(第1実施形態)
以下、車両用シートのシートバックに具体化した第1実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、車両の幅方向(車幅方向)についての中央部を基準とし、その中央部に近づく側を「車内側」とし、中央部から遠ざかる側を「車外側」とする。また、車両用シートには、乗員として、標準的な体格を有する大人が、予め定められた姿勢(正規の姿勢)で着座しているものとする。
図1〜図3に示すように、車両10においてボディサイド部11の車内側の近傍には、乗物用シートとして車両用シート12が配置されている。ここで、ボディサイド部11とは、車両10の側部に配置された車両構成部材を指し、主としてドア、ピラー等がこれに該当する。例えば、前席に対応するボディサイド部11は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、後席に対応するボディサイド部11は、サイドドア(リヤドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リヤクォータ等である。
車両用シート12は、シートクッション13と、そのシートクッション13の後側から起立し、かつ傾斜角度を調整可能に構成されたシートバック14とを備えている。車両用シート12は、シートバック14が車両10の前方を向く姿勢で車室内に配置されている。このように配置された車両用シート12の幅方向は、車幅方向と合致する。
図1及び図4に示すように、シートバック14の一部は、ウレタンフォーム等の弾性材からなる軟質のシートパッド部15によって構成されている。シートパッド部15の車外側の側部の一部は刳り貫かれており、この刳り貫かれた箇所は、シートパッド部15の車外側の側面において開口する収納部16となっている。この収納部16には、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMが組み込まれている。シートパッド部15の外側には表皮25が被されており、この表皮25によって収納部16が覆い隠されている。表皮25の収納部16に近接した箇所には、後述するエアバッグ本体41の膨張時に破断しやすくするために、表皮25の端部相互を縫合糸で縫合してなる縫目(図示略)が形成されている。なお、図4では、表皮25の図示が省略されている。
エアバッグモジュールAMは、ガス発生器30及びエアバッグ40を主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
<ガス発生器30>
図4及び図7(a)に示すように、ガス発生器30の主要部はインフレータ31によって構成されている。インフレータ31は略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ31は、一端部(図7(a)では上端部)にガス噴出部31aを有している。また、インフレータ31の他端部(図7(a)では下端部)には、そのインフレータ31への作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
上記のようにガス発生剤を用いたインフレータ31は、一般に「パイロタイプ」と呼ばれる。なお、インフレータ31としては、こうしたパイロタイプに代えて、高圧の膨張用ガスの充填されたボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
インフレータ31の外周面であって、そのインフレータ31の軸線に沿う方向に互いに離間した複数箇所(第1実施形態では2箇所)には、ボルト32が同軸線に直交する方向へ突設されている(図8(b)参照)。そして、インフレータ31及び両ボルト32によってガス発生器30が構成されている。なお、ボルト32は、インフレータ31に間接的に固定されてもよい。例えば、図15に示すようにインフレータ31の外側に筒状のリテーナ34が装着され、このリテーナ34にボルト32が固定されてもよい。この場合には、インフレータ31、ボルト32及びリテーナ34によってガス発生器30が構成される。
図1及び図2に示すように、エアバッグ40は、その外殻部分を構成するエアバッグ本体41と、エアバッグ本体41内に設けられた縦区画部61とを備えている。
<エアバッグ本体41>
図1の二点鎖線は、エアバッグ本体41が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態(以下「非膨張展開状態」という)を示している。また、図7(a)は、エアバッグモジュールAMの内部構造を示すべく、非膨張展開状態のエアバッグ本体41が車幅方向の中央部分で切断されたエアバッグモジュールAMを、車両用シート12及び乗員Pとともに示している。また、図5はエアバッグ40を構成するエアバッグ本体41及び縦区画部61をそれぞれ展開させた状態で示している。
図7(a)及び図5に示すように、エアバッグ本体41は、1枚の布片(基布、パネル布等とも呼ばれる)を、折り線42に沿って前方へ二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ本体41の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを本体布部43といい、車外側に位置するものを本体布部44というものとする。
なお、第1実施形態では、折り線42がエアバッグ本体41の後端部に位置するように布片が二つ折りされているが、折り線42がエアバッグ本体41の他の端部、例えば前端部、上端部、下端部等に位置するように布片が二つ折りされてもよい。また、エアバッグ本体41は、折り線42に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。この場合には、エアバッグ本体41は、2枚の布片を車幅方向に重ね合わせ、両布片の周縁部を結合させることにより形成される。さらに、エアバッグ本体41は3枚以上の布片からなるものであってもよい。
エアバッグ本体41においては、両本体布部43,44の外形形状が、折り線42を対称軸として互いに線対称の関係にある。ここで、車両用シート12に着座している乗員Pの上半身のうち、肩部PSからその下側の胸部PTにかけての領域を、エアバッグ本体41によって保護される保護領域Zとする。また、保護領域Zのうち、胸部PTの前部を前保護領域ZFとし、胸部PTの後部及び肩部PSを後保護領域ZRとする。各本体布部43,44の形状及び大きさは、保護領域Zの側方部分を占有し得る形状及び大きさに設定されている。
両本体布部43,44としては、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
両本体布部43,44の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部45によってなされている。第1実施形態では、周縁結合部45は両本体布部43,44の周縁部のうち、後端部(折り線42の近傍部分)等を除く部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。このように、結合が縫製による点は、後述する縦結合部63、横結合部73及び囲み結合部82,83についても同様である。
上記縫製に関し、図5、図7(a)、図8(a)、図9(a),(c)及び図10では、3つの線種によって縫製部分が表現されている。第2実施形態の説明に用いられる図14についても同様である。1つ目の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線であり、これは、縫糸を側方から見た状態を示している(図8(a)における周縁結合部45等参照)。2番目の線種は、一定長さ(一般的な破線よりも長い長さ)の細線を断続的に並べて表現した線であり、これは、例えば布片の奥に位置していて直接は見えない(隠れている)縫糸の状態を示している(図7(a)における横結合部73等参照)。3番目の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線であり、これは、縫製部分を通る断面に沿った縫糸の断面を示している(図7(a)における周縁結合部45等参照)。
なお、周縁結合部45は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、後述する縦結合部63、横結合部73及び囲み結合部82,83についても同様である。
図7(a)に示すように、両本体布部43,44の間であって、周縁結合部45によって囲まれた空間は膨張部46となっている。膨張部46は、膨張用ガスによって乗員Pの上記保護領域Zの側方において、上下方向及び前後方向について、上記収納部16よりも大きな寸法で展開及び膨張することにより、同保護領域Zにおいて乗員Pを拘束して衝撃から保護するためのものである。
図7(a)及び図8(a)に示すように、二つ折りされたエアバッグ本体41の後端部であって上下方向についての中間部分には、折り線42に直交する方向へ延びるスリット47が形成されている(図5参照)。両本体布部43,44においてスリット47よりも下側の部分は、他の部分の内側へ折り曲げた状態で入り込ませられた内折り部48となっている。内折り部48の下端部は、周縁結合部45によって両本体布部43,44の他の部分に対し、共縫いにより結合されている。また、内折り部48の形成に伴い、スリット47が開かれて、ガス発生器30の挿入口49が形成されている。
また、図5に示すように、本体布部43であって上記スリット47の上方となる複数箇所(2箇所)には、上記ガス発生器30のボルト32(図8(b)参照)を挿通させるためのボルト孔51があけられている。
膨張部46の内部は、縦区画部61により2つに区画されている。縦区画部61は、一般的にテザーと呼ばれるものと同様の構成を有している。
<縦区画部61>
図7(a)に示すように、エアバッグ本体41が非膨張展開状態にされているときには、縦区画部61は、両本体布部43,44間において、略上下方向に延びる折り線62に沿って二つ折りされている。二つ折り状態の縦区画部61の上端部及び下端部は、上述した周縁結合部45によって両本体布部43,44に対し、共縫いにより結合されている。図5に示すように、縦区画部61は、展開させられた状態では、車幅方向の寸法が上下方向の寸法よりも長くなる縦長の形状を有している。
そして、図7(a)及び図10に示すように、縦区画部61は、車幅方向についての両側の周縁部に沿って設けられた縦結合部63によって、本体布部43,44において、保護領域Zの前後方向についての中間部となる箇所に結合されている。縦区画部61は、上記の結合により、両本体布部43,44間に架け渡されている。膨張部46において、縦区画部61よりも後側の部分は、乗員Pの後保護領域ZRの側方で展開及び膨張する後膨張部64を構成している。また、膨張部46において、縦区画部61よりも前側の部分は、乗員Pの前保護領域ZFの側方で展開及び膨張する前膨張部65を構成している。
縦区画部61は、エアバッグ本体41の上述した本体布部43,44と同様の素材からなり、かつ上下方向に並べられた2つの布片66,67によって構成されている。
図7(a),(b)及び図10に示すように、布片66の下側の端部68と、布片67の上側の端部69とは重ね合わされている。両布片66,67は、それぞれ帯状をなす一対の重ね合わせ部71と、それ以外の箇所(以下「非重ね合わせ部72」という)との境界部分において、車幅方向へ延びる横結合部73によって結合されている。なお、布片66,67の少なくとも一方は、折り線62に沿って2枚に分割されたものによって構成されてもよい。
さらに、縦区画部61において、車幅方向についての略中央部分には、連通部74及び調圧弁75が設けられている。詳しくは、縦区画部61における横結合部73は、車幅方向についての略中央部分において結合を解除されている。このように、横結合部73による結合を解除された箇所は、車幅方向に延びて、後膨張部64と前膨張部65とを連通させるスリット状の連通部74を構成している。
調圧弁75は、連通部74での膨張用ガスの流通を制御することで、後膨張部64及び前膨張部65の各内圧を調整する弁である。端部68のうち、車幅方向について連通部74に対応する箇所によって調圧弁75の弁体部76が構成され、端部69のうち車幅方向について連通部74に対応する箇所によって調圧弁75の弁体部77が構成されている。
両弁体部76,77が、それらの少なくとも一部、例えば先端部76t,77tにおいて互いに接触することで、両弁体部76,77間での膨張用ガスの流通が規制される(図11(a),(b)参照)。このときの調圧弁75の動作態様を「閉弁」という。また、連通部74が開かれ、かつ弁体部76の全体が弁体部77の全体から離間することで、両弁体部76,77間での膨張用ガスの流通が可能となる(図11(c)参照)。このときの調圧弁75の動作態様を「開弁」という。
そして、両重ね合わせ部71は非重ね合わせ部72との境界部分において、上方又は下方(第1実施形態では下方)へ折り曲げられて、下側の非重ね合わせ部72に重ねられている。さらに、折り曲げられた帯状の両重ね合わせ部71は、車幅方向についての両端部において、前述した縦結合部63により、エアバッグ本体41の対応する本体布部43,44及び非重ね合わせ部72に対し、共縫いにより結合されている。
さらに、図7(a)及び図8(a)に示すように、前膨張部65には、膨張用ガスを排出するための排気孔(ベントホールとも呼ばれる)81が設けられている。より詳しくは、周縁結合部45では、前膨張部65の前下端部において本体布部43,44の結合が解除されており、この解除により周縁結合部45には、互いに離間した一対の端末部45a,45bが形成されている。エアバッグ本体41には、端末部45aを囲んだ状態で両本体布部43,44を結合する囲み結合部82が設けられるとともに、端末部45bを囲んだ状態で両本体布部43,44を結合する囲み結合部83が設けられている。両本体布部43,44間であって両囲み結合部82,83によって挟まれた箇所は、両本体布部43,44の周縁部同士を結合する機能を有していない。この箇所は、前膨張部65の内部と外部とを連通させて、その前膨張部65内の膨張用ガスを外部へ排出させるための排気孔81を構成している。
そして、図7(a)に示すように、インフレータ31が略上下方向へ延びる姿勢にされたうえで、同インフレータ31の下部を除く多くの部分が、挿入口49を通じてエアバッグ本体41内に挿入されている。さらに、ボルト32がエアバッグ本体41のボルト孔51(図5参照)に挿通されることにより、ガス発生器30がエアバッグ本体41に対し位置決めされた状態で係止されている。
ところで、図4及び図6に示すように、シートパッド部15において、収納部16の上下方向について同収納部16から遠ざかる側に隣接した箇所には、上下方向展開促進部が設けられている。上下方向展開促進部は、シートパッド部15の上記箇所を前方よりも上下方向へ変形しやすくすることにより、エアバッグ40の上下方向への展開を促進するためのものである。第1実施形態では、上下方向展開促進部は、収納部16の上壁面17の前端から上方へ延びる上スリット21と、収納部16の下壁面18の前端から下方へ延びる下スリット22とによって構成されている。なお、特許文献1とは異なり、収納部16から前方へ延びるスリットは設けられていない。
エアバッグモジュールAMは、非膨張展開状態のエアバッグ本体41(図7(a)参照)が図8及び図9に示すように折り畳まれることにより、図4に示すコンパクトな形態(以下「収納用形態」という)にされている。これは、エアバッグモジュールAMを、シートバック14における限られた大きさの収納部16に対し、収納に適したものとするためである。この収納用形態は、非膨張展開状態のエアバッグ本体41に対し、第1の折り及び第2の折りが順に行なわれることにより得られる。次に、各折りについて説明する。
<第1の折り>
第1の折りは、非膨張展開状態のエアバッグ本体41のうちインフレータ31よりも前側(図8(a),(b)の右側)の部分を前方から後方へ向けて折り畳む折り態様である。
この第1の折りに際しては、図8(a)に示すように、インフレータ31に対し平行な状態で上下方向に延びる複数本の折り線85が設定される。そして、エアバッグ本体41が、図8(a),(b)に示すように、各折り線85に沿って同一方向に繰り返し折り畳むロール折りにより、前側から後側へ向けて折り畳まれる。この折り畳みにより、エアバッグ本体41は、図9(a),(b)に示すように前後方向の寸法が小さな縦長の形態になる。
次に、エアバッグ本体41において、インフレータ31から前方へ所定距離離れた箇所に、折り線42に対し平行に折り線86が設定される。上記のようにロール折りされて塊となった部分が、図9(a),(b)において矢印で示すように折り線86に沿って車外側へ折り返される。この折り返しにより、エアバッグ本体41は、図9(c),(d)に示すように、前後方向の寸法がさらに小さくなって、上下方向に細長い形態(以下「中間形態」という)になる。
<第2の折り>
第2の折りに際しては、上記中間形態のエアバッグ本体41の上下方向に互いに離間した2箇所に、ともに車幅方向に延びる折り線87,88が設定される。そして、中間形態のエアバッグ本体41の折り線87よりも上側の部分41uが、折り線87を支点として前下方へ折り返されるとともに、折り線88よりも下側の部分41lが、折り線88を支点として前上方へ折り返される。これらの折り返しにより、上記部分41u,41lがインフレータ31の前側に重ねられて、エアバッグ本体41が、図4に示す収納用形態にされる。
このように、エアバッグ本体41が折り畳まれて収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、上下方向にも前後方向にも小さくなっており、シートバック14の狭い収納部16に対しても収納に適したものとなる。
上記エアバッグモジュールAMでは、インフレータ31から延びてエアバッグ本体41のボルト孔51に挿通されたボルト32が、シートバック14内に配置されたシートフレーム(図示略)に挿通され、その挿通状態のボルト32にナット(図示略)が締付けられている。この締付けにより、ガス発生器30がエアバッグ本体41と一緒にシートフレームに取付けられている。
なお、インフレータ31は、上述したボルト32及びナットとは異なる部材によってシートフレームに取付けられてもよい。
サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに、図1に示す衝撃センサ91及び制御装置92を備えている。衝撃センサ91は加速度センサ等からなり、ボディサイド部11に側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置92は、衝撃センサ91の検出信号に基づきインフレータ31の作動を制御する。
さらに、車室内には、車両用シート12に着座している乗員Pをその車両用シート12に拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、図1等ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について、サイドエアバッグ装置の代表的な動作の態様(モード)を中心に説明する。
図11(a)〜(c)は、調圧弁75及び縦区画部61の形態が、膨張用ガスの供給開始後、時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については省略及び簡略化されている。また、図12(a)〜(c)は、膨張用ガスの供給されたエアバッグ本体41が展開及び膨張する様子を示している。同図12(a)〜(c)中の二点鎖線は、エアバッグ本体41が展開を完了したときの外形形状を示している。
ボディサイド部11に対し側方から衝撃が加わったことが衝撃センサ91によって検出されないときには、制御装置92からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力されず、膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ本体41は、収納用形態で収納部16に収納され続ける(図4)。
ここで、シートパッド部15において収納部16の上下方向について同収納部16から遠ざかる側に隣接した箇所は、上スリット21及び下スリット22により、上下方向よりも前方に変形しにくい。そのため、車両10への乗降時に、乗員Pにより収納部16の付近でシートバック14が掴まれて外側方へ押されても、収納部16から前方へ延びるスリットが設けられた特許文献1とは異なり、上記箇所が前方へ回転しながら変形することが起こりにくい。
これに対し、車両10の走行中等に、側突等によりボディサイド部11に所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ91によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置92からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。この作動信号に応じて、インフレータ31から膨張用ガスが噴出される。膨張用ガスが、収納用形態のエアバッグ本体41の後膨張部64に供給されることで、同後膨張部64が展開及び膨張を開始する。
また、二つ折り状態の縦区画部61が、展開及び膨張する後膨張部64によって、車幅方向に引っ張られる。図11(a)に示すように、調圧弁75の両弁体部76,77に対しては、その重なり方向(厚み方向)から内圧PIが加わる。両弁体部76,77は、この内圧PIにより面全体で互いに密着し、両弁体部76,77間での膨張用ガスの流通を規制する自己シール状態となる。さらに、折り曲げられて下側の非重ね合わせ部72に重ねられた重ね合わせ部71が、内圧によりその非重ね合わせ部72に押付けられ(図10参照)、両弁体部76,77が一層閉じられやすくなる。
ここで、縦区画部61が、車幅方向よりも上下方向に長く形成されている(図5参照)ことから、縦区画部61では、車幅方向に対し、上下方向に対するよりも強いテンションが掛かりやすい。連通部74は、この強いテンションの掛かりやすい車幅方向に延びているため、閉じられやすい。
さらに、後膨張部64が展開及び膨張したときには、非重ね合わせ部72に対するだけでなく、重ね合わせ部71に対しても車幅方向に強いテンションが掛かる。これは、重ね合わせ部71の車幅方向についての両端部が本体布部43,44に結合されているからである。
両弁体部76,77が、それらの少なくとも一部において互いに接触すると、調圧弁75が実質的に閉弁した状態となる。後膨張部64内の膨張用ガスは、両弁体部76,77間及び連通部74を通って前膨張部65へ流出することを規制される。この規制により、後膨張部64に膨張用ガスが溜まり、専ら後膨張部64の内圧が上昇する。
第1実施形態では、膨張部46が縦区画部61によって2つに区画されていて、その一方が後膨張部64とされていることから、後膨張部64の容積は、膨張部46が縦区画部61により区画されていない場合の容積よりも小さい。そのため、後膨張部64の内圧は、縦区画部61により区画されていない場合よりも早く上昇を開始し、しかも高くなる。このとき、前膨張部65は膨張しておらず、排気孔81は閉じ続ける。
上記内圧の上昇により、後膨張部64が折り畳まれた順とは逆の順に、すなわち、第2の折り及び第1の折りの順に、折り状態を解消(展開)しながら膨張していく。これは、エアバッグ本体41において後から折り畳まれた部分が、先に折り畳まれた部分の折り状態の解消を規制するからである。
上記展開は、膨張部46が収納部16に比べ上下方向及び前後方向に大きな寸法となるように行われる。そのため、シートパッド部15において収納部16の前方に隣接した箇所には、ここを前方へ変形させようとする力が加わる。また、シートパッド部15において収納部16の上下方向について収納部16から遠ざかる側に隣接した箇所には、これらを上下方向へ変形させようとする力が加わる。
この点、第1実施形態では、シートパッド部15において、収納部16の上下方向について同収納部16から遠ざかる側に隣接した箇所が、上スリット21及び下スリット22により、前方よりも上下方向へ変形しやすくされている。
すなわち、シートパッド部15にスリットが入れられた場合、その周囲の部分は、スリットに直交する方向に対するよりもスリットに沿う方向へ変形しやすい。そのため、シートパッド部15において、収納部16の上側に隣接した箇所は、収納部16の上壁面17から上方へ延びる上スリット21により、前方よりも上方へ変形しやすくなる。また、シートパッド部15において、収納部16の下側に隣接した箇所は、収納部16の下壁面18から下方へ延びる下スリット22により、前方よりも下方へ変形しやすくなる。そのため、収納部16内のエアバッグ40は、収納部16からスリットが前方へ延びる特許文献1に比べ、上下方向へスムーズに展開する。
ここで、収納用形態のエアバッグ本体41は、収納部16から出て前方及び上下方向へ展開及び膨張し、乗員Pを拘束するとともに、乗員Pに伝わる側方からの衝撃を緩和する。より早期に乗員Pを拘束して衝撃を緩和するうえでは、シートパッド部15において、収納部16の上下方向について同収納部16から遠ざかる側に隣接した箇所をより前側の位置で、前方よりも上下方向へ変形しやすくすることが望ましい。
この点、上スリット21及び下スリット22が、上記の条件を満たす領域(前端)に設けられている第1実施形態では、上記箇所がより前側の位置で、前方よりも上下方向へ変形しやすくなり、展開及び膨張したエアバッグ本体41による乗員拘束及び衝撃緩和がより早期に行なわれる。
シートパッド部15の外側に被せられて、収納部16を覆い隠している表皮25が、上記のように展開及び膨張する後膨張部64によって押圧されて、縫製部分等において破断されると、後膨張部64は、一部を収納部16に残した状態で、破断された箇所を通じてシートバック14から前方へ飛び出す。
ここで、第2の折りの解消に際しては、図4において二点鎖線で示すように、収納用形態のエアバッグ本体41において前下方へ折り返された部分41uが折り線87を支点として前上方へ回動するとともに、前上方へ折り返された部分41lが折り線88を支点として前下方へ回動する。この際、上述したように、シートパッド部15において、収納部16の上下方向について同収納部16から遠ざかる側に隣接した箇所が上下方向へ変形しやすくされているため、収納部16内のエアバッグ本体41は、図12(a)〜(c)に示すように上下方向へスムーズに展開する。
図2及び図7(a)に示すように、その後も膨張用ガスの供給される後膨張部64は、乗員Pの後保護領域ZRとボディサイド部11との間の隙間を前方へ向けて展開及び膨張する。このときには、調圧弁75の弁体部76,77間を通って前膨張部65に流入する膨張用ガスはわずかであり、同前膨張部65の内圧が低い。ただし、前膨張部65が膨張することなく展開する(折りがほどける)ことは起り得る。後膨張部64が展開及び膨張する際の前方への動きが前膨張部65に伝わるからである。
なお、図10に示すように、車幅方向についての両側に引っ張られた縦区画部61は緊張した状態となって、後膨張部64の同方向の膨張厚みを規制する。
ボディサイド部11がさらに車内側へ進入することで、乗員Pの後保護領域ZRが後膨張部64によって車内側へ押圧され始める。両弁体部76,77がそれらの面全体で密着した(実質的に閉じられた)状態で、後膨張部64内に膨張用ガスが供給され続ける一方、ボディサイド部11から加わる外力により、調圧弁75が開弁し始める。
すなわち、後膨張部64への膨張用ガスの供給期間の途中からは、乗員Pの拘束に伴う外力が加わって膨張部46が変形する。これに伴い、縦区画部61に対し車幅方向に強く掛かっていたテンションが減少する。
また、膨張部46の上記変形に伴い後膨張部64の内圧PIがさらに上昇して、縦区画部61が前膨張部65側へ押圧されて(図11(b)参照)、同縦区画部61に掛かるテンションが変化し、上下方向及び車幅方向のテンションの差が小さくなる。連通部74の変形が許容され、弁体部76,77の作動が許容されるようになる。
一方、重ね合わせ部71は下側の非重ね合わせ部72に重ねられ、車幅方向についての両端部において、縦結合部63によって本体布部43,44に結合されている。そのため、重ね合わせ部71において縦結合部63に近い部分では、重ね合わされた状態を維持しようとする力が強い。しかし、この力は、縦結合部63から遠ざかるに従い小さくなり、車幅方向についての中央部分、すなわち両弁体部76,77において最小となる。そのため、上下方向へ引っ張られた重ね合わせ部71は、弁体部76,77及びその近傍部分においてのみ同方向へ変形する。
連通部74が上下方向へある程度開くと、重ね合わせ部71では、図11(b)に示すように、後膨張部64の高い内圧PIを受けた両弁体部76,77においてのみ、連通部74を通って前膨張部65へ押し出される(反転される)。この連通部74の上下方向の幅W1が狭いときには、先端部76t,77t同士が接触し合い、調圧弁75が閉じ続ける。
そして、連通部74の幅W1の増大により、図11(c)に示すように、先端部76t,77tが離れ、調圧弁75が開弁すると、上記流通規制が解除される。後膨張部64内の膨張用ガスは、連通部74と両弁体部76,77間とを順に通って前膨張部65へ流出することを許容される。
上記膨張用ガスの流出により、後膨張部64の内圧が上昇から低下に転ずる。ただし、ボディサイド部11は車内側へ依然として進入し続けていて、後膨張部64が乗員Pの後保護領域ZRに押付けられる。
また、膨張用ガスの流入により前膨張部65が膨張を開始するとともに、同前膨張部65の内圧が上昇し始める。前膨張部65が折り畳まれた順とは逆の順に折り状態を解消(展開)しようとする。このときには、前膨張部65は、上記後膨張部64よりも低い内圧で、耐衝撃性が乗員Pの上半身のうち他の箇所よりも低い前保護領域ZFの側方で展開及び膨張する。
そして、前膨張部65の内圧の上昇開始から少し遅れて、車内側へ進入するボディサイド部11により、後膨張部64に加え、前膨張部65が乗員Pの前保護領域ZFに押し付けられ始める。後膨張部64による後保護領域ZRの拘束に加え、前保護領域ZFが前膨張部65によって拘束され始める。
このように、後膨張部64及び前膨張部65がそれぞれ展開及び膨張したエアバッグ本体41が、乗員Pの保護領域Zと、車内側へ進入してくるボディサイド部11との間に介在する。このエアバッグ本体41によって、保護領域Zにおいて乗員Pが車内側へ押圧されて拘束される。そして、ボディサイド部11を通じて保護領域Zに伝わる側方からの衝撃が膨張部46によって緩和されて、乗員Pが保護される。
なお、前膨張部65内の余剰の膨張用ガスは排気孔81から排出される。この排出により、前膨張部65の内圧が低下し、乗員Pの前保護領域ZFが前膨張部65によって適切な押圧力で拘束される。
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)シートパッド部15において、収納部16の上下方向について同収納部16から遠ざかる側に隣接した箇所には、同箇所を前方よりも上下方向へ変形しやすくすることにより、エアバッグ本体41の上下方向への展開を促進する上下方向展開促進部を設けている(図1、図4)。
そのため、収納部16内のエアバッグ本体41を上下方向へスムーズに展開させることで、同方向についてのエアバッグ本体41の展開性能のさらなる向上を図ることができる。また、車両10への乗降時に、乗員Pにより収納部16の付近でシートバック14が掴まれて外側方へ押されても、シートパッド部15の上記箇所が前方へ回転しながら変形するのを抑制することができる。
(2)上下方向展開促進部として、収納部16の上壁面17から上方へ延びる上スリット21と、収納部16の下壁面18から下方へ延びる下スリット22とを設けている(図4、図6)。
そのため、シートパッド部15において、収納部16の上側に隣接した箇所を、上スリット21により、前方よりも上方へ変形しやすくすることができる。また、シートパッド部15において、収納部16の下側に隣接した箇所を、下スリット22により、前方よりも下方へ変形しやすくすることができる。
(3)上スリット21及び下スリット22を、収納部16の前端に設けている(図4、図6)。
そのため、シートパッド部15において、収納部16の上下方向について同収納部16から遠ざかる側に隣接した箇所を、採り得る最も前側の位置で、前方よりも上下方向へ変形しやすくし、展開及び膨張したエアバッグ本体41による乗員拘束及び衝撃緩和をより早期に行なうことができる。
(4)非膨張展開状態のエアバッグ本体41に対し、前方から後方に向けて折り畳む第1の折りを行ない、第1の折りを経たエアバッグ本体41の上部(部分41u)を下方へ折り返すとともに、下部(部分41l)を上方へ折り返す第2の折りを行なうことにより、エアバッグ本体41を収納用形態にしている(図8、図9)。
そのため、第2の折りの解消に際し、収納用形態のエアバッグ本体41において下方へ折り返された部分41uを上方へスムーズに回動させ、かつ上方へ折り返された部分41lを下方へスムーズに回動させることができる。
(第2実施形態)
次に、車両用シートのシートバックに具体化した第2実施形態について、図13〜図21を参照して説明する。
図14は、エアバッグ本体41が非膨張展開状態にされたエアバッグモジュールAMを示している。この図14では、エアバッグ40の内部の一部を図示するために、車外側の本体布部44の一部が破断された状態で図示されている。
図13及び図14に示すように、第2実施形態では、エアバッグ本体41内に、膨張部46を区画する縦区画部61が設けられていない。また、第2実施形態では、乗員Pの上半身のうち胸部PTが保護領域Zとされている。各本体布部43,44は、保護領域Zの側方部分を専有し得る形状及び大きさに形成されている。
上記エアバッグ本体41は、本体布部43,44が裏返された状態で、すなわち、両本体布部43,44において周縁結合部45よりも外側の部分を露出させない状態で使用されている。
エアバッグモジュールAMは、非膨張展開状態のエアバッグ本体41(図14参照)が図17〜図21に示すように折り畳まれることにより、図15及び図16に示す収納用形態にされている。この収納用形態は、非膨張展開状態のエアバッグ本体41に対し、第1の折り及び第2の折りが順に行なわれることにより得られる。この点で、第2実施形態は第1実施形態と共通している。但し、第2実施形態では、第1実施形態とは異なる態様で第1の折りが行われている。次に、各折りについて説明する。
<第1の折り>
第1の折りに際しては、図17(a),(b)に示すように、非膨張展開状態のエアバッグ本体41のうちインフレータ31の付近の部分(以下「後部53」という)を除く部分(以下「前部52」という)に対し、谷折り用の複数本の折り線54aと、山折り用の複数本の折り線54bとが交互に設定される。これらの折り線54a,54bは、インフレータ31に対し平行な状態で上下方向に延びるように設定される。
また、図18(b)に示すように、エアバッグ本体41における周縁部の上部(以下「上周縁部55」という)付近の複数箇所に、車幅方向に延び、かつ折り線54a,54bに繋がった状態の折り線56が設定される。同様に、エアバッグ本体41における周縁部の下部(以下「下周縁部57」という)付近の複数箇所に、車幅方向に延び、かつ折り線54a,54bに繋がった状態の折り線58が設定される。
そして、同図18(b)において矢印で示すように、上周縁部55の付近の複数箇所が、エアバッグ本体41の内側(下側)に押し込まれることで、折り線56に沿って谷折りされる。また、下周縁部57の付近の複数箇所が、エアバッグ本体41の内側(上側)に押し込まれることで、折り線58に沿って谷折りされる。これらの谷折りとともに、本体布部43,44が図17(b)の折り線54aに沿って谷折りされるとともに、折り線54bに沿って山折りされる(図18(a)参照)。これらの折りにより、エアバッグ本体41は図19(a),(b)に示すように、前後方向の寸法が小さな形態になる。
次に、図20(a)に示すように、上記エアバッグ本体41の上記後部53(図17(b)参照)に対し、互いに平行な状態で上下方向へ延びる一対の折り線59が設定される。エアバッグ本体41の後部53が各折り線59に沿って互いに反対方向に折り返される。この折り返しにより、エアバッグ本体41は、図20(a),(b)に示すように、前後方向の寸法がさらに小さくなって、上下方向に細長い中間形態になる。
<第2の折り>
第2の折りに際しては、上記中間形態のエアバッグ本体41の部分41uが、前後方向へ延びる折り線87を支点として外下方へ折り返されるとともに、部分41lが、前後方向へ延びる折り線88を支点として外上方へ折り返される。これらの折り返しによりエアバッグ本体41が、図21(a),(b)に示すように、前後方向にも上下方向にも寸法の小さな収納用形態にされる。
上記のように収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、図15及び図16に示すように、シートパッド部15の側部の収納部16内に組込まれている。すなわち、インフレータ31から延びてエアバッグ本体41のボルト孔51に挿通されたボルト32が、シートパッド部15内に配置されたシートフレーム19に挿通され、その挿通状態のボルト32にナット33が締付けられている。この締付けにより、ガス発生器30がエアバッグ本体41と一緒にシートフレーム19に取付けられている。なお、図15中の34は、インフレータ31の外側に装着されたリテーナである。このリテーナ34は、図17〜図21の各(a)では図示が省略されている。
収納部16の上壁面17の前端からは上方へ向けて上スリット21が延びている。また、収納部16の下壁面18の前端からは下方へ向けて下スリット22が延びている。
図15に示すように、シートパッド部15の外側には表皮25が被されており、この表皮25によって収納部16が覆い隠されている。表皮25において収納部16の開口に面した箇所には、表皮25の端部相互を縫糸26で縫合してなる縫目27が形成されている。この縫目27は、エアバッグ本体41が展開及び膨張する過程で収納部16から出る際に破断される箇所となる。なお、図16では上記表皮25の図示が省略されている。
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
このように、第2実施形態では、第1の折りの態様が第1実施形態と異なっているものの、収納用形態にされたエアバッグ本体41が組込まれた収納部16に、上スリット21及び下スリット22が設けられている点で第1実施形態と共通している。
そのため、第2実施形態のシートバック14では、第1実施形態と同様の作用が行われ、上記(1)〜(4)と同様の効果が得られる。そのほかにも、第1の折りの折り態様を変更したことにより、インフレータ31から膨張用ガスが噴出されると、その膨張用ガスは途中の折目に邪魔されることなくエアバッグ本体41の前縁に作用する。そのため、瞬時に前縁側が前方に突出し、エアバッグ本体41が膨張を完了までに要する時間が短くなる。
なお、上記各実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<エアバッグ本体41について>
・図9(c)に示す中間形態のエアバッグ本体41は、非膨張展開状態のエアバッグ本体41に対し、上記ロール折りに代えて蛇腹折りがなされることによって形成されてもよい。蛇腹折りは、各折り線85に沿って、折り返す方向を交互に変えながら前方から後方へ向けて折り畳む折り態様である。
また、中間形態のエアバッグ本体41は、非膨張展開状態のエアバッグ本体41に対し、ロール折り及び蛇腹折りの両方が行なわれることによって形成されてもよい。
ロール折りされたエアバッグ本体41は、障害物に展開を阻害され難く狭い部分に入り込み易い。そのため、乗員Pとボディサイド部11との狭い隙間にエアバッグ本体41を速やかに入り込ませることが可能である。
これに対し、蛇腹折りされたエアバッグ本体41は、折りがほどけ易く展開しやすい。そのため、エアバッグ本体41を前方へ速やかに押し出すことができる。
<膨張部46について>
・エアバッグ本体41は、その略全体が上記両実施形態のように膨張部46からなるものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
<縦区画部61について>
・重ね合わせ部71において、両弁体部76,77として機能するのは、車幅方向について連通部74に対応する部分である。そのため、後膨張部64の展開及び膨張時に、両弁体部76,77の少なくとも先端部76t,77tが接触して閉じられるのであれば、重ね合わせ部71において、連通部74に対応しない部分(非近傍部分)の形態が変更されてもよい。例えば、重ね合わせ部71において連通部74に対応しない部分(非近傍部分)については、部分的又は全体的に結合されてもよい。この結合の手段としては、縫合であってもよいし、接着であってもよい。このように変更されることで、重ね合わせ部71において連通部74に対応する部分だけ両弁体部76,77として作動させ、対応しない部分が不要に動く現象、例えば、ばたつく現象を抑制することができる。
そのほかにも、重ね合わせ部71において連通部74に対応しない箇所の少なくとも一部に切欠きが入れられてもよい。
・縦区画部61と両弁体部76,77とは、互いに異なる部材によって構成されてもよい。
<上下方向展開促進部について>
・上スリット21及び下スリット22は、収納部16の前後方向についての中央部から前端までの領域であって、第1及び第2実施形態とは異なる箇所、すなわち前端よりも後方となる箇所に設けられてもよい。
この場合であっても、エアバッグ本体41による乗員拘束及び衝撃緩和をより早期に行なう効果が得られる。
・上下方向展開促進部は、第1及び第2実施形態とは異なる形態を有するものによって構成されてもよい。図22〜図24はその一例を示している。
図22では、収納部16の深さ方向(車幅方向)に延びる複数の長孔23が、同収納部16の上壁面17の前端から上方へ互いに離間した状態で並べられて形成されている。同様に、複数の長孔23が、収納部16の下壁面18の前端から下方へ互いに離間した状態で並べられて形成されている。そして、これらの長孔23によって、上下方向展開促進部が構成されている。
この場合、エアバッグ本体41の展開及び膨張に伴い、シートパッド部15において収納部16の上下方向について同収納部16から遠ざかる側に隣接した箇所に対し、これらを上下方向へ変形させようとする力が加わると、シートパッド部15において隣合う長孔23間が破断されて、上スリット21及び下スリット22と同様の形態になる。
図23では、収納部16の上部及び下部に、同収納部16に連続して開口部24が形成されている。各開口部24の車幅方向の寸法は、収納部16の前端部で最大となり、後側ほど小さくなっている。これらの開口部24によって上下方向展開促進部が構成されている。
図24では、第1及び第2実施形態と同様の上スリット21が、収納部16の上壁面17において前後方向に互いに離間した複数箇所から上方へ延びている。各上スリット21の上下長は、収納部16の前端で最大であり、後側ほど短くなっている。また、第1及び第2実施形態と同様の下スリット22が、収納部16の下壁面18において前後方向に互いに離間した複数箇所から下方へ延びている。各下スリット22の上下長は、収納部16の前端で最大であり、後側ほど短くなっている。そして、これらの上スリット21及び下スリット22によって上下方向展開促進部が構成されている。
上記図22〜図24の上下方向展開促進部によっても、収納部16よりも上側及び下側の各部分を前方よりも上下方向へ変形しやすくして、エアバッグ本体41の上下方向への展開を促進することが可能である。
<その他>
・上記車両用シート12のシートバック14は、車両の前方とは異なる方向、例えば側方を向く姿勢で取付けられるものであってもよい。この場合には、車両用シート12に対し側方(車両の前後方向)から衝撃が加わった場合に、エアバッグ本体41がシートバック14の側方で展開膨張することで、同衝撃から乗員Pを保護する。
・上記車両用シート12のシートバック14が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・上記シートバック14は、車両以外の乗物、例えば航空機、船舶等における乗物用シートのシートバックにも適用可能である。