JP5972833B2 - サイドエアバッグ装置 - Google Patents

Description

本発明は、側突等により車両に側方から衝撃が加わった場合に、車両用シートに着座している乗員と車両の側壁部との間でエアバッグを展開及び膨張させて、乗員の胸部から頭部にかけての部位を衝撃から保護するサイドエアバッグ装置に関するものである。

車両用シートに着座している乗員の上半身を側突等による衝撃から保護する装置として、エアバッグ及びインフレータを備えたサイドエアバッグ装置が広く知られている。このサイドエアバッグ装置では、エアバッグが折り畳まれた状態でインフレータとともに、車両用シートのシートバック（背もたれ）内に収納されている。そして、車両の側壁部、例えばサイドドア等に対し、側突等により側方から衝撃が加わると、インフレータから膨張用ガスがエアバッグに供給される。エアバッグが展開及び膨張し、一部をシートバック内に残した状態で車両用シートから飛び出す。その後もエアバッグは、乗員の上半身と側壁部との間の狭い空間において展開及び膨張する。このエアバッグが、乗員と車内側へ進入してくる側壁部との間に介在して乗員の上半身を拘束するとともに、側壁部を通じて上記上半身に伝わる側方からの衝撃を緩和する。

上記サイドエアバッグ装置の一態様として、エアバッグを、乗員の胸部から頭部にかけての部位と車両の側壁部との間で、略上下方向に細長く展開及び膨張させるものが、例えば特許文献１に記載されている。このサイドエアバッグ装置では、エアバッグが、前側ほど低くなるように傾斜した区画壁により前膨張室と後膨張室とに仕切られていて、インフレータが後膨張室の下部に配置されている。区画壁には、後膨張室及び前膨張室を連通させる複数の小孔が設けられている。これらの小孔は、区画壁の後部ほど多数個、すなわち前部では低密度に、後部では高密度に設けられている。そして、エアバッグは、折り畳まれた状態でインフレータとともに、シートバックにおいて胸部の側方近傍に収納されている。

このサイドエアバッグ装置によると、側突等による衝撃に応じインフレータから膨張用ガスが噴出されると、その膨張用ガスは後膨張室内を上方へ流れて、同後膨張室を略上方へ向けて展開及び膨張させる。また、膨張用ガスの一部は、後膨張室内を略上方へ流れる途中で、小孔を通じて前膨張室内に流入し、その前膨張室を展開及び膨張させる。

特開２０００−２８０８５３号公報（図９、図１０）

ところで、乗員の上半身においては、肩部が側方へ最も多く突出して、車両の側壁部に最も接近している。車両に側方から衝撃が加わる前の乗員の上半身と側壁部との間隔は、肩部において最小である。

一方、エアバッグは、上述したように展開及び膨張する前には、シートバックにおいて胸部の側方近傍に収納されている。そのため、エアバッグを頭部の側方まで展開及び膨張させるには、このエアバッグを、胸部よりも上方の肩部と側壁部との狭い間隙を通過させる必要がある。

ところが、特許文献１に記載されたサイドエアバッグ装置では、上記のように肩部と側壁部との狭い間隙を通過させるための工夫が特段なされていない。そのため、エアバッグのうち、乗員の頭部の側方で展開及び膨張する予定の箇所が、他の箇所よりも早期に展開及び膨張すると、すなわち、肩部の側方を通過する前に展開及び膨張すると、上記間隙の狭い箇所を通過困難となって、エアバッグの他の箇所の展開及び膨張を阻害するおそれがある。特に、特許文献１では、小孔が、区画壁の前部では低密度に、後部では高密度に設けられていることから、膨張用ガスがエアバッグのうち、乗員の頭部の側方で展開及び膨張させる予定の箇所に供給されやすく、上記の問題が起こりやすい。

本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、エアバッグを、乗員の胸部から頭部にかけての部位の側方で的確に展開及び膨張させることのできるサイドエアバッグ装置を提供することにある。

上記課題を解決するサイドエアバッグ装置は、車両側方からの衝撃に応じ膨張用ガスを噴出するインフレータと、折り畳まれた状態で収納され、前記インフレータからの膨張用ガスにより、車両用シートに着座している乗員の胸部から頭部にかけての部位と車両の側壁部との間で展開及び膨張するエアバッグとを備えるサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグは、略上下方向に延びる区画壁により、同区画壁よりも前側の前膨張室と後側の後膨張室とに仕切られており、前記インフレータは前記後膨張室内の下部に配置され、前記区画壁において前記乗員の頭部の側方となる箇所には、前記後膨張室及び前記前膨張室を連通させる上部連通孔が設けられ、前記区画壁において前記乗員の胸部の側方となる箇所には、前記後膨張室及び前記前膨張室を連通させる下部連通孔が設けられ、前記下部連通孔の開口面積が前記上部連通孔の開口面積以上の大きさに設定されている。

上記の構成によれば、インフレータから供給された膨張用ガスの一部が、エアバッグの後膨張室内を上方へ向けて流れることで、後膨張室が展開及び膨張する。膨張用ガスが、乗員の胸部の側方に至ると、その膨張用ガスの一部は、下部連通孔を通って前膨張室の下部へ流入する。また、下部連通孔を通過せずに同下部連通孔よりも上方へ流れた膨張用ガスが、乗員の頭部の側方に至ると、その膨張用ガスの一部は、上部連通孔を通って前膨張室内の上部へ流入する。この際、下部連通孔の開口面積が上部連通孔の開口面積以上の大きさに設定されていることから、下部連通孔では上部連通孔と同程度か上部連通孔よりも多くの量の膨張用ガスが流れる。

そして、下部連通孔を通過した膨張用ガスにより前膨張室の下部が乗員の胸部の前部側方で展開及び膨張する。また、上部連通孔を通過した膨張用ガスにより前膨張室の上部が乗員の頭部の前部側方で展開及び膨張する。この際、上述したように、下部連通孔と上部連通孔とで膨張用ガスの流量が異なることから、頭部の前部側方で展開及び膨張する予定の箇所は、他の箇所、特に胸部の前部側方よりも早期に展開及び膨張せず、肩部と側壁部との間の間隙の狭い箇所を通過した後に展開及び膨張する。

上記サイドエアバッグ装置において、前記前膨張室の前記上部連通孔と前記下部連通孔との間には、前記膨張用ガスを排出するための排気孔が設けられていることが好ましい。
上記の構成によれば、上部連通孔を通じて前膨張室の上部に流入した膨張用ガスが下方へ流れようとした場合、その膨張用ガスの一部は、上部連通孔と下部連通孔との間に設けられた排気孔からエアバッグの外部へ排出される。そのため、膨張用ガスが同前膨張室の下部へ流れて、同下部が胸部の側方で過大な圧力で展開及び膨張することが抑制される。

上記サイドエアバッグ装置において、前記エアバッグにおいて、前記乗員の肩部の側方となる箇所には、膨張時における車幅方向の膨張厚みを、他の箇所の膨張厚みよりも小さくする厚み抑制部が設けられていることが好ましい。

上記の構成によれば、エアバッグにおいて、乗員の肩部の側方となる箇所の車幅方向の膨張厚みは、厚み抑制部により他の箇所の膨張厚みよりも小さくされる。そのため、エアバッグにおいて、乗員の肩部の側方となる箇所は、その肩部と車両の側壁部との間の間隙の狭い箇所においても展開及び膨張しやすい。

上記サイドエアバッグ装置において、前記エアバッグが展開及び膨張を完了したとき、前記エアバッグのうち前記乗員の頭部の側方となる箇所の前端は、前記乗員の胸部の側方となる箇所の前端よりも前方に位置することが好ましい。

上記の構成によれば、エアバッグのうち頭部の側方で展開及び膨張する領域が前方に広くなり、頭部を拘束して衝撃から保護する性能が向上する。
上記サイドエアバッグ装置において、前記エアバッグには、これを上方から下方へ向けて折り畳むことにより複数の折り畳み部が形成されており、前記区画壁の前記上部連通孔は、最上部の折り畳み部に位置していることが好ましい。

上方から下方へ向けて折り畳まれることにより複数の折り畳み部が形成されているエアバッグでは、インフレータから噴出された膨張用ガスの一部が、インフレータに近い側の折り畳み部から遠い側の折り畳み部である最上部の折り畳み部に向けて流れることで、後膨張室が展開及び膨張する。ここで、仮に、区画壁の上部連通孔が最上部よりも下側の折り畳み部に位置していると、膨張用ガスが上部連通孔を通って折り畳み部の前部に流れて、同部分が展開及び膨張し、最上部の折り畳み部の展開及び膨張を妨げるおそれがある。

この点、区画壁の上部連通孔が、エアバッグの最上部の折り畳み部に位置していることから、エアバッグでは、下側の折り畳み部から上側の折り畳み部に向けて順に展開していく。そして、最上部の折り畳み部が展開する過程で、後膨張室内の膨張用ガスが上部連通孔を通って前膨張室に流入する。従って、上部連通孔が原因で最上部の折り畳み部の展開及び膨張が妨げられることが起こりにくい。

上記サイドエアバッグ装置によれば、区画壁における下部連通孔の開口面積を上部連通孔の開口面積以上の大きさに設定したため、エアバッグを、乗員の胸部から頭部にかけての部位の側方で的確に展開及び膨張させることができる。

サイドエアバッグ装置の一実施形態を示す図であり、同装置が設けられた車両用シートをエアバッグ及び乗員とともに示す側面図。 一実施形態において、車両用シート、エアバッグ、乗員及び側壁部の位置関係を示す平断面図。 一実施形態において、車両用シート、エアバッグ、乗員及び側壁部の位置関係を示す正断面図。 一実施形態において、エアバッグモジュールが組み込まれたシートバックの側部の内部構造を示す部分平断面図。 一実施形態において、エアバッグが非膨張展開状態にされたエアバッグモジュールを示す側面図。 一実施形態におけるエアバッグの内部の概略構成を示す平断面図。 図５のエアバッグモジュールの内部構造を乗員及び車両用シートとともに示す部分側断面図。 一実施形態において、エアバッグモジュールのエアバッグが折り畳まれる前の状態を示す側面図。 一実施形態におけるエアバッグが折り畳まれる途中段階のエアバッグモジュールを示す図であり、（ａ）は側面図、（ｂ）は上記（ａ）の左方から見た背面図。 一実施形態におけるエアバッグが折り畳まれる途中段階のエアバッグモジュールを示す図であり、（ａ）は側面図、（ｂ）は上記（ａ）の左方から見た背面図。 一実施形態におけるエアバッグが折り畳まれる途中段階のエアバッグモジュールを示す図であり、（ａ）は側面図、（ｂ）は上記（ａ）の左方から見た背面図。 一実施形態におけるエアバッグが折り畳まれる途中段階のエアバッグモジュールを示す図であり、（ａ）は図１１（ａ）の裏側から見た側面図、（ｂ）は、上記（ａ）の右方から見た背面図。 一実施形態におけるエアバッグが折り畳まれる途中段階のエアバッグモジュールを示す図であり、（ａ）は側面図、（ｂ）は上記（ａ）のＡ−Ａ線断面図。 一実施形態におけるエアバッグが折り畳まれる途中段階のエアバッグモジュールを示す図であり、（ａ）は側面図、（ｂ）は上記（ａ）のＢ−Ｂ線断面図。 一実施形態におけるエアバッグが折り畳まれて収納用形態にされたエアバッグモジュールを示す図であり、（ａ）は側面図、（ｂ）は上記（ａ）のＣ−Ｃ線断面図。 図４のエアバッグがその一部をシートバック内に残して車両用シートから飛び出して展開及び膨張した状態を示す部分平断面図。 一実施形態のエアバッグにおける折り線及び折り畳み部の位置関係を示す側面図。 エアバッグの変形例を、乗員及び車両用シートともに示す部分側面図。

以下、サイドエアバッグ装置の一実施形態について、図１〜図１７を参照して説明する。
なお、以下の説明では、車両の前進方向を前方と記載し、それを基準に前、後、上、下、左、右を規定している。また、各図において、「前」は車両前側を、「後」は車両後側を、「内」は車両内側を、「外」は車両外側をそれぞれ示している。車両内側は、車幅方向について、その中央位置に近づく側であり、車両外側は上記中央位置から遠ざかる側である。

また、車両用シートには、標準的な体格を有する乗員（大人）が、予め定められた姿勢（正規の姿勢）で着座しているものとする。
図１〜図３に示すように、車両１０において側壁部１１の車内側の近傍には、車両用シート１２が配置されている。ここで、側壁部１１とは、車両１０の側部に配置された車両構成部材を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。例えば、前席に対応する側壁部１１は、フロントドア、センターピラー（Ｂピラー）等である。また、後席に対応する側壁部１１は、サイドドア（リヤドア）の後部、Ｃピラー、タイヤハウスの前部、リヤクォータ等である。

車両用シート１２は、シートクッション（座部）１３と、そのシートクッション１３の後側から起立し、かつ傾き調整機構（図示略）により傾斜角度を調整されるシートバック（背もたれ）１４とを備えている。車両用シート１２は、シートバック１４が前方を向く姿勢で車両１０に配置されている。このように配置された車両用シート１２の幅方向は、車幅方向と合致する。

シートバック１４は、シートバック本体１５と、そのシートバック本体１５の幅方向についての両側部に設けられた一対のサイドサポート部１６とを備えている。シートバック本体１５は後側へ傾斜しており、乗員Ｐの上半身を後側から支える。両サイドサポート部１６は、シートバック本体１５から前方へ突出しており、シートクッション１３に腰掛けてシートバック本体１５に凭れた乗員Ｐの上半身の車幅方向についての動きを規制する。

次に、シートバック１４において、車外側のサイドサポート部１６を含む車外側の側部の内部構造について説明する。
シートバック１４内には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部は、図４に示すように、シートバック１４内の車外側部分に配置されており、この部分（以下「サイドフレーム部１７」という）は、金属板を曲げ加工することによって形成されている。サイドフレーム部１７を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド１８が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成された硬質のバックボード１９が配置されている。なお、シートパッド１８は表皮によって被覆されているが、図４ではその表皮の図示が省略されている。後述する図１６についても同様である。

シートパッド１８内において、サイドフレーム部１７の車外側近傍には収納部２１が設けられている。収納部２１の位置は、シートバック１４の上下方向についての中間部分であって、車両用シート１２に着座した乗員Ｐの斜め後方近傍となる（図２参照）。この収納部２１には、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールＡＭが組み込まれている。

収納部２１の車外側かつ前側の角部からは、斜め前車外側に向けてスリット２２が延びている。シートパッド１８の前側の角部１８ｃとスリット２２とによって挟まれた箇所（図４において二点鎖線の枠で囲んだ箇所）は、後述するエアバッグ４０によって破断される破断予定部２３を構成している。

上記シートバック１４に組み込まれるエアバッグモジュールＡＭは、インフレータアセンブリ３０及びエアバッグ４０を主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。

＜インフレータアセンブリ３０＞
インフレータアセンブリ３０は、ガス発生器としてのインフレータ３１と、そのインフレータ３１を覆うリテーナ３２とを備えている。本実施形態では、インフレータ３１として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ３１は略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤（図示略）が収容されている。

なお、インフレータ３１としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ（ハイブリッドタイプ）が用いられてもよい。

一方、リテーナ３２は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ３１をエアバッグ４０と一緒に上記サイドフレーム部１７に締結する機能を有する部材である。リテーナ３２の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって、略上下方向へ延びる略筒状に形成されている。リテーナ３２には、その内外を連通させる連通部（図示略）が設けられており、インフレータ３１から噴出された膨張用ガスの多くが、この連通部を通じてリテーナ３２の外部へ噴き出される。

リテーナ３２には、これを上記サイドフレーム部１７に取付けるための係止部材としてボルト３４が固定されている。
なお、インフレータアセンブリ３０は、インフレータ３１とリテーナ３２とが一体になったものであってもよい。

＜エアバッグ４０＞
図１〜図３において二点鎖線で示すように、エアバッグ４０は、車両１０の走行中等に側突等により衝撃が側壁部１１に側方から加わった場合に、インフレータ３１から膨張用ガスの供給を受けて展開及び膨張し、自身の一部を上記シートバック１４内に残した状態で同シートバック１４から前方へ向けて飛び出す。

図５は、エアバッグ４０が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態（以下「非膨張展開状態」という）のエアバッグモジュールＡＭを示している。また、図７は、エアバッグモジュールＡＭの内部構造を示すべく、図５の非膨張展開状態のエアバッグ４０が車幅方向の中央部分で切断されたエアバッグモジュールＡＭを乗員Ｐ及び車両用シート１２とともに示している。

図５〜図７に示すように、エアバッグ４０は、１枚の布片（基布、パネル布等とも呼ばれる）を、その中央部分に設定した折り線４２に沿って二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を袋状となるように結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ４０の上記の重ね合わされた２つの部分を区別するために、車内側に位置するものを布部４３といい、車外側に位置するものを布部４４というものとする。各布部４３，４４は、前後方向に対するよりも上下方向に細長い形状をなしている。

なお、本実施形態では、折り線４２がエアバッグ４０の後端部に位置するように布片が二つ折りされているが、折り線４２が他の端部、例えば前端部、上端部、下端部等に位置するように布片が二つ折りされてもよい。また、エアバッグ４０は上記折り線４２に沿って分割された２枚の布片からなるものであってもよい。この場合には、エアバッグ４０は、２枚の布片を車幅方向に重ね合わせ、両布片を、袋状となるように結合させることにより形成される。さらに、エアバッグ４０は３枚以上の布片からなるものであってもよい。

エアバッグ４０においては、両布部４３，４４の外形形状が、折り線４２を対称軸として互いに線対称の関係にある。各布部４３，４４の形状・大きさは、エアバッグ４０が車両用シート１２と側壁部１１との間で展開及び膨張したときに、その車両用シート１２に着座している乗員Ｐの上半身のうち胸部ＰＴから頭部ＰＨにかけての部位に対応する領域を占有し得るように設定されている（図１〜図３）。図７に示すように、エアバッグ４０は、乗員Ｐの頭部ＰＨの側方となる箇所の前端４０ａが、胸部ＰＴの側方となる箇所の前端４０ｂよりも前方に位置するように形成されている。

上記両布部４３，４４としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。

両布部４３，４４の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部４５においてなされている。本実施形態では、周縁結合部４５の大部分は、両布部４３，４４の周縁部のうち、後端部（折り線４２の近傍部分）を除く部分を、縫製（縫糸で縫合）することにより形成されている。この縫製により形成されているという点は、後述する外結合部５２及び内結合部５３についても同様である。

上記縫製に関し、図５、図７〜図１５、図１７及び図１８では、３つの線種によって縫製部分が表現されている。１つ目の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線（破線の一種）であり、これは、縫合部分を側方から見た状態を示している（図５における周縁結合部４５等参照）。２番目の線種は、一定長さ（一般的な破線よりも長い長さ）の細線を断続的に並べて表現した線（破線の一種）であり、これは、布部４３，４４間に位置していて直接は見えない（隠れている）縫糸の状態を示している（図５における内結合部５３等参照）。３番目の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線（破線の一種）であり、これは、布部４３，４４を縫合している縫糸の断面を示している（図７における周縁結合部４５等参照）。

図５〜図７に示すように、両布部４３，４４間であって、周縁結合部４５によって囲まれた空間は、膨張用ガスによって乗員Ｐの上半身の側方で展開及び膨張することにより、胸部ＰＴから頭部ＰＨにかけての部位を拘束して衝撃から保護するための膨張部となっている。

なお、周縁結合部４５は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この接着により形成されてもよいという点は、後述する外結合部５２及び内結合部５３についても同様である。

エアバッグ４０内であって前後方向についての中間部分には、略上下方向に延びる区画壁５０が設けられており、エアバッグ４０が、区画壁５０よりも後側の後膨張室４６と、同区画壁５０よりも前側の前膨張室４７とに仕切られている。区画壁５０は、一般的にテザーと呼ばれるものと同様の構成を有している。

＜区画壁５０＞
区画壁５０は、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えば、上記布部４３，４４等と同様の織布等からなる一対の布片５１を備えている。両布片５１は上下方向に細長い帯状をなしている。各布片５１は、その後端縁に沿って略上下方向に延びる外結合部５２によって、エアバッグ４０の両布部４３，４４のうち対向するものに結合されている。両外結合部５２は、エアバッグ４０が膨張したときに、乗員Ｐの上半身における前後方向についての中間部の側方となる箇所で、布片５１の後端部を対応する布部４３，４４に結合している。両布片５１は、それらの前端縁に沿って略上下方向に延びる内結合部５３によって相互に結合されている。

このようにして、一対の布片５１からなる区画壁５０は、エアバッグ４０における車内側の布部４３と車外側の布部４４との間に架け渡されている。区画壁５０は、エアバッグ４０の非膨張展開時には車幅方向に重ね合わされた状態となる（図５、図７参照）。また、区画壁５０は、エアバッグ４０の膨張に伴い、車幅方向に緊張させられた状態となり（図６参照）、同エアバッグ４０の車幅方向の厚み（膨張厚み）を規制する。

区画壁５０において、エアバッグ４０が膨張したときに乗員Ｐの頭部ＰＨの側方となる箇所には、後膨張室４６と前膨張室４７とを連通させる上部連通孔５４が設けられている。また、区画壁５０において、エアバッグ４０が膨張したときに乗員Ｐの胸部ＰＴの側方となる箇所には、後膨張室４６と前膨張室４７とを連通させる下部連通孔５５が設けられている。より詳しくは、上記内結合部５３は、その上端部と下部の２箇所においてそれぞれ結合を解除されている。上下方向についての上端部と下部とでは、両布片５１を結合させる内結合部５３が設けられていない。内結合部５３の上端部において結合を解除された箇所は上部連通孔５４を構成し、同内結合部５３の下部において結合を解除された箇所は上記下部連通孔５５を構成している。上部連通孔５４及び下部連通孔５５は、両布片５１が重ねられた状態では閉じ、エアバッグ４０が膨張し、区画壁５０が車幅方向に緊張させられた状態では開く。

エアバッグ４０が非膨張展開状態にされた状態、すなわち区画壁５０の布片５１が重ね合わせられた状態では、下部連通孔５５の上下長Ｌ１は、上部連通孔５４の上下長Ｌ２よりも長く形成されている。この構成により、エアバッグ４０が膨張したときの下部連通孔５５の開口面積が上部連通孔５４の開口面積よりも大きく設定されている。

そして、上述したインフレータアセンブリ３０の大部分は、略上下方向へ延びる姿勢にされて、後膨張室４６の後端下部に収容されている。リテーナ３２のボルト３４は、エアバッグ４０の車内側の布部４３に挿通されている。この挿通により、インフレータアセンブリ３０がエアバッグ４０に対し位置決めされた状態で係止されている。

さらに、車外側の布部４４は、前膨張室４７の前部であって上記上部連通孔５４と下部連通孔５５との間に排気孔５６を有している。布部４４において、排気孔５６の周りには縫糸で縫製することにより補強部５７が設けられている。補強部５７は、布部４４の排気孔５６の周りを補強して、同部分が裂けたり、ほつれたりするのを抑制するためのものである。

ところで、図４及び図１５（ａ），（ｂ）に示すように、インフレータアセンブリ３０及びエアバッグ４０を主要な構成部材として有するエアバッグモジュールＡＭは、エアバッグ４０が折り畳まれることでコンパクトな形態（以下「収納用形態」という）にされている。これは、エアバッグモジュールＡＭを、シートバック１４における限られた大きさの収納部２１に対し、収納に適したものとするためである。

収納用形態は、非膨張展開状態のエアバッグ４０が、図８〜図１５に示すように折り畳まれることにより得られる。次に、エアバッグ４０が折り畳まれる工程について説明するが、その説明には、折り線４２，６１，６４，６７，７１，７４，７５の位置、折り畳まれる部位の位置、折りの方向等の特定が必要となる。そのため、上記折り線の位置や折り畳まれる部位の位置を特定する際には、インフレータアセンブリ３０を基準として、エアバッグ４０の各部を特定するものとする。インフレータアセンブリ３０の軸線ＡＬに沿う方向（略上下方向）について、インフレータアセンブリ３０に近い端を「第１基端」といい、インフレータアセンブリ３０から遠い端を「第１先端」という。非膨張展開状態のエアバッグ４０が車両用シート１２に取付けられている状態では、上記第１基端は同エアバッグ４０の下端に相当し、上記第１先端は同エアバッグ４０の上端に相当する。

インフレータアセンブリ３０の軸線ＡＬに直交する方向（略前後方向）についても同様である。インフレータアセンブリ３０に近い端を「第２基端」といい、インフレータアセンブリ３０から遠い端を「第２先端」という。非膨張展開状態のエアバッグ４０が車両用シート１２に取付けられている状態では、上記第２基端は同エアバッグ４０の後端に相当し、上記第２先端は同エアバッグ４０の前端に相当する。

また、折りの方向を特定する際には、エアバッグ４０が車両用シート１２に取付けられているものと仮定して、「車外側」及び「車内側」の語を用いるものとする。
図８は、折り線４２及びインフレータアセンブリ３０の軸線ＡＬが上下方向へ延びる姿勢にされた非膨張展開状態のエアバッグ４０を、車外側から見た状態を示している。このエアバッグ４０において、インフレータアセンブリ３０から第１先端側（図８の上端側）へ若干離れた箇所に、折り線４２に直交する折り線６１が設定される。図８において矢印で示すように、エアバッグ４０において、上記折り線６１よりも第１先端側（図８の上端側）の部分６２が、その折り線６１に沿って車外側（図８の手前側）へ折り返される。この折り返しにより、上記部分６２の一部が、エアバッグ４０において、折り線６１よりも第１基端側（図８の下端側）の部分６３の一部に重ねられる。エアバッグ４０は、図９（ａ），（ｂ）に示す形態になる。

次に、上記部分６２において、上記折り線６１から第１先端側（図９（ａ）の下端側）へ離れた箇所に、同折り線６１に対し平行に折り線６４が設定される。同図９（ａ）において矢印で示すように、上記部分６２において、上記折り線６４よりも第１先端側（図９（ａ）の下端側）の部分６５が、その折り線６４に沿って車外側（図９（ａ）の手前側）へ折り返される。この折り返しにより、上記部分６５の一部が、エアバッグ４０のうち折り線６１と折り線６４とによって挟まれた部分（以下「折り畳み部６６」という）の一部に重ねられる。エアバッグ４０は、図１０（ａ），（ｂ）に示す形態になる。

次に、上記部分６５について、上記折り線６４から第１先端側（図１０（ａ）の上端側）へ離れた箇所に、同折り線６４に対し平行に折り線６７が設定される。同図１０（ａ）において矢印で示すように、部分６５において、折り線６７よりも第１先端側（図１０（ａ）の上端側）の部分（以下「折り畳み部６８」という）が、その折り線６７に沿って車内側（図１０（ａ）の奥側）へ折り返される。この折り返しにより、上記折り畳み部６８の多くの部分が、エアバッグ４０のうち折り線６４と折り線６７とによって挟まれた部分（以下「折り畳み部６９」という）の一部に重ねられる。エアバッグ４０は、図１１（ａ），（ｂ）に示す形態になる。

図１２（ａ），（ｂ）は、図１１（ａ），（ｂ）の上記エアバッグ４０を裏側、すなわち車内側から見た状態を示している。この図１２（ａ），（ｂ）に示すように、エアバッグ４０においてインフレータアセンブリ３０の収納されている上記部分６３に折り線７１が設定される。この折り線７１は、エアバッグ４０の展開方向であって、インフレータアセンブリ３０の軸線ＡＬに直交する方向についての第２先端側（前端側）に設定される。ここでは、折り線７１は、軸線ＡＬに対し傾斜するように設定される。図１２（ａ）において矢印で示すように、上記部分６３において、上記折り線７１よりも第２先端側（図１２（ａ）の斜め左下側）の部分（以下「折り畳み部７２」という）が、その折り線７１に沿って車内側（図１２（ａ）の手前側）へ折り返される。この折り返しにより、折り畳み部７２が、部分６３のうち、折り線７１と折り線４２と折り線６１とによって囲まれた部分（以下「折り畳み部７３」という）の一部に重ねられる。エアバッグ４０は図１３（ａ），（ｂ）に示すように、車外側から車内側に向けて、折り畳み部６９，６８，６６，７３，７２が重ねられた中間形態になる。

続いて、図１３（ａ），（ｂ）に示すように、インフレータアセンブリ３０の軸線ＡＬに直交する方向について、上記中間形態のエアバッグ４０の区画壁５０（外結合部５２）よりも第２先端側（前端側）の領域Ｚ１の複数箇所に、上記折り線４２（軸線ＡＬ）に対しそれぞれ平行に折り線７４が設定される。そして、上記領域Ｚ１が、各折り線７４に沿って同一方向に繰り返し折り畳むロール折りにより、第２先端側（前端側）から第２基端側（後端側）へ向けて折り畳まれる。この折り畳みにより、エアバッグ４０は、図１４（ａ），（ｂ）に示す形態になる。

次に、図１４（ａ），（ｂ）に示すように、軸線ＡＬに直交する方向について、ロール折りされた上記エアバッグ４０の区画壁５０（外結合部５２）よりも第２基端側（後端側）の領域Ｚ２の複数箇所に、上記折り線４２（軸線ＡＬ）に対しそれぞれ平行に折り線７５が設定される。そして、上記領域Ｚ２が、各折り線７５に沿って、折り返す方向を交互に変えて折り畳む蛇腹折りにより、第２先端側（前端側）から第２基端側（後端側）へ向けて折り畳まれる。この折り畳みにより、エアバッグ４０は図１５（ａ），（ｂ）に示す収納用形態になる。

このように、エアバッグ４０が折り畳まれて、収納用形態にされたエアバッグモジュールＡＭは、インフレータアセンブリ３０の軸線ＡＬに対し、沿う方向（略上下方向）にも直交する方向（略前後方向）にも寸法が小さくなっており、シートバック１４の狭い収納部２１に対しても収納に適したものとなる。

図４に示すように、収納用形態にされたエアバッグモジュールＡＭにおいて、リテーナ３２から延びてエアバッグ４０（布部４３）に挿通されたボルト３４は、サイドフレーム部１７に挿通されている。そして、このボルト３４にナット３５が締付けられることで、インフレータアセンブリ３０がエアバッグ４０と一緒にサイドフレーム部１７に固定されている。

なお、インフレータアセンブリ３０は、上述したボルト３４及びナット３５とは異なる部材によってサイドフレーム部１７に固定されてもよい。
図１に示すように、サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールＡＭ（図２参照）のほかに衝撃センサ８１及び制御装置８２を備えている。衝撃センサ８１は加速度センサ等からなり、車両１０の側壁部１１（図２参照）等に設けられており、同側壁部１１に側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置８２は、衝撃センサ８１からの検出信号に基づきインフレータ３１の作動を制御する。

さらに、車両１０には、車両用シート１２に着座している乗員Ｐをその車両用シート１２に拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、図１等ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。

次に、上記のように構成された本実施形態のサイドエアバッグ装置の作用について説明する。
このサイドエアバッグ装置では、側突等により車両１０の側壁部１１に対し側方から衝撃が加わらないときには、制御装置８２からインフレータ３１に対し、これを作動させるための作動信号が出力されず、同インフレータ３１から膨張用ガスがエアバッグ４０に供給されない。エアバッグモジュールＡＭは、収納用形態で収納部２１に収納され続ける（図４参照）。

これに対し、車両の走行中に、側突等により側壁部１１に対し側方から所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ８１によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置８２からインフレータ３１に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ３１では、ガス発生剤が高圧の膨張用ガスを発生し、これを噴出する。噴出された膨張用ガスは、リテーナ３２の連通部を通りエアバッグ４０に供給される。ここで、エアバッグ４０は、その前後方向についての中間部に設けられた区画壁５０により、後膨張室４６及び前膨張室４７に仕切られていて、その後膨張室４６内の後端下部にインフレータアセンブリ３０が配置されている。このことから、インフレータ３１からの膨張用ガスは、後膨張室４６内の後端下部に供給される。

図１７に示すように、この膨張用ガスは、インフレータアセンブリ３０に近い側の折り畳み部７３から遠い側の折り畳み部６８，７２に向けて、後膨張室４６内を流れる。表現を変えると、膨張用ガスは展開方向についての第１基端側（下端側）の折り畳み部７３から第１先端側（上端側）の折り畳み部６８に向けて、後膨張室４６内を上方へ流れる。また、膨張用ガスは展開方向についての第２基端側（後端側）の折り畳み部７３から第２先端側（前端側）の折り畳み部７２に向けて、後膨張室４６内を前方へ流れる。第１基端側及び第２基端側の折り畳み部７３は、インフレータアセンブリ３０が収容された折り畳み部である。

第２基端側から第２先端側の折り畳み部７２に向けて前方へ流れる膨張用ガスは、区画壁５０に至ると、この区画壁５０に沿って流れ方向を上方へ変え、当初から上方へ流れる膨張用ガスに合流する。

上記上方へ向かう膨張用ガスにより、後膨張室４６は、下方から上方に向けて順に折りを解消（展開）しながら膨張していく。
また、上記前方へ向かう膨張用ガスにより、エアバッグ４０のうち区画壁５０よりも後方の蛇腹折りされた領域Ｚ２（図１４参照）が、後方から前方に向けて順に折りを解消（展開）しながら膨張していく。

上記のようにエアバッグ４０が上方や前方へ展開及び膨張する過程で、シートバック１４のシートパッド１８がエアバッグ４０によって押圧され、図４の破断予定部２３において破断される。図１６に示すように、エアバッグ４０は自身の後端部を、インフレータアセンブリ３０とともに収納部２１内に残した状態でシートバック１４から車両１０の略前方へ飛び出す。

上記膨張用ガスは、第２先端側（前端側）の折り畳み部７２のうち、区画壁５０よりも後方部分を膨張させる。
ここで、蛇腹折りには、折り状態を解消しやすいという特徴がある。そのため、区画壁５０よりも後方の蛇腹折りされた領域Ｚ２は、速やかに前方へ向けて展開及び膨張する。

また、後膨張室４６の容積は、エアバッグ４０が区画壁５０によって仕切られていない場合のそのエアバッグ４０の容積よりも小さい。また、後膨張室４６の車幅方向についての膨張厚みは、エアバッグ４０が仕切られない場合のそのエアバッグ４０の車幅方向についての膨張厚みよりも小さい。そのため、後膨張室４６は狭い間隙でも通過しながら展開及び膨張しやすい。

図７及び図１７に示すように、後膨張室４６内を上方へ流れて乗員Ｐの胸部ＰＴの後部側方に至った膨張用ガスの一部は、下部連通孔５５を通って前膨張室４７の下部内へ流入する。また、下部連通孔５５を通過せずに後膨張室４６内を同下部連通孔５５よりも上方へ流れて乗員Ｐの頭部ＰＨの後部側方に至った膨張用ガスの一部は、上部連通孔５４を通って前膨張室４７の上部内へ流入する。この際、下部連通孔５５の開口面積が上部連通孔５４の開口面積よりも大きいことから、下部連通孔５５では上部連通孔５４よりも多くの量の膨張用ガスが流れる。

下部連通孔５５を通って前膨張室４７に流入した膨張用ガスの一部は、上方及び下方へ向きを変える。また、上部連通孔５４を通って前膨張室４７に流入した膨張用ガスの一部は、下方へ向きを変える。

これらの膨張用ガスにより、区画壁５０よりも前方のロール折りされた部分が、胸部ＰＴや頭部ＰＨの前部側方において前方へ向けて展開及び膨張する。この際、上述したように、下部連通孔５５と上部連通孔５４とで膨張用ガスの流量が異なることから、頭部ＰＨの前部側方で展開及び膨張する予定の箇所が、他の箇所、特に胸部ＰＴの側方よりも早期に展開及び膨張すること、すなわち、乗員Ｐの肩部ＰＳと車両の側壁部１１との間隙の狭い箇所を通過する前に展開及び膨張することが起こりにくい。頭部ＰＨの前部側方で展開及び膨張する予定の箇所は、肩部ＰＳと側壁部１１との間の間隙の狭い箇所を通過した後に展開及び膨張する。その結果、エアバッグ４０のうち、乗員Ｐの頭部ＰＨの側方で展開及び膨張させる予定の箇所が、上記間隙の狭い箇所を通過困難となって他の箇所の展開及び膨張を阻害する現象が起こりにくい。エアバッグ４０は、乗員Ｐの胸部ＰＴから頭部ＰＨにかけての部位の側方で展開及び膨張する。

また、ロール折りには、車両１０の側壁部１１に沿って展開しやすいという特徴がある。そのため、区画壁５０よりも前方のロール折りされた部分は、乗員Ｐの胸部ＰＴや頭部ＰＨの前部側方において車両の側壁部１１に沿って前方へ展開及び膨張する。

下部連通孔５５を通って前膨張室４７に流入し、下方へ向きを変えた膨張用ガスが、第２先端側（前端側）の折り畳み部７２のうち、区画壁５０よりも前方部分に供給されると、同折り畳み部７２の車内側へ折り返されている状態を解消（展開）する。この展開の際に、折り畳み部７２は車両の側壁部１１に接触することがなく、同側壁部１１との摩擦により円滑な展開を妨げられることが起こりにくい。また、折り畳み部７２のうち区画壁５０よりも前側部分が、上述したように先に膨張を始めている区画壁５０よりも後側部分によって押されるため、展開が迅速に行なわれる。

後膨張室４６内を上方へ流れる膨張用ガスの一部が、第１先端側（上端側）の折り畳み部６８に至ると、その折り畳み部６８が車内側へ折り返されている状態を解消（展開）する）。この展開の際に、折り畳み部６８は車両１０の側壁部１１に接触することがなく、同側壁部１１との摩擦により円滑な展開を妨げられることが起こりにくい。

図７に示すように、エアバッグ４０が展開及び膨張を完了したときには、乗員Ｐの頭部ＰＨの側方となる箇所の前端４０ａが、胸部ＰＴの側方となる箇所の前端４０ｂよりも前方に位置する。そのため、エアバッグ４０の前端４０ｂと同じ箇所に位置したり、後方に位置したりするものに比べ、エアバッグ４０のうち頭部ＰＨの側方で展開及び膨張する領域が前方に広くなる。

ところで、仮に、上部連通孔５４が最上部の折り畳み部６８とは異なる折り畳み部、例えば折り畳み部６９に位置していると、膨張用ガスが上部連通孔５４を通って前膨張室４７に流入して同前膨張室４７を膨張させ、それよりも後に行なわれる折り畳み部６８の展開及び膨張を妨げるおそれがある。

この点、本実施形態では、上部連通孔５４が最上部の折り畳み部６８に位置していることから、同折り畳み部６８が展開する過程で、後膨張室４６内の膨張用ガスが上部連通孔５４を通って前膨張室４７に流入する。従って、上部連通孔５４が原因で折り畳み部６８の展開及び膨張が妨げられることが起こりにくい。

上記のように展開及び膨張したエアバッグ４０は、図２及び図３において二点鎖線で示すように、乗員Ｐと車内側へ進入してくる側壁部１１との間に介在して同乗員Ｐを直接車内側へ押して拘束するとともに、側壁部１１を通じて乗員Ｐに伝わる側方からの衝撃を緩和する。

なお、上部連通孔５４を通って前膨張室４７の上部に流入し、下方へ向きを変えた膨張用ガスは、排気孔５６を通じてエアバッグ４０の外部（布部４４よりも車外側）へ排出される。この膨張用ガスの排気に伴う内圧低下により、側壁部１１を通じて乗員Ｐに伝わる側方からの衝撃が緩和される。また、上記のように前膨張室４７の上部を展開及び膨張させた膨張用ガスは排気孔５６から排出されるため、この膨張用ガスが、排気孔５６よりも下方に位置する前膨張室４７の下部へ流れることが抑制される。その結果、前膨張室４７の下部が胸部ＰＴの側方で過大な圧力で展開及び膨張することが抑制される。

以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
（１）エアバッグ４０を、略上下方向に延びる区画壁５０により、同区画壁５０よりも前側の前膨張室４７と後側の後膨張室４６とに仕切り、後膨張室４６の下部にインフレータ３１を配置する。区画壁５０において乗員Ｐの頭部ＰＨの側方となる箇所に、後膨張室４６及び前膨張室４７を連通させる上部連通孔５４を設けるとともに、区画壁５０において乗員Ｐの胸部ＰＴの側方となる箇所に、後膨張室４６及び前膨張室４７を連通させる下部連通孔５５を設ける。そして、下部連通孔５５の開口面積を上部連通孔５４の開口面積よりも大きく設定している（図７）。

そのため、エアバッグ４０のうち、乗員Ｐの頭部ＰＨの側方で展開及び膨張する予定の箇所が、乗員Ｐの肩部ＰＳと車両１０の側壁部１１との狭い間隙を通過困難となる現象を抑制し、エアバッグ４０を、乗員Ｐの胸部ＰＴから頭部ＰＨにかけての部位の側方で的確に展開及び膨張させることができる。

（２）前膨張室４７において、上部連通孔５４と下部連通孔５５との間に、膨張用ガスを排出するための排気孔５６を設けている（図７）。
そのため、前膨張室４７の上部を展開及び膨張させた膨張用ガスが胸部ＰＴの側方となる部分へ流れ、同部分が過大な圧力で展開及び膨張するのを抑制することができる。

（３）エアバッグ４０が展開及び膨張を完了したときに、エアバッグ４０のうち乗員Ｐの頭部ＰＨの側方となる箇所の前端４０ａを、乗員Ｐの胸部ＰＴの側方となる箇所の前端４０ｂよりも前方に位置させている（図７）。

そのため、エアバッグ４０のうち頭部ＰＨの側方で展開及び膨張する領域を前方に広くし、エアバッグ４０によって乗員Ｐの頭部ＰＨを拘束し、衝撃から保護する性能を向上させることができる。

（４）展開及び膨張する前のエアバッグ４０には、これを上方から下方へ向けて折り畳むことにより複数の折り畳み部６６，６８，６９，７３を形成する。区画壁５０の上部連通孔５４を、エアバッグ４０においてインフレータ３１から上方へ最も離れている、最上部の折り畳み部６８に位置させている（図１７）。

そのため、最上部の折り畳み部６８が展開する過程で、後膨張室４６内の膨張用ガスを上部連通孔５４から前膨張室４７に流入させることができ、上部連通孔５４が原因で最上部の折り畳み部６８の展開及び膨張が妨げられるのを抑制することができる。

なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
・下部連通孔５５の開口面積が上部連通孔５４の開口面積と同じ大きさに設定されてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。

・排気孔５６は、円形とは異なる形状、例えばスリット状に形成されてもよい。
・リテーナ３２が用いられることなくインフレータ３１がサイドフレーム部１７に直接取付けられてもよい。

・エアバッグ４０は、その略全体が上記実施形態のように膨張するものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。

・区画壁５０は１枚の布片によって構成されてもよい。
・車両用シート１２のシートバック１４に代えて、側壁部１１に収納部２１に相当する箇所が設けられ、ここにエアバッグモジュールＡＭが組み込まれてもよい。

・エアバッグ４０において、乗員Ｐの肩部ＰＳの側方となる箇所には、膨張時における車幅方向の膨張厚みを、他の箇所の膨張厚みよりも小さくする厚み抑制部が設けられてもよい。

例えば、図１８において太い破線で示すように、エアバッグ４０の両布部４３，４４のうち乗員Ｐの肩部ＰＳ又はその近傍の側方となる箇所を互いに接触又は接近させた状態で結合する結合部（シームとも呼ばれる）８６が設けられ、この結合部８６が厚み抑制部とされてもよい。図１８では、エアバッグ４０の非膨張時に一対の布片５１が重ねられた状態の区画壁５０の一部と、その区画壁５０の近傍とにわたり結合部８６が環状に設けられているが、結合部８６が他の箇所に設けられてもよい。結合部８６の設けられた箇所では、エアバッグ４０の膨張厚みが略零になる。

また、エアバッグ４０の前端４０ｃのうち乗員Ｐの肩部ＰＳの側方又はその近傍となる箇所が、図１８において二点鎖線で示す位置に変更されることにより、エアバッグ４０の前端部であって肩部ＰＳ又はその近傍の側方となる箇所に凹部８７が設けられ、この凹部８７が厚み抑制部とされてもよい。凹部８７が設けられた箇所では、エアバッグ４０の膨張厚みが零になる。

上記したいずれの場合にも、エアバッグ４０において、乗員Ｐの肩部ＰＳ又はその近傍の側方となる箇所の車幅方向の膨張厚みは、結合部８６又は凹部８７により他の箇所の膨張厚みよりも小さくなる。そのため、エアバッグ４０において、乗員Ｐの肩部ＰＳの側方となる箇所は、その肩部ＰＳと車両１０の側壁部１１との間の間隙の狭い箇所であっても引っ掛かることなく展開及び膨張しやすく、エアバッグ４０の展開及び膨張がより円滑に行なわれる。

・上記サイドエアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
その他、前記各実施形態から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに記載する。

（Ａ）請求項３に記載のサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグは、車内側の布部と車外側の布部とを重ね合わせ、それらを周縁部で結合させることにより形成されており、
前記厚み抑制部は、前記両布部のうち乗員の肩部又はその近傍の側方となる箇所を、互いに接触又は接近させた状態で結合する結合部により構成されている。

上記の構成によれば、結合部を設けることで、エアバッグにおいて乗員の肩部の側方となる箇所の膨張厚みを略零にすることができ、請求項３に記載された効果を得ることができる。

（Ｂ）請求項３に記載のサイドエアバッグ装置において、前記厚み抑制部は、前記エアバッグの前端部に設けられ、前端縁から後方へ凹む凹部により構成されている。
上記の構成によれば、凹部を設けることで、エアバッグにおいて乗員の肩部の側方となる箇所の膨張厚みを零にすることができ、請求項３に記載された効果を得ることができる。

１０…車両、１１…側壁部、１２…車両用シート、３１…インフレータ、４０…エアバッグ、４０ａ，４０ｂ…前端、４６…後膨張室、４７…前膨張室、５０…区画壁、５４…上部連通孔、５５…下部連通孔、５６…排気孔、６６，６８，６９，７２，７３…折り畳み部、８６…結合部（厚み抑制部）、８７…凹部（厚み抑制部）、Ｐ…乗員、ＰＨ…頭部、ＰＳ…肩部、ＰＴ…胸部。

Claims (5)

1. 車両側方からの衝撃に応じ膨張用ガスを噴出するインフレータと、折り畳まれた状態で収納され、前記インフレータからの膨張用ガスにより、車両用シートに着座している乗員の胸部から頭部にかけての部位と車両の側壁部との間で展開及び膨張するエアバッグとを備えるサイドエアバッグ装置において、
   前記エアバッグは、略上下方向に延びる区画壁により、同区画壁よりも前側の前膨張室と後側の後膨張室とに仕切られており、
   前記インフレータは前記後膨張室内の下部に配置され、
   前記区画壁において前記乗員の頭部の側方となる箇所には、前記後膨張室及び前記前膨張室を連通させる上部連通孔が設けられ、
   前記区画壁において前記乗員の胸部の側方となる箇所には、前記後膨張室及び前記前膨張室を連通させる下部連通孔が設けられ、
   前記下部連通孔の開口面積が前記上部連通孔の開口面積以上の大きさに設定されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
2. 前記前膨張室の前記上部連通孔と前記下部連通孔との間には、前記膨張用ガスを排出するための排気孔が設けられている請求項１に記載のサイドエアバッグ装置。
3. 前記エアバッグにおいて、前記乗員の肩部の側方となる箇所には、膨張時における車幅方向の膨張厚みを、他の箇所の膨張厚みよりも小さくする厚み抑制部が設けられている請求項１又は２に記載のサイドエアバッグ装置。
4. 前記エアバッグが展開及び膨張を完了したとき、前記エアバッグのうち前記乗員の頭部の側方となる箇所の前端は、前記乗員の胸部の側方となる箇所の前端よりも前方に位置する請求項１〜３のいずれか１つに記載のサイドエアバッグ装置。
5. 前記エアバッグには、これを上方から下方へ向けて折り畳むことにより複数の折り畳み部が形成されており、
   前記区画壁の前記上部連通孔は、最上部の折り畳み部に位置している請求項１〜４のいずれか１つに記載のサイドエアバッグ装置。