JP5186144B2 - 透明反射防止板 - Google Patents
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Description
そのため、反射防止層を施した反射防止板の基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどの透明性の高い樹脂が用いられている。
基材に耐熱性が求められる理由としては、反射防止層の形成時に熱がかかること、さらに、自動車に搭載するための液晶ディスプレイなどのように、高温の環境下で使用される場合があることが挙げられる。
一方、ポリカーボネートのガラス転移温度は140℃程度であり、ポリエチレンテレフタレートやポリメチルメタクリレートに比べると比較的耐熱性に優れている。しかし、ポリカーボネートは表面硬度が低く、反射防止膜形成時に傷つきやすいため、更にハードコート処理をする必要がある。
しかし、ノルボルネン系樹脂自体の鉛筆硬度はHであり、必ずしも十分な表面硬度を有しているとは言えない。また、ガラス転移温度は160℃であり、耐熱性においても十分とは言えない。
[1]アリルエステル樹脂組成物を硬化して得られるアリルエステル樹脂板上に反射防止層を形成したことを特徴とする透明反射防止板。
[2]アリルエステル樹脂組成物が、アリル基及び/またはメタリル基を末端基とし、多価アルコールとジカルボン酸とから形成されたエステル構造を有するアリルエステル化合物を含む前記1に記載の透明反射防止板。
[3]アリルエステル樹脂組成物が、さらに一般式(1)
[4]アリルエステル化合物の少なくとも一種が一般式(2)
で表される基を末端基として有し、かつ一般式(3)
で表される構造を構成単位として有する前記2に記載の透明反射防止板。
[5]前記一般式(1)、(2)及び(3)におけるジカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である前記4に記載の透明反射防止板。
[6]アリルエステル樹脂組成物が、さらに反応性モノマーを含む前記1〜5のいずれかに記載の透明反射防止板。
[7]反射防止層の少なくとも一つがSiO2またはZrO2からなる前記1〜6のいずれかに記載の透明反射防止板。
[8]前記1〜7のいずれかに記載の透明反射防止板を使用したディスプレイ装置。
[9]前記1〜7のいずれかに記載の透明反射防止板を使用した窓板。
本発明のアリルエステル樹脂は、熱硬化性樹脂の一種である。
一般的に、「アリルエステル樹脂」というと硬化する前のプレポリマー(オリゴマーや添加剤、モノマーを含む)を指す場合と、その硬化物を示す場合の二通りの場合があるが、本明細書中では「アリルエステル樹脂」は硬化物を示し、「アリルエステル樹脂組成物」は硬化前のプレポリマーを示すものとする。
本発明の反射防止板に用いるアリルエステル樹脂組成物は、アリル基またはメタリル基(以降、この両者をあわせて(メタ)アリル基と言う場合がある。)とエステル構造を有する化合物を主な硬化成分として含有する組成物である。
(1)(メタ)アリル基及び水酸基を含む化合物(ここではアリルアルコールと総称する)とカルボキシル基を含む化合物とのエステル化反応、
(2)(メタ)アリル基及びカルボキシル基を含む化合物と水酸基を含む化合物とのエステル化反応、または
(3)アリルアルコールとジカルボン酸からなるエステル化合物と多価アルコールとのエステル交換反応により得ることができる。
(1)及び(2)中の「カルボキシル基を含む化合物」がジカルボン酸とジオールとのポリエステルオリゴマーである場合には、末端のみアリルアルコールとのエステルとすることもできる。
で示される化合物の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物が挙げられる。この化合物は後述するアリルエステルオリゴマーの原料となるほか、反応性希釈剤(反応性モノマー)として本発明のアリルエステル樹脂組成物に含まれてもよい。一般式(1)中のA1は後述の一般式(2)及び(3)におけるA2、A3と同様のものが好ましい。
また、その他の成分として、後述する硬化剤、反応性モノマー、添加剤、その他ラジカル反応性の樹脂成分等を含有してもよい。
本発明のアリルエステルオリゴマーとしては、下記一般式(2)
で示される基を末端基として有し、かつ下記一般式(3)
で示される構造を構成単位として有する化合物が好ましい。
また、全てのR3がアリル基またはメタリル基でなければならないということはなく、硬化性を損なわない範囲で、その一部がメチル基またはエチル基等の非重合性基であってもよい。
一般式(2)におけるA2はジカルボン酸に由来する脂環式構造及び/または芳香環構造を有する有機残基である。ジカルボン酸に由来する部分はA2に隣接するカルボニル構造で示されている。したがって、A2の部分はベンゼン骨格やシクロヘキサン骨格を示す。
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水エンディック酸、無水クロレンド酸等の非環状のジカルボン酸を使用してもよい。
アリルエステルオリゴマーの重量平均分子量は500〜200,000が好ましく、1,000〜100,000が更に好ましい。
多価アルコールとは2個以上の水酸基を有する化合物であり、好ましくは2個の水酸基を有する化合物である。X自体は多価アルコールの水酸基以外の骨格部分を示す。
また、多価アルコール中の水酸基は少なくとも2個が結合していればよいため、原料となる多価アルコールが3価以上、すなわち水酸基が3個以上のときは、未反応の水酸基が残っていてもよい。
本発明のアリルエステル樹脂組成物には硬化剤を使用してもよい。使用できる硬化剤としては特に制限はなく、一般に重合性樹脂の硬化剤として用いられているものを用いることができる。中でも、アリル基の重合開始の点からラジカル重合開始剤を添加することが望ましい。ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、光重合開始剤、アゾ化合物等が挙げられる。中でも、本発明のアリルエステル樹脂組成物を熱硬化させる点からは有機過酸化物が特に好ましい。
これらのラジカル重合開始剤は1種でもよく、2種以上を混合ないし組み合わせて用いてもよい。
本発明のアリルエステル樹脂組成物には、硬化反応速度のコントロール、粘度調整(作業性の改善)、架橋密度の向上、機能付加等を目的として、反応性モノマー(反応性希釈剤)を加えることもできる。
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、シアノフェニル(メタ)アクリレート、メトキシフェニル(メタ)アクリレート及びビフェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸芳香族エステル;
フルオロメチル(メタ)アクリレート及びクロロメチル(メタ)アクリレート等のハロアルキル(メタ)アクリレート;
更に、グリシジル(メタ)アクリレート、アルキルアミノ(メタ)アクリレート、及びα−シアノアクリル酸エステル等が挙げられる。
飽和脂肪酸または芳香族カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び安息香酸ビニル等を挙げることができる。
フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジメタリル、テレフタル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,5−ナフタレンジカルボン酸ジアリル、1,4−キシレンジカルボン酸アリル及び4,4’−ジフェニルジカルボン酸ジアリル等の芳香族カルボン酸ジアリル類;
シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル及びジビニルベンゼン等の二官能の架橋性モノマー;
トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリ(メタ)アリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート及びジアリルクロレンデート等の三官能の架橋性モノマー;
更にペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の四官能の架橋性モノマー等が挙げられる。
上記の反応性モノマーは、1種単独で、または2種以上混合または組み合わせて用いることができる。
本発明のアリルエステル樹脂組成物は、諸物性を改良する目的でラジカル反応性の樹脂成分を含んでいてもよい。これら樹脂成分としては不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。
上記のラジカル反応性の樹脂成分は、1種単独で、または2種以上混合または組み合わせて用いることができる。
ラジカル反応性の樹脂成分の使用量が1質量部未満であると、ラジカル反応性の樹脂成分由来の機械強度向上などの効果が小さく、作業性が悪化したり、成形性が悪化したりするため好ましくない。また、使用量が1000質量部を超えるとアリルエステル樹脂自体の耐熱性が現れない場合があり好ましくない。
本発明の反射防止板用アリルエステル樹脂組成物には、硬度、強度、成形性、耐久性、耐水性を改良する目的で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、離型剤、滑剤、撥水剤、難燃剤、低収縮剤、架橋助剤などの添加剤を必要に応じて添加することができる。
しかし、これらの添加剤は上述した具体例に制限されるものではなく、本発明の目的、または効果を阻害しない範囲であらゆるものを添加することができる。
また、本発明の反射防止板用アリルエステル樹脂組成物を硬化する際、硬化方法により粘度を低下させる必要があれば、溶剤を使用しても構わない。ただし、後で溶媒の除去が必要となるので、粘度は前述した反応性モノマーで調整することが好ましい。
粘度調整に使用することのできる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、エチルアルコール、(イソ)プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。
当該硬化性樹脂の粘度の測定方法は、JIS K6901に準拠した方法で測定することができる。
本発明の反射防止板用アリルエステル樹脂組成物の粘度は特に限定されないが、成形する際の方法に適した粘度であることが好ましい。
例えば、注型成形においては、25℃における粘度が0.01〜1,000Pa・sの範囲であることが好ましい。粘度が0.01Pa・sより低い、または、1,000Pa・sより高いと作業性が悪くなり好ましくない。
アリルエステル樹脂組成物は前記のアリルエステルオリゴマー、反応性モノマー、硬化剤、各種添加剤を公知の方法で混合することにより得ることができる。当該組成物は熱や紫外線、電子線を用いて、ロールコーター、スピンコーター等のコーティング、注型成形法、光造形法等の硬化方法により硬化させることができる。
また、アリルエステル樹脂硬化物の形状は、その成形方法により、フィルム状あるいはシート状になり得る。厚さについては特に制限はないが、通常0.001〜10mmであり、好ましくは0.005〜3mmである。
硬化に要する時間は、一般的には0.5〜100時間、好ましくは2〜30時間かけて硬化するのが良い。
本発明の反射防止板は、前記アリルエステル樹脂硬化物からなる基材上に反射防止層が形成されたものである。
反射防止層は、反射防止膜を単層で成形する場合もあるが、一般的には、目的の反射防止特性を得るために所定の光学膜厚nd(屈折率n×形状膜厚d)の層から構成され、高屈折率層と低屈折率層を交互に複数積層されて使用される。
これらのうち、アリルエステル樹脂組成物との密着性に優れている点で、酸化珪素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)の反射防止膜がより好ましい。
なお、本実施例及び比較例に記載している測定値は、以下の方法で測定した。
ガラス転移温度(Tg)の測定は、サーモアナライザー TMA−50(島津製作所(株)製)を用いてTMA法(熱機械分析法)の圧縮モードで測定を行った。試験片のサイズは、3×8×8(mm)を用い、窒素の雰囲気下(流量50mL/分)で、昇温速度5℃/分で260℃まで温度を上げた後、30℃まで冷却し、再度昇温速度5℃/分で30〜300℃の間で線膨張係数を測定し、その不連続点を求めることにより決定した。
反射防止板の表面に1mm×1mmの大きさのマス目をカッターナイフで100マス作製し、JIS−D−0202に準じてテープを基材表面に密着させた後剥離するテープ剥離試験を行った。判定は100マスの内、剥離しないマス目の数で表し、反射防止膜が剥離しない場合を100/100、完全に剥離する場合を0/100として表した。
反射防止板の鉛筆硬度をJIS−K6894に準じて評価した。
反射防止板(30mm×30mm×3mm)の試験片を日本電色工業(株)製の濁度計NDH200を用いて、JIS K7361−1に従い測定をした。
蒸留装置のついた容量2リットルの三つ口フラスコに、ジアリルテレフタレート1625g、プロピレングリコール167g、ジブチル錫オキサイド0.813gを仕込み、窒素気流下、180℃に加熱し、生成してくるアリルアルコールを留去しながら反応させた。留去したアルコールが約170gになったところで反応系内を約4時間かけて6.6kPaまで減圧し、アルコールの留出速度を速めた。留出液が殆ど出なくなったところで、反応系内を0.5kPaに減圧し、更に1時間反応させた後、反応物を冷却した。この反応式を下記に示す。
蒸留装置のついた容量2リットルの三つ口フラスコに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル1400g、トリメチロールプロパン165.4g、ジブチル錫オキサイド1.40gを仕込み、窒素気流下、180℃に加熱し、生成してくるアリルアルコールを留去しながら反応させた。留去したアルコールが約150gになったところで反応系内を約4時間かけて6.6kPaまで減圧し、アルコールの留出速度を速めた。留出液が殆ど出なくなったところで、反応系内を0.5kPaに減圧し、更に1時間反応させた後、反応物を冷却した。以下、これにより得られた反応物を「オリゴマー(2)」とする。
合成例1で作製したオリゴマー(1)100質量部に対しパーヘキサTMH(商品名:日本油脂株式会社製)3質量部を加え十分撹拌し、2枚のガラス板の間に3mmのシリコンゴムスペーサーを挟み込んだ鋳型に流し込み、空気雰囲気下のオーブン中、80℃で2時間保持、80℃から100℃まで8時間かけて昇温、100℃で2時間保持、100℃から120℃まで4時間かけて昇温、120℃で2時間保持という昇温条件で硬化させ、樹脂板を作製した。この硬化物のTgを測定したところ、273℃であった。
尚、各層の蒸着材料の加熱・蒸発は電子ビームで行い、真空槽内部が常に真空度1×10-3Paとなるように真空計と連動させて電磁弁をコントロールしながら、導入酸素量を調整した。
得られた反射防止板のテープ剥離試験は100/100であり、密着性は良好であった。また、鉛筆硬度は4H、全光線透過率は95.7%であった。
オリゴマー(1)の代わりに合成例2で作製したオリゴマー(2)を用いた以外、実施例1と同様の方法で樹脂板を作製した。この硬化物のTgを測定したところ、313℃であった。
得られた反射防止板のテープ剥離試験は100/100であり、密着性は良好であった。また、鉛筆硬度は4H、全光線透過率は97.7%であった。
市販のポリカーボネート製樹脂板(Tg:145℃)に実施例1と同様の方法で2層の反射防止膜を積層した。第一層はZrO2層(膜厚75nm)、第二層はSiO2層(膜厚83nm)とした。
得られた反射防止板のテープ剥離試験で0/100であり、鉛筆硬度はHBであった。全光線透過率は93.8%であった。
Claims (10)
- アリルエステル樹脂組成物を硬化して得られるアリルエステル樹脂板上に反射防止層を形成してなる透明反射防止板であって、
前記アリルエステル樹脂組成物がアリル基及び/またはメタリル基を末端基とし、多価アルコールとジカルボン酸とから形成されたエステル構造を有するアリルエステル化合物を含むものであり、前記アリルエステル化合物の少なくとも一種が一般式(2)
で表される基を末端基として有し、かつ一般式(3)
で表される構造を構成単位として有するものであり、
前記反射防止層の成分が酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化珪素、フッ化マグネシウム、または酸化アルミニウムであり、
前記反射防止層が複数層からなり、アリルエステル樹脂板と接する第一層が酸化ジルコニウムであることを特徴とする透明反射防止板。 - A2またはA3がジカルボン酸に由来する脂環式構造を有する有機残基である請求項1に記載の透明反射防止板。
- 前記ジカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の透明反射防止板。
- 前記アリルエステル化合物の少なくとも一種が、重量平均分子量500〜200,000であるアリルエステルオリゴマーである請求項1〜3のいずれかに記載の透明反射防止板。
- A1がジカルボン酸に由来する脂環式構造を有する有機残基である請求項5に記載の透明反射防止板。
- 前記A 1 の定義中のジカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項5に記載の透明反射防止板。
- アリルエステル樹脂組成物が、さらに反応性モノマーを含む請求項1〜7のいずれかに記載の透明反射防止板。
- 酸化ジルコニウムの層の上に第二層として酸化珪素の層を有する請求項1〜8のいずれかに記載の透明反射防止板。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の透明反射防止板を使用したディスプレイ装置。
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