JP2018039916A - 樹脂組成物及び樹脂組成物からなるフィルム - Google Patents

樹脂組成物及び樹脂組成物からなるフィルム Download PDF

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翔平 峯田
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雅資 井川
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Abstract

【課題】本発明は、高透明性と高耐候性を併せ持ち、且つ長期間に亘り紫外線遮蔽能に優れる軟質フィルムの製造に有用である樹脂組成物、及び高透明性と高耐候性を併せ持ち、且つ長期間に亘り紫外線遮蔽能に優れる軟質フィルムを提供することにある。
【解決手段】樹脂組成物中の重合体に対して、15〜80質量%の下記重合体X、20〜85質量%の下記重合体Yを含有し、更に、紫外線吸収剤Zを含有する樹脂組成物;重合体X:フッ化ビニリデン系樹脂、重合体Y:重合体Xと相溶なドメイン(y1)及び重合体Xと非相溶なドメイン(y2)を有し、分子量分布が3.0〜16.0である共重合体、紫外線吸収剤Z:分子量が200〜300,000である紫外線吸収剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂組成物及び樹脂組成物からなるフィルムに関する。
フッ素樹脂は、その耐候性、難燃性、耐熱性、防汚性、平滑性、耐薬品性等、優れた性能を示す結晶性樹脂であり、特に屋外環境に晒される物品の材料として好まれる。フッ化ビニリデン系樹脂(以下「PVDF」と記す。)は融点と分解温度の差が大きく、成形加工に適した熱可塑性樹脂である。例えば、その耐候性と成形加工性を活かし、表面保護フィルムとしての用途が展開されている。
表面保護フィルムとして使用する場合、下層の基材を紫外線による劣化から防ぐために、紫外線吸収剤をフィルム中に含有させることが必須である。しかしながら、市販されている一般的な紫外線吸収剤とPVDFとは相溶性が乏しく、光学特性(全光線透過率、ヘーズ)の低下につながることがわかっている。さらに、PVDFの結晶は可視光の波長より大きいサイズまで成長しやすく、可視光の一部を散乱するため透明性が低い。そのため透明材料への適用が困難であった。
一方で、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるアクリル系樹脂は、フッ化ビニリデン系樹脂に相溶する非晶性樹脂である。透明性と耐候性に優れ、屋外環境に晒される物品の材料として好まれる。その優れた耐候性から、フッ素樹脂同様、表面保護フィルムとして用いることもできる。アクリル系樹脂は市販されている一般的な紫外線吸収剤との相溶性が良好であり、下層の基材を紫外線による劣化から防ぐ目的で紫外線吸収剤を含有させることができる。
フッ化ビニリデン系樹脂とアクリル系樹脂の相溶性を利用し、ポリマーブレンドにより各々の長所を取りいれる研究は数多くなされてきた。
例えば特許文献1のように、フッ化ビニリデン系樹脂とよく相溶するアクリル系樹脂を所定の割合で混合すれば、紫外線吸収剤を相溶させることができ、紫外線遮蔽能の高いフィルムを得ることができる。しかしながら、文献1に記載の方法では、紫外線吸収剤の単位を含む重合体又は反応型紫外線吸収剤を用いており、フィルムの力学物性に悪影響を及ぼすことが予想される。
また、特許文献2には、フッ化ビニリデン系樹脂に相溶するアクリル樹脂のブロック鎖を有するABAトリブロックコポリマーを用い、透明性と耐久性、及び有機材料への接着性を両立させる旨が記載されている。しかしながら、ブロックコポリマー中の紫外線吸収剤は有機材料への接着性を阻害するとの記載があり、紫外線吸収剤を含有した例は記載されていない。即ち、透明性と耐久性、及び紫外線遮蔽能を両立させた例ではない。
特開昭56−163140号公報 特表2015−513322号公報
本発明の目的は、高透明性と高耐候性を併せ持ち、且つ長期間に亘り紫外線遮蔽能に優れる軟質フィルムの製造に有用である樹脂組成物、及び高透明性と高耐候性を併せ持ち、且つ長期間に亘り紫外線遮蔽能に優れる軟質フィルムを提供することにある。
即ち、本発明は以下の特徴を有する。
[1] 樹脂組成物中の重合体に対して、15〜80質量%の下記重合体X、20〜85質量%の下記重合体Yを含有し、更に、紫外線吸収剤Zを含有する樹脂組成物;
重合体X:フッ化ビニリデン系樹脂、
重合体Y:重合体Xと相溶なドメイン(y1)及び重合体Xと非相溶なドメイン(y2)を有し、分子量分布が3.0〜16.0である共重合体、
紫外線吸収剤Z:分子量が200〜300,000である紫外線吸収剤。
[2] 紫外線吸収剤Zがベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び/又はトリアジン系紫外線吸収剤である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 重合体Xと重合体Yの合計100質量部に対して、紫外線吸収剤Zの含有量が0.01〜4質量部である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 重合体Xと重合体Yの合計100質量部に対して、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が0〜2.5質量部であり、トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が0〜4質量部である、[2]又は[3]に記載の樹脂組成物。
[5] 紫外線吸収剤Zの溶解度パラメーターが24.08(J/cm1/2以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム。
[7] 膜厚が10〜200μmである、[6]に記載のフィルム。
本発明の樹脂組成物は高透明性と高耐候性を併せ持ち、且つ長期間に及ぶ紫外線遮蔽能に優れる軟質フィルムの製造に用いることができるため、有用である。
本発明の軟質フィルムは高透明性と高耐候性を併せ持ち、且つ長期間に及ぶ紫外線遮蔽能に優れるため、有用である。
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物に含まれる重合体に対して、15〜80質量%の下記重合体X、及び、20〜85質量%の下記重合体Yを含有し、更に、紫外線吸収剤Zを含有する樹脂組成物である。
重合体X:フッ化ビニリデン系樹脂。
重合体Y:重合体Xと相溶なドメイン(y1)及び重合体Xと非相溶なドメイン(y2)を有し、分子量分布が3.0〜16.0である共重合体。
紫外線吸収剤Z:分子量が200〜300,000である紫外線吸収剤。
<重合体X>
本発明で用いる重合体Xは、フッ化ビニリデン系樹脂である。フッ化ビニリデン系樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマー、又はフッ化ビニリデン系樹脂中フッ化ビニリデン単位を70質量%以上含有するコポリマーが挙げられる。フッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデン単位の含有率が高いほど結晶性が良好であり、好ましい。
重合体Xがコポリマーである場合、重合体Xを製造するためにフッ化ビニリデンと共重合させるモノマーとしては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンが挙げられる。
重合体Xとして用いるフッ化ビニリデン系樹脂の重合方法としては、懸濁重合、乳化重合等、公知の重合法を用いることができる。
また、重合体Xとしては、高い結晶融点を有するフッ化ビニリデン系樹脂が好ましい。重合体Xとしては、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。尚、本発明において結晶融点は、JIS−K7121、3.(2)に記載の方法に準拠して測定したときの融解ピーク温度を意味する。
重合体Xの結晶融点は150℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。結晶融点の上限は、ポリフッ化ビニリデンの結晶融点に等しい170℃程度である。
重合体Xの質量平均分子量は、成形加工に適した溶融粘度を得るため5万〜60万が好ましく、10万〜50万がより好ましい。
本発明において、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した値をいい、例えば、テトラヒドロフランや水等の溶媒を溶離液として、ポリメチルメタクリレート換算分子量として求めた値を用いる。
重合体Xは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体Xとして工業的に入手可能な具体例としては、例えば、アルケマ(株)製のKynar720、Kynar710、Kynar740、(株)クレハ製のKF850、ソルベイスペシャリティポリマーズ(株)製のSolef6008、6010が挙げられる。
<重合体Y>
本発明で用いる重合体Yは、重合体Xに相溶するドメイン(y1)(以下「ドメイン(y1)」と記す。)及び重合体Xと非相溶なドメイン(y2)(以下「ドメイン(y2)」と記す。)を有する。
本発明において「化合物Aと化合物Bが相溶である」とは、化合物A及び化合物Bをブレンドして成形して得られた成形体にて、化合物Aと化合物Bのどちらにも由来しない単一のガラス転移温度(Tgともいう)が観測されることをいう。また、「化合物Aと化合物Bが非相溶である」とは、化合物A及び化合物Bをブレンドした成形体にて、化合物Aと化合物Bに由来するTgのみが観測されることをいう。
尚、成形体とは、例えば熱可塑性の樹脂組成物では、樹脂組成物を溶融したのちに所望の形状を与え、その後冷却して固化させたものをいう。
本発明での「ドメイン」とは、相分離構造を構成する一つの相のことを指す。異種ポリマーをブレンドした成形体が相分離構造を取る場合、各ドメインに由来するTgが観測される。
但し、異なるドメインに由来するそれぞれのTgが近い場合、非相溶にも関わらずあたかも単一のTgを示すかのように観測されることがあるので、注意を要する。
重合体Yとしては、ドメイン(y1)及びドメイン(y2)を形成するものであれば如何なるものでもよいが、例えば、マクロモノマーを用いた重合により得られる共重合体(以下「マクロモノマー共重合体」と記す。)、グラフト共重合体、ブロックポリマー(例えばジブロックポリマー、トリブロックポリマー等)、それらの混合物が挙げられる。生産性の点からはマクロモノマーを用いた重合により得られるマクロモノマー共重合体が好ましい。
本発明において、マクロモノマーとは、重合可能な官能基を持つ高分子化合物をいう。
マクロモノマーの合成方法としては、詳しくは後述するが、二重結合導入率や合成の容易さの点から、触媒連鎖移動重合(CCTP)法が好ましい。
重合体Yがマクロモノマー共重合体である場合、ドメイン(y1)又はドメイン(y2)は、マクロモノマー単位を含有する。即ち、ドメイン(y1)又はドメイン(y2)は、マクロモノマー単位を含有することが好ましい。特に、後述するドメイン(y1)のドメインサイズや重合体Yの相分離構造を簡便に調製できる点で、ドメイン(y1)がマクロモノマー単位を含有することが好ましい。
マクロモノマーとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、(メタ)アクリレート単量体、芳香族ビニル単量体が好ましい。更に、重合体Yのドメイン(y1)又はドメイン(y2)に含まれるマクロモノマー単位としては、(メタ)アクリレート単量体単位のみからなることが好ましい。更に、重合体Yが(メタ)アクリレート単量体単位のみからなることがより好ましい。
重合体Yは単独で成形したときに相分離するものが好ましい。重合体Yと重合体Xとをブレンドしたときに、重合体Xはドメイン(y1)とのみ相溶し、冷却したときにドメイン(y1)近傍で結晶化が進行する。
重合体Yの成形体の相分離構造はドメインサイズが小さいほど好ましい。ドメインサイズが小さいほど、結晶の微細化が起こりやすく、結晶性と透明性が簡便に両立しうる。更に、相のドメイン間の屈折率差による光学性能の低下も起こりにくくなる。各ドメインのサイズは500nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。ドメインサイズが500nm以下であれば、可視光域の波長が散乱しにくく、高い透明性が得られる。各ドメインのサイズの下限は、20nm程度である。尚、各ドメインのサイズとは、海島構造の場合は島相の長軸方向の長さ、共連続構造ないしラメラ構造の場合はドメイン間の界面とその最寄りの界面との最短距離を指す。ドメインのサイズは、成形体から厚さ20〜200nmの観察片を作成し、透過電子顕微鏡にて観察し、任意の5個のドメインについて測定した平均値をいう。
重合体Y単独で成形した成形体の相分離構造としては特に制限されず、例えば、海島構造、シリンダー構造、共連続構造、ラメラ構造が挙げられる。成形体の諸物性は、重合体Xとブレンドした後の相分離構造に左右される。
重合体Yの質量平均分子量は、5万〜75万が好ましい。質量平均分子量が5万以下であれば成形体としたときの力学強度を保つことができ、75万以下であれば流動性の低下による成形性の低下を防ぐことができる。力学強度と成形性を両立する点から、5万〜50万がより好ましい。
重合体Yの分子量分布(PDI)は3.0〜16.0である。PDIが3.0以上であれば、低分子量体を含むため成形に好適な流動性を確保しやすい。質量平均分子量と流動性の両立の点から、PDIは3.2以上が好ましく、3.5以上がより好ましい。
PDIが16.0以下であれば、成形時に熱的な緩和速度のムラに基づく微細な表面凹凸構造が発生しづらく、ヘーズ上昇や外観不良を招きにくい。PDIは12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましい。
PDIは3.2〜12.0が好ましく、3.5〜11.0がより好ましい。
重合体Yは、重合体Y100質量%に対して、ドメイン(y1)を構成するポリマーを1〜50質量%含有することが好ましい。ドメイン(y1)を構成するポリマーを1〜50質量%含有することで、重合体Yは重合体Xと部分相溶しやすくなる。
重合体Xの結晶化がドメイン(y1)近傍で進行するので、相分離構造の空間的制約から重合体Xの結晶が微細化しやすい。
重合体Y中、ドメイン(y1)を構成するポリマーの含有率が1質量%以上であれば、重合体Xと重合体Yとが部分相溶しやすくなる。
また、重合体Y中、ドメイン(y1)を構成するポリマーの含有率が50質量%以下であれば、重合体Xと重合体Yをブレンドして成形した成形体において、重合体Xとドメイン(y1)からなる相が島又は共連続な相分離構造をとりやすい。その結果、重合体Xの結晶が微細化しやすい。
重合体Yは、重合体Y100質量%に対して、ドメイン(y2)を構成するポリマーを50〜99質量%含有することが好ましい。ドメイン(y2)を構成するポリマーを50〜99質量%含有することで、重合体Xをブレンドした後も相分離構造をとることができる。
重合体Y中、ドメイン(y2)を構成するポリマーが50質量%以上であれば、重合体Xと重合体Yをブレンドした際に、重合体Xとドメイン(y1)からなる相が島もしくは共連続な相分離構造をとりやすい。その結果、重合体Xの結晶が微細化しやすい。
また、重合体Y中、ドメイン(y2)を構成するポリマーが99質量%以下であれば、重合体Xと重合体Yとが部分相溶しやすくなる。
本発明において、各ドメインの含有量は、各ドメインを構成する単量体の質量から算出する。
重合体Yにおけるドメイン(y1)を構成するポリマー及びドメイン(y2)を構成するポリマーの含有率の合計は100質量%である。
ドメイン(y1)は、重合体Xと相溶なポリマー、又は重合体Xと相溶なポリマー及び非相溶なポリマーからなる。
ドメイン(y1)としては、例えば、重合体Xと相溶なポリマーをドメイン(y1)100質量%中、60〜100質量%含有するものが挙げられる。重合体Xとの相溶性を充分に確保する点で、ドメイン(y1)中の重合体Xと相溶なポリマーの含有率は、70〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、90〜100質量%が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
重合体Xと相溶なポリマーを構成する単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ビニルメチルケトンが挙げられる。本願において「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を示す。
これら単量体の単位を含有するポリマーは、重合体Xと良好に相溶するため、ドメイン(y1)を構成するポリマーとして好適である。この中でも、相溶性の点からメチルメタクリレート単位を含有するポリマーが好ましい。
ドメイン(y1)は、前記単量体の単位の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
重合体Xと非相溶なポリマーを構成する単量体としては、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有単量体;酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸等の単量体が挙げられる。
これらの中でも、樹脂組成物の耐候性を損なわない点で、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
例えば、ドメイン(y1)がマクロモノマー単位を含有する場合、相溶性の点から、マクロモノマー単位はメチルメタクリレートの単位を含有することが好ましい。
また、重合体Yがブロックポリマーの場合、ドメイン(y1)はメチルメタクリレート単位からなることが好ましい。
重合体Xと重合体Yをブレンドしたときに、重合体Xの結晶化を促す点で、ドメイン(y1)を構成するポリマーの分子量は小さい方が好ましい。ドメイン(y1)を構成するポリマーの質量平均分子量は5千〜5万が好ましい。
ドメイン(y1)を構成するポリマーの分子量が小さすぎると、ドメイン(y1)とドメイン(y2)の相溶性が増し、相分離しなくなる虞がある。
また、ドメイン(y1)を構成するポリマーの分子量が高すぎると、ドメイン(y1)を構成するポリマーと重合体Xの絡み合いが大きくなり、重合体Xの結晶化を阻害する虞がある。
ドメイン(y1)とドメイン(y2)から重合体Yを形成する手段としては特に制限されないが、簡便な工程で重合体Yを形成できる点で、下記のA又はBの方法が挙げられる。
A:重合体Xと相溶なポリマーを構成する単量体単位を含有するマクロモノマーを、ドメイン(y1)を構成する単量体として用いる。
B:重合体Xと非相溶な単量体単位を含有するマクロモノマーを、ドメイン(y2)を構成する単量体として用いる。
マクロモノマーを用い、マクロモノマーの分子量を制御することにより、ドメイン(y1)又はドメイン(y2)のサイズや、重合体Yの相分離構造を簡便に調製することができる。
また、マクロモノマーを用いる手法は、重合体YのPDIを簡便に広げることができ、重合体Yの設計の点からも好適である。
ドメイン(y1)を構成する単量体としてマクロモノマーを用いる場合、マクロモノマーの質量平均分子量は5万以下が好ましい。マクロモノマーの質量平均分子量が5万以下であれば、重合体Yを重合する時に溶媒に溶解させやすい。
マクロモノマーの質量平均分子量は5千以上が好ましい。マクロモノマーの質量平均分子量が5千以上であれば、重合体Yにマクロモノマーの導入する工程が短く、生産性を損なわない。
ドメイン(y1)を構成する単量体としてマクロモノマーを用いる場合、マクロモノマーはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、ビニルメチルケトンのいずれかを主たる原料として重合してなるものが好ましい。
ここで主たる原料とは、マクロモノマー100質量%中、60質量%以上含まれるものを指す。重合体Xとの相溶性の点から、メチルメタクリレートを主たる原料として重合してなるものがより好ましい。
ドメイン(y2)は、重合体Xと相溶なポリマー及び重合体Xと非相溶なポリマー、又は重合体Xと非相溶なポリマーからなる。
ドメイン(y2)としては、例えば、ドメイン(y2)を構成するポリマー100質量%中、重合体Xと非相溶なポリマーを35〜80質量%含有するものが挙げられる。重合体Xとの非相溶性を充分に確保する点と重合安定性を確保する点で、重合体Xと非相溶なポリマーの含有率は、40〜75質量%が好ましく、45〜70質量%がより好ましく、50〜65質量%が更に好ましい。
ドメイン(y2)を構成するポリマーとしては、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有単量体;酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸等の単量体の単位からなるポリマーが挙げられる。
ドメイン(y2)を構成する重合体Xと非相溶なポリマーは、前記単量体の単位の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
これらの中でも、樹脂組成物の耐候性を損なわない点で、アルキル(メタ)アクリレート単量体の単位からなるポリマーが好ましい。
ドメイン(y2)は重合体Xと相溶なポリマーを含有してもよいが、ドメイン(y1)とドメイン(y2)は相分離する必要がある。そのため、重合体Xと相溶なポリマーの量は少ないほど好ましく、ドメイン(y2)を構成するポリマー100質量%中、重合体Xと相溶なポリマーは、20〜65質量%を含有する。重合体Xとの非相溶性を充分に確保する点で、重合体Xと相溶なポリマーの含有率は、25〜60質量%が好ましく、30〜55質量%がより好ましく、35〜50質量%が更に好ましい。
ドメイン(y2)に含有される重合体Xと相溶なポリマーとしては、例えば、ドメイン(y1)において重合体Xと相溶なポリマーとして例示したものと同様のものが挙げられる。
ドメイン(y2)を構成する単量体の単位は、目的に応じて選定することができる。例えば、重合体X及び重合体Yを含有する本願の樹脂組成物に柔軟性を付与したい場合には、n−ブチルアクリレートのようにポリマーのTgが低いビニル単量体の単位を選定することができる。また、樹脂組成物に耐熱性を付与したい場合には、α−メチルスチレンのようにポリマーのTgが高いビニル単量体の単位を選定することができる。
ドメイン(y2)が重合体Xと相溶なポリマーを含有する場合、ドメイン(y2)は重合体Xと非相溶なポリマーを形成する単量体と、重合体Xと相溶なポリマーを形成する単量体とのランダムコポリマーであることが好ましい。
ドメイン(y2)を構成する単量体としては、例えば重合体Xと非相溶なポリマーを形成する単量体としてn−ブチルアクリレート、重合体Xと相溶なポリマーを形成する単量体としてメチルメタクリレートを用いることができる。
<重合体Yの製造方法>
重合体Yは、上述したように、ドメイン(y1)及びドメイン(y2)を有する。
重合体Yの製造方法としては、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRPともいう)等のリビングラジカル重合、アニオン重合、マクロモノマーを用いた重合等、公知の方法が使用できる。この中では、重合速度や工程数等、生産性に優れる点から、マクロモノマーを用いた重合方法が好ましく、有機溶媒が必要ないため環境適合性の点からマクロモノマーを用いた懸濁重合がより好ましい。
マクロモノマーは、市販品を用いてもよく、公知の方法で単量体から製造してもよい。マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、αブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、重合性基を化学的に結合させる方法、熱分解による方法が挙げられる。
以下、一例としてドメイン(y1)を構成する単量体としてマクロモノマーを用いた懸濁重合により重合体Yを得る方法を詳述するが、他の方法により重合体Yを得ても、本発明を逸脱するものではない。
ドメイン(y1)を構成する単量体としてマクロモノマーと、ドメイン(y2)を構成する単量体とを混合し、得られた混合物にラジカル重合開始剤を添加して重合を行ない、重合体Yを得る。
ドメイン(y1)を構成する単量体とドメイン(y2)を構成する単量体とを混合する際には、加温することが好ましい。加熱温度が30℃以上であれば、ドメイン(y1)を構成するマクロモノマーがドメイン(y2)を構成する単量体に溶解しやすくなり、加熱温度が90℃以下であれば、単量体混合物の揮発を抑制できる。
加熱温度の下限は、35℃以上が好ましい。加熱温度の上限は、75℃以下が好ましい。混合時の加熱温度は30〜90℃が好ましく、35〜75℃がより好ましい。
混合時間は、例えば10分〜1時間である。
重合体Yの製造においてラジカル重合開始剤を使用する際、ラジカル重合開始剤の添加は、単量体を全て混合された後に行なうことが好ましい。単量体が混合されたとは、単量体が充分に分散された状態をいう。
ラジカル重合開始剤を添加する際の単量体の混合物の温度は、用いるラジカル重合開始剤によっても異なるが、0℃以上が好ましく、ラジカル重合開始剤固有の10時間半減期温度より15℃以上低い温度が好ましい。ラジカル重合開始剤を添加する際の温度が0℃以上であれば、ラジカル重合開始剤の単量体への溶解性が良好となる。ラジカル重合開始剤を添加する際の温度がラジカル重合開始剤固有の10時間半減期温度より15℃以上低ければ、安定して重合することができる。
ラジカル重合開始剤を添加する際の温度は、例えばラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN,10時間半減期温度67℃)を用いる場合、30〜50℃である。尚、市販のラジカル開始剤では、10時間半減期温度は専ら30℃以上であり、「10時間半減期温度より15℃以上低い」ことと「0℃以上」が矛盾することはない。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が挙げられる。
これらの中では、入手しやすさの点で、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が好ましい。
ラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の添加量は、重合発熱制御の点で、単量体の合計100質量部に対して、0.0001〜10質量部が好ましい。
懸濁重合での重合温度、即ち、単量体の混合物にラジカル重合開始剤を添加した後の重合反応中の温度は、50〜120℃である。
以上のような製造方法にて得た重合体Yは、水から濾取した後に乾燥することでビーズとして容易に取り扱うことができる。
<紫外線吸収剤Z>
本発明で用いる紫外線吸収剤Zは、表面保護フィルムとして用いた場合、下層の基材を紫外線から長期に亘り保護する目的で使用する。そのため、紫外線吸収剤Zに求められる性能としては、下層の基材の紫外線領域における吸収波長を吸収し、遮蔽することである。
また、長期に亘り、紫外線遮蔽能を有することが求められるため、成形中及び成形後に紫外線吸収剤が揮散しないことが望ましい。
本発明で用いる重合体Xと重合体Yから成る樹脂組成物(以下「ベースポリマー」と称する。)を用いて製造されるフィルムは軟質フィルムであることから、特に成形後の紫外線吸収剤の揮散が生じやすい。従って、紫外線吸収剤Zの分子量、種類、含有量、及び溶解度パラメーター(SP値)を最適化し、ベースポリマーへの相溶性を確保する必要がある。
紫外線吸収剤Zの分子量は200〜300,000である。分子量が200以上であれば、射出成形金型内で真空成形又は圧空成形を施す際に紫外線吸収剤が揮発しにくく、金型汚れが発生しにくい。また、成形後に紫外線吸収剤が徐々に表面に滲み出すことが少なくなる。
このような点から、紫外線吸収剤Zの分子量の下限は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。一方、分子量が300,000以下であれば、ベースポリマーへの紫外線吸収剤Zの相溶性が確保できる。このような点から、紫外線吸収剤Zの分子量の上限は200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。
紫外線吸収剤Zの種類としては、例えば、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチレート系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
これらの中でも、ベースポリマーへの相溶性の点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び/又はトリアジン系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
分子量400以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が挙げられる。
市販品では、例えば、「チヌビン234」(商品名、BASF(株)製)、「アデカスタブLA−31」(商品名、(株)ADEKA製)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
分子量400以上のトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−[4,6−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−[(2−エチルヘキシル)オキシ]フェノール、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4,6−ジビフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(ヘキシルオキシ)フェノールが挙げられる。
市販品では、例えば、「チヌビン1600」、「チヌビン460」、「チヌビン1577」(以上、商品名、BASF(株)製)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤Zとしては、これら市販品の他に、重合体を構成する主鎖又は側鎖に、前記の紫外線吸収剤単位を化学結合させた重合体型紫外線吸収剤を用いることもできる。具体的には、紫外線吸収剤にビニル基等の重合性二重結合を有する基を付与した反応型紫外線吸収剤と重合性二重結合を有する単量体を共重合させた重合体を指す。
重合体型紫外線吸収剤としては、反応型紫外線吸収剤とアルキル(メタ)アクリレート等を重合して得られる重合体が好ましい。具体的には、反応型紫外線吸収剤0.1〜30質量%、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート50〜99.8質量%、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート0.1〜49.9質量%、及び、その他の単量体0〜49.8質量%の合計100質量%を重合して得られる重合体を用いることができる。
反応型紫外線吸収剤としては、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチレート系、シアノアクリレート系の反応型紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、取扱性、入手しやすさの点から、ベンゾトリアゾール系の反応型紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール系の反応型紫外線吸収剤として、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチル−3’−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール類が挙げられる。
これらの中でも、入手しやすさとコストの点から、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールが好ましい。
アルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートが挙げられる。これらの中では、メチルメタクリレートが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の単量体としては、例えば、スチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体型紫外線吸収剤の製造方法は、特に限定されず、例えば、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の各種重合法を用いることができる。重合時に、連鎖移動剤、その他の重合助剤等を用いてもよい。連鎖移動剤は特に限定されないが、メルカプタン類が好ましい。
重合体型紫外線吸収剤の質量平均分子量は、ベースポリマーとの相溶性、得られるフィルムの光学特性及び力学物性への影響の点から、300,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下が更に好ましい。また、質量平均分子量は、時間経過に伴う紫外線吸収剤のブリードアウト防止の点から、10,000以上が好ましい。尚、質量平均分子量は後述する方法により測定した値である。
紫外線吸収剤ZのSP値は、24.08(J/cm1/2以下である。紫外線吸収剤ZのSP値がベースポリマーのSP値と近い値であれば、紫外線吸収剤Zはベースポリマーに相溶しやすい。このような点から、紫外線吸収剤ZのSP値の上限は24.00(J/cm1/2以下が好ましい。SP値の下限は特に限定されないが、15.00(J/cm1/2以上が好ましく、20.00(J/cm1/2以上がより好ましい。
本発明において、溶解度パラメーター(SP値)とは以下のFedorsの式で表される値(σ)をいう。
<Fedorsの式>
σ=(Ev/v)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
σ:溶解度パラメーター(単位;(J/cm1/2
Ev:蒸発エネルギー
v:モル体積
Δei:各原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:各原子又は原子団のモル体積
上式の計算に使用する各原子又は原子団の蒸発エネルギー及びモル体積は、「R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14,147(1974)」に拠る。
また、ベースポリマーへの紫外線吸収剤Zの相溶性が劣っている場合、もしくは紫外線吸収剤Zの分解温度よりも高温でフィルムを製造する場合、紫外線吸収剤が揮散し、冷却ロール上で結晶化し、冷却ロールが汚れる。
このような点から、紫外線吸収剤Zの分解温度は300℃以上が好ましく、320℃以上がより好ましい。
<樹脂組成物>
本発明に用いる樹脂組成物は、樹脂組成物に含まれるポリマーの総量100質量%に対して、15〜80質量%の重合体X、及び20〜85質量%の重合体Yを含有する。重合体Xの含有率が15質量%以上であれば、重合体Xが結晶化する。
また、重合体Xの含有率が80質量%以下であれば、樹脂組成物を用いて成形した成形体は透明性に優れる。透明性に優れるとは、例えば、樹脂組成物を成形し、厚さ50μmのフィルムとしたときヘーズが0〜15%を示すものを指す。
樹脂組成物中、重合体Xと重合体Yの含有量の合計は100質量%が好ましい。
また、結晶性と透明性が共に高い成形体の製造に用いる点で、樹脂組成物に含まれるポリマーの総量100質量%に対して、重合体Xの含有率は20〜69質量%が好ましく、30〜65質量%がより好ましい。
重合体Yの含有率が20質量%以上であれば透明性に優れる。また、85質量%以下であれば、重合体Xが結晶化する。
結晶性と高透明性を両立する成形体の製造に用いる点から、重合体Yの含有量は樹脂組成物に含まれるポリマーの総量100質量%に対して、31〜80質量%が好ましく、35〜70質量%がより好ましい。
樹脂組成物中の紫外線吸収剤Zの含有量は、重合体Xと重合体Yの合計100質量部に対して、0.01〜4質量部である。
さらに、重合体Xと重合体Yの合計100質量部に対して、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が0〜2.5質量部であり、トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が0〜4質量部であることが好ましい。
紫外線吸収剤の含有量が多ければ、紫外線吸収剤が時間経過によってフィルムの表面に滲み出てくる所謂「ブリードアウト」が起きる。この点から、重合体Xと重合体Yの合計100質量部に対して、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が0〜2.3質量部であり、トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が0〜3質量部であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物を用いた成形体の光学性能や機械特性を損なわない範囲で、必要に応じて添加剤を含有させることができる。添加剤の量は少ないほど好ましく、添加剤の含有量は樹脂組成物100質量部に対して0〜20質量部が好ましく、0〜10質量部がより好ましく、0〜5質量部が更に好ましい。
添加剤としては、例えば、光安定剤、耐熱安定剤、合成シリカやシリコン樹脂粉末等のブロッキング防止剤、可塑剤、抗菌剤、防カビ剤、ブルーイング剤、帯電防止剤が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、N−H型、N−CH型、N−アシル型、N−OR型等のヒンダードアミン系又はフェノール系の光安定剤が挙げられる。
耐熱安定剤としては、例えば、フェノール系、アミン系、硫黄系又は燐酸系の酸化防止剤が挙げられる。
上記の必須成分及び所望により任意成分を所定量配合し、ロール、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機等の通常の混練機で混練して樹脂組成物を調製することができる。
<フィルム>
本発明のフィルムは、本発明の樹脂組成物を成形したものである。
本発明のフィルムは、透明性と耐候性が共に高く、紫外線遮蔽能に優れる。
本発明のフィルムの全光線透過率としては、JISK7361−1に準拠して測定した場合に80〜100%が好ましく、83〜100%がより好ましく、85〜100%が更に好ましい。全光線透過率が80%以上あれば、厚いフィルムであったとしても充分な透明感が得られる。
本発明のフィルムのヘーズ値としては、JISK7136に準拠して測定した場合に、0〜10%が好ましく、0〜8%がより好ましく、0〜5%が更に好ましい。ヘーズ値が10%以下であれば、曇りの少ない透明感が得られる。
フィルムは通常、厚さが薄いほど透明性が高いものが得られやすい。一方、厚いフィルムほど、Lambert−Beer則より紫外線吸収剤の含有量が少なくても紫外線遮蔽能を有することができる。そのため、本発明のフィルムの厚さとしては10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましく、30〜100μmが更に好ましい。
本発明において、フィルムの厚さは、製膜時の流れ方向に垂直な方向(TD方向)で任意に三か所測定した測定値の平均値をいう。
本発明のフィルムの紫外線遮蔽能としては、下層の基材の紫外線領域の吸収波長を遮蔽していればよい。下層の基材としては、後述する公知の熱可塑性樹脂フィルム又はシート用いることができる。具体例としては積層シートの二次成形性の点から、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネートが好ましい。本発明ではポリ塩化ビニルを下層の基材として想定しているので、近紫外線UV−A(315〜380nm)における透過率が低いことが求められる。したがって、370nmにおけるフィルムの透過率は、30%以下が好ましく、5.0%以下がより好ましく、1.0%以下が更に好ましい。
また、本発明のフィルムの紫外線遮蔽能は、長期に亘り持続させる必要がある。前述した通り、本発明で用いるベースポリマーを用いて製造されるフィルムは軟質フィルムであることから、特に成形後の紫外線吸収剤のブリードアウトが生じやすい。また、日射量の多い地域での使用を想定した場合、高温多湿であることが多く、高温多湿下ではブリードアウトがより起こりやすい。
紫外線吸収剤がブリードアウトした場合、紫外線遮蔽能が失われるだけでなく、紫外線吸収剤が表面で結晶化することで外部ヘーズが大きくなり、透明性が損なわれる。したがって、本発明でのブリードアウト性は、例えば温度85℃、相対湿度90%のような高温高湿下でしばらく静置した際のヘーズ変化から評価できる。
<フィルムの製造方法>
本発明のフィルムは、重合体X、重合体Y及び紫外線吸収剤Zを所定の割合で含有する樹脂組成物を溶融押出しし、次いで、得られた溶融押出物を、表面温度が20〜75℃、好ましくは25〜60℃、より好ましくは25〜50℃の少なくとも1本の冷却ロールに接触させて製膜する方法で製造することができる。
溶融押出方法としては、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられ、これらのうち経済性の点でTダイ法が好ましい。溶融押出温度は、170〜240℃程度が好ましい。また、押出機としては、例えば、単軸押出機及び二軸押出機が挙げられる。
本明細書において、冷却ロールとは冷媒を使用して表面の温度を調整することができるロールを意味する。Tダイから吐出された溶融押出物は冷却ロールに接触し、冷却ロールの表面温度にまで冷却される。冷却ロールとしては、例えば、金属製の鏡面タッチロールや金属製のエンドレスベルトが挙げられる。
冷却ロールは1本用いても複数本使用してもよい。2本の冷却ロールで溶融押出物を挟持して製膜してもよい。
Tダイ法によってフィルムを製造する場合のTダイの設定温度は、ポリマーの分解を抑制する点で260℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、240℃以下が更に好ましい。
また、成形可能な流動性を確保する点から、Tダイの設定温度は170℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、190℃以上が更に好ましい。
Tダイの設定温度は170〜260℃が好ましく、180〜250℃がより好ましく、190〜240℃が更に好ましい。
Tダイ法によってフィルムを製造する場合のTダイリップの開度は算術平均粗さや熱収縮の小さなフィルムが得られることから、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、0.6mm以上が更に好ましい。また、幅方向の膜厚変動の小さいフィルムが得られることから、Tダイリップの開度は1mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.6mm以下が更に好ましい。
Tダイリップの開度は0.2〜1mmが好ましく、0.4〜0.8mmがより好ましく、0.5〜0.7mmが更に好ましい。
冷却ロールの回転速度(フィルム引き取り速度ともいう)は1〜15m/分が好ましい。
冷却ロールの表面温度を30℃以上とすることにより、耐熱性の高いフィルムを得ることができる。また、冷却ロールの表面温度を75℃以下とすることにより、フィルムのブロッキングを抑制し、巻き取ることができる。
本発明のフィルムは、溶融押出物を冷却ロールに接触させてフィルムを製造する。本発明のフィルムと他のフィルムを含む2層以上のフィルムを製造してもよい。そのような場合には、本発明のフィルムを冷却ロール側として直接的に冷却ロールへ接触させてもよいし、他のフィルムを冷却ロール側とし、該他のフィルムを介して間接的に接触させてもよい。
また、複数の冷却ロールで溶融押出物を狭持することにより製膜する方法では、溶融押出物を実質的にバンク(樹脂溜まりともいう)が無い状態で狭持し、実質的に圧延されることなく面転写させて製膜することが好ましい。
バンクを形成することなく製膜した場合には、冷却過程にある溶融押出物が圧延されることなく面転写されるため、この方法で製膜されたフィルムの加熱収縮率を低減することができる。
尚、複数の冷却ロールで溶融押出物を狭持することにより製膜する場合には、少なくとも1本の冷却ロールの表面にエンボス加工、マット加工等の形状加工を施すことによって、フィルムの片面又は両面に、これらの形状を転写させることができる。
<積層フィルム又はシート>
本発明の製造方法によって得られるフィルムは、更に熱可塑性樹脂層を積層して、積層フィルム又はシートとしてもよい。
熱可塑性樹脂層を構成する材料としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば以下のものが挙げられる。
アクリル系樹脂;ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体);AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体);ポリ塩化ビニル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリオレフィン系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂;6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン樹脂;セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂;これらから選ばれる2種以上の共重合体、又は混合物、複合体、積層体。
熱可塑性樹脂層を構成する材料には、必要に応じて、一般の配合剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃剤、発泡剤、充填剤、抗菌剤、防カビ剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤を配合してもよい。
熱可塑性樹脂層の厚さは、必要に応じて適宜決めればよく、通常、1〜500μm程度とすることが好ましい。熱可塑性樹脂層は、フィルムの外観が完全に平滑な上面を呈する、基材の表面欠陥を吸収する程度の厚さを有することが好ましい。
積層フィルム又はシートを得る方法としては、共押出法、塗布、熱ラミネーション、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ホットメルトラミネーション等の公知の方法が挙げられる。また、押出しラミネーションによりフィルムと熱可塑性樹脂層とを積層することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中の「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を示す。
[評価方法]
実施例、比較例における各評価は、以下の方法により実施した。
(紫外線吸収剤の評価方法)
(1)耐熱性
紫外線吸収剤の耐熱性は、差動型示差熱天秤(TG−DTA:(株)リガク製TG8120)を用いた。サンプル重量は5mgとし、低温揮発成分の影響を排除するため、20℃/分の昇温速度で100℃まで加熱後、10分間保持した。その後、5℃/分の昇温速度で450℃まで加熱しながら重量減少を測定し、100℃、10分保持後の重量を基準として、重量減少率が10%となるときの温度を10%熱分解温度とした。
尚、測定はすべて窒素雰囲気下で行ない、試料パンとしてはアルミパンを使用した。
(樹脂組成物の評価方法)
(2)分子量、及び分子量分布
質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PDI)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、商品名:HLC−8220)を使用し、以下の条件にて測定した。
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER HZ−L(4.6×35mm)と2本のTSK−GEL SUPER HZM−N(6.0×150mm)を直列に接続
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速:0.6mL/分
尚、Mw及びMnは、Polymer Laboratories製のピークトップ分子量(Mpともいう)が141,500、55,600、10,290及び1,590である4種のポリメチルメタクリレートを用いて作成した検量線を使用して求めた。
(3)紫外線吸収剤の分散性
後述する手法で得られる樹脂組成物のペレットの透明性により紫外線吸収剤の分散性を評価した。ペレットを目視で見た際に、白濁している場合は×(紫外線吸収剤は分散していない)、白濁していない場合は○(紫外線吸収剤は分散している)とした。
尚、表中の「−」は、未評価を表す。以下の評価項目でも同様である。
(4)ロール汚れ
後述する手法で樹脂組成物のペレットを可塑化し、フィルムを製造する際に、5kg吐出後の冷却ロールの状態(蛍光灯の写り込みの有無)を目視で判断した。製膜前後で冷却ロールへの蛍光灯の写り込みに変化がない場合を◎、蛍光灯の写り込みが一部なくなっている場合を○、蛍光灯の写り込みが大部分なくなっている場合を△とした。
(フィルムの評価方法)
(5)ヘーズ
ヘーズメーター(日本電色工業(株)製、商品名:NDH4000)を用いて、JIS−K7136に則りヘーズを測定した。
(6)透過率
紫外可視分光光度計(日本分光(株)製、商品名:V−630)を用いて、波長370nmの光線透過率を測定した。この光線透過率の値が小さいほど、紫外線遮蔽能が優れたフィルムである。
(7)耐湿熱性(紫外線吸収剤のブリード性)
上述した方法で測定した、フィルムのヘーズ値を初期のヘーズ値(Hz)とした。また、温度85℃、相対湿度90%の条件下にて96時間放置した後のヘーズ値(Hz)を上述した方法で測定した。このようにして得られたヘーズ値の差ΔHz(=Hz−Hz)を求めた際に、2.0%未満である場合を○、2.0%以上である場合を×とした。
<製造例1>
[分散剤]
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた容量1200Lの反応容器内に、17%水酸化カリウム水溶液61.6部、メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、以下同様)19.1部及び脱イオン水19.3部を仕込んだ。次いで、反応装置内の液を室温にて撹拌し、発熱ピークを確認した後、更に4時間撹拌した。この後、反応装置内の反応液を室温まで冷却してカリウムメタクリレート水溶液を得た。
次いで、撹拌機、冷却管及び温度計を備えた容量1050Lの反応容器内に、脱イオン水900部、2−(メタクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルSEM−Na)60部、上記のカリウムメタクレート水溶液10部及びメチルメタクリレート12部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(和光純薬工業(株)製、商品名:V−50)0.08部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを利用してメチルメタクレートを0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10%の分散剤を得た。
<製造例2>
[マクロモノマー]
(コバルト錯体の合成)
撹拌装置を備えた合成装置中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬(株)製、和光特級)2.00g(8.03mmol)及びジフェニルグリオキシム(東京化成(株)製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、室温で2時間攪拌した。
次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成(株)製、EPグレード)20mlを加え、更に6時間攪拌した。得られたものを濾過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、20℃において12時間真空乾燥し、茶褐色固体のコバルト錯体5.02g(7.93mmol、収率99%)を得た。
(マクロモノマーの合成)
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム(NaSO)0.1部及び製造例1で製造した分散剤(固形分10%)0.26部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。次に、メチルメタクリレート(MMA)95部、メチルアクリレート(MA)(三菱化学(株)製メチルアクリレート、商品名)5部、上記方法で製造したコバルト錯体0.0016部及び重合開始剤としてパーオクタO(日油(株)製1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、商品名)0.1部を加え、水性分散液とした。次いで、重合装置内を充分に窒素置換し、水性分散液を80℃に昇温してから4時間保持した後に92℃に昇温して2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、マクロモノマーの水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマーを得た。GPCで分析したところ、マクロモノマーのMwは27000であり、Mnは14000であり、PDIは1.9であった。
結果を表1に示す。
<製造例3>
[重合体Y1]
脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び製造例1で製造した分散剤0.26部を混合して懸濁用水分散媒を調製した。
冷却管付セパラブルフラスコに、重合体Xが相溶するドメイン(y1)を形成する単量体として、製造例2で合成したマクロモノマー(以下「MM」と記す。)40部、重合体Xが非相溶なドメイン(y2)を形成する単量体としてn−ブチルアクリレート(BA)(三菱化学(株)製、商品名)36部及びメチルメタクリレート24部、1−オクタンチオール0.1部を混合し、攪拌しながら50℃に加温して原料シラップを得た。原料シラップを40℃以下に冷却した後、原料シラップにAMBN(大塚化学(株)製2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、商品名)0.3部を溶解させ、シラップを得た。
次いで、シラップに懸濁用水分散媒を加えた後、窒素バブリングによりセパラブルフラスコ内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌回転数を上げてシラップ分散液を得た。
シラップ分散液を75℃に昇温し、重合発熱ピークが出るまでセパラブルフラスコの外温を保持した。重合発熱ピークが出た後、シラップ分散液が75℃になったところで、シラップ分散液を85℃に昇温し、30分保持して重合を完結させ、懸濁液を得た。
懸濁液を40℃以下に冷却した後に、懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥してコポリマーである重合体Y1を得た。重合体Y1のMwは248000で、Mnは52000であり、PDIは4.8であった。
<製造例4>
[重合体Y2]
仕込みモノマーの比率を表2に記載の量とした以外は、製造例3と同様にして重合体Y2を得た。
また、製造例3と同様にして重合体Y2のMw、Mn、PDIを表2に示す。
<製造例5>
[重合体型紫外線吸収剤]
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム(NaSO)0.1部及び製造例1で製造した分散剤(固形分3.3%)0.2部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。次に、メチルアクリレート3部、メチルメタクリレート87部、反応型紫外線吸収剤として2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、商品名:RUVA−93) 10部、1−オクタンチオール 0.4部を混合し、更に重合開始剤としてAMBN 0.12部を加え、撹拌して水性分散液を得た。
次いで、重合装置内を充分に窒素置換し、その後撹拌しながら75℃まで加熱し、窒素ガス気流中で重合反応を進行させた。2時間後に95℃に昇温して更に60分保持して重合を完結させ、水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、75℃で16時間乾燥して重合体型紫外線吸収剤を得た。
GPCで分析したところ、重合体型紫外線吸収剤のMwは60,900であり、Mnは29,500であり、PDIは2.1であった。
<実施例1>
[樹脂組成物の作製]
重合体XとしてPVDF(クレハ(株)製、商品名:KFポリマー T#850) 40部、重合体Yとして製造例3で製造した重合体Y1 60部、紫外線吸収剤としてチヌビン1600(BASF(株)製) 2.1部、酸化防止剤としてイルガノックス1076(BASF(株)製) 0.1部を用い、これらをヘンシェルミキサーで混合した。
次いで、これを35mmφのスクリュー型二軸押出機(L/D=26)を用いて、シリンダー温度180〜220℃、ダイ温度220℃の条件下で溶融混練し、ペレット化して、ペレット状の成形材料(樹脂組成物)を得た。
用いたPVDF((株)クレハ製、商品名:KFポリマー T#850)は、フッ化ビニリデン単位からなるホモポリマーであり、結晶融点は173℃であり、質量平均分子量は270,000であった。
得られたペレットを用いて、紫外線吸収剤の分散性を評価した結果を表3に示す。
[フィルムの作製]
上記手法で得られたペレットを70℃で一晩予備乾燥させた後、150mm幅のTダイが搭載されたφ30mm単軸押出機(GMエンジニアリング社製)により押出温度180〜220℃、Tダイ温度220℃で一本の冷却ロール温度30℃で製膜して厚さ50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
<実施例2〜12、比較例1>
重合体X、重合体Y、紫外線吸収剤Zを表3,4に記載のとおり用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物及びフィルムを得た。
フィルムの評価結果を表3,4に示す。
以下に、表3,4中の略称について記載する。
Kynar720:フッ化ビニリデン単位からなるホモポリマーであり、結晶融点は159℃、質量平均分子量は257,000である。(アルケマ(株)製)
トリアジン系 :トリアジン系紫外線吸収剤
ベントリ系 :ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
Tv.1600:チヌビン1600(BASF(株)製)
Tv.460 :チヌビン 460( 〃 )
Tv.234 :チヌビン 234( 〃 )
Ruva−93:製造例5で製造した重合体型紫外線吸収剤
Tv.1577:チヌビン1577(BASF(株)製)
LA−31 :アデカスタブLA−31RG((株)ADEKA製)
VH :アクリペットVH001(三菱レイヨン(株)製)
<比較例2>
表4に記載の量の重合体X、及びランダムアクリル共重合体(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリペットVH001)を用いて樹脂組成物を作成した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。フィルムの評価結果を表4に示す。
<比較例3>
表4に記載の量の重合体Xを用いて樹脂組成物を作成した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。フィルムの評価結果を表4に示す。
比較例3から、重合体Xに対して紫外線吸収剤Zは相溶性が悪く、分散しないことがわかる。
実施例1〜12と比較例2の比較から、重合体Xに対して、重合体Yとしてランダムアクリル共重合体の代わりに重合体Y1又はY2を混合させることで、ベースポリマーへの紫外線吸収剤の相溶性が向上し、紫外線吸収剤の分散性が優れることがわかる。
また、実施例1〜8と比較例1の比較から、紫外線吸収剤を含有させたフィルムは波長370nmでの紫外線遮蔽能に優れる。これらの中でも紫外線吸収剤として重合体型紫外線吸収剤を用いていない実施例1〜7は、紫外線遮蔽能が特に優れることが明らかになった。
さらに、実施例1〜8より、紫外線吸収剤の分子量、種類、含有量、及びSP値を最適化することで、ベースポリマーへの紫外線吸収剤の相溶性が向上し、フィルムの耐湿熱性が向上することが明らかになった。
以上のように、重合体Xと重合体Yと紫外線吸収剤Zを所定の割合で混合することで、高透明性と高耐候性を併せ持つフィルムが得られる。また、紫外線吸収剤Zの分子量、種類、含有量、及びSP値を最適化することで、長期間に亘り紫外線遮蔽能に優れるフィルムが得られる。
本発明のフィルムは意匠用フィルム、農業用フィルム、車載用フィルム、外装用フィルム、建築内装用フィルム、包装材料等に好適に使用できる。
本発明のフィルムの用途を以下、具体的に列挙する。オーバーレイフィルム、ラミネートフィルム、メディア印刷フィルム等の用途;ウェザーストリップ、バンパー、バンパーガード、サイドマッドガード、ボディーパネル、スポイラー、フロントグリル、ストラットマウント、ホイールキャップ、センターピラー、ドアミラー、センターオーナメント、サイドモール、ドアモール、ウインドモール、窓、ヘッドランプカバー、テールランプカバー、風防部品等の自動車外装用途;インストルメントパネル、コンソールボックス、メーターカバー、ドアロックペゼル、ステアリングホイール、パワーウィンドウスイッチベース、センタークラスター、ダッシュボード等の自動車内装用途;AV機器や家具製品のフロントパネル、ボタン、エンブレム、表面化粧材等の用途;携帯電話等のハウジング、表示窓、ボタン等の用途;家具用外装材用;壁面、天井、床等の建築用内装材用途;サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の建築用外装材用途;窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居等の家具類の表面化粧材用途;各種ディスプレイ;フレネルレンズ、偏光フィルム、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、視野角拡大フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシート、マイクロレンズアレイ、タッチパネル用導電フィルム、導光用途フィルム、電子ペーパー用途フィルム等の光学用途;窓ガラス、電車、航空機、船舶等の自動車以外の各種乗り物の内外装用途;瓶、化粧品容器、小物入れ等の各種包装容器及び包装材料;景品や小物等の雑貨等のその他各種用途向けのフィルム;太陽電池表面保護フィルム、太陽電池用封止フィルム、太陽電池用裏面保護フィルム、太陽電池用基盤フィルム、農業用ビニルハウス、高速道路遮音板用保護フィルム並びに交通標識用最表面保護フィルム等。

Claims (7)

  1. 樹脂組成物中の重合体に対して、15〜80質量%の下記重合体X、20〜85質量%の下記重合体Yを含有し、更に、紫外線吸収剤Zを含有する樹脂組成物;
    重合体X:フッ化ビニリデン系樹脂、
    重合体Y:重合体Xと相溶なドメイン(y1)及び重合体Xと非相溶なドメイン(y2)を有し、分子量分布が3.0〜16.0である共重合体、
    紫外線吸収剤Z:分子量が200〜300,000である紫外線吸収剤。
  2. 紫外線吸収剤Zがベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び/又はトリアジン系紫外線吸収剤である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 重合体Xと重合体Yの合計100質量部に対して、紫外線吸収剤Zの含有量が0.01〜4質量部である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 重合体Xと重合体Yの合計100質量部に対して、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の含有量が0〜2.5質量部であり、トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が0〜4質量部である、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
  5. 紫外線吸収剤Zの溶解度パラメーターが24.08(J/cm1/2以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
  7. 膜厚が10〜200μmである、請求項6に記載のフィルム。
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WO2023063297A1 (ja) * 2021-10-13 2023-04-20 ダイキン工業株式会社 組成物、回路基板、及び、組成物の製造方法

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