JP6755184B2 - 光制御パネル及び光結像装置 - Google Patents
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Description
このようなプラスチックに機能性を発現させるためには基材上に金属や金属酸化物を成膜することが行われている。例えば、ITO(インジウム錫オキサイド)を成膜して導電性を付与したプラスチック基材がタッチパネルなどに用いられている。また、アルミニウムや銀を成膜することにより反射機能を付与して、反射ミラー、光制御パネル、光結像装置など様々な用途に応用されている。これらの具体例として特許第5437436号公報(特許文献1)にアクリル樹脂を用いた光学結像装置が記載されている。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[4]の光制御パネル、[5]の光結像装置に関する。
[1]アリルエステル樹脂組成物の硬化物層と金属膜層とが面方向(厚さに対し垂直方向)に交互に積層された複数の帯状平面光反射部を有する光制御パネル。
[2]アリルエステル樹脂組成物が、一般式(2)
[3]金属膜がアルミニウム、銀及びクロムから選択される前項1または2に記載の光制御パネル。
[4]アリルエステル樹脂組成物の硬化物層の厚さが0.2〜0.5mmである前項1〜3のいずれかに記載の光制御パネル。
[5]前項1〜4のいずれかに記載の光制御パネルを2枚備え、第一の光制御パネルと第二の光制御パネルの帯状平面光反射部が直交するように配置されている光結像装置。
[光制御パネル]
本発明の光制御パネルは、アリルエステル樹脂組成物の硬化物(アリルエステル樹脂)層と金属膜層とが面方向(厚さに対し垂直方向)に交互に複数層積層された帯状の平面光反射部を有する。
光制御パネル(1)は、図1に示すように、シート状の透明基材層(硬化物層)(2)の片面または両面に金属膜層(3)を形成し、これらを接着剤などにより多数貼り合わせて、透明基材層(2)と金属膜層(反射層)(3)が交互に積層された積層体(5)とし、ついで積層体5を透明基材層2(及び金属膜層3)と直角の方向(図中に破線で示す)に所望の厚さに切断して作製される。積層体(5)の切断を繰り返すことにより多数の光制御パネルを得ることができる。光制御パネルの厚さはそのサイズ(縦、横の長さ)に応じて適宜調整すればよいが、例えば、0.5〜10mmが好ましい。
本発明の光制御パネルは、透明基材として熱硬化性樹脂の1種であるアリルエステル樹脂を用いることが特徴である。
一般的に、「アリルエステル樹脂」というと硬化する前のプレポリマー(オリゴマーや添加剤、モノマーを含む)を指す場合とその硬化物を示す場合の二通りの場合があるが、本明細書中では「アリルエステル樹脂」は硬化物を示し、「アリルエステル樹脂組成物」は硬化前のプレポリマーを示すものとする。
本発明で使用するアリルエステル樹脂組成物はアリル基またはメタリル基(以降、あわせて(メタ)アリル基と言う場合がある。)とエステル構造を有する化合物を主な硬化成分として含有する組成物である。
で示される化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が挙げられる。この化合物は後述のアリルエステルオリゴマーの原料となるほか、反応性希釈剤(反応性モノマー)としてアリルエステル樹脂組成物に含まれてもよい。一般式(1)中のA1は後述の一般式(2)、一般式(3)におけるA2、A3と同様のものが好ましい。
また、その他の成分として、後述する硬化剤、反応性モノマー、添加剤、その他ラジカル反応性の樹脂成分等を含有してもよい。
本発明で使用するアリルエステルオリゴマーとしては、下記一般式(2)で表される基を末端基として有し、かつ下記一般式(3)で表される構造を構成単位として有する化合物が好ましい。
一般式(2)におけるA2はジカルボン酸に由来する脂環式構造及び/または芳香環構造を有する1種以上の有機残基である。ジカルボン酸に由来する部分はA2に隣接するカルボニル基で示されている。従って、A2の部分はベンゼン骨格やシクロヘキサン骨格を示す。
また、一般式(3)におけるA3はジカルボン酸に由来する脂環式構造及び/または芳香環構造を有する1種以上の有機残基であり、その定義及び好ましいA 3 を有するジカルボン酸化合物の例は一般式(2)におけるA2と同様である。
多価アルコールとは2個以上の水酸基を有する化合物であり、X自体は、多価アルコールの水酸基以外の構造を示す。
また、多価アルコール中の水酸基は少なくとも2個が結合していればよいため、原料となる多価アルコールが3価以上、すなわち、水酸基が3個以上のときは、未反応の水酸基が残っていてもよい。
アリルエステル樹脂組成物には硬化剤を使用してもよい。硬化剤としては特に制限はなく、一般の重合性樹脂用硬化剤を用いることができる。中でも、アリル基の重合開始の点からラジカル重合開始剤を添加することが望ましい。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、光重合開始剤、アゾ化合物等が挙げられる。
これらのラジカル重合開始剤は1種を単独で、または2種以上を混合または組み合わせて用いてもよい。
アリルエステル樹脂組成物には、硬化反応速度のコントロール、粘度調整(作業性の改善)、組成物硬化物の架橋密度の向上、機能付加等を目的として、反応性モノマー(反応性希釈剤)を加えることもできる。
反応性モノマーとしては特に制限はなく、種々のものが使用できるが、アリルエステルオリゴマーと反応させるためにはビニル基、アリル基等のラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有するモノマーが好ましい。例えば、不飽和脂肪酸エステル、芳香族ビニル化合物、飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体、架橋性多官能モノマー等が挙げられる。これらの中でも、架橋性多官能性モノマーを使用することにより硬化物の架橋密度を制御することができる。反応性モノマーの好ましい具体例を以下に示す。
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、シアノフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート及びビフェニル(メタ)アクリレート等のアクリル酸芳香族エステル;
フルオロメチル(メタ)アクリレート及びクロロメチル(メタ)アクリレート等のハロアルキル(メタ)アクリレート;
さらに、グリシジル(メタ)アクリレート、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、及びα−シアノアクリル酸エステル等が挙げられる。
飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び安息香酸ビニル等を挙げることができる。
フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジメタリル、テレフタル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,5−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,4−キシレンジカルボン酸ジアリル及び4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸ジアリル類;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル及びジビニルベンゼン等の二官能の架橋性モノマー;トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート及びジアリルクロレンデート等の三官能の架橋性モノマー;
さらにペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等の四官能以上の架橋性基を有するモノマーが挙げられる。
アリルエステル樹脂組成物は、諸物性を改良する目的でラジカル反応性の樹脂成分を含んでいてもよい。これら樹脂成分としては不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。
上記のラジカル反応性の樹脂成分は、1種単独で、または2種以上を混合または組み合わせて用いることができる。
ラジカル反応性の樹脂成分の使用量が1質量部未満であると、ラジカル反応性の樹脂成分由来の機械強度向上などの効果が小さく、作業性が悪化したり、成形性が悪化したりすることがある。また、使用量が1000質量部を超えるとアリルエステル樹脂自体の耐熱性が現れない場合がある。
アリルエステル樹脂組成物には、硬度、強度、成形性、耐久性、耐水性を改良する目的で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、離型剤、滑剤、撥水剤、難燃剤、低収縮剤、架橋助剤などの添加剤を必要に応じて添加することができる。
酸化防止剤としては、特に制限はなく、一般に用いられているものを用いることができる。中でも、ラジカル連鎖禁止剤であるフェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。フェノール系酸化防止剤としては2,6−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)及び1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。
アリルエステル樹脂組成物を光及び/または熱を加えて硬化させることによって、透明性、耐熱性に優れたフィルムあるいはシート状の基材を得ることが出来る。
ここで、フィルムは、通常、膜厚が250μm未満のものを指し、シートは厚みが250μm以上のものを指す。
また、透明層には前述の鉛筆硬度の他に、全光線透過率が高いこと、ヘイズ値が低いことが望まれる。それにより光制御パネルに用いた際に、高精細な反射像が得られる。全光線透過率は好ましくは90%以上であり、さらに好ましく91%以上である。ヘイズ値は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
平滑性は特に金属膜を製膜した面で重要であり、平滑性が低すぎると像がぼやけて見え、質感を損なう可能性がある。平滑性は算術平均粗さ「Ra」で表した場合に、好ましくは10nm未満、さらに好ましくは5nm未満、特に好ましいのは2nm未満である。
さらに、ハンドリング性の観点から基材の比重は低い方が好ましい。
次に光制御パネルの金属膜層について説明する。金属膜層を構成する金属の種類に特に限定されないが、可視光の反射率が高いものが望ましい。また、反射像の元映像の色調を正確に反映するためには、無色(いわゆる銀色)の金属が望ましい。使用できる金属としては、アルミニウム、銀、金、チタン、ニッケル、銅、錫、インジウム、クロムやこれらの合金が挙げられる。これらの中でもアルミニウム、銀、クロムが好ましい。
シート状のアリルエステル樹脂基材の表面に金属膜を形成する方法は特に限定されないが、転写法、ドライコーティング法、ウェットコーティング法が挙げられる。転写法としては金属箔を接着剤により本基材に貼り付ける方法、ドライコーティング法としては真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等が挙げられる。ウェットコーティング法としては湿式めっき法等が挙げられる。基材の表面上に均一に薄く成膜するには真空蒸着法やスパッタリング法などの乾式のものが好ましい。シート状のアリルエステル樹脂基材は、その片面または両面に金属膜が形成されるが、その形成は片面または両面について同時に行ってもよい。
前述のように、片面または両表面に金属膜が形成されたアリルエステル樹脂シートを多数層積層し、それを積層方向と垂直に切断加工することで、多数の帯状の平面光反射部を有する光制御パネルを作製することができる(図1)。
金属膜が片面のみに形成されたアリルエステル樹脂シートを積層する場合は、粘着剤や接着剤は無色透明のものを使用することが望ましい。
これらの中でもワイヤーソーを用いて切断することが好ましく、特にダイヤモンド砥粒を固定したワイヤーを用いて切断する固定砥粒方式が好ましい。金属膜が形成されたアリルエステル樹脂シート積層体の切断は、通常の樹脂単体の切断とは異なり、各構成部材の接着強度が不十分であると構成部材の一部が引き剥がされるおそれがある。そこで、上記の切断方法を用いると、各種部材の引き剥がしにつながる応力を低減することができ、また、切削ロスを最小に抑えることができる。
実施例及び参考例に記載のフィルム、シートの全光線透過率、鉛筆硬度等は、以下の方法により測定した。
全光線透過率は、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH5000を使用し、JIS K−7361−1に準拠して測定した。
[Haze]
Haze値は、日本電色工業社製ヘーズメーターNDH5000を使用し、JIS K−7136に準拠して測定した。
[アッベ数]
アタゴ株式会社製、多波長アッベ屈折率計DR−M4を用い、C線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)の屈折率を測定し、以下計算式からD線におけるアッベ数を算出した。
鉛筆硬度は安田精機製作所製電動鉛筆引っかき硬度試験機No.553−Mを使用し、JIS K5600−5−4に準拠し測定した。
[柔軟性]
円筒形マンドレルの各種径の棒にシートを押し当て、180°屈曲させ、破断の有無を確認した。直径の大きい棒から始め、破断が発生した時点での棒の直径でシートの柔軟性の良否を判断した。破断時の直径が小さいほど柔軟性は良好といえる。
[比重]
比重はアルファミラージュ製株式会社製電子比重計を用いて水中置換法にて測定した。測定試料の大きさは50mm×50mm×所定の厚さmm、測定温度は23℃とした。
[算術平均粗さ(Ra)]
算術平均粗さ(Ra)は株式会社日立ハイテクサイエンス社製走査型プローブ顕微鏡Nanocuteを用いて測定した。
蒸留装置の付いた2リットルの三つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル1625g、トリメチロールプロパン167g、ジブチル錫オキサイド0.8gを仕込み、窒素気流下、180℃で生成するアリルアルコールを系外に留去しながら加熱した。留去したアリルアルコールが約170gになったところで、反応系内を徐々に、4時間かけて6.6kPaまで減圧し、アリルアルコールの留出速度を速めた。留出がほとんどなくなったところで、圧力を0.5kPaとし、1時間反応させた後、室温まで冷却しアリルエステルオリゴマーAを得た。
合成例1で作製したアリルエステルオリゴマーA100質量部に対し、ペンタエリストールテトラアクリレート(新中村化学工業株式会社製、「NKエステルA−TMMT」)10質量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社(現 BASFジャパン株式会社)製、「イルガキュア(登録商標)184」)0.5質量部、パーヘキシル(登録商標)I(日油株式会社)を1質量部加え十分撹拌しアリルエステル樹脂組成物Bを得た。この組成物BをPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に、硬化後の厚さが0.3mmとなるように塗布した。塗工液表面をPET製カバーフィルムで覆い、紫外線照射装置(メタルハライドランプ)を用いて200mW/cm2、800mJ/cm2の条件で紫外線を照射した後、150℃に設定した加熱炉に10分間投入した。加熱炉から取り出し、ベースフィルム及びカバーフィルムを剥がし、厚さ0.3mmの透明基材Aを得た。
この透明基材Aの両面に真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着し、アルミニウム膜を有する厚さ0.3mmの基材Cを得た。この基材Cのアルミニウム蒸着面の、波長380−780nmの領域の平均反射率は87%であった。
透明基材A及び基材Cの測定結果を表1及び表2に示す。
基材Cを10cm×10cmの大きさに炭酸ガスレーザーによってシート状に切断加工した。東亜合成株式会社製接着剤EXTRA(登録商標)4000を用いて、得られたシートを35枚重ねて貼り合わせ、積層品を作製した。この積層品を、ダイヤモンドワイヤーソーを用いて2mmの厚みとなるように切断をし、0.3mm間隔で金属膜層を有する約10cm×約10cm光制御パネルを得た。
この光制御パネルを二枚作製し、積層面が直交するようにして固定し、光結像装置とした。
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製A−DCP)100質量部に対し、パーオクタ(登録商標)O(日油株式会社製)を1質量部添加し、室温で均一となるまで撹拌した。ガラス板とPETフィルム製スペーサー(厚さ0.35mm)を用いて作製した型に注ぎ込み、65℃/1h、100℃/2hかけて硬化した。脱型後、130℃/1hかけて最終硬化させ、アクリル系基材の硬化物を得た。この硬化物について実施例1と同様の測定を行った。この硬化物の柔軟性は12mmであり、十分な柔軟性を示さなかった。
この硬化物の片面にPET製の保護フィルムを貼合し、真空蒸着法により反対側の片面にアルミニウムを蒸着し、アルミニウム膜を有する基材を得た。この基材の柔軟性は12mmであり、十分な柔軟性を示さなかった。
アクリル系基材の硬化物及びアルミニウム蒸着基材の測定結果を表1及び表2に示す。
2 透明基材(硬化物層)
3 金属膜
4 接着層
5 積層体
6 透明保護板
7 光結像装置
Claims (4)
- アリルエステル樹脂組成物の硬化物層と金属膜層とが面方向(厚さに対し垂直方向)に交互に積層された複数の帯状平面光反射部を有する光制御パネルであって、アリルエステル樹脂組成物が、一般式(2)
- 金属膜がアルミニウム、銀及びクロムから選択される請求項1に記載の光制御パネル。
- アリルエステル樹脂組成物の硬化物層の厚さが0.2〜0.5mmである請求項1または2のいずれかに記載の光制御パネル。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の光制御パネルを2枚備え、第一の光制御パネルと第二の光制御パネルの帯状平面光反射部が直交するように配置されている光結像装置。
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