JP6327112B2 - サイドエアバッグ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、乗物用シートの側方から乗物に衝撃が加わった場合に、その乗物用シートに着座している乗員の側方でエアバッグ本体を展開及び膨張させて、乗員を拘束し、衝撃から保護するサイドエアバッグ装置に関する。
側突等により車両に対し側方から衝撃が加わった場合に、車両用シートに着座している乗員を保護する装置として、エアバッグ及びガス発生器を備えたサイドエアバッグ装置が広く知られている。このサイドエアバッグ装置では、エアバッグが折り畳まれた状態でガス発生器とともに、車両用シートのシートバック内に組み込まれている。
上記サイドエアバッグ装置の一形態として、エアバッグの外殻部分がエアバッグ本体によって構成され、かつ乗員の胸部を保護領域とする膨張部を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。このサイドエアバッグ装置では、車両の側壁部、例えばサイドドア等に対し側方から衝撃が加わると、ガス発生器から膨張用ガスが膨張部に供給され、同膨張部が、乗員の保護領域と車内側へ進入してくる側壁部との間で展開及び膨張して、保護領域において乗員を拘束するとともに、側壁部を通じて同保護領域に伝わる側方からの衝撃を緩和する。
なお、上記特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、膨張部の最上部が、乗員の肩部の回動中心よりも高い箇所に位置している。また、膨張部の前上部には前側ほど高くなる傾斜部が形成されている。
特開2012−46167号公報
ところが、上記特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置では、膨張部は、その最上部が、乗員の肩部の回動中心よりも高い箇所に達するまで展開及び膨張を続ける。そのため、膨張部は、展開及び膨張する途中で乗員の肩部を大きく押上げる。
また、車両用シートに着座している乗員の腕部は、一般に、その回動中心を起点として、前側ほど低くなるように傾斜した状態となる。これに対し、膨張部は、その前上部に形成された傾斜部が前側ほど高くなるように展開及び膨張する。そのため、膨張部が展開及び膨張する際には、傾斜部のうち高くなる前部が、腕部のうち低い前部を押上げる。その結果、乗員の腕部が回動中心を支点として急激に大きく押上げられる。
これらのことから、膨張部の展開及び膨張に伴い肩部に大きな負荷が加わるおそれがある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、膨張部の展開及び膨張に伴い乗員の肩部に加わる負荷を小さくすることのできるサイドエアバッグ装置を提供することにある。
上記課題を解決するサイドエアバッグ装置は、乗物用シートに着座している乗員の胸部を保護領域とする膨張部を備え、前記乗物用シートの側方から乗物に加わる衝撃に応じてガス発生器から供給される膨張用ガスにより、前記保護領域の側方で前記膨張部を展開及び膨張させて乗員を拘束するエアバッグ本体を備え、前記膨張部の最上部は、前記乗員の肩部に接近した箇所であって、同肩部の回動中心と、前記乗物用シートにおけるシートバックの上端面とのいずれか低い方よりも低い箇所に位置し、前記膨張部の前記最上部よりも前側には、同最上部から前方へ離れるほど低くなる傾斜部が形成され、前記傾斜部の前端部は、前記膨張部の上下方向における中央部の上方近傍又はそれよりも低い箇所に設定されており、前記膨張部内は、ガス流れ規制部を有する区画部により、前記ガス発生器から膨張用ガスが供給される後膨張部と、前記区画部よりも前側に位置し、かつ前記後膨張部及び前記ガス流れ規制部を経た膨張用ガスが供給される前膨張部とに区画され、前記区画部は、その上端部を前記膨張部の前記最上部又はその近傍に位置させた状態で同膨張部内に配置されており、前記区画部の上端部は、前記肩部の回動中心より前側に位置している。
上記の構成によれば、乗物用シートの側方から乗物に衝撃が加わると、ガス発生器から膨張用ガスが膨張部に供給され、同膨張部が乗員の保護領域(胸部)の側方で展開及び膨張する。この際、膨張部は、その最上部が、乗員の肩部の回動中心と、シートバックの上端面とのいずれか低い方よりも低い箇所に達するまで展開及び膨張し、乗員の肩部を押上げる。肩部が押上げられる量は、膨張部の最上部が、肩部の回動中心よりも高い箇所に達する場合よりも少ない。そのため、膨張部の展開及び膨張に伴い乗員の肩部に加わる負荷は小さくなる。
また、乗物用シートに着座している乗員の腕部は、一般に、肩部の回動中心を起点として、前側ほど低くなるように傾斜した状態となる。これに対し、膨張部は、その前上部に形成された傾斜部が前側ほど低くなるように展開及び膨張する。すなわち、膨張部は、傾斜部が腕部と同一傾向に傾斜するように、腕部の傾斜に沿って展開及び膨張する。傾斜部のうち低い前部は腕部のうち低い前部を押上げる。また、傾斜部のうち高い後部は腕部のうち高い後部を押上げる。そのため、傾斜部が前側ほど高くなる場合とは異なり、腕部は、展開及び膨張する膨張部によって徐々に押上げられる。この点でも、膨張部の展開及び膨張に伴い乗員の肩部に加わる負荷は小さくなる。
また、ガス発生器からの膨張用ガスは、まず膨張部のうち区画部よりも後側の後膨張部に供給され、同後膨張部が、乗員の保護領域(胸部)の後半部の側方で展開及び膨張する。この際、膨張部は、区画部が後膨張部の前端に位置し、かつ同区画部の上端部が膨張部の最上部又はその近傍に位置するまで、すなわち、区画部の上端部が、乗員の肩部の回動中心と、シートバックの上端面とのいずれか低い方よりも低い箇所に達するまで展開及び膨張し、乗員の肩部を押上げる。
後膨張部に供給された膨張用ガスの一部は、ガス流れ規制部を通って前膨張部に供給される。この膨張用ガスにより、前膨張部は後膨張部に遅れて展開及び膨張する。この展開及び膨張に伴い、前膨張部の上部に、前側ほど低くなる傾斜部が形成され、これが乗員の腕部を徐々に押上げる。
このように、最初に展開及び膨張する後膨張部によって肩部が押上げられ、後膨張部に遅れて展開及び膨張する前膨張部によって腕部が徐々に押上げられる。
上記サイドエアバッグ装置において、前記エアバッグ本体は、車幅方向に重ね合された一対の布片の周縁部に設けられた周縁結合部を互いに結合することによって形成されており、前記周縁結合部によって囲まれた空間が前記膨張部とされており、前記周縁結合部の下部は、柱状をなす前記ガス発生器の軸線と直交する方向よりも上方に向かって傾斜する直線状に形成されていることが好ましい。
記サイドエアバッグ装置において、前記エアバッグ本体は折り畳まれることにより収納用形態にされて、前記乗員の側方近傍の収納部に収容されるものであり、前記収納用形態のエアバッグ本体における少なくとも前膨張部は、乗員側の面を内側に巻き込むように同一方向に向かって繰り返し折り畳むロール折りにより、前記ガス発生器に向けて折り畳まれていることが好ましい。

エアバッグ本体の折り態様の1つとして、同一方向に繰り返し折り畳むロール折りがある。ロール折りには、エアバッグ本体が折りを解消(展開)する際に、障害物によって展開を阻害されにくく、同エアバッグ本体が狭い部分に入り込みやすいという特徴がある。
そのため、エアバッグ本体の少なくとも前膨張部がロール折りされた上記構成によれば、ロール折りされた部分は腕部の下方部分に入り込みやすい。また、ここでのロール折りは、少なくとも前膨張部が、乗員側の面を内側に巻き込むように同一方向に向かってなされている。そのため、前膨張部が展開及び膨張する際には、既に折りが解かれた部分よりも乗員側に向かって折りが解かれる。傾斜部を含む前膨張部は、乗員の腕部に沿って展開及び膨張することとなり、腕部から遠ざかる場合とは異なり、腕部に対し、これを徐々に押上げる力を適正に伝える。
上記サイドエアバッグ装置において、前記前膨張部は、前記乗物の側壁部に設けられたアームレストよりも上方で展開及び膨張するものであることが好ましい。
ここで、側壁部にアームレストが設けられた乗物では、乗員と側壁部との間隙は、アームレストの設けられた箇所において、設けられていない箇所よりも狭い。そのため、仮に、この隙間でも前膨張部を展開させようとすると、同前膨張部は同隙間に入り込みにくく、適切な展開及び膨張が妨げられるおそれがある。
この点、上記構成では、前膨張部の展開及び膨張が、アームレストの側方よりも広い空間で適切に行なわれる。前膨張部の展開及び膨張は、アームレストによって妨げられにくい。
上記サイドエアバッグ装置において、前記区画部は、前記乗物用シートの幅方向における前記膨張部の寸法が、同膨張部の前後方向で最大となる箇所に設けられ、前記幅方向における前記区画部の寸法は、同区画部が無いと仮定して前記膨張部を膨張させたときの、同幅方向における同膨張部の寸法と同じ又は近似した寸法に設定されていることが好ましい。
上記の構成によれば、後膨張部が乗員の保護領域(胸部)の後半部の側方で展開及び膨張する際、その前端部の乗物用シートの幅方向における寸法は、同前端部に位置する区画部によって規制されにくい。後膨張部の前端部は、採り得る最大の寸法で乗物用シートの幅方向に膨張する。
一方、乗員と側壁部との間隙は肩部において最も狭い。そのため、上記のように、前端部が採り得る最大の寸法で乗物用シートの幅方向に膨張することで、肩部が多く押されて上記間隙が大きく拡げられ、後膨張部に遅れて展開及び膨張する前膨張部の傾斜部が上記間隙に入り込みやすくなる。
上記サイドエアバッグ装置によれば、膨張部の展開及び膨張に伴い乗員の肩部に加わる負荷を小さくすることができる。
サイドエアバッグ装置の一実施形態を示す図であり、同装置の概略構成を乗員及び車両用シートとともに示す側面図。 一実施形態において、車両用シート、エアバッグ、乗員及び側壁部の位置関係を示す平断面図。 一実施形態において、車両用シート、エアバッグ、乗員及び側壁部の位置関係を示す正断面図。 一実施形態において、開放された状態のサイドドアを車両の斜め後方から見た部分斜視図。 一実施形態において、エアバッグモジュールが組み込まれたシートバックの車外側の側部の内部構造を示す部分平断面図。 収納用形態にされたエアバッグモジュールの概略側面図。 (a)は一実施形態において、エアバッグ本体が非膨張展開状態にされたエアバッグモジュールの内部構造を乗員及び車両用シートとともに示す部分側断面図、(b)は図7(a)の一部を拡大して示す部分側断面図。 一実施形態において、エアバッグの各構成部材を展開させた状態で示す分解斜視図。 一実施形態における区画部及びエアバッグ本体の寸法関係を示す図であり、(a)は区画部の部分正面図、(b)は区画部が無いと仮定してエアバッグ本体を膨張させたときのそのエアバッグ本体の部分正断面図。 一実施形態における区画部及びエアバッグ本体の寸法関係を示す図であり、(a)は区画部の概略平断面図、(b)は区画部が無いと仮定してエアバッグ本体を膨張させたときのそのエアバッグ本体の概略平断面図。 一実施形態において、エアバッグ本体が非膨張展開状態にされたエアバッグモジュールを示す図であり、(a)は側面図、(b)は図11(a)のエアバッグモジュールの平断面図。 一実施形態を示す図であり、(a)は図11(a)のエアバッグ本体の前膨張部が折り畳まれた状態のエアバッグモジュールを示す側面図、(b)は図12(a)のエアバッグモジュールの平断面図、(c)は図12(a)のエアバッグ本体がさらに折り畳まれた状態のエアバッグモジュールを示す側面図、(d)は図12(c)のエアバッグモジュールの平断面図。 図5のエアバッグ本体がその一部をシートバック内に残して車両用シートから飛び出して展開及び膨張した状態を示す部分平断面図。 一実施形態における区画部が緊張したときの調圧弁及びその周辺部分を下方から見た部分斜視図。 (a)〜(c)は、一実施形態における調圧弁の動作を模式的に示す側断面図。 (a),(b)は、一実施形態のサイドエアバッグ装置による乗員の拘束態様を説明する正断面図。 (a),(b)は、一実施形態のサイドエアバッグ装置による乗員の拘束態様を説明する部分側面図。
以下、車両用のサイドエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、車両の幅方向(車幅方向)の中央部を基準とし、その中央部に近づく側を「車内側」とし、中央部から遠ざかる側を「車外側」とする。また、車両用シートには、乗員として、標準的な体格を有する大人が、予め定められた適正な姿勢で着座しているものとする。
図4に示すように、車両10のボディ11において、車室12の外側方近傍には昇降口13が設けられている。ボディ11には、ドアヒンジ(図示略)を支点として回動することにより上記昇降口13を開閉するサイドドア14が取付けられている。サイドドア14は、車両10の側壁部SWの一部を構成している。なお、側壁部SWには、上記サイドドア14のほかにもピラー等が含まれる。
サイドドア14において、窓枠部15よりも下側かつ車内側となる部分は、ドアトリム16によって構成されている。ドアトリム16の高さ方向における中間部分には、アームレスト17が設けられている。また、ドアトリム16において、アームレスト17の下方には、小物類、車両備品等の被収容物を収容するためのドアポケット18が設けられている。
車室12内において昇降口13の車内側の近傍には、図1〜図3に示す車両用シート21が乗物用シートとして配置されている。車両用シート21は、シートクッション22と、そのシートクッション22の後側から起立し、かつ傾き調整機構(図示略)により傾斜角度を調整されるシートバック23とを備えている。車両用シート21は、シートバック23が前方を向く姿勢で車室12内に配置されている。このように配置された車両用シート21の幅方向は、車幅方向と合致する。シートバック23の上端面23uは、乗員Pの肩部PSの回動中心Oよりも高い箇所に位置している。
次に、シートバック23における車外側の側部の内部構造について説明する。
シートバック23の内部には、その骨格をなすシートフレームが配置されている。シートフレームの一部は、図5に示すように、シートバック23内の車外側部分に配置されており、この部分(以下「サイドフレーム部24」という)は、金属板を曲げ加工等することによって形成されている。サイドフレーム部24を含むシートフレームの前側には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド25が配置されている。また、シートフレームの後側には、合成樹脂等によって形成された硬質のバックボード26が配置されている。なお、シートパッド25は表皮によって被覆されているが、図5ではその表皮の図示が省略されている。後述する図13についても同様である。
シートパッド25内において、サイドフレーム部24の車外側近傍には収納部27が設けられている。この収納部27には、サイドエアバッグ装置の主要部をなすエアバッグモジュールAMが組み込まれている。サイドエアバッグ装置は、側突等により車両用シート21の側方(図5では下方)から車両10に衝撃が加わった場合に、同車両用シート21に着座している乗員Pの保護領域Zの側方で後述するエアバッグ40を展開及び膨張させて乗員Pを拘束するエアバッグ装置である。本実施形態では、図1及び図7(a)に示すように、胸部PTが保護領域Zとされている。また、保護領域Zのうち、胸部PTの前半部が前保護領域ZFとされ、胸部PTの後半部が後保護領域ZRとされている。
図5に示すように、収納部27の前部の車外側の角部からは、斜め前かつ車外側に向けてスリット28が延びている。シートパッド25の前側の角部25cとスリット28とによって挟まれた箇所(図5において二点鎖線の枠で囲んだ箇所)は、エアバッグ40によって破断される破断予定部29を構成している。
エアバッグモジュールAMは、ガス発生器30及びエアバッグ40を主要な構成部材として備えている。次に、これらの構成部材の各々について説明する。
<ガス発生器30>
ガス発生器30は、インフレータ31と、そのインフレータ31を覆うリテーナ32とを備えている。ここでは、インフレータ31として、パイロタイプと呼ばれるタイプが採用されている。インフレータ31は略円柱状をなしており、その内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ31は、その上端部にガス噴出部(図示略)を有している。また、インフレータ31の下端部には、同インフレータ31への作動信号の入力配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
なお、インフレータ31としては、上記ガス発生剤を用いたパイロタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプ(ハイブリッドタイプ)が用いられてもよい。
一方、リテーナ32は、膨張用ガスの噴出する方向を制御するディフューザとして機能するとともに、インフレータ31をエアバッグ40と一緒にサイドフレーム部24に締結する機能を有する部材である。リテーナ32の大部分は、金属板等の板材を曲げ加工等することによって略筒状に形成されている。リテーナ32には、これをサイドフレーム部24に取付けるための係止部材として、複数本(本実施形態では2本)のボルト33が固定されている。なお、ガス発生器30は、インフレータ31とリテーナ32とが一体になったものであってもよい。
図1及び図2に示すように、エアバッグ40の外殻部分はエアバッグ本体41によって構成されている。
<エアバッグ本体41>
図11(a)は、エアバッグ本体41が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態(以下「非膨張展開状態」という)のエアバッグモジュールAMを示している。また、図7(a)は、エアバッグモジュールAMの内部構造を示すべく、エアバッグ本体41が車幅方向の中央部分で切断されたエアバッグモジュールAMを乗員P及び車両用シート21とともに示している。さらに、図8は、エアバッグ本体41をはじめとする、エアバッグ40の各構成部材をそれぞれ展開させた状態で示している。なお、図11(a)ではエアバッグ本体41が、図7(a)に対し傾きを変えた状態で図示されている。
図7(a)、図8及び図11(a)に示すように、エアバッグ本体41は、1枚の布片(基布、パネル布等とも呼ばれる)を、その中央部分に設定した折り線42に沿って前方へ二つ折りして車幅方向に重ね合わせ、その重ね合わされた部分を結合させることにより形成されている。ここでは、エアバッグ本体41の重ね合わされた2つの部分を区別するために、車内側に位置するものを本体布部43といい、車外側に位置するものを本体布部44というものとする。
なお、本実施形態では、折り線42がエアバッグ本体41の後端部に位置するように布片が二つ折りされているが、折り線42がエアバッグ本体41の他の端部、例えば前端部、上端部、下端部等に位置するように布片が二つ折りされてもよい。また、エアバッグ本体41は、折り線42に沿って分割された2枚の布片からなるものであってもよい。この場合には、エアバッグ本体41は、2枚の布片を車幅方向に重ね合わせ、両布片の周縁部を結合させることにより形成される。さらに、エアバッグ本体41は3枚以上の布片からなるものであってもよい。
両本体布部43,44としては、強度が高く、伸びにくくかつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等が適している。
両本体布部43,44の上記結合は、それらの周縁部に設けられた周縁結合部45によってなされている。本実施形態では、周縁結合部45は両本体布部43,44の周縁部のうち、後端部(折り線42の近傍部分)等を除く部分を、縫製(縫糸で縫合)することにより形成されている。このように、結合が縫製による点は、後述する縦結合部57及び横結合部67についても同様である。
上記縫製に関し、図7、図8、図11、図12及び図14では、3つの線種によって縫製部分が表現されている。1つ目の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線であり、これは、縫糸を側方から見た状態を示している(図7(a)における縦結合部57等参照)。2番目の線種は、一定長さ(一般的な破線よりも長い長さ)の細線を断続的に並べて表現した線であり、これは、例えば布片の奥に位置していて直接は見えない(隠れている)縫糸の状態を示している(図7(a)、図8等における横結合部67等参照)。3番目の線種は、点を一定間隔おきに並べて表現した線であり、これは、縫製部分を通る断面に沿った縫糸の断面を示している(図7(a)における周縁結合部45等参照)。
なお、周縁結合部45は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、後述する縦結合部57及び横結合部67についても同様である。
図7(a)及び図8に示すように、両本体布部43,44の間であって、周縁結合部45によって囲まれた空間は、膨張用ガスによって乗員Pの上記保護領域Z(胸部PT)の側方で展開及び膨張することにより、同保護領域Zにおいて乗員Pを拘束して衝撃から保護するための膨張部46となっている。
膨張部46の最上部46tは、同膨張部46が展開及び膨張を完了したとき、乗員Pの肩部PSに接近した箇所であって、同肩部PSの回動中心Oよりも若干低い箇所に設定されている。
展開及び膨張を完了した膨張部46の最上部46tの前側には、同最上部46tから前方へ離れるほど低くなる傾斜部47が形成されている。傾斜部47の前端部47fは、膨張部46の上下方向における中央部46cの上方近傍に設定されている。
二つ折りされたエアバッグ本体41の後端部であって上下方向の中間部分には、折り線42に直交する方向(横方向)へ延びるスリット51が形成されている。両本体布部43,44においてスリット51よりも下側部分は、他の部分の内側へ折り曲げた状態で入り込ませられる内折り部52となっている。内折り部52の下端部は、周縁結合部45によって両本体布部43,44の他の部分に共縫いされている。また、内折り部52の形成に伴い、スリット51が開かれて、ガス発生器30の挿入口53が形成されている。
また、車内側の本体布部43の折り線42近傍であって上記スリット51の上方となる複数箇所(2箇所)には、上記ガス発生器30のボルト33(図5参照)を挿通させるためのボルト孔54があけられている。
膨張部46の内部には、同膨張部46を2つに区画する区画部55が設けられている。
<区画部55>
区画部55は、一般的にテザーと呼ばれるものと同様の構成を有しており、車幅方向における膨張部46の寸法が、同膨張部46の前後方向で最大となる箇所に設けられている。
図9(a),(b)に示すように、区画部55の車幅方向における寸法をW1とする。また、区画部55が無いと仮定して膨張部46を膨張させたときの、車幅方向における同膨張部46の寸法をW2とする。本実施形態では、寸法W1が寸法W2と同じ又は近似した寸法に設定されている。なお、図9(a)では、縫い代(縦結合部57よりも外側部分)の図示が省略されている。
図8に示すように、区画部55は、展開させられた状態では、上下方向の寸法が車幅方向(横方向)の寸法よりも長くなる縦長の形状を有している。図7(a)に示すように、区画部55は、その上端部を膨張部46の上記最上部46tの近傍に位置させた状態で同膨張部46内に配置されている。
エアバッグ本体41が非膨張展開状態となっているときには、区画部55は、両本体布部43,44間において、略上下方向に延びる折り線56に沿って前方へ二つ折りされている。二つ折り状態の区画部55の上端部及び下端部は、周縁結合部45によって両本体布部43,44に共縫いされている。
図7(a)及び図8に示すように、区画部55は、横方向における両側の周縁部に沿って略上下方向へ延びるように設けられた縦結合部57によって、対応する本体布部43,44に結合されている。区画部55は、上記の結合により、両本体布部43,44間に架け渡されている。
膨張部46において、区画部55よりも後側の部分は、乗員Pの後保護領域ZRの側方で展開及び膨張する後膨張部58を構成している。また、膨張部46において、区画部55よりも前側の部分は、乗員Pの前保護領域ZFの側方で展開及び膨張する前膨張部59を構成している。前膨張部59が展開及び膨張を完了したときの下端の位置は、アームレスト17よりも上方の位置に設定されている。
区画部55は、両本体布部43,44と同様の素材からなり、かつ縦方向に並べられた2つの布片61,62によって構成されている。
図7(a),(b)及び図14に示すように、布片61の下側の端部63と、布片62の上側の端部64とは重ね合わされている。両布片61,62は、それぞれ帯状をなす一対の重ね合わせ部65と、それ以外の箇所(以下「非重ね合わせ部66」という)との境界部分において、横方向へ延びる横結合部67によって結合されている。
なお、布片61,62の少なくとも一方は、折り線56に沿って2枚に分割されたものによって構成されてもよい。
さらに、区画部55には、ガス流れ規制部として連通部68及び調圧弁69が設けられている。
<連通部68及び調圧弁69>
連通部68及び調圧弁69は、後膨張部58による乗員拘束に伴い外力が加わることを条件とし、その条件が満たされるまでは実質的に閉じ、同条件が満たされることにより開くものである。連通部68及び調圧弁69は、後膨張部58の膨張に伴い緊張させられた区画部55において、車幅方向の略中央部分に設けられている。詳しくは、区画部55における横結合部67は、車幅方向の略中央部分において結合を解除されている。このように、横結合部67による結合を解除された箇所は、車幅方向に延びて、後膨張部58と前膨張部59とを連通させるスリット状の連通部68を構成している。
調圧弁69は、連通部68での膨張用ガスの流通を制御することで、後膨張部58及び前膨張部59の各内圧を調整する弁である。そして、端部63のうち、車幅方向について連通部68に対応する箇所によって調圧弁69の弁体部71が構成され、端部64のうち車幅方向について連通部68に対応する箇所によって調圧弁69の弁体部72が構成されている。
両弁体部71,72が、それらの少なくとも一部、例えば先端部71t,72tにおいて互いに接触することで、両弁体部71,72間での膨張用ガスの流通が規制される(図15(a),(b)参照)。このときの調圧弁69の動作態様を「閉弁」という。また、連通部68が開かれ、かつ弁体部71の全体が弁体部72の全体から離間することで、両弁体部71,72間での膨張用ガスの流通が可能となる(図15(c)参照)。このときの調圧弁69の動作態様を「開弁」という。
そして、両重ね合わせ部65は非重ね合わせ部66との境界部分において、下方(又は上方)へ折り曲げられて、下側(又は上側)の非重ね合わせ部66に重ねられている。さらに、折り曲げられた帯状の両重ね合わせ部65は、横方向の両端部において、前述した縦結合部57により、エアバッグ本体41の対応する本体布部43,44及び非重ね合わせ部66に共縫いされている。
さらに、図7(a)に示すように、本体布部43の前端部には、前膨張部59の内外を連通させる排気孔(ベントホールとも呼ばれる)73が設けられている。
そして、ガス発生器30の大部分は、略上下方向へ延びる姿勢にされて、後膨張部58内の後端部に収容されている。ガス発生器30の下部は、挿入口53を通り、エアバッグ本体41の外部に露出している。ガス発生器30のボルト33は、対応するボルト孔54(図8参照)に挿通されている。こうした挿通により、ガス発生器30がエアバッグ本体41に対し位置決めされた状態で係止されている。
ところで、エアバッグモジュールAMは、非膨張展開状態のエアバッグ本体41が図11及び図12に示すように折り畳まれることにより、図6に示すようにコンパクトな形態(以下「収納用形態」という)にされている。これは、エアバッグモジュールAMを、シートバック23における限られた大きさの収納部27(図5参照)に対し、収納に適したものとするためである。この収納用形態は、非膨張展開状態のエアバッグ本体41に対し、第1の折り及び第2の折りが順に行なわれることにより得られる。
次に、各折りについて説明するが、その説明には、折り線42,75〜77の位置、折り畳まれる部位の位置、折りの方向等の特定が必要となる。ここでは、折り線42が上下方向に延びるようにエアバッグ40が配置されているものとする。
なお、図11(a),(b)及び図12(a)〜(d)では、図中の右側が「前側」を示し、左側が「後側」を示している。また、図11(a)及び図12(a),(c)では、図中の上側が「上側」を示し、下側が「下側」を示している。さらに、図11(b)及び図12(b),(d)では、図中の上側が「車内側」を示し、下側が「車外側」を示している。
<第1の折り>
第1の折りは、非膨張展開状態のエアバッグ本体41のうちガス発生器30よりも前側の部分を前方から後方へ向けて折り畳む折り態様である。この第1の折りは、エアバッグ本体41の主として前膨張部59を対象として行なわれるロール折りと、主として後膨張部58を対象として行なわれる蛇腹折りとからなる。
ロール折りに際しては、図11(a)に示すように、主として前膨張部59に対し、互いに平行な状態で上下方向に延びる複数本の折り線75が設定される。図11(b)に示すように、主として前膨張部59がガス発生器30に向けて、各折り線75に沿って順に渦巻き状に折り畳まれる。表現を変えると、主として前膨張部59は同一方向に繰り返し折り畳まれる。このロール折りは、前膨張部59の乗員側の面(本体布部43)を内側に巻き込むようにして行なわれる。
蛇腹折りに際しては、主として後膨張部58に対し、図11(a)及び図12(a)に示すように、互いに平行な状態で上下方向に延びる複数本の折り線76が設定される。隣り合う折り線76の間隔は、蛇腹折りにおける折り幅となる。そして、図12(a),(b)に示すように、主として後膨張部58が、折り線76に沿って蛇腹状に折り畳まれる。より詳しくは、主として後膨張部58は、前方から後方に向けて、一定幅ずつ交互に、折り返す方向を変えながら折り畳まれる。
なお、上記ロール折り及び蛇腹折りの実施順は特に限定されず、例えば、同時又は略同時に実施されてもよい。
その結果、図12(c),(d)に示すように、蛇腹折りによって折り畳まれた後膨張部58がガス発生器30の前方近傍に配置され、ロール折りによって折り畳まれた前膨張部59が、後膨張部58の前方に隣接した状態で配置される。エアバッグ本体41は、前後方向の寸法が小さな縦長の形態(以下「中間形態」という)になる。
<第2の折り>
第2の折りは、上記中間形態のエアバッグ本体41の上部を下方へ折り返す折り態様である。より詳しくは、中間形態のエアバッグ本体41のガス発生器30よりも若干上側のドット(・)で示す位置に、横方向に延びる折り線77が設定される。そして、中間形態のエアバッグ本体41の折り線77よりも上側の部分41uが、折り線77を支点として下方へ折り返される。この折り返しにより、上記部分41uが、エアバッグ本体41において、折り線77よりも下側の部分41lに重ねられて、エアバッグ本体41が、図6に示す収納用形態にされる。その後、エアバッグ本体41は、結束テープ(図示略)等の保持手段によって収納用形態に保持される。
このように、エアバッグ本体41が折り畳まれて収納用形態にされたエアバッグモジュールAMは、上下方向にも前後方向にも小さくなっており、シートバック23の狭い収納部27に対しても収納に適したものとなる。
図5に示すように上記エアバッグモジュールAMでは、リテーナ32から延びて本体布部43のボルト孔54に挿通されたボルト33が、サイドフレーム部24に挿通され、その挿通状態のボルト33に車内側からナット34が締付けられている。この締付けにより、ガス発生器30がエアバッグ本体41と一緒にサイドフレーム部24に取付けられている。
なお、ガス発生器30は、上述したボルト33及びナット34とは異なる部材によってサイドフレーム部24に取付けられてもよい。また、リテーナ32が用いられることなくインフレータ31がサイドフレーム部24に直接取付けられてもよい。
サイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグモジュールAMのほかに、図1に示す衝撃センサ81及び制御装置82を備えている。衝撃センサ81は加速度センサ等からなり、車両10の側壁部SWに設けられており、同側壁部SWに側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置82は、衝撃センサ81の検出信号に基づきインフレータ31の作動を制御する。
さらに、車室12内には、車両用シート21に着座している乗員Pをその車両用シート21に拘束するためのシートベルト装置が装備されているが、図1〜図3等ではこのシートベルト装置の図示が省略されている。
上記のようにして、本実施形態のサイドエアバッグ装置が構成されている。次に、このサイドエアバッグ装置の作用として、代表的な動作の態様(モード)について説明する。
図15(a)〜(c)は、調圧弁69及び区画部55の形態が、膨張用ガスの供給開始後、時間とともに変化する様子を模式的に示したものであり、細部については図示が省略及び簡略化されている。
このサイドエアバッグ装置では、側壁部SWに対し側方から衝撃が加わったことが衝撃センサ81によって検出されないときには、制御装置82からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力されず、膨張用ガスが噴出されない。エアバッグ本体41は、収納用形態で収納部27に収納され続ける。
これに対し、車両10の走行中等に、側突等により側壁部SWに所定値以上の衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ81によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置82からインフレータ31に対し、これを作動させるための作動信号が出力される。このとき、車両用シート21に着座している乗員Pの腕部PAは、多くの場合と同様に、肩部PSの回動中心Oを起点として、前側ほど低くなるように傾斜しているものとする(図1参照)。
上記制御装置82から出力される作動信号に応じて、インフレータ31から膨張用ガスが噴出される。膨張用ガスが、収納用形態のエアバッグ本体41の後膨張部58に供給されることで、同後膨張部58の内圧が上昇していき、同後膨張部58が展開し、曲面状に膨張しようとする。
また、二つ折り状態の区画部55が、展開及び膨張する後膨張部58によって、横方向(車幅方向)に引っ張られる。この区画部55は、図14に示すように前方へ膨らむ曲面状になって、後膨張部58の前端部を構成する。
図15(a)に示すように、調圧弁69の両弁体部71,72に対しては、その重なり方向(厚み方向)から内圧PIが加わる。この内圧PIは、後膨張部58による乗員Pの拘束時の内圧ほど高くない。両弁体部71,72は、この内圧PIにより面全体で互いに密着し、両弁体部71,72間での膨張用ガスの流通を規制する自己シール状態となる。さらに、折り曲げられて下側の非重ね合わせ部66に重ねられた重ね合わせ部65が、内圧によりその非重ね合わせ部66に押付けられ(図14参照)、両弁体部71,72が一層閉じられやすくなる。
ここで、区画部55が、横方向(車幅方向)よりも縦方向(上下方向)に長く形成されている(図8参照)ことから、区画部55では、横方向に対し、縦方向に対するよりも強いテンションが掛かりやすい。連通部68は、この強いテンションの掛かりやすい横方向に延びているため、閉じられやすい。
さらに、後膨張部58が展開及び膨張したときには、区画部55に対するだけでなく、重ね合わせ部65に対しても横方向に強いテンションが掛かる。これは、重ね合わせ部65の横方向の両端部が本体布部43,44に結合されているからである。
両弁体部71,72が、それらの少なくとも一部において互いに接触すると、調圧弁69が実質的に閉弁した状態となる。後膨張部58内の膨張用ガスは、両弁体部71,72間及び連通部68を通って前膨張部59へ流出することを規制される。この規制により、後膨張部58に膨張用ガスが溜まり、専ら後膨張部58の内圧が上昇する。
本実施形態では、膨張部46が区画部55によって2つに区画されていて、その一方が後膨張部58とされていることから、後膨張部58の容積は、膨張部46が区画部55により区画されていない場合の容積よりも小さい。そのため、後膨張部58の内圧は、区画部55により区画されていない場合よりも早く上昇を開始し、しかも高くなる。
上記内圧の上昇により、後膨張部58が折り畳まれた順とは逆の順に、すなわち、第2の折り及び第1の折りの順に、折り状態を解消(展開)しながら膨張していく。これは、エアバッグ本体41において後から折り畳まれた部分が、先に折り畳まれた部分の折り状態の解消を規制するからである。図13に示すように、シートバック23の車外側の側部が、上記のように展開及び膨張する後膨張部58によって押圧されて破断されると、その後膨張部58は、サイドフレーム部24との取付け部分及びその近傍部分を収納部27に残した状態で、破断された箇所を通じてシートバック23から前方へ飛び出す。
ここで、第2の折りの解消に際しては、図6に示すように、収納用形態のエアバッグ本体41において下方へ折り返された部分41uが折り線77を支点として上方へ回動する。乗員Pの側部と側壁部SWとの間の隙間は、同乗員Pの肩部PSにおいて胸部PTにおけるよりも狭い。しかし、エアバッグ本体41の展開及び膨張の初期に行なわれる、上記部分41uの上方への回動により、同エアバッグ本体41の上部がこの狭い隙間に入り込みやすい。そして、このように狭い隙間に入り込んだうえでエアバッグ本体41の第1の折りが解消されるため、同エアバッグ本体41は前方へ向けて円滑に展開及び膨張しやすい。
図17(a)に示すように、その後も膨張用ガスの供給される後膨張部58は、乗員Pの後保護領域ZRと側壁部SWとの間の隙間を前方へ向けて展開及び膨張する。このときには、前膨張部59に膨張用ガスが全く又はほとんど供給されない。前膨張部59は未だ膨張してないか、膨張していたとしても僅かであり、その内圧は低い。ただし、前膨張部59が膨張することなく展開することは起り得る。後膨張部58が展開及び膨張する際の前方への動きが前膨張部59に伝わるからである。
膨張部46は、区画部55が後膨張部58の前端に位置し、かつ同区画部55の上端部が同膨張部46の最上部46t近傍に位置するまで、すなわち、区画部55の上端部が、乗員Pの肩部PSの回動中心Oよりも低い箇所に達するまで展開及び膨張し、乗員Pの肩部PSを図16(a)及び図17(a)の二点鎖線で示すように押上げる。肩部PSが押上げられる量は、膨張部46の最上部46tが、肩部PSの回動中心Oよりも高い箇所に達する場合(特許文献1)よりも少ない。そのため、後膨張部58の展開及び膨張に伴い肩部PSに加わる負荷は特許文献1よりも小さい。
また、エアバッグ本体41の後膨張部58は、折りが解消しやすい(展開しやすい)蛇腹折りされていることから、後膨張部58は速やかに展開及び膨張する。この後膨張部58によって前膨張部59が前方へ速やかに押し出される。
上記のように、後膨張部58が乗員Pの保護領域Z(胸部PT)の後半部の側方で展開及び膨張する際には、図10(b)に示すように、その前端部の車幅方向における寸法W2は、同前端部に位置する区画部55によって規制されにくい。後膨張部58の前端部は、採り得る最大の寸法W2で車幅方向に膨張する。
一方、乗員Pと側壁部SWとの間隙は肩部PSにおいて最も狭い。そのため、上記のように、後膨張部58が採り得る最大の寸法W2で車幅方向に膨張することで、肩部PSが車内側へ多く押されて上記間隙が拡げられながら、その肩部PSが押上げられる。
両弁体部71,72がそれらの面全体で密着した(実質的に閉じられた)状態で、後膨張部58内に膨張用ガスが供給され続ける一方、側壁部SWから加わる外力により、調圧弁69が開弁し始める。
すなわち、後膨張部58への膨張用ガスの供給期間の途中からは、乗員Pの拘束に伴う外力が加わって後膨張部58が変形する。これに伴い、区画部55に対し横方向に強く掛かっていたテンションが減少する。
また、後膨張部58の上記変形に伴い同後膨張部58の内圧PIがさらに上昇して、区画部55が前膨張部59側へ押圧されて(図15(b)参照)、同区画部55に掛かるテンションが変化し、縦方向及び横方向のテンションの差が小さくなる。連通部68の変形が許容され、弁体部71,72の作動が許容されるようになる。
一方、図14に示すように、重ね合わせ部65が下側の非重ね合わせ部66に重ねられ、横方向の両周縁部において、縦結合部57によって本体布部43,44に結合されていることから、重ね合わせ部65において縦結合部57に近い部分では、重ね合わされた状態を維持しようとする力が強い。しかし、この力は、縦結合部57から遠ざかるに従い小さくなり、横方向の中央部分において最小となる。そのため、縦方向へ引っ張られた重ね合わせ部65は、弁体部71,72及びその近傍部分においてのみ同方向へ変形する。
連通部68が縦方向へある程度開くと、重ね合わせ部65では、図15(b)に示すように、後膨張部58の高い内圧PIを受けた両弁体部71,72においてのみ、連通部68を通って前膨張部59へ押し出される(反転される)。この連通部68の上下方向の幅W3が狭いときには、先端部71t,72t同士が接触し合い、調圧弁69が閉じ続ける。
そして、連通部68の幅W3の増大により、図15(c)に示すように、先端部71t,72tが離れ、調圧弁69が開弁すると、上記流通規制が解除される。後膨張部58内の膨張用ガスは、連通部68と両弁体部71,72間とを順に通って前膨張部59へ流出することを許容される。
上記膨張用ガスの流出により、後膨張部58の内圧が上昇から低下に転ずる。ただし、側壁部SWは車内側へ依然として進入し続けていて、後膨張部58が乗員Pの後保護領域ZRに押付けられる。
また、膨張用ガスの流入により前膨張部59が後膨張部58に遅れて膨張を開始するとともに、同前膨張部59の内圧が上昇し始める。前膨張部59が折り畳まれた順とは逆の順に折り状態を解消(展開)し、後膨張部58と一緒になって曲面状に膨張しようとする。
この際、肩部PSと側壁部SWとの間隙は上述したように後膨張部58の前端部(区画部55)によって拡げられているため、前膨張部59はこの間隙に入り込みやすい。
また、このときには、前膨張部59は、後膨張部58よりも低い内圧で、耐衝撃性が乗員Pの上半身のうち他の箇所よりも低い前保護領域ZF(胸部PTの前半部)の側方で展開及び膨張する。
そして、前膨張部59の内圧の上昇開始から少し遅れて、車内側へ進入する側壁部SWにより、後膨張部58に加え、前膨張部59が乗員Pの前保護領域ZFに押し付けられ始める。後膨張部58による後保護領域ZRの拘束に加え、前保護領域ZFが前膨張部59によって拘束され始める。
上記展開及び膨張に伴い、前膨張部59の上部には、図17(b)に示すように、最上部46tから前方へ離れるほど低くなる傾斜部47が形成される。すなわち、前膨張部59は、傾斜部47が腕部PAと同一傾向に傾斜するように、腕部PAの傾斜に沿って展開及び膨張する。傾斜部47のうち低い前部は腕部PAのうち低い前部を押上げる。また、傾斜部47のうち高い後部は腕部PAのうち高い後部を押上げる。そのため、傾斜部が前側ほど高くなる場合(特許文献1)とは異なり、腕部PAは、図16(b)及び図17(b)の二点鎖線で示すように、展開及び膨張する前膨張部59によって徐々に押上げられる。
特に、エアバッグ本体41の前膨張部59に対し施されているロール折りには、蛇腹折りに比べると折りが解消しにくいものの、障害物に展開を阻害されにくく狭い部分に入り込みやすいという特徴がある。そのため、前膨張部59は、乗員Pの腕部PAに展開を阻害されにくく、その腕部PAの下方部分に入り込みやすい。
また、ここでのロール折りは、前膨張部59が、乗員側(車内側)の面(本体布部43)を内側に巻き込むように同一方向に向かってなされている。そのため、前膨張部59が展開及び膨張する際には、既に折りが解かれた部分よりも乗員側に向かって折りが解かれる。傾斜部47を含む前膨張部59は、乗員Pの腕部PAに沿って(密着して)展開及び膨張することとなり、同腕部PAから遠ざかる場合とは異なり、腕部PAに対し、これを徐々に押上げる力を適正に伝える。
そして、上記のように腕部PAが徐々に押上げられる点でも、膨張部46の展開及び膨張に伴い乗員Pの肩部PSに加わる負荷が小さくなる。
このように、後膨張部58及び前膨張部59がそれぞれ展開及び膨張したエアバッグ本体41が、乗員Pの保護領域Zと、車内側へ進入してくる側壁部SWとの間に介在する。このエアバッグ本体41によって、保護領域Zにおいて乗員Pが車内側へ押圧されて拘束される。そして、側壁部SWを通じて保護領域Zに伝わる側方からの衝撃が膨張部46によって緩和されて、乗員Pが保護される。
また、前膨張部59が後膨張部58に遅れて展開及び膨張を開始することから、エアバッグ本体41が膨張する前に、その前方に障害物があったとしても、その障害物がエアバッグ本体41によって強く押圧されることが起こりにくい。この点で、本実施形態は、区画部55によって区画されていないエアバッグ本体41が一気に展開及び膨張して、障害物を強く押圧するおそれがあるものと、大きく異なる。
さらに、側壁部SWにアームレスト17が設けられた車両10では、乗員Pと側壁部SWとの間隙は、アームレスト17の設けられた箇所で、設けられていない箇所よりも狭い。そのため、仮に、この隙間でも前膨張部59を展開させようとすると、前膨張部59は同隙間に入り込みにくく、適切な展開及び膨張が妨げられるおそれがある。しかし、本実施形態では、前膨張部59の展開及び膨張が、アームレスト17よりも上方の広い隙間で適切に行なわれるため、前膨張部59のアームレスト17との干渉が起こりにくい。
なお、前膨張部59が膨張した状態では、排気孔73が前方を指向する。前膨張部59内の余剰の膨張用ガスは、この排気孔73を通じて前方へ向けて排出される。この排出により前膨張部59の内圧が低下し、乗員Pの前保護領域ZFが前膨張部59によって適切な押圧力で拘束される。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)シートバック23の上端面23uが乗員Pの肩部PSの回動中心Oよりも高い場合において、膨張部46の最上部46tを、肩部PSに接近した箇所であって、同肩部PSの回動中心Oよりも低い箇所に設定する。膨張部46の最上部46tの前側には、同最上部46tから前方へ離れるほど低くなる傾斜部47を形成する。傾斜部47の前端部47fを、膨張部46の上下方向における中央部46cの上方近傍に設定している(図1)。
そのため、膨張部46の展開及び膨張に伴い肩部PSが押上げられる量を少なくするとともに、腕部PAを徐々に押上げることができ、乗員Pの肩部PSに加わる負荷を小さくすることができる。
(2)連通部68及び調圧弁69を有し、かつ膨張部46内を後膨張部58及び前膨張部59に区画する区画部55を、その上端部を膨張部46の最上部46t近傍に位置させた状態で同膨張部46内に配置している(図7(a))。
そのため、最初に展開及び膨張する前膨張部59によって肩部PSを押上げ、前膨張部59に遅れて展開及び膨張する前膨張部59によって腕部PAを徐々に押上げることができる。
(3)エアバッグ本体41を収納用形態にする際に、前膨張部59を、乗員側の面(本体布部43)を内側に巻き込むように同一方向に向かって繰り返し折り畳むロール折りにより、ガス発生器30に向けて折り畳んでいる(図12(a),(b))。
そのため、前膨張部59の傾斜部47を、乗員Pの腕部PAに沿って展開及び膨張させることができ、腕部PAに対し、これを徐々に押上げる力を適正に伝えることができる。
(4)前膨張部59を、アームレスト17よりも上方で展開及び膨張させるようにしている(図7(a))。
そのため、前膨張部59の展開及び膨張がアームレスト17によって妨げられるのを抑制することができる。前膨張部59の展開及び膨張を、アームレスト17の側方よりも広い空間で適切に行なわせ、上記(1)の効果を有効に得ることができる。
(5)車幅方向における膨張部46の寸法が、同膨張部46の前後方向で最大となる箇所に区画部55を設ける(図10(a),(b))。車幅方向における区画部55の寸法W1を、同区画部55が無いと仮定して膨張部46を膨張させたときの、同車幅方向における同膨張部46の寸法W2と同じ又は近似した寸法に設定している(図9(a),(b))。
そのため、後膨張部58の前端部を、乗員Pの肩部PSよりも下方において、採り得る最大の寸法W2で車幅方向に膨張させることで、肩部PSを車内側へ多く押して、肩部PSと側壁部SWとの狭い間隙を拡げ、後膨張部58に遅れて展開及び膨張する前膨張部59の傾斜部47を上記間隙に入り込みやすくすることができる。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
<ガス発生器30について>
・ガス発生器30の全体が後膨張部58の内部に配置されてもよい。
<エアバッグ本体41について>
・傾斜部47の前端部47fは、上記実施形態のように上記中央部46cの上方近傍に設定されてもよいが、それよりも低い箇所に設定されてもよい。この場合にも、傾斜部47によって乗員Pの腕部PAを徐々に押上げる効果は得られる。
・膨張部46の最上部46tを設定する際の指標として、上記実施形態では、乗員Pの肩部PSの回動中心Oが採用されたが、これに代えて、シートバック23の上端面23u(図1参照)が指標として採用されてもよい。
具体的には、シートバック23の上端面23uが肩部PSの回動中心Oよりも低い場合には、膨張部46の最上部46tが、シートバック23の上端面23uよりも低い箇所に設定される。
要するに、膨張部46の最上部46tは、乗員Pの肩部PSに接近した箇所であって、同肩部PSの回動中心Oと、シートバック23の上端面23uとのいずれか低い方よりも低い箇所に設定される。
このように、設定の指標が変更された場合であっても、膨張部46の展開及び膨張に伴い乗員Pの肩部PSに過大な負荷が加わるのを抑制する効果が、上記実施形態と同様に得られる。
・エアバッグ本体41においてロール折りが行なわれる箇所が、少なくとも前膨張部59を含むことを条件に変更されてもよい。すなわち、前膨張部59に加え、後膨張部58の少なくとも前部がロール折りの対象とされてもよい。
・エアバッグ本体41は、その略全体が上記実施形態のように膨張部46からなるものであってもよいが、膨張用ガスが供給されず膨張することのない非膨張部を一部に有するものであってもよい。
・エアバッグ本体41は、膨張部46の内部が区画部55によって区画されていないものであってもよい。
<ガス流れ規制部について>
・連通部68及び調圧弁69として、上記実施形態で説明したものに代え、後膨張部58の内圧が所定値を越えることを条件とし、その条件が満たされるまでは実質的に閉じ、同条件が満たされることにより開くものが用いられてもよい。
例えば、上記実施形態の区画部55において連通部68の設けられた箇所に、その連通部68に代えて、後膨張部58及び前膨張部59を連通させる孔があけられ、この孔によって連通部が構成される。
また、後膨張部58又は前膨張部59であって、上記孔を塞ぐ位置に、蓋シートが調圧弁として配置される。蓋シートは、孔を取り囲むように設けられた結合部によって区画部55に結合される。なお、結合部は、縫糸を用いた縫合、接着剤を用いた接着等によって形成される。ただし、この結合部としては、後膨張部58の内圧が所定値を越えることをもって、少なくとも一部が破断されるものが用いられる。
このようにすると、後膨張部58の内圧が所定値以下である場合には、その内圧が蓋シートを通じて結合部に加わるが、その結合部は破断されず、蓋シートを孔の周りで区画部55に結合し続ける。
接着剤を孔の周りで区画部55に対し連続して環状に塗布することによって結合部を形成した場合には、孔が蓋シートによって塞がれた状態、すなわち、孔及び蓋シートがともに閉じられた状態になる。
これに対し、縫合によって結合部を形成した場合には、蓋シートが区画部55に対し縫糸によって断続的に結合されることから、縫い目からは若干の膨張用ガスが漏れ得る。そのため、孔及び蓋シートは、ともに実質的に閉じられた状態になる。
また、上記内圧が所定値を越えて、蓋シートを通じて結合部に大きな力が加わると、その結合部の少なくとも一部が破断される。この破断により、孔が蓋シートによって塞がれない状態、すなわち、孔及び蓋シートがともに開かれた状態になる。膨張用ガスは、この破断された箇所を通じて孔及び蓋シートを通過することが可能となる。
<区画部55について>
・区画部55は、その上端部を膨張部46の最上部46t近傍に代え、最上部46tに位置させた状態で同膨張部46内に配置されてもよい。
・区画部55の一対の周縁部は、本体布部43,44に対し、ともに後膨張部58内で結合されてもよいし、前膨張部59内で結合されてもよい。
また、区画部55の一方の周縁部が本体布部43,44に対し後膨張部58内で結合され、他方の周縁部が前膨張部59内で結合されてもよい。
・重ね合わせ部65において、両弁体部71,72として機能するのは、横方向について連通部68に対応する部分である。そのため、後膨張部58の展開及び膨張時に、両弁体部71,72の少なくとも先端部71t,72tが接触して閉じられるのであれば、重ね合わせ部65において、連通部68に対応しない部分(非近傍部分)の形態が変更されてもよい。例えば、重ね合わせ部65において連通部68に対応しない部分(非近傍部分)については、部分的又は全体的に結合されてもよい。この結合の手段としては、縫合であってもよいし、接着であってもよい。このように変更されることで、重ね合わせ部65において連通部68に対応する部分だけ両弁体部71,72として作動させ、対応しない部分が不要に動く現象、例えば、ばたつく現象を抑制することができる。
そのほかにも、重ね合わせ部65において連通部68に対応しない部分(非近傍部分)の少なくとも一部に切欠きが入れられてもよい。
・区画部55と両弁体部71,72とは、互いに異なる部材によって構成されてもよい。
・横結合部67において結合を解除される箇所は、必ずしも折り線56を跨ぐ部分に設定されなくてもよく、折り線56から、同折り線56に直交する方向へ外れた箇所に設定されてもよい。また、両横結合部67間の結合を解除される部分は、複数箇所に設定されてもよい。
・両弁体部71,72を含む一対の重ね合わせ部65は、膨張部46の展開及び膨張前に後膨張部58に代えて、前膨張部59に配置されてもよい。
・二つ折り状態の区画部55は、折り線56を縦結合部57よりも前膨張部59側に位置させた状態で非膨張展開状態の膨張部46に配置されてもよい。この場合、両弁体部71,72を含む重ね合わせ部65が、膨張部46の展開及び膨張前に前膨張部59に配置されてもよい。
・区画部55として、上記実施形態とは異なる外形形状を有するものが用いられてもよい。
<排気孔73について>
・排気孔73は、前膨張部59のうち上記実施形態とは異なる箇所に設けられてもよい。例えば、排気孔は、周縁結合部45と重なる箇所に設けられてもよい。この場合、周縁結合部45による両本体布部43,44の結合を部分的に解除することで、排気孔が形成されてもよい。
<エアバッグモジュールAMの収納部27について>
・車両用シート21のシートバック23に代えて、側壁部SWにおいて乗員Pの外側近傍となる箇所に収納部27が設けられ、ここにエアバッグモジュールAMが組み込まれてもよい。
<その他>
・上記サイドエアバッグ装置は、シートバック23が車両の前方とは異なる方向、例えば側方を向く姿勢で車両用シート21が配置された車両において、その車両用シート21に対し側方(車両の前後方向)から衝撃が加わった場合に、同衝撃から乗員Pを保護するタイプのサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
・上記サイドエアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
・上記サイドエアバッグ装置は、車両以外の乗物、例えば航空機、船舶等における乗物用シートに装備されるサイドエアバッグ装置にも適用可能である。
10…車両(乗物)、17…アームレスト、21…車両用シート(乗物用シート)、23…シートバック、23u…上端面、27…収納部、30…ガス発生器、41…エアバッグ本体、46…膨張部、46c…中央部、46t…最上部、47…傾斜部、47f…前端部、55…区画部、58…後膨張部、59…前膨張部、68…連通部(ガス流れ規制部)、69…調圧弁(ガス流れ規制部)、O…回動中心、P…乗員、PS…肩部、PT…胸部、SW…側壁部、Z…保護領域、W1,W2…寸法。

Claims (5)

  1. 乗物用シートに着座している乗員の胸部を保護領域とする膨張部を備え、前記乗物用シートの側方から乗物に加わる衝撃に応じてガス発生器から供給される膨張用ガスにより、前記保護領域の側方で前記膨張部を展開及び膨張させて乗員を拘束するエアバッグ本体を備え、
    前記膨張部の最上部は、前記乗員の肩部に接近した箇所であって、同肩部の回動中心と、前記乗物用シートにおけるシートバックの上端面とのいずれか低い方よりも低い箇所に位置し、
    前記膨張部の前記最上部よりも前側には、同最上部から前方へ離れるほど低くなる傾斜部が形成され、
    前記傾斜部の前端部は、前記膨張部の上下方向における中央部の上方近傍又はそれよりも低い箇所に設定されており、
    前記膨張部内は、ガス流れ規制部を有する区画部により、前記ガス発生器から膨張用ガスが供給される後膨張部と、前記区画部よりも前側に位置し、かつ前記後膨張部及び前記ガス流れ規制部を経た膨張用ガスが供給される前膨張部とに区画され、
    前記区画部は、その上端部を前記膨張部の前記最上部又はその近傍に位置させた状態で同膨張部内に配置されており、
    前記区画部の上端部は、前記肩部の回動中心より前側に位置しているサイドエアバッグ装置。
  2. 前記エアバッグ本体は、車幅方向に重ね合された一対の布片の周縁部に設けられた周縁結合部を互いに結合することによって形成されており、
    前記周縁結合部によって囲まれた空間が前記膨張部とされており、
    前記周縁結合部の下部は、柱状をなす前記ガス発生器の軸線と直交する方向よりも上方に向かって傾斜する直線状に形成されている請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
  3. 前記エアバッグ本体は折り畳まれることにより収納用形態にされて、前記乗員の側方近傍の収納部に収容されるものであり、
    前記収納用形態のエアバッグ本体における少なくとも前膨張部は、乗員側の面を内側に巻き込むように同一方向に向かって繰り返し折り畳むロール折りにより、前記ガス発生器に向けて折り畳まれている請求項1又は2に記載のサイドエアバッグ装置。
  4. 前記前膨張部は、前記乗物の側壁部に設けられたアームレストよりも上方で展開及び膨張するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
  5. 前記区画部は、前記乗物用シートの幅方向における前記膨張部の寸法が、同膨張部の前後方向で最大となる箇所に設けられ、
    前記幅方向における前記区画部の寸法は、同区画部が無いと仮定して前記膨張部を膨張させたときの、同幅方向における同膨張部の寸法と同じ又は近似した寸法に設定されている請求項〜4のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
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