1.実施形態
1−1.自動火災報知設備の構成
まず、本実施の形態に係る支援システム100と通信接続される、建築物に設置された自動警報設備である自動火災報知設備200(以下、自火報設備200)について、図1に基づいて説明する。自火報設備200は、信号線C1と通信回線3とを介して支援システム100と通信接続される。
自火報設備200は、火災やガス漏れ等の異状を感知する感知手段としての火災感知器5、ガス漏れ検知器6等を有し、これらの感知手段は防火対象物である建築物に配設される。これらの感知手段は、信号線C4を介して、あるいは中継手段である中継器8と信号線C4とを介して、受信機10へ接続され、異状を感知すると異状感知信号を受信機10へ送出する。
これらの感知手段は、アドレス等の固有の識別子を有し、異状を感知したときはどの感知手段が異状を感知したか判別できるようになっているものがある。また、これらの感知手段が固有の識別子を有しない場合でも、これら感知手段が配設された区画を受信機10が特定できるような区画情報を有しており、感知手段が異状を感知したときはどの区画で異状が感知されたか判別できるようになっている。すなわち、自火報設備200は、感知手段に固有の識別子又は感知手段が配設された区画情報に基づいて異状を感知した場所を示す感知手段位置情報を有する。そして、これらの感知手段が異状を感知し、異状を感知した感知手段からの異状感知信号を受信した受信機10が、蓄積機能等を有する図示しない火災判断手段で火災等の異状と判断すると、異状を感知した感知手段が感知した異状の内容と上記感知手段位置情報とを含めた異状信号を送出する。このとき異状信号に含まれる感知手段位置情報は、異状を感知した火災感知器5又はガス漏れ検知器6に固有の識別子又は区画番号等である。受信機10が送出する上記異状信号は、後述する支援システム100に送出されて異状の内容とその位置情報とを含む異状情報が作成され、自衛消防隊員が所持する端末2へ異状情報をプッシュ通知させ、表示させる。このように通信回線3を介して火災等の上記異状信号を送出するために、受信機10は、通信回線3と接続して通信する、図示しない通信手段を備える。
また、自火報設備200は、地区音響警報装置としての音声警報装置7を有し、音声警報装置7は防火対象物である建築物に配設される。この地区音響警報装置は、直接に信号線C4を介して、又は、中継手段である中継器9と信号線C4とを介して、受信機10へ接続される。そして、音声警報装置7は、受信機10からの信号に応じて、火災感知放送、火災放送、非火災放送を出力する。なお、上記の地区音響警報装置は、音声警報装置7に限るものでない。例えば、図示しない非常警報設備や、図示しない地区ベルに代えてもよい。なお、自火報設備200は上記に限るものではなく、公知のあらゆる自動火災報知設備を適用し得るものである。例えば、無線式の火災感知器を有する等、自動火災報知設備における信号授受の一部又は全てを無線通信するものであってもよい。また、例えば、固有の信号線で火災感知器と受信機とを接続するP型システムであっても、共通の信号線で接続して多重伝送を行うR型システムであってもよい。そして、感知手段が火災等の異状を感知し、火災判断手段が火災等の異状としたときに、通信回線3を介して上記異状信号を送出する通信手段を備えるものであればよい。また、そのような通信手段が備わらない受信機を用いる場合であっても、受信機に接続して上記異状信号を通信回線3に送出可能な通信手段を設けるようにしてもよい。この通信手段は、受信機に通信インターフェースとして内蔵してもよいし、受信機の信号出力を受信して通信回線3へ異状信号を送出する通信インターフェースとして受信機の外部に設ける中継器であってもよい。
1−2.支援システムの構成
次に、本実施の形態に係る支援システム100の構成について、図1に基づいて説明する。支援システム100は、支援装置1と、自衛消防隊の隊員が所持し携帯する1以上の端末2と、通知装置4とで構成される。なお、端末2には、自衛消防隊の役割を選定された隊員が所持する端末2A、自衛消防隊の隊員候補でありながら、その役割が選定されていない隊員候補が所持する端末2B、防災センタに設置される端末2C、があり、これらを総称して端末2とする。支援装置1と端末2と通知装置4とは、通信回線3を介して互いに通信する。通信回線3は、例えばインターネットであるが、これに限るものではない。例えば、IMT−2000に準拠した無線通信網や、iEEE802.11に準拠する無線LANなどであってもよく、また、当該建築物内に設けた無線通信網をインターネット等の通信回線3にゲートウェイを介して接続して一体的に運用するようにしてもよい。通信回線3は、少なくとも端末2と無線通信で接続され、支援装置1とは無線又は有線で接続され、支援装置1と端末2との間で通信を行う通信網である。なお、受信機10は、通信回線3を介して無線又は有線で支援システム100と接続され、受信機10と支援システム100との間で通信を行うが、受信機10は通信回線3を介することなく無線又は有線で支援装置1と直接接続されるようにしてもよい。
1−3.支援装置の構成
次に、支援システム100を構成する支援装置1の構成について、図2に基づいて説明する。支援装置1は、自衛消防隊員による活動を支援するための装置であり、通信部13と、記憶部12と、制御部11とを有する。支援装置1は、例えばサーバであり、クラウドコンピューティングの機能によって構成されるクラウドサーバであってもよい。
[通信部]
通信部13は、信号線C2と通信回線3とを介して、端末2および受信機10と制御情報等を通信するインターフェースである。なお、通信部13は、信号線C2に代えて無線通信で通信回線3と接続するようにしてもよい。このように、支援装置1の通信部13をネットワーク経由等の通信回線3を介して通信させることにより、自火報設備200が設置された防火対象物の外部に支援装置1を設けることが可能である。また、端末2とは通信回線3を介して通信する一方で、受信機10とは直接、有線接続又は無線接続されるようにしてもよい。すなわち通信部13は、端末2と通信回線3を介して通信する第1の通信部と、受信機10と通信する第2の通信部と、により構成されてもよい。なお、支援装置1は、端末2との間で互いに識別して通信を確立するために、通信識別子を備えて後述する記憶部12に記憶するようにしてもよい。
[記憶部]
記憶部12は、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性の記憶手段であり、自衛消防隊員の活動を支援するための処理を実行するプログラムを記憶する。また、記憶部12は、部隊候補データベース(図において「データベース」を「DB」と表記する)121を有する。
部隊候補データベース121は、自衛消防隊を編成するための第1の記憶領域としてのデータベースであり、自衛消防隊の役割と、その役割毎の定数と、優先して隊員を選定する役割の順位である役割優先順位と、隊員候補情報と、を関連付けて記憶する。その一例を図3に示す。本実施形態における部隊候補データベース121は、自衛消防隊の役割としての本部隊や各地区隊といった部隊毎に担当する役割と、自衛消防隊を編成する際に優先して隊員を選定する役割の順位である役割優先順位と、役割毎の定数と、隊員候補情報と、が予め消防計画に従って登録される。隊員候補情報としては、少なくとも役割に選定する候補者としての隊員候補を登録する必要があり、その隊員候補から隊員を選定するものである。しかし、現実には、その役割に対して相応しい隊員候補から順に選定されるようにすることが望ましく、隊員候補情報としては、当該役割の候補者とその候補者を選定する為のパラメータとしての属性情報とを関連付けて登録することが望ましい。そして、本実施形態では、隊員候補情報として、役割毎に優先して隊員を選定する順に隊員候補が登録される。例えば、図3において本部隊本部長の役割には、優先して選定する順に隊員候補番号(隊員候補001、隊員候補002、隊員候補003、隊員候補009)が登録されている。すなわち、部隊候補データベース121は、自衛消防隊の役割毎に優先して選定される順位である選定優先順位を含めて隊員候補情報として記憶するものであり、この隊員候補の選定優先順位は、隊員候補の属性情報の一例である。隊員候補は、図3のように隊員候補番号で登録されてもよいし、氏名で登録されるようにしてもよく、隊員候補を識別し特定できるようにしておけばよい。後述するように、本実施形態では、役割優先順位の上位順に役割毎に当該定数を充足するように隊員候補から隊員を選定するものであり、更に、役割毎に選定優先順位に基づいて隊員候補から隊員を選定するものである。なお、この実施形態では、自衛消防隊の役割に合わせてその役割毎の定数を設定しているが、定数を用いないことも可能であり、例えば、役割を細分して、「消火係A」「消火係B」「消火係C」等に分けてそれぞれ隊員候補を設定することもできる。
[制御部]
制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムに基づいて支援装置1の各部の動作を制御する制御手段である。制御部11は、図示せぬCPU等の演算処理装置を備え、その機能的構成として、編成部111、情報生成部112、発信部113を備える。更に、異状断定部114を備えるようにしてもよい。
編成部111は、通信部13を介して受信する受信機10からの異状信号に基づいて、記憶部12の部隊候補データベース121を参照して、役割優先順位の上位の役割順に役割毎の定数を充足するように隊員候補から隊員を選定して、自衛消防隊を編成する災害対応編成を実行する編成手段である。本実施形態では、更に、役割毎に選定優先順位に基づいて隊員候補から隊員を選定する。このようにして自衛消防隊を編成することによって、優先すべき役割に対して優先して選定されるべき属性を有する隊員候補から隊員が選定され、自衛消防隊を適切に編成することができる。
情報生成部112は、編成部111が編成した自衛消防隊について、選定された隊員を発信先とする役割情報を発信部113から発信させる支援情報として生成する支援情報生成手段である。この支援情報は、自衛消防隊の隊員候補が所持する端末2に表示させる情報であり、選定された隊員が所持する端末2を発信先とする支援情報が発信部113から発信され、これを取得した当該端末2は当該支援情報を表示する。また、情報生成部112は、自衛消防隊の隊員が端末2から発信する情報に基づいて、自衛消防隊を支援する情報としての支援情報を生成するようにしてもよい。自衛消防隊の隊員が端末2から発信する情報に基づいて生成する支援情報については後述する。
発信部113は、上述したように、異状信号又は自衛消防隊の隊員が端末2から発信する情報に基づいて、情報生成部112によって生成される支援情報を通信部13から発信させる発信手段である。
1−5.端末の構成
次に、支援システム100を構成する端末2の構成について、図4に基づいて説明する。図4は端末2の構成を示すブロック図である。
端末2は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、表示部24と、操作部25とを有する。端末2は、防火対象物である建築物での異状に対処する自衛消防隊の隊員又は隊員候補が所持する携帯型の端末装置であり、例えばスマートフォンやタブレット端末やウェラブル端末等である(図6〜8を参照)。端末2には、支援装置1が自衛消防隊を編成した後に、役割を選定された隊員が所持する端末2Aと、役割が選定されなかった隊員候補が所持する端末2Bとがあり、自衛消防隊が編成される前にはその区別はなく、これらを総称して端末2とする。更に、防災センタに設置されて、自衛消防隊全体の活動状況を把握したり、本部からの指示を各地区隊に発信したりするための端末装置として、例えばデスクトップPCやラップトップPCから成る端末2Cを備えてもよい。
[制御部]
制御部21は、図示せぬ演算処理装置としてのCPU等を有し、CPUが記憶部22等に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより端末2の各部を制御する制御手段である。また、制御部21は、当該端末2を発信先とする支援装置1から発信される支援情報を取得して表示部24に表示させる。このとき制御部21は、当該端末2を発信先とする支援装置1から発信される支援情報に基づいて起動するようにしておくことが望ましい。すなわち、平常状態では端末2の制御部21は休止状態としておき、当該端末2を発信先とする支援装置1からの支援情報が通信部23を介して受信されると、制御部21を起動させる図示しない起動手段としての起動部を備えるとよい。なお、これに限らず制御部21を常に起動させておき、当該端末2を発信先とする支援装置1からの支援情報を常時受信し取得できるようにしてもよい。このとき、制御部21は、定期的に支援装置1にアクセスし、当該端末2に対する支援情報がある場合に、この支援情報を支援装置1から取得するようにしてもよい。なお、本実施形態では、端末2が支援装置1からの支援情報を随時取得できるものとして説明し、当該端末2を発信先とする支援装置1からの支援情報に基づいて制御部21を起動させる構成については後述する。
[記憶部]
記憶部22は、フラッシュメモリやSSD(ソリッドステートドライブ)などの不揮発性の記憶手段であり、制御部21のCPUに読み込まれて実行されるプログラムを記憶する。また、記憶部22は、防災支援アプリ221を有する(図示せず)。この防災支援アプリ221は、自衛消防隊員の活動を支援するための処理を実行するプログラムである。この防災支援アプリ221は、支援装置1から発信された支援情報を表示部24に表示させる。また、記憶部22には、自己の識別子としての端末識別子が記憶される。この端末識別子は、支援装置1との通信用の端末識別子、例えば端末IDであり、予め登録されていてもよいし、また、支援装置1との間で、各種項目の設定登録作業を行うことにより、記憶部22に記憶されるようにしてもよい。
[通信部]
通信部23は、通信回線3を介して支援装置1と通信を行うための通信手段であり、無線通信によって通信回線3と接続するインターフェースである。なお、端末2は、支援装置1との間で互いに識別して通信を確立するために、通信識別子を備えて記憶部22に記憶するようにしてもよい。
[表示部]
表示部24は、液晶などを利用した画面241を備え、制御部21からの指示に応じてこの画面241に画像が表示され、例えば支援装置1から発信された支援情報に基づく画像が表示される。
[操作部]
操作部25は、当該端末2を所持する隊員又は隊員候補が、表示部24の表示を選択操作したり、情報を発信する操作をしたりする操作手段であり、例えばタッチパネル251を有する。タッチパネル251は、例えば操作者の指などの指示体によって操作され、表示部24の画面241に重なる領域における位置を指示する操作者の操作を検出する。タッチパネル251は例えば、画面241に重ねられた透明な静電容量方式のタッチパネルである。
1−6.支援システムの動作
次に、支援システム100の動作について、図5のシーケンス図に基づいて説明する。
1−6−1.災害対応編成
支援システム100における災害対応編成は、自火報設備200からの火災信号に基づいて実行する。まず、自火報設備200における火災の感知について説明する。自火報設備200に備わる火災感知器5(図1参照)は、火災に起因する物理現象を検出することに基づいて火災を感知する。火災そのものを検出するわけではないので、火災ではないにもかかわらず一定の条件を満たすと火災感知器5は火災を感知したものと判定してしまう場合もある。したがって、自火報設備200の受信機10から発信される火災信号を受け付けたとき、支援システム100は、後述する現場確認に基づいて判断することにより信頼性の高い火災断定を行うことができる。ここでは説明の便宜上、自火報設備200(受信機10)が発信した火災信号(S101)を受け付けることによって支援装置1に災害対応編成を実行させるものとして説明する。なお、自火報設備200が設置された建築物の防災関連設備では、火災感知器5が火災を感知したことに加え、所定の条件を満たすことによって、火災であると断定し、火災断定信号を発信するものがある。例えば、現場確認結果による火災断定の操作入力があること、図示しない発信機や非常電話の操作が行われたこと、火災感知した火災感知器5とは異なる区画の火災感知器5が火災を感知して火災が拡大したと判断できること、火災感知器5が火災を感知してから火災確認されぬまま所定時間が経過したこと、等のいずれかである。このような火災断定信号(S109)を受け付けたときも、支援装置1に災害対応編成を実行させる。なお、上記において、火災は本発明における異状の一例であり、火災信号は本発明における異状信号の一例であり、火災断定は本発明における異状断定の一例である。本発明における異状感知は、火災感知だけに限るものではなく、平常時とは異なる状態であって当該建築物において自衛消防隊の対応を要したり、当該建築物からの避難を要したりする、あらゆる非常事態の感知を含むものである。
上述したように、異状としての火災が発生したと断定されたものとして、これに基づいて実行される支援システム100における災害対応編成について説明する。すなわち、自火報設備200の受信機10から発信される火災信号又は火災断定信号を支援装置1が受け付けたときに(S101、S109)、災害対応編成を行うものである。このため、図5に記したステップS102〜S108における現場確認要員による現場確認の工程は、ここでは除いて説明する。
まず、支援装置1は、通信部13を介して受け付けた火災信号又は火災断定信号に基づいて、火災が発生したと断定する(S110)。そして、支援装置1の編成部111は部隊候補データベース121を参照して、役割優先順位の上位の役割順に役割毎の定数を充足するように隊員候補から隊員を選定して、自衛消防隊を編成する災害対応編成を実行する(S111)。このとき、役割毎に選定優先順位に基づいて隊員候補から隊員を選定する。
例えば、図3に示した部隊候補データベース121の例では、登録されている役割優先順位に従って、本部隊本部長、本部隊隊長、1階地区隊隊長、1階地区隊消火係、本部隊避難誘導係、(以下、省略)、といった順に、各役割の隊員を選定する。まず、役割優先順位が最上位であり、最優先で隊員を選定する定数1の本部隊本部長には、本部隊隊長に対する選定優先順位の最も高い隊員候補001が選定される。そして、次に役割優先順位の高い定数1の本部隊隊長には、本部隊隊長に対する選定優先順位の最も高い隊員候補002が選定される。同様にして、役割優先順位に従って順次隊員を選定する。このように選定された隊員候補001、002は、選定された時点で自衛消防隊の隊員であるので、便宜のため上記候補を外して、それぞれ隊員001、002と称する。このようにして自衛消防隊を編成することによって、優先すべき役割に対して優先して選定されるべき属性を有する隊員候補から隊員が選定され、自衛消防隊を適切に編成することができる。
なお、この隊員候補が不在であるなど、自衛消防隊を編成する上で不都合がある場合は、この不在者を除外して次に選定優先順位の高い隊員候補が選定されるようにするとよい。例えば、上記において、本部隊本部長に選定すべき隊員候補001が不在の場合は、次に選定優先順位の高い隊員候補002が本部隊本部長に選定される。そして、次に本部隊隊長を選定する際、隊員候補002は不在ではないものの、既に本部隊本部長に選定されているので、次に選定優先順位の高い隊員候補003が本部隊隊長に選定されるようにする。このように自衛消防隊を編成することにより、不在者を除外して自衛消防隊を編成したとしても、選定優先順位の高い隊員候補が選定されるので、自衛消防隊を適切に編成することができる。不在者を除外する構成については後述する。
なお、災害対応編成を実行するに際し(S111)、発生場所の階に対応する地区隊とその直上階に対応する地区隊について、他の地区隊よりも優先して役割を選択することが望ましい。そうすることにより、火災発生場所の地区隊、換言すれば出火階と直上階の地区隊を、迅速かつ適切に編成することができ、発生した異状に対して迅速かつ適切に対応することができる。
次に支援装置1は、情報生成部112が、編成部111が編成した自衛消防隊について、選定された隊員を発信先とする役割情報を発信部113から発信させる支援情報として生成する(S112)。このとき、当該隊員に成すべきことを伝えるように、情報生成部112は役割情報とともに行動指示情報も支援情報として生成するようにしてもよい。また、情報生成部112は、自衛消防隊の隊員が端末2から発信する情報に基づいて、自衛消防隊を支援する情報としての支援情報を生成するようにしてもよい。自衛消防隊の隊員が端末2から発信する情報に基づいて生成する支援情報については後述する。情報生成部112が生成した支援情報は、自衛消防隊の役割が選定された隊員が所持する端末2Aに表示させる情報であり、選定された隊員が所持する端末2Aを発信先とする支援情報として少なくとも役割情報が発信部113から発信される(S113)。
この支援情報を取得した当該端末2Aは当該支援情報を表示する。例えば、上記において、本部隊本部長に選定された隊員001が所持する端末2Aには、本部隊本部長の役割が選定されたことを示す支援情報が表示される。このとき、更に行動指示情報が表示されるようにしてもよい。例えば、本部隊本部長に対しては、その役割に選定されたことを示すとともに、事態に対応すべく防災センタへ向かうように指示するようにしてもよい。このときの端末2Aの表示例を図6に示す。この表示は、ある地区隊の消火係に選定された隊員が所持する端末2Aへの表示の一例であり、選定された役割と行動指示とが表示されている。
1−6−2.初期対応編成
上述したように、自火報設備200からの火災信号(S101)に基づいて、支援システム100が現場確認要員を選定し、現場確認に基づいて火災と断定する工程を設けることが望ましい。
支援装置1の制御部11は、その機能的構成として異状断定部114を備える。自火報設備200の受信機10が発信した異状信号としての火災信号を、通信部13を介して受け付けた支援装置1は、まず、受け付けた火災信号に含まれる異状の内容とその位置情報から、異状が火災発報(火災が感知されたこと)であることと、その発生場所とを特定する(S102)。そして、支援装置1の編成部111は部隊候補データベース121を参照して、発生場所に対応する地区隊の隊員候補を現場確認要員として選定する初期対応編成を実行する(S103)。例えば、1階で火災発報があった場合、1階地区隊の隊員候補(例えば、図3では隊員候補009〜018、020)の一部又は全部を現場確認要員として選定する。
初期対応編成の後、支援装置1の情報生成部112は、選定された現場確認要員を発信先とする異状確認指示としての現場確認指示を発信部113から発信させる支援情報として生成する(S104)。支援装置1の発信部113は、生成された上記支援情報を選定された現場確認要員が所持する端末2Aを発信先として発信する(S105)。当該端末2Aはこれを受信して、現場確認を行うように指示する表示を表示部24の画面241に行う(S106)。このとき、当該建築物において火災発報があったことや、その発生場所を示すように地図表示するようにしてもよい(例えば、図7を参照)。このように発生場所を地図表示することにより、現場確認要員は自らが確認すべき場所を容易に認識することができ、更には現場へ向かう適切な経路をも知ることができる。そして、現場に到着した現場確認要員は、異状としての火災を目視等によって自ら確認する(S107)。そして、火災発生を確認したならば、所持する端末2Aの操作部25を操作して火災を確認したことを示す異状確認情報を支援装置1に向けて発信する(S108)。
このとき、現場確認要員の端末2Aの画面241には現場確認用画面を表示させておき(例えば、図8を参照)、火災発生を確認したか(例えば、図8の火災確認釦2421a)、否か(例えば、図8の非火災確認釦2421b)、を選択して操作できるようにし、現場報告をできるようにしておくとよい。また、上述した地図表示(図7)等の画面において現場報告釦2416bを操作して、上述した現場確認用画面(図8)を表示させるようにしてもよい。このようにすることにより、現場確認要員は容易に現場報告を行うことができる。加えて、所持する端末2Aを用いて現場写真を撮影し、上記現場報告に添えて撮影した現場写真を送信するようにしてもよく、支援装置1が現場報告とともに受信した現場写真を本部隊隊員の所持する端末2Aに表示させることにより、現場の状況を本部で共有することができる。
現場確認要員の所持する端末2Aから発信される異状確認情報は、支援装置1が通信部13を介して受け付ける(S108)。そして当該異状確認情報が火災発生を確認したことを示す情報であった場合、支援装置1の異状断定部114は、火災が発生したものと断定する(S110)。また、当該異状確認情報が火災ではなかったことを確認したことを示す情報であった場合、異状断定部114は火災が発生したものとは断定せず、先に述べた災害対応編成(S111)を行わない。このようにすることにより、迅速に火災の現場確認を行うことができ、支援装置1は、現場確認によって火災が発生したと断定されてから編成部111が災害対応編成を実行するので、誤報による自衛消防隊の出動を防止することができ、自衛消防隊の活動を適切に支援することができるものである。なお、上述した初期対応編成とこれに伴う動作は、これに代わる火災断定工程を別途設ける場合や、火災信号の信頼性が極めて高い場合は、省略するようにしてもよい。
1−6−3.役割の兼務
上述したように自衛消防隊を編成するに当たり、限られた隊員候補から役割の定数を充足するように編成するためには、一人の隊員に複数の役割を兼務させたい場合が発生し得る。しかしながら、指揮等の専念すべき役割に選定された隊員が他の役割に選定されたり、異なる場所で同時に活動するような無理な選定がされたりすると、編成された自衛消防隊が有効に機能しないことは自明である。一方、連続的に活動しているわけではない役割もあり、異なる場所で同時に活動することがないような役割は、兼務可能な役割の対象となり得る。したがって、専念すべき役割に選定された隊員が他の役割に選定されたり、異なる場所で同時に活動するような無理な選定がされたりすることがないようにし、更に、予め定めた兼務可能な役割を兼務させて役割毎の定数を満たすことができるようにする仕組みが必要となり得る。なお、自衛消防隊の役割としては、一般的に次のものが上げられる。指揮係は、指揮所の設置、避難・消火活動の状況把握、隊長の指示・命令の伝達、必要資材の結集及び資料・情報等の確保を行う。通報連絡係は、消防機関への通報の確認と、隊長への災害状況報告及び隊長の指示・命令の伝達、外部との連絡を行う。消火係は、消火器又は屋内消火栓設備等を活用して適切な初期消火を行う。避難誘導係は、在館者を安全な場所に誘導・引率する。安全防護係は、排煙口の操作及び防火戸、防火シャッター、防火ダンパーの封鎖等を行う。救護係は、負傷者等の応急手当を行い、救急隊と密接な連絡をとり、速やかに負傷者等を病院に搬送できるように適切な対応をとる。これらのような役割が本部隊および地区隊(フロア毎等)で編成されるが、各役割は固定的ではなく自由に統合・細分でき、例えば、持ち出し用に管理されている印章、重要データ・書類、現金等を持ち出す非常持出係等を追加設置することもできる。
上述した役割毎の兼務可否を解決する仕組みとして、支援装置1の記憶部12に、第2の記憶領域として、役割毎に兼務を禁止する兼務禁止役割データベース122を更に備えるようにするとよい。そして、上述した災害対応編成を実行する際には(図5のS111)、部隊候補データベース121を参照して役割毎に定数を充足するように隊員候補から選定するとともに、兼務禁止役割データベース122をも参照して兼務を禁止する複数の役割に隊員が選定されないように災害対応編成を行うとよい。兼務禁止役割データベース122は、例えば図9に示すように、役割同士を関係付けて兼務を禁止する組合せを予め消防計画に基づいて登録しておく。例えば、隊員候補002〜004、007、008が不在の場合について、隊員を選定する例を図3、図9に基づいて、役割優先順位8まで説明する。なお、ここでは説明の便宜の為、各役割の定数を1として説明する。まず、優先して隊員を選定する役割の順位が最も高い、役割優先順位が1の本部隊本部長には、編成部111が部隊候補データベース121(図3)を参照して、選定優先順位の最も高い隊員候補001を選定する。次に、役割優先順位が2の本部隊隊長には、編成部111が選定優先順位の高い順に部隊候補データベース121(図3)を参照し、不在の隊員候補002〜004を除外して最後に残った隊員候補009を選定する。そして、役割優先順位が3の1階地区隊の隊長には、編成部111が選定優先順位の高い順に部隊候補データベース121を参照し、隊員候補009が再び選定候補となるが、隊員候補009は既に本部隊隊長に選定されている。そこで、編成部111が兼務禁止役割データベース122(図9)を参照すると、本部隊隊長と1階地区隊隊長とは兼務が禁止されていることから、編成部111は1階地区隊隊長に隊員候補009を選定せず、次に選定優先順位の高い隊員候補011を選定する。同様にして、役割優先順位が4の1階地区隊消火係には隊員候補010が、役割優先順位が5の本部隊避難誘導係には隊員候補012が、役割優先順位が6の本部隊安全防護係には隊員候補005が、役割優先順位が7の本部隊救護係には隊員候補006が、それぞれ選定される。次に、役割優先順位が8の本部隊通報連絡係には、編成部111が選定優先順位の高い順に部隊候補データベース121を参照し、隊員候補006が再び選定候補となるが、隊員候補006は既に本部隊救護係に選定されている。そこで、編成部111が兼務禁止役割データベース122(図9)を参照すると、本部隊救護係と本部隊通報連絡係とは兼務が禁止されていないことから、編成部111は本部隊通報連絡係に隊員候補006を選定する。なお、このような兼務は、他に隊員候補が存在しない場合に限ってもよい。図示した例では、本部隊通報連絡係には隊員候補005〜008から選定し得る。しかし、この場合であっても、隊員候補007、008は不在であり、隊員候補005は既に兼務が禁止されている本部隊安全防護係に選定されていることから、隊員候補006が兼務することとなる。このようにして役割優先順位の順に、全ての役割について隊員を選定する。
なお、自衛消防隊の役割において兼務できる役割は限られることから、兼務を禁止する役割の組合せを登録することに代えて、兼務を許可する役割の組合せを登録するようにしてもよい(例えば、図10を参照)。仮に、これを兼務許可役割データベースと称する。
兼務許可役割データベースは、本発明において支援装置1の記憶部12に設けられる第2の記憶領域の一例である。そして、災害対応編成を実行する際には(図5のS111)、部隊候補データベース121を参照して役割毎に定数を充足するように隊員候補から選定するとともに、兼務許可役割データベースをも参照して兼務が許可されていない複数の役割に隊員が選定されないように災害対応編成を行う。このように構成すると、兼務できる役割が少ない場合は、兼務禁止役割データベース122よりも少ない作業で登録することができる。
以上のように、支援装置1の記憶部12に、消防計画に従って自衛消防隊の役割毎に兼務を禁止又は許可する他の役割を関連付けて記憶させた第2の記憶領域を備え、編成部111はこれを参照して、兼務を禁止する複数の役割に隊員が選定されないように災害対応編成を行うようにすると、専念すべき役割に選定された隊員が他の役割に選定されたり、異なる場所で同時に活動するような無理な選定がされたりすることがなく、自衛消防隊を適切に編成することができる。また、兼務可能な役割を兼務することが可能となり、役割の定数を満たすように自衛消防隊を編成することができる。
1−6−4.支援情報の他の提供先および他の支援情報
上述した自衛消防隊の編成における説明では、支援システム100が提供する支援情報は、端末2Aに対する役割情報および行動指示情報であったが、支援システム100が支援情報を提供する対象は端末2Aに限るものではなく、また、提供する支援情報は役割情報と行動指示に限るものではない。例えば、自衛消防隊の役割に選定されなかった隊員候補が所持する端末2Bに支援情報を提供してもよい。また、支援情報としては、火災感知情報、火災断定情報、非火災情報を提供するようにしてもよい。上記の火災感知情報、火災断定情報、非火災情報は、それぞれ本発明における、少なくとも現場確認要員を発信先とする異状信号に基づく異状感知情報、少なくとも選定された隊員を発信先とする異状断定情報、異状信号が誤報であったときに少なくとも異状感知情報の発信先を発信先とする非火災情報、の一例である。
まず、初期対応編成の際、現場確認要員が所持する端末2A以外の他の隊員候補が所持する端末2Bにも、火災発報があったことを示す火災感知情報を支援装置1が予め発信することにより、災害対応編成の際に役割を与えられる可能性がある隊員候補は災害対応編成に備えることができる。このとき隊員候補は、現場確認要員が現場を確認中であることも知ることができるので、無用な不安を招かずに済む。そして、現場確認要員による現場確認の結果、火災感知情報が誤報であった場合は、火災感知情報の発信先に対して非火災情報を発信することにより、速やかな事態収拾ができる。
次に、現場確認要員による現場確認等によって火災と断定されたとき、災害対応編成で役割を与えられた隊員の所持する端末2Aに状況を伝達する目的で火災断定情報を発信するとともに、他の隊員が所持する端末2Bに避難を促す目的で火災断定情報を発信してもよい。このとき、避難階段における渋滞を緩和する目的で、消防計画で予め定めた避難計画に基づいて、段階的に時間差を設けて火災断定情報を発信するようにしてもよい。例えば、可及的速やかな避難を要する出火階および直上階の端末2Bに対して先に火災断定情報を発信し、上層階、中層階、下層階等の順に時間差を設けて火災断定情報を発信する。このとき、支援装置1の情報生成部112は、火災断定情報とともに避難指示情報を支援情報として生成し、端末2Bに発信させるようにしてもよく、迅速かつ適正な避難活動を支援することができる。
また、災害対策編成によって自衛消防隊の役割を与えられた隊員が所持する端末2Aに対して、自らが所属する部隊に関する災害対策編成の情報を支援情報として発信するようにしてもよい。本発明によって編成される自衛消防隊は、状況に応じて弾力的に部隊を編成するので固定的な部隊ではなく、部隊構成を事前に知ることができないからである。特に部隊を指揮する役割の隊員は、部隊構成を把握して持ち場の指揮に当たる必要がある。そこで、少なくとも本部隊又は地区隊といった部隊を指揮する役割の隊員、例えば隊長に対しては、対応する端末2Aからの要求に応じて当該部隊の編成情報を支援情報として提供できるようにすることが望ましい。また、この支援情報は、隊長以外の隊員に対しても提供できるようにしてもよい。
具体的には、端末2Aの制御部21には、機能的構成として情報要求手段である要求部211を備える。そして、当該端末2Aの操作部25の操作に基づいて、要求部211は、通信部23を介して支援装置1に対する部隊編成情報の発信要求を発信する。そして、この発信要求を受け付けた支援装置1の情報生成部111は、発信元の端末2Aをその端末識別子に基づいて特定し、当該端末2Aが属する部隊について、役割毎に隊員を特定する部隊編成情報として、編成部111が編成した自衛消防隊を構成する部隊毎の構成隊員を示す部隊一覧情報を支援情報として更に生成し、発信部113が当該端末2Aを発信先として当該支援情報を通信部13から発信させる。そして、この支援情報を受け付けた要求発信元の端末2Aの制御部21は、当該支援情報を表示部24に表示させる(例えば、図11を参照)。つまり、発信部113は端末2Aからの要求に基づいて、当該端末2Aを発信先として対応する部隊の部隊一覧情報を発信し、当該端末2Aに表示させる。また、防火対象物である当該建築物によっては、面識の無い隊員同士で部隊が編成される場合もある。そこで、図11に示したような隊員情報をタップすることにより、各隊員の所属や氏名に加え、予め登録しておいた顔写真を表示させて隊員を特定できるようにしてもよい。
このように、少なくとも部隊を指揮する役割に選定された隊員に対して、自らが属する部隊の編成情報を提供することにより、当該隊員は部隊の編成を迅速かつ確実に把握することができ、適切な指揮など自衛消防活動を適切に行うことができ、部隊内で隊員を特定したコミュニケーションを円滑とすることもできる。
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
2−1.変形例1
上述した実施形態において、支援装置1の記憶部12が備える第1の記憶領域としての部隊候補データベース121は、自衛消防隊の役割と、その役割毎の定数と、優先して隊員を選定する役割の順位である役割優先順位と、隊員候補情報として自衛消防隊の役割毎に優先して選定される順位である選定優先順位と、を関連付けて記憶するものであれば、その形態は如何なるものであってもよい。例えば、図3に記したような、役割毎に選定優先順位の順に隊員候補を登録することに代えて、図12に示すように、役割毎に隊員候補と対応させて選定優先順位を登録するようにしてもよい。例えば、図12において本部隊本部長の役割には、隊員候補番号001、002、003、009に対応して、それぞれ選定優先順位1、2、3、4が登録されている。そして、編成部111は、本部隊本部長の役割に対する選定優先順位を参照し、選定優先順位1、2、3、4の順に隊員候補番号001、002、003、009を検索して隊員を選定する。このように構成しても、優先すべき役割に対して優先して選定されるべき隊員候補が選定され、自衛消防隊を適切に編成することができる。また、不在者を除外したとしても選定優先順位の高い隊員候補が選定され、ひいては自衛消防隊を適切に編成することができる。
2−2.変形例2
支援装置1の記憶部12が備える第1の記憶領域としての部隊候補データベース121は、上述した実施形態で述べた構成に限るものではない。部隊候補データベース121は、自衛消防隊の役割と、その役割毎の定数と、優先して隊員を選定する役割の順位である役割優先順位と、隊員候補情報とを関連付けて記憶する。上述した実施形態では、隊員候補情報に、自衛消防隊の役割毎に優先して選定される順位である選定優先順位を隊員候補の属性情報として記憶するものであったが、この属性情報として役割毎の隊員の適性度を記憶することに代えてもよい。このとき、編成部111は、隊員候補の適性度に基づいて隊員を選定するようにするとよい。例えば、図13に示したように、役割毎に各隊員候補の適性度を数値化して登録する。図13の例では、本部隊本部長の役割には、隊員候補番号001、002、003、009に対応して、それぞれ適性度10、9、8、6が登録されている。そして、編成部111は、本部隊隊長の役割に対する適性度を参照し、その値が高い順に隊員候補番号001、002、003、009を検索して隊員を選定する。なお、適性度には各隊員候補の訓練結果をそれぞれの適性度に反映させるようにしてもよい。例えば、消防訓練で参加した役割に基づいて、当該役割に対する習熟として適性度を加算するように登録し、記憶させるようにすることができる。また、支援装置1又は図示しない訓練用サーバに訓練用プログラムを設け、端末2を用いて訓練プログラムを実行するようにし、訓練結果として獲得した得点を反映するように、当該隊員候補の属性情報として記憶されている適性度を支援装置1が更新するようにしてもよい。この訓練プログラムとしては、隊員候補が単独で実施する仮想訓練を採用できる。この仮想訓練としては、設問に対する回答に基づいて採点するようなeラーニングの手法や、所定の役割に用いる消防用設備への移動を実際に行って測位手段や当該消防用設備に設けた電子標識等でその移動の成否を判定する訓練や、更に当該消防用設備の操作方法に対する設問に対する回答をその操作するとした部位で成否を確認する訓練、等を採用することができる。このような仮想訓練プログラムを用いることにより、平常時に隊員候補が自らの能力を高めることができる。また、所定の火災想定で実行するシミュレーションに基づいて、自衛消防隊が集団で実施する仮想消防訓練のプログラムを行うようにしてもよい。このように、隊員候補の役割毎の適性度を隊員候補の属性情報として記憶するように構成することにより、優先すべき役割に対して最も高い適性を有する隊員候補が選定され、自衛消防隊を適切に編成することができる。また、不在者を除外したとしても高い適性を有する隊員候補が選定され、ひいては自衛消防隊を適切に編成することができる。また、選定優先順位に基づいて隊員を選定した後、定数を充足しない役割について適性度に基づいて補充する隊員を選定して定数を充足するようにしてもよい。
2−3.変形例3
上述した実施形態において編成部111が隊員候補から隊員を選定する前に、情報生成部112は、隊員候補に自衛消防隊への参加を要請する参加要請情報を生成し、これを隊員候補が所持する端末2に表示させ、編成部111は、その参加要請情報に対して許諾する旨の応答があった端末2に対応する隊員候補を対象として自衛消防隊を編成するようにしてもよい。
例えば、図5に示したシーケンス図において、火災断定(S110)の後、情報生成部112は、隊員候補に自衛消防隊への参加を要請する参加要請情報を支援情報として生成し、これを隊員候補が所持する端末2に表示させる。端末2は、通信部23を介してこの支援情報を取得し、制御部21は取得した参加要請情報を表示部24に表示させる。その一例を図14に示す。図14では、表示部24の画面241に参加要請情報2411が表示されている。例えば、「自衛消防隊参加を要請!可否を選択願います。」と、隊員候補に自衛消防隊への参加を要請する表示に加え、許諾する旨の応答をするための了解釦2412aと参加できない旨を応答するための参加不能釦2412bが表示される。このとき、図示したように、火災断定情報として火災が発生した旨とその場所とを表示してもよく、隊員候補に状況を知らせることができる。ここで隊員候補は、自衛消防隊に参加できる場合は了解釦2412aを、参加できない事情がある場合は参加不可釦2412bを、タップ操作する。画面241に重ねて設けられたタッチパネル251を備える操作部25は、この操作を検出し、検出された操作に応じて制御部21が通信部23を介して支援装置1へ応答する。そして、支援装置1の編成部111は、参加要請情報に対して許諾する旨の応答があった端末2に対応する隊員候補を対象として災害対応編成を実行する(S111)。なお、支援装置1は、参加要請情報を端末2に対して発信した後、端末2からの応答を受け付ける所定時間の受付期間を設け、これを過ぎた時点でタイムアウトし、端末2からの応答の受付を締め切るようにしてもよい。このようにすると、応答の無い端末2からの応答を永遠に待ち続けるような事態を防止することができる。このとき編成部111は、応答が無かった端末2を所持する隊員候補を除外して災害対応編成を実行するようにすればよい。
上記のような参加対応要請は、災害対応編成を行う場合に限られるものではなく、隊員候補に何らかの行動を求めるような場合に採用することができる。例えば、初期対応編成(S103)を実行する前、支援装置1が火災信号を受け付けたときや(S101)、火災信号に基づいて発生場所を特定したとき(S102)、情報生成部112は、隊員候補に自衛消防隊への参加を要請する参加要請情報を支援情報として生成し、これを隊員候補が所持する端末2に表示させる。そして、上記同様に、支援装置1の編成部111は、参加要請情報に対して許諾する旨の応答があった端末2に対応する隊員候補を対象として初期対応編成を実行する(S103)。
また、編成部111が隊員候補から隊員を選定した後に参加要請を行い、参加要請に対して許諾する旨の応答がなかった端末に対応する役割を対象として代替要員を選定するようにしてもよい。すなわち、編成部111が隊員候補から隊員を選定した後に、情報生成部112は、隊員候補に自衛消防隊への参加を要請する参加要請情報を生成し、これを隊員候補が所持する端末2に表示させ、編成部111は、参加要請に対して許諾する旨の応答がなかった端末に対応する役割を対象として代替要員を選定するようにしてもよい。例えば、編成部111が部隊候補データベース121(図3)を参照して本部隊本部長を選定する際、隊員候補001から参加を許諾する旨の応答が無かった場合は、参加を許諾する旨の応答があった隊員候補の中から本部隊本部長の役割に対する選定優先順位が最も高い隊員候補を、例えば、隊員候補001の次に選定優先順位の高い隊員候補002を、本部隊本部長に選定する。
このように構成することにより、隊員候補が、当該建築物から遠く離れていて参加できない、負傷していて参加できない、何らかの緊急事態に対応中で参加できない、といった状況であった場合に、無理な編成をしないようにすることができる。
2−4.変形例4
上述した実施形態において、支援装置1が隊員候補の在館情報を取得するようにし、該在館情報に基づいて、編成部111が不在者を除外した隊員候補から隊員を選定するようにしてもよい。在館情報は、当該建築物の入退館を管理する入退館システムに基づいて取得してもよいし、端末2の位置情報に基づいて取得するようにしてもよい。そして、編成部111は、在館する隊員候補を対象として自衛消防隊の編成を実行することによって、不在者を除外して自衛消防隊を編成できる。
上述したように端末2の位置情報を利用する場合は、端末2は、測位技術を用いて自らに位置情報を取得する測位手段としての測位部26を更に備える。測位技術としては、様々な技術を用いることができる。例えば、建物内に複数配設された複数の無線アクセスポイントから受信される、識別情報、電波の強度あるいは信号位相差、等に基づいて3点測位等により位置情報を取得することができる。また、建物内に複数配設された、電波、超音波等の音波、赤外線等の光等の放射ポイントから受信される、識別情報、放射強度あるいは信号位相差、等に基づいて3点測位等により位置情報を取得してもよい。あるいは、擬似衛星GPS(Global Positioning System)(スードライト)や、GPSリピータや、IMES(Indoor Messaging System)等の測位システムを利用して位置情報を取得してもよい。あるいは、建物に配設された、QRコード(登録商標)等の受動的光学標識、音波や光、あるいは、iBeacon(登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、RFIDタグ、等電波を利用した電子標識や近接無線通信装置(NFC装置)によって、その配設場所の位置情報を電子標識やNFC装置から取得するようにしてもよい。また、このような電子標識やNFC装置が固有の識別子を備えるようにし、測位部26が上記識別子を取得し、予め登録しておいた電子標識やNFC装置の識別子毎の位置情報を示すデータベースを参照して、位置情報を取得するようにしてもよい。あるいは、これらの測位技術によって出発地点のみ位置情報を取得し、その後は端末2に備わる加速度センサとジャイロセンサを用いた慣性航法等の自律航法により位置情報を取得するようにしてもよい。また、上記自律航法に建物内の要所に配設した上記電子標識や上記NFC装置を併用し、自律航法で生ずる位置情報の誤差を電子標識やNFC装置に基づいて補正するようにしてもよい。あるいは、上記電子標識や上記NFC装置が入退室管理システムの端末であって、測位部26が入退室信号を取得したり、測位部26から端末2の端末IDを取得させたりし、入退室管理システムから位置情報を取得するようにしてもよい。そして、端末2が取得した位置情報に基づいて在館するか否かを判定すればよい。なお、端末2の位置情報に基づいて、当該端末2が当該建築物の直近、例えば当該建築物の敷地内に位置すると判定される場合は、在館する場合に準じて扱い、自衛消防隊に選定する隊員候補としてもよい。
このように、編成部111が在館する隊員候補を対象として初期対応編成や災害対応編成を実行することによって、不在者を除外して自衛消防隊を編成することができるので、不在で活動に参加できないような隊員候補を誤って自衛消防隊の役割に選定することを防止することができる。
また、端末2が上述した測位部26を備える場合、支援装置1は端末2の位置情報に基づいて自衛消防隊を編成するようにしてもよい。例えば、編成部111は、在館する隊員候補のうち特定の部隊の属性を有する隊員候補が、所持する端末2の測位手段が取得する自己の位置情報に基づいて予め登録された部隊の受け持ち地区から所定距離以上乖離している場合は、当該部隊への参加は不可能と判断し、当該部隊の隊員に選定しないようにしてもよい。また、このとき、編成部111は、予め登録された部隊への参加が不可能と判断された上記隊員候補を、最も近い他の部隊の隊員候補としてもよい。また、例えば、支援装置1の編成部111が初期対応編成を行うとき(S103)、S102で特定した発生場所に、最も近い、又は、特定した発生場所から所定範囲内に位置する端末2を所持する隊員候補を現場確認要員に選定してもよい。このように発生場所から近い位置の隊員候補が現場確認要員に選定されることにより迅速に現場確認を行うことができ、また、予め登録されていた部隊への参加が距離的に無理なときに、当該隊員候補を参加不可能な距離の部隊に選定するような無理な編成を防止することができ、更に、他の部隊の隊員候補とすることにより、部隊を補充する人材として有効に活用することができる。
また、端末2が上述した測位部26を備える場合、端末2に火災発生場所を示すように地図表示させるとき(例えば、図7を参照)、端末2の位置を併せて表示させるようにしてもよい。初期対応編成や災害対応編成で選定されて活動する隊員の端末2Aにその位置を示すように地図表示させることにより、隊員は自らの位置と火災発生場所等とを正しく把握することができる。
また、端末2が上述した測位部26を備える場合、現場確認要員の所持する端末2Aからの異状確認情報を受け付けた支援装置1の異状断定部114は、当該端末2Aから取得した位置情報が特定された発生場所から所定範囲内に位置しないときは当該端末2Aが現場確認していないものとして、この異状確認情報を無視するようにしてもよい。このようにすることにより、現場確認要員が端末2Aを誤って操作したとしてもこれを排除することができる。
2−5.変形例5
上述した実施形態において、支援装置1は複数の建築物を識別可能に登録するようにし、複数の建築物の自衛消防隊を支援するようにしてもよい。それぞれの防火対象物である建築物は、それぞれ固有の識別子である施設識別子を有し、それぞれの自火報設備200は異状信号としての火災信号を発信する際に、この施設識別子をも発信するようにしておく。そして、支援装置1の記憶部12は、この施設識別子を、第1の記憶領域としての部隊候補データベース121と対応させて更に記憶しておく。このように構成することにより、支援装置1は、複数の建築物の自衛消防隊を支援することができ、多数の建築物の自衛消防隊を一つの支援装置1で支援することも可能とする。ひいては、平常時には経済的に何ら生産しない支援システムの経済的負担を軽減することが可能となり、このような支援装置1を運営し、支援システムによる自衛消防隊への支援をサービスとして提供する事業を可能とする。
2−6.変形例6
上述した実施形態において、支援装置1から発信された支援情報を端末2にリアルタイムで表示させるために、端末2からのリクエストによらずに端末2に対して能動的に情報を取得させるプッシュ型情報通知の技術を用いることができる。端末2が休止状態であってもプッシュ型情報通知に基づいて端末2を起動させ、支援情報を強制的に表示させるように制御する構成の一例について、以下に説明する。
支援システム100は、通信回線3を介して支援装置1および端末2と通信し、端末2に対してプッシュ型情報通知を行うための通知手段として、通知装置4を更に具備する。通知装置4は、例えば、支援装置1とは別に設けられたサーバである。通知装置4は、支援装置1と一体化されてもよく、支援装置1と一体化されたサーバで構成するようにしてもよい。通知装置4は、通信部43と、記憶部42と、制御部41とを有する。通信部43は、信号線C3と通信回線3とを介して、端末2、支援装置1と制御情報等を通信する通信手段としてのインターフェースである。信号線C3に代えて無線通信で通信回線3と接続するようにしてもよい。記憶部42は、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性の記憶手段である。記憶部42は、通知装置4を動作させ、支援装置1からの通知要求に応じて指定される、通知装置4が端末2を識別するための第2の端末識別子であるデバイストークンに対応する端末2に、支援装置1が発信する支援情報を識別するための情報識別子をプッシュ型情報通知する通知処理を実行するための制御プログラムを記憶する。また、記憶部42は、端末2について、通信識別子とデバイストークンとを関連付けて記憶する。制御部41は、記憶部42に記憶されたプログラムに基づいて通知装置4の各部の動作を制御する制御手段である。制御部41は、図示せぬCPU等の演算処理装置を備える(図15を参照)。
一方、端末2の記憶部22は、予め付与された自らの通信識別子(例えば、電話番号)と、通知装置4が端末2を識別するために予め付与される第2の端末識別子であるデバイストークンと、防災支援アプリと、を更に記憶する。防災支援アプリは、プッシュ型情報通知を実行するための制御プログラムである。この防災支援アプリは、通信部23を介して自らのデバイストークンと一致する通知装置4から通知を受け付け、休止状態であっても制御部21を起動させ、通知装置4からの通知に含まれる情報識別子を取得する。また、端末2の制御部21は、取得した情報識別子に基づいて対応する支援情報を発信するように支援装置1に要求する情報要求手段としての要求部211を機能的構成として更に備える。
また、支援装置1の記憶部12は、部隊候補データベース121に記憶する端末2を所持する隊員の属性情報として、通知装置4が端末2を識別するための第2の端末識別子としてのデバイストークンを関連付けて更に記憶する。また、支援装置1の情報生成部112は、端末2に表示させるための支援情報を生成するとともに当該支援情報を識別する前記情報識別子を更に生成する。
次に、本発明に係る支援システム100におけるプッシュ通知の動作について、図16に示すシーケンス図に基づいて説明する。
支援装置1の情報生成部112は、異状確認指示(図5のS105)や役割情報(図5のS113)等、端末2に支援情報を表示させるイベントが発生したとき(S201)、対応する支援情報を生成するとともに当該支援情報を識別するための情報識別子を生成する(S202)。また、情報生成部112は、部隊候補データベース121を参照して、当該支援情報を表示させる端末2に対応するデバイストークンを取得する(S203)。そして、支援装置1の発信部113は、支援情報の発信先である端末2に対応するデバイストークンと情報識別子とを指定した通知要求を通知装置4に向けて発信する(S204)。この時点で、支援装置1は支援情報を発信していない。支援装置1からの通知要求を受け付けた通知装置4は、記憶部42を参照し、受け付けた通知要求のデバイストークンと対応する端末2の通信識別子を特定する(S205)。そして、通知装置4の制御部41は、通信部43を介して当該通信識別子を有する端末2に向けて、デバイストークンと情報識別子とを発信し、通知する(S206)。
通信部23を介して通知装置4から発信された通知を受け付けた端末2の防災支援アプリは(S206)、記憶部22を参照して、当該通知に含まれるデバイストークンが自らのものであるか否かを判定し、一致する場合は受け付けた通知に含まれる情報識別子を取得し、制御部21を起動する(S207)。そして、起動した制御部21の要求部211は、情報識別子に対応する支援情報を発信するように通信部23を介して支援装置1に要求する(S208)。この端末2からの要求を受け付けた支援装置1の発信部113は、当該端末2の表示部24に当該支援情報を表示させるために、この要求に含まれる情報識別子に対応する支援情報を当該端末2に向けて発信する(S210)。そして、通信部23を介して取得した支援情報を、端末2の制御部21は自らの表示部24に表示させる(S211)。このとき、端末2は自らが備えるWebページ閲覧ソフト、所謂ブラウザを用いて、取得した支援情報を表示部24に表示させるようにしてもよく、この場合、支援装置1の発信部113は、支援情報を掲載したWebページを作成し、当該WebページのURLを指定して端末2に支援情報を取得させるようにしてもよい。
なお、通知装置4は、プッシュ型情報通知サービス提供者が設けたプッシュ型情報通知用通知装置、例えば、GCMサービスを提供するGCMサーバや、APNサービスを提供するAPNSサーバ等、であってもよい。また、通知装置4が端末2を識別するための第2の端末識別子としてのデバイストークンは、通知装置4との間で、各種項目の設定登録作業を行うことにより、端末2の記憶部22に記憶されるようにしてもよい。また、通知装置4は、支援装置1と一体化されて、支援装置1が端末2に対してプッシュ型情報通知を直接行うようにしてもよい。このとき、端末2の端末識別子としての端末IDと、第2の端末識別子としてのデバイストークンとを端末2に関連付けて用いるようにしてもよいし、共通の端末識別子として共用するようにしてもよい。なお、支援装置1、通知装置4、端末2は、互いに識別して通信を確立するために、それぞれが通信識別子を備えるようにしてもよい。端末2の通信識別子はその一例であり、デバイストークンと共用するようにしてもよい。
このように、プッシュ型情報通知の技術を採用することにより、平常時は端末2を休止させておくことができ、火災等の異状発生時は、端末2が休止中であろうと支援装置1からの支援情報を能動的にリアルタイムで表示させることができる。ひいては、従来のプル型情報通知技術を用いて、端末2から支援装置1に頻繁にアクセスし、表示すべき支援情報が存在するか否かを確認する必要がない。したがって、通信トラフィックを低減させることができるとともに、平常時に休止状態としておくことにより端末2の電力消費を低減させることができる。特に、端末2がモバイル端末であって電池電源で動作している場合は、電池の消耗を低減させることができ、ひいては端末2の稼働時間を大幅に長くすることが可能となる。
2−7.変形例7
上述した実施形態において、支援装置1は、クラウドコンピューティングシステムの機能によって構成されるようにしてもよい。ここで述べるクラウドコンピューティングシステムとは、通信回線3によるネットワーク上に設けられた複数のネットワーク機器に、ソフトウェアや情報を格納しておき、端末2が通信回線3にアクセスすることによって、ネットワーク上に設けられた前記複数のネットワーク機器を支援装置1として利用可能とする技術である。例えば、ネットワーク上に設けられた複数のクラウドサーバが互いに連携して、支援装置1として機能するものである。このように構成することにより、ネットワーク上のクラウドサーバを増設することにより、支援システム100の規模を容易に拡大することができる。また、端末2からの支援装置1へのアクセスを複数のクラウドサーバに分散させることを可能とするので、一つの支援装置1にアクセスが集中して機能不全に陥ることを防止することができる。
2−8.変形例8
上述した実施形態では、端末2を自衛消防隊が所持し、携帯するモバイル端末2A、2Bとして説明したがこれに限るものではない。支援システム100は、据置型のPC、例えば、デスクトップPCやラップトップPC、等を用いた端末2を、端末2Cとして防災センタ等の自衛消防活動の活動拠点や遠隔地の監視センタ等に設置するようにしてもよい(図1を参照)。
更に、自衛消防隊隊員が所持する端末2Aからは、初期対応において現場確認要員が所持する端末2Aからの火災確認や非火災確認といった異状確認情報による報告に加え、操作部25を操作して各種報告を行えるようにしてもよい。例えば、出火階において役割が消火係の隊員が所持する端末2Aからは、初期消火に成功したか否か、初期消火できなかった場合には延焼する虞が高いこと、等の報告を行えるようにしておくとよい、また、例えば、避難誘導係の役割の隊員が所持する端末2Aからは、当該隊員が担当する避難対象地区からの全員退出や、避難場所における点呼確認に基づく避難完了報告を行えるようにしておくとよい。これらのように、活動している自衛消防隊隊員の役割に応じて、活動結果や状況を報告できるようにする。例えば、端末2の画面241に各種メニュー釦2416(例えば、図7の選択釦2416a〜2416e)を表示させておき、報告する内容に応じた釦を各種メニュー釦2416から選択して操作する。例えば、消火係は現地報告釦2416bを、避難誘導係は避難報告釦2416eを操作する。そして、続いて表示される図示しない報告画面において、報告内容を選択して操作できるようにしておく。現場確認報告を行う場合の画面(図8を参照)は、その一例である。
そして、端末2Aからの上記報告を、支援装置1は記憶部12にログとして記憶するようにするとよい。そして、防災センタ等、防火対象物である建築物の自衛消防活動の活動拠点に設置する端末2Cが、支援装置1に記憶された上記ログを取得して表示できるようにすると、防災センタ等の活動拠点で当該建築物の自衛消防隊全体の編成や活動状況を把握できる。このため、端末2Cは、端末2A、2Bの構成に加え、操作部25の操作に応じて上記ログを含む任意の支援情報を発信するように支援装置1に対して要求する機能的構成として図示しない要求部を備えるとよい。また、この要求に対して支援装置1の情報生成部112は、記憶装置12に記憶した上記ログや部隊候補データベース121等を参照して、端末2Cが要求する支援情報、例えば、当該建築物の自衛消防隊全体の情報、を生成し発信できるようにする。このように構成することにより、防災センタ等の自衛消防活動の活動拠点において、自衛消防隊全体の編成や活動状況を把握することができ、自衛消防活動全体を適切に指揮することが可能となる。
また、上述した端末2Cは、自衛消防隊全体を指揮する役割の隊員の操作によって、各種判断や指令を発信できるようにしてもよい。例えば、端末2Cの操作によって火災断定するようにしてもよい。上述した実施形態では、支援装置1は、火災断定信号(S109)又は現場確認要員からの異状確認情報(S108)に基づいて異状断定部114が火災と断定していた(S110)。この異状断定部114が火災断定することに代えて、火災断定信号(S109)又は異状確認情報(S108)を受け付けた支援装置1は、端末2Cのみに対して、火災断定信号又は異状確認情報を受け付けた旨を表示させ、火災と断定するか否かの判断を求めるようにしてもよい。そして、この表示に基づいて、指揮する役割の隊員は、火災と断定するか否かを判断し、端末2Cの操作部25を操作して判断結果を支援装置1に指令し、異状断定部114の判断に代える。このとき、指揮する役割の隊員は、現場を映出できる監視カメラの映像や、現場確認要員の端末2Aに備わる通話機能や自火報設備200の保安用電話や非常電話設備等を用いて、現場の状況を確認し、機械的な判断よりも適切な判断を行うことができる。
また、例えば、火災が制御不可能な状況に陥って、自衛消防隊の隊員に危険が迫っているような場合に、自衛消防隊全体を指揮する役割の隊員は、端末2Cの操作部25を操作して、支援装置1から端末2Aに対して避難指示を告げる支援情報を表示させるようにしてもよい。支援装置1の情報生成部112は、端末2Cからの指示にしたがって避難指示を告げる支援情報を生成して少なくとも端末2Aに向けて発信し、その表示部24に表示させる。このような、避難指示は、公設消防隊が到着し、公設消防隊への引き継ぎが完了したときに、公設消防隊への引継完了の通知とともに、端末2Aに表示させるようにしてもよい。
また、例えば、自衛消防隊による初期消火が奏功して火災が鎮火したことを確認したような場合に、自衛消防隊全体を指揮する役割の隊員は、端末2Cの操作部25を操作して、消防活動終了を告げる復旧通知を端末2に対して通知するようにしてもよい。支援装置1の情報生成部112は、端末2Cからの指令にしたがって消防活動終了を告げる復旧通知を支援情報として生成して端末2に向けて発信し、その表示部24に表示させる。なお、火災が鎮火して自火報設備200の受信機10で復旧操作を行うことにより、自火報設備200(受信機10)から支援装置1に向けて復旧信号を発信し、この復旧信号に基づいて支援装置1の情報生成部112が復旧通知を支援情報として生成して端末2に向けて発信し、その表示部24に表示させるようにしてもよい。すなわち、端末2Cは、指揮権を有する隊員の操作によって、支援装置1に対して当該隊員の判断又は指示を対応する端末2Aに表示させるための情報を発信するように指令し、公設消防隊到着の通知、公設消防隊への引継完了の通知、火災復旧の通知、火災断定の判断、避難指示、の少なくとも一つの情報を対応する端末2Aに表示させるものである。
上記のように、自衛消防隊全体を指揮する役割の隊員の操作によって、端末2Cが各種判断や指令を発信できるようにすることにより、支援装置1に対して適切な火災断定の判断を指令したり、当該建築物の各地に散った隊員に対して速やかに、避難指示、公設消防隊への引継完了、復旧通知、等の指示や通知を行ったりすることができる。
なお、端末2Cが自衛消防隊の活動拠点である防災センタ等に設置された場合であっても、無関係な者や、指揮する役割でない隊員(すなわち指揮権の無い隊員)が端末2Cを勝手に操作するようでは、適切な指揮が行われない虞がある。したがって、端末2Cには、隊員を認証する認証手段を設けておき、アクセスする隊員やオペレータの役割に応じて、操作可能な内容を定める操作権を設定しておくことが望ましい。例えば、防災センタのオペレータや、自衛消防隊全体の指揮権を有しない本部隊隊員は、認証手段によって表示操作のみを許可する操作権を取得するか、あるいは認証手段を用いることなく最初から表示操作のみを可能としておく。そして、先に述べたように、支援装置1からログを取得して表示することができる。また、例えば、自衛消防隊全体の指揮権を有する隊員は、認証手段によって、各種判断や指令を操作できる操作権を取得し、その操作を行うことができるようにしておく。このように、端末2Cに認証手段を設け、この認証手段による認証に応じて操作権を取得するように構成することにより、指揮権の無い者が勝手な操作を行えないようにすることができる。なお、認証手段としては、パスワード、セキュリティカード、指紋、静脈や虹彩等の生体認証、等、あらゆる手段を用いることができ、適宜決定される。また、認証手段は、端末2Cだけで完結するように構成してもよいが、端末2Cには認証手段の入力手段だけを設けておき、これを支援装置1に送って、予め支援装置1の部隊候補データベース121等の隊員属性情報として記憶させておいた認証情報と照合し、一致する場合だけ支援装置1が端末2Cからの操作を受け付けるように構成してもよい。なお、自衛消防隊全体の指揮権を有する隊員による操作は、上述した端末2Cに代えて、当該隊員が所持し携帯する端末2Aを用いてもよい。この場合、当該端末2Aを所持する隊員、すなわち指揮権を有する隊員が操作するものであるから、上記のように認証手段を設けなくてもよく、支援装置1が当該端末2Aに対応する隊員が選定された役割に基づいて受け付けるようにすればよい。
端末2Cに表示させるログは、火災発生からの自衛消防隊の活動履歴そのものであることから、公設消防隊への引き継ぎに用いることができる情報である。従来、到着した公設消防隊へ自衛消防隊から引き継ぎを行う際はホワイトボードを用いて情報を伝達していたが、これに代えて、ホワイトボード並の大きな画面、例えば少なくとも60インチ以上の画面サイズを有する表示装置を端末2Cの外部モニタとして接続し、支援装置1から取得したログを表示させるようにしてもよい。出動要請に応じて到着した公設消防隊へ自衛消防隊から事態を引き継ぐ際、従来はホワイトボード等を用いて人手によって経過および現状の情報を伝達していたが、このようにすることによって引き継ぎ作業を迅速かつ正確に行って支援することができる。
公設消防隊への引継情報としてのログとしては、少なくとも自火報設備200および支援システム100の動作状況をイベント情報として、その発生時刻とともに支援装置1の記憶部12に蓄積するようにする。このとき、自火報設備200が感知した火災等に異状発生場所も、感知手段に備わる固有の識別子や感知手段が配設された区画情報に基づいて併せて蓄積するようにしておく。更にその情報発信の時刻を、また、更に端末2が測位部26を有する場合はその位置情報を、併せて蓄積するとよい。自火報設備200が発信する異状信号としての火災信号は、自火報設備200の動作状況を示すイベント情報の一例である。また、支援装置1の情報生成部112が生成した、役割情報、行動指示情報、等の支援情報は、支援システム100の動作状況を示すイベント情報の一例である。なお、ログは公設消防隊への引き継ぎに用いるものに限られるものではなく、自衛消防活動中の隊員が所持する端末2Aに表示させて、火災の経緯や状況を確認するようにしてもよい。この場合の端末2Aは、端末2Cと同様に、支援装置1に対してログを発信するように要求する要求手段を備え、この要求に応じて支援装置1から発信されるログを取得して表示部24に表示させるように制御すればよい。
また、上述したイベント情報をその種類毎に分類して蓄積し、火災時には支援装置1が所轄消防署へ向けて通報するとともに、上記イベント情報のうち火災関連情報のみを抽出して所轄消防署へ向けて発信するようにしてもよい。更に、支援装置1の上記火災関連情報へのアクセス情報を所轄消防署へ併せて発信し、支援装置1の情報生成部112は当該建築物の上記火災関連情報を支援情報として生成し、該アクセス情報に基づく支援装置1へのアクセスに対して該支援情報を取得させるようにしてもよい。また、所轄消防署へ通報(出動要請)した後、現場へ向かっている公設消防隊が上記アクセス情報に基づいて支援装置1にアクセスしたとき、当該公設消防隊へ向けて上記支援情報を送信するようにしてもよい。当該公設消防隊は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の図示しない端末でこれを受信し、現場到着前に現場状況の概要を知ることができるので、公設消防隊は速やかに消火作業等を開始することができる。なお、公設消防隊が有する端末は、上記に限らず、例えば、支援装置1の情報生成部112が生成するようにした音声情報による支援情報を携帯電話等で受信するようなものであってもよい。
2−9.変形例9
上述した実施形態において、現場確認要員からの異状確認情報に基づいて、支援装置1の異状断定部114が火災か否かを判定していたが、支援装置1は発信部113から異状確認情報に基づいた火災断定情報又は非火災情報を発信するようにし、この情報に基づいて当該建築物に備わる非常用放送設備より火災放送又は非火災放送をさせるようにしてもよい。このとき、非常用放送設備は、支援装置1からの上記情報を取得できるように、通信回線3に接続する通信部を備えるようにするとよい。
2−10.変形例10
上述した実施形態において、感知手段が感知する異状とは火災やガス漏れ等であったが、他の異状を感知するようにしてもよい。例えば、漏電や水漏れなどを感知する感知手段であってもよい。要するに、感知手段は、それが作動した場合に人が現場で状況を確認したり現地対応をしたりする意味がある種類の異状を感知するものであればよい。また、例えば、深夜に不審者を人感センサが感知したり、窓センサが窓ガラスの破壊を感知したりした場合、支援装置1は、端末2を携帯する警備員に対して現場確認を指示したり、警備会社や所轄警察署へ通報するようにしてもよい。