JP6749099B2 - 酸化黒鉛の製造方法 - Google Patents
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Description
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
なお、一般的にグラフェンとは、sp2結合で結合した炭素原子が平面的に並んだ1層からなるシートをいい、グラフェンシートが多数積層されたものはグラファイトといわれるが、本発明における酸化グラフェンには、炭素原子1層のみからなるシートだけではなく、数層〜100層程度積層した構造を有するものも含まれる。該酸化グラフェンは、炭素原子1層のみからなるシートであるか、又は、数層〜20層程度積層した構造を有するものであることが好ましい。
上記酸化黒鉛は、更に、カルボキシル基、水酸基、硫黄含有基等の官能基を有していてもよい。
なお、溶媒の水に対する溶解度は、溶液沈降法により測定することができる。
これらの分離方法の中でも、より好ましくは、濾過、分液抽出のいずれかであり、最も好ましくは、濾過である。
濾過は上記分離方法の中でも最も簡便な方法であるが、従来の酸化黒鉛の製造方法では、酸化黒鉛によるフィルターの目詰まりが起こりやすく、濾過に時間がかかることが問題となっていた。これに対し、本発明の方法では、水に対する溶解度が所定の範囲の溶媒の作用により反応液中で酸化黒鉛粒子の凝集が促進され、これにより、反応液を濾過をしてもフィルターの目詰まりが起こりにくく、濾過に要する時間が従来の酸化黒鉛の製造方法における濾過工程に比べて大幅に短い。このため、酸化黒鉛を分離する方法として濾過を用いることで、反応液と酸化黒鉛との分離を簡便かつ効率的に進めることができる。
上記質量比は、26以上であることがより好ましく、27以上であることが更に好ましく、28以上であることが特に好ましい。また、該質量比は、54以下であることがより好ましく、48以下であることが更に好ましく、42以下であることが特に好ましい。
上記平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
上記比表面積は、窒素吸着BET法で比表面積測定装置により測定することができる。
本発明の製造方法における酸化工程に用いる黒鉛は、1種のみであってもよく、上記平均粒子径、形状、比表面積等のいずれかにおいて異なる2種以上のものを用いてもよい。
該全添加量は、100質量%以上であることがより好ましく、150質量%以上であることが更に好ましく、200質量%以上であることが一層好ましく、240質量%以上であることが特に好ましい。また、該全添加量は、450質量%以下であることがより好ましく、400質量%以下であることが更に好ましく、350質量%以下であることが一層好ましく、300質量%以下であることが特に好ましい。
上記過マンガン酸塩を複数回に分けて添加する場合、1回当たりの添加量は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
上記温度は、12℃以上に維持することが好ましく、15℃以上に維持することがより好ましく、18℃以上に維持することが更に好ましく、20℃以上に維持することが特に好ましい。
上記酸化工程は、該温度変化を20℃以下に維持することがより好ましく、15℃以下に維持することが更に好ましく、10℃以下に維持することが特に好ましい。
また、酸化黒鉛を効率的に製造する点から、過マンガン酸塩の添加時間は、8時間以下であることが好ましく、7時間以下であることがより好ましく、6時間以下であることが更に好ましい。
上記酸化工程は、例えば空気中、又は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる。また、上記酸化工程は、その圧力条件は特に限定されないが、例えば常圧条件下で行うことが好ましい。
また上記酸化工程の時間は、0.5時間〜120時間とすることが好ましく、1時間〜15時間とすることがより好ましく、2時間〜10時間とすることが更に好ましい。
上記酸化工程は、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。
また熟成させる時間は、0.1〜24時間であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜5時間である。
上記酸化反応停止工程は、例えば、反応液の温度を5〜15℃に設定し、反応液に水を添加し、次いで還元剤として過酸化水素水を添加して行うことができる。また、反応液を、5〜25℃に設定した、水又は過酸化水素水に添加して行ってもよい。
上記酸化反応停止工程の時間は、例えば0.01〜5時間とすることができる。
このような還元型酸化黒鉛の製造方法、すなわち、酸化黒鉛が還元された還元型酸化黒鉛を製造する方法であって、該製造方法は、黒鉛を酸化する工程と、該酸化工程で得られる酸化黒鉛を精製する工程と、該精製工程で得られた酸化黒鉛を還元する工程とを含み、該精製工程は、酸化黒鉛を含む反応液に、水に対する溶解度が0.01%以上であって、かつ、水と任意には混和しない溶媒を添加した後、酸化黒鉛を分離する工程を含むことを特徴とする還元型酸化黒鉛の製造方法もまた、本発明の1つである。
酸化黒鉛を加熱する温度は、100℃以上が好ましい。より好ましくは、120℃以上である。酸化黒鉛の加熱温度に特に上限はないが、通常、2000℃以下で行われる。酸化黒鉛を加熱する時間は、0.1〜100時間が好ましい。より好ましくは、0.2〜50時間である。
酸化黒鉛の加熱は空気中で行ってもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また真空中で行っても良い。
本発明の還元型酸化黒鉛の製造方法は、黒鉛を酸化する工程、該酸化工程で得られる酸化黒鉛を精製する工程、及び、精製工程で得られた酸化黒鉛を還元する工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、上述した酸化反応停止工程等が挙げられる。
なお、上記電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池、固体高分子型燃料電池、金属−空気電池等が挙げられる。
上記熱電変換材料が用いられる熱電変換装置としては、例えば、地熱・温泉熱発電機、太陽熱発電機、工場や自動車等の廃熱発電機、体温発電機等の発電機や、該発電機を電源の少なくとも一つとして用いた各種電気製品、電動機、人工衛星等が挙げられる。
XRD測定は、全自動水平型X線回折装置(リガク社製、SMART LAB)を用いて、以下の条件により行った。
CuKα1線:0.15406nm
走査範囲:10°−90°
X線出力設定:45kV−200mA
ステップサイズ:0.020°
スキャン速度:0.5°min−1−4°min−1
なお、XRD測定は、試料をグローブボックス中にて気密試料台に装填することにより、不活性雰囲気を保った状態で行った。
(XPS測定)
XPS測定は、光電子分光装置(JPS−9000MX,日本電子株式会社製)を用いて行った。C1sのナロースキャンに於けるピーク分離は、バックグラウンド補正をShirley法で行い、フィッティング関数としてGauss−Lorentz関数を用いたピークフィットにより行った。
耐食性反応器に濃硫酸(試薬特級、和光純薬工業製)28.75部と天然黒鉛(Z−5F、鱗片状黒鉛、伊藤黒鉛工業製)1.00部を加えて混合液とした。混合液を撹拌しながら過マンガン酸カリウム(試薬特級、和光純薬工業製)を15分間隔で混合液中へ20回投入した。過マンガン酸カリウムの一回の投入量は0.125部であり、投入量の合計は2.50部であった。過マンガン酸カリウムの投入終了後、混合液を35℃まで昇温し液温を維持したまま2時間熟成を行った。その後60℃以下の液温を維持したままイオン交換水63.45部と30%過酸化水素水(試薬特級、和光純薬工業製)1.77部を投入し反応を停止させた。当該手法により得られた酸化黒鉛含有スラリーを以下から“反応後スラリー”と呼称する。
上記反応後スラリー30gを直径55mmの吸引型濾過器を用いて濾過することで酸化黒鉛の分離精製を行った。濾紙としてテフロン(登録商標)濾紙(アドバンテック社製、PF050)を使用した。濾過器中でケーキ状の酸化黒鉛層が露出するまでに104秒の時間を要した。
上記反応後スラリー30gに対してシクロヘキサノン(試薬特級、和光純薬工業製、水に対する溶解度;5重量%)を0.13g添加しよく振盪させた以外は比較例1と同様の条件で酸化黒鉛の分離精製を行った。濾過に要した時間は65秒であり、シクロヘキサノンを添加することで濾過速度が非常に早くなることを確認出来た。
上記反応後スラリー30gに対してシクロヘキサノン(試薬特級、和光純薬工業製、水に対する溶解度;5重量%)を0.39g添加しよく振盪させた以外は比較例1と同様の条件で酸化黒鉛の分離精製を行った。濾過に要した時間は73秒であり、シクロヘキサノンを添加することで濾過速度が非常に早くなることを確認出来た。
上記反応後スラリー30gに対してシクロヘキサノン(試薬特級、和光純薬工業製、水に対する溶解度;5重量%)を1.30g添加しよく振盪させた以外は比較例1と同様の条件で酸化黒鉛の分離精製を行った。濾過に要した時間は47秒であり、シクロヘキサノンを添加することで濾過速度が非常に早くなることを確認出来た。
上記反応後スラリー30gに対して1−ブタノール(試薬特級、和光純薬工業製、水に対する溶解度;6.4重量%)を0.39g添加しよく振盪させた以外は比較例1と同様の条件で酸化黒鉛の分離精製を行った。濾過に要した時間は80秒であり、1−ブタノールを添加することで濾過速度が非常に早くなることを確認出来た。
上記反応後スラリー30gに対して1−ブタノール(試薬特級、和光純薬工業製、水に対する溶解度;6.4重量%)を1.3g添加しよく振盪させた以外は比較例1と同様の条件で酸化黒鉛の分離精製を行った。濾過に要した時間は70秒であり、1−ブタノールを添加することで濾過速度が非常に早くなることを確認出来た。
上記反応後スラリー30gに対して1−ブタノール(試薬特級、和光純薬工業製、水に対する溶解度;6.4重量%)を1.9g添加しよく振盪させた以外は比較例1と同様の条件で酸化黒鉛の分離精製を行った。濾過に要した時間は18秒であり、1−ブタノールを添加することで濾過速度が非常に早くなることを確認出来た。
上記反応後スラリー30gに対して1−ブタノール(試薬特級、和光純薬工業製、水に対する溶解度;6.4重量%)を2.6g添加しよく振盪させた以外は比較例1と同様の条件で酸化黒鉛の分離精製を行った。濾過に要した時間は1秒であり、1−ブタノールを添加することで濾過速度が非常に早くなることを確認出来た。
上記反応後スラリー30gに対して2−プロパノール(試薬特級、和光純薬工業製、水に対して任意に混和)を1.3g添加しよく振盪させた以外は比較例1と同様の条件で酸化黒鉛の分離精製を行った。濾過に要した時間は146秒であった。
上記反応後スラリー30gに対してヘキサン(試薬特級、和光純薬工業製、水に対して不溶)を1.3g添加しよく振盪させた以外は比較例1と同様の条件で酸化黒鉛の分離精製を行った。濾過に要した時間は586秒であった。
実施例3と同様の手法にて酸化黒鉛の分離を行った後に少量のイオン交換水で洗浄を行い、50℃真空下にて一晩乾燥を行うことで酸化黒鉛乾燥粉末を得た。XRD測定結果を図1に示す。酸化黒鉛の層状構造に由来する特徴的なシグナルが認められたことから当該精製手法にて問題無く酸化黒鉛の精製が可能であることが確認出来た。
実施例7と同様の手法にて酸化黒鉛の分離を行った後に少量のイオン交換水で洗浄を行い、50℃真空下にて一晩乾燥を行うことで酸化黒鉛乾燥粉末を得た。XRD測定結果を図2に示す。酸化黒鉛の層状構造に由来する特徴的なシグナルが認められたことから当該精製手法にて問題無く酸化黒鉛の精製が可能であることが確認出来た。
実施例8にて得られた酸化黒鉛乾燥粉末を昇温速度10℃/分にて800℃まで昇温させ、窒素流通下にて5時間焼成を実施した。得られた粉末のXRD測定結果を図3に示す。また焼成前後のC1s XPS測定結果を表1に示す。図3に示すように酸化黒鉛の層構造に由来するピークが消失しており、また酸素含有官能基に由来する結合が焼成により著しく消失していることから還元型酸化黒鉛が生成したことが示された。
実施例9にて得られた酸化黒鉛乾燥粉末を昇温速度10℃/分にて800℃まで昇温させ、窒素流通下にて5時間焼成を実施した。得られた粉末のXRD測定結果を図4に示す。また焼成前後のC1s XPS測定結果を表2に示す。図4に示すように酸化黒鉛の層構造に由来するピークが消失しており、また酸素含有官能基に由来する結合が焼成により著しく消失していることから還元型酸化黒鉛が生成したことが示された。
Claims (6)
- 黒鉛を酸化して酸化黒鉛を製造する方法であって、
該製造方法は、黒鉛を酸化する工程と、
該酸化工程で得られる酸化黒鉛を精製する工程とを含み、
該精製工程は、酸化黒鉛を含む反応液に、水に対する溶解度が0.01%以上であって、かつ、水と任意には混和しない溶媒を添加した後、酸化黒鉛と溶媒を含む反応液より、濾過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出のいずれかにより酸化黒鉛を分離する工程を含むことを特徴とする酸化黒鉛の製造方法。 - 前記溶媒の水に対する溶解度は0.5%以上であることを特徴とする請求項1に記載の酸化黒鉛の製造方法。
- 前記溶媒の添加量は、酸化黒鉛を含む反応液中の酸化黒鉛100質量%に対して1〜1000質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化黒鉛の製造方法。
- 前記酸化黒鉛の分離は、濾過により行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化黒鉛の製造方法。
- 前記酸化工程は、黒鉛と硫酸とを含む混合液に過マンガン酸塩を添加する工程であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化黒鉛の製造方法。
- 酸化黒鉛が還元された還元型酸化黒鉛を製造する方法であって、
該製造方法は、黒鉛を酸化する工程と、
該酸化工程で得られる酸化黒鉛を精製する工程と、
該精製工程で得られた酸化黒鉛を還元する工程とを含み、
該精製工程は、酸化黒鉛を含む反応液に、水に対する溶解度が0.01%以上であって、かつ、水と任意には混和しない溶媒を添加した後、酸化黒鉛と溶媒を含む反応液より、濾過、デカンテーション、遠心分離、及び、分液抽出のいずれかにより酸化黒鉛を分離する工程を含むことを特徴とする還元型酸化黒鉛の製造方法。
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