JP6770226B2 - 塩化ビニル系樹脂成形体の耐熱着色性の改善方法 - Google Patents
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成分(A)が、下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルであり、
かつ、
成分(B)が、下記一般式(2)で示される4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルであることを特徴とする塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物。
下記一般式(1)で示される(A)トリメリット酸トリエステルと下記一般式(2)で示される(B)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含んでなる塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物を、塩化ビニル系樹脂成形体の原料樹脂である塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤として使用することを特徴とする方法。
トリメリット酸トリエステルに加えて、下記一般式(2)で示される4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含んでなる塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物を、塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤として使用することを特徴とする方法。
本発明の塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物は、(A)下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルと、(B)下記一般式(2)で示される4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含んでなることを最大の特徴としている。
本エステル化合物1及び本エステル化合物2の原料として用いられる飽和脂肪族アルコールは、炭素数7〜13、好ましくは8〜11の直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールである。炭素数が7未満の飽和脂肪族アルコールが含まれると、揮発性等の性能が低下する傾向があり、炭素数が13を超える飽和脂肪族アルコールが含まれると、柔軟性等の性能が低下する傾向があり、何れも好ましくない。
本エステル化合物1の製造において、上記飽和脂肪族アルコールとトリメリット酸又はその無水物とのエステル化反応を行うに際し、飽和脂肪族アルコールは、例えば、トリメリット酸又はその無水物1モルに対して、好ましくは3.05〜4.00モル、より好ましくは3.10〜3.80モル、特に3.15〜3.60モルを使用することが推奨される。また、本エステル化合物2の製造において、上記飽和脂肪族アルコールと4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物とのエステル化を行うに際し、飽和脂肪族アルコールは、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸又はその無水物1モルに対して、好ましくは2.05モル〜4.00モル、より好ましくは2.10モル〜3.00モル、特に好ましくは2.15モル〜2.50モルを使用することが推奨される。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、成分(A)と成分(B)(即ち、上述した本エステル化合物1と本エステル化合物2)を含んでなる可塑剤組成物(以下、「本可塑剤組成物」という)を塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。
本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われる。例えば、汎用塩化ビニル樹脂の場合は、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法などが挙げられる。また、塩化ビニルペースト樹脂では水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法などが挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300から5000であり、好ましくは400〜3500、さらに好ましくは700〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物における本可塑剤組成物の含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜200重量部であり、より好ましくは20〜150重量部であり、更に好ましくは30〜120重量部である。1重量部以上であれば、加工時の可塑化、更には得られた成形品の可塑性向上に寄与することが可能であり、20重量部以上であれば、柔軟性の要求される用途においても十分な柔軟性を得ることができ、更に柔軟性の要求される用途では、適宜その配合量を調整することにより柔軟性を付与することができる。また、成形品表面へのブリード等が懸念される用途でも、200重量部以下であれば、その懸念もなく、好ましく使用することができる。但し、上記の塩化ビニル系樹脂組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合する場合もある。例えば、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には、当該可塑剤を500重量部程度まで配合されていてもよい。
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物(配合粉状やペレット状などの形態)を、真空成型、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形等の従来公知の方法を用いて溶融成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
本発明の実施例及び比較例で用いる本エステル化合物1及び本エステル化合物2において、一般式(1)及び一般式(2)における残基を規定する飽和脂肪族アルコールの炭素数と直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率は、その製造に用いた原料アルコール中の組成をガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定した結果を、それら化合物中の飽和脂肪族アルコールの炭素数と直鎖状の飽和脂肪族アルコールの比率とした。前記GCによる原料アルコールの測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム ZB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μl
定量:安息香酸n−プロピルを内部標準物質として用い定量した。
前記内部標準物質の選定に当たっては、原料アルコールに安息香酸n−プロピルがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
なお、上述のエステル化反応において、本発明の範囲内では原料アルコールの構造による反応性に差異はなく、用いた原料アルコール中の組成比と本エステル化合物1及び本エステル化合物2の残基を規定している飽和脂肪族アルコールの組成比に差異がないことは、予め確認している。
下記の製造例で得られたエステル化合物は次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
ヨウ素価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
色相:JIS K−0071(1998)に準拠して測定して、ハーゼン単位色数を求めた。
(3)ゲル化温度:塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)2gに可塑剤10gを入れ混合したサンプル約0.01gをスライドガラス上に滴下し、カバーガラスをかけ、微量融点測定器にセットした。5℃/minの速度で昇温し、加熱昇温による塩化ビニル樹脂の粒子の状態変化を観察し、塩化ビニル樹脂の粒子が溶け始める温度と該粒子が透明になった温度をそれぞれゲル化開始温度およびゲル化終了温度とし、その平均値をゲル化温度とした。ゲル化温度が低いほど可塑剤の吸収速度が速く加工性に優れる。
塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、安定化剤として、カルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.3及び0.2重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合後、本発明に係る可塑剤組成物、即ち(A)トリメリット酸トリエステル及び(B)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを表1に記載の比率で合計50重量部加え、均一になるまでハンドリング混合し、塩化ビニル系樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練しロールシートを作製した。続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
(5)引張特性:JIS K−6723(1995)に準拠し、プレスシートの100%モジュラス、破断強度、破断伸びを測定した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示し、破断強度、破断伸びはその材料の実用的な強度の目安であり、一般的にはその値が大きいほど実用的な強度に優れると言うことができる。
a)揮発減量:ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で60分、120分加熱した後のシートの重量変化を測定し、下記の式に従って揮発減量(%)を算出した。
揮発減量の数値が小さいほど、耐熱性が高い。
揮発減量(%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100
b)シート着色 :ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で30分、60分、90分間加熱した後の着色度の強弱を目視により4段階で評価した。
◎:着色なし、 ○:僅かに着色、 △:着色、 ×:強い着色
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた1L四ツ口フラスコに、トリメリット酸無水物(工業用市販品)96g(0.5モル)、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコール重量85.1%と炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール重量11.7%を含む飽和脂肪族アルコール(直鎖率;87%、シェルケミカルズ社製:リネボール9)260g(1.8モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.3gを加え、反応温度を190℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするトリメリット酸トリエステル(以下、「エステル1」という。)245gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色数:20であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)260gの代わりに2−エチルへキシルアルコール234gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル2という。)219gを得た。
得られたエステル2は、エステル価:309mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色数:20であった。
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物182.6g(1.2モル,新日本理化(株)製:リカシッドTH)、2−エチルヘキシルアルコール374g(2.9モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.24gを加え、反応温度を200℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とする4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル3」という。)269gを得た。
得られたエステル3は、エステル価:283mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:10であった。
上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例1で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル1)と製造例3で得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(エステル3)を80/20の比率で配合した可塑剤組成物を用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化温度試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1とエステル3の比率を70/30に変えた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1とエステル3の比率を60/40に変えた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1とエステル3の比率を50/50に変えた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1の代わりに上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例2で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル2)を用いた以外は実施例2と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1の代わりに上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例2で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル2)を用いた以外は実施例4と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例1で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル1)のみを用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例2で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル2)のみを用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
上記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した方法に従って、製造例3で得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(エステル3)のみを用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験、及びゲル化試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
Claims (12)
- (A)トリメリット酸トリエステルと(B)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含んでなる塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物であって、
成分(A)が、下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルであり、
かつ、
成分(B)が、下記一般式(2)で示される4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルであり、さらに、成分(A)と成分(B)の比率(重量比)が、95/5〜30/70の範囲であることを特徴とする塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物。
- 成分(A)と成分(B)の比率(重量比)が、90/10〜40/60の範囲である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
- 一般式(1)における飽和脂肪族アルコール中に占める炭素数9の飽和脂肪族アルコールの比率が60%以上であり、さらに、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である、請求項1又は請求項2に記載の可塑剤組成物。
- 一般式(2)における飽和脂肪族アルコール中に占める炭素数8の飽和脂肪族アルコールが、90%以上である、請求項1〜3の何れかに記載の可塑剤組成物。
- 前記塩化ビニル系樹脂が医療材料用の塩化ビニル系樹脂である、請求項1〜4の何れかに記載の可塑剤組成物。
- 塩化ビニル系樹脂と請求項1〜5の何れかに記載の可塑剤組成物を含んでなる、塩化ビニル系樹脂組成物。
- 塩化ビニル系樹脂組成物中の可塑剤組成物の含有量が、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して20〜200重量部である、請求項6に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 請求項6又は請求項7に記載の塩化ビニル系樹脂組成物を原料とする塩化ビニル系樹脂成形体。
- 請求項8に記載の塩化ビニル系樹脂成形体からなる医療材料。
- 前記医療材料が、医療用チューブである請求項9に記載の医療材料。
- 塩化ビニル系樹脂成形体の耐熱着色性の改善方法であって、
下記一般式(1)で示される(A)トリメリット酸トリエステルと下記一般式(2)で示される(B)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルとの比率(重量比)が、95/5〜30/70の範囲である塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物を、塩化ビニル系樹脂成形体の原料樹脂である塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤として使用することを特徴とする方法。
- トリメリット酸トリエステル系の可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物の成形加工性の改良方法であって、
トリメリット酸トリエステルに加えて、下記一般式(2)で示される4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含んでなる塩化ビニル系樹脂用の可塑剤組成物を、塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤として使用することを特徴とする方法。
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