次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態のインクジェットプリンタの概略構成図である。図2は、プリンタの電気的構成を概略的に示す図である。尚、図1に示す前後左右の各方向をプリンタの「前」「後」「左」「右」と定義する。また、紙面手前側を「上」、紙面向こう側を「下」とそれぞれ定義する。以下では、前後左右上下の各方向語を適宜使用して説明する。
[プリンタの概略構成]
図1、図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、プラテン2と、キャリッジ3と、インクジェットヘッド4と、搬送部5と、制御基板6と、電源基板7等を備えている。
プラテン2の上面には、被記録媒体である記録用紙100が載置される。キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10,11に沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。キャリッジ3には無端ベルト13が連結され、キャリッジ駆動モータ14によって無端ベルト13が駆動されることで、キャリッジ3は走査方向に往復移動する。
インクジェットヘッド4はキャリッジ3に搭載されており、キャリッジ3とともに走査方向に往復移動する。インクジェットヘッド4は、インクカートリッジ16が装着されるカートリッジホルダ8と、チューブ15によって接続されている。インクジェットヘッド4は、その下面(図1の紙面向こう側の面)に形成された複数のノズル38(図4〜図7参照)を有する。各ノズル38は、インクカートリッジ16から供給されたインクを、プラテン2上の記録用紙100に向けて吐出する。インクジェットヘッド4の詳細構成については、後で説明する。
図1に示すように、搬送部5は、前後方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18,19を有する。2つの搬送ローラ18,19は、図示しないモータによって同期して駆動され、プラテン2に載置された記録用紙100を、走査方向と直交する搬送方向に搬送する。
図2に示すように、電源基板7は、FPC30、COF29によってインクジェットヘッド4と接続されている。また、制御基板6も、電源基板7を経由してインクジェットヘッド4と接続されている。制御基板6は、CPU(Central Processing Unit)23、ROM(Read Only Memory)24、RAM(Random Access Memory)25、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)26等を備える。
ASIC26は、記録用紙100への印刷処理など、プリンタ1の動作に関する各種処理を実行する。例えば、印刷処理においては、ASIC26は、PC等の外部装置から入力された印刷指令に基づいて、インクジェットヘッド4、キャリッジ駆動モータ14、搬送ローラ18,19を駆動する搬送モータ等を制御して、記録用紙100に画像等を印刷させる。具体的には、キャリッジ3とともにインクジェットヘッド4を走査方向に移動させながらインクを吐出させるインク吐出動作と、搬送ローラ18,19によって記録用紙100を搬送方向に所定量搬送する搬送動作とを、交互に行わせる。
また、図2に示すように、プリンタ1は、2つのVDD電源回路21(211,212)とVCOM電源回路22とが実装された電源基板7を有する。尚、以下の説明において、2つのVDD電源回路211,212を区別せずに総称する場合は、「VDD電源回路21」と呼ぶ。VDD電源回路21及びVCOM電源回路22は、それぞれDC−DCコンバータを用いればよい。
尚、後でも説明するが、2つのVDD電源回路21(211,212)は、異なる電圧をそれぞれ出力する。具体的には、VDD電源回路212の出力電圧は、VDD電源回路の出力電圧よりも高い。また、VCOM電源回路22は、VDD電源回路212の出力電圧よりも、さらに高い電圧を出力する。VDD電源回路21及びVCOM電源回路22は、インクジェットヘッド4の圧電アクチュエータ28(後述)を駆動するためのものであるが、具体的な駆動手法については、後ほど詳述する。
[インクジェットヘッドの詳細構成]
次に、インクジェットヘッド4について説明する。図3は、インクジェットヘッド4の斜視図である。図4は、インクジェットヘッド4の流路ユニット27及び圧電アクチュエータ28の上面図である。図5は図4の一部拡大図、図6は図5のVI-VI線断面図、図7は図5のVII-VII線断面図である。
図3に示すように、インクジェットヘッド4は、流路ユニット27と、圧電アクチュエータ28と、COF(Chip On Film)29、FPC(Flexible Printed Circuit)30を備えている。流路ユニット27の上面には圧電アクチュエータ28が配置されている。圧電アクチュエータ28の上面には、2つのドライバIC40が実装されたCOF29が電気的に接合されている。COF29の両端部は上方に折り返され、このCOF29の両端部にFPC30が接続されている。FPC30は、プリンタ1の制御基板6及び電源基板7(図2参照)に接続される。
なお、上記構成に関連して、特開2013−159105号公報にも、圧電アクチュエータ28に、2種類の配線基板が接続された構成が開示されている。しかし、図12、図18等で詳述する、本実施形態でのFPC30の端子や配線の配置は上記文献とは異なる新規なものであり、また、コンデンサCvcについても上記文献には開示はない。
以下、流路ユニット27、圧電アクチュエータ28、COF29、FPC30等のインクジェットヘッド4の主要構成について、順に説明する。
<流路ユニット>
図6に示すように、流路ユニット27は、複数枚のプレート31〜37の積層体である。複数枚のプレート31〜37のうちの最下層のプレートは、ポリイミド等の合成樹脂からなるノズルプレート37である。ノズルプレート37には、搬送方向に配列された複数のノズル38が形成されている。図4に示すように、複数のノズル38は、12列のノズル列を構成している。
流路ユニット27を構成する、ノズルプレート37以外の他のプレート31〜36は、ステンレス鋼などの金属材料からなるプレートである。これらのプレート31〜36には、上記の複数のノズル38に連通する、次述のマニホールド42や圧力室43等を含む、インク流路が形成されている。
図3、図4に示すように、最上層のプレート31には、4つのインク供給孔41が走査方向に並んで形成されている。各インク供給孔41には、ホルダ8のインクカートリッジ16(図1参照)からインクがそれぞれ供給される。また、図6において、上から4番目のプレート34と5番目のプレート35には、搬送方向に延在する合計12本のマニホールド42が形成されている。1つのインク供給孔41と3本のマニホールド42が、プレート31〜33に形成された連通孔(図示省略)によって接続されている。
流路ユニット27の最上層のプレート31には、複数のノズル38にそれぞれ対応する複数の圧力室43が形成されている。各圧力室43は、走査方向に長い、略楕円の平面形状を有する。複数の圧力室43は、複数のノズル38に対応して搬送方向に配列され、12列の圧力室列を構成している。
複数の圧力室43は、圧電アクチュエータ28のインク分離膜46によって覆われている。図6に示すように、上から3番目に位置するプレート32には、マニホールド42と圧力室43を接続する絞り流路44が形成されている。また、最上層のプレート31とノズルプレート37との間に位置する合計5枚のプレート32〜36には、圧力室43とノズル38とを接続する連通流路45が形成されている。
以上より、インクカートリッジ16からインクが供給されるマニホールド42は、絞り流路44、圧力室43、及び、連通流路45を介して、その色のインクを吐出するノズル38と連通している。
<圧電アクチュエータ>
圧電アクチュエータ28は、複数の圧力室43を覆うインク分離膜46と、複数の圧力室43にそれぞれ対応した複数の圧電素子47を備えている。
(インク分離膜)
インク分離膜46は、例えば、ステンレス鋼等の金属製の板部材である。図6、図7に示すように、インク分離膜46は、流路ユニット27の最上層のプレート31の上面に接合され、複数の圧力室43を覆っている。
(圧電素子の構造)
圧電素子47は、圧力室43に対応して設けられ、圧力室43内のインクに圧力を付与してノズル38からインクを吐出させる。以下、1つの圧電素子47の具体的な構造について、主に、図5〜図7を参照して説明する。圧電素子47は、圧電層51、圧電層52、及び、圧電層53の3枚の圧電層と、駆動電極54、VCOM電極55、及び、グランド電極56の3種類の電極を有する。
インク分離膜46の上には、圧電層51を構成する圧電シート71、圧電層52を構成する圧電シート72、圧電層53を構成する圧電シート73の、3枚の圧電シート71〜73の積層体57が配置されている。3枚の圧電シート71〜73は、それぞれ、チタン酸ジルコン酸鉛などの強誘電性の圧電材料によって形成されている。図4に示すように、圧電シート71〜73の積層体57は、インク分離膜46の上面において、複数の圧力室43を共通に覆うように配置されている。尚、本実施形態では、圧電シート71,72,73のうちの1つの圧力室43を覆っている部分を、それぞれ、圧電層51、圧電層52、圧電層53とする。言い換えれば、複数の圧電素子47の間で3つの圧電層51〜53が繋がった構造である。
駆動電極54は、最上層の圧電層51の上面に設けられている。駆動電極54は、各圧電素子47に対して個別に設けられた、いわゆる個別電極である。駆動電極54は、圧力室43とほぼ同じ平面形状を有し、圧力室43のほぼ全域と対向している。駆動電極54は接続端子54aを有する。駆動電極54の圧力室43と対向する部分から、左方または右方へ接続端子54aが引き出されている。接続端子54aは、圧電アクチュエータ28を覆うように配置されたCOF29と、バンプ50を介して電気的に接続される。後で説明するが、駆動電極54の電位は、COF29に実装されたドライバIC40(図2、図3参照)によって、VDD電位とグランド電位の間で切り換えられる。
VCOM電極55は、圧電層52の上面、即ち、圧電層51と圧電層52の間に配置されている。また、VCOM電極55は、圧力室43の前後方向における中央部と対向している。即ち、VCOM電極55は、圧電層51を挟んで駆動電極54の中央部と対向している。後でも説明するが、複数の圧電素子47の間で、VCOM電極55同士が導通している。
グランド電極56は、圧電層53の上面、即ち、圧電層52と圧電層53の間に配置されている。グランド電極56は、圧力室43の前後方向における両端部とそれぞれ対向する2つの電極部分56a,56bを有する。即ち、グランド電極56は、圧電層52を挟んで駆動電極54の前後両端部と対向している。また、1つの圧電素子47のグランド電極56は、圧力室43の外側に位置する電極部分97を介して、隣接する他の圧電素子47のグランド電極56と導通している。
尚、図4に示すように、最上層の圧電シート71の上面の、複数の駆動電極54を取り囲む縁部には、2つのVCOM接続端子58と2つのグランド接続端子59が形成されている。2つのVCOM接続端子58は、圧電シート71の後半部左端と前半部右端にそれぞれ形成されている。2つのグランド接続端子59は、圧電シート71の後半部右端と前半部左端にそれぞれ配置されている。後で詳しく説明するが、各圧電素子47のVCOM電極55はVCOM接続端子58と導通し、グランド電極56はグランド接続端子59と導通している。また、VCOM接続端子58とグランド接続端子59は、それぞれ、上方に配置されたCOF29と電気的に接続される。これにより、印刷中には、VCOM電極55には、COF29から、VDD電位よりもやや高い定電位(VCOM電位)が印加される。また、グランド電極56はグランドと接続され、印刷中は、その電位はグランド電位に維持される。
図7に示すように、圧電層51の圧力室43の中央部と重なる部分は、駆動電極54とVCOM電極55に挟まれており、この部分を活性部61と呼ぶ。また、圧電層52の、圧力室43の前後方向両端部と重なる部分は、駆動電極54とグランド電極56に挟まれており、この部分を活性部62と呼ぶ。活性部61と活性部62はそれぞれ分極処理が施されている。図7に示すように、活性部61の分極方向は、VCOM電極55から駆動電極54に向かう、上向きの方向である。一方、活性部62の分極方向は、駆動電極54からグランド電極56に向かう、下向きの方向である。
(圧電素子の動作)
上記の圧電素子47の動作について図8を参照して説明する。ノズル38からインクを吐出しない待機状態においては、ドライバIC40により、各圧電素子47の駆動電極54にはそれぞれグランド電位が付与されている。また、VCOM電極55の電位はVCOM電位、グランド電極56の電位はグランド電位である。従って、この待機状態では、駆動電極54とVCOM電極55の間に電位差が発生し、活性部61にはその分極方向に等しい上向きの電界が作用する。これにより、図8(a)に示すように、活性部61が面方向に収縮して、積層体57が圧力室43側に凸となるように撓む。このとき、圧力室43は、積層体57がフラットな場合と比較して、容積が小さくなっている。
上記の待機状態から、ドライバIC40によって、駆動電極54の電位がVDD電位に切り換えられたとする。このとき、駆動電極54とVCOM電極55との間の電位差が小さくなって、活性部61の収縮が解消される。一方で、駆動電極54とグランド電極56との間に電位差が発生し、活性部62にはその分極方向に等しい下向きの電界が作用する。これにより、活性部62が面方向に収縮すると、図8(b)に示すように、積層体57の圧力室43の中央部と対向する部分が上方に引っ張られることとなり、積層体57は全体として圧力室43と反対側に凸となるように変形する。つまり、圧力室43の容積が増加する。
その後、ドライバIC40によって、駆動電極54の電位が再びグランド電位に戻されると、図8(a)のように活性部62の変形は元に戻る。同時に、活性部61が再び面方向に収縮して、積層体57が全体として圧力室43側に凸となる。このときに、圧力室43の容積が大きく減少するため、圧力室43内のインクの圧力が増加し、ノズル38からインクが吐出される。
(電極パターンの詳細)
3つの圧電層51〜53をそれぞれ構成する3枚の圧電シート71〜73には、複数の圧電素子47に関する電極パターンがそれぞれ形成されている。以下、3枚の圧電シート71〜73のそれぞれの電極パターンの詳細について説明する。図9は、最上層の圧電シート71の上面図、図10は、中間層の圧電シート72の上面図、図11は、最下層の圧電シート73の上面図である。
(1)最上層の電極パターン
図9に示すように、圧電層51を構成する最上層の圧電シート71の上面には、複数の圧力室43に対応して駆動電極54が前後方向に配列されている。また、圧電シート71の左右の縁部には、2つのVCOM接続端子58(58a,58b)と2つのグランド接続端子59(59a,59b)が配置されている。2つのVCOM接続端子58は、VCOM電極55に接続されるものであり、圧電シート71の後半部左端と前半部右端にそれぞれ配置されている。また、2つのグランド接続端子59は、グランド電極56に接続されるものであり、圧電シート71の後半部右端と前半部左端にそれぞれ配置されている。
(2)中間層の電極パターン
圧電層52を構成する中間層の圧電シート72の上面には、VCOM電極55を含む電極パターンが形成されている。
図10に示すように、圧電シート72の上面には、複数の圧力室43の配列に対応して、複数のVCOM電極55が前後方向に12列に配列されている。尚、先の圧電素子47の説明からも理解されるように、1つの圧電素子47のVCOM電極55は、図10に示される圧電シート72の上面の導電パターンのうちの、1つの駆動電極54の中央部と対向する導電部分のことである。
圧電シート72の後半部左端と前半部右端には、2つの接続電極60(60a,60b)がそれぞれ形成されている。2つの接続電極60は、圧電シート71の上面の2つのVCOM接続端子58(図9参照)と、圧電シート71を貫通する導電部63を介して接続されている。一方で、前後方向に並ぶ複数のVCOM電極55は、前後に延びる連結部64によって互いに導通している。さらに連結部64は、圧電シート72の前後の縁部において左右に延びる連結部65を介して、接続電極60に接続されている。尚、連結部64,65、及び、接続電極60の境界を理解しやすくするため、図10には、連結部64と連結部65の境界線a、接続電極60の連結部64及び連結部65と接続電極60との境線bが、それぞれ二点鎖線で示されている。これにより、複数のVCOM電極55は、連結部64、接続電極60を介して、圧電シート71の上面のVCOM接続端子58と接続されている。
尚、上記のVCOM電極55の電極パターンは、左右2系統に分離されている。即ち、12列に配列されたVCOM電極55のうち、左側5列のVCOM電極55は、後側の縁部に形成された連結部65を介して、左後方の接続電極60aに接続されている。一方、右側7列のVCOM電極55は、前側の縁部に形成された連結部65を介して、右前方の接続電極60bに接続されている。
圧電シート72の後半部右端と前半部左端には、グランド電極56用の2つの接続電極66(66a,66b)が形成されている。これら2つの接続電極66は、圧電シート71の2つのグランド接続端子59(図9参照)と、圧電シート71を貫通する導電部67を介して導通している。
(3)最下層の電極パターン
圧電層53を構成する最下層の圧電シート73の上面には、グランド電極56を含む電極パターンが形成されている。
図11に示すように、圧電シート73の上面には、複数の圧力室43の配列に対応して、複数のグランド電極56が、前後方向に12列に配列されている。先の説明からも理解されるが、1つのグランド電極56は、1つの駆動電極54の前後方向両端部とそれぞれ対向する2つの電極部分56a,56bを有する。尚、図11では、複数の凸部95が前後に並んでいるが、1つの凸部95は、前後に隣接する2つのグランド電極56の電極部分56aと電極部分56bと、電極部分56a,56bを繋ぐ電極部分97からなる(図7参照)。
圧電シート73の後半部右端と前半部左端には、2つの接続電極68(68a,68b)がそれぞれ配置されている。2つの接続電極68は、圧電シート72の接続電極66(図10参照)と、圧電シート72を貫通する導電部69を介して導通し、さらに、圧電シート71のグランド接続端子59(図9参照)と導通している。
前後方向に並ぶ複数のグランド電極56は、前後に延びる連結部70によって互いに導通している。また、連結部70は、圧電シート73の前後の縁部において左右に延びる連結部90を介して、接続電極68に接続されている。尚、凸部95、連結部70,90、及び、接続電極68の境界を理解しやすくするため、図11には、凸部95と連結部70の境界線c、連結部70と連結部90の境界線d、連結部90と接続電極68の境界線eが、それぞれ二点鎖線で示されている。これにより、複数のグランド電極56は、連結部70、接続電極68、接続電極66(図10参照)を介して、圧電シート71の上面のグランド接続端子59(図9参照)と接続されている。
また、グランド電極56のうち、左側5列のグランド電極56は、前側の縁部に形成された連結部90を介して、左前方の接続電極68bに接続されている。右側7列のグランド電極56は、後側の縁部に形成された連結部90を介して、右後方の接続電極68aに接続されている。さらに、2つの接続電極68a、68bは、左から5列目のグランド電極56と右から7列目のグランド電極56を繋ぐ連結部70によって接続されている
<圧電アクチュエータと基板の接続構造>
次に、COF29及びFPC30による、圧電アクチュエータ28と制御基板6及び電源基板7の間の電気的な接続について詳細に説明する。
(概要)
図3に示すように、COF29は、圧電アクチュエータ28の上面を覆うように配置されている。COF29は、ポリイミドフィルム等の可撓性基材を主体とする配線部材であり、搬送方向に長い形状を有する。COF29の長手方向中央部には、圧電アクチュエータ28と接続される多数の端子(図示省略)が形成されている。一方、図3及び後述の図15、図17に示すように、COF29の長手方向両端部には、2つのドライバIC40がそれぞれ実装されている。COF29の長手方向両端部の、ドライバIC40よりもさらに端側には、2つのドライバIC40に対応した2つの端子群74(図17参照)が設けられている。
COF29の長手方向中央部は、圧電アクチュエータ28の上面の複数の駆動電極54の接続端子54a、2つのVCOM接続端子58、及び、2つのグランド接続端子59(図4、図9参照)と接続される。また、COF29の長手方向両端部はそれぞれ上方へ折り返され、2つのドライバIC40と2つの端子群74は、圧電アクチュエータ28の上方に配置される。
FPC30も、可撓性基材を主体とする細長い配線部材である。このFPC30の一端部は、上述したCOF29の、上方へ折り返された長手方向両端部の2つの端子群74と電気的に接続される。尚、図3に示すように、COF29の長手方向両端部とFPC30の端部は、その下側に配置された支え部材75によって支持されている。FPC30は、COF29と重なる位置から水平方向において左方に延び、FPC30のCOF29と反対側の左端部は、制御基板6及び電源基板7(図2参照)と接続されている。
以上の構成により、圧電アクチュエータ28は、COF29及びFPC30を介して、電源回路21,22を有する電源基板7(図2参照)と接続されている。VDD電源回路21は、各圧電素子47の駆動電極54にVDD電位を印加するための電源回路であり、VCOM電源回路22は、各圧電素子47のVCOM電極55にVCOM電位を印加するための電源回路である。また、制御基板6は、FPC30を介してCOF29のドライバIC40と電気的に接続されている。制御基板6のASIC26は、ドライバIC40を制御し、各圧電素子47の駆動電極54の電位をVDD電位とグランド電位との間で切り換える。
(電気的接続の詳細)
圧電アクチュエータ28と電源基板7との接続について詳述する。図12は、2つのVDD電源回路21、VCOM電源回路22、2つのドライバIC40、及び、圧電アクチュエータ28の複数の圧電素子47の間の接続を概略的に示す回路図である。また、図12では、圧電アクチュエータ28の複数の圧電素子47を、まとめて「圧電素子群96」と総称している。
2つのVDD電源回路211,212及びVCOM電源回路22と、圧電素子群96を構成する複数の圧電素子47の間の接続を説明する。複数の圧電素子47は、2つのVDD電源回路21(211,212)と、COF29のドライバIC40を介して並列的に接続されている。また、複数の圧電素子47は、VCOM電源回路22とも並列的に接続されている。
2つのVDD電源回路21(211,212)は、COF29のドライバIC40と、VDD電源線76(761,762)によって接続されている。尚、電源線761は、VDD電源回路211とドライバIC40を接続する電源線76であり、電源線762は、VDD電源回路212とドライバIC40を接続する電源線76である。ドライバIC40にはグランド線77(VSS)も接続されている。
ドライバIC40は、複数の圧電素子47の駆動電極54と、配線92により接続されている。後で説明するが、ドライバIC40は、個々の圧電素子47の個別電極54に対して、2つのVDD電源回路211,212の何れかのVDD電位を選択的に印加する。
一方、VCOM電源回路22は、ドライバIC40を介さずに、VCOM電源線78によって複数の圧電素子47のVCOM電極55と直接接続されている。また、圧電素子47のグランド電極56にはグランド線79(COM)が接続されている。
尚、図2、図12に示すように、FPC30のグランド線には、ドライバIC40に接続されるグランド線77(VSS)と、圧電素子47のグランド電極56に接続されるグランド線79(COM)とが存在する。ただ、何れも、図示しないフレームと接続されて、共にグランド電位に維持されている。また、上記フレームは接地されていてもよい。
図13は、圧電素子47とVDD電源回路21及びVCOM電源回路22との接続を示す電気回路図である。図13では、図面の簡単化のため、図12の複数の圧電素子47のうちの1つの圧電素子47のみを抽出して示している。また、図13では、2つのVDD電源回路211,212のうち、出力電圧の高いVDD電源回路212と圧電素子47とが接続された状態が示されている。尚、図13において、Voutは駆動電極54の電位、V1はVCOM電極55の電位、V2はグランド電極56の電位を示している。
図12、図13を参照して、圧電素子47と電源回路21,22との接続構成について、さらに詳細に説明する。上述したように、圧電素子47は、駆動電極54とVCOM電極55に挟まれた活性部61と、駆動電極54とグランド電極56に挟まれた活性部62を有する。駆動電極54の電位が切り換えられることにより、活性部61(62)を挟む上下2つの電極間に電位差が生じたときには、上記2つの電極間に電荷が蓄えられ(充電)、電位差が解消したときに蓄えられた電荷を放出する(放電)。そこで、本実施形態では、活性部61、及び、この活性部61を挟む駆動電極54とVCOM電極55からなる構成を一種のコンデンサと見なし、図13等ではC1という記号を付して説明する。同様に、活性部62、及び、この活性部62を挟む駆動電極54とグランド電極56からなる構成を一種のコンデンサとみなし、これにC2という記号を付して説明する。
ドライバIC40は、駆動電極54の電位(Vout)を切り換えるためのスイッチSW1とスイッチSW2を有する。スイッチSW1及びスイッチSW2は、抵抗R1を介して圧電素子47の駆動電極54に接続されている。スイッチSW1は駆動電極54とVDD電源回路212の間の経路であるVDD電源線762に設けられ、スイッチSW2は駆動電極54とグランド線77との間に設けられている。
スイッチSW1とスイッチSW2は、制御基板6のASIC26(図2参照)からの信号に基づき、一方がONとなったときに他方がOFFになるように、それぞれのON/OFFが切り換えられる。スイッチSW1がONのときには駆動電極54の電位(Vout)はVDD電位となり、スイッチSW2がONのときには駆動電極54の電位(Vout)はグランドとなる。尚、VDD電源線76とグランド線77(VSS)との間には、スイッチSW1のON/OFF時の、VDD電位の変動を吸収するためのコンデンサCvが設けられている。
また、先にも触れたが、本実施形態のプリンタ1は、2つのVDD電源回路21(211,212)を備えている。2つのVDD電源回路21はそれぞれ異なる電圧を出力する。具体的には、本実施形態では、VDD電源回路212の出力電圧が、VDD電源回路211の出力電圧よりも高くなっている。そして、ドライバIC40は、圧電素子47毎に、2種類のVDD電位から1つを選択して印加する。これについて、図14を参照して説明する。図14は、2つのVDD電源回路21に対応したドライバIC40の回路図である。
図14に示すように、ドライバIC40は、1つの圧電素子47の駆動電極54に対して、2つのVDD電源回路21(211,212)にそれぞれ繋がる2つの第1スイッチSW1(SW1_1,SW1_2)を有する。駆動電極54にVDD電位を印加する場合、制御基板6のASIC26からの信号に基づいて、1つの圧電素子47に対して2つのスイッチSW1_1,SW1_2の何れか一方がONにされ、2つのVDD電源回路21の一方と駆動電極54が接続される。これにより、駆動電極54には、接続されたVDD電源回路21の出力電圧に応じた、VDD電位が印加される。上記の構成は、複数のノズル38の間で、吐出されるインクの液滴量や液滴速度がばらついている場合に、そのばらつきを抑えるため、駆動電極54に印加するVDD電位を圧電素子47毎に異ならせる場合などに、特に有効である。
図12、図13に示すように、圧電素子47のVCOM電極55には、VCOM電源線78によってVCOM電源回路22が接続され、VCOM電極55の電位(V1)はVCOM電位に維持される。尚、VCOM電位は、VDD電位よりも少し高い電位である。VCOM電極55とVCOM電源回路22との間には、ダイオードDが配置されている。ダイオードDは、複数の圧電素子47に対して共通に設けられている。具体的には、ダイオードDは、1つのインクジェットヘッド4に対して1つ設けられている。このダイオードDの順方向は、VCOM電源回路22からVCOM電極55に向かう方向である。つまり、VCOM電源回路22からVCOM電極55へは電流が流れるが、逆方向へは、電流が流れにくくなっている。
また、VCOM電源線78には8個のコンデンサCvcが設けられている。尚、説明の便宜上、図12にも示されているように、8個のコンデンサCvcの合成容量をCzとする。各コンデンサCvcの一方のコンデンサ端子93は、VCOM電源線78のダイオードDとVCOM電極55との経路に接続され、他方のコンデンサ端子94はグランド線77(VSS)に接続されている。尚、図12において、コンデンサCvcの一方の端子93が、圧電素子群96の複数の圧電素子47のVCOM電極55に繋がる、VCOM電源線78に接続されていることからも分かるように、コンデンサCvcは、複数の圧電素子47に対して個別に設けられるものではない。
さらに、VCOM電源線78の、ダイオードDとVCOM電極55の間の経路から分岐経路80が分岐し、この分岐経路80には放電抵抗Rvcが設けられている。上記のダイオードD、コンデンサCvc、及び、抵抗Rvcが設けられている理由等については、後で詳しく述べる。
圧電素子47のグランド電極56はグランド線79(COM)に接続され、グランド電極56の電位(V2)はグランド電位に維持される。
(充放電経路)
次に、圧電素子47の駆動時における活性部61,C2の充放電について説明する。図15は、活性部61、62にそれぞれに対応するC1,C2の充放電経路を示す図である。尚、図15において、実線は活性部61に対応するC1の充放電経路を示し、破線は活性部62に対応するC2の充放電経路を示す。
図8(a)に示される圧電素子47の待機状態では、スイッチSW1がOFF、スイッチSW2がONの状態であり、駆動電極54はグランド線77(VSS)に接続されている。このとき、駆動電極54とVCOM電極55の間では、電位差が(VCOM電位−グランド電位)と大きく、C1には電荷が蓄えられる。一方、駆動電極54とグランド電極56の間では電位差がないために、C2には電荷は蓄えられていない。
上記の待機状態から、図15(a)に示すように、スイッチSW1がON、第2スイッチがOFFに切り換えられたとする。駆動電極54はVDD電源回路21と接続され、駆動電極54にはVDD電位が印加される。これにより、駆動電極54とVCOM電極55の間の電位差は小さくなり、図中実線の矢印で示す経路に沿ってC1から電荷が放電される。一方、駆動電極54とグランド電極56の間の電位差は大きくなるため、破線の矢印で示す経路に沿って、VDD電源回路21からC2へ電荷が充電される。
次に、図15(b)に示すように、スイッチSW1がOFF、スイッチSW2がONに切り換えられると、再び、駆動電極54はグランド線77(VSS)と接続される。このとき、駆動電極54とVCOM電極55の間の電位差は大きくなり、実線の矢印で示す経路に沿ってC1に電荷が充電される。一方、駆動電極54とグランド電極56の間の電位差は小さくなり、破線の矢印で示す経路に沿ってC2から電荷が放電される。
ところで、本実施形態では、圧電素子47のVCOM電極55に対して、駆動電極54に接続されたVDD電源回路21とは別の、専用のVCOM電源回路22が設けられている。VCOM電源55の電位を、駆動電極54のVDD電位とは無関係に一定に維持することができる。
但し、ただ単に、VCOM電極55に専用のVCOM電源回路を接続するのでは、VCOM電源回路の回路規模が大きなものとなってしまう。これについて、図16を参照して説明する。図16は、駆動電極54とVCOM電極55とで電源回路を別にした、本実施形態に対する比較回路構成を示す図である。尚、図16では、先の図13と同様、電源回路と接続される圧電素子47が1つしか示されていないが、実際には、複数の圧電素子47が電源回路21,122と並列に接続されている。
圧電素子47の駆動電極54は、ドライバIC40のスイッチSW1を介してVDD電源回路21に接続され、スイッチSW2を介してグランド線(VSS)に接続されている。VCOM電極55は、VDD電源回路21とは別の、VCOM電源回路122と接続されている。
図19(a)のように、スイッチSW1がON、スイッチSW2がOFFの場合には、VDD電源回路21と駆動電極54が接続されて、駆動電極54に駆動電位が印加される。このとき、C1においては、図16の実線で示すように、VCOM電源回路122を経由する経路で電荷が放電され、C2には、VDD電源回路21から破線の経路で電荷が充電される。逆に、図19(b)のように、スイッチSW1がOFF、スイッチSW2がONの場合には、駆動電極54はグランドに接続されて、駆動電極54の電位はグランド電位となる。このとき、C1には、VCOM電源回路122から実線の経路で充電が行われ、C2からは破線の経路で充電が行われる。
図16の回路構成では、スイッチSW1がONのときに、C1の電荷が放電の際に消費される。そのため、その後に、スイッチSW1がOFFにされたときには、改めて、VCOM電源回路122からC1へ充電を行う必要がある。つまり、駆動電極54の電位を切り換えるたびに、VCOM電源回路122からC1へ繰り返し充電を行う必要がある。
また、上記のC1への充電は、圧電素子47の高い駆動周波数(例えば、数十kHz)で行う必要がある。つまり、大きな電流によって短時間でC1を充電する必要があるため、VCOM電源回路122としては出力電流の大きいものが必要となる。また、VCOM電源回路122の出力平均電流も大きくなるため、電源回路の損失による熱発生も大きくなる。そのため、速やかな放熱を可能とするために電源回路の規模を大きくする必要がある。以上より、VCOM電源回路122は、駆動電極54用のVDD電源回路21と同程度に、回路構成が大きなものをならざるを得ない。
この点、本実施形態では、図3、図12、図13等に示されるように、C1の充放電に関し、VCOM電源回路22と、複数の圧電素子47のVCOM電極55との間に、1つのダイオードDと8つのコンデンサCvcが設けられている。この場合、図15(a)のように、C1からの放電時には、C1からの電荷がVCOM電源回路22へ流れることが、ダイオードDによって抑えられる。では、その放電された電荷はどこへ流れるかというと、VCOM電源線78とグランド線79との間のコンデンサCvcに一時的に蓄えられる。そして、図15(b)のように、C1への充電時には、コンデンサCvcに蓄えられた電荷が、逆戻りするようにC1へ流れ、C1が充電される。
つまり、最初に、VCOM電源回路22からC1に充電が行われた後は、コンデンサCvcとC1との間で充放電が繰り返される。最初のC1への充電は、圧電素子47の駆動開始前に小さい電流で時間をかけて充電することが可能であり、VCOM電源回路22は、出力電流の小さい回路とすることができる。尚、C1から放電された電荷が全てコンデンサCvcに蓄えられるわけではなく、ダイオードDからの漏れや後述する分岐経路80への放電によって一部の電荷が放電されてしまうため、その放電分の電荷をVCOM電源回路22から補う必要はあるが、その量は微々たるものである。従って、最初の充電時以外は、VCOM電源回路22ではほとんど電流を必要としないため、VCOM電源回路22を小型化することが可能となる。
尚、C1から放電された電荷がコンデンサCvcに蓄えられたときに、コンデンサCvcの電位差の分だけ、VCOM電位が上昇する。コンデンサの関係式Q=CVの関係から理解されるように、コンデンサCvcの容量が大きいほど、コンデンサCvcの両端電位差が小さくなり、VCOM電位の上昇は抑えられる。
また、8つのコンデンサCvcは、1つのインクジェットヘッド4の全ての圧電素子47を充放電対象とする。そこで、全ての圧電素子47が同時に駆動され、複数のC1から同時に電荷が放電されたときでも、VCOM電位の上昇を一定以下に抑えられるように、8つのコンデンサCvcの容量が設定されることが好ましい。具体的には、8つのコンデンサCvcの合成容量をC、コンデンサC1の静電容量をCx、8つのコンデンサCvcに繋がる圧電素子47の個数をnとしたときに、C≧50×n×Cx、即ち、Cは、C1からの最大放電電荷(n×C1)の50倍以上であることが好ましい。また、部品の調達コストを下げる等の観点で、8つのコンデンサCvcに全て同じ容量のコンデンサを使用する場合は、1つのコンデンサCvcの静電容量は、((n×C1)/8)の50倍以上とすればよい。
尚、先の図7で説明したが、C1は、VCOM電極55から駆動電極54に向けて分極されている。この構成において、駆動電極54の電位がVCOM電極55の電位よりも高い状況は発生すると、C1に、その分極方向と逆方向の電界が生じて分極劣化が生じる虞がある。そこで、上記の分極劣化を防ぐため、VCOM電極55に印加されるVCOM電位は、常に、駆動電極54に印加されるVDD電位以上の電位であることが望まれる。そのためには、VCOM電源回路22の出力電圧は、VDD電源回路21の出力電圧よりも高いことが好ましい。また、本実施形態のように、2つのVDD電源回路21が存在する場合には、VCOM電源回路22の出力電圧は、2つのVDD電源回路21のうちの高い方の出力電圧、具体的には、VDD電源回路212の出力電圧よりも高いことが好ましい。
尚、VCOM電源回路22とVCOM電極55との間の経路にはダイオードDが設けられている。上記ダイオードDにおける電圧降下のため、VCOM電極55のVCOM電位は、VCOM電源回路22の出力電圧と比べて、ダイオードDの順電圧の分だけ低下する。そこで、VCOM電源回路22とVDD電源回路21の出力電圧差は、少なくとも、ダイオードDの順電圧以上であることが好ましい。これにより、VCOM電位がVDD電位以上となる状態を確実に維持することができる。例えば、VDD電源回路21の最大出力電圧が31V、ダイオードDの順電圧が1Vであるときに、VCOM電源回路22の出力電圧は32V以上とすればよい。
また、ダイオードDでの電力損失を抑える観点から、順電圧が低いダイオードを使用することが好ましい。そのようなダイオードとしては、ショットキーダイオードが知られている。但し、ショットキーダイオードは、他の種類のダイオードと比べると漏れ電流が大きい。漏れ電流が大きいとVCOM電源回路22へ流れる電荷量も大きくなることから、その分、コンデンサCvcに蓄えられる電荷が少なくなる。つまり、C1への充電時に、VCOM電源回路22からの補充電荷量が大きくなる。従って、ショットキーダイオードを用いる場合は、その中でも、漏れ電流が少ないショットキーダイオードとし、漏れ電流が200μA以下のダイオードDを使用することが好ましい。
尚、プリンタ1の印刷動作が終了したときには、コンデンサCvcに蓄えられている電荷は不要となることから、速やかに放電しておくことが好ましい。しかし、本実施形態では、コンデンサCvcとVCOM電源回路22までの間にダイオードDがあるため、コンデンサCvcの電荷の行き場がほとんどなく、放電時間が長くなる。そこで、コンデンサCvcの電荷を速やかに放電させるため、図13では、VCOM電源線78の、ダイオードDとVCOM電極55の間の経路から分岐経路80が分岐している。尚、分岐経路80が設けられる場所は特に限定されないが、本実施形態では、分岐経路80はVCOM電源回路22に設けられている。上記構成では、コンデンサCvcの一方のコンデンサ端子93から分岐経路80を経由して他方のコンデンサ端子94まで繋がる放電経路が形成されるため、コンデンサCvcの放電時間が短くなる。
但し、上記放電経路の抵抗が小さいと、インクジェットヘッド4の駆動時に、C1の充放電を繰り返す間にも一部の電荷が放電されてしまうため、VCOM電源回路22からC1への電荷の補充が増えてしまう。そこで、本実施形態では、分岐経路80には、抵抗Rvsが設けられている。その上で、コンデンサCvcの一方のコンデンサ端子93から分岐経路80を経由して他方のコンデンサ端子94に至る、抵抗Rvsを含む放電経路全体の電気抵抗Rが、適切に定められることが好ましい。
具体的には、上記放電経路の電気抵抗Rの範囲は、以下のような考えに基づいて決定されることが好ましい。
(抵抗の下限値)
放電経路の抵抗Rが小さいと、圧電素子47の駆動時に、上記放電経路からの電荷の放電が大きくなる。そこで、放電電流が一定以下に抑えられるように抵抗Rの下限値を決定するとよい。例えば、VCOM電位が32V、放電電流の許容値Iを5mAとすると、抵抗R≦VCOM/I=6.4kΩとなる。
(抵抗の上限値)
放電経路の抵抗Rが大きいと、インクジェットヘッド4の駆動を停止させてから、コンデンサCvcの放電が完了するまでの時間が長くなる。そこで、放電時間が所定時間以下に収まるように、抵抗Rの上限値を決定するとよい。例えば、VCOM電位が32V、コンデンサの容量が25μFであるときに、放電時間を1秒以下に抑えるとすると、下記式より、抵抗Rは40kΩ以下とするとよい。
Q=C×V=25μF×32V
一方で、Q=di/dt=i(t=1秒)
従って、抵抗R=V/i=32V/(25μF×32V)=40kΩ
以上の考えに基づき、抵抗Rは、例えば、1kΩ以上100kΩ以下であることが好ましい。
次に、図12、図13の電気回路図で示される電気的接続の、COF29及びFPC30による具体的な接続構造について説明する。図17は、COF29とFPC30の上面図である。尚、図17では、COF29及びFPC30の配置が理解されやすくなるように、COF29の下側に配置されている流路ユニット27を二点鎖線で示している。図18は、図17のFPC30の先端部の拡大図である。
(基板→FPC→COFの接続)
まず、制御基板6、電源基板7から、FPC30を経て、COF29までの電気接続について説明する。先にも述べたが、電源基板7に接続されたFPC30は、細長い配線部材である。図17、図18に示すように、FPC30の基板6,7とは反対側の先端部には、幅広の電気接続部30aが形成されている。このFPC30の電気接続部30aには、上方に折り返されたCOF29の両端部が重ね合わされて接合される。
図18に示すように、FPC30の電気接続部30aの上面には、前後2つのドライバIC40に対応して、前後に分かれて配置された2つの端子群82が設けられている。2つの端子群82は、COF29の両端部に設けられた2つの端子群74(図17参照)と接続される。尚、以下の説明では、後側に位置するドライバIC40を“IC_A”、前側に位置するドライバIC40を“IC_B”と表記し、IC_A、IC_Bにそれぞれ対応する端子群82を、端子群82a、端子群82bと表記する。
2つの端子群82の各々は、左右方向、即ち、2つのドライバIC40の離間方向と直交する方向に並ぶ、複数の接続端子83からなる。複数の接続端子83には、VDD電源回路21に接続されるVDD端子(VDD_1,VDD_2)、VCOM電源回路22に接続されるVCOM端子、グランド端子(VSS、COM)、制御基板6から印字データが入力される信号入力端子(SIN)、波形データが入力される波形入力端子(FIRE)、クロックが転送されるクロック端子(CLK)(図18では図示省略)等が含まれる。尚、図18では、端子群82aに含まれる接続端子83については“A”の記号を付け、端子群82bに含まれる接続端子には“B”の符号を付けている。例えば、“VDD_2B”とは、端子群Bに含まれる、VDD電源回路212に接続される接続端子83のことである。
図18に示すように、端子群82aにおいては、左端から、VCOM端子(VCOM_
A)、グランド端子(VSS_A)、VDD端子(VDD_1A、VDD_2A)が順に並んでいる。また、右端からは、グランド端子(COM_A)、グランド端子(VSS_A)、VDD端子(VDD_1A、VDD_2A)が順に並んでいる。また、端子群82aの中央部には、信号入力端子(SIN_A)、波形入力端子(FIRE_A)等の制御基板6と接続される入力端子が並んでいる。
一方、端子群82bは、端子群82aに対して点対称な端子配置となっている。即ち、右端から、VCOM端子(VCOM_B)、グランド端子(VSS_B)、VDD端子(VDD_1B、VDD_2B)が順に並んでいる。また、左端からは、グランド端子(COM_B)、VSS端子(VSS_B)、VDD端子(VDD_1B、VDD_2B)が順に並んでいる。さらに、端子群82aの中央部には、信号入力端子(SIN_B)、波形入力端子(FIRE_B)等の入力端子が並んでいる。
電源基板7に繋がる電源線76,78や、グランドに繋がるグランド線77は、左側から2つの端子群82a,82bの間に延び、さらに前後に分かれて、2つの端子群82a,82bのVDD端子、VCOM端子、グランド端子(VSS,COM)に接続されている。言い換えれば、FPC30の電気接続部30aの2つの端子群82a,82bの間には、これら2つの端子群82a,82b間で、VDD端子(VDD_1、VDD_2)同士を繋ぐ配線部分851,852、VCOM端子同士を繋ぐ配線部分86、グランド端子(VSS、COM)同士を繋ぐ配線部分84,87が形成されている。一方、制御基板6に繋がる信号線88,89は、2つの端子群82a,82bの前後外側から、信号入力端子(SIN)や波形入力端子(FIRE)に接続されている。
特に、グランド端子(VSS、COM)の接続については、まず、2つの端子群82a,82bの左側のVSS端子(VSS_A,VSS_B)が、左側の配線部分87によって接続されている。また、2つの端子群82a,82bの右側のVSS端子(VSS_A,VSS_B)が、右側の配線部分87によって接続されている。また、2本の配線部分87は、前後に延びる配線部分84によって接続されている。さらに、この配線部分84に、2つの端子群82a,82bのCOM端子(COM_A,COM_B)が接続されている。
端子群82aの左端に位置するVCOM端子(VCOM_A)の近傍には、このVCOM端子とグランド端子(VSS_A)との間に3つのコンデンサCvcが配置されている。一方、端子群82bの右端に位置するVCOM端子(VCOM_B)の近傍には、このVCOM端子とグランド端子(VSS_B)との間に5つのコンデンサCvcが配置されている。尚、端子群82aのVCOM端子と端子群82bのVCOM端子とで、近くに配置されているコンデンサCvcの数が異なっている理由については、後で説明する。
コンデンサCvcはVCOM電源線78に繋がっていればよく、その設置位置は限定されない。即ち、コンデンサCvcがVCOM端子のすぐ近くにある必要はない。さらには、FPC30上にある必要もなく、例えば、コンデンサCvcが電源基板7に設けられていてもよい。但し、各圧電素子47のC1とコンデンサCvcとの距離が遠くなると、C1の充放電に遅れが生じて挙動も安定しないため、コンデンサCvcはなるべくC1の近くに配置されることが好ましい。この観点から、本実施形態では、コンデンサCvcはFPC30に配置されている。さらに、コンデンサCvcは、FPC30の電気接続部30aにおいて、圧電素子47のVCOM電極55に繋がるVCOM端子の近傍位置に配置されている。これにより、コンデンサCvcとC1との距離が短くなることから、C1の充放電を、速やかに安定して行うことができる。
尚、FPC30のうち、COF29から引き出された、電気接続部30aと繋がる引出部分30bは、インクジェットヘッド4の各部品の組付の制約などから、折れ曲げて配置できるように、電気接続部30aよりも剛性が低くなっている。具体的には、電気接続部30aと比べて、引出部分30bは、FPC30を構成する基材の積層数が少なくなっている。例えば、電気接続部30aが4層、引出部分30bは2層である。その上で、本実施形態では、コンデンサCvcは、引出部分30bよりもVCOM端子に近い、電気接続部30aに配置されている。
先の図13、図15に示されるように、C1の充放電経路は以下の通りである。
<充電>(図15(b)参照)
コンデンサCvc→C1→第2スイッチSW2→スイッチSW2接続のグランド端子(VSS)→Cvc接続グランド端子(VSS)→コンデンサCvc
<放電>(図15(a)参照)
C1→コンデンサCvc→Cvc接続グランド端子(VSS)→VDD電源回路21及びCvに接続のグランド端子(VSS)→VDD電源回路21及びコンデンサCv
ここで、C1の充放電を速やかに行うためには、充放電経路を短くすることが重要となる。まず、C1の充電に関しては、C1とコンデンサCvcの間のグランド側の経路、即ち、図13に太い実線で示される、コンデンサCvcのグランド側端子94と、スイッチSW2接続のグランド端子(VSS)の間の経路aを短くすることが効果的である。また、C1の放電に関しては、コンデンサCvcのグランド側端子94と、VDD電源回路21及びコンデンサCvに接続されたグランド端子(VSS)の経路bを短くすることが効果的である。
尚、C2についても、当然ながら充放電経路は短いことが好ましい。即ち、C2の充電に関しては、C2接続のグランド端子(COM)と、VDD電源回路21及びコンデンサCvに接続されたグランド端子(VSS)との間の経路が短いことが好ましい。また、C2の放電に関しては、スイッチSW2接続のグランド端子(VSS)と、C2接続のグランド端子(COM)の間の経路が短いことが好ましい。
本実施形態では、図18に示すように、FPC30の電気接続部30aにおいて、コンデンサCvcのグランド側端子、及び、COM端子が、FPC30上の配線部分84、あるいは、配線部分87を介して、VSS端子と接続されている。即ち、図18の太線で示されるように、コンデンサCvc_Aのグランド側の端子は、配線部分84によって、VSS端子と接続されている。また、コンデンサCvc_Bのグランド側の端子は、配線部分87によって、VSS端子と接続されている。これにより、C1及びC2の充放電経路を短くすることができる。
(COF、ドライバIC→圧電アクチュエータの接続)
次に、COF29及びドライバIC40と圧電アクチュエータ28との接続について説明する。図19は、圧電アクチュエータ28との電気的接続を示すCOF29の平面図である。尚、図19では、本来、COF29に隠れて見えない圧電アクチュエータ28を、あえて実線で示してある。
図19に示すように、COF29には、2つのドライバIC40(IC_A、IC_B)にそれぞれ対応して端部に配置された2つの端子群74を有する。2つの端子群74は、前述のFPC30の2つの端子群82(図18参照)とそれぞれ接続される。それ故、COF29の端子群74も、FPC30の端子群82と同様、VDD端子、VCOM端子、グランド端子(VSS、COM)等の複数の接続端子91で構成されている。
各端子群74のVDD端子(VDD_1、VDD_2)、グランド端子(VSS)、信号入力端子(SIN)、波形入力端子(FIRE)は、それぞれ対応するドライバIC40に接続されている。また、ドライバIC40は、COF29上の配線92を介して、圧電アクチュエータ28の複数の駆動電極54と接続されている。一方、各端子群74のVCOM端子は、圧電アクチュエータ28の上面のVCOM接続端子58と接続され、グランド端子(COM)は、圧電アクチュエータ28の上面のグランド接続端子59と接続されている。
前後2つのドライバIC40及び前後2つの端子群74と、圧電アクチュエータ28の複数の圧電素子47とが、どのように接続されているかについて、より詳細に説明する。
(ドライバICと圧電素子の接続)
複数の圧電素子47の駆動電極54は、図19の二点鎖線Bを境にして、前後何れのドライバIC40と接続されるかが分かれている。即ち、後側のIC_Aは、後半分の圧電素子47の駆動電極54と接続され、前側のIC_Bは、前半分の圧電素子47の駆動電極54と接続されている。
(VCOM端子、COM端子と圧電素子の接続)
上記のように、複数の圧電素子47は、2つのドライバIC40との接続関係で言えば前後に分かれている。しかし、2つの端子群74に含まれるVCOM端子、グランド端子(COM)との関係では、複数の圧電素子47は左右に分かれている。
まず、VCOM端子の接続について説明する。後側の端子群74aの左端に位置するVCOM端子(VCOM_A)は、後半部左端に配置されたVCOM接続端子58aに接続されている。先に図10で説明したように、VCOM接続端子58aは、左側5列のVCOM電極55に接続されている。また、前側の端子群74bの右端に位置するVCOM端子(VCOM_B)は、前半部右端に配置されたVCOM接続端子58bに接続されている。このVCOM接続端子58bは、右側7列のVCOM電極55に接続されている。
つまり、後側の端子群74aのVCOM端子は、左側5列の圧電素子47のVCOM電極55に接続され、前側の端子群74bのVCOM端子は、右側7列の圧電素子47のVCOM電極55に接続されている。
次に、COM端子の接続について説明する。後側の端子群74aの右端に位置するCOM端子(COM_A)は、後半部右端に配置されたグランド接続端子59aに接続されている。図11で説明したように、グランド接続端子59aは、右側7列のグランド電極56に接続されている。前側の端子群74bの左端に位置するCOM端子(COM_B)は、前半部左端に配置されたグランド接続端子59bに接続されている。グランド接続端子59bは、左側5列のグランド電極56に接続されている。尚、COM端子(COM_A)に繋がる後側のグランド接続端子59aと、COM端子(COM_B)に繋がる前側のグランド接続端子59bは、図11に示すように1つの連結部70によって接続されている。
つまり、右側7列の圧電素子47のグランド電極56は、後側の端子群74aのCOM端子と、前側の端子群74bのCOM端子よりも近い距離で接続されている。また、左側5列の圧電素子47のグランド電極56は、前側の端子群74bのCOM端子と、後側の端子群74aのCOM端子よりも近い距離で接続されている。
以上をまとめると、図19において、複数の圧電素子47が配置された領域全体を4つの領域(A)〜(D)に分けたときに、各領域の圧電素子47と、ドライバIC40、VCOM端子、及び、COM端子との接続関係は、次のようになる。
(領域A)IC_A、VCOM_A、COM_B
(領域B)IC_B、VCOM_A、COM_B
(領域C)IC_A、VCOM_B、COM_A
(領域D)IC_B、VCOM_B、COM_A
図18のFPC30上で見ると、1つの圧電素子47のVCOM電極55が接続されるVCOM端子が属する端子群82と、駆動電極54及びグランド電極56が接続されるグランド端子(VSS、COM)が属する端子群82とが、異なっている。つまり、各圧電素子47について、VCOM電極55に繋がるコンデンサCvcと、駆動電極54と接続されるグランド端子(VSS)、及び、グランド電極56と近い距離で繋がるグランド端子(COM)の配置位置が、後方のA側と前方のB側とに分かれることとなる。
この場合に、FPC30の2つの端子群82a,82bの間で、グランド端子(VSS、COM)同士が繋がっていないと、C1、C2の充放電経路が長くなってしまう。具体的には、一例として、領域Aの圧電素子47では、C1の充電時において、端子群82aのVCOM端子(VCOM_A)に接続されたコンデンサCvcから、端子群82bに接続されたVSS端子(VSS_B)経由で、遠く離れた電源基板7を回って、端子群82aのコンデンサCvcに接続されるグランド端子(VSS_A)に至る、大変長い充放電回路となる。
この点、本実施形態では、図18に示すように、FPC30の電気接続部30aに形成された左右2つの配線部分87と配線部分84によって、端子群82aのグランド端子(VSS_A、COM_A)と、端子群82bのグランド端子(VSS_B、COM_B)が接続されている。即ち、図18で太線で示されるように、端子群82aのVCOM端子(VCOM_A)と接続されたコンデンサCvc_Aは、FPC30上の左側の配線部分87を介して、端子群82bのグランド端子(COM_B、VSS_B)と接続されている。また、端子群82bのVCOM端子(VCOM_B)と接続されたコンデンサCvc_Bは、FPC30上の右側の配線部分87を介して、端子群82aのグランド端子(COM_A、VSS_A)と接続されている。これにより、各圧電素子47について、VCOM端子と、その圧電素子47と距離が近い位置にあるグランド端子(VSS、COM)とが、A側とB側の前後に分かれた構成であっても、C1、C2の充放電経路を短くすることができる。
尚、図18に示すように、端子群82aのVCOM端子は、この端子群82aの中の左側位置に配置されており、VCOM端子に接続されるコンデンサCvc(Cvc_A)は、VCOM端子の近く、即ち、電気接続部30aの左端部に配置されている。一方、端子群82bのVCOM端子はこの端子群82bの中の右側位置に配置され、VCOM端子に接続されるコンデンサCvc(Cvc_B)は電気接続部30aの右端部に配置されている。
ここで、右側に位置するコンデンサCvc_Bの数は5個で、左側に位置するコンデンサCvc_Aの3個よりも多い。また、FPC30上において、コンデンサCvcの配置数が多い側では、その分、制御基板6や電源基板7と接続される配線を配置するためのスペースが少なくなる。そこで、本実施形態では、FPC30は、COF29との接続部分から左側に延びるように配置されている。図19から分かるように、FPC30が引き出される側である、電気接続部30aの左端部ではFPC30上の配線数が増えるが、左側に配置されているコンデンサの数は右側と比べて少ないため、配線を配置しやすくなる。
また、端子群82bのVCOM端子に接続されるコンデンサCvc_Bは、右側7列のVCOM電極55に接続されるものであり、端子群82aの左側5列のVCOM端子に接続されるコンデンサCvc_Aよりも、圧電素子47のVCOM電極55の接続数が多い。つまり、右側のコンデンサCvc_Bによって充放電されるC1の数は、左側のコンデンサCvc_Aよりも多いため、コンデンサCvc_Bの容量は、コンデンサCvc_Aの容量よりも大きくする必要がある。この観点から、端子群82bのVCOM端子に接続されるコンデンサCvc_Bの数は、端子群82aのVCOM端子に接続されるコンデンサCvc_Aよりも多くなっている。
以上説明した実施形態において、インクジェットヘッド4が、本発明の「液体吐出装置」に相当する。VDD電源回路21(211)が本発明の「第1電源回路」、VCOM電源回路22が本発明の「第2電源回路」、VDD電源回路21(212)が本発明の「第3電源回路」に相当する。駆動電極54が本発明の「駆動電極」「第1電極」、VCOM電極55が本発明の「高電位電極」「第2電極」、グランド電極56が本発明の「低電位電極」「第3電極」に相当する。活性部61が本発明の「第1活性部」、活性部62が本発明の「第2活性部」に相当する。スイッチSW1_1が本発明の「第1スイッチ」、スイッチSW2が本発明の「第2スイッチ」、スイッチSW1_2が本発明の「第3スイッチ」に相当する。COF29が本発明の「第1配線部材」、FPC30が本発明の「第2配線部材」に相当する。FPC30のVCOM端子が本発明の「高電位端子」に相当する。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]前記実施形態では、図19に示すように、各圧電素子47について、VCOM電極55が接続されるVCOM端子が属する端子群82と、グランド電極56が接続されるグランド端子(COM)が属する端子群82が異なっている。これに対して、各圧電素子47について、VCOM電極55とグランド電極56の接続先の端子群82が、同じであってもよい。
2]前記実施形態では、複数の圧電素子47に対してコンデンサCvcが複数設けられている。例えば、左側の圧電素子47に対して3個のコンデンサCvc_Aが設けられ、右側の圧電素子47に対して5個のCvc_Bが設けられている。しかし、コンデンサCvcが複数であることは必須ではない。例えば、図18において、右側の5個のコンデンサCvc_Bの総容量に等しい、1つのコンデンサが設けられてもよい。
また、8つのコンデンサCvcの総容量に等しい静電容量を有する、1つのコンデンサのみが設けられてもよい。この場合、このコンデンサの静電容量は、コンデンサCvcが8つある場合と同様に設定されるとよい。即ち、コンデンサC1の静電容量をCx、圧電素子の個数をnとしたときに、上記1つのコンデンサの容量Cは、C≧50×n×Cxであることが好ましい。
3]1つの圧電素子の3種類の電極の配置は、前記実施形態の構成に限られるものではない。例えば、図20(a)では、VCOM電極155が、圧力室43の前後方向における両側の縁部と重なるように配置されている。また、グランド電極156は、圧力室43の中央部と重なる領域にも配置されている。(特開2009−241550号公報参照)
図20(b)では、圧電層51と圧電層52の間に駆動電極254、圧電層51の上面にVCOM電極255、圧電層52と圧電層53との間にグランド電極255が配置されている。(特開2015−30134号公報参照)
図20(c)では、2枚の圧電層351、352が互いに積層されている。上層の圧電層351の上面には、圧力室43の全域と重なるように駆動電極354が配置されている。また、上層の圧電層351と下層の圧電層352の間には、VCOM電極355とグランド電極356が同じ層に配置されている。VCOM電極355は圧力室43の中央部と重なる位置に配置され、グランド電極356は圧力室43の縁部と重なる領域に配置されている。(特開2011−206929号公報参照)
4]前記実施形態では、駆動電極54に接続されるVDD電源回路が2つある例を開示したが、VDD電源回路が3つ以上あってもよい。
また、VCOM電源回路を、VDD電源回路の1つとして使用してもよい。具体的には、1以上のVDD電源回路と、VDD電源回路よりも高い電圧を出力するVCOM電源回路を有する構成において、一部の圧電素子47の駆動電極54に対してVCOM電源回路の出力電圧を印加する。この場合、VCOM電源回路は、最大のVDD電位を駆動電極に印加する、VDD電源回路の1つとして機能する。
5]前記実施形態のインクジェットヘッド4は、キャリッジ3とともに走査方向に移動しながら、記録用紙100に対してインクを吐出する、いわゆるシリアルタイプのヘッドである。しかし、本発明の適用は上記シリアルヘッドには限られない。例えば、記録用紙の幅方向に配列された複数のノズルを有する、いわゆるラインヘッドに本発明を適用することも可能である。
以上説明した実施形態は、本発明を、記録用紙にインクを吐出して画像等を印刷するインクジェットヘッドに適用したものであるが、画像等の印刷以外の様々な用途で使用される液体吐出装置においても本発明は適用されうる。例えば、基板に導電性の液体を吐出して、基板表面に導電パターンを形成する液体吐出装置にも、本発明を適用することは可能である。