この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
図1は、この発明の実施の形態における工作機械を示す斜視図である。図2は、図1中の工作機械を示す前面図である。図中では、工作機械の外観をなすカバー体が透視されることにより、工作機械の内部構造が示されている。
図1および図2を参照して、工作機械100は、回転するワークに工具を接触させることによって、ワーク加工を行なう旋盤である。工作機械100には、停止するワークに回転する工具を接触させることによって、ワーク加工を行なうミーリング機能が備わっている。
工作機械100は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Control)工作機械である。
本明細書においては、工作機械100の左右方向(幅方向)に平行で、水平方向に延びる軸を「Z軸」といい、工作機械100の前後方向(奥行き方向)に平行で、水平方向に延びる軸を「Y軸」といい、鉛直方向に延びる軸を「X軸」という。図1中における右方向を「+Z軸方向」といい、左方向を「−Z軸方向」という。図1中における紙面の手前方向を「+Y軸方向」といい、奥方向を「−Y軸方向」という。+Y軸方向が、機械前方に対応している。図1中における上方向を「+X軸方向」といい、下方向を「−X軸方向」という。
なお、工作機械100の構造を説明する便宜上、上記のとおりX軸、Y軸およびZ軸を設定したが、これらは、旋盤で定義されるX軸、Y軸およびZ軸と必ずしも一致するものではない。
まず、工作機械100の全体構造について説明する。工作機械100は、ベッド11と、主軸台21と、刃物台51と、マガジン10と、自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)31とを有する。
ベッド11は、主軸台21、刃物台51、マガジン10および自動工具交換装置31等を支持するためのベース部材であり、工場などの床面に設置される。ベッド11は、鋳鉄などの金属から形成されている。
主軸台21は、ベッド11に取り付けられている。主軸台21は、ワーク主軸(不図示)を有する。ワーク主軸は、Z軸に平行な回転中心軸101を中心に回転駆動する。ワーク主軸の先端には、ワークを着脱可能に把持するチャックが設けられている。チャックに把持されたワークは、ワーク主軸の回転駆動に伴って、回転中心軸101を中心に回転する。
刃物台51は、加工エリア内に設けられている。加工エリアは、ワークの加工が行なわれる空間であり、ワーク加工に伴う切屑または切削油等の異物が加工エリアの外側に漏出しないようにカバー体により略密閉されている。刃物台51は、複数の工具を保持可能なように構成されている。刃物台51は、Z軸に平行な旋回中心軸102を中心に旋回可能なタレット型刃物台である。
刃物台51は、タレット52と、刃物台ベース56と、複数の工具ホルダ61とを有する。刃物台ベース56は、横送り台(不図示)に取り付けられている。
タレット52は、刃物台ベース56から、Z軸方向において主軸台21に近接する方向(−Z軸方向)に突出するように設けられている。タレット52は、旋回中心軸102の軸方向が厚み方向となる円盤形状を有する。タレット52は、旋回中心軸102を中心に旋回可能である。
複数の工具ホルダ61は、タレット52に装着されている。複数の工具ホルダ61は、ボルト等を用いて、タレット52に接続されている。複数の工具ホルダ61は、旋回中心軸102の周方向に並んで設けられている。工具ホルダ61は、工具を着脱可能に保持する。工具ホルダ61は、工具をクランプしたり、アンクランプしたりするためのクランプ機構部と、工具を回転させるための回転機構部とを内蔵している。
タレット52が旋回中心軸102を中心に旋回することによって、工具ホルダ61に保持された工具が旋回中心軸102の周方向に移動する。工具ホルダ61は、主軸台21のワーク主軸に保持されたワークを加工する場合、ワーク加工位置Wに位置決めされる。工具ホルダ61は、後述する自動工具交換装置31と工具交換する場合、刃物台側工具交換位置Kに位置決めされる。
複数の工具ホルダ61は、第1工具ホルダ61Sと、第2工具ホルダ61Tとを含む。刃物台51および自動工具交換装置31間で工具交換される場合、第1工具ホルダ61Sには、刃物台51の旋回中心軸102の軸方向(Z軸方向)に工具が挿入される。第1工具ホルダ61Sには、刃物台51の旋回中心軸102の軸方向に延びる中心軸210に沿って工具が挿入される。中心軸210は、第1工具ホルダ61Sに保持される回転工具の回転中心軸と一致する。刃物台51および自動工具交換装置31間で工具交換される場合、第2工具ホルダ61Tには、刃物台側工具交換位置Kにおける刃物台51の旋回中心軸102の半径方向(Y軸方向)に工具が挿入される。第2工具ホルダ61Tには、刃物台側工具交換位置Kにおける刃物台51の旋回中心軸102の半径方向に延びる中心軸211に沿って工具が挿入される。中心軸211は、第2工具ホルダ61Tに保持される回転工具の回転中心軸と一致する。
なお、図1および図2中に示される第1工具ホルダ61Sおよび第2工具ホルダ61Tの配置は、一例であり、特に限定されるものではない。第1工具ホルダ61Sおよび第2工具ホルダ61Tは、旋回中心軸102の周方向においてランダムな順番で並んでもよい。
刃物台51は、サドル57および横送り台(不図示)を介して、ベッド11により支持されている。サドル57は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどによって、Z軸方向に移動可能である。横送り台は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどによって、Z軸に直交し、X軸およびY軸に対して傾斜する軸方向(「Xa軸方向」という)に移動可能である。サドル57および横送り台が、それぞれ、Z軸方向およびXa軸方向に移動することによって、工具ホルダ61に保持された工具によるワークの加工位置をZ軸−Xa軸平面内で移動させることができる。
マガジン10は、加工エリア外に設けられている。マガジン10は、刃物台51から+Z軸方向に離れた位置に設けられている。刃物台51は、Z軸方向において、主軸台21およびマガジン10の間に配置されている。マガジン10は、ベッド11から+X軸方向(上方)に延伸する柱部材12に取り付けられている。なお、マガジン10のレイアウトは、特に限定されず、たとえば、マガジン10が刃物台51の機械後方側に配置されてもよい。
マガジン10は、加工目的に応じて工具を順次、加工エリアに供給するため、複数の工具を格納する装置である。マガジン10には、刃物台51における工具ホルダ61(61S,61T)に装着されるドリル、エンドミルもしくはフライス等の回転工具、または、外径切削工具、内径切削工具もしくは溝入れ工具等の固定工具が格納されている。
マガジン10は、搬送装置110と、アンクランプシリンダ141(図1を参照のこと)とを有する。搬送装置110は、複数の工具ポット112(第3工具保持部)を有する。工具ポット112は、工具を着脱可能に保持する。工具ポット112には、工具をクランプするクランプ機構部が内蔵されている。アンクランプシリンダ141は、マガジン側工具交換位置Jに位置決めされた工具ポット112において、クランプ機構部をアンクランプ動作させる。
搬送装置110は、複数の工具ポット112を搬送するように構成されている。搬送装置110は、支持プレート111と、モータ(不図示)とをさらに有する。
支持プレート111は、Y軸方向に平行な旋回中心軸103を中心とする円盤形状を有する。支持プレート111は、モータ(不図示)により、旋回中心軸103を中心にして順方向および逆方向に旋回可能である。
複数の工具ポット112は、支持プレート111によって、無端状の搬送経路に沿って一定間隔で支持されている。複数の工具ポット112は、旋回中心軸103を中心とする円周経路に沿って一定間隔で並んでいる。複数の工具ポット112は、支持プレート111の外周縁に沿って一定間隔で並んでいる。
支持プレート111が旋回中心軸103を中心に旋回することによって、工具ポット112が旋回中心軸103の周方向に搬送される。工具ポット112は、後述する自動工具交換装置31と工具交換する場合、マガジン側工具交換位置Jに配置される。マガジン10および自動工具交換装置31間で工具交換される場合、工具ポット112には、刃物台側工具交換位置Kにおける刃物台51の旋回中心軸102の半径方向(Y軸方向)に工具が挿入される。
なお、マガジン10が、支持プレート111の旋回中心軸103がZ軸方向と平行となるようにレイアウトされる場合、工具ポット112に対する工具の挿入方向は、刃物台51の旋回中心軸102の軸方向(Z軸方向)であってもよい。
自動工具交換装置31は、加工エリア内における刃物台51と、加工エリア外におけるマガジン10との間で工具を搬送する。自動工具交換装置31は、刃物台51において刃物台側工具交換位置Kに位置決めされた工具ホルダ61と工具交換する。自動工具交換装置31は、マガジン10においてマガジン側工具交換位置Jに位置決めされた工具ポット112と工具交換する。
自動工具交換装置31は、支持フレーム14により支持されている。支持フレーム14は、柱部材12および柱部材13の上端部に接続されている。柱部材12および柱部材13は、ベッド11から+X軸方向(上方)に延伸し、Z軸方向において互いに離れて配置されている。自動工具交換装置31は、支持フレーム14等に設けられた各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、Z軸方向に移動可能である。
自動工具交換装置31は、アーム部32を有する。アーム部32は、旋回中心軸104を中心に旋回可能で、かつ、旋回中心軸104の軸方向にスライド可能である。アーム部32は、一対の把持部33を有する。一対の把持部33は、旋回中心軸104を挟んで180°ずれた位相位置に設けられている。一対の把持部33は、工具を把持可能な爪形状を有する。把持部33は、工具を把持したまま、マガジン側工具交換位置Jおよび刃物台側工具交換位置Kとの間で移動する。
アーム部32(把持部33)は、旋回中心軸104がZ軸方向と平行となる第1姿勢と、旋回中心軸104がY軸方向と平行になる第2姿勢(図1および図2中に示される姿勢)との間で回動可能である。
アーム部32(把持部33)は、刃物台51において刃物台側工具交換位置Kに位置決めされた第1工具ホルダ61Sと工具交換する場合、第1姿勢とされる。アーム部32(把持部33)は、刃物台51において刃物台側工具交換位置Kに位置決めされた第2工具ホルダ61Tと工具交換する場合、第2姿勢とされる。アーム部32(把持部33)は、マガジン10においてマガジン側工具交換位置Jに位置決めされた工具ポット112と工具交換する場合、第2姿勢とされる。アーム部32は、刃物台側工具交換位置Kおよびマガジン側工具交換位置Jの各位置において、把持部33により工具を把持しつつ、旋回およびスライド動作することによって、工具交換を行なう。
なお、アーム部32は、同時に2つの工具を把持可能なダブルアームタイプに限られず、同時に1つの工具を把持可能なシングルアームタイプであってもよい。
続いて、自動工具交換装置31において、アーム部32(把持部33)を第1姿勢および第2姿勢の間で回動させるための機構について詳細に説明する。
図3および図4は、第1工具ホルダおよび自動工具交換装置の間における工具交換の工程を示す斜視図である。図5および図6は、第2工具ホルダおよび自動工具交換装置の間における工具交換の工程を示す斜視図である。図3および図4中には、第1姿勢Paとされたアーム部32(把持部33)が示され、図5および図6中には、第2姿勢Pbとされたアーム部32(把持部33)が示されている。図7は、自動工具交換装置の基本構造を模式的に示す斜視図である。
図3から図7を参照して、自動工具交換装置31は、ベース部71と、回動部76とをさらに有する。
ベース部71は、直線運動することによって、把持部33を、第1工具ホルダ61Sおよび第2工具ホルダ61Tに保持される工具を交換する刃物台側工具交換位置Kと、刃物台側工具交換位置Kよりも刃物台51から退避したマガジン側工具交換位置Jとの間で移動させる。
ベース部71は、水平方向に直線移動する。ベース部71は、Z軸方向に移動する。刃物台側工具交換位置Kは、刃物台51に配置されている。マガジン側工具交換位置Jは、マガジン10に配置されている。マガジン側工具交換位置Jは、刃物台51から+Z軸方向に離れた位置に配置されている。ベース部71は、アーム部32(把持部33)を、刃物台側工具交換位置Kおよびマガジン側工具交換位置Jの間で移動させる。
ベース部71は、第1基台72と、第2基台73とを有する。第1基台72および第2基台73は、Y軸−Z軸平面に平行な板部材からなる。第1基台72および第2基台73は、X軸方向(上下方向)に互いに離れて積層されている。
図7中の矢印311に示されるように、第1基台72は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、第2基台73とともにZ軸方向に移動する。第2基台73は、第1基台72の下方に配置されている。図7中の矢印312に示されるように、第2基台73は、各種の送り機構、案内機構およびサーボモータなどにより、第1基台72に対してY軸方向に相対的に移動する。
回動部76は、ベース部71(第2基台73)により支持されている。回動部76は、X軸方向に平行な回動中心軸106を中心に回転可能なように支持されている。回動中心軸106は、ベース部71の直線移動方向(Z軸方向)に直交する。回動部76は、第2基台73の下方に配置されている。
回動部76は、第1軸部77と、連結部78とを有する。第1軸部77は、回動中心軸106の軸上で延びる軸形状を有する。第1軸部77の上端部は、ベース部71(第2基台73)により回動可能に支持されている。連結部78は、第1軸部77およびアーム部32を連結している。連結部78は、第1軸部77の下端部に接続されている。連結部78は、第1軸部77から回動中心軸106の半径方向外側に向けて延出し、その先で下方に折れ曲がる形状を有する。
アーム部32(把持部33)は、回動部76に接続されている。アーム部32は、第2軸部34をさらに有する。第2軸部34は、旋回中心軸104の軸上で延びる軸形状を有する。第2軸部34は、連結部78の下端部から回動中心軸106の半径方向内側に向けて延び、回動中心軸106を越えて、さらに回動中心軸106の半径方向外側に向けて延びている。第2軸部34の先端部には、一対の把持部33が接続されている。
後述するカム機構部80によって、アーム部32(把持部33)は、回動部76とともに、回動中心軸106を中心に順方向および逆方向に回動する(図7中の矢印314に示される回動動作)。図7中では、アーム部32(把持部33)が、旋回中心軸104がY軸方向と平行になる第2姿勢Pbとされている。アーム部32(把持部33)は、回動中心軸106を中心に90°回動することによって、旋回中心軸104がZ軸方向と平行になる第1姿勢Paとされる。
図8および図9は、第1モードにおけるカム機構部および切り替え機構部を示す上面図である。図10および図11は、第2モードにおけるカム機構部および切り替え機構部を示す上面図である。
図3から図11を参照して、自動工具交換装置31は、カム機構部80と、切り替え機構部85とをさらに有する。
カム機構部80は、ベース部71の直線運動を回転運動として回動部76に伝達することにより、回動部76を回動させ、アーム部32(把持部33)の姿勢を第1姿勢Paおよび第2姿勢Pbの間で変化させる。切り替え機構部85は、カム機構部80を、ベース部71から回動部76に運動が伝達される第1モードMaと、ベース部71から回動部76に運動が伝達されない第2モードMbとの間で切り替わるように動作させる。
カム機構部80は、ベース部71の直線運動を回動部76の回転運動に変換する運動変換機構を構成している。
カム機構部80は、カム81と、コロ83(83A,83B)と、コロ取り付け板84とを有する。
カム81は、Z軸方向において、刃物台51およびマガジン10の間に設けられている。刃物台51およびマガジン10の間には、開閉可能なATCシャッター(不図示)が設けられている。アーム部32は、ATCシャッターが開状態とされた場合に生じる開口部を通じて、刃物台51が配置される加工エリア内と、マガジン10が配置される加工エリア外とを行き来する。カム81は、ATCシャッターおよびマガジン10の間の加工エリア外に配置されている。カム81は、後述するシリンダ86を介して、柱部材12に取り付けられている。
カム81は、カム面82を有する。カム面82は、ベース部71の直線運動方向(Z軸方向)に沿って変化するプロファイルを有する。図8から図11中に示されるように、カム面82は、Y軸方向に延びる中心線109を挟んだ両側で対称となるプロファイルを有する。
コロ83は、コロ取り付け板84を介して回動部76に接続されている。コロ83は、Z軸方向におけるベース部71の直線移動時、ベース部71および回動部76とともにZ軸方向に直線移動する。
コロ83は、X軸方向に平行な回転中心軸107を中心とする円柱形状を有する。コロ83は、コロ取り付け板84に取り付けられている。コロ83は、コロ取り付け板84により、回転中心軸107を中心に回転可能なように支持されている。コロ83Aおよびコロ83Bは、互いに間隔を設けて並んでいる。コロ83Aおよびコロ83Bは、回動中心軸106を中心とする同一円周上に配置されている。
コロ取り付け板84は、第1軸部77の上端部に接続されている。コロ取り付け板84は、第2基台73上に配置されている。コロ取り付け板84は、X軸方向(上下方向)において、第1基台72および第2基台73の間に配置されている。コロ取り付け板84は、回動中心軸106の半径方向内側から半径方向外側に向けて延出し、X軸−Z軸平面に平行な板材からなる。
切り替え機構部85は、シリンダ86を有する。シリンダ86のピストンロッド87は、Y軸方向に沿って伸張動作および短縮動作が可能である。カム81は、シリンダ86のピストンロッド87の先端に取り付けられている。シリンダ86は、ピストンロッド87の伸張動作および短縮動作によって、コロ83に対してカム81を出退させる。
シリンダ86は、図8および図9中に示す第1モードMaにおいて、カム81を、ベース部71の直線運動時におけるコロ83の経路上の第3位置に移動させる。シリンダ86は、図10および図11中に示す第2モードMbにおいて、カム81を、ベース部71の直線運動時におけるコロ83の経路から離間する第4位置に移動させる。
まず、カム機構部80が第1モードMaに設定される場面について具体的に説明する。図12は、第1モードにおけるカム機構部の動きを示す上面図である。
図8、図9および図12を参照して、自動工具交換装置31によりマガジン10および第1工具ホルダ61Sの間で工具を搬送する場合、シリンダ86を伸張駆動することによって、カム81をベース部71の直線運動時におけるコロ83の経路上の第3位置に移動させる。これにより、カム機構部80を、ベース部71から回動部76に運動が伝達される第1モードMaに設定する。
図12中のS101、および、図8に示されるように、アーム部32(把持部33)が、旋回中心軸104がY軸方向と平行になる第2姿勢Pbで加工エリア外に待機している。カム81は、ベース部71の直線運動時におけるコロ83Aの経路上の第3位置に配置されている。一方の把持部33には、マガジン側工具交換位置Jにおいて工具ポット112から供給された工具が把持されている。
図12中のS102に示されるように、ATCシャッター(不図示)を開状態とする。アーム部32(把持部33)を−Z軸方向に移動させつつ、加工エリア内に進入させる。アーム部32(把持部33)の直線移動に伴って、コロ83Aが、カム81のカム面82と接触する。
図12中のS103に示されるように、コロ83Aが、カム81のカム面82と接触しながら回転中心軸107を中心に回転する。コロ83Aを介してカム81から外力を受けたコロ取り付け板84が、回動部76とともに回動中心軸106を中心に90°回動する。これにより、アーム部32(把持部33)の姿勢が、第2姿勢Pbから、旋回中心軸104がZ軸方向と平行になる第1姿勢Paに変化する。
図9に示されるように、第1姿勢Paとされたアーム部32(把持部33)を刃物台側工具交換位置Kに向けて移動させる。図3および図4に示されるように、アーム部32(把持部33)の、旋回中心軸104を中心とする旋回動作と、旋回中心軸104の軸方向におけるスライド動作とによって、第1工具ホルダ61Sおよび自動工具交換装置31の間で工具交換を行なう。一方の把持部33に把持された工具を第1工具ホルダ61Sに挿入するとともに、第1工具ホルダ61Sから抜き出した工具を他方の把持部33により把持する。
図9に示されるように、カム81は、ベース部71の直線運動時におけるコロ83Bの経路上に配置されている。図12中のS104に示されるように、アーム部32(把持部33)を+Z軸方向に移動させる。アーム部32(把持部33)の直線移動に伴って、コロ83Bが、カム81のカム面82と接触する。
図12中のS105に示されるように、コロ83Bがカム81のカム面82と接触しながら回転中心軸107を中心に回転する。コロ83Bを介してカム81から外力を受けたコロ取り付け板84が、回動部76とともに回動中心軸106を中心に90°回動する。これにより、アーム部32(把持部33)の姿勢が、第1姿勢Paから、旋回中心軸104がY軸方向と平行になる第2姿勢Pbに変化する。
図12中のS106、および、図8に示されるように、第2姿勢Pbとされたアーム部32(把持部33)を加工エリア内から加工エリア外に移動させ、そのあと、マガジン側工具交換位置Jにおけるマガジン10および自動工具交換装置31間の工具交換に移行させる。
次に、カム機構部80が第2モードMbに設定される場面について具体的に説明する。図10および図11を参照して、自動工具交換装置31によりマガジン10および第2工具ホルダ61Tの間で工具を搬送する場合、シリンダ86を短縮駆動することによって、カム81をベース部71の直線運動時におけるコロ83の経路から離間した第4位置に移動させる。これにより、カム機構部80を、ベース部71から回動部76に運動が伝達されない第2モードMbに設定する。
図10に示されるように、アーム部32(把持部33)が、旋回中心軸104がY軸方向と平行になる第2姿勢Pbで加工エリア外に待機している。カム81は、ベース部71の直線運動時におけるコロ83(83A,83B)の経路から−Y軸方向に離間した第4位置に配置されている。一方の把持部33には、マガジン側工具交換位置Jにおいて工具ポット112から供給された工具が把持されている。
図11に示されるように、ATCシャッター(不図示)を開状態とする。アーム部32(把持部33)を−Z軸方向に移動させつつ、加工エリア内に進入させる。アーム部32(把持部33)は、第2姿勢Pbとされたままカム81を素通りする。
第2姿勢Pbとされたアーム部32(把持部33)を刃物台側工具交換位置Kに向けて移動させる。図5および図6に示されるように、アーム部32(把持部33)の、旋回中心軸104を中心とする旋回動作と、旋回中心軸104の軸方向におけるスライド動作とによって、第2工具ホルダ61Tおよび自動工具交換装置31の間で工具交換を行なう。一方の把持部33に把持された工具を第2工具ホルダ61Tに挿入するとともに、第2工具ホルダ61Tから抜き出した工具を他方の把持部33により把持する。
図11に示されるように、カム81は、ベース部71の直線運動時におけるコロ83(83A,83B)の経路から−Y軸方向に離間した第4位置に配置されている。アーム部32(把持部33)を+Z軸方向に移動させる。アーム部32(把持部33)は、第2姿勢Pbとされたままカム81を素通りする。
第2姿勢Pbとされたアーム部32(把持部33)を加工エリア内から加工エリア外に移動させ、そのあと、マガジン側工具交換位置Jにおけるマガジン10および自動工具交換装置31間の工具交換に移行させる。
このような構成によれば、アーム部32(把持部33)の姿勢を変化させるための機構として、ベース部71の直線運動を回動運動として回動部76に伝達するカム機構部80が用いられる。これにより、簡易な構成で、把持部33により把持される工具の向きを、第1工具ホルダ61Sおよび第2工具ホルダ61Tの各工具ホルダ61における工具の挿入方向に対応した向きに変化させることができる。
また、本実施の形態においては、アーム部32(把持部33)の姿勢を変化させるためのモータ等のアクチュエータをベース部71に搭載する必要がない。このため、自動工具交換装置31における移動体の重量を低減したり、移動体に配索される配線または配管を少なくしたりできる。
また、マガジン側工具交換位置Jにおける工具ポット112に対する工具の挿入方向は、刃物台側工具交換位置Kにおける刃物台51の旋回中心軸102の半径方向(Y軸方向)である。このような構成により、マガジン10および自動工具交換装置31の間の工具交換時と、第2工具ホルダ61Tおよび自動工具交換装置31の間における工具交換時とで、アーム部32(把持部33)の姿勢が共通にできる。
図13および図14は、回動部のロック状態を示す上面図である。図13および図14を参照して、自動工具交換装置31は、ロック機構部90をさらに有する。ロック機構部90は、回動部76を、アーム部32(把持部33)が第1姿勢Paおよび第2姿勢Pbの各姿勢となる位置に保持するように構成されている。
ロック機構部90は、ロック板96と、シリンダ91と、作動部92とを有する。ロック板96は、第1軸部77の上端部に接続されている。ロック板96は、第2基台73上に配置されている。ロック板96は、回動中心軸106を挟んでコロ83(83A,83B)と対向する位相位置に設けられている。ロック板96は、回動中心軸106を挟んでコロ取り付け板84と対向する位相位置に設けられている。
ロック板96は、回動中心軸106の半径方向内側から半径方向外側に向けて延出し、X軸−Z軸平面に平行な板材からなる。ロック板96には、窪み部97が設けられている。窪み部97は、回動中心軸106の半径方向外側におけるロック板96の先端部に設けられている。窪み部97は、回動中心軸106の半径方向内側に向けて窪む凹形状を有する。
回動中心軸106を中心とするアーム部32(把持部33)の回動動作に伴って、ロック板96も回動中心軸106を中心に順方向および逆方向に回動する。
シリンダ91は、ベース部71(第2基台73)に搭載されている。シリンダ91のピストンロッド94は、Y軸方向に沿って伸張動作および短縮動作が可能である。作動部92は、シリンダ91のピストンロッド94の先端に取り付けられている。シリンダ91は、ピストンロッド94の伸張動作および短縮動作によって、ロック板96に対して作動部92を出退させる。
作動部92は、一対の突出部93(93p,93q)を有する。突出部93は、−Y軸方向に向けて突出する凸形状を有する。突出部93pおよび突出部93qは、Z軸方向において、互いに離れて設けられている。図8および図13に示されるように、突出部93pは、Y軸方向において、アーム部32(把持部33)が第2姿勢Pbとされた場合の窪み部97と対向している。図9および図14に示されるように、突出部93qは、Y軸方向において、アーム部32(把持部33)が第1姿勢Paとされた場合の窪み部97と対向している。
図13に示されるように、アーム部32(把持部33)が第2姿勢Pbとされている場合に、シリンダ91を伸張駆動することによって、作動部92の突出部93pをロック板96の窪み部97に係合させる。これにより、回動部76が、アーム部32(把持部33)が第2姿勢Pbとなる位置に保持される。図14に示されるように、アーム部32(把持部33)が第1姿勢Paとされている場合に、シリンダ91を伸張駆動することによって、作動部92の突出部93qをロック板96の窪み部97に係合させる。これにより、回動部76が、アーム部32(把持部33)が第1姿勢Paとなる位置に保持される。
一方、アーム部32(把持部33)を第2姿勢Pbから第1姿勢Paに変化させる場合(図12中のS101からS103のステップ)、および、アーム部32(把持部33)を第1姿勢Paから第2姿勢Pbに変化させる場合(図12中のS104からS106のステップ)、シリンダ91を短縮駆動することによって、ロック板96の窪み部97に対する作動部92の突出部93(93p,93q)の係合を解除する。これにより、カム機構部80による回動部76の回動動作が許容される。
このような構成によれば、アーム部32(把持部33)が第1姿勢Paおよび第2姿勢Pbの各姿勢に確実に固定されるため、自動工具交換装置31と、刃物台51およびマガジン10との間における工具交換をより安定して行なうことができる。
以上に説明した、この発明の実施の形態における工作機械100の構造についてまとめると、本実施の形態における工作機械100は、旋回中心軸102を中心に旋回可能な刃物台51と、刃物台51に装着され、工具が旋回中心軸102の軸方向に挿入され、工具を着脱可能に保持する第1工具保持部としての第1工具ホルダ61Sと、刃物台51に装着され、工具が旋回中心軸102の半径方向に挿入され、工具を着脱可能に保持する第2工具保持部としての第2工具ホルダ61Tと、第1工具ホルダ61Sおよび第2工具ホルダ61Tに保持される工具を交換するための自動工具交換装置31とを備える。自動工具交換装置31は、工具を把持可能な把持部33と、把持部33が接続される回動部76と、回動部76を回転可能に支持し、直線運動することによって、把持部33を、第1工具ホルダ61Sおよび第2工具ホルダ61Tに保持される工具を交換する第1位置としての刃物台側工具交換位置Kと、刃物台側工具交換位置Kよりも刃物台51から退避した第2位置としてのマガジン側工具交換位置Jとの間で移動させるベース部71と、ベース部71の直線運動を回転運動として回動部76に伝達することにより、回動部76を回動させ、把持部33の姿勢を、第1工具ホルダ61Sに保持された工具を把持可能な第1姿勢Paと、第2工具ホルダ61Tに保持された工具を把持可能な第2姿勢Pbとの間で変化させるカム機構部80と、カム機構部80を、ベース部71から回動部76に運動が伝達される第1モードMaと、ベース部71から回動部76に運動が伝達されない第2モードMbとの間で切り替わるように動作させる切り替え機構部85とを含む。
このように構成された、この発明の実施の形態における工作機械100によれば、簡易な構成で、自動工具交換時に工具の向きを第1工具ホルダ61Sおよび第2工具ホルダ61Tの各工具ホルダ61における工具の挿入方向に対応した向きに変化させることができる。
なお、本実施の形態では、コロ83が回動部76に接続され、カム81がベース部71の直線運動時におけるコロ83の経路上に配置される構成について説明したが、本発明は、カムが回動部に接続され、コロがベース部の直線運動時におけるカムの経路上に配置される構成であってもよい。また、カム機構部80の第2モードMbにおいて、カム81をベース部71の直線運動時におけるコロ83の経路上から退避させる方向は、特に限定されず、たとえば、X軸方向(上下方向)であってもよい。切り替え機構部85を構成するアクチュエータは、シリンダ86に限られず、たとえば、モータであってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。