JP6759935B2 - バイク用エアバッグ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、スクータ等のバイクに搭載されるもので、シートに着座した運転者を保護可能に、インフレーターから吐出される膨張用ガスを内部に流入させて、収納部位から後上方に向かって突出しつつ展開膨張するエアバッグを、備えるバイク用エアバッグ装置に関する。
従来、バイク用エアバッグ装置としては、エアバッグが、膨張完了時の後上端側における左右の略中央となる部位に、部分的に凹む凹部を配設させる構成とされ、この凹部内に、運転者の頭部を進入させて拘束させる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−8055公報
しかし、従来のバイク用エアバッグ装置では、エアバッグの後上端側における左右の略中央の部位のみを、部分的に凹ませる構成であることから、体格差や運転姿勢(着座状態)による運転者の頭部の位置の変化に対応し難く、体格や運転姿勢の異なる様々な運転者の頭部を的確に保護する点に改善の余地があった。
本発明は、上述の課題を解決するものであり、体格や運転姿勢が異なっていても、運転者の頭部を的確に保護可能なバイク用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
本発明に係るバイク用エアバッグ装置は、シートに着座した運転者を保護可能に、インフレーターから吐出される膨張用ガスを内部に流入させて、収納部位から後上方に向かって突出しつつ展開膨張するエアバッグを、備える構成のバイク用エアバッグ装置であって、
エアバッグが、膨張完了時の前部側を、収納部位に取り付けられるとともに、膨張完了時に運転者と正対する後面側から上面側にかけての領域を、運転者を保護する運転者保護領域として、構成され、
運転者保護領域が、膨張完了時の左右方向の中央側において収納部位側に向かって凹む凹部と、凹部の左右両側において相対的に突出する突出部と、を、備える構成とされ、
凹部と突出部とが、突出部を凹部の左右両側に配置させた状態として、膨張完了時のエアバッグの後面側から上面の前端側にかけて、連続的に配設されていることを特徴とする。
本発明のバイク用エアバッグ装置では、膨張完了時のエアバッグにおいて、運転者と正対する後面側から上面側にかけて配設される運転者保護領域が、膨張完了時の左右方向の中央側に配設される凹部と、凹部の左右両側において相対的に突出する突出部と、を有し、凹部と突出部とは、突出部を凹部の左右両側に配置させた状態として、膨張完了時における後面側から上面の前端側にかけて、連続的に配設される構成である。そのため、体格差や運転姿勢(着座状態)によって、シートに着座している運転者の頭部の位置が上下方向側あるいは前後方向側で異なっていても、膨張を完了させたエアバッグによって運転者を受け止めた際に、膨張完了時の後面側から上面の前端側にかけて連続的に配置される凹部内に、頭部を進入させることにより、頭部を円滑に拘束することができる。また、本発明のバイク用エアバッグ装置では、運転者保護領域において、凹部の左右両側には、相対的に後方あるいは上方に突出する突出部が配設されることから、運転者は、体格差や運転姿勢(着座状態)にかかわらず、上半身をこの左右の突出部によって拘束されつつ、頭部を凹部内に進入させるようにして、頭部を、凹部を構成する左右方向側で対向して配置される面によって拘束されることとなる。その結果、本発明のバイク用エアバッグ装置では、体格や運転姿勢にかかわらず、膨張を完了させたエアバッグによって、運転者を的確に保護することができる。
したがって、本発明のバイク用エアバッグ装置では、体格や運転姿勢が異なっていても、運転者の頭部を的確に保護することができる。
また、本発明のバイク用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了時に、凹部の上端を、シートに着座した運転者の胸部から顎部にかけての領域に配置させるように、構成すれば、突出部による上半身の拘束時に、運転者の顎部を凹部内に進入させるようにして、頭部を凹部によって拘束することができることから、エアバッグが顎部に対して直接干渉することなく、エアバッグによって運転者が顎部を押し上げられることを抑制できて、頭部を一層円滑に拘束することが可能となって、好ましい。
具体的には、上記構成のバイク用エアバッグ装置において、エアバッグにおける膨張完了時の上端を、運転者の頭頂部より下方に位置させるように、構成することが、好ましい。
さらに、上記構成のバイク用エアバッグ装置において、エアバッグの内部に、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部とを右壁部とを相互に連結するテザーを、配設させる構成とすれば、膨張完了時のエアバッグの左右方向の寸法が規制されることから、ハンドルのグリップ部を握る運転者の左右の腕へのエアバッグの干渉を抑制することができ、運転者のハンドルを握る姿勢を安定させることが可能となって、好ましい。
本発明の一実施形態であるバイク用エアバッグ装置を搭載したスクータの側面図である。 実施形態のエアバッグ装置の前後方向に沿った概略部分拡大縦断面図である。 実施形態のエアバッグ装置において使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態を示す前方側から見た概略斜視図である。 図3のエアバッグを単体で膨張させた状態を示す後方側から見た概略斜視図である。 図3のエアバッグを単体で膨張させた状態の概略平面図である。 図3のエアバッグの概略縦断面図である。 実施形態のエアバッグを構成する基布を示す平面図である。 実施形態のエアバッグ装置の作動時を示す概略平面図である。 実施形態のエアバッグ装置の作動時を示す概略縦断面図である。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態のバイク用エアバッグ装置M(以下、単に「エアバッグ装置」と省略する)は、図1,2に示すように、バイクとしてのスクータ1に搭載されている。実施形態の場合、エアバッグ装置Mは、スクータ1におけるシート23の前方側におけるハンドル11の下方となる位置に、搭載されている。詳細には、エアバッグ装置Mは、運転者Dの着座するシート23の上面23aから僅かに上方であって、ハンドル11の左右方向の中央部14(図1参照)の直下となる位置に、配置されている。換言すれば、エアバッグ装置Mはシート23の上面23aとハンドル11の中央部14との間の高さの位置に、配置されている。
エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、スクータ1の車体フレーム3としてのヘッドパイプ4やヘッドパイプ4から左右に分岐して下方に延びるダウンフレーム部5L,5R等に対して、取付ブラケット7を利用して、取付固定されている。
なお、実施形態のスクータ1では、ハンドル11の中央部14に連結された操行軸15が、下方に延びて、ヘッドパイプ4を挿通するとともに、前輪26を懸架しているフロントフォーク27に連結される構成である。また、ダウンフレーム部5L,5Rには、下カバー24やシート23が取付支持され、さらに、図示しない所定のエンジン、駆動機構、給油機構、及び、サスペンション等を介在させて、後輪29も支持されている。
ハンドル11は、図1,8に示すように、左右方向に沿って延びる中央部14と、この中央部14から左右方向側で拡開しつつ上方に延びる左側部12L,右側部12Rと、を備え、各左側部12L,右側部12Rの先端に、それぞれ、左グリップ部13Lと右グリップ部13Rとを配設させている。この左グリップ部13Lと右グリップ部13Rとは、運転者Dが操舵時に把持する部位である。左グリップ部13Lと右グリップ部13Rとの間は、ハンドルカバー18によって覆われ、ヘッドパイプ4付近は、前側カバー19や後側カバー20によって覆われている。後側カバー20の下端は、フットボード21に連なっている。これらのハンドルカバー18、前側カバー19、後側カバー20、及び、フットボード21等は、所定のステイを利用して、ダウンフレーム部5L,5Rや後部フレーム部6L,6Rに支持されている。
なお、ハンドル11は、左グリップ部13L,右グリップ部13R間の内部に、金属パイプからなるハンドル本体11aを配設させて構成されており、ハンドル本体11aにおいて中央部14に配置される部位に、操行軸15が連結固定されている。また、左グリップ部13Lと右グリップ部13R付近を除くハンドル本体11aの周囲は、ハンドルカバー18に覆われている。
エアバッグ装置Mは、図2に示すように、膨張用ガスGを流入させて膨張するエアバッグ58と、エアバッグ58に膨張用ガスGを供給するインフレーター50と、折り畳んだエアバッグ58を収納する収納部位としてのケース35と、折り畳んだエアバッグ58を覆うエアバッグカバー42と、を備えて構成されている。
収納部位としてのケース35は、板金製として略長方形状の取付壁部36と、取付壁部36の外周縁から後方に向かって略四角筒形状に延びる周壁部37と、を備えて構成されている。取付壁部36は、左右方向に延びた略長方形状として、上縁側を前方に配置させるように、鉛直面VFに対して僅かに傾斜させて配設されている。実施形態の場合、取付壁部36の鉛直面VFに対する傾斜角度θ(図1,2参照)は、10°とされている。
また、取付壁部36は、中央に、円形に開口させた貫通孔36aを配設させ、貫通孔36aの周縁に、4つの取付孔36bを配設させている。取付壁部36において、貫通孔36aの周縁の取付孔36bを配設させた部位は、エアバッグ58の後述する取付部61を取り付ける取付座36cを、構成している。なお、貫通孔36aには、インフレーター50の後述する本体部51が貫通され、各取付孔36bには、後述するリテーナ54のボルト54aが貫通される。
周壁部37における先端側(後端側)の上下の縁には、エアバッグカバー42を保持するための複数の係止爪37aが、形成されている。各係止爪37aは、前方側に反転するように形成されており、エアバッグカバー42の後述する側壁部46の係止孔46aに挿入されて、側壁部46を係止する。また、周壁部37の所定位置には、リベット48(ブラインドリベット)用の貫通孔37bが、形成されている。
そして、ケース35は、取付ブラケット7に対し、ボルト8を利用して、連結固定されるブラケット部39を備え、取付ブラケット7を介して、車体フレーム3としてのダウンフレーム部5L,5Rに連結支持されることとなる。ブラケット部39には、ボルト8を締結させるナット39aが、設けられている。
エアバッグカバー42は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂から形成されるもので、後側カバー20から露出しているカバー壁部43と、カバー壁部43の裏面側(前面側)から前方に突出する側壁部46と、を備える構成とされている。側壁部46は、略四角筒形状として、上述のケース35の係止爪37aを挿入させる係止孔46aと、リベット48用の貫通孔46bと、を備えている。実施形態の場合、側壁部46の上部側の部位は、カバー壁部43の上縁側から、連続的に連なって前方側に延びるように、形成されている。
カバー壁部43には、膨張するエアバッグ58に押されて上下に開く扉部44,44が、形成されている。各扉部44の周囲には、後方から見て略H字形状に形成された薄肉の破断予定部45が、配設されている。そして、破断予定部45が破断すると、各扉部44は、それぞれ、上縁側若しくは下縁側に配置されるヒンジ部44aを回転中心として、上下に開くこととなる。
インフレーター50は、円柱状の本体部51と、本体部51の外周面から突出するように形成される略長方形板状のフランジ部52と、を備えて構成されている。本体部51は、軸方向を前後方向に略沿わせるように配置されるもので、後端側の外周に、多数のガス吐出口51aを略放射状に配設させて構成されている。フランジ部52の四隅には、リテーナ54のボルト54aを挿通させるための取付孔52aが、貫通されている。インフレーター50は、本体部51を、ケース35の取付壁部36の貫通孔36aに、前方側から後方側に貫通するように挿通させて配設し、フランジ部52をケース35の取付壁部36の前面側に当接させた状態で、エアバッグ58内に配置させた状態のリテーナ54の各ボルト54aを、エアバッグ58における取付部61の貫通孔61b、ケース35の取付壁部36の取付孔36b、及び、インフレーター50のフランジ部52の取付孔52aを、貫通させて、ナット55止めすることにより、フランジ部52を、エアバッグ58の取付部61とともに、ケース35の取付壁部36に取り付けられる構成である。
リテーナ54は、インフレーター50とエアバッグ58とをケース35の取付壁部36に取り付けるための部材であり、板金製として、インフレーター50の本体部51を挿通可能な四角環状とされるとともに、四隅に、前方側に突出するボルト54aを配設させて構成されている。
エアバッグ58は、実施形態の場合、図3〜6に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体59と、バッグ本体59内に配置されてバッグ本体59の膨張完了形状を規制する前後テザー77及び左右テザー81と、を備えて構成されている。
バッグ本体59は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能な袋状として構成されるもので、膨張完了形状を、図3〜6に示すように、略長方形状の後壁部64から、後壁部64より小さな略長方形状とされる前壁部60にかけて収束されるような略四角錐台形状として構成されている。また、バッグ本体59は、後壁部64と前壁部60とを連結するように配置されて、左右方向側で対向して配置される左壁部67,右壁部68と、上下方向側で対向して配置される上壁部65,下壁部66も、備えている。
実施形態のバッグ本体59では、図3,6に示すように、前壁部60における下端側の部位が、ケース35の取付壁部36(取付座36c)に取り付けられる取付部61とされている。取付部61には、内部に膨張用ガスGを流入させるための円形に開口した流入用開口61aと、流入用開口61aの周縁においてリテーナ54の各ボルト54aを貫通させる貫通孔61bと、が、形成されている。また、前壁部60において、バッグ本体59の膨張完了時の上端側となる取付部61の上側に配置される上側部位62は、後述する運転者保護領域70によって運転者Dを受け止めた際に、ハンドル11における左グリップ部13Lと右グリップ部13Rとの間の部位に当接されて支持される部位とされている。具体的には、前壁部60の上側部位62は、エアバッグ58の膨張完了時において、運転者Dを運転者保護領域70によって受け止めた際に、ハンドル11の中央部14や、左側部12Lや右側部12Rにおける左グリップ部13L,右グリップ部13R近傍部位の後面側から下面側にわたるエリア、あるいは、中央部14から下方に延びる中央軸部17の後面17a等の支持面11bに、当接支持される構成とされている(図9参照)。
実施形態のバッグ本体59では、図9に示すように、膨張完了時に運転者Dと正対する後面側から上面側にかけての領域、具体的には、後壁部64の下端側から上壁部65の後半分程度にかけての領域が、運転者Dを保護する運転者保護領域70として、構成されている。運転者保護領域70は、図3〜6に示すように、バッグ本体59の膨張完了時において、左右方向の略中央となる位置に、収納部位35側(取付部61側)に向かって凹む凹部71を配置させ、凹部71の左右両側に、相対的に突出する突出部74L,74Rを配置させて構成されている。この凹部71と突出部74L,74Rとは、突出部74L,74Rを凹部71の左右両側に配置させた状態として、膨張完了時のエアバッグ58(バッグ本体59)の後面側から上面の前端側にかけて、連続的に配設されている(図3〜6参照)。すなわち、凹部71において、後壁部64の領域に配置される後側部位73は、前方に向かって凹むように構成され、上壁部65の領域に配置される上側部位72は、下方に向かって凹むように構成されている(図6参照)。また、突出部74L,74Rにおいても、後壁部64の領域に配置される後側部位76L,76Rは、凹部71の後側部位73に対して相対的に後方に向かって突出するように形成され、上壁部65の領域に配置される上側部位75L,75Rは、凹部71の上側部位72に対して相対的に上方に向かって突出するように形成されている。換言すれば、凹部71と突出部74L,74Rとは、バッグ本体59の膨張完了時において、上下方向及び前後方向に略沿って配設されるもので、実施形態の場合、運転者保護領域70の全面、すなわち、後壁部64と上壁部65の後側半分との略全域にわたって、連続的に配設されている(図6参照)。具体的には、この左右の突出部74L,74Rの隆起した状態と凹部71の凹んだ状態とは、後壁部64と上壁部65との境界部位付近(バッグ本体59における後上端側の領域)の凹み量を最も大きくして、上壁部65の前端側と後壁部64の下端側とにかけて凹凸を収束させるような形状とされている。実施形態では、具体的には、凹部71の凹みの深さ(凹み量)は、最も深い後上端側の領域で、50〜100mm程度の範囲内に、設定されている。
さらに具体的には、実施形態のバッグ本体59は、膨張完了時に、凹部71の上端(上面側(上壁部65の領域)に配置される上側部位72(上側領域)の凹みの先端72a)を、シート23に着座した運転者Dの胸部Bから顎部Jにかけての領域に配置させるように、構成されている。詳細には、実施形態のバッグ本体59は、膨張完了時に、図9に示すように、凹部71の上端(上側部位72の凹みの先端72a)を、シート23に着座した小柄な運転者D(実施形態では、小柄な女性であるAF05ダミーを基準としている)の顎部Jよりも下方となる位置に、配置させるように、構成されている。また、実施形態のバッグ本体59は、膨張完了時に、凹部71における後側部位73の凹みの先端73aを、運転者Dの胸部Bの前面に近接した位置に配置させるように、構成されている(図9参照)。さらにまた、実施形態のバッグ本体59は、膨張完了時の上端(詳細には、突出部74L,74Rにおける後上端部位74b)を、運転者Dの頭頂部HPより下方に位置させるように、構成されている。詳細には、実施形態のバッグ本体59は、膨張完了時に、突出部74L,74Rにおける後上端部位74bを、運転者Dの耳Eの前方付近となる位置に配置させるように、構成されている(図9参照)。
バッグ本体59内に配置されてバッグ本体59の膨張完了形状を規制する前後テザー77は、実施形態の場合、流入用開口61a付近と運転者保護領域70とを連結するように、配置されている。この前後テザー77は、図6に示すように、バッグ本体59の膨張完了時に前後方向に略沿って配置されるもので、実施形態の場合、流入用開口61aの周縁(取付部61)から延びる前側部位78と、運転者保護領域70側から延びる後側部位79と、を連結させるようにして、構成されている。詳細には、前後テザー77は、エアバッグ58の膨張完了時に鉛直面VFに略沿って配置される流入用開口61aの上縁側から後上方に延びるようにして、運転者保護領域70における上壁部65と後壁部64との交差部位付近(膨張完了時における後上端側の部位)に連結されるように、配置される構成である。
前側部位78は、実施形態の場合、図7に示す前側部位用素材91を折って構成されるもので、流入用開口61aの中心を中心とした左右対称形として、バッグ本体59の膨張完了時における外形形状を、前端側を略左右方向に沿わせ、後端側を略上下方向に沿わせるような略三角錐形状に近似した立体形状とされている(図3,4参照)。実施形態の場合、前側部位78は、図6,7に示すように、後端側の領域を、バッグ本体59への連結部78aとして、この連結部78aに流入用開口61a及び貫通孔61bに対応する開口(図符号省略)を配置させて、流入用開口61aの周縁部位で、全周にわたって、取付部61に縫着されている。そして、前側部位用素材91(前側部位78)において、流入用開口61aから前方に延びる領域が、本体部78bを構成し、この本体部78bの外形形状が、バッグ本体59の膨張完了時において、略三角錐形状に近似した立体形状とされる(図5,6参照)。詳細には、バッグ本体59の膨張完了時において、本体部78bは、連結部78aから屈曲されるようにして、流入用開口61aの上縁側、すなわち、取付部61の上縁側から後方に延びるような略三角錐形状とされている。この本体部78bは、後側部位79の前端79a側に縫着される後端78c側の部位の上下の幅寸法を、後側部位79における前端79a側の部位の上下の幅寸法と、略一致させるように構成されている。
後側部位79は、シート状として、実施形態の場合、バッグ本体59における運転者保護領域70を構成する内左パネル88,内右パネル89の内周縁88b,89bから延びて、内左パネル88,内右パネル89と一体的に構成される延設部88c,89cから、構成されている(図7参照)。換言すれば、後側部位79は、二枚重ね状として、それぞれ、内左パネル88,内右パネル89と一体的に構成されている。詳細には、実施形態の場合、後側部位79は、前側部位78に連結される前端79a側を狭幅として、後端79b側にかけて上下に拡開されるような略台形状として、構成されている。
この前後テザー77は、バッグ本体59の膨張完了時に、運転者保護領域70の左右の略中央(すなわち、凹部71)の流入用開口61a周縁部位(取付部61)からの離隔距離を規制するもので、エアバッグ58の膨張初期に、凹部71の先端71aを構成している部位が、運転者D側となる後方に大きく突出するのを抑制し、かつ、バッグ本体59の膨張完了時に、運転者保護領域70における凹部71の凹んだ状態を的確に保持するために、配置されている。
バッグ本体59内に配置されてバッグ本体59の膨張完了形状を規制する左右テザー81は、実施形態の場合、図6に示すように、前後テザー77の下方の領域であって、膨張完了時のバッグ本体59の前後上下の略中央となる位置のみに、配置されている。左右テザー81は、バッグ本体59の膨張完了時において、左壁部67と右壁部68とを連結するように、左右方向に略沿って配置されている。具体的には、左右テザー81は、幅方向を前後方向に略沿わせるように配置される帯状として、バッグ本体59の膨張完了時に、長手方向を水平方向に略沿わせるように、配置されている。実施形態の場合、左右テザー81は、図7に示すように、左右方向側で並設される2枚のテザー用基布82L,82Rの縁部相互を、それぞれ、結合させて、構成されている。この左右テザー81は、バッグ本体59の膨張完了時に、左壁部67と右壁部68との離隔距離を規制して、ハンドル11の左グリップ部13L,右グリップ部13Rを握る運転者Dの左右の腕Aへのエアバッグ58の干渉を抑制するために、配置されるものであり、この左右テザー81を配置させることにより、バッグ本体59は、車両搭載状態での膨張完了時に、左右方向の幅寸法W1(図5参照)を、ハンドル11における左グリップ部13L,右グリップ部13R間の幅寸法W0(図8参照)より、小さく設定されることとなる。
バッグ本体59は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、図7に示すように、主に運転者保護領域70以外の領域(前壁部60,下壁部66,左壁部67,右壁部68)側を構成する2枚の外左パネル85,外右パネル86と、主に運転者保護領域70(上壁部65,後壁部64)側を構成する2枚の内左パネル88,内右パネル89と、を備えて構成されている。
外左パネル85及び外右パネル86は、バッグ本体59において、運転者保護領域70を除いた部位を左右で2分割するように構成されるもので、図7に示すように、それぞれ、左右対称形とした略扇形状として、構成されている。外左パネル85及び外右パネル86は、それぞれ、流入用開口61aの周縁の部位(取付部61)を構成する突出部85a,86aを、備えている。外左パネル85は、左壁部67と、上壁部65における左前半分程度の領域と、下壁部66における左半分程度の領域と、運転者保護領域70における突出部74Lの突出頂部74aから左側の領域と、を構成している。外右パネル86は、右壁部68と、上壁部65における右前半分程度の領域と、下壁部66における右半分程度の領域と、運転者保護領域70における突出部74Rの突出頂部74aから右側の領域と、を構成している。
内左パネル88及び内右パネル89は、運転者保護領域70において、各突出部74L,74Rにおける突出頂部74a間の左右両側の領域を、構成している。詳細には、内左パネル88及び内右パネル89は、上壁部65の前後の中央付近から、後壁部64の下端側にかけての領域を構成するもので、この領域を、凹部71の先端71aとなる位置で左右に2分割し、それぞれ、凹部71の先端71aから左側の突出部74Lの突出頂部74aまでの領域と、凹部71の先端71aから右側の突出部74Rの突出頂部74aまでの領域と、を構成するように、略三日月形状の左右一対とされている(図7参照)。また、実施形態の場合、内左パネル88,内右パネル89の内周縁88b,89b側には、図7に示すように、前後テザー77の後側部位79を構成する延設部88c,89cが、それぞれ、形成されている。また、内左パネル88,内右パネル89は、平らに展開した状態で、外周縁88a,89aを、それぞれ、外左パネル85,外右パネル86の後縁85d,86dの湾曲形状に略沿わせるように、構成されている。
実施形態では、バッグ本体59を構成する外左パネル85,外右パネル86,内左パネル88,内右パネル89、前後テザー77を構成する前側部位用素材91、左右テザー81を構成するテザー用基布82L,82Rは、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
次に、実施形態のエアバッグ58の製造について説明をする。予め、内左パネル88と内右パネル89とを、平らに展開した状態で周縁相互を一致させるように重ね、内周縁88b,89b相互を、縫合糸を用いて縫着させておく。また、外左パネル85と外右パネル86とに、予め、テザー用基布82L,82Rの一端側を、縫合糸を用いて縫着させておく。まず、外左パネル85と外右パネル86とを平らに展開した状態で外周縁相互を一致させるように重ね、下縁85c,86c相互を縫合糸を用いて縫着させる。そして、突出部85a,86a相互を重ねるように、外左パネル85と外右パネル86とを開く。その後、突出部85a,86a上に、前後テザー77を構成する前側部位用素材91を重ね、流入用開口61aの周縁となる部位で、縫合糸を用いて縫着させ、その後、孔開け加工により、流入用開口61aと貫通孔61bとを形成する。次いで、外左パネル85と外右パネル86とを周縁相互を一致させるように重ね、上縁85b,86b相互を縫合糸を用いて縫着させる。その後、外左パネル85と外右パネル86とを、後縁85d,86d相互を離すように開き、外周縁88a,89a相互を離すように広げた内左パネル88,内右パネル89を重ねて、外左パネル85の後縁85dと内左パネル88の外周縁88aとを、縫合糸を用いて縫着させ、同様に、外右パネル86の後縁86dと内右パネル89の外周縁89aとを、縫合糸を用いて縫着させる。次いで、前後テザー77の前側部位78における本体部78bを二つ折りして、折り曲げた状態の後端78c側を、後側部位79の前端79a側(内左パネル88,内右パネル89の延設部88c,89cの前端側)に縫着させ、前後テザー77を形成する。また、テザー用基布82L,82Rの他端相互を、縫合糸を用いて縫着させて、左右テザー81を形成する。その後、外左パネル85,外右パネル86において未縫合部分である前縁85e,86e側の部位の開口を利用して、縁部の縫代が外部に露出しないように、バッグ本体59を反転させる。次いで、外左パネル85,外右パネル86の前縁85e,86eを、それぞれ、二つ折りするようにして重ね、縫合糸を用いて縫着させれば、エアバッグ58を製造することができる。
そして、このように製造したエアバッグ58を、リテーナ54を内部に収納させた状態で、ケース35内に収納可能に折り畳み、折り畳んだエアバッグ58の周囲を、折り崩れしないように、破断可能な図示しないラッピングシートによりくるむ。その後、ラッピングシートから突出している各ボルト54aをケース35の取付孔36bに貫通させるようにして、折り畳まれたエアバッグ58を、ケース35内に収納させる。さらに、インフレーター50の本体部51を、ケース35の貫通孔36a、リテーナ54、及び、エアバッグ58の流入用開口61aを経て、エアバッグ58内に挿入させるとともに、インフレーター50の各取付孔52aにリテーナ54のボルト54aを貫通させて、各ボルト54aにナット55を締結させれば、ケース35の取付壁部36の取付座36cに、インフレーター50とエアバッグ58とを取付固定することができる。
その後、エアバッグカバー42の側壁部46を、係止爪37aを利用してケース35の周壁部37に連結させ、さらに、リベット48を所定の貫通孔37b,46bに挿入させて、側壁部46と周壁部37とを締結させれば、エアバッグ装置Mを組み立てることができる。
このように組み立てたエアバッグ装置Mは、インフレーター50に対して所定の制御回路から延びる作動信号入力用の図示しないリード線を結線させつつ、ボルト8にナット39aを締結させることにより、ケース35のブラケット部39を取付ブラケット7に対して取り付ければ、スクータ1に搭載することができる。
エアバッグ装置Mのスクータ1への搭載後、走行するスクータ1が車両等の障害物等に衝突して、運転者Dがシート23上で前方移動しようとしても、エアバッグ装置Mが作動されて、運転者Dを保護することができる。具体的には、スクータ1の車両等との衝突時には、インフレーター50が作動して、ガス吐出口51a(図2参照)から膨張用ガスが吐出されることとなり、エアバッグ58が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張して、エアバッグカバー42の扉部44を押し開かせることとなる。そして、エアバッグ58は、ハンドル11の下方から後上方側へ向かって突出するように展開膨張し、図1の二点鎖線及び図8,9に示すように、膨張を完了させることとなる。
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、膨張完了時のエアバッグ58において、運転者Dと正対する後面側から上面側にかけて配設される運転者保護領域70が、膨張完了時の左右方向の中央側に配設される凹部71と、凹部71の左右両側において相対的に突出する突出部74L,74Rと、を有し、凹部71と突出部74L,74Rとは、突出部74L,74Rを凹部71の左右両側に配置させた状態として、膨張完了時における後面側から上面の前端側にかけて、連続的に配設される構成である。そのため、体格差や運転姿勢(着座状態)によって、シート23に着座している運転者Dの頭部Hの位置が上下方向側あるいは前後方向側で異なっていても、膨張を完了させたエアバッグ58によって運転者Dを受け止めた際に、膨張完了時の後面側から上面の前端側にかけて連続的に配置される凹部71内に、頭部Hを進入させることにより、頭部Hを円滑に拘束することができる。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、運転者保護領域70において、凹部71の左右両側には、相対的に後方あるいは上方に突出する突出部74L,74Rが配設されることから、運転者Dは、体格差や運転姿勢(着座状態)にかかわらず、上半身(具体的には、左右の肩S付近)をこの左右の突出部74L,74Rによって拘束されつつ、頭部Hを凹部71内に進入させるようにして、頭部Hを、凹部71を構成する左右方向側で対向して配置される面(内左パネル88や内右パネル89の外表面)によって拘束されることとなる。その結果、実施形態のエアバッグ装置Mでは、体格や運転姿勢にかかわらず、膨張を完了させたエアバッグ58によって、運転者Dを的確に保護することができる。
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、体格や運転姿勢が異なっていても、運転者Dの頭部Hを的確に保護することができる。
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ58において、膨張完了時に、凹部71の上端(凹部71において上面側に配置される上側部位72(上側領域)の凹みの先端72a)が、シート23に着座した運転者Dの胸部Bから顎部Jにかけての領域に配置される構成である。そのため、突出部74L,74Rによる上半身の拘束時に、運転者Dの顎部Jを凹部71の上側部位72内に進入させるようにして、頭部Hを凹部71によって拘束することができることから、エアバッグ58が顎部Jに対して直接干渉することなく、エアバッグ58によって運転者Dが顎部Jを押し上げられることを抑制できて、頭部Hを一層円滑に拘束することができる。特に、実施形態では、膨張完了時のエアバッグ58における凹部71の上側部位72の凹みの先端72aは、図9に示すように、小柄な女性である運転者D(AF05ダミー)の顎部よりも下方となる位置に、配置される構成であることから、運転者Dが小柄な女性であっても、顎部Jの押し上げを抑制して、頭部Hを、凹部71の上側部位72内に進入させるようにして、凹部71を構成する左右方向側で対向して配置される面によって拘束させることができ、顎部Jが凹部71の凹みの先端(上側部位72における先端72a)の部位と強く当たることを抑制できて、頭部H(顎部J)を、ソフトに保護することができる。
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ58における膨張完了時の上端(突出部74L,74Rにおける後上端部位74b)が、運転者Dの頭頂部HPより下方に位置する構成である。実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ58の膨張完了時に、前進移動する運転者Dの上半身(左右の肩S)を、後方に突出するように配置される突出部74L,74Rの後側部位76L,76Rによって拘束しつつ、運転者Dの頭部Hを、凹部71内に進入させるようにして、保護する構成であることから、膨張完了時の上端を運転者Dの頭頂部HPより下方に位置させる構成であっても、運転者Dの上半身から頭部Hにかけてを的確に拘束することができて、エアバッグ58を、容積の増大を抑制して、コンパクトにすることができる。
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ58の内部に、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部67とを右壁部68とを相互に連結する左右テザー81が、配設される構成であることから、膨張完了時のエアバッグ58の左右方向の寸法が規制されることとなり、ハンドル11の左グリップ部13L,右グリップ部13Rを握る運転者Dの左右の腕Aへのエアバッグ58の干渉を抑制することができ、運転者Dのハンドル11を握る姿勢を安定させることができる。
1…スクータ(バイク)、11…ハンドル、35…ケース(収納部位)、42…エアバッグカバー、50…インフレーター、58…エアバッグ、60…前壁部、61…取付部、64…後壁部、65…上壁部、67…左壁部、68…右壁部、70…運転者保護領域、71…凹部、71a…先端、72…上側部位、72a…先端、74L,74R…突出部、81…左右テザー、D…運転者、A…腕、B…胸部、H…頭部、HP…頭頂部、J…顎部、M…バイク用エアバッグ装置。

Claims (3)

  1. シートに着座した運転者を保護可能に、インフレーターから吐出される膨張用ガスを内部に流入させて、収納部位から後上方に向かって突出しつつ展開膨張するエアバッグを、備える構成のバイク用エアバッグ装置であって、
    前記エアバッグが、膨張完了時に、左右方向側で対向して配置される左壁部及び右壁部と、上下方向側で対向して配置される上壁部及び下壁部と、を有し、膨張完了時の前部側を取付部として、前記収納部位に取り付けられるとともに、膨張完了時に運転者と正対する後面側から上面側にかけての領域を、運転者を保護する運転者保護領域として、構成され、
    該運転者保護領域が、膨張完了時の左右方向の中央側において前記収納部位側に向かって凹む凹部と、該凹部の左右両側において相対的に突出する突出部と、を、備える構成とされ、
    前記凹部と前記突出部とが、前記突出部を前記凹部の左右両側に配置させた状態として、膨張完了時の前記エアバッグの後面における下端側から上面の前端側にかけて、連続的に配設され、
    前記エアバッグが、前記運転者保護領域を構成する2枚の内左パネル及び内右パネルと、前記運転者保護領域以外の領域を構成する2枚の外左パネル及び外右パネルと、を備え、前記内左パネル、前記内右パネル、前記外左パネル、及び、前記外右パネルの周縁相互を結合させて袋状に構成され、
    前記内左パネル及び前記内右パネルは、前記運転者保護領域において、前記各突出部における突出頂部間の左右両側の領域を、構成し、
    前記外左パネル及び前記外右パネルは、前記運転者保護領域を除いた部位を左右で2分割するように構成され、
    前記外左パネルは、膨張完了時の前記エアバッグにおいて、前記左壁部と、前記上壁部における左前半分程度の領域と、前記下壁部における左半分程度の領域と、左側の前記突出部の前記突出頂部から左側の領域と、を、構成し、
    前記外右パネルは、膨張完了時の前記エアバッグにおいて、前記右壁部と、前記上壁部における右前半分程度の領域と、前記下壁部における右半分程度の領域と、右側の前記突出部の前記突出頂部から右側の領域と、を構成し、
    前記エアバッグが、内部に、膨張完了時の前記凹部の前記取付部からの離隔距離を規制する前後テザーと、前記左壁部と前記右壁部とを相互に連結する左右テザーと、を、配設させて構成され
    前記前後テザーが、前記取付部の上縁側から後方に延びるように、形成され、
    前記左右テザーが、前記前後テザーの下方の領域のみに、配設されていることを特徴とするバイク用エアバッグ装置。
  2. 前記エアバッグが、膨張完了時に、前記凹部の上端を、前記シートに着座した前記運転者の胸部から顎部にかけての領域に配置させるように、構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバイク用エアバッグ装置。
  3. 前記エアバッグが、膨張完了時の上端を、前記運転者の頭頂部より下方に位置させるように、構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のバイク用エアバッグ装置。
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