JP6778837B1 - ダイカスト用スリーブの設置構造及びダイカスト用スリーブ - Google Patents

ダイカスト用スリーブの設置構造及びダイカスト用スリーブ Download PDF

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Abstract

【課題】溶融金属の供給量が多い条件下や、溶融金属が供給される時間間隔が短い条件下で使用されても耐用期間が長いダイカスト用スリーブを提供する。【解決手段】筒部1の中心軸Xを略水平とし注入孔30を上方に開放させた状態で、筒部前端E1をキャビティに連通させ、筒部後端E2からプランジャチップ70を進入させるようにダイカスト装置に支持されるダイカスト用スリーブS1の構成を、筒部が外筒20に内筒10が嵌入された二重構造であり、筒部において少なくとも注入孔の下方の溶湯受け領域で内筒がチタン又はチタン合金とセラミックスとの複合材料で形成されていると共に、溶湯受け領域において外筒には平面部20sが形成されており、平面部41aを有する金属製ブロックであるジャケット本体41に冷却媒体を通すための管状部45が設けられた冷却装置40が、平面部41aを平面部20sに当接させた状態で装着されている、構成とする。【選択図】図1

Description

本発明は、ダイカスト用スリーブの設置構造、及び、ダイカスト用スリーブに関するものである。
アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、スズ、鉛、それらの合金等の非鉄金属のダイカストでは、溶融金属をキャビティ内に充填するために円筒状のスリーブが使用される。スリーブの一端はキャビティ内に連通させてあり、他端からプランジャチップを進入させてスリーブ内を軸方向に摺動させる。軸方向を略水平として使用される横型(水平射出型)のスリーブでは、プランジャチップを進入させる側の端部の近傍において、スリーブの側周壁の一部を貫通する注入孔が、上方に開口するように設けられている。この注入孔からスリーブ内に供給された溶融金属は、プランジャチップの前進に伴ってスリーブ内を圧送され、キャビティ内に充填される。
従来、一般的なスリーブは鋼製であったが、非鉄金属は鉄と反応しやすいため、鋼製のスリーブは充填対象の溶融金属との接触により溶損し易く、耐用期間が短いという問題があった。また、鋼は熱伝導率が大きいため、スリーブ内に供給された溶融金属の温度が低下し易い。スリーブ内に供給された溶融金属の温度が、キャビティに至る前にスリーブ内で低下することによって凝固片が生じ、その凝固片が成形後の製品に混在してしまうと、製品においてその部分で剥離などの欠陥が生じやすく、機械的強度が低下するという問題がある。
そこで、本出願人は、スリーブを外筒と内筒との二重構造とし、鋼製の外筒に嵌め込まれる内筒を、チタン又はチタン合金とセラミックスとの複合材料の焼結体(以下、「TC複合材料」と称する)で形成することを提案し、実施している(例えば、特許文献1参照)。TC複合材料は、非鉄金属との反応性が低いため耐溶損性に優れている。また、鋼(SKD61)の熱伝導率は35.6W/mKと大きいのに対し、TC複合材料の熱伝導率は7.4W/mKと非常に小さく保温性に優れており、スリーブ内に供給された溶融金属の温度が低下しにくい利点を有している。更に、セラミックスのみで内筒を形成した場合、耐溶損性及び保温性については高めることは可能であるものの、脆性材料であるセラミックスは耐衝撃性が低いという難点があるところ、TC複合材料は金属とセラミックスとの複合材料であるため、耐衝撃性にも優れているという利点がある。
このように、耐溶損性、保温性、及び耐衝撃性に優れるTC複合材料を内筒に使用したスリーブは、従来のスリーブに比べて耐用期間が長く、凝固片が混在しない高品質の製品を成形できる利点を有する。ところが、より大型の製品の鋳造のためにスリーブへの溶融金属の供給量を増加させた場合や、鋳造のサイクルを速めるためにスリーブへ溶融金属を供給する時間間隔を短くした場合は、内筒の内表面に固化した溶融金属が付着することがあった。固化した溶融金属が付着すると、プランジャチップが付着物にのり上げて内筒の内表面における対向面に食い込むような抵抗、いわゆる「カジリ抵抗」が生じたり、付着物と共に内筒の内表面が剥離したりすることにより、スリーブの耐用期間が短くなるという問題があった。
特開平3−142053号公報
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、溶融金属の供給量が多い条件下や、溶融金属が供給される時間間隔が短い条件下で使用されても耐用期間が長いダイカスト用スリーブがダイカスト装置に支持されているダイカスト用スリーブの設置構造、及び、ダイカスト用スリーブの提供を、課題とするものである。
上記の課題を解決するため、本発明にかかるダイカスト用スリーブ(以下、単に「スリーブ」と称することがある)の設置構造は、
「円筒状の筒部、及び該筒部の側周壁の一部を貫通する注入孔を備えるダイカスト用スリーブが、前記筒部の中心軸を略水平とし前記注入孔を上方に開放させた状態で、筒部前端がキャビティに連通し、筒部後端からプランジャチップを進入させるようにダイカスト装置に支持されているダイカスト用スリーブの設置構造であって、
前記筒部は、外筒と、該外筒に嵌入された内筒とを有しており、
前記筒部において、少なくとも前記注入孔から供給される溶融金属を受ける部分である溶湯受け領域では、前記内筒はチタン又はチタン合金とセラミックスとの複合材料の焼結体で形成されていると共に、
前記溶湯受け領域において前記外筒には第一の平面部が形成されており、
第二の平面部を有する金属製ブロックであるジャケット本体に冷却媒体を通すための管状部が設けられた冷却装置が、前記第二の平面部を前記第一の平面部に直接に当接させた状態、または黒鉛シート及び金属箔の何れかを介して間接的当接させた状態で、前記外筒に装着されている」ものである。
上述したように、スリーブへの溶融金属の供給量を増加させた条件下や、溶融金属が供給される時間間隔が短い条件下で使用すると、TC複合材料である内筒の内表面に固化した溶融金属が付着する。このような溶融金属の付着は、溶融金属(「溶湯」とも称する)を受ける部分である溶湯受け領域で顕著であった。そこで、付着物を溶解除去して調べたところ、その部分で内筒の内表面が抉れており、更にその周囲に細かい亀裂が多数生じている様子が観察された。また、TC複合材料である内筒の内表面の温度を測定しつつダイカスト試験を行ったところ、上記のような金属の付着が生じるような成形条件では、ダイカストを数回繰り返すと、内筒の内表面における溶湯受け領域の温度が約500℃まで上昇していた。鋼は温度の上昇に伴って機械的強度(曲げ強度)が急激に低下するのに対し、TC複合材料は温度上昇に伴う急激な強度低下がなく、約600℃以上の温度では鋼より機械的強度が高い利点を有するものの、温度が500℃を超えると機械的強度が徐々に低下する。
TC複合材料は熱伝導率が小さいという特性ゆえに蓄熱し易く、溶融金属の供給量を増加させたり、溶融金属が供給される時間間隔を短くしたりすることで、内筒の温度が機械的強度の低下を招く500℃まで上昇し、その条件下での溶融金属の供給と射出により加熱と冷却が繰り返されることにより、内筒に使用されているTC複合材料の表面に細かな亀裂が生じるものと考えられた。そして、細かな亀裂に高温の溶融金属が浸入することによって更に浸食が進行し、そこに残留した溶融金属が固化し付着するというプロセスで、内筒の内表面の損傷が進むと考えられた。
TC複合材料で形成された内筒の損傷がこのようなプロセスで進行するのであれば、内筒の温度が高温とならないように、“内筒を”冷却することを想到し得る。しかしながら、内筒を冷却することによって、キャビティに達する前に溶融金属の温度が低下してしまうと、凝固片が生成して成形後の製品に混在することにより、製品の品質が劣化する。
この相反する要請をバランスさせるために、本発明では、“損傷を受けるのはTC複合材料で形成された内筒ではあるが、内筒ではなく、その外側の外筒を冷却することによって、内筒を間接的に冷却する”という手段と、“冷却すべき最小限の範囲として溶湯受け領域を冷却する”という手段を採用した。すなわち、少なくとも溶湯受け領域で内筒をTC複合材料で形成し、冷却装置は溶湯受け領域内において内筒より外側に設ける、という手段である。TC複合材料は熱伝導率が非常に小さいため、その外側から冷却することにより、TC複合材料自体はある程度冷却されても溶融金属までは冷却させず、溶融金属の温度の低下を抑制することができる。そして、TC複合材料自体は冷却されるため、上記のようなプロセスによる内筒の損傷の進行を抑制することができ、スリーブの耐用期間を長くすることができる。
また、軸方向を略水平として使用される横型のスリーブでは、従来、注入孔が設けられている側の端部であって、プランジャチップを進入させる筒部後端が、反り上がるように変形するという問題があった。このような問題は、内筒がTC複合材料で形成された上記のスリーブ(特許文献1)でも同様であった。筒部後端が反り上がると、上述したようにプランジャチップが固化した溶融金属にのり上げた場合と同様に、プランジャチップが内表面における上部に食い込む「カジリ抵抗」が生じるという不具合がある。このような筒部後端が反り上がる変形は、注入孔からの溶融金属の供給に伴い溶湯受け領域が非常に高温となって大きく熱膨張し、筒部の軸方向にも大きく延びる一方で、注入孔の周縁部はさほど高温とならないため熱膨張の程度も小さく、軸方向にさほど延びないためと考えられる。
本発明では、溶融金属の供給に伴い非常に高温となる溶湯受け領域において、外筒に冷却装置を装着し、溶湯受け領域のTC複合材料を間接的に冷却する。これにより、上記のような熱膨張のアンバランスに起因する「カジリ抵抗」を、有効に抑制することができる。
ここで、筒部を外側から冷却する手段としては、図5に示すように、筒部100に冷却ジャケット400を装着することを想到し得る。冷却ジャケット400は、筒部100を外側から囲む金属製のジャケット本体410の内部に、冷却媒体を通すためのパイプ450が配設されたものであり、ジャケット本体400を筒部100に巻き付け固定するためのベルト470を備えている。このような冷却ジャケット400は、筒部100を外側から囲むことから必然的に嵩張り、重量も大きなものとなる。また、ダイカスト用スリーブの筒部100は一般的に円筒状であることから、その筒部100の外形に沿うようにジャケット本体410を断面円弧状に形成する場合、金属材料の大きな塊を切削することとなるため、加工に手間がかかり高コストとなると共に、切削屑となる金属材料の無駄が大きいという問題がある。
これに対して、本発明では、外筒に平面部を形成する一方で、冷却装置は平面部を有する金属製ブロックであるジャケット本体に管状部が設けられた構成としており、外筒の平面部(第一の平面部)に冷却装置の平面部(第二の平面部)を直接または間接的に当接させている。そのため、冷却装置を筒部から大きくはみ出すことがない小型のものとすることができ、重量を抑えることができる。また、平面部を有する金属製ブロックであるジャケット本体は、直方体などシンプルな形状とすることができるため、複雑な加工を要することなく汎用の金属材料から低コストで製造することができる。
加えて、円筒状の筒部に沿うように断面円弧状のジャケット本体を加工する場合は、筒部の外表面とジャケット本体の内表面の双方が湾曲面であるため、双方の湾曲面が全面にわたりぴったりと接触するように加工することは難しい。そのため、冷却装置と筒部との密着性が悪く、冷却装置によるスリーブの冷却効率が低いものとなるおそれがある。これに対し、本発明では、外筒と冷却装置との当接が平面部(第一の平面部)と平面部(第二の平面部)を介したものであるため、密着性を高めることが容易であり、冷却装置によるスリーブの冷却効率を高めることができる。
なお、外筒の平面部(第一の平面部)と冷却装置の平面部(第二の平面部)とを間接的に当接させる構成としては、両者の間に熱伝導性の高いシート材料を挟む構成とすることができ、かかるシート材料としては、後述の黒鉛シートの他、銅箔、銀箔、アルミニウム箔などの金属箔を使用することができる。
また、内筒を外側から冷却する手段としては、冷却媒体を通すための管状部を“外筒の内部に”設けることも想到し得るところ、この場合は、外筒の肉厚が小さい場合は加工が困難となるおそれがある。これに対し、本発明では、外筒の溶湯受け領域において平面部(第一の平面部)を形成し、ここに冷却装置を外付けで装着する。そのため、外筒の肉厚が小さい場合であっても、問題なくダイカスト用スリーブに冷却装置を備えさせることができる。
本発明にかかるダイカスト用スリーブの設置構造は、上記構成に加え、
「前記冷却装置は、前記第二の平面部と前記第一の平面部との間に黒鉛シートを介在させた状態で前記外筒に装着されている」ものとすることができる。
黒鉛シートは、柔軟性・可撓性を有している。そのため、外筒の平面部(第一の平面部)と冷却装置の平面部(第二の平面部)それぞれが鏡面研磨された面ほど平滑な面ではない場合であっても、両者の間に黒鉛シートを挟むことにより、黒鉛シートが双方の平面部それぞれに密着する。黒鉛シートは熱伝導性に優れるため、双方の平面部それぞれに密着している黒鉛シートを介して、冷却装置によって外筒を効率的に冷却することができ、ひいては内筒の間接的な冷却を効果的に行うことができる。
本発明にかかるダイカスト用スリーブの設置構造は、上記構成に加え、
「前記冷却装置は、前記筒部の前記中心軸に直交する断面において、前記冷却装置の中心線と前記筒部の前記中心軸とを結ぶ線が、前記注入孔の中心から下ろした垂直線となす角度が、前記注入孔に溶融金属を供給するラドルとは反対側に10度〜60度となるように一方側に偏った位置に設けられている」ものとすることができる。
従来、スリーブの内表面において溶融金属の供給によって高温となる部分は、注入孔の直下であると考えられてきた。これに対し、本発明者らは、スリーブにおける損傷部分を丁寧に解析した結果、損傷を受ける部分は注入孔の直下のみではなく、注入孔の中心から下ろした垂直線から一方側に偏った位置まで至っていることを見出した。その理由としては、詳細は後述するように、一般的なダイカスト装置において注入孔に溶融金属を供給するラドルの動作に機械的な制約があることにより、注入孔の斜め上方から溶融金属が供給されるためと考えられた。
本構成では、筒部において、ラドルによって斜め上方から注入孔に供給される溶融金属を受けて高温となる部分を、外筒に装着された冷却装置によって冷却することができる。これにより、外筒を冷却することによって間接的に内筒を冷却する作用を、より効果的に発揮させることができる。
次に、本発明にかかるダイカスト用スリーブは、
「円筒状の筒部、及び該筒部の側周壁の一部を貫通する注入孔を備えるダイカスト用スリーブであって、
前記筒部は、外筒と、該外筒に嵌入された内筒とを有しており、
前記筒部において、少なくとも前記注入孔に対向する部分を含む溶湯受け領域では前記内筒はチタン又はチタン合金とセラミックスとの複合材料の焼結体で形成されていると共に、
前記溶湯受け領域において前記外筒には第一の平面部が形成されており、
第二の平面部を有する金属製ブロックであるジャケット本体に冷却媒体を通すための管状部が設けられた冷却装置が、前記第二の平面部を前記第一の平面部に直接に当接させた状態、または黒鉛シート及び金属箔の何れかを介して間接的当接させた状態で、前記外筒に装着されている」ものである。
これは、上記の設置構造に使用されるダイカスト用スリーブの構成である。
以上のように、本発明によれば、溶融金属の供給量が多い条件下や、溶融金属が供給される時間間隔が短い条件下で使用されても耐用期間が長いダイカスト用スリーブがダイカスト装置に支持されているダイカスト用スリーブの設置構造、及び、ダイカスト用スリーブを、提供することができる。
(a)本発明の一実施形態であるスリーブを中心軸の方向に中央で切断した断面図、(b)同スリーブの底面図、(c)同スリーブのA−A線断面図、及び、(d)同スリーブの底面側から見た斜視図である。 (a),(b)図1のスリーブの製造を説明する図である。 一般的なダイカスト装置の要部構成図である。 一般的なダイカスト装置におけるラドルからスリーブへの溶融金属の供給を模式的に示す図である。 (a)本発明と対比する冷却ジャケットの斜視図、及び、(b)図5(a)の冷却ジャケットを従来のスリーブに装着した状態の断面図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。スリーブS1は、円筒状の筒部1、及び筒部1の側周壁の一部を貫通する注入孔30を備えている。スリーブS1は、図3に示すように、コールドチャンバダイカスト装置DMにおいて、筒部1の中心軸Xを略水平とし、注入孔30を上方に開放させた状態で支持される。スリーブS1の筒部前端E1は、固定型111と可動型112との間に形成されているキャビティ110に連通させ、筒部後端E2からプランジャチップ70を進入させる。注入孔30には、保持炉に貯留された溶融金属がラドル130を介して供給される。
図1に示すように、スリーブS1の筒部1は、外筒20と、外筒20に嵌入された内筒10とを有している。溶湯受け領域は筒部1において、注入孔30から供給された溶融金属を受ける領域である。内筒10は、少なくとも溶湯受け領域でTC複合材料(チタン又はチタン合金とセラミックスとの複合材料の焼結体)で形成されるものであるが、本実施形態では溶湯受け領域を含む内筒10の全体がTC複合材料で形成されている。TC複合材料は粉末冶金によって製造されるものであり、チタン粉末、及び炭化珪素粉末を混合した原料から成形した成形体を、非酸化性雰囲気下で焼成することにより得ることができる。TC複合材料の原料には、ニッケルなど他の金属の粉末を含有させることができる。
ここで、溶湯受け領域は、注入孔30から溶融金属を供給した際に高温となる領域であり、図1(a)に示すように、中心軸Xに平行な方向では、筒部後端E2から注入孔30の径の2倍の長さまでの範囲Lとすることができ、図1(c)に示すように、中心軸Xに直交する断面では、注入孔30の中心から下ろした垂直線Zから両側に向かってそれぞれ中心角αが60度の円弧で示される範囲R1の領域とすることができる。
図2(a),(b)に示すように、外筒20には溶湯受け領域において平面部20sが形成されており、この平面部20sに冷却装置40が装着される。冷却装置40は、熱伝導率の高い銅やアルミニウム等の金属製ブロックであるジャケット本体41に、冷却媒体を通すための管状部45が設けられたものである。ジャケット本体41は平たい略直方体であり、最も面積の大きい一対の平面部41aの一方を、外筒20の平面部20sに当接させている。管状部45は略U字状で、その両端は、一対の平面部41aと直角をなす一対の側面部41bそれぞれに達して開口部46を形成している。開口部46の一方から供給された冷却媒体は、管状部45の内部を流通して開口部46の他方から排出される。管状部45の内部を流通する冷却媒体が高温となった外筒20と熱交換することにより、外筒20が冷却され、間接的に内筒10が冷却される。冷却媒体としては水、空気、油を使用することができる。ここで、外筒20の平面部20sが本発明の「第一の平面部」に相当し、冷却装置40の平面部41aが本発明の「第二の平面部」に相当する。
なお、管状部45は、上記のように略U字状とする他、つづら折り状、直線状とすることができる。
図1では、冷却装置40が、その平面部41aを外筒20の平面部20sに直接当接させた状態で外筒20に装着されている場合を図示している。平面部どうし(平面部41aと平面部20s)の当接であるため密着性が高く、冷却装置40によって外筒20を効率よく冷却することができ、ひいては内筒10を効率よく間接的に冷却することができる。
冷却装置40の平面部41aと外筒20の平面部20sとの間には、図2(b)に例示するように、黒鉛シート50を挟み込んでもよい。黒鉛シート50は、柔軟性・可撓性を有しているため、平面部20s及び平面部41aが鏡面研磨された面ほど平滑な面でなくとも、黒鉛シートが平面部20s,41aそれぞれに密着する。これにより、熱伝導性に優れる黒鉛シートを介して、冷却装置40と外筒20とを熱伝導において密着させることができる。
溶湯受け領域において外筒20に対して冷却装置40を装着する位置は、注入孔30の直下ではなく、注入孔30の中心から下ろした垂直線Zから一方側に偏った位置とすることができる。これは、スリーブに溶湯金属を供給することによって筒部の内表面において損傷を受ける部分は、当業者がこれまで考えていたように注入孔の直下のみではなく、一方に偏った位置まで至っていることが判明したことによる。
その理由としては、図3に示すように、一般的なダイカスト装置DMにおいて注入孔30が開口する位置は、金型を構成する固定型111を支持する固定盤121や、プランジャチップ70を駆動するための駆動装置(図示を省略)を固定盤121に対して支持させるフレーム122等の近傍であることが考えられる。これにより、溶融金属を注入孔30に注ぐためのラドル130を移動させる装置(図示を省略)が、固定盤121やフレーム122と干渉するため、ラドル130を注入孔30の直上まで移動させることが困難であり、図4に模式的に示すように、溶融金属はラドル130の傾動によって斜め上方から注入孔30に注がれることとなる。その結果、注入孔30の直下ではなく、垂直線Zから一方側に偏った部分で筒部1の内表面が最も高温となり、損傷を受けやすい。
そこで、図4に示すように、筒部1の中心軸Xに直交する断面において、冷却装置40の中心線Cと中心軸Xとを結ぶ線が、注入孔30から下ろした垂直線Zとなす角度βが、一方側に0度〜60度となるように冷却装置40の位置を設定することができる。角度βが一方側に10度〜60度である範囲R2に冷却装置40の中心線を設定すれば、より望ましい。
本実施形態のスリーブS1によれば、少なくとも溶融金属を供給した際に高温となる溶湯受け領域において内筒10の材質をTC複合材料とし、且つ、溶湯受け領域において外筒20を冷却装置40によって冷却すること、すなわち、熱伝導率の小さいTC複合材料で形成された内筒10を外側から間接的に冷却することにより、溶融金属の温度は低下させない程度にTC複合材料を冷却することができ、凝固片の生成を抑制しつつ内筒の損傷を有効に抑制することができ、スリーブの耐用期間を長くすることができる。
そして、冷却装置40は、外筒20に形成した平面部20sに装着されるため、筒部1から冷却装置40が大きくはみ出すことを防止し、コンパクトで軽量な構成とすることができる。また、金属製のブロックであるジャケット本体41が、一対の平面部41aを備える平たい直方体であるため、筒部1を外側から囲むような断面円弧状のジャケット本体とする場合に比べて加工が容易であり、ジャケット本体41に管状部45を設ける加工も容易である。
また、外筒20と冷却装置40との接触が、平面部20sと平面部41aとの当接によるものであるため、密着性を高めることが容易であり、冷却装置40による外筒20の冷却効率を高めることができる。加えて、平面部20sと平面部41aとの間に黒鉛シートを挟み込む場合は、平面部20s及び平面部41aの平滑性がさほど高くなくても、黒鉛シートを介して平面部20sと平面部41aとを熱伝導において密着させることができ、冷却装置40によって外筒20をより効率よく冷却することができる。そして、冷却装置40によって外筒20を効率よく冷却することにより、外側からの内筒10の間接的な冷却を効果的に行うことができる。
更に、外筒20に平面部20sを形成し、そこに冷却装置40を外付けする構成であるため、外筒の内部に管状部を設ける場合とは異なり、外筒20の肉厚が小さい場合であっても、問題なくスリーブS1に冷却装置40を備えさせることができる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、内筒10の内表面に、窒化処理、炭化処理、ホウ化処理などの表面処理による表面処理層を、設けることができる。
また、上記では、TC複合材料の原料とするセラミックスとして、炭化珪素(SiC)を例示したが、これに限定されず、Si、TiN、ALN等の窒化物系セラミックス、TiC、BC、CrC等の炭化物系セラミックス、ZrB、TiB等のホウ化物系セラミックス、Cr、TiO、ZrO、MgO,Y等の酸化物系セラミックス、及びサイアロンを、単独または複数を混合して使用することができる。
更に、上記では、内筒10の全体がTC複合材料で形成されている場合を例示したが、内筒10において注入孔30の周縁部を鋼で形成することができる。注入孔30から溶融金属を供給したとき、溶湯受け領域が非常に高温となる一方で、注入孔から供給された時点で溶融金属の液面は内筒の内表面における上部に至るほどではないため、注入孔の周縁部はさほど高温とならない。その結果、非常に高温となった溶湯受け領域が大きく熱膨張し、筒部の軸方向にも大きく延びるのに対し、対向する注入孔の周縁部は熱膨張の程度も小さく、軸方向にさほど延びないため、スリーブにおいて注入孔側の端部は上方に向かって反るように変形し易い。
そこで、外筒20に冷却装置40を装着して溶湯受け領域を冷却することに加えて、注入孔の周縁部を熱伝導率の大きい鋼で形成することにより、溶湯受け領域における熱膨張と、注入孔の周縁部における熱膨張とを、より効果的にバランスさせることができ、注入孔側の端部が反り上がる変形をより有効に抑制することができる。
1 筒部
10 内筒
20 外筒
20s 平面部(第一の平面部)
30 注入孔
40 冷却装置
41 ジャケット本体
41a 平面部(第二の平面部)
45 管状部
50 黒鉛シート
70 プランジャチップ
E1 筒部前端
E2 筒部後端
S1 スリーブ(ダイカスト用スリーブ)

Claims (4)

  1. 円筒状の筒部、及び該筒部の側周壁の一部を貫通する注入孔を備えるダイカスト用スリーブが、前記筒部の中心軸を略水平とし前記注入孔を上方に開放させた状態で、筒部前端がキャビティに連通し、筒部後端からプランジャチップを進入させるようにダイカスト装置に支持されているダイカスト用スリーブの設置構造であって、
    前記筒部は、外筒と、該外筒に嵌入された内筒とを有しており、
    前記筒部において、少なくとも前記注入孔から供給される溶融金属を受ける部分である溶湯受け領域では、前記内筒はチタン又はチタン合金とセラミックスとの複合材料の焼結体で形成されていると共に、
    前記溶湯受け領域において前記外筒には第一の平面部が形成されており、
    第二の平面部を有する金属製ブロックであるジャケット本体に冷却媒体を通すための管状部が設けられた冷却装置が、前記第二の平面部を前記第一の平面部に直接に当接させた状態、または黒鉛シート及び金属箔の何れかを介して間接的当接させた状態で、前記外筒に装着されている
    ことを特徴とするダイカスト用スリーブの設置構造。
  2. 前記冷却装置は、前記第二の平面部と前記第一の平面部との間に黒鉛シートを介在させた状態で前記外筒に装着されている
    ことを特徴とする請求項1に記載のダイカスト用スリーブの設置構造。
  3. 前記冷却装置は、前記筒部の前記中心軸に直交する断面において、前記冷却装置の中心線と前記筒部の前記中心軸とを結ぶ線が、前記注入孔の中心から下ろした垂直線となす角度が、前記注入孔に溶融金属を供給するラドルとは反対側に10度〜60度となるように一方側に偏った位置に設けられている
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダイカスト用スリーブの設置構造。
  4. 円筒状の筒部、及び該筒部の側周壁の一部を貫通する注入孔を備えるダイカスト用スリーブであって、
    前記筒部は、外筒と、該外筒に嵌入された内筒とを有しており、
    前記筒部において、少なくとも前記注入孔に対向する部分を含む溶湯受け領域では前記内筒はチタン又はチタン合金とセラミックスとの複合材料の焼結体で形成されていると共に、
    前記溶湯受け領域において前記外筒には第一の平面部が形成されており、
    第二の平面部を有する金属製ブロックであるジャケット本体に冷却媒体を通すための管状部が設けられた冷却装置が、前記第二の平面部を前記第一の平面部に直接に当接させた状態、または黒鉛シート及び金属箔の何れかを介して間接的当接させた状態で、前記外筒に装着されている
    ことを特徴とするダイカスト用スリーブ。
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