以下に添付図面を参照しながら、本発明を適用した画像記録装置およびヘッド駆動方法の実施形態について詳しく説明する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明を適用した画像記録装置の一例として、記録媒体にロール紙を用いてフルカラーの画像を記録する構成の画像記録装置を例示するが、適用可能な画像記録装置はこの例に限らない。また、以下で説明する実施形態では、複数の記録ヘッドを記録媒体の搬送方向と直交するように配置したライン型のヘッドアレイを用いて記録媒体に画像を記録する構成の画像記録装置を例示するが、適用可能な画像記録装置はこの例に限らない。例えば、特開2014−104716号公報の図3に開示されているように、複数の記録ヘッドを搭載したシリアルヘッドを用いて画像を記録するシリアル型の画像記録装置に対しても、本発明は有効に適用可能である。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の画像記録装置1の全体構成を示す概略図である。本実施形態の画像記録装置1は、図1に示すように、用紙供給部2と用紙回収部3との間に配置されている。この画像記録装置1は、用紙供給部2から高速で繰り出されたロール紙(記録媒体)Pに対して所望のカラー画像を記録する。画像が記録されたロール紙Pは、用紙回収部3で順次巻き取り回収される。
画像記録装置1には、ロール紙Pを搬送するための搬送装置が設けられている。この搬送装置は、規制ガイド4、インフィード部5、ダンサローラ6、EPC(Edge Position Control)7、蛇行量検出器8、アウトフィード部9およびプラー10を備える。規制ガイド4は、用紙供給部2から供給されたロール紙Pの幅方向の位置決めを行う。インフィード部5は、駆動ローラと従動ローラで構成され、用紙供給部2からロール紙Pを繰り出して下流側に送る。ダンサローラ6は、ロール紙Pの張力に対応して上下動するように構成され、ロール紙Pの張力に対応する位置信号を出力する。EPC7は、ロール紙Pの蛇行を制御する。蛇行量検出器8は、EPC7でのフィードバック制御に使用するロール紙Pの蛇行量を検出する。アウトフィード部9は、ロール紙Pを設定された速度で搬送するために一定速度で回転する駆動ローラと従動ローラからなる。プラー10は、ロール紙Pを装置外に排紙する駆動ローラと従動ローラからなる。
この搬送装置は、ダンサローラ6が出力する位置信号に応じてインフィード部5の回転を制御することにより、搬送中のロール紙Pの張力を一定に保つ張力制御型の搬送装置として構成されている。
また、画像記録装置1には、フルカラー対応のラインヘッドとして構成されたヘッドモジュール11と、このヘッドモジュール11と対向するように設けられたプラテン12と、乾燥手段13とが設けられている。ヘッドモジュール11は、インクを吐出するノズルを記録領域幅の全域に配置したライン型のヘッドアレイをブラック、シアン、マゼンタ、イエローの色ごとに有し、フルカラー画像の記録は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各ヘッドアレイを用いて行われる。
各色のヘッドアレイのノズル面は、プラテン12上に所定の隙間を保って支持されている。ヘッドモジュール11がロール紙Pの搬送速度に同期してインクの吐出を行うことで、ロール紙P上にカラー画像が記録される。乾燥手段13は、ヘッドモジュール11によりロール紙P上に吐出されたインクをロール紙Pに定着させるためのものである。図1の例では、乾燥手段10として、ロール紙Pから若干離れた位置に配置される非接触の乾燥装置を用いているが、接触式の乾燥装置であってもよい。
次に、図2乃至図7を用いてヘッドモジュール11の具体例について詳しく説明する。図2は、ヘッドモジュール11の全体構成を示す斜視図、図3は、ヘッドアレイを説明する図、図4は、記録ヘッドを千鳥状に配置した例を説明する図、図5は、記録ヘッドのノズル面を拡大して示す平面図、図6は、記録ヘッドを駆動制御基板に接続した状態を示す図、図7は、記録ヘッドにおけるヘッド部の分解斜視図である。
図2に示すように、ヘッドモジュール11は、駆動制御基板14と、記録ヘッド15と、ケーブル16と、アジャストプレート17とを備える。駆動制御基板14は、記録ヘッド15内の圧電素子53(図7参照)を駆動するための駆動波形、および、画像データに応じて駆動波形の印加を制御するための階調制御信号を生成する回路を搭載したリジッド基板である。ケーブル16は、駆動制御基板14と記録ヘッド15を電気的に接続するためのものである。アジャストプレート17は、複数の記録ヘッド15を高精度に配置固定するものである。記録ヘッド15は、駆動制御基板14からケーブル16を介して送信される駆動波形および階調制御信号に応じて、上述の搬送装置により搬送されたロール紙Pにプラテン12上でインクを吐出する。
本実施形態で例示するヘッドモジュール11は、1枚の駆動制御基板14に対して複数の記録ヘッド15が接続されて駆動可能な構成になっている。図2の例では、1枚の駆動制御基板14で最大8個の記録ヘッド15を駆動制御することが可能である。図2の例では、アジャストプレート17に16個の記録ヘッド15が配置されているため、2枚の駆動制御基板14が用いられている。なお、図2では図面を簡略化するために、一部の記録ヘッド15がケーブル16を介して駆動制御基板14に接続されている状態を図示しているが、実際には16個の記録ヘッド15すべてがケーブル16を介して駆動制御基板14に接続される。
図3に示すように、ヘッドモジュール11は、フルカラー画像に対応するため、ブラックのインクを吐出するヘッドアレイ18Kと、シアンのインクを吐出するヘッドアレイ18Cと、マゼンタのインクを吐出するヘッドアレイ18Mと、イエローのインクを吐出するヘッドアレイ18Yとを有している。以下、これらを総称してヘッドアレイ18という。各ヘッドアレイ18は、それぞれ、図中矢印で示すロール紙Pの搬送方向と直交する方向に並ぶように配置された複数(図3の例では4個)の記録ヘッド15の集合体として構成されている。このように複数の記録ヘッド15をアレイ化してヘッドアレイ18とすることにより、個々の記録ヘッド15のサイズを大きくすることなく広域な記録領域幅を確保できるようにしている。
なお、図3では、複数の記録ヘッド15をロール紙Pの搬送方向と直交する方向に直線状に並べた構成のヘッドアレイ18を例示したが、図4に示すように、複数の記録ヘッド15をロール紙Pの搬送方向と直交する方向に沿って千鳥状に配置した構成であってもよい。以下では、千鳥状に配置された複数の記録ヘッド15によりヘッドアレイ18が構成されているものとして説明する。
記録ヘッド15には、図5に示すように、ノズル面となる底面(プラテン12と対向する面)15a側にて開口する多数のノズル19が設けられている。図5に例示する記録ヘッド15では、64個のノズル19が直線状に並ぶノズル列を2列設け、一方のノズル列に含まれるノズル19と他方のノズル列に含まれるノズル19とが交互に並ぶように、多数のノズル19を千鳥状に配列している。このように多数のノズル19を千鳥状に配列することで、高解像度に対応している。
図6に示すように、駆動制御基板14には、冷却フィン21、電流増幅部22、電解コンデンサ23、送信側FPGA(Field-Programmable Gate Array)24、コネクタ25などが搭載されている。また、駆動制御基板14には、後述のDAC(D/A Converter)26およびオペアンプ27(図8、図13参照)も搭載されている。冷却フィン21は、電流増幅部22の損失として発せられるジュール熱を冷却するために設けられている。また、コネクタ25は、記録ヘッド15との電気的接続を図るためのケーブル16が装着されるコネクタである。
駆動制御基板14では、後述するように、記録ヘッド15ごとに生成される駆動波形データをDAC26によってアナログの駆動波形(電圧波形)に変換し、オペアンプ27にて電圧増幅し、電流増幅部22にて電流増幅して記録ヘッド15内の圧電素子53(図7参照)に供給する。電解コンデンサ23は、圧電素子53への電流供給を補助するためのものである。送信側FPGA24は、画像データに応じて生成される階調制御信号のシリアライズ処理を実施して記録ヘッド15に送信する機能を有している。
記録ヘッド15は、図6に示すように、画像データ制御基板31、フレキシブルプリント基板32、ヘッドタンク33、ヘッド基板34、ヘッド部35などを備える。
画像データ制御基板31は、受信側FPGA36と、ケーブル16が装着されるコネクタ37とを搭載したリジッド基板であり、例えば、ヘッドタンク33の側面にタッピンネジ38にて固定される。受信側FPGA36は、駆動制御基板14に搭載された送信側FPGA24からシリアル転送される階調制御信号をデシリアライズ処理し、後述の圧電素子駆動IC55(図7参照)にパラレル転送する機能を有している。
フレキシブルプリント基板32は、画像データ制御基板31とヘッド基板34とを電気的に接続するためのものである。フレキシブルプリント基板32は、柔軟な素材で構成された基板であり、容易に折り曲げることが可能である。
ヘッド基板34は、ヘッド部35内に実装される後述の圧電素子支持基板54(図7参照)を接続するためのパッドが設けられたリジッド基板であり、ヘッド部35とヘッドタンク33との間に接着・配置されている。ヘッド部35は、アジャストプレート17に配置固定される。なお、ヘッド部35の内部構成については、図7を用いて後述する。
ヘッドタンク33は、ノズル19から吐出されるインクを一時的に収容するためのタンクである。また、インクは、ヘッドタンク33の上部に設けられたジョイント部39を通して供給される。なお、ジョイント部39から上位の構成については、図示および説明を省略する。
本実施形態で例示するヘッドモジュール11では、電流増幅部22や冷却フィン21などを記録ヘッド15とは別体の駆動制御基板14に実装し、さらに、リジッド基板である画像データ制御基板31およびヘッド基板34とフレキシブル基板32とを一体化した基板を使用する(つまり、基板間を接続するためのコネクタを搭載しない)ことで、記録ヘッド15の小型化を実現している。
ここで、記録ヘッド15のヘッド部35内部の詳細な構成について説明する。図7に示すように、ヘッド部35は、ノズルプレート40、圧力室プレート41、リストリクタプレート43、ダイアフラムプレート45、剛性プレート50および圧電素子群52を備える。
ノズルプレート40には、多数のノズル19が形成されている。圧力室プレート41には、各ノズル19に対応する圧力室42が形成されている。リストリクタプレート43には、剛性プレート50に設けられた共通インク流路48と圧力室プレート41の圧力室42とを連通して圧力室42へのインク流量を制御するリストリクタ44が形成されている。ダイアフラムプレート45には、振動板47とフィルタ46とが設けられている。これらノズルプレート40、圧力室プレート41、リストリクタプレート43およびダイアフラムプレート45を位置決めしながら順次重ねて接合することにより、流路板が構成される。
剛性プレート50には、共通インク流路48と、圧電素子群52を収容するための開口部49と、ヘッドタンク33内のインクを共通インク流路48に供給するためのインク導入パイプ51とが設けられている。上記の流路板は、ダイアフラムプレート45に設けられたフィルタ46が共通インク流路48と対向するように、剛性プレート50に接合される。
圧電素子群52は、圧電素子支持基板54上に多数の圧電素子53を配列した構成である。圧電素子支持基板54には、図6に示したヘッド基板34と接続するための電極パッド56が設けられ、ヘッド基板34と半田付けなどにより電気的に接続される。また、圧電素子支持基板54には、受信側FPGA36からパラレル伝送される階調制御信号に応じて、圧電素子53に駆動波形を印加する圧電素子駆動IC55が搭載される。圧電素子群52は、剛性プレート50に設けられた開口部49内に収容される。そして、各圧電素子53の自由端が、ダイアフラムプレート45に設けられた振動板47に接着固定される。
なお、図7では図面を簡略化するために、ノズル19、圧力室42、リストリクタ44、圧電素子53などの数を減らして図示している。また、このヘッド部35におけるインクの吐出動作は公知であるため、詳細な説明は省略する。
次に、記録ヘッド15を駆動制御するための回路構成と補正技術の詳細について、従来の一般的な技術を比較例としながら説明する。なお、以下の説明において、本実施形態と比較例とで共通の構成要素については同一の符号を用いることとする。
まず、比較例の回路構成と補正技術について説明する。図8は、比較例の回路構成を示すブロック図である。記録ヘッド15を駆動制御するための比較例の回路は、図8に示すように、同時駆動ノズル数検出および補正量算出部61と、駆動波形データ生成部62と、DAC26と、オペアンプ27と、電流増幅部22とを備える。DAC26、オペアンプ27および電流増幅部22は、上述したように駆動制御基板14に搭載されている。同時駆動ノズル数検出および補正量算出部61と駆動波形データ生成部62は、例えば、画像記録装置1の装置本体部に配置された、あるいは装置本体部に接続されたコントローラ部60に設けられている。
同時駆動ノズル数検出および補正量算出部61は、画像データに基づいて同時駆動ノズル数を検出し、検出した同時駆動ノズル数に基づいて、インクの吐出速度Vjとインク体積Mjの変動を補正する補正量を算出し、駆動波形データ生成部62に渡す。同時駆動ノズル数は、上述したように、同一駆動タイミングで駆動されるノズル数である。なお、回路のばらつきによって駆動するタイミングがずれる場合もあるが、同一駆動タイミングとはこのような場合も含まれる。
駆動波形データ生成部62は、同時駆動ノズル数検出および補正量算出部61により算出された補正量を用いて、基準となる波形データとして予め定められた基準波形データを補正することにより、記録ヘッド15を駆動するための駆動波形データを生成する。駆動波形データ生成部62が生成した駆動波形データは、コントローラ部60から駆動制御基板14へと送信されてDAC26に入力される。
DAC26は、入力されたデジタルの駆動波形データをアナログの駆動波形(電圧波形)に変換し、オペアンプ27に入力する。オペアンプ27は入力された電圧波形を所定の倍率で電圧増幅し、電流増幅部22に入力する。電流増幅部22は、記録ヘッド15に接続されており、駆動に必要な電圧・電流の駆動波形Vcomが、記録ヘッド15内部の圧電素子53へ供給される。
図9は、同時駆動ノズル数に応じた記録ヘッド15の吐出特性の一例を説明する図である。図の横軸が同時駆動ノズル数を示し、縦軸が記録ヘッド15の吐出特性であるインクの吐出速度Vjおよびインク体積Mjを示している。また、図中の破線のグラフが駆動波形データの補正を行わない場合(基準波形データを補正せずに駆動波形データとした場合)の記録ヘッド15の吐出特性の変動を表し、実線のグラフが駆動波形データの補正を行った場合(同時駆動ノズル数に応じて基準波形データを補正して駆動波形データとした場合)の記録ヘッド15の吐出特性の変動を表している。なお、同時駆動ノズル数n1,n2,n3は、n1<n2<n3の関係にあるものとする。
記録ヘッド15の各ノズル19に対してそれぞれ設けられた圧電素子53には、共通の駆動波形Vcomが印加される。このとき、同時駆動ノズル数に応じて駆動波形に対する負荷(静電容量)が変化するため、駆動波形データの補正を行わない場合は、駆動波形にオーバーシュートおよびアンダーシュートが発生し、図9の破線のグラフで示すように、記録ヘッド15の吐出特性であるインクの吐出速度Vjとインク体積Mjが、同時駆動ノズル数に応じて大きく変動することになる。これに対し、駆動波形データの補正を行う場合は、同時駆動ノズル数が変化しても常に一定の駆動波形が圧電素子53に印加されるため、図9の実線のグラフで示すように、同時駆動ノズル数の変化に起因するインクの吐出速度Vjとインク体積Mjの変動を抑制し、これらの吐出特性を常に目標値に近い状態で安定化させることができる。
図10は、同時駆動ノズル数に応じて駆動波形データを補正することによる効果を説明する図である。図10では、同時駆動ノズル数をn1→n2→n3と変化させながら記録ヘッド15からインクを吐出した場合に記録される画像の濃度変化を示しており、(a)が駆動波形データの補正を行わない場合の画像の濃度変化、(b)が駆動波形データの補正を行った場合の画像の濃度変化をそれぞれ示している。
記録ヘッド15が図9に示した吐出特性を持つ場合、同時駆動ノズル数に応じた駆動波形データの補正を行わないと、同時駆動ノズル数がn3のときと比べてn1のときの方がインクの吐出速度Vjやインク体積Mjが小さいため、図10(a)に示すように、n3個のノズルを駆動して記録した画像に比べ、n1個のノズルを駆動して記録した画像の方が濃度が薄くなる(濃度差ΔEが生じる)。これに対し、駆動波形データの補正を行った場合は、同時駆動ノズル数が変化したことに起因するインクの吐出速度Vjやインク体積Mjの変動が抑制されるため、図10(b)に示すように、記録した画像の濃度が均一化される。
以上のように、比較例では、同時駆動ノズル数に応じて算出した補正量を用いて駆動波形データを補正することにより、同時駆動ノズル数が変化したことに起因する記録ヘッド15の吐出特性の変動を抑制することができる。しかし、比較例では、記録ヘッド15ごとの吐出特性の違いについて考慮されていないため、本実施形態の画像記録装置1のように、複数の記録ヘッド15の集合体として構成されるヘッドアレイ18により1ライン分の画像の記録を行う構成の場合、記録ヘッド15ごとの吐出特性の違いが吸収できずに1ライン分の画像に濃度ムラが生じる懸念がある。
図11は、複数の記録ヘッド15の吐出特性の違いを説明する図である。図9と同様に、図の横軸が同時駆動ノズル数(n1<n2<n3)を示し、縦軸が記録ヘッド15の吐出特性(インクの吐出速度Vj、インク体積Mj)を示している。図11(a)のグラフは、駆動波形データの補正を行わない場合における3つの記録ヘッド15(ここでは、記録ヘッドH1,H2,H3とする)の吐出特性の変動を表し、図11(b)のグラフは、図11(a)の記録ヘッドH2の吐出特性に合せて同時駆動ノズル数に応じた駆動波形データの補正を一律に行った場合における各記録ヘッドH1,H2,H3の吐出特性の変動を表している。
記録ヘッド15には、例えば、内部の圧電素子53の静電容量のバラつきや、ノズルプレート40に形成されたノズル19の大きさのバラつきなど、製造工程における誤差に起因した固有の吐出特性がある。つまり、図11(a)の各記録ヘッドH1,H2,H3の吐出特性の変動を示すグラフから分かるように、同時駆動ノズル数が同じであっても、各記録ヘッドH1,H2,H3の吐出速度Vjやインク体積Mjは異なっている。このため、例えば記録ヘッドH2の吐出特性に合わせて算出した補正量を用いて、各記録ヘッドH1,H2,H3について一律に同時駆動ノズル数に応じた駆動波形データの補正を行った場合、図11(b)に示すように、記録ヘッドH2の吐出特性(インクの吐出速度Vj、インク体積Mj)を目標値付近で安定化させることができるが、記録ヘッドH1の吐出特性は目標値よりも大きくなり、記録ヘッドH3の吐出特性は目標値よりも小さくなる。
図12は、ヘッドアレイ18を構成する複数の記録ヘッド15の吐出特性の違いによる影響を説明する図である。図12では、図11に示した3つの記録ヘッドH1,H2,H3をロール紙Pの搬送方向と直交する方向に千鳥状に配置してヘッドアレイ18を構成した例を示しており、図10と同様に、同時駆動ノズル数をn1→n2→n3と変化させながら、記録ヘッドH2の吐出特性に合わせて駆動波形データの補正を行って各記録ヘッドH1,H2,H3からインクを吐出した場合に記録される画像の濃度変化を示している。
図12に示すように、記録ヘッドH2により記録された画像は、同時駆動ノズル数が変化しても、駆動波形データの補正によりインクの吐出速度Vjやインク体積Mjが目標値付近で安定するため、画像の濃度が均一化されている。これに対し、記録ヘッドH1により記録された画像は、同時駆動ノズル数がn1の場合にインクの吐出速度Vjやインク体積Mjが目標値よりも大きくなるため、同時駆動ノズル数がn3の場合よりも画像の濃度が濃くなる(濃度差ΔE’が生じる)。また、記録ヘッドH3により記録された画像は、同時駆動ノズル数がn1の場合にインクの吐出速度Vjやインク体積Mjが目標値よりも小さくなるため、同時駆動ノズル数がn3の場合よりも画像の濃度が薄くなる(濃度差ΔE’’が生じる)。したがって、これら3つの記録ヘッドH1,H2,H3を含むヘッドアレイ18を用いて画像の記録を行うと、記録された画像に濃度ムラが生じ、画像品質が低下する。なお、ここでは3つの記録ヘッドH1,H2,H3について説明したが、ヘッドアレイ18を構成する記録ヘッド15ごとに、このような画像の濃度ムラが生じる可能性がある。
次に、本実施形態の回路構成と補正技術について説明する。図13は、本実施形態の回路構成を示すブロック図である。記録ヘッド15を駆動制御するための本実施形態の回路は、図13に示すように、データ格納部100と、同時駆動ノズル数検出部101と、温度検出部102と、補正パラメータ選択部103と、駆動波形データ生成部104と、DAC26と、オペアンプ27と、電流増幅部22とを備える。DAC26、オペアンプ27および電流増幅部22は、上述したように駆動制御基板14に搭載されている。同時駆動ノズル数検出部101、補正パラメータ選択部103および駆動波形データ生成部104は、例えば、画像記録装置1の装置本体部に配置された、あるいは装置本体部に接続されたコントローラ部60に設けられている。なお、同時駆動ノズル数検出部101、補正パラメータ選択部103および駆動波形データ生成部104を、駆動制御基板14に搭載したASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGAなどで実現する構成であってもよい。
データ格納部100は、本実施形態の画像記録装置1が備える複数の記録ヘッド15の各々に対応するパラメータセットを保持する不揮発性メモリである。パラメータセットは、基準波形データを補正して駆動波形データを生成するための複数の補正パラメータを含む。パラメータセットに含まれる各補正パラメータは、同時駆動ノズル数と温度に応じて定められた値を持つ。補正パラメータは、基準波形データに対する補正倍率であってもよいし、補正量であってもよい。以下では、基準波形データに対する補正倍率を補正パラメータとして扱うものとする。また、以下では、基準波形データの電圧値を補正対象とした例と、基準波形データの立ち上がり時間および立ち下り時間を補正対象とした例を示すが、基準波形データの電圧値と基準波形データの立ち上がり時間および立ち下り時間とを同時に補正する構成であってもよい。
図14は、基準波形データの電圧値を補正対象とする場合のパラメータセットの一例を示す図である。例えば、図14に示すパラメータセットY1は、同時駆動ノズル数Xが1≦X≦n1のとき、温度TがT1であれば補正倍率を1.15とし、温度TがT2であれば補正倍率を1.2とし、温度TがT3であれば補正倍率を1.25とすることを示している。また、このパラメータセットY1は、同時駆動ノズル数Xがn1<X≦n2のとき、温度TがT1であれば補正倍率を1.45とし、温度TがT2であれば補正倍率を1.5とし、温度TがT3であれば補正倍率を1.55とすることを示している。また、このパラメータセットY1は、同時駆動ノズル数Xがn2<X≦n3のとき、温度TがT1であれば補正倍率を1.05とし、温度TがT2であれば補正倍率を1.1とし、温度TがT3であれば補正倍率を1.15とすることを示している。このように、パラメータセットは、同時駆動ノズル数Xと温度Tとに応じて定められた補正倍率(補正パラメータ)の集合である。なお、図14において、同時駆動ノズル数Xに対する変数n1,n2,n3は、n1<n2<n3の関係にあるものとしている。また、温度Tに対する変数T1,T2,T3は、T1<T2<T3の関係にあるものとしている。
図15は、図14に例示するパラメータセットを用いて基準波形データの電圧値を補正した場合の駆動波形の例を示す図である。図中の実線の波形は補正前(つまり補正倍率1.0)の基準波形データに応じた基準波形を表し、破線の波形が補正倍率1.15で電圧値が補正された基準波形データに応じた基準波形を表し、一点鎖線の波形が補正倍率1.2で電圧値が補正された基準波形データに応じた基準波形を表している。この図15の例のように、基準波形データの電圧値を補正する構成とした場合は、駆動制御基板14に搭載されているDAC26やオペアンプ27の応答速度などの性能によらないため、回路構成を単純化することができ、装置コストを抑制できるといった利点がある。
図16は、基準波形データの立ち上がり時間および立ち下り時間を補正対象とする場合のパラメータセットの一例を示す図である。図16に例示するパラメータセットは、図14に例示したパラメータセットと同様に、同時駆動ノズル数Xと温度Tとに応じて定められた補正倍率(補正パラメータ)の集合である。ただし、図14に例示したパラメータセットは、駆動波形データの電圧値に対する補正倍率の集合であるのに対し、図16に例示するパラメータセットは、駆動波形データの立ち上がり時間および立ち下り時間に対する補正倍率の集合となっている。
図17は、図16に例示するパラメータセットを用いて基準波形データの立ち上がり時間および立ち下り時間を補正した場合の駆動波形の例を示す図である。図中の実線の波形は補正前(つまり補正倍率1.0)の基準波形データに応じた基準波形を表し、破線の波形が補正倍率0.75で立ち上がり時間および立ち下り時間が補正された基準波形データに応じた基準波形を表し、一点鎖線の波形が補正倍率0.50で立ち上がり時間および立ち下り時間が補正された基準波形データに応じた基準波形を表している。この図17の例のように、基準波形データの立ち上がり時間および立ち下り時間を補正する構成とした場合は、電圧の増加なし吐出特性のバラつきを抑制できるため、消費電力の増加を抑制できる。また、駆動波形の波形長を短縮できるので、高周波駆動が可能になるといった利点がある。
データ格納部100には、本実施形態の画像記録装置1が備える複数の記録ヘッド15ごとに、以上のようなパラメータセットが格納されている。なお、本実施形態では、図14や図16に示すように、同時駆動ノズル数と温度に応じた補正パラメータを離散的な値として持つパラメータセットを例示するが、これに限らず、例えば同時駆動ノズル数と温度との関数をパラメータセットとしてデータ格納部100が保持する構成であってもよい。記録ヘッド15ごとのパラメータセットを決定する方法については、具体的な一例を後述する。
データ格納部100は、すべての記録ヘッド15に対応するすべてのパラメータセットを保持する単一の不揮発性メモリで構成されていてもよいし、個々のパラメータセット、あるいは所定数のパラメータセットを保持する複数の不揮発性メモリで構成されていてもよい。
個々のパラメータセットを保持する複数の不揮発性メモリによりデータ格納部100を構成する場合は、複数の不揮発性メモリのそれぞれを複数の記録ヘッド15に各々設け、各不揮発性メモリに当該記録ヘッド15に対応するパラメータセットを保持させる。これにより、記録ヘッド15を交換する際には、新規な記録ヘッド15に対応するパラメータセットを取得することができる。
また、所定数のパラメータセットを保持する複数の不揮発性メモリによりデータ格納部100を構成する場合は、例えば、複数の不揮発性メモリのそれぞれを複数の駆動制御基板14に各々搭載し、各不揮発性メモリに当該駆動制御基板14に接続された各記録ヘッド15に対応するパラメータセットを保持させる。これにより、画像記録装置1が備える複数の記録ヘッド15の各々に対応するパラメータセットを、各記録ヘッド15の駆動に関わる駆動制御基板14ごとに管理することができる。
また、すべての記録ヘッド15に対応するすべてのパラメータセットを保持する単一の不揮発性メモリによりデータ格納部100を構成する場合は、当該不揮発性メモリを画像記録装置1の装置本体部のいずれかの位置に設けておけばよい。なお、装置本体部にコントローラ部60が接続されている場合は、コントローラ部60に当該不揮発性メモリ(データ格納部100)を設けるようにしてもよい。
図13に戻り、同時駆動ノズル数検出部101は、ロール紙Pに記録する画像の画像データに基づいて、同時駆動ノズル数Xを記録ヘッド15ごとに検出する。すなわち、比較例では1ライン分の画像を記録する際に駆動されるノズルの総数を同時駆動ノズル数として検出していたが、本実施形態では、1ライン分の画像を記録する際に駆動されるノズル数を、ヘッドアレイ18に含まれる複数の記録ヘッド15ごとに、同時駆動ノズル数Xとして検出する。同時駆動ノズル数検出部101により検出された記録ヘッド15ごとの同時駆動ノズル数Xは、補正パラメータ選択部103に渡される。
温度検出部102は、例えば、記録ヘッド15内部に設けられたサーミスタなどにより記録ヘッド15の温度Tを検出する。温度検出部102は、複数の記録ヘッド15のすべてについて温度Tを検出する構成であってもよいし、一部の記録ヘッド15の温度Tを検出して、近傍の記録ヘッド15の温度Tを代用する構成であってもよい。温度検出部102により検出された記録ヘッド15の温度Tは、補正パラメータ選択部103に渡される。
補正パラメータ選択部103は、画像記録装置1が備える複数の記録ヘッド15のそれぞれについて、記録ヘッド15に対応するパラメータセットに含まれる複数の補正パラメータのうち、同時駆動ノズル数検出部101により検出された同時駆動ノズル数Xと、温度検出部102により検出された温度Tとに応じた補正パラメータを選択する。例えば、ある記録ヘッド15に対応するパラメータセットが図14に示したパラメータセットY1である場合、同時駆動ノズル数検出部101により検出された同時駆動ノズル数Xがn1<X≦n2の範囲内であり、かつ、温度検出部102により検出された温度TがT2であれば、補正パラメータ選択部103は、パラメータセットY1の中から補正パラメータ(図14の例では基本波形データの電圧に対する補正倍率)として1.5を選択する。また、例えば、ある記録ヘッド15に対応するパラメータセットが図16に示したパラメータセットY1である場合、同時駆動ノズル数検出部101により検出された同時駆動ノズル数Xがn1<X≦n2の範囲内であり、かつ、温度検出部102により検出された温度TがT2であれば、補正パラメータ選択部103は、パラメータセットY1の中から補正パラメータ(図16の例では基本波形データの立ち上がり時間および立ち下り時間に対する補正倍率)として0.75を選択する。補正パラメータ選択部103により記録ヘッド15ごとに選択された補正パラメータは、駆動波形データ生成部104に渡される。
駆動波形データ生成部104は、補正パラメータ選択部103によって記録ヘッド15ごとに選択された補正パラメータを用いて基準波形データを補正し、記録ヘッド15ごとの駆動波形データを生成する。例えば、補正パラメータ選択部103によって記録ヘッド15ごとに選択された補正パラメータが基本波形データの電圧に対する補正倍率であれば、駆動波形データ生成部104は、記録ヘッド15ごとに選択された補正倍率で基準波形データの電圧を補正することにより、記録ヘッド15ごとの駆動波形データを生成する。また、例えば、補正パラメータ選択部103によって記録ヘッド15ごとに選択された補正パラメータが基本波形データの立ち上がり時間および立ち下り時間に対する補正倍率であれば、駆動波形データ生成部104は、記録ヘッド15ごとに選択された補正倍率で基準波形データの立ち上がり時間および立ち下り時間を補正することにより、記録ヘッド15ごとの駆動波形データを生成する。駆動波形データ生成部104により生成された記録ヘッド15ごとの駆動波形データは、コントローラ部60から各記録ヘッド15が接続された駆動制御基板14へと送信される。その後、比較例と同様に、駆動波形データに応じた駆動波形Vcomが記録ヘッド15内部の圧電素子53に供給され、インクの吐出が行われる。
図18は、本実施形態の効果を説明する図である。図18では、図12の例と同様に、図11に示した3つの記録ヘッドH1,H2,H3をロール紙Pの搬送方向と直交する方向に千鳥状に配置してヘッドアレイ18を構成した例を示しており、同時駆動ノズル数をn1→n2→n3と変化させながら、各記録ヘッドH1,H2,H3ごとに選択した補正パラメータを用いて駆動波形データの補正を行って、各記録ヘッドH1,H2,H3からインクを吐出した場合に記録される画像の濃度変化を示している。
本実施形態では、ヘッドアレイ18を構成する各記録ヘッドH1,H2,H3を駆動するための駆動波形データが、同時駆動ノズル数に応じた吐出特性の変動だけでなく、各記録ヘッドH1,H2,H3に固有の吐出特性の違いも吸収するように補正される。このため、図18に示すように、記録された画像に記録ヘッドH1,H2,H3ごとの濃度ムラが生じることを有効に抑制することができ、高い画像品質を実現することができる。
ここで、記録ヘッド15ごとのパラメータセットを決定する方法の具体例について説明する。画像記録装置1が備える複数の記録ヘッド15ごとのパラメータセットは、例えば画像記録装置1の出荷前に決定してデータ格納部100に格納しておくことができる。以下では、記録ヘッド15ごとのパラメータセットを決定する方法の一例として、予め定められたいくつかのパラメータセットの中から各記録ヘッド15に最適なパラメータセットを選択する方法を説明する。ここでは、図14あるいは図16に示したパラメータセットY1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・の中から、各記録ヘッド15に最適なパラメータセットを選択する例を説明する。
本例では、複数の記録ヘッド15を用いてロール紙Pにテストチャートを記録し、このテストチャートを用いて、図14あるいは図16に示したパラメータセットY1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・の中から記録ヘッド15ごとのパラメータセットを決定する。
図19は、ロール紙PにテストチャートTCを記録する様子を模式的に示す図である。このテストチャートTCは、各パラメータセットY1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・に対応する複数のパターンPt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5・・・を含む。各パターンは、それぞれのパラメータセットを用い、複数の記録ヘッドH1,H2,H3から同時駆動ノズル数をn1→n2→n3と変化させながらインクを吐出することでロール紙Pに記録されるパターンである。図中矢印で示す方向に搬送されるロール紙Pに対して、使用するパラメータセットを順次切り替えながらこのようなパターンを順次記録していくことで、図19に示すテストチャートTCが得られる。
記録ヘッド15に対して最適なパラメータセットを用いて記録されたパターンは、当該記録ヘッド15により記録された部分の同時駆動ノズル数の変化に応じた濃度差ΔEが小さくなる。したがって、テストチャートTCに含まれる複数のパターンPt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5・・・について、当該記録ヘッド15により記録された部分の同時駆動ノズル数の変化に応じた濃度差ΔEをそれぞれ確認し、濃度差ΔEが最小となるパターンに対応するパラメータセットを、当該記録ヘッド15に対応するパラメータセットとして決定すればよい。
図19の例では、記録ヘッドH1により記録された部分の濃度差ΔEが最小(ΔEmin)となっているのはパターンPt3であるため、パターンPt3に対応するパラメータセットY3を、記録ヘッドH1に対応するパラメータセットとして決定する。また、記録ヘッドH2により記録された部分の濃度差ΔEが最小(ΔEmin)となっているのはパターンPt4であるため、パターンPt4に対応するパラメータセットY4を、記録ヘッドH2に対応するパラメータセットとして決定する。また、記録ヘッドH3により記録された部分の濃度差ΔEが最小(ΔEmin)となっているのはパターンPt2であるため、パターンPt2に対応するパラメータセットY2を、記録ヘッドH3に対応するパラメータセットとして決定する。このように決定された記録ヘッド15ごとのパラメータセットが、例えば記録ヘッド15の識別情報と対応付けてデータ格納部100に格納される。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の画像記録装置1は、複数の記録ヘッド15の各々に対応するパラメータセットを保持し、このパラメータセットに含まれる補正パラメータのうち、記録ヘッド15ごとに検出された同時駆動ノズル数に応じた補正パラメータを選択する。そして、記録ヘッド15ごとに選択した補正パラメータを用いて基準波形データを補正することにより、記録ヘッド15ごとの駆動波形データを生成して各記録ヘッド15を駆動する。したがって、本実施形態の画像記録装置1によれば、同時駆動ノズル数に応じた吐出特性の変動だけでなく、ヘッドアレイ18を構成する複数の記録ヘッド15ごとの吐出特性の違いを吸収して、画像品質の低下を有効に抑制することができる。
また、本実施形態の画像記録装置1は、同時駆動ノズル数に加えて記録ヘッド15の温度を検出し、検出された同時駆動ノズル数と温度とに応じて、パラメータセットから補正パラメータを選択するようにしているので、温度変化に起因する吐出特性の変動も吸収して、高い画像品質を実現することができる。
(第2の実施形態)
次に、記録ヘッド15ごとのパラメータセットを選択してデータ格納部100に格納する機能を画像記録装置1に持たせた例を第2の実施形態として説明する。つまり、本実施形態の画像記録装置1は、工場から出荷されてユーザの使用環境におかれた後、適宜キャリブレーションを行うことで、データ格納部100が保持する記録ヘッド15ごとのパラメータセットを更新することができる。これにより、記録ヘッド15の経時変化、例えば、圧電素子53の静電容量の経時変化などにより吐出特性が変化した場合であっても、記録ヘッド15ごとのパラメータセットを最適な状態に維持し、画像品質の低下を有効に抑制することができる。
図20は、本実施形態の回路構成を示すブロック図である。本実施形態では、図13に示した第1の実施形態の回路構成に対し、テストチャート記録制御部201と、スキャナ202と、パラメータセット選択部203とが追加されている。スキャナ202は、画像記録装置1の装置本体部に接続されている。また、テストチャート記録制御部201およびパラメータセット選択部203は、例えば、画像記録装置1の装置本体部に配置された、あるいは装置本体部に接続されたコントローラ部60に設けられている。その他の構成は第1の実施形態と共通である。以下では、第1の実施形態との相違点のみを説明する。
テストチャート記録制御部201は、例えばオペレータによるキャリブレーション開始の指示を受けて、図19に例示したようなテストチャートTCをロール紙Pに記録させる制御を行う。すなわち、テストチャート記録制御部201は、予め定められた複数のパラメータセットY1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・を順次用いて、搬送されるロール紙Pに対して複数の記録ヘッド15から同時駆動ノズル数を変化させながらインクを吐出させ、複数のパラメータセットY1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・に対応する複数のパターンPt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5・・・を含むテストチャートTCを記録させる。
スキャナ202は、ロール紙Pに記録されたテストチャートTCを光学的に読み取って、テストチャートTCに含まれる複数のパターンPt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5・・・の濃度を表す画像データを生成する。スキャナ202により生成された画像データはコントローラ部60に送られて、パラメータセット選択部203に入力される。なお、本実施形態では、テストチャートTCに含まれる複数のパターンPt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5・・・の濃度を検出するためにスキャナ202を用いているが、スキャナ202に代えて、画像の濃度を検出可能な他の濃度センサを画像記録装置1の装置本体部に接続する構成であってもよい。
パラメータセット選択部203は、スキャナ202により生成された画像データをもとに、複数のパターンPt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5・・・のそれぞれについて、各記録ヘッド15により記録された部分ごとに上述した濃度差ΔEを算出する。そして、同一の記録ヘッド15により記録された部分の濃度差ΔEが最小となるパターンに対応するパラメータセットを、当該記録ヘッド15に対応するパラメータセットとして選択し、選択したパラメータセットを例えば記録ヘッド15の識別情報と対応付けてデータ格納部100に格納する。
以上のように、本実施形態の画像記録装置1は、適宜実施されるキャリブレーションによって、記録ヘッド15ごとの最適なパラメータセットを自動的に選択してデータ格納部100に格納することができる。したがって、本実施形態の画像記録装置1によれば、記録ヘッド15の経時変化により吐出特性が変化した場合であっても、記録ヘッド15ごとのパラメータセットを最適な状態に維持して、画像品質の低下を有効に抑制することができる。
(第3の実施形態)
次に、データ格納部100に格納する記録ヘッド15ごとのパラメータセットをオペレータが指定できるようにした例を第3の実施形態として説明する。本実施形態の画像記録装置1は、第2の実施形態と同様に、適宜実施されるキャリブレーションによってデータ格納部100に格納する記録ヘッド15ごとのパラメータセットを更新することができる。ただし、第2の実施形態では、画像記録装置1が、ロール紙Pに記録したテストチャートTCをスキャナ202により読み取って、記録ヘッド15ごとの最適なパラメータセットを自動的に選択してデータ格納部100に格納していた。これに対し、本実施形態では、テストチャートTCを確認したオペレータが記録ヘッド15ごとのパラメータセットを指定する操作入力を行い、画像記録装置1は、オペレータの操作入力を受け付けて、この操作入力により指定されたパラメータセットを各記録ヘッド15に対応するパラメータセットとして選択し、データ格納部100に格納する。
図21は、本実施形態の回路構成を示すブロック図である。本実施形態では、図20に示した第2の実施形態の回路構成におけるスキャナ202に代えて、入力受付部301が設けられている。その他の構成は第2の実施形態と共通である。以下では、第2の実施形態との相違点のみを説明する。
入力受付部301は、記録ヘッド15ごとのパラメータセットを指定するオペレータの操作入力を受け付けるものであり、例えば、画像記録装置1の装置本体部に接続されたオペレータパネルなどを利用することができる。また、画像記録装置1の装置本体部に接続されたコントローラ部60として、タッチパネルディスプレイやキーボード、マウス、マイクなどの各種入力デバイスを備えたコンピュータ装置を用いる場合、このコントローラ部60の入力デバイスを入力受付部301として利用してもよい。
本実施形態では、キャリブレーションが開始されると第2の実施形態と同様に、テストチャート記録制御部201の制御によりロール紙PにテストチャートTCを記録するが、このテストチャートTCに含まれる複数のパターンPt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5・・・の濃度をオペレータが目視により、あるいは別途設けた濃度計を用いて確認する。そして、オペレータは、テストチャートTCに含まれる複数のパターンPt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5・・・の濃度をもとに、テストチャートTCを記録する際に用いた複数のパラメータセットY1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・のうち、記録ヘッド15ごとに最適なパラメータセットを判定し、記録ヘッド15ごとのパラメータセットを指定する操作入力を行う。このオペレータによる操作入力が、入力受付部301により受け付けられる。入力受付部301が受け付けたオペレータの操作入力の情報は、パラメータセット選択部203に入力される。
本実施形態のパラメータセット選択部203は、テストチャートTCを記録する際に用いた複数のパラメータセットY1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・のうち、各記録ヘッド15に対応するパラメータセットを、入力受付部301が受け付けたオペレータの操作入力に基づいて選択する。そして、パラメータセット選択部203は、記録ヘッド15ごとに選択したパラメータセットを、例えば記録ヘッド15の識別情報と対応付けてデータ格納部100に格納する。
以上のように、本実施形態の画像記録装置1は、適宜実施されるキャリブレーションによって、記録ヘッド15ごとの最適なパラメータセットがオペレータにより指定されると、このオペレータにより指定されたパラメータセットをデータ格納部100に格納することができる。したがって、本実施形態の画像記録装置1によれば、第2の実施形態と同様に、記録ヘッド15の経時変化により吐出特性が変化した場合であっても、記録ヘッド15ごとのパラメータセットを最適な状態に維持して、画像品質の低下を有効に抑制することができる。
(第4の実施形態)
次に、上述した第2の実施形態や第3の実施形態とは異なる方法により、データ格納部100に格納する記録ヘッド15ごとのパラメータセットを選択する例を第4の実施形態として説明する。本実施形態では、残留振動検知技術を用いてデータ格納部100に格納する記録ヘッド15ごとのパラメータセットを選択することで、記録ヘッド15内の圧電素子53の静電容量のバラつきに起因する吐出特性のバラつきを抑制する。
図22は、本実施形態の回路構成を示すブロック図である。本実施形態では、図20に示した第2の実施形態の回路構成におけるスキャナ202や図21に示した第3の実施形態の回路構成における入力受付部301に代えて、残留振動検知部401が設けられている。また、本実施形態では、テストチャート記録制御部201は設けられていない。また、本実施形態では、駆動波形データ生成部104がコントローラ部60ではなく、駆動制御基板14に設けられている。その他の構成は第2の実施形態や第3の実施形態と共通である。以下では、第2の実施形態や第3の実施形態との相違点のみを説明する。
残留振動検知部401は、予め定められた複数のパラメータセットY1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・を用いて生成された駆動波形データに基づいて駆動される各記録ヘッド15の残留振動波形を検出し、それぞれのパラメータセットと記録ヘッド15の組み合わせごとに、残留振動波形の振幅値VHxを算出する。なお、残留振動検知技術については詳細を後述する。
本実施形態のパラメータセット選択部203は、残留振動検知部401によって算出される残留振動波形の振幅値VHxをもとに、複数のパラメータセットY1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・の中から、記録ヘッド15間における残留振動波形の振幅値VHxの差が最小となるパラメータセットを記録ヘッド15ごとに選択する。そして、パラメータセット選択部203は、記録ヘッド15ごとに選択したパラメータセットを、例えば記録ヘッド15の識別情報と対応付けてデータ格納部100に格納する。
このように、本実施形態では、残留振動検知技術を用いて記録ヘッド15ごとのパラメータセットを選択する構成であるため、第2の実施形態や第3の実施形態のようにロール紙PにテストチャートTCを記録する必要がない。したがって、テストチャートTCの記録に伴う画像記録装置1のダウンタイムの発生やインクの消費量増加を抑制することができる。
次に、残留振動検知部401を用いた残留振動検知技術について詳しく説明する。まず、記録ヘッド15に発生する残留振動について、図23を参照して説明する。図23は、残留振動が発生する原理を説明する図であり、図23(a)はインク吐出時、図23(b)はインク吐出後に圧力室42内に発生する圧力変化を模式的に表している。
図23(a)に示すインク吐出時には、駆動制御基板14から伝送される画像データに応じて圧電素子駆動IC55をON/OFFすることで、駆動波形が電極パッド56に印加される。そして、駆動波形に基づく圧電素子53の伸縮力が振動板47を介して圧力室42に伝播し、圧力室42内にノズル19に向かう方向の圧力を発生させることで、ノズル19からインクを吐出させる。また、図23(b)に示すインク吐出後には、インクを吐出した後に圧力室42内に発生する残留圧力波が振動板47を介して圧電素子53に伝播し、残留振動電圧が電極パッド56に誘起される。この誘起された残留振動電圧変化を検出することによって、記録ヘッド15の吐出特性の変化、つまり、インク粘度変化によるインク吐出速度、吐出量の変化や、ノズル19の状態を判別できる。
図24は、駆動波形および残留振動波形の一例を示す図である。図中の駆動波形印加期間は、図23(a)の動作に対応し、駆動波形の立ち下げ動作により圧電素子53を圧縮した後、立ち上げ動作により伸長させると、駆動波形印加後に残留振動が発生する。また、図中の残留振動発生期間は、図23(b)の動作に対応し、残留圧力波が振動板47を介して圧電素子53に伝播することで、図24のような減衰振動波形となる。このような振動波形、つまり残留振動電圧変化から記録ヘッド15の吐出特性の変化を判別する技術が、残留振動検知技術である。以下では、上述の駆動波形の印加から圧力室42内に発生する圧力変動による残留振動電圧変化を検出するまでの一連の動作を残留振動検知動作と呼ぶ。
なお、ここではインクを吐出した場合の残留振動検知技術を例に説明したが、圧力室42内に発生する残留圧力波による残留振動電圧変化を検出できれば、インクの吐出を伴わなくてもよい。インクの吐出を伴わない残留振動検知技術を用いた場合、インクの消費なしで、記録ヘッド15ごとの吐出特性のバラつきを検出できるため、インクとロール紙Pなどの記録媒体の消費量を削減することができる。
図25は、残留振動検知部401の構成例を示すブロック図である。図25に示す例では、残留振動検知部401は、記録ヘッド15に搭載された残留振動検知基板400上で実現される。残留振動検知基板400は、駆動制御基板14と記録ヘッド15内の圧電素子支持基板54とに接続される。
駆動制御基板14は、画像データを元にタイミング制御信号と駆動波形データを生成する制御部28と、生成された駆動波形データをDA変換し、電圧増幅、電流増幅する駆動波形データ成部104と、基準となる減衰比データと記録ヘッド15のノズル19ごとのバラつきを予め記憶した記憶部29とを備える。
駆動制御基板14の制御部28で生成されたタイミング制御信号などのデジタル信号は、シリアル通信で記録ヘッド15に伝送され、ヘッド基板34上の制御部30によってデシリアライズされ、圧電素子駆動IC55に入力される。駆動波形データ生成部104では、制御部28からの信号により残留振動検出波形が生成される。この残量振動検出波形は、タイミング制御信号に応じた圧電素子駆動IC55のON/OFFに従い、圧電素子53に入力される。なお、図25では、n個の圧電素子53の各々に53_1,53_2,・・・,53_nの符号を付している。また、制御部30は、圧電素子駆動IC55に送信するタイミング制御信号に同期した切替信号を残留振動検知基板400に送信することで、インク吐出後の圧電素子53に発生する残留振動電圧を残留振動検知部401に取り込むタイミングも制御している。
残留振動検知部401は、切替部402と、波形処理回路403と、AD変換器404とを備える。波形処理回路403は、フィルタ回路411と、増幅回路412と、ピークホールド回路413と、比較器414とを含んでいる。ピークホールド回路413によってホールドされた振幅値は、AD変換器404でデジタル値に変換後、駆動制御基板14の制御部28にフィードバックされる。また、増幅回路412の出力は比較器414にも入力され、比較器414から出力された波形が駆動制御基板14の制御部28にフィードバックされる。制御部28では、残留振動波形の振幅値を求め、減衰比を算出する演算をした後、記憶部29に記憶された減衰比データと比較することで、各記録ヘッド15におけるノズル19の状態を検出する。
なお、図25に示す例では、減衰比や周波数を演算するための機能を持つ制御部28を駆動制御基板14に設けているが、これに限らない。制御部28は、駆動制御基板14以外の例えば記録ヘッド15に搭載される構成であってもよい。また、図25に示す例では、残留振動検知基板400上で残留振動検知部401を実現する構成としているが、残留振動検知部401の機能の一部または全部を駆動制御基板14上で実現する構成であってもよいし、ヘッド基板34上で実現する構成であってもよい。
また、図25に示す例では、n個の圧電素子53_1,53_2,・・・,53_nそれぞれの残留振動電圧を1組の切替部402、波形処理回路403およびAD変換器404を用いて順次切り替えて検出する構成としたが、圧電素子53の個数に対応するだけの切替部402、波形処理回路403およびAD変換器404を使用し、すべてのノズル19のインク粘度状態を同時に検出する構成でも構わない。また、すべての圧電素子53をいくつかのグループに分け、グループごとに切替部402、波形処理回路403およびAD変換器404を使用し、グループ内で順次切り替える構成でも構わない。この場合、同時に残留振動波形を検出できるノズル数が増え、回路数も少なくて済むといった利点がある。
図26は、残留振動検知部401の具体例を示す回路図である。図26において、各圧電素子駆動IC55をONすることで、各圧電素子53に印加する駆動波形の印加タイミングを制御し、インクを吐出させることができる。また、インク吐出後に、圧電素子駆動IC55をOFFするタイミングで、切替信号に応じた切替部402の動作により残留振動波形を検出する圧電素子53を波形処理回路403に接続することで、残留振動波形の振幅値を認識できる。波形処理回路403では、微小な残留振動波形を高インピーダンスのバッファ部で受けることで、回路が残留振動波形に与える影響を抑制している。フィルタ回路411と増幅回路412は、一般的にサレンキ型と呼ばれるバンドパスフィルタ増幅型で構成している。フィルタ回路411の特性は、記録ヘッド15の特性で決まるメニスカス固有振動周波数を中心周波数として、ある一定の通過帯域幅をもつ。また、例えば、通過帯域幅の両端からそれぞれ−3dBとなる帯域幅を通過帯域幅の3倍程度に設定することで、効率よく高周波と低周波のノイズを除去できる。増幅回路412の増幅率は、AD変換器404の入力可能範囲内に波形を増幅する設定としている。
ピークホールド回路413の抵抗R6とコンデンサC3は、放電時間が残留振動周期の1/2以下に決定される。比較器414は、入力される減衰振動波形が基準電圧Vref以上となるとHigh出力となる。比較器414の出力が駆動制御基板14の制御部28に入力され、制御部28で立ち上がり周期または立ち下り周期から周波数を検出する。また、減衰振動波形が基準電圧Vref以下のときスイッチSW1がONになり、ピークホールド回路413がリセットされる。ただし、減衰振動波形の振幅値を認識できるリセットタイミングであれば、上述の限りではない。また、ピークホールド回路413の構成も図26の回路構成に限られるものではなく、振幅値を認識できる機能をもった回路構成であればよい。なお、フィルタ回路411と増幅回路412は、ハイパス特性とローパス特性をもつフィルタと非反転増幅部、もしくは反転増幅部の構成であればよく、サレンキ型に限定されるものではない。
図27は、図26の残留振動検知部401により検出される残留振動波形の一例を示す図である。図27において、破線で示す波形は、フィルタ回路411および増幅回路412によりフィルタ処理および増幅が行われた後の残留振動の実験波形を表し、実線で示す波形は、ピークホールド回路413でホールドした各半波の振幅値の実験波形を表している。例えばこの図27の例では、駆動制御基板14の制御部28において、4周期分の振幅減衰率を平均化した電圧振幅値が算出することができる。ただし、振幅値v1のみを検出する構成としてもよく、この場合は短時間で振幅値を算出することができる。また、外乱影響やノイズが大きい半波を除いた周期分の振幅減衰率を平均化した電圧振幅値を算出してもよい。なお、基準電圧Vrefより下側に見られる急峻な波形は、ピークホールド回路413のコンデンサC3を瞬時に放電したことによるアンダーシュートである。また、図27では電圧のプラス側から振幅値を検出しているが、マイナス側から検出してもよく、特にプラス側に限定されるものではない。
図28は、ヘッドアレイ18を構成する各記録ヘッド15から出力される残留振動波形の一例を示す図である。図28では、3つの記録ヘッド15(記録ヘッドH1,H2,H3とする)から各々出力される残留振動波形を示し、実線の波形が記録ヘッドH1から出力される残留振動波形、破線の波形が記録ヘッドH2から出力される残留振動波形、一点鎖線の波形が記録ヘッドH3から出力される残留振動波形をそれぞれ表している。
ヘッドアレイ18を構成する記録ヘッド15内の圧電素子53が静電容量のバラつきを持ち、記録ヘッドH1の圧電素子53の静電容量CH1と、記録ヘッドH2の圧電素子53の静電容量CH2と、記録ヘッドH3の圧電素子53の静電容量CH3がCH1>CH2>CH3の関係にある場合、それぞれの記録ヘッド15から出力される残留振動波形の振幅値VH1,VH2,VH3は、VH1>VH2>VH3になる。したがって、ヘッドアレイ18を構成する各記録ヘッド15から出力される残留振動波形の振幅値VHxの差が小さくなるように記録ヘッド15ごとのパラメータセットを選択することで、記録ヘッド15ごとの圧電素子53の静電容量のバラつきを吸収して、記録ヘッド15ごとの吐出特性のバラつきを抑制することができる。
図29は、図22に示したパラメータセット選択部203によるパラメータセットの選択方法を説明する図である。図29(a)は、上述のパラメータセットを用いて生成された駆動電圧波形を印加した場合の残留振動波形の一例を示し、図29(b)は、パラメータセットと記録ヘッド15の組み合わせごとに算出された残留振動波形の振幅値VHxの具体例を示している。
本実施形態の画像記録装置1では、記録ヘッド15ごとのパラメータセットを選択する際に、まず、それぞれの記録ヘッド15に対して、予め設定されたパラメータセットY1,Y2,Y3,Y4,Y5・・・を用い、それぞれの記録ヘッド15に対して上述の残留振動検知動作を行う。次に、それぞれの記録ヘッド15から出力される残留振動波形の振幅値VH1,VH2,VH3・・・を残留振動検知部401により算出する。そして、パラメータセット選択部203は、それぞれの記録ヘッド15ごとに算出された残留振動波形の振幅値VHxを比較し、記録ヘッド15間における残留振動波形の振幅値VHxの差が最小となるパラメータセットを記録ヘッド15ごとに選択する。例えば、記録ヘッドH1から出力される残留振動波形の振幅値VH1、記録ヘッドH2から出力される残留振動波形の振幅値VH2、記録ヘッドH3から出力される残留振動波形の振幅値VH3がそれぞれ図29(b)のようになった場合、パラメータセット選択部203は、記録ヘッドH1についてはパラメータセットY1、記録ヘッドH2についてはパラメータセットY3、記録ヘッドH3についてはパラメータセットY5をそれぞれ選択する。
図30は、複数の圧電素子53から出力される残留振動波形の振幅値の平均値を記録ヘッド15の振幅値VHxとする方法を説明する図である。図30(a)は、記録ヘッド15内のn個の圧電素子53_1,53_2,53_3,・・・,53_nから各々出力される残留振動波形の振幅値Vcを算出する構成を模式的に示し、図30(b)は、算出された振幅値Vcおよびその平均値の具体例を示している。
記録ヘッド15内のn個の圧電素子53_1,53_2,53_3,・・・,53_nの静電容量にバラつきがある場合、それぞれの圧電素子53_1,53_2,53_3,・・・,53_nから出力される残留振動波形の振幅値Vc_1,Vc_2,Vc_3,・・・,Vc_nも圧電素子53ごとに異なる。図30に示した例では、圧電素子53_1,53_2,53_3,・・・,53_nの残留振動波形の振幅値Vc_1,Vc_2,Vc_3,・・・,Vc_nは、それぞれ100mV,400mV,300mV,・・・,100mVとなっており、これらの平均値は200mVとなるため、この記録ヘッド15の振幅値VHxを200mVとする。このように、記録ヘッド15内の複数の圧電素子53の出力の平均値を当該記録ヘッド15の振幅値VHxとする場合、記録ヘッド15内の圧電素子53のバラつきを吸収しながら、記録ヘッド15のパラメータセットを適切に選択することができる。
なお、図30では、記録ヘッド15内の複数の圧電素子53の出力の平均値を記録ヘッド15の振幅値VHxとする方法を示したが、一つの圧電素子53の出力を記録ヘッド15の振幅値VHxとしてもよい。この場合、短時間で残留振動波形の検出が可能となるため、画像記録装置1のダウンタイムを削減できるという利点がある。
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明の一適用例を示したものである。本発明は、上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。