JP6752757B2 - サイドバイサイド分割型複合繊維及びそれを用いた生地の製造方法 - Google Patents
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Description
スルホイソフタル酸を含有した共重合ポリエステルは、スルホネート基とポリアミドのアミノ基と相性が良く、ポリアミドとポリエステルとの接着性の改善ができること、ポリアミドと同様に常圧下、100℃の条件で染色ができること等の利点を有している。
スルホイソフタル酸を含有した共重合ポリエステルとポリアミドの繊維としては、混繊糸、サイドバイサイド型複合繊維、海島型複合繊維、割繊型複合繊維など、数多く提案されている。
例えば、特許文献1では、ポリアミドフィラメントと、5−ナトリウムスルホイソフタル酸残基を含有し、特殊グリコールを共重合したポリエステルフィラメントとからなる混繊糸とすることにより、織編物のふくらみを改良し、織編物の強度を保ち、染色性が優れ、外観にも優れた織編物をつくるための混繊糸を提供することが開示されている。
特許文献2では、スルホネート基を有する共重合ポリエチレンテレフタレートとポリアルキレングリコールを含有するポリアミドがサイドバイサイド型(丸型、扁平型、偏芯型)に接合した繊維において、湿度変化により可逆的に捲縮率が変化する潜在捲縮発現能を有する感湿捲縮複合繊維を提供することが記載されている。
さらに特許文献3では、5−アルカリメタルスルホイソフタル酸成分を共重合した共重合ポリエステルとポリアミド46又はこれを主成分とするポリアミドとの複合繊維が記載され、複合の形態として、サイドバイサイド型、芯鞘型糸、海島型、多分割型、異型断面等が例示されている。
特許文献2に記載された感湿捲縮複合繊維は、サイドバイサイド型複合繊維をそのままの形態で使用することを想定しており、割繊して用いることを想定したものではない。
さらに、特許文献3に記載されたサイドバイサイド型複合繊維では、ポリアミド46と共重合ポリエステルとの融点差が大きいことによる製糸性の不良や、ポリアミド46を用いるためコスト高となる問題があった。
5−スルホイソフタル酸塩の共重合の割合は、製糸段階での剥離抑制、毛羽抑制、後工程の工程通過性の点から0.5モル%以上が好ましく、より好ましくは、1モル%以上である。後工程で良好な割繊性を得る点、織編物・生地とした際の風合いを良好とする点から、3モル%以下が好ましく、より好ましくは2.5モル%以下である。
さらに、この他の共重合成分として、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどのジオキシ化合物、アジピン酸、イソフタル酸、フタル酸などのジカルボン酸、ビスフェノールAなどが共重合されていても良い。
本発明のサイドバイサイド分割型複合繊維の潜在捲縮率は、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
さらに、本発明のサイドバイサイド分割型複合繊維の熱水処理後の捲縮率は、15%以下が好ましく、より好ましくは8%以下である。
本発明の複合繊維において、潜在捲縮率や熱水処理後の捲縮率が上記の範囲を超える場合は、仮撚りなどの後工程の通過性が低下する傾向がある。
以下、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、本発明のサイドバイサイド分割型複合繊維の繊維横断面について、説明する図である。図2の繊維横断面は、丸断面と丸断面を接合した繭型の形状である。rは、樹脂A又は樹脂Bのうち、繊維横断面の樹脂比率(面積比)が大きい樹脂の半径である。bは、樹脂Aと樹脂Bとが接合している部分の長さ(接合距離)である。aは、樹脂A又は樹脂Bのうち、樹脂比率(面積比)が大きい樹脂の外接円の中心から樹脂Aと樹脂Bとの接合線までの最短距離である。
また、a値が、9r/10より大きい場合、樹脂Aと樹脂Bとの接合面積が小さくなり、紡糸操業性が悪化したり、製糸段階で剥離が生じる等の問題がある。
また、b値が、r/2より小さい場合、樹脂Aと樹脂Bとの接合面積が小さくなり、紡糸操業性が悪化したり、製糸段階で剥離が生じる等の問題がある。
そして、b値が、2rより大きい場合、樹脂Aと樹脂Bとの接合面積が大きくなることや、分割後の繊維横断面が扁平状となることにより、加工工程での繊維の割繊不良が生じたり、加工後の布帛風合いに問題が生じる。
まず、樹脂Aと樹脂Bを準備する。ここで、樹脂Aの共重合ポリエステルの固有粘度は、0.5dl/g以上、0.7dl/g以下であることが好ましく、樹脂Bのポリアミド6の相対粘度(ηr)は、1.5以上、3.5以下であることが好ましい。このような粘度の範囲とすることによって、粘度のバランスがよくなり、本発明の複合繊維を容易に得られ易くなる。樹脂Aと樹脂Bとを、それぞれ溶融し、それぞれ別の吐出孔から吐出し、孔の直下にて、吐出孔の距離を適切に合わせて、両樹脂を貼り合わせることにより、本発明の繊維横断面形状に複合するよう紡糸する。
尚、樹脂Aと樹脂Bは粘度が近いもの同士の方が、本発明の複合繊維をバランスがよく、本発明の複合繊維が得られ易くなる。また樹脂Aと樹脂Bは上記粘度範囲内で、樹脂Aと樹脂Bとの比率(面積比)が、80:20〜30:70程度であれば、特に、バランスよく、本発明の複合繊維を得ることが容易になる。このように樹脂Aと樹脂Bを溶融紡糸した後は、次いで、未延伸糸を巻取した後、延伸を行うような2工程法としてもよいし、未延伸糸を一旦巻き取ることなく直接延伸する直接延伸法(所謂、SPD法)としてもよいし、半延伸糸を巻き取り後、POY法としてもよく、種々の製法を選択できる。
各工程及び延伸時の熱セット温度は、110〜200℃が好ましく、さらに好ましくは120〜170℃である。延伸時の熱セット温度が110℃未満の場合、原糸の潜在捲縮率、熱水収縮率が非常に大きくなるため、後工程での欠点増加の原因となるおそれがあるため、上記の範囲が好ましい。
本発明のサイドバイサイド分割型複合繊維は、仮撚割繊してもよいし、織編物等の布帛とした後、通常の精練、プレセット、染色、ファイナルセット等の一般的な加工工程で割繊してもよい。このような通常の加工工程の好適条件について以下に例示する。例えば、以下のような条件であることが好ましい。精練工程において、0.2〜1質量%程度の水酸化ナトリウム水溶液を用い、70〜98℃の温度で行うことが好ましい。プレセット工程において、プレセットの温度は、140〜200℃が好ましく、より好ましくは160〜190℃である。染色工程においては、各染料90〜125℃、50〜100分の範囲であることが好ましく、用いる染料は、ポリアミドに対しては、酸性染料、ポリエステルに対してはカチオン染料が好ましい。ファイナルセット工程においては、ファイナルセットの温度は、140〜200℃が好ましく、より好ましくは、160〜190℃である。
これらの通常の加工工程で割繊する場合、精練、プレセット、染色、及びファイナルセット等の工程を、目的に応じて、いずれか1種以上を選択し、所望の工程で、本発明のサイドバイサイド分割型複合繊維を割繊して、所望の生地を得るとよい。
尚、上記の通常の加工工程以外に、防汚加工、制電加工、消臭加工、撥水加工、コーティング、ディッピングなどの工程を介してもよい。
尚、割繊促進剤として、ポリアミド側を収縮させる溶剤を用いてもよい。但し、ベンジルアルコールはポリアミド側の収縮率が高く、又水酸化ナトリウム溶液に浸漬し減量する(一定以上の濃度(例えば、4質量%水酸化ナトリウム水溶液)でのアルカリ減量)と共重合ポリエステルが溶解し易いため、シボを防止し、ポリエステルの風合いを良好に発現したい場合は、ベンジルアルコールや一定以上の濃度のアルカリ水溶液を用いることなく、上述した一般的な工程により、割繊することが好ましい。
A.破断強度、破断伸度
JIS L 1013に準じ、島津製作所製のAGS−1KNGオートグラフ引張試験機を用い、試料糸長20cm、定速引張速度20cm/minの条件で測定する。荷重−伸び曲線での荷重の最高値を繊度で除した値を破断強度(cN/dtex)とし、そのときの伸び率を破断伸度(%)とする。
B.固有粘度(IV)
サンプルをフェノール:テトラクロロエタン=6:4(容積比)の混合溶媒、溶解時間80℃×1時間で溶解し、1質量%の溶液を得た。ウベローデ型粘度管を使用し、測定温度20℃の下で測定し、固有粘度IV(dl/g)を得た。
C.相対粘度(ηr)
サンプルを96質量%硫酸、溶解時間50℃×1.5時間で溶解し、1質量%の溶液を得た。ウベローデ型粘度管を使用し、測定温度25℃の下で測定し、相対粘度ηrを得た。
D.紡糸操業性
紡糸工程及び延伸工程の通過性が良好であれば「○」、工程通過性が若干悪いものを「△」、製糸不可であれば「×」とした。
E.捲縮特性(潜在捲縮率、熱水処理後の捲縮率)
折り返し一往復を0.1g/dにて50cmの長さの綛を作製し、その時の長さをL0とする(L0=50cm)。その後1.2mg/dの荷重を掛け30分間静置する。この状態で沸騰水中に15分間浸漬した後、24時間風乾させ、測長した長さをL1する。次に5mg/dの荷重を掛け30秒後、測長した長さをL2とし、さらに300mg/dの荷重を掛け30秒後、測長した長さをL3とし、次の式で算出した。
潜在捲縮率(%)=〔(L0−L1)/L0〕×100
熱水処理後の捲縮率(%)=〔(L3−L2)/L2〕×100
F.割繊性、分散均一性
2種類のポリマーの単糸の割繊性及び分散均一性を以下のように評価した。
加工後の生地から採取した繊維を、ポリエチレンで埋包し、切片を取り、マイクロスコープ像より、評価した。2種類のポリマーの分散が均一で、単糸が95%以上割繊している繊維を「○」、2種類のポリマーがある程度分散し、90%以上割繊しているものを「△」、それ以外を「×」とした。
G.風合い
風合い(肌触り)は、得られた生地を10人による官能検査にて、8人以上風合いが良好と判断したものを「〇」、3人以上、7人以下が、風合いが良好と判断したものを「△」、風合いが良好と判断した人が3人未満のものを「×」とした。
H.後工程通過性
製織工程、精練工程、プレセット工程、染色工程、熱セット工程の際、織工程でのヨコ段・毛羽立ち・製織不良の状況、加工反の染め斑、毛羽の状況を確認し、欠点が多いものを「×」、欠点はあるが、比較的軽微な欠点のみあるものを「△」、ほぼ欠点がないものを「〇」として評価した。
5−スルホイソフタル酸ナトリウムをポリエステル全体の酸成分に対して1.5モル%及びポリエチレングリコール3質量%を共重合したポリエチレンテレフタレート(IV:0.54dl/g)を樹脂A、相対粘度(ηr)が2.8のポリアミド6を樹脂Bとし、樹脂比率(面積比)を50:50として従来公知の直接紡糸延伸法により、図1のような繊維横断面になるオリフィス径φ0.22mmの紡糸口金を使い、ゴデッドローラー1(GR1):80℃、900m/min、ゴデッドローラー2(GR2):130℃、3200m/minにて引取り、延伸し、3020m/minにて巻き取り、サイドバイサイド分割型複合繊維を得た。
経糸を56dtex/12fのポリアミド6の繊維、緯糸を上記複合繊維とし、平織にて製織した。得られた平織物は、190℃でプレセットした後、酸性染料で染色した後、カチオン染料により染色し、次いで、160℃で熱セット(ファイナルセット)して、加工生地を得た。尚、精練から熱セットの間に分割型複合繊維は完全に割繊されていた。
樹脂Aの5−スルホイソフタル酸ナトリウムの共重合の割合(モル濃度)を変更する以外は実施例1と同様に加工生地を得た。
樹脂Aにおいて、ポリエチレングリコールを共重合しないポリエチレンテレフタレートを用いる以外は、実施例1と同様に加工生地を得た。
樹脂Aにおいて、ポリエチレングリコールを共重合しないポリエチレンテレフタレートを用いる以外は、実施例2と同様に加工生地を得た。
樹脂Aと樹脂Bの構成比率を変更した以外は実施例2と同様に加工生地を得た。
繊維横断面形状を図3(a)又は図3(b)となるように、紡糸口金を変更した以外は、実施例2と同様に加工生地を得た。
樹脂AをホモPET(IV=0.63dl/g)に変更した以外は、実施例2と同様に加工生地を得た。
実施例1で用いた樹脂Aと実施例1で用いた樹脂Bをそれぞれ異なる紡糸口金(オリフィス径φ0.25mm)より、それぞれが28dtex/12fになるよう吐出し、直接紡糸延伸し、ワインダー(巻取速度3200m/min)へ糸条が入る前に、上記糸条を混繊して、56dtex/24の混繊糸を得て、実施例1と同様に加工生地を得た。
比較例1から得られたサイドバイサイド分割型複合繊維は、共重合成分の5−スルホイソフタル酸ナトリウムが0.2モル%と低いため、紡糸中に単糸が剥離し、毛羽の発生などが見られ、紡糸操業性が悪い傾向が見られた。また、毛羽の発生が生じたり、繊維の割繊性及び分散性が比較的悪いことより、風合いを損なう結果となった。
比較例2から得られたサイドバイサイド分割型複合繊維は、共重合成分の5−スルホイソフタル酸ナトリウムが4モル%と高いため、潜在捲縮率の高い繊維となった。また加工生地は割繊が不十分な部分があった。このため、2種のポリマーの単糸の分散性が十分でなく、風合いが悪化し、染色での筋などが見られた。
比較例3から得られたサイドバイサイド分割型複合繊維は、樹脂A:樹脂Bを20:80にしたことによって、b値が範囲外となり、紡糸工程で、剥離による単糸切れや断糸が発生した。また得られた複合繊維は、潜在捲縮率が高く、これにより、仮撚り時は後工程通過性が悪く、また得られた加工生地は、割繊が不十分であった。このため、2種ポリマーの単糸の分散性は十分でなく、均一に分散されておらず、風合いが悪くなったり、染色での筋が見られた。
比較例4から得られたサイドバイサイド型複合繊維は、樹脂A:樹脂Bを90:10にしたことによって、a値とb値が本発明の範囲外となり、紡糸での剥離による単糸切れや断糸が発生した。また、製織工程や加工工程での樹脂Bの断糸及び毛羽立ちの発生が見られた。加工生地は、2種類の樹脂の単糸太さバランスが悪く、単糸切れした部分もあり、風合いが不良なものとなった。
比較例5から得られたサイドバイサイド型複合繊維は、実施例2と同じ組成で繊維横断面を図3(a)のように、樹脂Aと樹脂Bの接合距離を短くしたことによって、紡糸時の剥離、毛羽、断糸が発生し、糸物性は良いが、品位の悪い繊維となった。また加工生地での割繊性は良好であるが、紡糸時の剥離等により不良部が混入し、生地の品位が悪かった。
比較例6から得られたサイドバイサイド型複合繊維は、実施例2と同じ組成で繊維横断面を図3(b)のように、真円に近いとしたことによって、得られた加工生地は、布帛と肌との間でベタツキ感が発生し、風合いを損ねる結果となった。
比較例7から得られたサイドバイサイド型複合繊維は、ホモPETとポリアミド6の組合せとしたことによって、紡糸時での剥離、単糸切れ、断糸が頻発し、糸品位を大きく損なう結果となった。得られた加工生地は風合いが非常に悪かった。
比較例8から得られた混繊糸は、2種類の繊維を合糸するため、混繊後の各ポリマー単糸の分散が不十分となり、加工生地は、ポリエステル繊維とポリアミド繊維が、均一に分散されず、シャンブレー感はあるが、十分な風合いのものが得られなかった。
2 樹脂B
Claims (4)
- 樹脂Aと樹脂Bとの比率(面積比)が、80:20〜30:70であることを特徴とする請求項1記載のサイドバイサイド型複合繊維。
- 破断強度が2.0cN/dtex以上であり、顕在捲縮率が10%以下、熱水処理後の繊維の捲縮率が15%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のサイドバイサイド型複合繊維。
- 請求項1〜3いずれか1項に記載の複合繊維を製編織した織編物を、精練、プレセット、染色、及びファイナルセットのいずれか1以上の加工工程を介して生地を製造する製造方法であって、前記加工工程により前記複合繊維を割繊することを特徴とする加工生地を製造する生地の製造方法。
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