JP4140025B2 - ダイカスト用スリーブ - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、例えばアルミニウム合金等の非鉄金属用の横型もしくは竪型ダイカストマシンにおける溶融金属射出装置を構成するダイカスト用スリーブに関し、特に金属製外筒内にセラミックス製内筒を焼嵌めしてなる複合構造のダイカスト用スリーブの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のダイカスト用スリーブとして、図2に示すような実公平7−41557号に記載されたものがある。図2において、ダイカスト用スリーブ5は、Fe−Ni系合金、Fe−Ni−Co系合金、Ti系合金の何れか1種の高強度低熱膨張性金属材料により中空円筒状に形成した外筒1内に、セラミックス材料により中空円筒状に形成した内筒2を焼嵌め、外筒1の金型側端部外周に中空円筒状に形成し、かつ前記外筒1および内筒2の金型側の耐圧力を大にするために補強リング4を、その内面に形成された段付き部4aを前記外筒1および内筒2の先端面に当接させて嵌着し、かつ補強リング4内に冷媒循環路4bを設けている。
【0003】
この構成により、セラミックス材料からなる内筒2に軸方向の押圧力を作用させることができるため、内筒2には圧縮応力が付与される。一方、外筒1を形成する金属材料は低熱膨張の特性を有するため、溶湯を内筒2に供給して温度上昇しても、内筒2に対する半径方向の圧縮力の減少は極めて小さく焼嵌め効果を維持できる。さらに、外筒1の金型側端部の外周には、冷媒循環路4bを有する補強リング4を嵌着しているため、射出圧力に起因する内圧に十分に耐えられるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のダイカスト用スリーブにおいては、常温状態では内筒2と先端部の補強リング4との間に径方向の内面の段差(ずれ)はないが、補強リング4が熱膨張係数の大きい熱間金型用鋼からなるため、使用中に外筒1が400〜450℃の高温度に至った場合には、補強リング4と外筒1および内筒2との熱膨張係数の差により、補強リング4の内面が内筒2の内面から出っ張る段差を生じやすかった。このような段差が大きすぎるとそこに溶湯が付着して、スリーブ5内を摺動するプランジャチップ(図示せず)および内筒2が損傷する問題があった。また、従来のダイカスト用スリーブは、補強リング4内に冷媒循環路4bを設けるため、補強リング4の製作が煩雑となり製作費が高価になる問題があった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、スリーブ使用中に高温に至った場合でも、先端部の補強リングと内筒との間に段差を生じることがなく、プランジャチップおよび内筒の長寿命化を図れるとともに、冷却構造を簡便に設けることができるダイカスト用スリーブを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のダイカスト用スリーブは、低熱膨張性金属材料からなる外筒内に、セラミックス材料からなる内筒を焼嵌めたダイカスト用スリーブにおいて、外筒および内筒の金型側の先端面と外筒の端部外周に当接するように補強リングを固定するとともに、補強リングの金型側の端部外周に嵌合部を設け、その嵌合部に冷媒が循環する冷却リングを固定したことを特徴とする。
【0007】
【作用】
図2に示す従来のダイカスト用スリーブにおける冷媒循環路4bの位置は金型側の先端から離れているため、使用中に補強リングと内筒との間に段差を生じやすかった。そこで、本発明は冷媒が循環する冷却リングにより補強リングの先端部を中心に冷却させることによって補強リングと内筒との間の段差を極力抑えるようにした。また、本発明では、冷却リングを鋼管などにより補強リングと別個に製作した後、補強リングに嵌合させるため従来に比べ製作が簡便になり、冷却リングの構造や寸法などが種々設定できるので設計自由度の高いものとなる。
【0008】
本発明において、低熱膨張性金属材料からなる外筒は20℃から300℃までの平均熱膨張係数が1〜5×10-6/℃、20℃から600℃までの平均熱膨張係数が5×10-6/℃以上であることが好ましい。また、セラミックス材料からなる内筒は窒化珪素やサイアロンなどの窒化珪素質焼結体からなるものが好ましい。これらの外筒と内筒を焼嵌めた場合、内筒の熱膨張係数は、20℃から600℃までが約3×10-6/℃であるため、600〜650℃の加熱を要する外筒と内筒の焼嵌め温度において、外筒と内筒の熱膨張係数の差が大きいため円滑に焼嵌め作業ができる。また、ダイカスト用スリーブの内に溶湯を注入した場合には、通常の外筒温度である300℃程度までは従来の外筒材であるTi系合金の熱膨張係数に比べて、20℃から300℃までの熱膨張係数が1〜5×10-6/℃と小さく、かつ外筒と内筒の熱膨張係数の差が小さいため、軸方向及び円周方向に外内筒のずれが発生せず十分な焼嵌め効果を確保できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施例である横型ダイカストマシン用スリーブの断面図を示す。Ni:32.6重量%、Co:14.9重量%、Al:0.8重量%、Ti:2.3重量%、残部Fe及び不可避的不純物からなる外筒1(外径130mm、内径90mm、長さ400mm)内に、Si3N4:87重量%、Y2O3:6重量%、Al2O3:4重量%、AlN固溶体:3重量%からなるサイアロン製の内筒2(外径90mm、内径60mm、長さ400mm)を、600〜650℃の焼嵌め温度で焼嵌めた。
【0010】
こうして得られた複合スリーブの金型側の先端面と外筒1の端部外周に当接するように熱間金型用鋼からなる補強リング4を焼嵌めにより嵌着するとともにボルト(図示せず)により固定した。補強リング4の金型側の端部外周には嵌合部が設けられており、その嵌合部に冷媒が循環する冷却リング7を嵌着した。冷却リング7は例えば炭素鋼鋼管により形成し、冷却リング7の内部に仕切り壁を、外周部に入水口および排水口を設け、水などの冷媒が冷却リング7の内部を循環できるようにする。
【0011】
また、複合スリーブの後端面に当接するように熱間金型用鋼からなる固定リング8をボルトにより固定し、複合スリーブを軸方向に強固に挟着した。なお6は注入口であり、外筒1及び内筒2の後端部近傍に開口させる。またスリーブ内を摺動するプランジャチップ(図示せず)は耐摩耗性、潤滑性に優れたSKD61材からなるものを使用した。
【0012】
上記の構成によるダイカスト用スリーブ5を型締力350tonの横型ダイカストマシンの射出装置に装着してアルミニウム合金のダイカストに使用した結果、100000ショット以上の安定した射出を行うことができ、スリーブ使用中に高温に至った場合でも、先端部の補強リングと内筒との間に使用上有害な段差を生じることがなかった。
【0013】
【発明の効果】
本発明のダイカスト用スリーブは、スリーブ使用中に高温に至った場合でも、先端部の補強リングと内筒との間に段差を生じることがなく、プランジャチップおよび内筒の長寿命化を図れる。また、従来に比べ冷却構造の製作が簡便になり経済的にも有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のダイカスト用スリーブの断面図である。
【図2】従来のダイカスト用スリーブの断面図である。
【符号の説明】
1 外筒、 2 内筒、 4 補強リング、5 ダイカスト用スリーブ、
6 注入口、 7 冷却リング
Claims (4)
- 低熱膨張性金属材料からなる外筒内に、セラミックス材料からなる内筒を焼嵌めたダイカスト用スリーブにおいて、外筒および内筒の金型側の先端面と外筒の端部外周に当接するように補強リングを固定するとともに、補強リングの金型側の端部外周に嵌合部を設け、その嵌合部に冷媒が循環する冷却リングを固定したことを特徴とするダイカスト用スリーブ。
- 冷却リングが鋼管からなることを特徴とする請求項1に記載のダイカスト用スリーブ。
- 外筒は20℃から300℃までの平均熱膨張係数が1〜5×10-6/℃、20℃から600℃までの平均熱膨張係数が5×10-6/℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイカスト用スリーブ。
- 内筒が窒化珪素質焼結体からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のダイカスト用スリーブ。
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