を用いて押出し温度250℃、スクリュ回転数35rpm、第一ロール温度90℃、巻取り速度3.5m/sで製膜した。
得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
[実施例2~6、比較例1]
多層構造重合体粒子(A)及び(メタ)アクリル系樹脂(B)の組成比、並びに高分子加工助剤の量を、表2に記載したとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。
得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
Figure 2022011004000002

Claims (11)

  1. 多層構造重合体粒子(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)とを含むアクリル系樹脂組成物であって、
    高分加工助剤を0.5質量%以下含み、
    キャピログラフのメルトテンション測定装置を用いて、押出温度270℃で、1mmφのキャピラリーから、10mm/分のピストンスピードで押出したストランドを、10倍のドロー比で引取った際の、30秒間のメルトテンションの平均値が8~20mNである、
    アクリル系樹脂組成物。
  2. 前記多層構造重合体粒子(A)は、架橋ゴム(I)を含む内層と、前記内層とグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)とを含む外層とを有し、
    前記(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量は、70,000~150,000である、
    請求項1に記載のアクリル系樹脂組成物。
  3. 前記多層構造重合体粒子(A)は、前記内層の質量(V1)に対する前記外層の質量(V2)の比[V2/V1]が0.3~0.8である、請求項2に記載のアクリル系樹脂組成物。
  4. 前記多層構造重合体粒子(A)は、前記内層とグラフト結合している熱可塑性樹脂(II)について、前記内層の質量に対する前記熱可塑性樹脂(II)の質量の比率で表されるグラフト率が25~90質量%である、請求項2または3に記載のアクリル系樹脂組成物。
  5. 前記多層構造重合体粒子(A)は、前記外層のガラス転移温度が80~120℃である請求項2~4のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物。
  6. 前記多層構造重合体粒子(A)は、前記グラフト結合している熱可塑性樹脂(II)の数平均分子量が20,000~50,000である、請求項2~5のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物。
  7. 前記多層構造重合体粒子(A)は、レーザー回析・散乱法により測定したメジアン径が80~500nmである、請求項1~6のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物。
  8. 前記高分子加工助剤を実質的に含まない、請求項1~7のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物。
  9. 請求項1~8のいずれかに記載のアクリル系樹脂組成物からなるフィルム。
  10. 請求項9に記載のフィルムからなる加飾用フィルム。
  11. 請求項9に記載のフィルムからなる光学用フィルム。
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