JP6776626B2 - 極板、及び蓄電素子、並びに極板の製造方法 - Google Patents

極板、及び蓄電素子、並びに極板の製造方法 Download PDF

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Description

本明細書に開示された技術は、極板、及びこれを用いた蓄電素子、並びに極板の製造方法に関する。
従来、蓄電素子の安全性を高める手法として、極板の表面に被覆層を形成する技術が知られている(特開2008−53207号公報)。この特許文献には、「正、負極それぞれにリード端子を取り付け、セパレータを介して渦巻状に巻き取ったものをプレスして、扁平状に押し潰した電極体を作製した後、電池外装体としてのアルミニウムラミネートフィルムの収納空間内に電極体を配置し、更に、当該空間内に非水電解液を注液した後に、アルミニウムラミネートフィルム同士を溶着して封止することにより電池を作製した。」と記載されている(段落0040参照)。
また、上記特許文献に係る蓄電素子は、「正極活物質層の表面に、フィラー粒子としてのマグネシア(MgO)を含む被覆層が形成され」ている(段落0084参照)。
特開2008−53207号公報
上記の技術においては、まず、マグネシアを含む無機粒子からなるフィラー粒子を、結着剤と共に溶剤に混合して、スラリーを調製する。このスラリーを極板上に塗工し、溶剤を乾燥、除去することにより、正極の表面に被覆層が形成されるようになっている。
この際、粒子径が比較的小さなフィラー粒子を使用すると、極板に形成された合剤層へフィラー粒子が入り込むことが懸念される。フィラー粒子が合剤層に入り込んでしまうと、合剤層の電気抵抗値が大きくなってしまう虞がある。
本明細書に開示された技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、極板の直流抵抗の増大を抑制することを目的とする。
本明細書に開示された技術の一態様に係る極板は、活物質粒子を含む合剤層と、
フィラー粒子を含む被覆層と、を備え、前記活物質粒子の粒子径(D30)が、前記フィラー粒子の粒子径(D50)と同じ、又は小さい。
本明細書に開示された技術によれば、極板の直流抵抗の増大を抑制することができる。
実施形態1に係る蓄電素子を示す斜視図 蓄電素子を示す分解斜視図 蓄電要素を示す一部切欠側面図 正極集電基材、正極合剤層、被覆層、及びセパレータを示す一部拡大断面図 蓄電素子を備えた蓄電モジュールを示す模式図
(実施形態の概要)
まず、本実施形態にて開示する技術の概要について説明する。本実施形態に係る極板は、活物質粒子を含む合剤層と、フィラー粒子を含む被覆層と、を備え、前記活物質粒子の粒子径(D30)が、前記フィラー粒子の粒子径(D50)と同じ、又は小さい。
上記の構成によれば、合剤層における活物質粒子間の空隙の大きさよりも、フィラー粒子の方が大きくなる。この結果、合剤層中にフィラー粒子が入り込むことが抑制される。これにより、合剤層への電解質の浸透が阻害されにくくなり、直流抵抗の増大を抑制することができる。
また、前記フィラー粒子の粒子径(D50)に対する前記活物質粒子の粒子径(D30)の粒子径比(活物質粒子径/フィラー粒子径)が0.2以上であることが好ましい。
上記の構成によれば、被覆層の厚さによる蓄電素子のエネルギー密度の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の一態様は、前記活物質粒子が正極活物質粒子である極板が好ましい。
上記の構成によれば、蓄電素子に金属等の不純物が混入した場合であっても、正極合剤層と不純物との接触を防止することができるため、蓄電素子の性能を低下させるような微小短絡を抑制することができる。
また、本明細書に開示された技術の一実施形態は、上記の極板、を備えた蓄電素子であることが好ましい。
また、本明細書に開示された技術の一実施形態は、前記被覆層が、乾式塗工により形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、蓄電素子の直流抵抗の増大を一層抑制することができる。
<実施形態1>
本明細書に開示された技術の実施形態1を、図1〜図5を参照しつつ説明する。実施形態1に係る蓄電素子10は、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車等の車両(図示せず)の動力源や、電動工具(図示せず)の電源として使用される。図5に、上記の蓄電素子10を複数備える蓄電装置60を示す。図5において、蓄電装置60は、複数の蓄電ユニット50を備えている。それぞれの蓄電ユニット50は、複数の蓄電素子10を備えている。上記の蓄電装置60が、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として使用されるようになっている。このように本明細書に開示された技術に係る蓄電素子10は、車両や電動工具等、短時間で大出力放電が求められる電源として、有効に利用することができる。なお、以下の説明においては、矢線Uで示す方向を上下方向とし(矢線U1は上方、矢線U2は下方を示す)、矢線Vで示す方向を前後方向とし(矢線V1は前方、矢線V2は後方を示す)、矢線Wで示す方向を左右方向とする(矢線W1は左方、矢線W2は右方を示す)。
実施形態1に係る蓄電素子10は、非水電解質二次電池であるリチウムイオン電池であって、ケース11内に、正極板18(極板の一例)と、負極板19(相手側極板の一例)と、セパレータ21と、非水電解質(図示せず)と、を収容してなる。
(ケース11)
図1に示すように、ケース11は金属製であって、扁平な直方体形状をなしている。ケース11を構成する金属としては、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、必要に応じて任意の金属を選択しうる。
ケース11の上面には、正極端子16と、負極端子17とが、上方に突出して設けられている。正極端子16は、ケース11内において公知の手法により正極板18と電気的に接続されている。また、負極端子17は、ケース11内において公知の手法により負極板19と電気的に接続されている。
(蓄電要素20)
図2に示すように、ケース11内には、蓄電要素20が収容されている。ケース11は、ケース本体12と、蓋13と、を有する。ケース本体12は、全体として略直方体形状をなし、一端面側(本実施形態では上面側)が開口されている。
蓋13には、正極端子16、負極端子17、正極集電体22、及び負極集電体23が設けられている。蓋13は、全体として左右方向に細長い略長方形状をなし、ケース本体12の開口と略同一の形状をなす。
蓋13の外面(上面)には正極端子16と負極端子17とが配置されている。正極端子16は、蓋13の左右方向における左端側(W1側)に配置されて、負極端子17は、左右方向における右端側(W2側)に配置されている。
蓋13の左端部寄りの位置には、蓋13の下面から下方(矢線U2で示す方向)に延びる2つの正極集電体22が配設されている。詳細には図示しないが、正極集電体22の上端部は、正極端子16に電気的に接続されている。
蓋13の右端部寄りの位置には、蓋13の下面から下方(矢線U2で示す方向)に延びる2つの負極集電体23が配設されている。詳細には図示しないが、負極集電体23の上端部は、負極端子17に電気的に接続されている。
図3に示すように、蓄電要素20は、正極板18と負極板19とがセパレータ21を介して巻回されることで製造される。
正極集電体22と、後述する正極集電基材30とが、クリップ24によって挟み込まれた状態で超音波溶接されることにより、正極端子16と正極板18とが電気的に接続されている。また、負極集電体23と、後述する負極集電基材とが、クリップ25によって挟み込まれた状態で超音波溶接されることにより、負極端子17と負極板19とが電気的に接続されている。
(正極板18)
正極集電基材30は金属製の箔状又は板状をなしている。本実施形態に係る正極集電基材30は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。正極集電基材30の厚さは5μm以上50μm以下であることが好ましい。
正極集電基材30の片面又は両面には、正極活物質粒子40(活物質粒子の一例)を含む正極合剤層31(合剤層の一例)が形成されている。本実施形態においては、正極集電基材30の両面に正極合剤層31が形成されている。正極合剤は、正極活物質粒子40と、導電助剤と、結着剤と、を含んでいてもよい。
正極活物質粒子40としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質粒子40であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、正極活物質として、LiMPO、Li(PO、LiMPOF、LiMSiO、LiMBO(MはV、Ti,Fe、Ni、Mn、Co、Cu等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、マンガン酸リチウム等のスピネル型結晶構造を有する化合物、一般式LiMO、やLi1+y1−y(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素であり、0<x≦1.2、0<y<1)で表されるリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
上記の中でも、リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質の主成分として使用した蓄電素子は、エネルギー密度、充放電特性、高温保存等の寿命特性のバランスに優れることから好ましい。遷移金属のモル数に対するニッケルのモル数の割合が多い程、蓄電素子の高温保存前後の直流抵抗の増加をより抑制することができるため好ましい。このため、リチウム遷移金属複合酸化物に含まれるニッケルのモル数の割合は遷移金属のモル数に対して30%を超えることが好ましく、33%以上であることがより好ましい。
一方、リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属のモル数に対するニッケルのモル数の割合が80%を超えるとリチウム遷移金属複合酸化物の初期クーロン効率が低下する傾向がある。
これらの観点から、リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属のモル数に対するニッケルのモル数の割合は30%を超えることが好ましく、33%以上であることがより好ましく、33%〜80%とすることが特に好ましい。最も好ましくは、式LiNiMnCo1−x−y(0<w≦1.2、0.3<x≦0.8、0≦y<1)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として使用することである。
なお、リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質の主成分として使用するとは、正極活物質の全質量の中で、リチウム遷移金属複合酸化物の質量が最も多いことを意味する。
導電助剤の種類は特に制限されず、金属であっても非金属であってもよい。金属の導電剤としては、CuやNiなどの金属元素から構成される材料を用いることができる。また、非金属の導電剤としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの炭素材料を用いることができる。
結着剤は、電極製造時に使用する溶媒や電解質に対して安定であれば特にその種類は制限されない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂;エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマー等を1種または2種以上の混合物として用いることができる。
また、必要に応じて、正極合剤に粘度調整剤などを含有させてもよい。粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等、必要に応じて任意の化合物を適宜に選択することができる。
図4に示すように、正極合剤層31の表面には、フィラー粒子43と結着剤とを含む被覆層44が形成されている。フィラー粒子43は、蓄電素子の安全性の観点から、電気的に絶縁性であることが好ましい。フィラー粒子43は大気下で500℃にて重量減少が5%以下であるものが好ましい。中でも800℃にて重量減少が5%以下であるものが好ましい。そのような材料として無機化合物が挙げられる。無機化合物は下記のうちの一つ以上の無機物の単独もしくは混合体もしくは複合化合物からなる。酸化鉄、SiO、Al、TiO、BaTiO、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土粒子;ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質あるいはそれらの人造物等が挙げられる。
また、フィラー粒子43の形状は球状、鱗片状、テトラポット形等の様々な形態を用いることができる。フィラー粒子43の形状が球状(アスペクト比が1.5以下)である場合、被覆層によって電解質の浸透が阻害されにくくなるため、極板の直流抵抗の増大を抑制することができるので好ましい。
フィラー粒子43が鱗片状(アスペクト比2以上)である場合、被覆層のフィラー粒子43が合剤層の表面を効率良く覆うことができる。よって、被覆層の厚さを薄くすることができるので好ましい。
被覆層の結着剤は、電解質に対して安定な材料であれば、特にその種類は制限されない。結着剤としては、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカーボネートを挙げることができる。電気化学的な安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが、より好ましい。特に、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
(負極板19)
負極集電基材(図示せず)は金属製の箔状又は板状をなしている。本実施形態に係る負極集電基材は、銅又は銅合金からなる。負極集電基材の厚さは5μm以上50μm以下であることが好ましい。
負極集電基材の片面又は両面には、負極活物質を含む負極合剤層(図示せず)が形成されている。本実施形態においては、負極集電基材の両面に負極合剤層が形成されている。負極合剤は、負極活物質と、導電助剤と、結着剤と、を含んでいてもよい。
負極板19に用いることができる結着剤や粘度調整剤等は、正極板18に用いることができるものと同様のものを適宜に選択して使用することができるので、説明を省略する。
負極活物質としては、炭素材料、その他リチウムと合金化可能な元素、合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物等が挙げられる。炭素材料の例としてはハードカーボン、ソフトカーボン、グラファイト等が挙げられる。リチウムと合金可能な元素の例としては、例えば、Al、Si、Zn、Ge、Cd、Sn、及びPb等を挙げることができる。これらは単独で含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。また、合金の例としてはNi−Si合金、及びTi−Si合金等の遷移金属元素を含む合金等が挙げられる。金属酸化物の例としてはSnB0.40.63.1等のアモルファススズ酸化物、SnSiO等のスズ珪素酸化物、SiO等の酸化珪素、Li4+xTi12等のスピネル構造のチタン酸リチウム等が挙げられる。金属硫化物の例としては、TiS等の硫化リチウム、MoS等の硫化モリブデン、FeS、FeS、LiFeS等の硫化鉄が挙げられる。これらの中でも特にグラファイトやハードカーボンやソフトカーボンが好ましい。
(セパレータ21)
セパレータ21としては、適宜公知のものを使用でき、例えば、基材層のみからなるセパレータや、基材層の一方の面又は双方の面に、耐熱粒子と結着剤とを含む無機層が形成されたセパレータを使用することができる。セパレータ21の基材層としては、ポリオレフィン微多孔膜、合成樹脂製の織物又は不織布等を用いることができる。ポリオレフィン微多孔膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの複合膜を利用することができる。合成樹脂繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、又はこれらの混合物から選択することができる。
(電解質)
電解質としては、非水溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解質が好ましい。電解質は、ケース11内において、正極合剤層31、負極合剤層、及びセパレータ21に含浸されている。電解質は限定されるものではなく、一般にリチウムイオン電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、電解質には公知の添加剤を加えてもよい。
電解質塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、NaClO、NaI、NaSCN、NaBr、KClO、KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)又はカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩;LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、(CHNBF、(CHNBr、(CNClO、(CNI、(CNBr、(n−CNClO、(n−CNI、(CN−maleate、(CN−benzoate、(CN−phtalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
さらに、LiBFとLiN(CSOのようなパーフルオロアルキル基を有するリチウム塩とを混合して用いることにより、さらに電解質の粘度を下げることができるので、低温特性をさらに高めることができ、また、自己放電を抑制することができ、より好ましい。
また、電解質塩として常温溶融塩やイオン液体を用いてもよい。
(正極合剤層31)
図4に示すように、正極集電基材30の表面には、正極合剤層31が形成されている。正極合剤層31には、正極活物質粒子40が含まれている。本実施形態においては、正極活物質粒子40の粒子径(D30)は、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましく、1μm〜10μmが特に好ましい。
正極合剤層31の表面には、フィラー粒子43と結着剤とを含む被覆層44が形成されており、正極活物質粒子40の粒子径(D30)は、フィラー粒子43の粒子径(D50)と同じか、又は、小さい。
正極活物質粒子40の粒子径(D30)、及びフィラー粒子43の粒子径(D50)は、正極活物質粒子40の粒度分布、及びフィラー粒子43の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置(装置名:SALD-2200(島津製作所製)、測定制御ソフトはWing SALD−2200)を用いて測定した。
測定には、散乱式の測定モードを採用した。正極活物質粒子40の粒子径を測定する場合には、正極活物質粒子40を分散溶媒中に分散させた分散液を調製し、この分散液を測定資料として使用した。一方、フィラー粒子43の粒子径を測定する場合には、フィラー粒子43を分散溶媒中に分散させた分散液を調製し、この分散液を測定試料として使用した。
上記の分散液を入れた測定用湿式セルを5分間超音波環境下に置いた後、装置にセットし、レーザー光を照射して測定を行い、散乱光分布を得る。得られた散乱光分布を対数正規分布により近似し、その粒度分布(横軸、σ)において最小を0.1μm、最大を100μmに設定した範囲の中で、累積度30%にあたる粒子径をD30、累積度50%にあたる粒子径をD50とした。
正極活物質の粒子径は、累積度30%にあたる粒子径の小数第1位を四捨五入した値をD30として採用した。又、フィラー粒子の粒子径は、累積度50%にあたる粒子径の小数第1位を四捨五入した値をD50として採用した。なお、測定値が1μmよりも小さな場合は、小数第2位を四捨五入した値を採用した。具体例としては、例えば、「0.82μm」は、「0.8μm」とした。
なお、本実施形態においては、正極活物質粒子40の粒子径として、累積度30%にあたる、いわゆるD30を採用した。これは、以下の理由による。
本明細書に開示された技術においては、正極合剤層31の表面と被覆層44の境界における粒子径の関係に着目している。正極合剤層31に含まれる正極活物質粒子40の内、比較的小さな粒子は、正極基材に正極合剤が塗工された後、正極合剤層31の表面に向かって浮き上がる。この結果、いわゆるD50よりも小さな粒子が、正極合剤層31の表面に集まる傾向にある。このため、正極合剤層31の表面における正極活物質粒子40の粒子径と、フィラー粒子43の粒子径との関係性を適切に表現するために、正極活物質粒子40の粒子径としてD30を用いた。
(被覆層44)
正極合剤層31の表面には、被覆層44が形成されている。被覆層44は、被覆フィラー粒子43を含む。フィラー粒子43の粒子径(D50)は、正極活物質粒子40の平均粒子径(D30)と、同じか、又は大きい値となっている。これにより、フィラー粒子43は、正極活物質粒子40同士の間隙に入り込むことが抑制されるようになっている。この結果、被覆層44のフィラー粒子43が正極合剤層31の内部に入り込むことが抑制される。これにより、正極合剤層31への電解液の浸透が阻害されにくくなるので、正極合剤層31の電気抵抗値の増大を抑制することができる。
また、正極合剤層31の表面には、被覆層44が形成されていることにより、蓄電素子に金属等の不純物が混入した場合であっても、正極合剤層と不純物との接触を防止することができる。正極合剤層と金属との接触は、蓄電素子の性能の低下をもたらす、正極板と負極板の間の微小短絡を誘引する虞がある。このため、正極合剤層31の表面に被覆層44が存在することで、蓄電素子の微小短絡を抑制することができるため好ましい。
フィラー粒子43の粒子径(D50)に対する正極活物質粒子40の粒子径(D30)の粒子径比(活物質粒子径/フィラー粒子径)を、0.9以下とすることでフィラー粒子43が正極合剤層31の内部に入り込むことが一層抑制されるので好ましい。より好ましくは0.7以下である。一方、上記正極活物質粒子40の粒子径の好ましい範囲よりも小さい活物質粒子径を採用することは、活物質の製造面や蓄電素子の性能面から技術的に難しい点も多い。従って、活物質粒子径/フィラー粒子径を小さくすると、フィラー粒子径が大きくなる傾向にある。フィラー粒子径が大きくなると被覆層も厚くなる。被覆層が厚くなり正極板の体積が増加すると、蓄電素子のエネルギー密度が低下する虞がある。
よって、蓄電素子のエネルギー密度を維持するためには、活物質粒子径/フィラー粒子径を必要以上に小さくしないことが好ましい。具体的には、活物質粒子径/フィラー粒子径は0.2以上とすることが好ましい。より好ましくは0.4以上である。
なお、正極活物質粒子40として、後述する大径活物質粒子41と小径活物質粒子42を混合する場合は、フィラー粒子/活物質粒子径の代わりに小径活物質粒子径/フィラー粒子径の比が上記範囲となることが好ましい。
また、被覆層44には、セパレータ21が溶断した場合でも、正極合剤層31と負極合剤層とが直接接触することを防止する役割を有する。正極合剤層31と負極活物質層が被覆層44を介して接した場合には、蓄電素子の安全性を確保できる程度に正負極間の短絡電流を抑制することが必要となる。よって、被覆層44の電気抵抗は大きい方が好ましく、限りなく電気的に絶縁性であることがより好ましい。
本実施形態では、フィラー粒子43が正極合剤層31の内部に入り込むことが抑制されるので、フィラー粒子43の多くは、正極合剤層31の表面に形成された被覆層44内に位置するようになっている。この結果、被覆層44の電気抵抗値が、所定値よりも小さくなることが抑制される。
フィラー粒子43の粒子径(D50)は、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましく、1μm〜10μmが特に好ましい。
また、フィラー粒子43は粒子径(D50)が異なる複数のフィラー粒子で構成されていても良く、その際、最も小さいフィラー粒子の粒子径(D50)が正極活物質粒子40の粒子径(D30)と同じか又は大きければ良い。
この場合、最も小さいフィラー粒子の粒子径(D50)は、フィラー粒子43の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することで得られた頻度分布グラフにおいて極大点の粒子径が最も小さい側のデータから算出したD50の値をフィラー粒子径(D50)として採用する。
フィラー粒子43として粒子径(D50)が異なる複数のフィラー粒子を用いる場合には、最も小さいフィラー粒子の粒子径F1(D50)に対する最も大きいフィラー粒子の粒子径F2(D50)の粒子径比(F2/F1)は、3以下であることが好ましい。これにより、粒子径の大きなフィラー粒子同士の間隙に粒子径の小さなフィラー粒子が入り込むことを抑制することができる。この結果、被覆層中の電解液の浸透が阻害されにくくなるので、蓄電素子の高率放電性能を維持することができるため好ましい。より好ましくはF2/F1が2以下である。
本実施形態では、被覆層44中のフィラー粒子43が正極合剤層31の内部に入り込むことが抑制される。よって、被覆層をある程度薄くしても蓄電素子の安全性を確保することができると考えられる。また、被覆層を薄くすることで蓄電素子の高率放電性能を維持することができるので好ましい。具体的な被覆層44の厚さは、30μm以下が好ましい。より好ましくは、20μm以下であり、特に好ましくは15μm以下である。一方、被覆層を薄くし過ぎると蓄電素子の安全性の余裕が少なくなる虞があることから、被覆層の厚さは0.5μm以上が好ましい。より好ましくは1μm以上であり、3μm以上が特に好ましい。よって、被覆層44の厚さは、0.5μm〜30μm以下が好ましい。より好ましくは0.5μm〜20μmであり、特に好ましくは1μm〜15μmである。
また、本実施形態の一形態として、 図4に示すように、正極合剤層31は、正極活物質粒子40として、大径活物質粒子41と、この大径活物質粒子41の粒子径(D30)よりも小さな粒子径(D30)を有する小径活物質粒子42と、を含むようにしても良い。
なお、この形態においては、正極活物質の粒子径(D30)として小径活物質粒子42の粒子径(D30)を採用し、フィラー粒子43の粒子径(D50)よりも同じ、又は小さい構成とする。
正極活物質粒子40として、大径活物質粒子41と小径活物質粒子42を混合することで、大径活物質粒子41間の空隙に小径活物質粒子42が入り込むことで、フィラー粒子43が正極合剤層31の内部に入り込むことが抑制される。この結果、正極板18の直流抵抗値の増大をさらに抑制することができるので好ましい。
この形態においては、大径活物質粒子41の粒子径(D30)は、1μm〜30μmが好ましく、3μm〜20μmがより好ましく、5μm〜10μmが特に好ましい。
また、小径活物質粒子42の粒子径(D30)は、0.1μm〜15μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1μm〜4μmが特に好ましい。
ここで、正極合剤層に粒子径の異なる複数の活物質粒子が含まれることは、上記のレーザー回折式粒度分布測定の結果を頻度分布グラフ(横軸を粒子径、縦軸を頻度とするグラフ)で表した場合に、分布の極大点が複数存在していることをもって判別する。
また、正極合剤層が複数の粒子径の活物質粒子を含有する場合は、上記頻度分布グラフにおいて極大点の粒子径が最も小さい側のデータから算出したD30の値を小径活物質粒子42の粒子径(D30)として採用する。一方、上記頻度分布グラフにおいて極大点の粒子径が大きい側のデータから算出したD30の値を大径活物質粒子41の粒子径(D30)とする。
また、大径活物質粒子41の粒子径(D30)に対する小径活物質粒子42の粒子径(D30)の比(小径活物質粒子径/大径活物質粒子径)を0.9以下とすることで、大径活物質粒子41間の空隙に効率よく小径活物質粒子42が入り込むことで活物質粒子同士の間隙を少なくすることができる。これにより、フィラー粒子43が正極合剤層31の内部に入り込むことがより一層抑制されるので好ましい。又、正極合剤層中の活物質密度が向上するため、蓄電素子のエネルギー密度向上の点からも好ましい。より好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.2以下である。
(蓄電要素20の製造工程)
続いて、蓄電要素20の製造工程の一例について説明する。なお、蓄電要素20の製造工程は以下の記載に限定されない。
所定の幅寸法の正極集電基材30の一方又は双方の面に正極合剤層31を塗工する。
正極合剤層31は、ブレード、ナイフ、ダイノズル等、公知の手法により塗工することができる。塗工された正極合剤層31は、プレス機、又はローラーによってプレスすることにより、所定の厚さ寸法に形成してもよい。なお、塗工時に正極合剤層31の厚さ寸法を十分に設定可能な場合には、プレス工程は省略してもよい。
続いて、正極合剤層31の表面に、被覆層44を塗工する。上記したように、正極合剤層31は、正極集電基材30の両面に塗工されているので、被覆層44は、正極集電基材30のそれぞれの面に塗工された正極合剤層31の表面に塗工されるようになっている。被覆層44は、ブレード、ナイフ、ダイノズル等の湿式塗工や実施例に後述するような乾式塗工、公知の手法により塗工することができる。
被覆層44は、ブレード、ナイフ、ダイノズル等の湿式塗工や実施例に後述するような乾式塗工、公知の手法により塗工することができる。乾式塗工は、フィラー粒子と結着剤とを混合した粉末、或いは、フィラー粒子表面に結着剤を複合化した粉末を、エアーフローフィーダーや振動フィーダー等の各種フィーダーを用いて正極合剤層31の上から噴霧(散布)することで正極合剤層31の表面に被覆層を形成させる方法である。この乾式塗工を採用すると、フィラー粒子を均一に塗工することができるため、被覆層中の電解液の浸透性が良好に保たれると考えられる。このため、乾式塗工で形成した被覆層を有する正極板の方が湿式塗工で形成した被覆層を有する正極板よりも直流抵抗の増大を抑制する効果が高くなるので好ましい。
また、噴霧の際にフィラー粒子を静電気で帯電させて噴霧することで、一層均一にフィラー粒子を塗工することができる。このため、正極板の直流抵抗の増大を抑制する効果が高くなると考えられるので好ましい。
塗工された被覆層44は、プレス機、又はローラーによってプレスすることにより、所定の厚さ寸法に形成してもよい。なお、塗工時に被覆層44の厚さ寸法を十分に設定可能な場合には、プレス工程は省略してもよい。
一方、所定の幅寸法の負極集電基材の一方又は双方の面に、負極合剤層を塗工する。負極合剤層は、ブレード、ナイフ、ダイノズル等、公知の手法により塗工することができる。塗工された負極合剤層は、プレス機、又はローラーによってプレスすることにより、所定の厚さ寸法に形成してもよい。なお、塗工時に負極合剤層の厚さ寸法を十分に設定可能な場合には、プレス工程は省略してもよい。
上記のように製造した正極板18と、セパレータ21と、負極板19と、をセパレータ21を介して巻回することにより、蓄電要素20を製造する。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例により何ら限定されるものではない。
<実施例1>
(正極合剤層)
正極活物質粒子である粒子径(D30)3μmのリチウム遷移金属複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、及び粒子径(D30=17μmのリチウム遷移金属複合酸化物(LiMn)、導電剤であるアセチレンブラック(AB)、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び非水系溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)を用いて正極ペーストを作製した。ここで、前記PVDFは12%NMP溶液を用いた。正極活物質、結着剤及び導電剤の質量比率は93:4:3(固形分換算)とした。この正極ペーストを15μmのアルミ箔の両面に、未塗工部(正極合剤層非形成領域)を残して間欠塗工、乾燥し、ロールプレスを行うことにより、正極合剤層を作製した。
(被覆層)
フィラー粒子である粒子径(D50)3μmのアルミナとポリフッ化ビニリデン(PVDF)とをメカノヒュージョンにより混合することで、アルミナ粒子の表面にPVDFが付着した複合フィラー粒子を作製した。この複合フィラー粒子を帯電させた後、正極合剤層の上に噴霧する、乾式塗工により被覆層を作製した。この正極厚さは193μmであり、片面当たりの被覆層の厚さは5μmであった。なお、被覆層の厚さは、後述する正極断面SEM観察により測定した。
(負極)
ステンレス鋼(品名:SUS316)製の端子を取り付けたステンレス鋼(品名:SUS316)製のメッシュ集電体の両面に、厚さ300μmのリチウム金属箔を貼り合わせてプレス加工したものを対極とした。
(参照極)
リチウム金属片をステンレス鋼(品名:SUS316)製の集電棒の先端に貼り付けたものを参照極とした。
(非水電解質)
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを、それぞれ50体積%、50体積%となるように混合した溶媒に、塩濃度が1.0mol/Lとなるように過塩素酸リチウム(LiClO)を溶解させ、非水電解質を調製した。非水電解質中の水分量は20ppm以下とした。
(リチウムイオン電池の組み立て)
露点−40℃以下のArボックス中においてガラス製のリチウムイオン電池を組み立てた。予め容器の蓋部分に導線部を固定した金メッキクリップに対極と同じ面積になるように切断した正極と負極と参照極とを各1枚ずつ挟んだ後、正極と負極が対向するように固定した。参照極は対極から見て電極の裏側となる位置に固定した。次に、一定量の電解質を入れたポリプロピレン製カップをガラス容器内に設置し、そこに正極、負極及び参照極が浸漬されるように蓋をすることでリチウムイオン電池を組み立てた。
<実施例2>
被覆層の乾式塗工において、正極合剤層の上に噴霧する噴霧量を変更した被覆層を作製した。この被覆層を有する正極の厚さは193μmであり、片面当たりの被覆層の厚さは10μmであった。なお、被覆層の厚さは、後述する正極断面SEM観察により測定した。
上記の様にして作製した正極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の電池を作製した。
<実施例3>
(被覆層)
フィラー粒子である粒子径(D50)3μmのアルミナとポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び非水系溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)を用いて被覆層ペーストを作製した。ここで、前記PVDFは12%NMP溶液を用いた。アルミナとPVDFの質量比率は94:6(固形分換算)とした。この被覆層ペーストを正極合剤層の上に塗工、乾燥する湿式塗工により被覆層を作製し、正極とした。この正極厚さは194μmであり、片面当たりの被覆層の厚さは10μmであった。なお、被覆層の厚さは、後述する正極断面SEM観察により測定した。
上記の様にして作製した正極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3の電池を作製した。
<比較例1>
(正極合剤層)
正極活物質粒子である粒子径(D30)12μmのリチウム遷移金属複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)、及び粒子径D30=17μmのリチウム遷移金属複合酸化物(LiMn4)、導電剤であるアセチレンブラック(AB)、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び非水系溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)を用いて正極ペーストを作製した。ここで、前記PVDFは12%NMP溶液を用いた。正極活物質、結着剤及び導電剤の質量比率は94:3:3(固形分換算)とした。この正極ペーストを15μmのアルミ箔の両面に塗工、乾燥し、ロールプレスを行うことにより、正極合剤層を作製した。
(被覆層)
実施例2と同様にして、被覆層を作製した。この正極厚さは152μmであり,片面当たりの被覆層の厚さは12μmであった。なお、被覆層の厚さは、後述する正極断面SEM観察により測定した。
<比較例2>
被覆層を作製しなかったこと、及び、正極厚さを184μmとしたことを除いては、実施例1と同様にして比較例2の電池を作製した。
<比較例3>
被覆層を作製しなかったこと、及び、正極厚さを131μmとしたことを除いては、実施例1と同様にして比較例3の電池を作製した。
(正極断面SEM観察)
実施例1〜3及び比較例1の正極について、被覆層が形成されている箇所(極板の端部は除く)を切り出し、クロスセクションポリッシャー等により断面加工した断面部を走査電子顕微鏡(SEM)(装置名:JSM−7001F(日本電子株式会社製))により観察した。観察条件は、加速電圧1kV、2000倍の倍率とした。各正極について2箇所の被覆層の厚さを観測し、それらの厚さの平均値を各正極被覆層の厚さとした。
(極板の絶縁性評価)
実施例1、2及び比較例1の正極について、極板の端部を除いた被覆層が形成されている箇所に抵抗率計(三菱化学アナリテック製 Loresta-EP MCP-T360)の二探針プローブを押し当て、正極の表面抵抗値を測定した。
(直流抵抗測定)
容量測定の後、実施例1〜3及び比較例2の電池については、電流値0.2CA、電圧4.2V、充電時間10時間の定電流定電圧充電を行った。
その後、各率放電電流でそれぞれ終止電圧3.0Vまで定電流放電する試験を行った。具体的には、まず、電流0.2CAにて放電し、10分の休止後、電流値0.2CA、電圧4.2V、充電時間10時間の定電流定電圧充電を行った。さらに10分の休止後、電流1CAにて放電し、10分の休止後、電流値0.2CA、電圧4.2V、充電時間10時間の定電流定電圧充電を行った。
上記の放電試験を放電電流値2CA、3CA、5CAについても実施した。放電開始前の電圧と放電開始後0.1秒後の電圧の差を電流値で除することで各電池の直流抵抗値を算出した。
比較例1と比較例3の電池については、充電電圧を4.25Vに変更したことを除いては、上記と同じ充放電試験と計算を行い、直流抵抗値を算出した。
なお、上記電流値である1CAとは、電池に1時間の定電流通電を行った時に、電池の公称容量と同じ電気量となる電流値である。
(直流抵抗増加率)
実施例1〜3の電池の直流抵抗増加率(DCR増加率)を以下の式により算出した。
(実施例1〜3の直流抵抗値−比較例2の直流抵抗値)/比較例2の直流抵抗値×100 (%)
また、比較例1の電池の直流抵抗増加率を以下の式により算出した。
(比較例1の直流抵抗値−比較例3の直流抵抗値)/比較例3の直流抵抗値×100 (%)
上記の様にして得られた実施例1〜3及び比較例1の電池の直流抵抗増加率を表1に示す。
Figure 0006776626
(絶縁性)
絶縁性の評価については、極板表面抵抗測定において、被覆層を備えない極板の抵抗値よりも、2桁以上抵抗値が増加した場合を「○」と評価した。被覆層を形成することにより、極板の表面抵抗値が2桁以上増加すると、セパレータが溶断した場合であっても、正極板と負極板との短絡を抑制することが可能であって、リチウムイオン電池の安全性向上に寄与すると考えられる。
<結果と考察>
(直流抵抗増加率)
実施例1〜3においては、DCR増加率は、それぞれ、−13.0%、−13.0%、−7.6%と、減少した。これは、フィラー粒子の粒子径(D50)が正極活物質粒子の粒子径(D30)と同じであることから、正極板の内部にフィラー粒子が侵入することが抑制されたために、正極板に電解質が十分に浸透したことによると考えられる。
また、実施例2と実施例3のDCR増加率を比較すると、被覆層の厚みが同じであるにもかかわらず、実施例2のDCR増加率の方が小さい。この結果から、乾式塗工により作製した被覆層の方が湿式塗工により作製した被覆層よりも、直流抵抗の増大を抑制する効果がより高いことが判る。よって、乾式塗工による被覆層とすることが好ましい。
一方、比較例1においては、DCR増加率は、15.5%と、増加した。これは、フィラー粒子の粒子径(D50)が正極活物質粒子の粒子径(D30)よりも小さいために、正極板の内部にフィラー粒子が侵入したことから、正極板の内部に電解質が十分に浸透することができなかったためと考えられる。
(絶縁性)
正極合剤層の表面に被覆層が形成された、実施例1、及び実施例2においては、絶縁性の評価が「○」であった。これは、正極合剤層の表面に被覆層が形成されているために、正極合剤層の表面に被覆層が形成されていない場合に比べて、正極の表面抵抗値が増加したためである。これにより、セパレータが溶断した場合でも、正極と負極とが短絡することを抑制することができる。
なお、比較例1においても、正極合剤層の表面に被覆層が形成されているので、絶縁性の評価は「○」とされている。しかし、上記したように、DCR増加率は15.5%となっており、実施例1及び実施例2に比べて直流抵抗値が高い。
また、詳細には説明しないが、正極板の内部にフィラー粒子が侵入しているために、フィラー粒子を塗工して被覆層を形成する際に、設計段階で設定した抵抗値よりも、低い値となっていると考えられる。これに比べて、実施例1及び実施例2においては、正極板の内部にフィラー粒子が侵入することが抑制されているので、被覆層を形成する際に、設計段階で設定した表面抵抗値を得ることができるようになっている。これにより、リチウムイオン電池の安全性が向上すると考えられる。
なお、正極合剤層の表面に被覆層が形成されていない比較例2、及び比較例3においては、リチウムイオン電池の温度が上昇してセパレータが溶断した場合には、正極と負極とが直接に接触する虞があるので好ましくない。
<他の実施形態>
本明細書に開示された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に開示された技術の範囲に含まれる。
(1)本実施形態では、正極板18の表面に被覆層44が形成される構成としたが、これに限られず、負極板19の表面に被覆層44が形成される構成としてもよい。
(2)本実施形態では、蓄電素子10として、リチウムイオン電池を用いたが、これに限られず、キャパシタであってもよい。
(3)本実施形態では、角形の蓄電素子10を用いたが、これに限られず、円筒形状の蓄電素子10でもよいし、また、コイン型の蓄電素子10でもよく、蓄電素子10の形状としては必要に応じて任意の形状を採用することができる。
(4)本実施形態では、正極活物質粒子40は、大径活物質粒子41と、小径活物質粒子42の2種類の活物質粒子を含む構成としたが、これに限られず、正極活物質粒子40は、粒子径が異なる、3種類以上の活物質粒子を含む構成としてもよい。
(5)本実施形態に係る蓄電要素20は、正極板18と、セパレータ21と、負極板19と、セパレータ21とをこの順に重ね合わせて巻回させてなる巻回型としたが、これに限られず、正極板18と、セパレータ21と、負極板19と、セパレータ21と、をこの順に繰り返し積層してなる積層型としてもよい。
(6)本実施形態では、正極集電基材30の両面に正極合剤層31が形成される構成としたが、正極集電基材30の片面に正極合剤層31が形成される構成としてもよい。
(7)本実施形態では、負極集電基材の両面に負極合剤層が形成される構成としたが、負極基集電基材の片面に負極合剤層が形成される構成としてもよい。
(8)本実施形態に係る蓄電素子10は、ケース11の上面から正極端子16及び負極端子17が突出する構成としたが、これに限られず、ケース11の上面から正極端子16が突出し、下面から負極端子17が突出する構成としてもよい。
10:蓄電素子
18:正極板(極板)
31:正極合剤層(合剤層)
40:正極活物質粒子(活物質粒子)
43:フィラー粒子
44:被覆層

Claims (8)

  1. 活物質粒子を含む合剤層と、
    フィラー粒子を含む被覆層と、を備え、
    前記活物質粒子の粒子径(D30)が、前記フィラー粒子の粒子径(D50)と同じ、又は小さく、
    前記フィラー粒子の粒子径(D50)に対する前記活物質粒子の粒子径(D30)の粒子径比(活物質粒子径/フィラー粒子径)が0.2以上である、極板(但し、次の(1)から(4)を除く。
    (1)前記活物質粒子が粒子径(D50)0.5μmであるリン酸鉄リチウムであり、且つ、前記フィラー粒子が数平均粒子径0.38μmである酸化チタン、である極板
    (2)前記活物質粒子が粒子径(D50)0.5μmであるリン酸鉄リチウムであり、且つ、前記フィラー粒子が数平均粒子径0.74μmである酸化アルミニウム、である極板
    (3)前記活物質粒子が粒子径(D50)0.5μmであるリン酸鉄リチウムであり、且つ、前記フィラー粒子が数平均粒子径0.67μmである酸化ジルコニウム、である極板
    (4)前記活物質粒子が粒子径(D50)0.5μmであるリン酸鉄リチウムであり、且つ、前記フィラー粒子が数平均粒子径0.50μmである酸化マグネシウム、である極板)。
  2. 活物質粒子を含む合剤層と、
    フィラー粒子(窒化ホウ素を除く)を含む被覆層と、を備え、
    前記活物質粒子の粒子径(D30)が、前記フィラー粒子の粒子径(D50)と同じ、又は小さく、
    前記活物質粒子の粒子径(D30)が、1μm〜30μmである、極板。
  3. 前記合剤層に含まれる前記活物質粒子は、粒度分布グラフにおいて極大点が1つである、請求項2に記載の極板。
  4. 前記フィラー粒子の粒子径(D50)に対する前記活物質粒子の粒子径(D30)の粒子径比(活物質粒子径/フィラー粒子径)が0.2以上である、請求項2または請求項3に記載の極板。
  5. 前記活物質粒子が正極活物質粒子である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の極板。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の極板、を備えた蓄電素子。
  7. 前記被覆層が、乾式塗工により形成されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の極板の製造方法。
  8. 活物質粒子を含む合剤層と、
    フィラー粒子を含む被覆層と、を備え、
    前記活物質粒子の粒子径(D30)が、前記フィラー粒子の粒子径(D50)と同じ、又は小さい、極板の製造方法であって、
    前記被覆層が、乾式塗工により形成されている、極板の製造方法。
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