JP3802471B2 - ポリエステル複合マルチフィラメント繊維及びその製造方法並びにその織編物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、織編物にストレッチ性と良好な膨らみ感を与えるポリエステル複合マルチフィラメント繊維及びその製造方法並びにその織編物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、溶融粘度の異なる2種の熱可塑性ポリマーを同一吐出孔より吐出する複合紡糸により接合型複合繊維糸とし、熱処理によりスパイラル型クリンプを発現させ捲縮型ストレッチ糸とすることが知られており、該繊維による布帛はストレッチ性、深みのある色彩を得ることが知られている。
【0003】
また、特許文献1には、溶融粘度の異なる2種のポリエステルからなる接合型複合糸に太細斑を付与し、織編物にストレッチ性と太細スラブ調外観を与える複合繊維が記載されている。
【0004】
しかしこの方法では、マルチフィラメント繊維長手方向に単繊維の高配向の細部と低配向の太部が局在化して存在する構造となるため、染色により濃色部と淡色部が局在化し、スラブ調の外観を得るには良いが、ナチュラルな外観を得ることは困難であり、また、太部と細部が局在化して存在しているため、織編物全体としての膨らみ感も不十分である。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−160443号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の欠点を解決するものであって、布帛としたときに濃色部と淡色部が局在化せずにナチュラルな外観を呈し、十分な膨らみ感とストレッチ性を付与するポリエステル複合マルチフィラメント繊維およびその織編物を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の要旨は、溶融粘度の異なる2種のポリエステルポリマーを接合した複合マルチフィラメント繊維であって、マルチフィラメント繊維を構成する単繊維が繊維軸方向に太細斑を有し、マルチフィラメント繊維中の任意の断面における最も太い単繊維と最も細い単繊維の単繊維径の比が1.2〜2.4であり、マルチフィラメント繊維としての太さ斑の変動係数(CV)が0.30〜1.20、捲縮率(CC)が20〜45%であることを特徴とするポリエステル複合マルチフィラメント繊維にある。
【0008】
本発明の第2の要旨は、下記の式(1)を満足するポリエステル(A)とポリエステル(B)とを、2500m/分以下の引取速度で紡糸した接合型複合繊維の未延伸糸を、下記の式(2)〜(6)を満足する条件下で加熱ローラー延伸することを特徴とするポリエステル複合マルチフィラメント繊維の製造方法にある。
【0009】
[η]A−[η]B>0.145 (1)
MDR×0.45≦DR1≦MDR×0.65 (2)
1.000≦DR2≦1.300 (3)
DR1>DR2 (4)
Tg≦TDR1≦Tc (5)
Tg+20℃≦TDR2≦Tc (6)
(但し、式中、[η]A、[η]B、はそれぞれA、Bのポリマーの固有粘度、MDRは延伸温度85℃における未延伸糸の最大延伸倍率を表す。DR1は1段目延伸倍率、DR2は2段目延伸倍率、TDR1は1段目延伸におけるローラー温度、TDR2は2段目延伸における熱セット温度、Tgは未延伸糸のガラス転移温度(℃)、Tcは未延伸糸の結晶化温度(℃)を示す。なお、複合繊維の未延伸糸の結晶化温度、ガラス転移温度がそれぞれ2点測定される場合は、低い方の温度を結晶化温度、高い方の温度をガラス転移温度とする)
本発明の第3の要旨は、本発明のポリエステル複合マルチフィラメント繊維を用いて、撚りを施した後、これを緯糸として織編物とした、織物収縮率(LC)が20〜40%である織編物を製造する方法にある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について具体的に説明する。
【0011】
本発明のポリエステル複合マルチフィラメント繊維は、布帛とした際にストレッチ性を発現させるために、溶融粘度の異なる2種のポリエステルポリマーを接合した複合マルチフィラメント繊維であることが必要である。
【0012】
該複合マルチフィラメント繊維を構成するポリエステルポリマーは、複合繊維としたときに良好なストレッチ性を得るため、溶融粘度の異なる組合せであればどのような組合せでも良く、同一ポリマーであっても低粘度品と高粘度品の組合せであれば良い。粘度の異なる一方の成分であるポリエステルは高粘度で高収縮成分として作用し、他方の成分であるポリエステルは低粘度で低収縮成分として作用する。
【0013】
また、溶融粘度の異なる2種のポリエステルポリマーのうち高粘度成分が、第三成分を5〜15モル%共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0014】
第三成分が5モル%未満では捲縮発現力が十分得られにくく、15モル%を超えると融点低下が著しく複合紡糸自体が困難になるだけでなく、捲縮発現力も不十分となりやすい。
【0015】
第三成分としては、テレフタル酸成分以外の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等の酸成分、エチレングリコール成分以外の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール等のジオール成分が挙げられ、具体的には、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、スルホイソフタル酸金属塩、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン等が挙げられ、特にイソフタル酸、アジピン酸、スルホイソフタル酸金属塩、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンが好ましいものして挙げられる。これらの第三成分は単独或いは2種以上の組み合わせであってもよい。
【0016】
さらに本発明の溶融粘度の異なる2種のポリエステルポリマーの接合は、複合繊維としたときに良好なストレッチ性が発現する接合であればいかなる接合形態でも良い。好ましくはサイドバイサイド型または偏芯芯鞘型などが用いられ、より好ましくはサイドバイサイド型が高度なストレッチ性を得るために用いられる。
【0017】
また本発明では、マルチフィラメント繊維を構成する単繊維が繊維軸方向に太細斑を有し、マルチフィラメント繊維中の任意の断面における最も太い単繊維と最も細い単繊維の単繊維径の比が1.2〜2.4であり、マルチフィラメント繊維としての太さ斑の変動係数(CV)が0.30〜1.20、捲縮率(CC)が20〜45%であることが必要である。
【0018】
単繊維の繊維軸方向に太部と細部が混在することにより、単繊維長手方向に配向度の差が生じ、仮撚、混繊、染色などの後加工において熱処理を施した際に単繊維内に収縮差を生じ、膨らみ感が得られる。
【0019】
マルチフィラメント繊維中の任意の断面における最も太い単繊維と最も細い単繊維の単繊維径の比は1.2〜2.4が必要である。太細比の下限は1.2以上、より好ましくは1.3以上が良い。上限は2.4以下、より好ましくは1.8以下が良い。
【0020】
太細比の下限が1.2未満であると単繊維の繊維軸長手方向に、太部と細部の単繊維繊度差が小さいため太部、細部の配向度差による構造斑に起因した捲縮形態差が得難く、布帛にした際のふくらみ感が不足する。また、上限が2.4を超えると単繊維の太部と細部の配向度差が大きいため、太部と細部の伸度差が大きくなり、製糸する際に糸切れなど工程安定性上の問題がある。
【0021】
糸全体としての太さ斑の変動係数(CV)は、下限が0.30以上、より好ましくは0.35以上、上限が1.20以下、より好ましくは1.0以下が良い。下限が0.3未満であると、マルチフィラメント内の単繊維径の太細差が小さくなるため、単繊維間での捲縮形態差が小さくなり本発明の目的とする膨らみ感を得ることができなくなる。
【0022】
上限が1.20を超えると仮撚、混繊、染色などの後加工において熱処理を施した際に、マルチフィラメント繊維として、糸条長手方向に太部と細部が局在化し、マルチフィラメント繊維の太部の収縮が著しく粗忽な繊維になり、太部と細部の伸度差が大きいため製糸する際に糸切れなど工程安定性上の問題が発生する。
【0023】
さらに染色した際に、スラブ調外観を呈した太細が発生し、太部と細部が局在化することで収縮部が集中するため本発明の目的とする自然な外観と膨らみを呈する繊維を得ることができない。
【0024】
また本発明では、捲縮率(CC)が20〜45%であることが必要である。CCが20%未満であると十分なストレッチ性を得ることができない。45%を超えると織編物とした際の形態が安定しない。
【0025】
さらに、本発明のポリエステル複合マルチフィラメント繊維は、好ましくは伸度(DE)の下限が30%以上、より好ましくは35%以上、上限は70%以下、より好ましくは60%以下が望ましい。伸度が70%を超えると、織編物としたときに十分な捲縮が発現しにくく、満足すべきストレッチ性能を得ることができにくい。また30%未満では、単繊維の繊維軸方向に太細斑の発現が不足しやすく、満足すべき目的とする膨らみ効果を得ることが困難となりやすい。
【0026】
次に本発明の、ポリエステル複合マルチフィラメント繊維の製造法について詳細に説明する。
【0027】
本発明では、下記の式(1)を満足するポリエステル(A)とポリエステル(B)とを、2500m/分以下の引取速度で紡糸した接合型複合繊維の未延伸糸を、下記の式(2)〜(6)を満足する条件下で加熱ローラー延伸することが必要である。
【0028】
[η]A−[η]B>0.145 (1)
MDR×0.45≦DR1≦MDR×0.65 (2)
1.000≦DR2≦1.300 (3)
DR1>DR2 (4)
Tg≦TDR1≦Tc (5)
Tg+20℃≦TDR2≦Tc (6)
(但し、式中、[η]A、[η]B、はそれぞれA、Bのポリマーの固有粘度、MDRは延伸温度85℃における未延伸糸の最大延伸倍率を表す。DR1は1段目延伸倍率、DR2は2段目延伸倍率、TDR1は1段目延伸におけるローラー温度、TDR2は2段目延伸における熱セット温度、Tgは未延伸糸のガラス転移温度(℃)、Tcは未延伸糸の結晶化温度(℃)を示す。なお、複合繊維の未延伸糸の結晶化温度、ガラス転移温度がそれぞれ2点測定される場合は、低い方の温度を結晶化温度、高い方の温度をガラス転移温度とする)
ポリエステル(A)とポリエステル(B)の固有粘度の差は0.145より大きいことが必要である。粘度の異なるの一方の成分であるポリエステル(A)は高粘度で高収縮成分として作用し、他方の成分であるポリエステル(B)は低粘度で低収縮成分として作用する。固有粘度の差が0.145以下の場合、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の収縮差が小さく、捲縮の発現が不足しストレッチ性能が得られない。
【0029】
また、溶融粘度の異なる2種のポリエステルポリマーのうち高粘度成分が、第三成分を5〜15モル%共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0030】
第三成分が5モル%未満では捲縮発現力が十分得られにくく、15モル%を超えると融点低下が著しく複合紡糸自体が困難になるだけでなく、捲縮発現力も不十分となりやすい。
【0031】
第三成分としては、テレフタル酸成分以外の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等の酸成分、エチレングリコール成分以外の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール等のジオール成分が挙げられ、具体的には、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、スルホイソフタル酸金属塩、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン等が挙げられ、特にイソフタル酸、アジピン酸、スルホイソフタル酸金属塩、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンが好ましいものして挙げられる。これらの第三成分は単独或いは2種以上の組み合わせであってもよい。
【0032】
さらに本発明の溶融粘度の異なる2種のポリエステルポリマーの接合は、複合繊維としたときに良好なストレッチ性が発現する接合であればいかなる接合でも良い。好ましくはサイドバイサイド型または偏芯芯鞘型などが用いられ、より好ましくはサイドバイサイド型が高度なストレッチ性を得るために用いられる。
【0033】
複合紡糸に際してのポリエステル(A)/ポリエステル(B)の接合比(重量比)Wは、複合繊維の形態下で捲縮発現力を与えるうえで4/6<W<6/4が好ましい。接合比が上記範囲外では製糸性が低下しやすく、複合繊維の形態下での捲縮発現力も不足しやすい。
【0034】
また本発明では、ポリエステル(A)とポリエステル(B)を複合紡糸するときの紡糸時の引取速度は、未延伸糸の配向度を低く抑え、延伸工程で繊維軸方向の太細斑の形成を容易にするために2500m/分以下とすることが必要である。引取速度が2500m/分を超えると、未延伸糸の配向度が高くなり、太細斑の形成が困難となる。
【0035】
未延伸糸の延伸は、前記式(2)〜(6)を満足する条件で、加熱ローラーで2段延伸することが必要である。
【0036】
DR1がMDR×0.45未満では、十分な捲縮発現力が得られず、MDR×0.65を超えると、マルチフィラメント繊維の単繊維間に太細斑の形成が困難となり、本発明の目的とする膨らみ間を得ることが困難となる。
【0037】
DR2が1.000未満であると、DR1で形成された単繊維間の太細斑が局在化されスラブ調の外観になり、1.300を超えても同様に太細斑が局在化するため単繊維間に太細斑が分散せず、目的とする膨らみが得られない。
【0038】
さらに本発明ではDR1>DR2であることが必要である。DR2がDR1を超える場合DR1で形成された単繊維間の太細斑が延伸により局在化するため、スラブ調の外観となり、単繊維間に太細斑を分散させて膨らみを発現させることが困難となる。
【0039】
TDR1はTg≦TDR1≦Tcであり、かつ前述の式(2)の条件により未延伸糸の延伸のネック点発生が1段目延伸ローラー上に存在することでネック点が分散し単繊維間で太細のバラツキを発生させることができる。
【0040】
TDR1がTg未満、またはTcを超えると延伸のネック点発生の分散性不良となり、得られる太細糸はスラブ調の外観となるため本発明の目的とする糸が得られない。
【0041】
TDR2がTg+20℃未満では、得られる繊維の配向度が低く強度不十分となり、Tcを超えると単繊維の太部と細部が局在化し、マルチフィラメント繊維として太部と細部が局在化したスラブ調の繊維になる。
【0042】
また本発明では、加熱ローラーで延伸することが必要であり、熱ピンによる延伸では延伸点が熱ピン上に固定され、単繊維の太部と細部が局在化するため、マルチフィラメント繊維として太部と細部が局在化したスラブ調の繊維となる。
【0043】
また、本発明の織編物の製造法は、撚りを施した後、これを緯糸として織編物とした、織物収縮率(LC)が20〜40%であることが必要である。LCが20%未満であると十分なストレッチ性を得ることができない。40%を超えると織編物とした際の形態が安定しない。
【0044】
なお、本発明の織編物は、例えば、得られたポリエステル複合マルチフィラメント繊維を単独または混繊した後、公知の方法により織編物とし、染色処理することによって得ることができる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例における評価は次の方法によって行った。
【0046】
(単繊維径の比(太細比))
マルチフィラメント繊維の長手方向の任意の位置で、光学顕微鏡により断面を観察、単繊維径を測定し、単繊維径の最も太い部分と最も細い部分の単繊維径の比を求めた。
【0047】
(糸全体としての太さ斑の変動係数(CV))
計測器工業(株)製糸斑試験機KET80Cを用い、糸速15m/分、レンジ±12.5%、ノーマルモードの条件で糸の太さの変動係数CV(%)を測定した。
【0048】
(捲縮率CC)
サンプル原糸を枠周1mで巻き数10回の綛を作成し、綛が乱れないように2ヶ所を束ねてくくり、8の字状にして2つ折に重ねて輪にすることを2回繰り返し、ガーゼに包み水浴に浸したときに浮かないように金網箱に入れ、90℃に調整した恒温槽に20分間浸漬する。恒温槽から金網箱を取り出し、水を切り綛が乱れない様にろ紙の上に並べる。
【0049】
20時間以上放置し、自然乾燥した後に捲縮を引き伸ばさない様に注意しながら、余分な絡まりをほぐし、表示デシテックス(1.1dtex)当り49/25000cN×20の初荷重を掛け1分後の長さ(L0)を測る。
【0050】
初荷重を除重後に表示デシテックス当りの49/500cN×20の測定荷重を掛けて1分後の長さ(L1)を測り、除重後2分間放置して再び初荷重を掛けて1分後の長さ(L2)を測る。捲縮率CCは下記式により算出する。
【0051】
捲縮率CC(%)=(L1−L2)/L1 × 100
(伸度(DE))
島津製作所(株)製オートグラフシステムSD−100−Cを用い、サンプル長20cm、引張速度20m/分の条件で測定した。
【0052】
(織物収縮率(LC))
サンプル原糸を撚係数K=100(T=K×√D Tは1m当りの撚数、Dはサンプル原糸の繊度)の条件で撚糸を施し、温度70℃、湿度90%RHの条件下で40分間セットした糸を緯糸として、該サンプル糸の繊度(D)から打ち込み本数(本/cm)=311.1/√Dで算出される打ち込み本数で、縦糸密度39.6本/cmに設定された56dtex18フィラメントの原糸を経糸として製織した後、織物緯糸方向に長さ1mの間隔で印を付け(L0)緯糸に平行に10cm幅のサンプル布を切り出し、130度℃×30分間、熱水処理する。
【0053】
熱水処理したサンプル布を風乾後、片端を固定して垂直に垂らし、下方の他端に0.45g/dtexの荷重をかけ、先に付けた印の間隔(L1)を測定し、織物収縮率(LC)=(L0−L1)/L0×100で算出した。
【0054】
(固有粘度([η]))
ポリマーをフェノールとテトラクロロエタンの1:1の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を用いて25℃で測定した。
【0055】
(織物風合)
織物収縮率の測定に用いた湿熱処理後のサンプル布の引っ張り弾性を触感による官能テストにより次の基準で評価した。
【0056】
○:伸長、反発弾性が共に非常に良好
△:伸長、反発弾性が共に良好
×:伸長、反発弾性が共に不十分
(織物外観)
織物収縮率の測定に用いた湿熱処理後のサンプル布を分散染料Color.Index Disperse Blue 200を1.0 o.w.f%、染色温度130℃にて染色し、織物の外観を目視で次の基準にて評価した。
【0057】
○:スラブ外観が無く、織物としてプレーンな外観。
【0058】
×:スラブ調の外観、太部、細部に起因した濃淡が発生。
【0059】
(実施例1)
イソフタル酸(IPA)8モル%をポリエチレンテレフタレートに共重合した固有粘度0.647の共重合ポリエチレンテレフタレートをポリマー(A)、固有粘度0.484のポリエチレンテレフタレートをポリマー(B)とし、紡糸温度を290℃とし、紡糸吐出孔の上流で2種のポリマー流を面対称に合流させ、接合比(重量比)5/5で、孔径0.6mm、長さ1.5mmの細孔の吐出孔を24個有する複合紡糸口金より紡出した。この紡出糸条を冷却、オイリング後、2100m/分の引取速度で巻き取り、206dtex/24フィラメントの複合繊維の未延伸糸を得た。
【0060】
得られた未延伸糸を表1に示す条件で延伸して109dtex/24フィラメントのポリエステル複合マルチフィラメント繊維の延伸糸を得た。表1に得られたポリエステル複合マルチフィラメント繊維の評価結果を示した。
【0061】
(実施例2)
実施例1と同様のポリマーを用い、同様の紡糸条件で、吐出孔を48個有する複合紡糸口金で、233dtex/48フィラメントの未延伸糸を得た。
【0062】
得られた未延伸糸を、表1に示す条件で延伸して135dtex/48フィラメントのポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。表1に得られたポリエステル複合マルチフィラメント繊維延伸糸の評価結果を示した。
【0063】
(実施例3)
実施例1と同様のポリマーを用い、同様の紡糸条件で、吐出孔を24個有する複合紡糸口金で、98dtex/24フィラメントの未延伸糸を得た。
【0064】
得られた未延伸糸を、表1に示す条件で延伸して56dtex/24フィラメントのポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。表1に得られたポリエステル複合マルチフィラメント繊維延伸糸の評価結果を示した。
【0065】
(実施例4)
表1に示した延伸条件に変えた以外は実施例3と同様に69dtex/24フィラメントのポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。表1に得られたポリエステル複合マルチフィラメント繊維延伸糸の評価結果を示した。
【0066】
(比較例1)
実施例1において未延伸糸繊度を231dtex/24フィラメントと変更した以外は実施例1と同様の紡糸条件で未延伸糸を得た。
【0067】
得られた未延伸糸を、表1に示す条件で延伸して125dtex/24フィラメントのポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。表1に得られたポリエステル複合マルチフィラメント繊維の評価結果を示した。得られたポリエステル複合マルチフィラメント繊維はCVが大きく、織物にスラブ外観があり、スラブの太部と細部で収縮差があり、膨らみ間に欠けるものとなった。
【0068】
(比較例2)
表1に示した延伸条件に変えた以外は実施例3と同様にして、ポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。スラブ調の外観は無いが、最も太い単繊維と最も細い単繊維の単繊維径の比が小さく、膨らみ感に欠ける風合となった。
【0069】
(比較例3)
実施例1において、未延伸糸繊度を222dtex/24フィラメントとし、得られた未延伸糸を1対の熱ピンを介して、第1摩擦抵抗ピンを60℃、第2摩擦抵抗ピンを115℃で延伸倍率1.75倍(MDR×0.57)で延伸して126dtex/24フィラメントのポリエステル複合マルチフィラメント繊維の延伸糸を得た。得られたポリエステル複合マルチフィラメント繊維の評価結果を示した。CV値が大きく、太細斑が局在化されスラブ調の外観となった。
【0070】
(比較例4)
実施例1において、吐出孔を12個有する複合紡糸口金、未延伸糸繊度を62dtex/12フィラメントに変えた以外は、実施例1と同様にし、表1に示す条件で延伸して33dtex/12フィラメントのポリエステル複合マルチフィラメント繊維の延伸糸を得た。得られたポリエステル複合マルチフィラメント繊維の評価結果を示した。CV値が小さく、単繊維間での捲縮形態差が小さくなり本発明の目的とする膨らみ感が得られなかった。
【0071】
(比較例5)
実施例1において、吐出孔を12個有する複合紡糸口金、未延伸糸繊度を115dtex/12フィラメントに変えた以外は、実施例1と同様にし、表1に示す条件で延伸して61dtex/12フィラメントのポリエステル複合マルチフィラメント繊維を得た。表1に、得られたポリエステル複合マルチフィラメント繊維の評価結果を示した。CV値が大きく、太細斑が局在化されスラブ調の外観となった。
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】
本発明は布帛としたときに濃色部と淡色部が局在化せずにナチュラルな外観を呈し、十分な膨らみ感とストレッチ性を付与するポリエステル複合マルチフィラメント繊維及びその織編物が得られる。
Claims (5)
- 溶融粘度の異なる2種のポリエステルポリマーを接合した複合マルチフィラメント繊維であって、マルチフィラメント繊維を構成する単繊維が繊維軸方向に太細斑を有し、マルチフィラメント繊維中の任意の断面における最も太い単繊維と最も細い単繊維の単繊維径の比が1.2〜2.4であり、マルチフィラメント繊維としての太さ斑の変動係数(CV)が0.30〜1.20、捲縮率(CC)が20〜45%であることを特徴とするポリエステル複合マルチフィラメント繊維。
- 溶融粘度の異なる2種のポリエステルポリマーのうち高粘度成分が、第三成分を5〜15モル%共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレートである請求項1記載のポリエステル複合マルチフィラメント繊維。
- 下記の式(1)を満足するポリエステル(A)とポリエステル(B)とを、2500m/分以下の引取速度で紡糸した接合型複合繊維の未延伸糸を、下記の式(2)〜(6)を満足する条件下で加熱ローラー延伸することを特徴とするポリエステル複合マルチフィラメント繊維の製造方法。
[η]A−[η]B>0.145 (1)
MDR×0.45≦DR1≦MDR×0.65 (2)
1.000≦DR2≦1.300 (3)
DR1>DR2 (4)
Tg≦TDR1≦Tc (5)
Tg+20℃≦TDR2≦Tc (6)
(但し、式中、[η]A、[η]B、はそれぞれA、Bのポリマーの固有粘度、MDRは延伸温度85℃における未延伸糸の最大延伸倍率を表す。DR1は1段目延伸倍率、DR2は2段目延伸倍率、TDR1は1段目延伸におけるローラー温度、TDR2は2段目延伸における熱セット温度、Tgは未延伸糸のガラス転移温度(℃)、Tcは未延伸糸の結晶化温度(℃)を示す。なお、複合繊維の未延伸糸の結晶化温度、ガラス転移温度がそれぞれ2点測定される場合は、低い方の温度を結晶化温度、高い方の温度をガラス転移温度とする) - ポリエステル(A)が、第三成分を5〜15モル%共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレートである請求項3記載のポリエステル複合マルチフィラメント繊維の製造方法。
- 請求項1、または2に記載のポリエステル複合マルチフィラメント繊維を用いて、撚りを施した後、これを緯糸として織編物とした、織物収縮率(LC)が20〜40%である織編物を製造する方法。
Priority Applications (1)
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