ところが、上記特許文献1に記載された従来のサイドエアバッグ装置では、ガス発生器78からの膨張用ガスの供給初期に、図12において二点鎖線で示すように、膨張用ガスの勢いで、車幅方向における増厚布部77の両側部分が前方へ引張られる。その結果、エアバッグ本体74の膨張厚みを増加させる増厚布部77の機能が充分に発揮されないおそれがある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、エアバッグ本体の膨張厚みをより多く増加させることのできるサイドエアバッグ装置を提供することにある。
上記課題を解決するサイドエアバッグ装置は、車両用シートにおける車外側の側部内の収納部に組込まれるガス発生器と、前記収納部に折り畳まれた状態で組込まれ、かつ前記ガス発生器から供給される膨張用ガスにより、前記車両用シートに着座している乗員と車両の側壁部との間で前方へ向けて展開及び膨張するエアバッグとを備え、前記エアバッグの外殻部分を構成するエアバッグ本体は、車内側及び車外側の各本体布部と、両本体布部間における車内側及び車外側の各増厚布部とを備え、両増厚布部は、前記エアバッグ本体が展開のみされて膨張されていない状態では、両本体布部間において車幅方向に互いに重ね合わされ、前記エアバッグ本体が展開及び膨張されている状態では、両本体布部の後側の周縁部間で車幅方向に緊張状態にされることで、同エアバッグ本体の同方向の厚みである膨張厚みを増加させるものであり、前記ガス発生器は、前記エアバッグ本体の後部内に配置されて、車内側の前記本体布部を伴って前記車両用シートに固定されるものである。
上記の構成によれば、ガス発生器から膨張用ガスがエアバッグ本体内に供給されると、その供給の初期には、エアバッグ本体が車幅方向に膨張する。両本体布部間において車幅方向に互いに重ね合わされていた両増厚布部が車幅方向の両側へ引張られて、同車幅方向に平ら又は平らに近い状態で緊張する。緊張時における両増厚布部の車幅方向の寸法は、増厚布部が膨張用ガスの勢いで前方へ引張られる従来技術よりも大きくなる。その結果、両増厚布部により、エアバッグ本体の膨張厚みがより多く増加される。両増厚布部が両本体布部の後側の周縁部間で車幅方向に緊張されることから、膨張厚みは、エアバッグ本体の後側の部位ほど多く増加される。なお、ガス発生器は、車内側の本体布部を伴って車両用シートに固定されているため、増厚布部の緊張に影響を及ぼさない、又は及ぼしにくい。
そのため、側壁部が車室内に入り込むように変形しても、その変形した側壁部のうち車室内に最も入り込んだ箇所よりも後側部分と乗員との間隙が、膨張厚みの増したエアバッグ本体によって埋められる。エアバッグ本体は、変形した側壁部に押圧されることで、後方への移動を規制され、同エアバッグ本体による乗員を拘束及び保護する性能の低下が抑制される。
上記サイドエアバッグ装置において、前記エアバッグ本体が展開のみされて膨張されていない状態では、車内側の前記増厚布部の後側の周縁部と、車内側の前記本体布部の後側の周縁部とが、車内側の後周縁結合部により相互に結合され、車外側の前記増厚布部の後側の周縁部と、車外側の前記本体布部の後側の周縁部とが、車外側の後周縁結合部により相互に結合され、車内側の前記本体布部の前側の周縁部と、車外側の前記本体布部の前側の周縁部とが、前周縁結合部により相互に結合されていることが好ましい。
上記の構成によれば、車内側の後周縁結合部により、車内側の増厚布部及び車内側の本体布部が、それらの後側の周縁部において相互に結合される。車外側の後周縁結合部により、車外側の増厚布部及び車外側の本体布部が、それらの後側の周縁部において相互に結合される。前周縁結合部により、車内側及び車外側の両本体布部が、それらの前側の両周縁部において相互に結合される。これらの結合により、両本体布部及び両増厚布部のうち、車幅方向に隣り合うもの同士が相互に結合されて、エアバッグ本体が形成される。
上記サイドエアバッグ装置において、車内側の前記増厚布部と車外側の前記増厚布部とは別々の布片により構成されており、両増厚布部の前側の周縁部同士が縦結合部により相互に結合されていることが好ましい。
ここで、仮に、車内側及び車外側の両増厚布部が共通の布片によって構成されていると、ガス発生器から膨張用ガスがエアバッグ本体に供給された場合、両増厚布部が後方へ膨らむように湾曲した状態で緊張する。湾曲する分、緊張時における両増厚布部の車幅方向の寸法が小さくなる。両増厚布部によりエアバッグ本体の膨張厚みを増加させる機能が充分発揮されないおそれがある。
この点、上記の構成によれば、別々の布片によって構成された車内側及び車外側の両増厚布部の前側の周縁部同士を結合する縦結合部が、両増厚布部が後方へ膨らむように湾曲するのを規制する。両増厚布部がより平らに近い状態で緊張し、緊張時における両増厚布部の車幅方向の寸法が大きくなる。その結果、両増厚布部による、エアバッグ本体の膨張厚みの増加量が多くなる。
上記サイドエアバッグ装置において、前記ガス発生器として、長尺状をなし、かつ前記車両用シートに固定されるものが用いられており、前記エアバッグ本体が展開のみされて膨張されていない状態では、車内側及び車外側の両後周縁結合部の上部は、上側の部位ほど、前記ガス発生器の軸線から前方へ遠ざかるように傾斜しており、前記縦結合部の上部は、上側の部位ほど、前記軸線から前方へ遠ざかるように傾斜しており、前記縦結合部の前記上部が前記軸線に対しなす角度は、両後周縁結合部の前記上部が前記軸線に対しなす角度よりも小さく設定されていることが好ましい。
ここで、後部が両増厚布部によって構成されるエアバッグ本体が展開及び膨張された場合、そのエアバッグ本体の上部では、膨張厚みが上側の部位ほど小さくなるように変化する。仮に、縦結合部の上部がガス発生器の軸線に対し傾斜していないと、すなわち、軸線に平行であると、上記変化の度合いが大きく、エアバッグ本体の上部にくびれ部分が生ずるおそれがある。くびれ部分では、他の箇所よりも剛性が低くなる。そのため、くびれ部分が原因でエアバッグ本体の上部がふらつくおそれがある。
この点、上記の構成によれば、縦結合部の上部が上記軸線に対しなす角度は、両後周縁結合部の上部が上記軸線に対しなす角度よりも小さく設定される。この設定により、膨張厚みが上側の部位ほど小さくなるように変化するものの、その変化の度合いが小さくなる。エアバッグ本体の上部にくびれ部分が生じにくくなり、エアバッグ本体の上部がふらつく現象が起こりにくくなる。
また、上記の設定により、縦結合部の上部が上記軸線に対し傾斜していない場合よりも、両増厚布部によりエアバッグ本体の上部の膨張厚みを増加される領域が、前方へ拡大する。これに伴い、膨張厚みを増加されたエアバッグ本体の上部によって拘束及び保護される乗員の領域が前方へ拡大する。
上記サイドエアバッグ装置において、前記エアバッグ本体の上部は、前記乗員の肩部の側方で展開及び膨張するものであることが好ましい。
ここで、エアバッグ本体の上部によって乗員の肩部が車内側へ押されると、それに伴って腕部が車内側へ押されて胸部と干渉するおそれがある。
この点、上記の構成によれば、エアバッグ本体が展開及び膨張したときには、同エアバッグ本体の上部であって、後側の部位ほど膨張厚みが多く増加された部分によって肩部が前方へ押される。腕部が肩部につられて前方へ押し出され、同腕部の胸部との干渉が抑制される。
上記サイドエアバッグ装置において、前記エアバッグ本体が展開のみされて膨張されていない状態では、車内側及び車外側の両後周縁結合部の下部は、下側の部位ほど、前記ガス発生器の軸線から前方へ遠ざかるように傾斜しており、前記縦結合部の下部は、下側の部位ほど、前記軸線から前方へ遠ざかるように傾斜しており、前記縦結合部の前記下部が前記軸線に対しなす角度は、両後周縁結合部の前記下部が前記軸線に対しなす角度よりも小さく設定されていることが好ましい。
ここで、後部が両増厚布部によって構成されるエアバッグ本体が展開及び膨張された場合、そのエアバッグ本体の下部では、膨張厚みが下側の部位ほど小さくなるように変化する。仮に、縦結合部の下部がガス発生器の軸線に対し傾斜していないと、すなわち、軸線に平行であると、上記変化の度合いが大きく、エアバッグ本体の下部にくびれ部分が生ずるおそれがある。くびれ部分では、他の箇所よりも剛性が低くなる。そのため、くびれ部分が原因でエアバッグ本体の下部がふらつくおそれがある。
この点、上記の構成によれば、縦結合部の下部が上記軸線に対しなす角度は、両後周縁結合部の下部が上記軸線に対しなす角度よりも小さく設定される。この設定により、膨張厚みが下側の部位ほど小さくなるように変化するものの、その変化の度合いが小さくなる。エアバッグ本体の下部にくびれ部分が生じにくくなり、エアバッグ本体の下部がふらつく現象が起こりにくくなる。
また、上記の設定により、縦結合部の下部が上記軸線に対し傾斜していない場合よりも、両増厚布部によりエアバッグ本体の下部の膨張厚みが増加される領域が、前方へ拡大する。これに伴い、膨張厚みの増加されたエアバッグ本体の下部によって拘束及び保護される乗員の領域が前方へ拡大する。
上記サイドエアバッグ装置において、両後周縁結合部の前記上部は、両後周縁結合部の前記下部よりも長く設定され、かつ前記縦結合部の前記上部は、同縦結合部の前記下部よりも長く設定されていることが好ましい。
両増厚布部によりエアバッグ本体の上部でも下部でも、膨張厚みの増加される領域が前方へ拡大されるところ、上記の設定により、この領域の拡大の程度は、エアバッグ本体の上部において下部よりも大きい。また、上記の設定により、エアバッグ本体の上部では、下部よりも、膨張厚みの増加量が多くなる。そのため、乗員の肩部が、それよりも低い他の部位よりも早期に拘束及び保護される。
上記サイドエアバッグ装置において、前記車両用シートは、車内側の側部内にサイドフレーム部を備え、前記エアバッグは、前記エアバッグ本体における車内側の前記本体布部を前記サイドフレーム部の車外側に隣接させた状態で配置され、前記ガス発生器は、車内側の前記本体布部とともに、締結具により前記サイドフレーム部に対し車幅方向に締結されるものであることが好ましい。
上記の構成によれば、ガス発生器及びエアバッグの収納部への組付けに際し、エアバッグ本体における車内側の本体布部がサイドフレーム部の車外側に隣接するようにエアバッグが配置される。そして、ガス発生器が締結具により、車内側の本体布部とともにサイドフレーム部に対し車幅方向に締結される。このように、車両用シートに既設のサイドフレーム部が利用されて、ガス発生器の車両用シートに対する固定が行なわれる。従って、この固定のために、サイドフレーム部に対しブラケット等の別部品を追加しなくてもすむ。
上記サイドエアバッグ装置において、前記締結具は、前記ガス発生器から車内側へ延びて車内側の前記本体布部及び前記サイドフレーム部に対し車外側から挿通されるボルトと、前記サイドフレーム部の車内側から前記ボルトに締結されるナットとを備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、ガス発生器から車内側へ延びるボルトが、車内側の本体布部とサイドフレーム部とに対し車外側から挿通され、そのボルトに対しナットがサイドフレーム部の車内側から締結されることで、ガス発生器が車内側の本体布部を伴ってサイドフレーム部に固定される。
上記サイドエアバッグ装置によれば、エアバッグ本体の膨張厚みをより多く増加させることができる。
以下、サイドエアバッグ装置の一実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、車両の車幅方向における中央部を基準とし、その中央部に近づく側を「車内側」とし、中央部から遠ざかる側を「車外側」とする。また、車両用シートには、衝突試験用のダミーと同様の体格を有する乗員が着座しているものとする。
図1及び図2に示すように、車両10において側壁部11の車内側の近傍には、車両用シート12が配置されている。ここで、側壁部11とは、車両10の側部に配置された車両構成部材を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。例えば、前席に対応する側壁部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応する側壁部11は、サイドドア(リヤドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リヤクォータ等である。なお、図2における符合11aは、側壁部11におけるBピラーを示している。また、図2では、側壁部11(Bピラー11aを除く)が厚みを省略した状態で図示されている。この点は、従来技術を示す図10及び図11についても同様である。
車両用シート12は、シートクッション13及びシートバック14を備えている。シートクッション13は、車体の床に対し、前後位置調整可能に取付けられている。シートバック14は、シートクッション13の後部から上側の部位ほど後方に位置するように傾斜した状態で起立しており、傾斜角度を調整可能に構成されている。車両用シート12は、シートバック14が車両前方を向く姿勢で車室内に配置されている。このように配置された車両用シート12の幅方向は、車幅方向と合致する。
次に、シートバック14における車外側の側部の内部構造について説明する。
シートバック14の内部には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部は、図3に示すように、シートバック14内の車外側の側部内に配置されており、この部分(以下「サイドフレーム部15」という)は、金属板を曲げ加工等することによって形成されている。サイドフレーム部15を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド16が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成された硬質のバックボード17が配置されている。なお、シートパッド16は表皮によって被覆されているが、図3ではその表皮の図示が省略されている。
シートパッド16内において、サイドフレーム部15の車外側に隣接する箇所には、収納部18が設けられている。この収納部18には、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールABMが組込まれている。
収納部18の前側かつ車外側の角部からは、斜め前かつ車外側に向けてスリット19が延びている。シートパッド16の車外側の側部における前側の角部16cとスリット19とによって挟まれた箇所(図3において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、後述するエアバッグ40によって破断される破断予定部21を構成している。
エアバッグモジュールABMは、ガス発生器30及びエアバッグ40を主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
<ガス発生器30>
図3及び図5に示すように、ガス発生器30は、インフレータ31と、そのインフレータ31を覆うリテーナ32とを備えており、全体として長尺状をなしている。ここでは、インフレータ31として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ31は略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ31は、その上端部にガス噴出部31aを有している。また、インフレータ31の下端部には、同インフレータ31への作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
なお、インフレータ31としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
一方、リテーナ32は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ31をエアバッグ40と一緒にサイドフレーム部15に締結する機能を有する部材である。リテーナ32の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって略筒状に形成されている。リテーナ32には、これをサイドフレーム部15に取付けるための部材として、上下一対のボルト33が固定されている。なお、ガス発生器30は、インフレータ31とリテーナ32とが一体になったものであってもよい。また、ガス発生器30は、リテーナ32が用いられず、ボルト33を有するインフレータ31のみによって構成されてもよい。
上記ガス発生器30は、上側の部位ほど後方に位置するように傾斜した状態で収納部18に組込まれている。詳細については後述する。
<エアバッグ40>
図4、図5及び図7に示すように、エアバッグ40の外殻部分はエアバッグ本体41によって構成されている。エアバッグ本体41は、互いに重なり合うように車幅方向に配置された車内側の本体布部42及び車外側の本体布部43と、両本体布部42,43間に配置された車内側の増厚布部44及び車外側の増厚布部45とを備えている。両本体布部42,43は別々の布片によって構成され、両増厚布部44,45は別々の布片によって構成されている。両本体布部42,43及び両増厚布部44,45としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
両増厚布部44,45は、図6に示すように、エアバッグ本体41が展開のみされて膨張されていない状態(以下「展開非膨張状態」という)では、両本体布部42,43間において車幅方向に互いに重ね合わされている。また、両増厚布部44,45は、図8に示すように、エアバッグ本体41が展開及び膨張されている状態では、両本体布部42,43の後側の周縁部間で車幅方向に緊張状態にされることで、同エアバッグ本体41の膨張厚みを増加させる。
図4〜図6に示すように、展開非膨張状態にされたエアバッグ本体41では、車内側の増厚布部44の後側の周縁部と、車内側の本体布部42の後側の周縁部とは、後側の両周縁部に沿って設けられた車内側の後周縁結合部51によって相互に結合されている。同様に、上記展開非膨張状態のエアバッグ本体41では、車外側の増厚布部45の後側の周縁部と、車外側の本体布部43の後側の周縁部とは、後側の両周縁部に沿って設けられた車外側の後周縁結合部52によって相互に結合されている。
車内側の後周縁結合部51は、増厚布部44、本体布部42、及び後述する両補強布56,62におけるそれぞれの後側の周縁部を縫糸で縫合(縫製)することによって形成されている。また、車外側の後周縁結合部52は、増厚布部45及び本体布部43における後側の両周縁部を縫糸で縫合することによって形成されている。
これらの点は、後述する各種結合部についても同様である。各種結合部とは、前周縁結合部53、縦結合部54、横環状結合部58及び縦環状結合部61である。
上記縫製に関し、図4、図5及び図9では、2つの線種によって縫製部分が表現されている。1つ目の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線であり、これは、縫糸を側方等から見た状態を示している(図4における車外側の後周縁結合部52等参照)。2番目の線種は、一定長さ(一般的な破線よりも長い長さ)の細線を断続的に並べて表現した線であり、これは、例えば布片の奥に位置していて直接は見えない(隠れている)縫糸の状態を示している(図4における縦結合部54等参照)。
なお、各後周縁結合部51,52は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、上記各種結合部についても同様である。
上記展開非膨張状態のエアバッグ本体41では、車内側及び車外側の両後周縁結合部51,52の上部は、上側の部位ほど、ガス発生器30の軸線A1から前方へ遠ざかるように傾斜している。また、両後周縁結合部51,52の下部は、下側の部位ほど、上記軸線A1から前方へ遠ざかるように傾斜している。
上記展開非膨張状態のエアバッグ本体41では、車内側の本体布部42の前側の周縁部と、車外側の本体布部43の前側の周縁部とは、前側の両周縁部に沿って設けられた前周縁結合部53によって相互に結合されている。
さらに、上記展開非膨張状態のエアバッグ本体41では、車内側の増厚布部44の前側の周縁部と、車外側の増厚布部45の前側の周縁部とは、前側の両周縁部に沿って設けられた縦結合部54によって相互に結合されている。上記展開非膨張状態のエアバッグ本体41では、縦結合部54の上部は、上側の部位ほど、上記軸線A1から前方へ遠ざかるように傾斜している。縦結合部54の上部が上記軸線A1に対しなす角度θU1は、両後周縁結合部51,52の上部が同軸線A1に対しなす角度θU2よりも小さく設定されている。そして、縦結合部54の上端部は、両後周縁結合部51,52の上前端と前周縁結合部53の上後端との境界部分に交差している。
また、上記展開非膨張状態のエアバッグ本体41では、縦結合部54の下部は、下側の部位ほど、上記軸線A1から前方へ遠ざかるように傾斜している。縦結合部54の下部が上記軸線A1に対しなす角度θL1は、両後周縁結合部51,52の下部が同軸線A1に対しなす角度θL2よりも小さく設定されている。そして、縦結合部54の下端部は、両後周縁結合部51,52の下前端と前周縁結合部53の下後端との境界部分に交差している。
さらに、両後周縁結合部51,52の上部の長さLU2は、両後周縁結合部51,52の下部の長さLL2よりも長く設定されている。縦結合部54の上部の長さLU1は、同縦結合部54の下部の長さLL1よりも長く設定されている。
これらの一対の後周縁結合部51,52、前周縁結合部53及び縦結合部54を用いた結合により、両本体布部42,43及び両増厚布部44,45のうち、車幅方向に隣り合うもの同士が相互に結合されて、エアバッグ本体41が形成されている。
上記エアバッグ本体41は、車両用シート12と側壁部11との間で展開及び膨張したときに、乗員Pの上半身における腹部PBから肩部PSにかけての部位に対応する領域を占有し得る形状及び大きさに形成されている(図1参照)。
図6及び図7に示すように、エアバッグ40は、上記エアバッグ本体41のほかに、一対の補強布56,62を備えている。両補強布56,62は、図6に示す展開非膨張状態のエアバッグ本体41では、車内側の増厚布部44と車内側の本体布部42との間において、車幅方向に重ね合わされた状態で配置されている。車外側の補強布62の前側の周縁部は、上記縦結合部54によって両増厚布部44,45の前側の周縁部に共縫いされている。
また、両補強布56,62の後側の周縁部は、上記車内側の後周縁結合部51によって、車内側の本体布部42及び車内側の増厚布部44の後側の両周縁部に共縫いされている。
図5及び図7に示すように、車内側の本体布部42の後端下部と、これに隣接する車内側の補強布56の下部とには、ガス発生器30の挿入口57が開口されている。この挿入口57は、本体布部42及び補強布56において前後方向に延びるように形成されたスリットによって構成されている。
さらに、上記本体布部42及び補強布56は、両挿入口57を囲むように横長の長円状に設けられた横環状結合部58によって相互に結合されている。本体布部42及び補強布56における両挿入口57の周辺部分は、横環状結合部58によって補強されている。
上記本体布部42及び補強布56において、上記挿入口57よりも上方には、ガス発生器30のボルト33を挿通するための上下一対の挿通孔59があけられている。
本体布部42及び補強布56は、全ての挿通孔59を囲むように縦長の長円状に設けられた縦環状結合部61によって相互に結合されている。本体布部42及び補強布56における全ての挿通孔59の周辺部分は、縦環状結合部61によって補強されている。
そして、略上下方向へ延びる姿勢にされたガス発生器30の下端部を除く大部分は、挿入口57を通じて、エアバッグ本体41の後部内に挿通されている。
図5〜図7に示すように、ガス発生器30の両ボルト33は、対応する挿通孔59において車内側の補強布56及び車内側の本体布部42に挿通されている。この挿通により、ガス発生器30が、エアバッグ本体41及び補強布56に対し位置決めされた状態で係止されている。
ところで、図3に示すように、ガス発生器30及びエアバッグ40を主要な構成部材として有するエアバッグモジュールABMは、エアバッグ本体41が展開非膨張状態にされたエアバッグ40(図4、図5参照)が折り畳まれることにより、コンパクトな収納用形態にされている。収納用形態にされたエアバッグモジュールABMは、収納部18に収容されている。ガス発生器30から車内側へ延びて、エアバッグ40に挿通されたボルト33が、サイドフレーム部15に対し車外側から挿通され、同ボルト33に対し車内側からナット34が螺合されている。これらのボルト33及びナット34の組合わせからなる締結具により、ガス発生器30が、車内側の本体布部42及び補強布56を伴って、上側の部位ほど後方に位置するように傾斜した状態でサイドフレーム部15(車両用シート12)に固定されている。
なお、ガス発生器30は、上述したボルト33及びナット34の組合わせとは異なる組合わせを有する締結具によってサイドフレーム部15に固定されてもよい。また、ガス発生器30は、締結具とは異なる固定手段によってサイドフレーム部15に固定されてもよい。
図1に示すように、サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールABMのほかに衝撃センサ65及び制御装置66を備えている。衝撃センサ65は加速度センサ等からなり、車両10の側壁部11(図2参照)等に設けられており、同側壁部11に側方や斜め前方から加えられる衝撃を検出する。制御装置66は、衝撃センサ65からの検出信号に基づきガス発生器30の作動を制御する。
さらに、車両10には、車両用シート12に着座している乗員Pをその車両用シート12に拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、図1等ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
次に、以上のように構成された本実施形態の作用及び効果について説明する。
側壁部11に対し、側方や斜め前方から衝撃が加わったことが衝撃センサ65によって検出されないときには、制御装置66からガス発生器30に対し、これを作動させるための作動信号が出力されず、ガス噴出部31aから膨張用ガスが噴出されない。図3に示すように、エアバッグ40は、収納用形態で収納部18に収納され続ける。
これに対し、車両10の走行中等に、側壁部11に対し、側方や斜め前方から所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ65によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置66からガス発生器30に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ31のガス噴出部31aから膨張用ガスが噴出される。噴出された膨張用ガスによりエアバッグ本体41の内圧が上昇し、同エアバッグ本体41が膨張を開始する。
上記の膨張は、折り畳まれた順とは逆の順に、折り状態の解消を伴いながらなされる。このように展開及び膨張するエアバッグ本体41によってシートバック14のシートパッド16が押圧され、破断予定部21(図3参照)において同シートパッド16が破断される。エアバッグ本体41は、その一部を収納部18に残した状態で、破断された箇所を通じてシートバック14から、前方へ飛び出す。
その後も膨張用ガスが供給されるエアバッグ40は、図1及び図2において二点鎖線で示すように、側壁部11と、車両用シート12に着座している乗員Pの上半身との間で前方へ向けて展開及び膨張する。
図1に示すように、エアバッグ本体41の上部は、乗員Pの肩部PSの側方で展開及び膨張する。エアバッグ本体41の下部は、乗員Pの腹部PBの側方で展開及び膨張する。
乗員Pの上半身のうち腹部PBから肩部PSにかけての領域が、エアバッグ本体41によって押圧され、拘束される。その結果、側壁部11を通じて伝わる衝撃が、エアバッグ40によって緩和されて、乗員Pの上半身の上記領域が保護される。
ところで、ガス発生器30からの膨張用ガスの供給初期には、図8に示すように、エアバッグ本体41が車幅方向に膨張する。両本体布部42,43間において車幅方向に互いに重ね合わされていた両増厚布部44,45(図6参照)が車幅方向に引張られて、同車幅方向に平ら、又は平らに近い状態で緊張する。表現を変えると、膨張用ガスの膨張エネルギの一部が、両増厚布部44,45を車幅方向に緊張させるために消費される。この緊張により、両増厚布部44,45の車幅方向の寸法は、増厚布部77が膨張用ガスの勢いで前方へ引張られる特許文献1よりも大きくなる。両増厚布部44,45により、エアバッグ本体41の膨張厚みが特許文献1よりも多く増加させられる。両増厚布部44,45が両本体布部42,43の後側の周縁部間で車幅方向に緊張されることから、膨張厚みは、エアバッグ本体41の後側の部位ほど多く増加される。この際、ガス発生器30は、車内側の本体布部42及び補強布56を伴って、サイドフレーム部15において車両用シート12に固定されているため、増厚布部44,45の緊張に影響を及ぼさない、又は及ぼしにくい。
そのため、車両10が横滑り等して電柱P1等に衝突して、側壁部11に対し斜め前方から衝撃が加わると、図2に示すように、側壁部11のBピラー11a及びその周辺部分が車室内に入り込むように変形する場合がある。しかし、この場合であっても、変形した側壁部11のうち車室内に最も入り込んだ箇所よりも後側部分と乗員Pとの間隙G1が、膨張厚みの増したエアバッグ本体41によって埋められる。エアバッグ本体41がBピラー11aにおいて側壁部11に押圧されることで、同エアバッグ本体41の後方への移動が規制され、乗員Pを拘束及び保護する性能の低下が抑制される。
ここで、仮に、両増厚布部44,45が共通の布片によって構成されていて、二つ折りされていると、図8において二点鎖線で示すように、増厚布部44,45が膨張用ガスにより後方へ膨らむように湾曲した状態で緊張する。湾曲する分、緊張時における増厚布部44,45の車幅方向の寸法が小さくなる。増厚布部44,45によりエアバッグ本体41の膨張厚みを増加させる機能が充分発揮されないおそれがある。
この点、本実施形態では、図8において実線で示すように、増厚布部44,45が別々の布片によって構成されている。そして、両増厚布部44,45の前側の周縁部同士が縦結合部54によって結合されている。この縦結合部54は、両増厚布部44,45が後方へ膨らむのを規制する。両増厚布部44,45がより平らに近い状態で緊張し、緊張時における両増厚布部44,45の車幅方向の寸法が大きくなる。その結果、両増厚布部44,45により、エアバッグ本体41の膨張厚みがより多く増加される。
また、図4、図5及び図9に示すように、後部が両増厚布部44,45によって構成されるエアバッグ本体41が展開及び膨張される場合、そのエアバッグ本体41の上部では、膨張厚みTU1が上側の部位ほど小さくなるように変化する。仮に、縦結合部54の上部がガス発生器30の軸線A1に対し傾斜していないと、すなわち、軸線A1に平行であると、上記変化の度合いが大きく、エアバッグ本体41の上部に、局部的に膨張厚みTU1の小さなくびれ部分が生ずるおそれがある。くびれ部分では、他の箇所よりも剛性が低くなる。そのため、くびれ部分が原因でエアバッグ本体41の上部がふらつくおそれがある。
この点、本実施形態では、縦結合部54の上部が軸線A1に対しなす角度θU1は、同上部が軸線A1に平行の場合の角度θU1(=0)よりも大きく、かつ両後周縁結合部51,52の上部が軸線A1に対しなす角度θU2よりも小さい。そのため、膨張厚みTU1がエアバッグ本体41の上側の部位ほど小さくなるように変化するものの、その変化の度合いが小さくなる。エアバッグ本体41の上部にくびれ部分が生じにくくなり、エアバッグ本体41の上部がふらつく現象が起こりにくくなる。
また、上記の設定により、縦結合部54の上部が軸線A1に対し傾斜していない場合よりも、両増厚布部44,45によりエアバッグ本体41の上部の膨張厚みTU1が増加される領域が、前方へ拡大する。これに伴い、膨張厚みTU1の増加されたエアバッグ本体41の上部によって拘束及び保護される肩部PSの領域が前方へ拡大する。
この点は、エアバッグ本体41の下部でも同様である。すなわち、エアバッグ本体41の下部では、膨張厚みTL1が下側の部位ほど小さくなるように変化する。仮に、縦結合部54の下部が軸線A1に対し傾斜していないと、すなわち、軸線A1に平行であると、上記変化の度合いが大きく、エアバッグ本体41の下部に、局部的に膨張厚みTL1の小さなくびれ部分が生ずるおそれがある。くびれ部分では、他の箇所よりも剛性が低くなる。そのため、くびれ部分が原因でエアバッグ本体41の下部がふらつくおそれがある。
この点、本実施形態では、縦結合部54の下部が軸線A1に対しなす角度θL1は、同下部が軸線A1に平行の場合の角度θL1(=0)よりも大きく、かつ両後周縁結合部51,52の下部が軸線A1に対しなす角度θL2よりも小さい。そのため、膨張厚みTL1がエアバッグ本体41の下側の部位ほど小さくなるように変化するものの、その変化の度合いが小さくなる。エアバッグ本体41の下部にくびれ部分が生じにくくなり、エアバッグ本体41の下部がくびれ部分でふらつく現象が起こりにくくなる。
また、上記の設定により、縦結合部54の下部が軸線A1に対し傾斜していない場合よりも、両増厚布部44,45によりエアバッグ本体41の下部の膨張厚みTL1が増加される領域が、前方へ拡大する。これに伴い、膨張厚みTL1の増加されたエアバッグ本体41の下部によって拘束及び保護される乗員Pの腹部PBの領域が前方へ拡大する。
また、仮に、エアバッグ本体41の上部によって乗員Pの肩部PSが車内側へ押されると、それに伴って腕部PAが車内側へ押されて胸部PTに干渉するおそれがある。
この点、本実施形態では、エアバッグ本体41が展開及び膨張したときには、同エアバッグ本体41の上部であって、後側の部位ほど膨張厚みTU1が多く増加された部分によって乗員Pの肩部PSが前方へ押される。腕部PAが肩部PSにつられて前方へ押し出され、同腕部PAの胸部PTとの干渉が抑制される。
さらに、上述したように、両増厚布部44,45によりエアバッグ本体41の上部でも下部でも膨張厚みTU1,TL1が増加される領域が前方へ拡大される。この点、両後周縁結合部51,52の上部が下部よりも長く設定(LU2>LL2)され、かつ縦結合部54の上部が下部よりも長く設定(LU1>LL1)されている本実施形態では、上記領域の拡大の程度が、エアバッグ本体41の上部において下部よりも大きい。また、上記の設定により、エアバッグ本体41の上部の膨張厚みTU1が、下部の膨張厚みTL1よりも多く増加される。そのため、乗員Pの肩部PSが、それよりも低い他の部位、例えば腹部PBよりも早期に拘束及び保護される。
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・図3及び図6に示すように、エアバッグ40は、エアバッグ本体41における車内側の本体布部42をサイドフレーム部15の車外側に隣接させた状態で配置される。そして、ガス発生器30から車内側へ延びるボルト33が、補強布56、車内側の本体布部42及びサイドフレーム部15に対し車外側から挿通される。そのボルト33に対しサイドフレーム部15の車内側からナット34が螺合されることで、ガス発生器30が車両用シート12に対し車幅方向に締結される。このように、車両用シート12に既設のサイドフレーム部15が利用されて、ガス発生器30の車両用シート12に対する固定が行なわれる。従って、この固定のために、サイドフレーム部15に対しブラケット等の別部品を追加しなくてもすむ。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
・エアバッグ本体41は、その略全体が上記実施形態のように膨張するものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
・エアバッグ本体41が上記実施形態よりも下方へ延びる形状に変更されて、乗員Pの上半身において、エアバッグ本体41の下部によって拘束及び保護される部位が、腹部PBよりも低い部位、例えば腰部PPに変更されてもよい。
・縦結合部54の上部及び下部の少なくとも一方は、ガス発生器30の軸線A1に対し平行又は平行に近い状態で延びるように形成されてもよい。
・車内側の増厚布部44と車外側の増厚布部45とが共通の布片によって構成されてもよい。この場合には、布片が増厚布部44と増厚布部45との境界部分に設定される折り線に沿って二つ折りされることとなる。二つ折りされて車幅方向に重ね合わされる増厚布部44,45は、それらの前縁の折り線において繋がっている。そのため、この場合には、縦結合部54による両増厚布部44,45の結合が不要となる。
・両補強布56,62の少なくとも一方が省略されてもよいし、さらに両補強布56,62に対し別の補強布が追加されてもよい。